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2022年6月上旬

6月7日 火曜日 梅雨の始まりは …

 今朝も朝からしとしとと雨が降っていました。夕べは風呂から上がって、居間の部屋で焼酎を飲んでいたら、何時の間にか眠ってしまったらしく、目が覚めたらもう真夜中だった。明日は休みだからともう一度布団に入って寝直したのです。最近の習慣で4時過ぎには目が覚めて、珈琲を入れて今日は朝飯前に何をするのだったかと考える。雨も霧雨に変わっていたから、以前剪定したモミジの枝を袋詰めしようと家を出た。今日は業者のゴミ回収の日なのです。

 蕎麦屋の西側のスペースに積み重ねておいたモミジの枝は、長すぎるものはノコギリで切り、細い枝は剪定ばさみで切って、90㍑のビニール袋に入れていくのです。約30分軒下で作業をして、まだ少し残っていたけれど、一回に袋一杯分で終わりにしようと決めている。小径に木槿やタラの木の枝が伸びているし、まだまだやることは沢山あるのでした。店の中に入って、洗濯物を畳んだり、洗濯機の中の洗い物を干したりしているうちに6時半を過ぎた。

 家に戻って女将が台所に入る前に、亭主は中華鍋で昨日蕎麦屋から持ち帰った茄子とピーマンとインゲンを炒めて、味醂に味噌と醤油と砂糖を溶いてからめれば、味噌炒めの完成。女将が現れて他のおかずを用意したら朝食の時間なのでした。亭主は食べる前からもう眠たくなっている。食事を終えて書斎で横になれば、すーっと眠りに入って、30分ほど眠ったのか、女将が朝ドラを見終えて洗濯物を干していた。お袋様に電話をして今日の仕入れに出掛ける。

 農産物直売所に行けば、トマトがやたらと沢山出ている、いつもトマトを買う農家の親父様が野菜を運んで来て「暖房を使わなくても出来る季節になったからあちこちで出しているんだよ」と教えてくれた。キャベツも立派なのでもらって帰る。隣町のスーパーは雨が上がったからか珍しく混んでいた。小さな新レンコンが出ていたが、まだ値段が高すぎるので、天麩羅の具材には茨城産のインゲンを買っておく。女将に頼まれた魚や肉を買って帰る。

 お袋様を家まで送り、蕎麦屋に帰って沢山の野菜類を冷蔵庫に収納したらひと休み。煙草を持って出るのを忘れたと思っていたら、胸のポケットに入っていたから世話はない。ついこの間までは暑かったから、胸にポケットのない半袖のシャツを着ていたのでした。11時前には家に戻ってパソコンに今日の仕入れのデータを入力すれば、やっと女将が買い物から戻って来た。今日は駅前の100均の店まで足を伸ばしたのだとか。小さなグラタン皿を見せてくれた。

 昼飯には昨日打って残った蕎麦を茹で、辛味大根と山芋をおろして、タンパク質が足りないと女将が厚揚げを買ってきたから、焼いて蕎麦汁を掛けて食卓は俄に豪華になった。午後は女将は稽古場で今月提出の作品を書き、亭主は女将のスポーツクラブの予約をしようとパソコンの前で時計を睨んでいる。一番好い席が取れてホットしたところで、蕎麦屋に出掛けて木曜日から使う出汁を取る。4時過ぎに家に戻って、そろそろ夕食モードなのでした。

 亭主は冷凍の茶豆を流水解凍して、蕎麦屋で残った蕎麦豆腐を皿に入れただけ。今日のメインは昔懐かしいジャガイモのグラタン。二人ともあまり食べられなくなったから、100均の小さなグラタン皿でもおなかが一杯になった。女将もご飯は食べられないと笑ったのです。風呂の時間までこのブログを書いて、風呂に入れば何故か「あの素晴らしい愛をもう一度」の曲が思い出される。懐かしむだけでも好いから、またギターを弾いてみようかと思ったのです。

6月8日 水曜日 雨がひと休みの定休日二日目は …

 夕べは10時半に床に就いて今朝は5時前に起床。最近、近所のコンビニに亭主が愛飲している黒伊佐錦を置いていないので、昨日は店でビールなどをケースで買っている酒屋で一升瓶を買ってきた。割安なのですが、先週も5日間で一升を飲んでしまったから、沢山あると飲む量が増えるのかも知れない。その分、酔ってバタンと眠るのだけれど、身体に好いのか悪いのか。アルコール度数は25度だから、ちょっと飲み過ぎなのかも知れない。

 足の親指は痛くなかったけれど、今朝は6時に車で家を出て、まずは昨日使った鍋やボールの洗い物を片付ける。そして、ほうじ茶を沸かして何から始めようかとひと休み。夜にバタンと倒れ込んで眠るから、以前のように、次の日の朝飯前のひと仕事のことを考える余裕がないのです。頭の中が空っぽになっているから、神経が休まるのか、ぐっすりと眠れるから好いと思うのだけれど、女将に言わせると飲んで寝るのは睡眠が浅くなるのだとか。

 切り干し大根を水で戻して、ニンジン、油揚げ、干し椎茸をもどしたものを刻んで、いつものように胡麻油で炒めていく。出し汁を入れて煮込み、先週は後半に味が染みて濃くなったから、今朝は出汁醤油を少なめにして砂糖を入れる。ここで初めて、昨日の仕入れで砂糖を買うのを忘れたことに気が付く。もう一度煮物をするならちょっと足りないかも知れない。今日は夕刻に天麩羅油と海老などの食材が届くので、予算が余れば買いに出掛けようか。

 家に戻って朝食の時間。納豆とお新香、茄子とピーマンの味噌炒めはシンプルで好かったけれど、ズッキーニの切り方がちょっと雑なのでがっかりする亭主。ズッキーニを輪切りして使うやり方は、何処かのレシピサイトに載っている品のない料理と思えるのです。料理は見て楽しみ、食べて楽しむものだから、家庭でも普段から気にはしているのです。食後にひと眠りしに書斎に入り、例によって小一時間眠ったら、伸びた髭を剃り、着替えて蕎麦屋に出掛ける。

 隣のお花畑のポピーも、気温が低いから花を閉じていました。厨房に入って、まずは蕎麦豆腐を仕込み終えたところで、玄関の扉を叩いて隣の奥さんがやって来た。先日、仕事から帰った彼女とたまたま顔を合わせ、全部売れ残った野菜サラダとデザートを食べませんかと尋ねたら、喜んでもらってくれたので、お皿のまま煮物などと盆に載せて上げたのを、ご丁寧にお茶とお菓子を持って、洗って返しに来たのでした。かえって悪いことをしたかなと思う亭主。

