2022年12月下旬

12月20日 火曜日 日に日に寒くなるのか …

 今朝は7時間の睡眠で6時過ぎに目覚めて、蕎麦屋に出掛けるのでした。公園の森から朝日が昇る時間で、残月がまだ暗い空の部分に輝いていました。今日も雲ひとつなく晴れる様子で、放射冷却で地上は昨日の朝よりも更に冷えてくるのです。蕎麦屋に着いて向かいの畑を眺めれば、真っ白な霜が一面に降りているのでした。エアコンのスイッチを入れたら、厨房に入ってまずは昨日の洗い物を片付ける。珈琲を入れて飲みながら、今日一日の段取りを考える。

 3㍑の鍋に出汁取りの昆布と干し椎茸を入れて、午後の出汁取りの準備をしておく。今朝は地域の子ども会の段ボールと新聞の回収があるので、奥の座敷から束ねておいた段ボールを車に積み、新聞の袋も口を結わいて車に積み込むのでした。そして、女将が家の居間のカーテンを洗濯をしてくれると言うから、庭木を剪定して蕎麦屋に置いたままの背の高い脚立を積み込んで家に戻るのです。家に戻れば7時過ぎで、女将が昼食の支度をしているところでした。

 好きなしゃけ粥もさすがに三日続くと飽きてくる。それでもしっかりと汁まで啜って身体を温め、今朝は食後のひと眠りもせずに、着替えたらお袋様に電話をかけるのです。家から車で5分もかからないのに、彼女はもう階段の下で亭主を待っていた。「寒いねぇ」と言いながら車に乗り込み、農産物直売所に向かうのでした。今日も新鮮な野菜が並んでいたから、大根やトマト、キャベツ、白菜、里芋など、買えるものはもらっていくのです。

 いつも沢山の野菜を買うからか、レジの小母さんが「なんか商売でもやっているの?」と言うものだから「蕎麦屋をやってます」と応える亭主。場所を聞かれて説明をすれば「今度食べに行ってみるよ」と言うから、定休日だけ伝えておくのでした。隣町のスーパーにも出掛けたけれど、寒いからか今日は駐車場がやけに空いていたのです。一通り欲しい物を手に入れて、後は女将に頼まれた食材とトイレットペーパーやティッシュペーパーを車に積み込む。

 野菜類を片付けて、白菜と大根を塩漬けにしたら、家に戻って荷物を降ろす。ちょうど女将が買い物から帰ってきたから、ガレージからの階段を上り下りして玄関まで三往復。昼は野菜サラダの残り物を消化するために、女将がタンメンが暖まると言ったから、一昨日の分の野菜サラダ二皿分に肉を加えて亭主が汁を作り、先日の夜に作った餃子を焼いて、無事に昼飯を食べる。満腹になった亭主は書斎に入り、女将のスポーツクラブの予約の時間までひと眠り。

 30分ほど眠ったら、居間の部屋でテレビの映画を観ながら、予約の時刻を待つのです。スムーズに予約が出来て、テレビの続きを見終えたら「行って来ま~す」と稽古場の女将に声を掛けて蕎麦屋に出掛ける。午後の仕込みは出汁取りです。先週はお客が少なかったから、まだ十分にあったのだけれど、週の途中で出汁を取る時間が勿体ないから、蕎麦汁は蕎麦徳利にすべて詰めて、残った分は鍋のまま冷蔵庫に入れておく。天つゆも別鍋で作って保存する。

 夜は先週までに残ったキャベツを消化するために、女将の提案で先日食べたばかりのちゃんこ鍋。亭主は今日買って帰った鶏の手羽元を塩で焼いてもらって焼酎を飲む。ちゃんこ鍋は最後にうどんを入れるから、どうしても腹に溜まるのです。昼も夜もしっかりと食べたから、風呂の時間に体重を量ったら、案の定、80kgを少しオーバーしていました。定休日の食事は要注意なのです。今日は午後に南の庭のタラの木も剪定したのに、動く量が少なかったのかな。