 息子と同じ歳だけれど、なかなかよく気の利く女性なのでした。定休日に黙々と一人で仕込みをしていると、つい、人恋しくなるものだから、少しおしゃべりをして、余り気味の出汁と出汁醤油を持たせる。天麩羅の具材を切り分けたら、後は夕刻に来たときにぬか漬けを漬けるだけ。11時前に家に戻って、蕎麦もあったのだけれど少し寒かったので、あんかけラーメンを作って女将と二人で食べるのでした。そして、例によってスポーツクラブの予約です。

 無事に一番好い席が取れて、テレビでニュースを見ながらひと休みする。ここで午後の昼寝かと思ったのだけれど、昨日から気になっていた「あの素晴らしい愛をもう一度」の歌詞を印刷して、ギターのコードを振ったら、埃まみれのギターを取り出して、歌ってみたのです。自分の歌声を何年振りかで聴いた。爪弾く指も上手く動かないし、転調後のコード進行も老いた自分にはまだ難しい。でもこれなら当分は暇をつぶせそう。お蔭で眠気が覚めたのです。

 若い頃は眠るのが惜しいほどやりたいことが沢山あったけれど、歳を取ったら、やることが限られて眠ってばかりいる。女将も書の稽古がなかったら、眠気も覚めないと言うから、少しずつ楽しめれば好いと思うようになったのです。固まった指が動くようになればもっと楽しくなるのかも知れない。ピックを置いて、ツーフィンガー、スリーフィンガーで弾いてみる。歌詞を忘れた昔の曲を弾いて懐かしむだけでも好いから、少しは元気になれば好いと思う。

 業者が食材を持ってくる1時間前には蕎麦屋に出掛け、まずは奥の座敷の掃除をしておく。食材の届いた段ボールを潰して紐で括ったら、厨房に戻って、カボチャの煮物をしたり、糠床にお新香を漬けたりしながら、業者からの電話を待つのでした。4時過ぎに珍しく早く電話が入り、あと10分で着きますと言うので、珈琲を入れる準備をしておく。やっと着いたと思ったら、来月から海老と油が値上げになりますと申し訳なさそうに言うのでした。

6月9日 木曜日 朝は霧のような雨が …

 煙るような雨の降る朝なのです。昨日の朝よりも更に気温が低いから、朝からストーブを焚いていた。梅干しを囓ってお茶を一杯飲んだら、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛ける亭主。駐車場の柊南天の葉に、沢山の水滴が…。厨房に入って糠床を出したら、昨日の夕刻に漬けた茄子と胡瓜と蕪とを取り出して、小鉢に盛り付けるのです。水が出てびしょびしょになった糠床には、煎り糠を足して味噌の硬さにまで戻しておく。簡単な漬け物だけれど管理は大切。

 玄関を出て外の水道の前に置いた植木鉢を見れば、実生のモミジが元気に育っている。亭主が針金で枝を曲げようとした方の枝は育ちが悪いのです。球根から芽が出たユリの苗は、強い風で折れてしまったから、もう一度根が出ないかと挿し木をしてある。東のミニ菜園も入り口付近だけは、育ちすぎたベビーリーフを根こそぎ取り除いて、雑草を取ったのだけれど、奥の春菊や絹さやの付近は、まだ掃除をしていない。雨の降らない日に少しずつやるつもり。

 時間が早かったから、書斎に入ってひと眠り出来た。女将が朝食の支度が出来ましたと、起こしに来るまではぐっすりと眠っていたらしい。用意してくれた食卓に着けば、今朝はミツバの卵とじと身欠き鰊を焼いたものがおかずで、蕎麦屋で残った三ツ葉や太い長葱が使われていた。食事を終えた亭主は、洗面と着替えを済ませてもう出掛ける準備が完了。まだ早すぎるから、女将が紅茶を入れて朝ドラを見ている間に、自分で珈琲を入れてひと休みなのです。

 蕎麦屋に出掛けようと玄関を出たら、なんだ雨が降っている。梅雨入り前に新しい傘を買わなければと思っていたけれど、ついつい忘れて買いに行かないものだから、何十年前かのぼろぼろの傘を差して蕎麦屋に向かう。小雨だけれど、傘なしでは行けない。午後の女将のスポーツクラブの予約にと、彼女のスマホを持たされて、とぼとぼと歩いて蕎麦屋に着く。幟を出してチェーンポールを降ろしたら、早速、蕎麦打ち室に入る。室温は18℃なのに、湿度が高い。

 今朝は42%強で蕎麦粉を捏ね始めて、蕎麦玉を寝かせている間に葱切りと大根、生姜をおろして、また蕎麦打ち室に入る。生地の硬さはちょうど好い具合で、伸して畳んで包丁切りに入れば、切りべら26本で130gの束を8.5人分取って生舟に並べる。「よーしッ」と今朝も大きな声で気合いを入れて、厨房に戻るのでした。デザートのマスカット大福は、昨日のうちに試作品を作って味見をしてあるので、今日はそのまま使えそう。シャインマスカットは1600円。

 野菜サラダの具材を刻んで、沸いた大釜の湯をお茶と温め用のポット四つに入れたら、11時前には朝の仕込みが終わった。店の掃除を終わらせて、開店の時刻の5分前には暖簾を出す。しばらくして駐車場に車が入って、見ればスリムな出で立ちの女性が、なかなか上手く停められずに、やっと玄関を開けたから、「いらっしゃいませ」と出迎える亭主。ヘルシーランチセットのご注文で、まずは野菜サラダと蕎麦豆腐をお出しするのです。

 話を聞けば、母親の介護でニューヨークから戻って来たとかで、コロナ禍前に母親と二人で霊犀亭に来たことがあるのだそうな。日本に戻って美味しい蕎麦を食べたいと、亭を覚えていてくれたらしいのです。しばらく話をして、ゆっくりとされる。実家は近くだから、今度戻った時にはまた来ますと言って帰られた。その後は、しばらくお客がなかったけれど、バス通りを歩いて来る例の少年が見えたから準備をしておく。と、別のお客の車も駐車場に入る。

 珍しく話をした少年の話では、少年のお婆さんはやっと退院したものの、転んで手と足を骨折して料理が出来ないのだと言う。お婆さんにとマスカット大福を持たせて帰す。隣に座っていたお客の親父様も話を聞いていたらしく「大変だねぇ」と同情するのでした。1時を過ぎたから、ぶっかけ蕎麦にして昼を食べていたら、スポーツクラブのなかった女将がやって来て、片付け物を手伝ってくれるのでした。空は青空が覗いて陽も差してきたのです。 

 お隣との塀際のスモモの木が、ついこの間、剪定したばかりなのにまた枝が伸びているから、今日は切ってやろうと脚立を出して、鋏を入れる亭主。塀の上に登って上の枝を剪定ばさみで切ろうとしたのだけれど、やはり、足の指が痛いからかなかなか登れない。お隣の小母さんも出て来てどうしたのと言う。女将に助けられてやっと登った塀の上で、綺麗に枝を落としたのでした。後はカッシアと南天の木の剪定が残っているだけ。疲れて午後の昼寝をする亭主。

6月10日 金曜日 蒸し暑い一日でした …

 今朝は蕎麦屋での仕事がなかったので、5時過ぎに目覚めて珈琲を一杯飲んだら、自宅の庭の樹木の剪定に取りかかる亭主。昨日、無理な恰好で塀の上に登ったせいで、太腿が筋肉痛で歩くのにも苦労をしたのだけれど、また女将の喜ぶ顔が見たいと剪定鋏を手にして玄関を出る。朝まだ早い時間だから、小さな鋏で庭の植えてある木槿と南天の木を一枝ずつ落としていく。思ったよりも量があったので、後から袋詰めをする女将が大変だろうと心配した。

 最近、定着した一汁山菜の朝食が、とてもバランス好くて量もほどほどだったから、鯖の塩焼きも蕪の葉のお浸しも薄味のぬか漬けのキュウリも、とても美味しく頂きました。女将は食後にもう庭に出て、亭主の切り落とした枝を袋に詰めてくれた。朝ドラの終わる時間までひと眠りして、「行って来ま~す」と家を出れば、途中のお宅に金糸梅が見事に咲いていたので、写真に撮らせてもらった。和名はあるけれど、どこか西洋風な花の美しさなのでした。

 蕎麦屋に着いたら、駐車場の美央柳(ビオウヤナギ)が満開だったので、これも写真に撮っておきました。花の大きさは同じくらいなのですが、やはりその花の形が儚(はかな)いから、心がゆらりと動かされるのです。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。室温22℃で湿度が75%だったから、今朝は水加減が難しい。昨日と同じく42%強の加水で打ち始めたけれど、どうも少し柔らかめなのでした。地伸しも丸出しも難しかった。

 厚味は均等になったはずなのですが、生地が柔らかいとやはり包丁打ちは得てして上手くいかないもの。130g~135gの間で、切りべらも25本だったり27本だったり。何とか包丁を打ち終えて、生舟に蕎麦の束を並べる。昨日の蕎麦の残りと合わせて、10食の蕎麦を用意したのですが、平日ならお客が来ても十分な量です。ただ、お客が来ないと明日の蕎麦打ちがまた困る。蕎麦打ち台を掃除して、厨房に戻る亭主。朝は傘を差してきたけれど外は薄陽も差している。

 マスカット大福を包んで、野菜サラダの具材を刻む。準備を終えたら、大釜の湯が沸いていたから、お湯のポットを四つ満タンにして、天麩羅油に油を入れて、天つゆの鍋を温める。ここで11時。まだ早いから、店の掃除を終わらせて、しばしの休憩。と、思ったら駐車場に車が入ってくるのでした。あまりにも早すぎて、まだ水を足した大釜の湯は沸いていない。暖簾も出していないのに、玄関を開けて「もう好いですか?」と若い男性が入って来た。

 「11時半の開店なのですが、お茶を入れますからお湯が沸くまで座ってお待ち下さい」と亭主が言えば、「まだ20分もある」と、外に出てしまうのでした。杖をついた老人が一緒だったから、外に出て「すぐですから中でお待ちになれば」と言っても聞かない。急いでいるにしては、車の前で迷っている風。老人が「また来させてもらいます」と言うものだから、それ以上は何も言えないのでした。まったく会話に応じないのが亭主には不可思議でならなかった。

 こちらの対応におかしな点はないと思うのでしたが、後味の悪い思いをするのでした。いろいろなお客がいるから、いちいち気にしていたら始まらないけれど、なぜかしばらくは気分が悪いのです。開店の支度が調うまでは、準備中という看板を出しておいた方が好いのかも知れないな。外は陽が差して明るくなったけれど、結局、今日はお客がなかった。暖かくなったのに、不思議なのでした。早く片付けを終えて、女将が帰る前に家に戻るのでした。

 昨日無理な恰好で身体を支えた筋肉痛はあったけれど、疲れていなかったから、脚立を出して、庭の残った金柑とカッシアの木の剪定を始める。女将がスポーツクラブから帰って、切り落とした枝の袋詰めをしてくれた。棘のある金柑の枝に苦労しながら、4時前には作業が終わるのでした。一時、強い雨が降ったけれど、もう青空が覗いていました。すっきりした気分で、夕食にポークステーキが出たので喜ぶ亭主。食休みを終えたら、またギターの練習です。

 もう夜だからと、歌う声もギターを爪弾く音も小さめに。二曲目の歌になぜか「学生街の喫茶店」が頭に浮かんで、歌詞を印刷してギターのコードを書き込むけれど、これがまた難しい。それでも指が少し動くようになって、「Don’t Think Twice」をツーフィンガーで弾いたら、50年前の記憶が蘇るから不思議。でも、歌詞はしどろもどろで、まだまだ楽しめない。楽しむためにも、少しずつ昔の記憶を辿(だと)るのが、元気になる秘訣なのかも知れない。

6月11日 土曜日 24年振りの再会で元気を貰う …

 夕べは10時就寝で今朝は4時半起床。生活習慣とは身体の中のリズムが、その前の日の記憶を呼び覚ますのか。今朝は浅漬けを漬けるだけの仕事しかなかったから、珈琲を入れて飲んだらワールドニュースを見て、6時なったら車で蕎麦屋に出掛けるのでした。陽は昇っているのに雲がかかっていました。昨日、○○さんのお兄さんが、草刈り機で蕎麦屋の前の畑を刈っていたから、綺麗になった。仕事もあるのにやっと田植えも終えて、元気をもらう光景でした。

 昨日はお客もなかったので片付けるものもなく、野菜を出して少し薄めに切り分けたら、浅漬けの素に漬けていく。よくかき混ぜて重しをしたら冷蔵庫に入れて、次ぎに来たときに小鉢に盛り付ければ好い。糠漬けは前の晩に来なければ浸けられないので、足の指が完治していないから、わずか300mでも歩いて来るのは敬遠してしまう。夕刻からは酒を飲んでしまうから、車では来られない。あまり無理をせずに、出来るところからやるようにしているのです。

 7時前に家に戻れば、女将が珍しく早く台所に立っていたので、早起きの亭主も朝食が早めに食べられると喜んで食卓に着く。朝が早いからか、少し動いて帰るともう眠たいのです。メインの魚が焼けるのを待ちきれずに、揃ったおかずだけで朝食を食べ始めるのでした。お蔭で今朝は1時間近くゆっくりと眠ることが出来ました。目が覚めたら頭もすっきり、洗面と着替えを済ませて、「行って来ま~す。今日はよろしくね」と元気に玄関を出るのでした。