12月21日 水曜日 今日も恙なく暮れて …

 夕べは10時過ぎには床に就いたのに、明け方に寒さで目が覚めて居間のストーブで暖まり、また眠ったらもう7時なのでした。天気予報とは裏腹に、朝は青空も覗いて陽も差していたから、女将が居間のカーテンを洗うと言っていたので、食後に蕎麦屋から持ち帰った背の高い脚立を立てて、亭主はカーテンを外すのでした。居間は亭主が喫煙をするスペースなので、カーテンの汚れは尋常でないと言う。だから洗ってもらえるだけでも有り難いのです。

 9時過ぎに家を出て蕎麦屋に向かえば、明け方ほどは寒くないから不思議。それでも蕎麦屋の厨房は8℃と冷たいので、エアコンの暖房を入れて、二つの大釜に水を汲んで湯も沸かしておきました。気になっていた塩漬けにしておいたなた漬けの大根と白菜は、どちらも水が上がっていたから、なた漬けの大根は容器を小さな物に移し替えて、甘酒の素と柚子と唐辛子を入れて付け直す。白菜も冷蔵庫に入る容器に移して塩と柚子と唐辛子を入れて漬け直すのです。

 ひと休みしたら、今度は筑前煮の下ごしらえに取りかかるのでした。蓮根の皮を剥いて酢水で茹でたら、里芋を六方に剥いて茹で、牛蒡を乱切りにして下茹でをしてから、他の根菜類を切ってから、鶏肉をごま油で炒めて、一気にすべての根菜を中華鍋に入れるのです。一通り油が回ったら、二番出汁を入れて煮込み、出汁醤油と砂糖を加えて味つけをします。今週はなた漬けと白菜のお新香と筑前煮があるので、小鉢は三種類と年末だからと頑張ったのです。

 約束の時間の11時半には家に戻り、女将の希望で今日は昼にお好み焼きを亭主が作る。「冷蔵庫の中が綺麗になくなったわ」と嬉しそうに言うから、いつも蕎麦屋の残り物ばかりで申し訳ないと亭主は頭を下げる。月曜日に残った野菜サラダの三皿分も、お好み焼きにすると三人分の野菜が、綺麗に食べられるから不思議なのです。食後は昔懐かしいジャンポール・ベルモントの映画を観ながら、女将のスポーツクラブのヨガの予約をし終えたらひと眠りです。

 午後も天気予報とは違って薄陽が差していたから、レースのカーテンを洗って干した女将の判断は正しかったのです。女将が帰って入れ替わりに、亭主は蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをする。今日は今年最後の夜の防犯パトロールかがあるので、あまり沢山の仕事は出来ないから、天麩羅の具材を切り分けて、午前中に使った鍋やボールを片付けるだけ。まな板を消毒したら、布巾類を洗濯して家に戻るのでした。レースのカーテンを掛けるのも亭主の仕事。

12月22日 木曜日 朝から冷たい雨の降る日は …

 昨日の天気予報の通りに朝から冷たい雨が降っていました。まだ暗いうちに蕎麦屋に出掛けて、今日の小鉢を盛り付けておいた。霜が降りて美味しくなった白菜の漬け物はこの冬初めての一品。根野菜の筑前煮も大根のなた漬けも亭では冬の定番です。折角、賑やかに小鉢を盛り付けたけれど、この天気ではどれだけお客が来るのだろうと、ちょっと前向きにはなれない気分で家に戻るのでした。7時を過ぎたというのに、外は薄暗いのです。

 朝食を終えたら朝ドラの終わるのを待って再び蕎麦屋に向かう。雨脚が強くなってきたので、今朝は車で出勤です。ゴミ出しに行く女将が傘を差して通りに出ていた。ガレージまでの階段でもうずぶ濡れになりそうなのでした。いつもより早くに店に着いたから、早朝に重曹とお湯をかけておいたレンジ周りを綺麗に掃除。この間、グリルは同じように掃除をしたばかり。10年も使うとやはり汚れが酷くなっているのです。グリル周りの汚れをあと少し落としたい。