 天気が思わしくないから、お客が来なければまた蕎麦が余ってしまうと思ったけれど、今朝も最小限度の蕎麦を打ち、生舟には15食を用意しておく。天候の不順なこの時期の週末は、まるで予測が付かないのです。売りきれにして看板を出すのは簡単だけれど、来る客の気持ちになれば、蕎麦屋なのになんだと言うことになるから、まさに営業は難しい。蕎麦打ちを終えて厨房に戻って、野菜サラダの具材を刻むのです。これも週末だから四皿分の用意をしておく。

 マスカット大福は昨日作ったものだけれど、今日は全部売り切れたのです。開店直後に、常連のいつもカレーうどんの親父様が珍しくお一人でいらっしたので、聞けば奥様は孫の世話なのだとか。暑い日だった前回は、ちょうどなかった辛味大根が今日はありますよと言えば、やはりカレーうどんが食べたいとおっしゃる。すぐに次のお客がいらっして、天せいろのご注文。遠くからご夫婦でラベンダー祭りに来たそうなのですが、蕎麦が美味しいと褒められた。

 例の少年が学校も休みなのに歩いてやって来たから、聞けば手足を骨折したお婆さんは昼を作れないのだと言う。ヘルパーさんは本人の食事しか作らないのだとか。続けて三人連れのご家族がご来店なのですが、息子さんらしいマスク姿の男性が「先生、僕がわかりますか、○○です」と言う。遠い記憶が鮮やかに蘇る。「クラスで文化祭でラーメン屋をやりましたよね」と言われ、600食を売り尽くして、校内の模擬店で一番の売り上げを出したのを思い出す。

 運動部に所属していた彼は、いつも明るく元気で皆に好かれていたのです。一緒にいらっしたお父様も「いつも話には聞いていました」とまだ若くて元気だった頃の亭主の話をする。今は大手の食品メーカーに勤めて中堅の社員なのだと言う。他のお客もいなくなったから、ゆっくりと話をして帰られたのです。途中で母と娘らしきお二人がいらっして、天せいろのご注文。お蕎麦がとても美味しかったと言って帰られたと後で女将から聞くのでした。

 天候の悪い土曜日にしてはまずまずのお客の入りで、コロナ禍の徐々に回復しているという実感がある。気温は高くないけれど、蒸し暑い日だったから、女将も何故か疲れたと言う。亭主が昼寝をして居る間に、買い物に出掛けた女将は、珍しく刺身を買って帰ったらしく、夕食はハマチと本マグロとサーモンの刺身。近くに住む前のスタッフが新じゃがが採れたからと、わざわざ家まで届けてくれたので、夕食はそれだけでもうお腹がいっぱいになるのでした。

6月12日 日曜日 めまぐるしい天気の一日 …

 いつもと同じく4時半に目が覚めていたけれど、雨が降っていたから、無理に蕎麦屋に出掛けなくても好いと思っていた。蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めて、浅漬けを漬ければいいだけだった。昨日の洗い物の片付けも直ぐに終わるからと、今朝はもう一度眠りに入る。次ぎに目が覚めたら、もう7時なのでした。逆に寝過ぎで頭がぼうっとしている。珈琲を一杯飲む暇もなく、朝食の支度が整ったので、食卓に付く亭主。今朝は縞ホッケが焼かれていた。

 時折、小雨が降る空模様でしたが、何とか傘を差さずに蕎麦屋まで大根を辿り着く亭主。途中の休耕地も綺麗に草を刈ってあった。これから耕すのだろうか。落花生の植え付けはもう止めたらしいから、ただ草が伸びないように根から掘り起こすのでしょう。その労力は大変なものだと、常々思っているのです。四十代の若いお兄さんだから、自分の勤め以外に、田んぼもあるのに頑張れるのかも知れない。亡くなった親父様のいた頃は、まだ楽だったのです。

 草を刈った朝の畑には沢山の鳥たちが集まっている。椋鳥は群れて何やら啄(ついば)んでいる。山鳩まで集まっているから大変。低い中空を雛が孵(かえ)ったらしい燕の親子が飛び交っていくのです。雀たちはバス通りの水たまりの中で、羽を広げて遊んでいるようにも見えるけれど、水浴びとしか思えない仕草が可愛らしい。幟を立てて、チェーンポールを降ろしたら、亭主も今朝の仕事を始めるのでした。まずは、野菜をスライスして浅漬けを漬けておく。

 大根と生姜をおろして、薬味の葱切りをしたら、カウンターに乾してある昨日の洗い物を片付け、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。この天候だから、今日は昨日の蕎麦と合わせて12食もあれば十分だろう。昨日よりも室温は低く22℃だったけれど、湿度は75%もあるのです。窓を開ければ涼しい風が入ってくる。加水率は41%強でちょうど好い柔らかさになる。蕎麦玉を寝かせておく間に、厨房に戻ってマスカット大福を包む準備をするのです。

 その間に「お早うございます」と言いながら女将がやって来て、洗濯物を畳み、店の掃除を始めてくれる。大福を包み終えた亭主は蕎麦打ち室に戻り、蕎麦玉を伸して八つに畳んで包丁切り。今日は硬さがちょうど好かったと見えて、トントントンと乾いた包丁の音が響くのでした。これが柔らか過ぎると、包丁の刃に生地がくっついて、なかなか綺麗に切れないのです。切りべら26本で135g。予定通り12食の蕎麦を用意する。ところが雲の間から陽が差してきた。

 野菜サラダの具材を刻んで、新しい油を天麩羅鍋に入れたら、もう午前中の仕込みは完了です。ひと足先に準備を終えた女将は、新聞を読んでいるから気楽なもの。客の出足の遅い日曜日だから、昼になるまではお客が来なかったのです。12時を過ぎると、どうして同じ時間に来るのかと思うほど、あっという間に駐車場が一杯になって、後から入ろうとする車は諦めて帰って行く有様。皆さん、天せいろのご注文なのでした。晴れて来たのが幸いしたのか。

 西の空には青空も覗いていましたが、東の空には黒い雨雲が広がっている。天気予報の通り、午後からは雨が降り出すのでした。それでも最後のお客が帰るまでは、雨が降らずに好かった。1時半になったので、亭主は蕎麦を茹でてぶっかけで食べておきます。天かすとおろしと山葵に葱だけでも、今日打った蕎麦だからとても美味しい。生舟に少し蕎麦の束を残して、今日の営業はお終いです。奥の座敷で休んでいたら、突然の雷。女将が店の窓を閉めていた。

 ザーッと凄い雨の勢いなのです。ドドーンと大きな雷の音。辺りは薄暗くなって、消した店の電気をまた点けて片付けと洗い物をするのでした。野菜サラダと大福はすべて残ったから、サラダはラップのままくるんで家に持ち帰る。亭主が大鍋を洗って、天麩羅鍋の油を濾している間に、女将は洗いかごを拭いて、まな板の消毒をしてくれる。小さな折りたたみ傘しか持って来なかったと言う彼女。亭主は傘も持って来ていないのです。小降りになるまで待つ。

 それでも雨は止みそうになく、小降りの隙を狙って女将は帰ってしまう。仕方がないから置き忘れの傘を借りて、家まで帰る亭主。途中でザーザー降りになって、傘を差していてもびしょ濡れになってしまったのです。いつもは買い物に出掛ける女将も、さすがに今日の天気は判らないからと、家で自治会の仕事をしていた。夕食は残ったサラダを消化しようと、例によって、亭主がお好み焼きを作る。食べ終えて煙草を買いに出れば、雲一つない青空なのでした。

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2022年6月初め

6月1日 水曜日 また暑さが戻って …

 夕べも早く床に就いたはずなのに、今朝は7時まで眠っていた。定休日一日目では、まだ前の週の疲れが取れないのだろうか。やっと目覚めて食堂に行けば、女将はもう朝食の支度をしている。魚を焼く匂いが漂って、ジューッと炒め物をする音が聞こえるのです。今朝は干した大きな鰯の焼き物と茄子とピーマンの味噌炒め。それにぬか漬けが付いて、亭主にはちょうど好い量の朝食なのでした。青魚の日には納豆が出ないのが嬉しいのです。

 朝食を終えてもまだ眠気は覚めていないから、居間の電気を暗くして、寛ぐひととき。洗面と着替えを済ませて自分でコーヒーを入れる。女将は稽古場で今朝の新聞を読んでいるらしい。定休日二日目の今日は、午前中にまず出汁を取って蕎麦汁を仕込み、小鉢のひと品目を仕込まなければならない。そして、11時半には女将のスポーツクラブの予約をしなければいけなかったから、蕎麦屋で1時間半の仕事をこなしてちょうど好い時間なのでした。

 蕎麦屋に出掛ければ、駐車場の美央柳(ビオウヤナギ)がやっと咲き出して、今年も初夏の彩りが増えているのでした。ご近所に咲く金糸梅(キンシバイ)の花は、もう少し早くから咲いているけれど、よく似て見分けるのは難しいかも知れない。よく見ると美小柳の方が雄しべが長いのです。ツツジとサツキの時期が違うように、咲く時期の違いで区別した方が好さそうです。亭主にとっては、白居易の長恨歌に載っているので、とても印象深い花なのです。

 厨房に入って、昨日浸けておいた昆布と干し椎茸の鍋を、火にかけて出汁取りの準備をする。先週の疲れはやっと癒えてきたのか。きびきびと動いて次の支度をするのでした。小一時間を掛けて蕎麦汁まで作ったら、水で十分に冷やして蕎麦徳利に詰めていく。二番出汁は2㍑入りのステンレスの容器二つに入れて、次ぎに水で冷やしておくのです。ここでひと休み。タブレットで明日の天気を調べて、メールをチェックしておく。ついでにニュースも読むのです。

 それから包丁を取り出して、ニンジン、油揚げと冷凍してあった干し椎茸を戻したものを切り分け、切り干し大根を水で戻して、フライパンで炒めたら、出汁を入れて煮込み、出汁醤油と砂糖で味付けをする。少し冷めたらタッパに入れて冷蔵庫で保存。まだ時間があるから、洗濯物を畳んで洗濯機の中の洗濯物を干しておきます。ちょうど11時前に仕事は終わって、家に帰れば、女将はパソコンのスイッチを入れてスタンバイ。蕎麦を茹でる湯も沸かしてある。

 亭主は急いで蕎麦を茹で、昼食は5分で終了。それでもゆっくりと蕎麦湯を味わう暇があったのが幸せ。女将の視線を感じながら、書斎に入ってパソコンに向かえば、まだ予約開始の5分前。煙草を一服している間に1分前になって緊張の一瞬です。11時半ぴったりに画面が変わるから、急いでインストラクターの真ん前の一番好い席をとって予約完了。その前の週は、取れなかったから汚名挽回というところです。聞けば、年寄りはなかなか取れないのだとか。

 午後は女将がスポーツクラブに出掛ける間に、ひと眠りした後で整形外科の医者に行き、足の親指の具合を見てもらう。「一ヶ月分の薬を出しますから」と尿酸を減らす薬を処方され、「腫れている軟骨のすり減った部分は、手術をしないと治りません」と言われたので、当分は靴は履けそうにない。痛風の発作は治まっているようなので、取りあえずは好しとすべきなのでしょう。夕食は沢山の野菜とイクラと大根おろし、赤いかの照り焼きで一献なのでした。

6月2日 木曜日 平日なのに満員御礼、お蕎麦売り切れ …

 今朝の朝飯前のひと仕事は、お新香を糠床から出して、小鉢を盛り付けるだけだったから、6時過ぎに家を出る。駐車場の木々も伸び放題で、また少し剪定をしなければならない。自然の勢いは恐ろしいほどなのです。蕎麦屋の周りの雑草も足の指が治ってからと思っていたけれど、医者に治らないと言われたから、少しずつ手を付けて、痛くなったら痛み止めを飲むしかないのかも知れない。それが医者の考え方のようなのです。健康の大切さを痛感する日々。

 お新香は7鉢、切り干し大根の煮物が4鉢。10鉢もあれば、十分に足りるはずなのでした。予備のお新香や煮物は冷蔵庫にタッパで用意してあるから、万が一、足りないと言うことがあれば、盛り付ければいいのです。蕎麦はそんなに数を打たない予定でしたが、酒を飲む人が来店したりすると、お通しで小鉢を出す事もある。家に戻れば、7時前だというのに、女将がもう台所に立って食事の用意をしてくれていた。今朝は鰺の開きと煮物とシンプルで好い。

 食後は30分ほど横になって休むのですが、少しは眠ったのか眠らなかったのか、女将が朝ドラを見る時間には起き出して、洗面と着替えを済ませる。コーヒーを入れて一服したら、ちょうど朝ドラの終わる時間だから、「行って来ま~す」と玄関を出る亭主。庭のサツキが随分と咲いてきたのです。ご近所の紫陽花も早いところはもう花が咲いて色づいている。今朝も朝から陽の光が随分と暑いのです。蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入る。

 今朝は少し多めに850gの蕎麦を打ち、以前のようにひと束130gになるように包丁を打っていく。これでちょうど10食の束が出来上がり、暖かくなると言うから、お客が沢山来ても安心というもの。蕎麦打ち室の温度は25℃、湿度が60%だったけれど、41%の加水では少し生地が硬かったので、水を足して柔らかめに仕上げるのです。朝から店の前を通る人はいつになく多いのでした。車を停めて看板を見に来た女性には、店置きのパンフレットを渡す。