 店の中は早朝から暖房を入れておいたので、蕎麦打ち室も15℃になっていました。昼前からは晴れると言う予報だったけれど、どうもまた天気がずれ込んで行く様子だったから、少し多めに打とうかと思っていた蕎麦もいつも通りの750g八人分に変更。果たして昼を過ぎても雨は止まないのでした。金柑大福も解凍してある白餡が足りずに三皿だけ、野菜サラダはいつもの通り三皿用意したのです。暖簾を出せば、近所の常連さんが傘を差して歩いていらっした。

 いつものように瓶生のビールを頼まれて、「カレー蕎麦が美味いから今日は大盛りでお願いします」と言う。付け出しと野菜サラダを出してビールを飲んでいる間に、カレーの汁を解凍してとろみを付けてお出しする。何を話すのでもないけれど、満足そうに大きな器の汁をすべて飲み干して、また傘を差して帰って行かれた。洗い物を済ませた頃に、隣町の常連さんが来て、辛味大根とキノコ付け蕎麦のご注文。こちらはよく話をするお客だから退屈しない。

 やっと雨の止んだ1時前に女将が来てくれて、亭主も奥の座敷で一休み出来たのです。厨房に戻っても件のお客は、女将を相手にまだ話をしている。「キノコ蕎麦が美味しいから明日も来ようかな」と言ってやっとお帰りになって、亭主も賄い蕎麦を茹でてぶっかけで食べておく。この寒さではもうお客は来ないかと思っていたら、ご夫婦のお客がいらっして温かい汁のぶっかけ蕎麦を注文なさる。野菜の天麩羅を揚げて蕎麦を茹でたら、もう閉店の時間だった。

 雨の上がった夕刻は、女将が買い物に出掛けて、夜のご飯はポークステーキにすることになる。野菜サラダが二人分残ったので、亭主も同じ事を考えていたから不思議なものです。ところが、夕食の前に業者が年末の食材を届けに来るから、亭主はまた蕎麦屋に出掛けて行く。配達する若者はまだ慣れないらしく、到着する時間が遅い。「あと5分で着きます」と電話が入ったのが6時前。亭主は昼の洗い物を片付けて、珈琲を入れる用意をして待つのでした。

12月23日 金曜日 晴れてとても風の強い一日でした …


 夕べの夜から送電線が風でゴーゴーと音を立てていたのです。朝起きてもまだ風は強く、結局、この風は夕方まで止まなかった。蕎麦屋に出掛けるときも、門を出てたら雪駄では寒いと気が付いて、ウォーキングシューズに履き替えに玄関に戻り、手袋までして家を出たのでした。郵便受けから新聞を取り出して、一面の見出しだけ見たら、もう店の中に入る。室温は8℃。急いで暖房を入れて、大釜に水を張り、火を点けるのです。

 今朝も750g八人分の蕎麦を打ち、身体が熱くなってきたので暖房の温度と風量を下げる。それでもまだ15℃にしかなっていなかったのです。いつもと同じ44%強の加水だったけれど、昨日は四辺の端がひび割れたので、今朝は丁寧に時間をかけて捏ねたら、伸す時になめらかな四辺になったのです。ちょっと手を抜くと何処かにひずみが現れるもの。天つゆや小鉢の煮物などもその都度味見をするけれど、見えないところに油断はついて回るから、要注意なのです。

 10時前に蕎麦打ちを終えて、少し時間が合ったから、大鍋を取り出して小松菜を茹でておく。鍋焼きうどんや鴨南蛮蕎麦などに、小松菜の綠は欠かせないのです。少し硬めに茹でて切り分けたら、一回使う分ずつラップでくるんで半分は急速冷凍庫に入れる。あまり長い間冷凍すると、解凍するのが大変だから、古くなったら家に持ち帰って味噌汁の具材になるのです。天麩羅鍋の奥の火口でブロッコリーとアスパラを茹でようとしたら、鍋の湯をこぼしてしまう。

 取っ手に自分の手が引っかかったのです。沸騰する直前だったから熱いお湯が足元までこぼれた。厚手の靴下を履いていたので、何とか無事でしたが、身体と意識のずれは最近時々感じることです。時間通りに野菜サラダを刻んで開店の準備は進む。昼を過ぎたら、急にお客がやって来て、駐車場がすぐに満杯になった。若い職人風の人たちは、天麩羅蕎麦と温かい汁のぶっかけの大盛りで、すぐに後からいらっした常連さんは、いつものヘルシーランチセット。