 葱切りと大根、生姜を早めにおろして、デザートを何にしようかと悩んでいた。今週はさすがにもう苺は出ていなかったのです。抹茶小豆にしようと思っていたが、昨日のうちに小豆は茹でていなかった。漉し餡はあったから、寒天の粉を入れて、水羊羹でも今日の暑さなら大丈夫だろうと、10時を過ぎた時間に豊缶を取り出して、水羊羹の準備を始めたのです。水と氷糖蜜で漉し餡を溶かして、粉寒天を入れて火にかける。開店時間までに固まるかが心配でした。

 野菜サラダの具材を刻み、三皿に盛り付けたら、もう11時になっていました。天麩羅鍋に新しい油を入れ、天つゆの鍋を温めたら、急いで店の掃除を始めます。開店時刻の10分前には暖簾を出すけれど、どうせ直ぐにはお客は来ない。前の通りには結構人通りがあって、何人か目のお二人が蕎麦屋にいらっしゃる。二人揃ってとろろ蕎麦のご注文だったから、直ぐにお出し出来た。ところがそれからが、続々とお客が入ったのです。あっという間に満席状態。

 久し振りに近くの会社の社長さんまでいらっして、「いつものお願い」と言うものだから、お茶を出すのも間に合わない。天せいろばかりを続けて幾つも頼まれるけれど、一度に揚げられるのは二人分まで。注文伝票を書くのも忘れて、蕎麦湯を出したり、亭主一人で大忙しなのでした。ただ今満席の看板を出して、待っているお客に「少々お待ち下さい。」と声を掛けながら、お茶を運んで注文を聞く。天麩羅と蕎麦が出来る時間には火の側を離れられない。

 会計を済ませて帰るお客もいるけれど、盆や皿はそのままで片付ける暇がない。天麩羅の具材も切れてきたので、「お蕎麦は売り切れました」の看板を出して、最後のお客に天せいろを運ぶ。と、車が駐車場に入ってきたから、「蕎麦は打たなければないので、30分待てますか」と言えば、待つとおっしゃるので慌ててテーブル席を片付ける。ちょうど10人を越えた来客なのです。スポーツクラブから帰ったばかりの女将に電話をして来てもらうのでした。

6月3日 金曜日 蒸し暑い日中と夕刻は急激な雨 …

 昨日は久し振りに混んだ平日だったから、疲れたのか夜も9時過ぎには床に就いたのです。早く眠れば早く目覚めるのが当たり前で今朝は4時前には起き出す亭主なのでした。夕べわざわざ蕎麦屋に出掛けて漬けてきたお新香が気になったので、5時前には家を出て車で蕎麦屋に着けば、駐車場の美央柳が一面に咲き出していいるのでした。形のしっかりした金糸梅の花よりは、か弱く見えるところがまた素晴らしい。蕾が一杯あるからまだまだ楽しめそう。

 厨房に入ってお新香と切り干し大根を小鉢に盛り付けたら、空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、冷蔵庫に入れておきます。天麩羅の具材もすっかりなくなっていたので、新しく切り分けて容器に詰めておくのでした。昨日のペースで天麩羅が出れば、今週仕入れた分だけでは到底足りそうにない。昨日の今日だから、それほどお客が続くとは思えないけれど、準備だけはしておかなくてはならないのです。6時半になったので、そろそろ帰る支度をする。

 家に戻れば、ちょうど女将が雨戸を開けているところで「お早うございます」と縁側から声が聞こえた。やっと目覚めのヨーガを終えて、いよいよ朝食の支度に台所に入るのでしょう。ひと仕事を終えて帰った亭主は、「よっこらしょ」と居間の椅子に座ればもう眠たくなってくる。女将が食卓に運ぶ味噌汁の湯気が見えたら、亭主も重い腰を上げて、食堂に向かうのです。今朝はミツバの卵とじと夕べ聞いていたから、あっさりと亭主の好みの朝食なのでした。

 眠たい時は食後のお茶をパスして、速攻で書斎に入る。横になって目を閉じれば今日は直ぐに眠りに落ちたようだ。30分でもすーっと眠ると頭が軽くなる。それでも起き上がるまでに10分はかかるのです。これが若いときとは違う。それでも自身の老いは素直に受け入れて、急に立ち上がってよろけるようなことがあってはいけないのです。洗面と着替えを済ませ、自分でお茶を入れて飲む。女将は朝ドラを見終えて「裏の草取りをしているからね」と玄関を出る。

 女将に続いて玄関を出た亭主はしっかりとマスクをして、伸びた南天の木を見上げるのでした。最近は家の草取りは全部女将の仕事になった。亭主は蕎麦屋の草取りも出来ない状態だけれど、足の親指の痛み止めももらったし、そろそろ活動を開始しても好いのかも知れない。梅雨と夏の暑さが来る前に、少しずつやらなければいけないと、女将にも言われているのです。蕎麦屋に着いて、今朝も蕎麦打ちは850g。少し硬かったから9.5人分しか取れなかった。

 蕎麦打ちを終えたら、大根をおろして、デザートは昨日作った水羊羹が四皿分あるから、野菜サラダの具材を刻み始めるのです。ものにもよるのだろうけれど、今の時期のキャベツは刻むのにひと苦労。太い葉脈の周囲が硬すぎて、切り落としてもまだ硬いから、上手く丸めて刻めないのです。ニンジンは薄くスライスできるので、細く仕上がる。パイナップルも甘くて美味しいので嬉しい。キュウリは新鮮だし、トマトもブロッコリーもアスパラも好い具合。

 開店準備が整って、暖簾を出すけれど、思った通り混んだ翌日は要注意で、1時間待ってもお客は来ない。昨日と違って前の通りを歩いている人もいないから不思議です。やっといらっしたお客が例の少年で、缶コーラを持って飲みながら、カウンターの席に着く。お婆ちゃんが退院したとぼそりと話す。いつもと同じくエビ天を揚げ、蕎麦を茹でて、カルピスとお菓子のバームクーヘンも一緒に出してやった。彼が今日唯一のお客なのでした。

 1時をとうに過ぎたから、亭主も天麩羅を揚げて昼の賄い蕎麦を食べる。アスパラとブロッコリーを揚げたけれど、これは美味しくない。アスパラは茹でない方が好いのかも知れない。外は27℃の暑さで夏の雲。早々に家に帰って、冷たい飲み物が欲しかったので焼酎のオンザロック。書斎に入って横になったら1時間以上ぐっすりと眠った。「早く帰ったみたいだったからお客がなかったのね」と夕食の時に女将が言う。鶏の胸肉の塩麹焼きでご飯を食べた。

6月4日 土曜日 今日も満員御礼、お蕎麦売り切れでした …

 昨日は蕎麦屋が暇だったのに、早く眠っても、今朝はなかなか起きられなかった。朝飯前のひと仕事がなかったから、気も緩んでいたのかも知れない。マイペースの女将は、今日が今週最後の洗濯日和と、朝からシーツを洗ったり忙しそう。朝食は卵焼きと納豆にひじきと切り干し大根の煮物。亭主にとってはお腹に優しい食事なのでした。朝の珈琲を一杯飲んで、居間の椅子に座って朝ドラが終わるのを待つ。湿度が低いのか、ヒンヤリとした陽気なのでした。