 外は相当に寒いらしい。出た盆や皿の洗い物をするついでに、鍋焼きうどんの鍋を洗っておきました。1時を過ぎたらもうお客はなく、暇になった亭主は、南瓜をスライスして天麩羅の具材を準備して、自分もかき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べておきました。空はこんなに青いのに、冷たく強い風は収まらず、明日の天気が気になるところ。お客がゼロではない平日が続いてはいるけれど、週末はもう少しお客が欲しいのです。今年もあと一週間あまりでお終い。



12月24日 土曜日 今日はクリスマス・イヴだけれど …



 まだ暗い6時に家を出て蕎麦屋に向かう。昨日ほど風は強くなかったけれど、やはり寒い朝なのでした。店の暖房を入れ、二つの大釜に火を入れて、昨日の洗い物を片付けたら、今朝は残り少なくなったカレーを仕込むのが仕事。鍋に油を引いて具材を炒めたら、水を入れて煮るだけだからわけはない。野菜に火が通ったらルーを入れて弱火でぐつぐつと更に煮込む。隣の火口では今日の分の暖かい蕎麦の汁を作っておきました。6時40分になっても陽は昇らない。

 昼の時間が一番短い冬至が終わったら、少しは日の出も早くなるかと思ったけれど、逆にまだ少しずつ日の出は遅くなって行くらしい。レンジの火を止め、鍋はそのままにして家に戻れば、今朝は昨日の鶏鍋の残りにご飯を入れてお粥。身体が温まるからちょうど好いのです。二人だけだと鶏鍋も一回では食べきれないのが悲しい。食事を終えてお茶をもらったら、今朝はひと眠りをしないでテレビでまた映画を観ている亭主。ストーブから離れられないのです。

 朝ドラの最中に洗面と着替えを済ませて、朝ドラが終わる時間に「行って来ま~す」と玄関を出る。手袋はしていたけれど、毛糸の帽子を被るほどの寒さではない。これから年が明けたら、もっと寒くなるだろうから、少しは寒さにも慣れていかなければ。蕎麦屋に着いたら看板を出し、幟を立てチェーンポールを降ろす。晴れて青空が気持ちが好いのですが風は冷たい。厨房に入って、まずは冷めたカレーの鍋からカレーをジブロックに分けて入れる。

 蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打てば、昨日と同じ加水率でしっとりとした蕎麦が出来上がる。切りべら26本で135g前後の束が八つ取れた。昨日残った蕎麦と合わせて15食の用意。コロナ禍ではちょっと多すぎるけれど明日の朝に二回打つよりはこの方が好いのです。今日はカレーを作った分、少し時間が押している。金柑大福も包まなければならないからと気持ちが焦るけれど、週末は女将が手伝いに来てくれるので、ちょっと安心しているのでした。

 薬味の葱を刻んで、大根を擦りおろし、生姜を擦ったら、早速、野菜サラダの具材を刻み始めて、出来上がったら金柑大福を四皿包むのです。時計との睨めっこで、湯も沸いていたから暖簾をまず先に出しておきました。隣の調理台では女将が小鉢を盛り付けてくれていた。亭主は白菜のお新香を取りだして、切り分けて盛り付けるのです。全部で11鉢用意したけれど、これは来てくれれば好いという希望の数なのでした。外は快晴なのに歩く人の姿はないのです。

 それでも昼過ぎに、近くから歩いていらっした親父様が一人で、カウンターに座ってぶっかけ蕎麦の温かい汁をご注文。天麩羅を揚げて蕎麦を茹でたら、椀を温めていたお湯で蕎麦を温めてから、熱い汁を掛けて天麩羅を載せる。薬味は大根おろしと生姜と葱で、女将が「お好みでお使い下さい」と言って席に運んでいた。続けて駐車場に車が入って、ご夫婦でいらっしたのにカウンターに座る最近の常連さん。キノコつけ蕎麦が美味しいからと二人で頼まれる。