 風は涼しく爽やかで、みずき通りを渡るのにも軽やかな足取り。足の親指の痛みも忘れそうなのです。もう通風の発作の痛みではなくて、すり減った軟骨の痛みだけだからあまり気にしないようにしている。それでもまだ、靴を履いて歩くことは躊躇(ためら)われるので、相変わらず雪駄を履いて歩いている。蕎麦屋の駐車場の美央柳が満開状態で、華やかな様子が気持ちを和ませるのでした。幟を立てて、チェーンポールを降ろす。

 平屋作りの蕎麦屋は昨日の温もりがまだ残っているから、窓を開けて涼しい朝の空気を入れてやる。今日は湿度も50%以下だったから、奥の座敷も廊下や洗面所の窓も開け放って湿気を取る。洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物を干しておきます。蕎麦は昨日一つ出ただけなので、生舟には8束の蕎麦が残っていたけれど、爽やかに晴れた今日はきっとお客が入るだろうと、750g八人分を打つことに決める。去年も梅雨時前の週末はかなり混んでいるのです。

 残れば明日の日曜日もお客が入るだろうから、二回蕎麦を打つ手間を省けるというもの。室温は24℃、湿度は45%と、かなり低いので、今朝は42%の加水率で蕎麦粉を捏ね始めた。少し硬いかと思ったが、捏ねているうちに水が馴染んでちょうど好い柔らかさになるのでした。切りべら26本で130gをきちっと守って、八人分の蕎麦を取れば、まだ少し残るので、端切れにはせずに最後まで綺麗に切って、大盛り用の70gほどを取っておく。

 16人分の蕎麦を用意して厨房に戻れば、「今朝は爽やかで気持ちが好いわ」と言いながら、女将がやって来て店の掃除を始めてくれるのでした。亭主は厨房に戻って大根をおろし、野菜サラダの具材を刻み始める。女将はテーブルの醤油の入れ物を集めて、新しい醤油に取り替えるために容器を洗う。前に入っていた醤油は乾燥して濃くなっているから、家に持ち帰って使うのです。ドレッシングのガラス容器も、ゴムの口を洗って中身を補充していた。

 彼女は10時になったら一旦家に戻って早お昼にする。そして11時にまたやって来て、開店の準備にかかるのです。その間に、亭主は野菜サラダを盛り付けて、お茶のポットにお湯を入れる。天麩羅鍋に油を入れ、天つゆの鍋を冷蔵庫から取り出して、天麩羅の具材と天ぷら粉の容器を並べるのです。外は雲もが多かったけれど青空が広がって、風が涼しく過ごしやすい一日になりそうなのでした。開店時刻の5分前に暖簾を出せば、もう最初のお客がご来店です。

 常連のご家族で、ご主人と息子さんはいつも大盛りの天せいろ。座る席も奥のテーブル席と決まっている。続けてもう一つのテーブル席に若いご夫婦が座って、やはり天せいろのご注文でした。カウンターにもご夫婦で座って、奥様がぶっかけ蕎麦でご主人が天せいろを頼まれる。ここまではまだ亭主も女将も余裕があったけれど、12時過ぎだというのに、生舟の蕎麦はもう半分になっている。満席の看板を出して、次々に天麩羅を揚げて、蕎麦を茹でるのでした。

 駐車場は車三台で満杯なのです。最初のご家族が会計を済ませると、女将が急いでテーブル席の盆や皿を片付けて、玄関口の満席の看板を外すのです。洗い物をする間もなく、次のお客がいらっしゃる。「お婆さん、お元気で好かったわ」と女将が挨拶をしているから、見れば常連の農家のご家族なのでした。いつもビールを頼まれるご主人は、今日は午後から仕事があるからと、三人でぶっかけ蕎麦のご注文。この辺りから、調理が間に合わなくなる。

 結局、テーブルとカウンターが二回転して、天麩羅の具材もなくなったから、お蕎麦売り切れの看板を出した。すると、また一台車が入って、蕎麦は残り二つだからと女将に言って案内してもらう。まだ1時前なのでした。待っていただいたお客には「お待たせしました」と少しずつサービスをして、何とか凌いだのです。それにしても、小鉢も蕎麦汁もほとんどなくなって、亭主は夕食後にまた蕎麦屋に行って、出汁を取って蕎麦汁を作る。小鉢は明日の朝 …。

 

6月5日 日曜日 珍しく二日続けてお蕎麦完売 …

 昨晩やり残した仕込みをするために、今朝は3時前から起き出して辺りが明るくなるのを待った。お新香も漬けてあったから早い時間に取り出せる。お湯を沸かしてコーヒーを入れ、時間が許せば蕎麦も一回目を打っても好いなどと考えながら、窓の外を眺めるのでした。この時間ではまだガレージを開ける音が近所迷惑だからと、歩いて家を出たのが4時前で、みずき通りもまだ眠っているのでした。蕎麦屋に着いてもまだ森の辺りは薄暗くて陽は昇らない。

 厨房の明かりを点けて、まずはほうじ茶を沸かして、綠色の陶器のグラスに三杯分と湯飲みに一杯作っておく。湯飲みのお茶は自分が今飲む分で、後は昼の水分補給用に冷蔵庫に入れておくのです。まな板を出して、ニンジンと油揚げ、もどした干し椎茸を刻み、切り干し大根をお湯で戻してそれぞれ胡麻油で炒める。二番出汁でしばらく煮込んだら、出汁醤油と砂糖で味付けをして、火を止めて冷ましておくのです。その間に糠床を出してお新香を切り分ける。

 昨日の洗い物の片付けもあったから、ここまででもう一時間が過ぎる。あまりにも朝が早かったので、ちょっと蕎麦打ちまでは出来そうにない。2日連続で混むことはまずないだろうから、次ぎに来たときに、850g10人分を打てば十分なのではないかと考える。椅子に座れば、なぜか瞼(まぶた)が重くなってくるような気がするのでした。また歩いて家まで帰れるだろうか、以前は、蕎麦屋でも枕を出して昼寝をしたことがあったっけなぁ。

 「ただいま」と玄関を入って居間に入れば、女将が台所で朝食の支度をしている。昨日亭主が「卵焼きが美味しかったから、一番出汁を少し入れて見てはどうだい」と一番出汁を持って帰ったから、女将は少しだけ出汁を入れてみたと言う。立派な出汁巻き卵になっているから感心。食べたことがある人なら、普通の卵焼きとは全く違うのを知っているでしょう。ご飯のおかずにも酒のつまみにも、店で高い値段を出して頼むだけのことはあるのです。