 1時を過ぎたから今日はこれで終わりかと思っていたら、見覚えのある黒い車が入って、背広姿の隣町の常連さんがいらっしゃる。せいろ蕎麦の大盛りと辛味大根のご注文で、今日初めての冷たい蕎麦。「こんな寒い日に、よほどお蕎麦が好きなのね」とは女将の言葉。わざわざ寄り道をして来て下さるだけでも有り難いのです。亭主はやっとかき揚げを揚げて、ぶっかけで賄い蕎麦を食べるのでした。帰り道、午後2時半の太陽は低く、陽射しも朝より弱かった。



12月25日 日曜日 今日も寒い日なのにお客が …


 午前6時に家を出て蕎麦屋に着いたらまずは暖房を入れる。二つの大釜に水を張って火を点けるのでした。寒さに少し慣れたのか、室温7℃でも耐えられない寒さではない。今週はキノコつけ蕎麦が随分と出たので、蕎麦汁にキノコを加えてまたキノコ汁を作っておく。沸かしてしまうと味が落ちるから、家から持って来た鶏肉を二番出汁で茹でたら、冷凍してあるキノコを入れて鍋を温めるだけ。6時40分を過ぎたらそろそろ日の出だから、外に出て写真を撮る。

 前の畑はうっすらと霜が降りている様子。家に戻って朝食を食べたら、今朝は書斎に入って少し横になる。眠ったのかどうか分からないけれど、じっとしていると寒いから床の中で休むのです。日曜日で朝ドラもないのに、いつもと同じ時間で身体は動くから不思議なのです。洗面と着替えを済ませたら、女将に声を掛けて蕎麦屋に向かいます。手袋を付けなくても今朝は寒くないから、昨日よりは暖かいのかも知れない。陽射しが背中から身体を暖めてくれる。

 蕎麦屋につて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。早朝に暖房を入れたままにしておいたので、蕎麦打ち室も16℃になっていた。昨日の蕎麦が思ったよりも残っていたから、今朝は500g五人分だけ打っておきました。この蕎麦の数の調整は、その日の天候や気温によってお客の数が変わるから、慎重に判断しなければいけない。沢山打ち過ぎると残る蕎麦多くなるので、消化しきれなくなるからです。今日は昨日よりも暖かくなりそうです。

 10時過ぎに蕎麦打ち室を出て、金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで、開店の準備を着々と進める亭主。11時を過ぎた頃に、いきなり玄関の扉が開いて、「こんにちは」と向かいの畑の向こう側に住む常連の小母さんが顔を見せる。11時半に女性四人で来るけれど大丈夫かと言うのです。どうも今日はお客さんらしい。予約は出来ないけれど早くいらっしゃれば大丈夫と応えて、女将には奥のテーブルに箸やおしぼりをセットしてもらうのでした。

 バス通りを若い女性たちが歩いて来るのが見えた。暖簾を出して到着するのを待つ夫婦。遅れて小母さんもやって来て、天せいろを四つご注文なのでした。ところが、小母さんよりも少し早く、いつも来るカレーうどんの小父さんご夫婦がいらっしたから、急に忙しくなるのでした。天麩羅を揚げながらカレーの汁を作り、女将は盆をセットしてキノコ汁を暖める。カレーうどんとキノコ蕎麦のご夫婦は、いつものように金柑大福と串焼きのご注文だから大変。

 全ての注文を出し終える頃に、また車が駐車場に入って、若いご夫婦がカウンターに座るのでした。キノコつけ蕎麦と鴨せいろの大盛りを頼まれるから、厨房の亭主と女将は休む暇もない。テーブル席とカウンターとで金柑大福を頼まれたから、こちらは仲良く分けて頂いてお出しする。野菜サラダもすべて出尽くしたのでした。若い女性たちはさすがに賑やかで、テーブル席のご夫婦は食べ終えたらすぐにお帰りになる。カウンターに蕎麦を出し終えたら1時。

 これで今日は終わりかと思っていたら、休む間もなくまだお客がご来店。食べ終えたテーブルやカウンターの盆や皿は、カウンターの上に下げて女将がテーブルを拭いて回る。久し振りに10人を越えたお客で忙しいけれど嬉しかった。蕎麦は沢山用意したので正解。若い女性の一人客はテーブル席に座って天麩羅が食べたいとぶっかけ蕎麦を頼まれる。一日10㎞は歩いていると冷たい汁でご注文なのでした。と、今週二度目の隣町の常連さんもいらっしゃる。

 時間が遅かったから、最後のお二人が帰ったらもう閉店の時間なのでした。亭主は昼を食べる間もなく、カウンターに並んだ盆や皿を洗い続ける。外の気温は10℃までしか上がらなかったのに、去年に比べても今日は随分お客が入ったのです。それにしてもキノコつけ蕎麦が随分と出て、朝に仕込んだキノコ汁がもう一人分詩か残っていない。皆さん汁まで綺麗に飲み干して帰られるから嬉しい。夜は鴨肉の残りを持ち帰って、久し振り鴨鍋にしてもらった。



12月26日 月曜日 晴れても風の冷たい一日でした …



 今朝も青空が広がる好い天気でした。朝のうちは風もなく、手袋をする寒さではなかったので、毛糸の帽子だけ被って蕎麦に出掛ける。店の中は7℃だったけれど、暖房を入れただけで、大釜に水を張っても火は点けなかったのです。やはり、少しは寒さに慣れてきたのかも知れない。幟を立ててチェーンポールを降ろしたら、玄関脇にメニューの看板を出す。厨房に入って小鉢を盛り付けるのだけれど、今日はあまりお客が来ない予感がする。

 蕎麦打ち室はやっと10℃になっていた。例年の冬は蕎麦打ち室が10℃になったら、蕎麦を打ち始めることにしていたのを思い出す。昨日の蕎麦が4束半だけ生舟に残っていたので、今朝はまた500g五人分だけ打つことにしました。加水率は44%で、いつも通りのしっとりとした生地に仕上がり、包丁切りも綺麗にそろって、五束半の蕎麦が取れました。上手く畳むと最後まで蕎麦が取れるから、昨日の半束と合わせて、今日の賄い蕎麦にしようと決める。

 今朝はゆっくりと眠ったので、朝飯前のひと仕事に来なかった。そのせいで結構仕事があったから忙しい。蕎麦玉を寝かせる間に大根をおろして、蕎麦を打ち終えたらすぐに天麩羅の具材を切り分けておく。野菜サラダの具材を刻んで、金柑大福まで包まなければならないから、時間は相当に押しているのです。それでも、その忙しさが楽しく感じるもの。テーブルをアルコール消毒液で拭いて、ぴったり11時半には暖簾を出せたから、自分でも驚いた。

 急いで開店の準備をしても、風が強くなったからこの寒さではお客は来ない。と、思っていたらバス通りを例の少年が歩いて来るのが見える。「いらっしゃい」と言って亭主は盆と蕎麦皿をセットして、海老の天麩羅を揚げて蕎麦を茹でる。カウンターの席に運んだら、カルピスとお菓子を持って少年のところに持って行くのです。「今日は朝から何も食べていない」と言うから事情を聞けば、お婆さんがまた入院したらしい。いつになく喋ったので好かったかな。

 少年が帰ってしばらくはまた亭主一人。バス通りと店の駐車場がよく見えるカウンターの隅の椅子に座って、時の過ぎるのをじっと待っている。いつもの時間になって勢いよく駐車場に入ってくる車は、昨日来たばかりの隣町の常連さん。「今日は鍋焼きうどんを食べる」と昨日言ったからやって来たのだとか。そうでもなければこの寒さの中を何処にも出ないで家に居るのだ言う。寒くてゴルフもしたくないし、テレビを観ながら蜜柑ばかり食べているらしい。

 昔で言う「高等遊民」を地で行くような人だから、面白いテレビ番組がないとこぼしていた。帰りがけに「良いお年を」と亭主が言えば、「まだ今年はあと二回ほど来ますよ」と言うのでした。今年の営業日はあと三日なのに、大晦日はとろろ蕎麦と決めているらしいのです。後のお客が続きそうにないから、亭主も賄い蕎麦を茹でて山葵とおろしを添えて美味しく食べる。あちこちで蕎麦を食べているらしい彼の言うように、やはり亭の蕎麦は美味しい。