 ご飯を食べ終えて、女将に言われて亭主は、尿酸を作りにくくすると言う薬を飲むのです。足の親指は相変わらず変形した軟骨のおかげで、赤く腫れて強く踏ん張ると痛みもあるけれど、痛み止めは飲まずに慣れなければと思う。蕎麦屋から5時半に家に帰って7時まで眠ったから、食後のひと眠りはなし。朝ドラが終わったら家を出ようと思っていたら、日曜日の朝は朝ドラもないらしい。蕎麦屋へ行く道すがら、紫陽花の色づくお宅が印象的でした。

 駐車場のヤマボウシが今年も元気に花を咲かせていました。白く四枚のガクの部分が開いて、花はその中の小さな塊。去年、隣のモミジと共にばっさりと枝を梳いて、どうなるかと心配だったのですが、無事に今年も育っている。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。850gは量が多いから捏ねるのも大変なので、加水率は42%にして少し柔らかめにして仕上げようと思った。すべて130gなら、10束取れるのだけれど、今朝も9.5人分でした。

 厨房に戻って大根をおろしていたら、前の広い畑の親父様が、大きな籠に一杯野菜を運んで来たから、玄関に出て挨拶をする。食べきれないから近所に配ってるんだよと言って、玉葱やジャガイモやズッキーニに大根などを沢山置いて行ったのです。有り難いことだと女将が来たので家に持って帰ってもらう。畑から採ったばかりのジャガイモや玉葱は少し干した方が長持ちするらしい。野菜サラダの具材を刻み、油や天つゆを用意して開店の準備が整う。

 昨日の今日だから、お客は少ないだろうと思っていたら、昼前から次々とお客がいらっして嬉しい悲鳴。ラベンダー祭りにやって来たと言う人も何人かいた。子供連れのご家族5人が来店して、うどんを二つ頼まれたから、1時には蕎麦が売りきれるはずだったけれど、蕎麦が少し残ったのでした。閉店間際に常連の女将の友だちがいらっして、亭主の食べる分を残して蕎麦はすべて売り切れた。今週は10人を越えた日が3日もあるから、コロナ前に戻ったかな。

6月6日 月曜日 とうとう梅雨入りか …

 今朝の天気予報では一日中雨。気温も随分と下がるらしいから、蕎麦屋のお客も少ないだろうと、ゆっくりと目覚めて朝食の食卓に着く。居間の部屋も19℃しかなかったから、食事の時間までストーブを点けていたのです。温かい味噌汁が嬉しかった。女将の焼く出汁巻き卵は今日も進化して、今朝は一番出汁を卵一個分大さじ二杯を入れてみたのだとか。砂糖と塩で味付けもしたらしく、なかなか美味しいのです。テフロンの卵焼き鍋はなかなか優れている。

 昨日の沢山の洗い物の片付けや、小鉢の盛り付けなど、蕎麦打ち前にお客が来なくても、やっておかなければならない仕事があったので、今朝は8時前に家を出て、蕎麦屋に出掛けるのでした。終日の雨だと言うので、足の親指を庇って車で行く亭主。これだと帰りに店で残った食材も持って帰れるのです。漬け物と切り干し大根の煮物を6鉢だけ盛り付けて、万が一、足らなくなれば盛り足せばいいだろうと考えたのでした。そんなにお客は来ないと思うのです。

 雨が激しく降っているから、幟も出さずにチェーンポールも降ろさず、まずは蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。750g八人分を打てば足りるだろうと、長年の経験で冷たい雨の降る日には、お客が来ても数人だろうと思ったのです。蕎麦打ち室の湿度は75%もあったけれど、室温が21℃と昨日よりもかなり低かったから、今朝は加水率を42%強にして蕎麦粉を捏ね始めたのです。思った通りそれでも少し生地は硬く、時間をかけて馴染ませていくのでした。

 切りべら26本で130~135gを目安にして、ちょうど8束を取ったところで、まだ少し取れそうだったので、65gだけ綺麗に切って終わりにする。750gからは130gにしても9束は取れないのです。だから800gで打つという事を考えた。そして今では850gでなんとか10束取れないかと四苦八苦しているところ。蕎麦粉の量が増えれば、加える水の量と使う打ち粉の量も増えるから、ひと束130g以下であれば、なんとか10食は取れる筈なのですが、そこが難しいのです。

 蕎麦打ちを終えて厨房に戻り、大根をおろして二つの大釜に火を入れる。店内は昨日の温もりが残っているのか22℃だったけれど、外はもっと気温が低いのでした。湿度が高いから何となく蒸すという感じなのです。雨は休みなく降っている。湯野菜サラダの具材を刻み、客は来ないと確信していても、平日は三皿と決めているのです。それでも、昼前にいつも自転車でいらっしゃる常連さんが、今日は車でご来店なのでした。いつもと同じ席に座って天せいろ。

 降り続く外を眺めながら「これは梅雨に入ったんじゃないてすかねぇ」と亭主が言えば、「農家が働く易いように、上手く降ってくれれば好いけれどね」とおっしゃるのでした。昨日、向かいの畑の親父様から頂いたズッキーニを、今日は天麩羅にして開店前に試食済みだったから、サービスでお付けしたら「ズッキーニの天麩羅って美味しいね」とおっしゃる。味は淡泊なのだけれど、油とは相性のいい野菜らしいのです。和風で出すのには工夫が要りそう。

 結局、今日もまたお一人だけのお客なのでした。五日間のうち、お客が10人を越えた日が三日で、一人のお客の日が二日とは、あまりにも差があるのです。市内の感染者数は減っているとは言え、今日も二桁の発表だったから、まだまだコロナ禍から抜け出したとは言い切れないのでしょう。これから梅雨の間中、打つ蕎麦の数を決めるのは難しい。夕食にズッキーニを切り分けて肉と玉葱と炒めてみたけれど、味が淡泊なので塩コショウでは物足りなかった。

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2022年5月末

5月27日 金曜日 あわせて326歳のご来客で …

 今朝もゆっくりと目覚めて、女将の作ってくれた朝食を食べる。昨日よりは涼しい気もするけれど、暖房を入れる程でもなく、朝から雨が降っているのが気が重いのでした。庭の皐が沢山蕾を付けて少しずつ開いてくるのが楽しみな時期。ご近所では手入れが好いからか、一斉に開花しているところもある。芍薬の花が終わって、今度はサツキ。季節は確実に夏に向かっているのです。それにしてもこの雨は梅雨の走りのようでもあるから、今年は梅雨が早いのか。

 傘を差して蕎麦屋まで歩けば、足の指の痛みはそれほどでもなかったので、まずはひと安心。いつもなら、雨の日はお客も少ないから、車で行ってしまうところですが、今日は本家の大伯母を連れて従兄夫婦が蕎麦を食べに来るというので、他のお客のことを考えて歩いたのでした。歩いて来るお客はまずはいないだろうけれど、たまに雨の日でも混む日があるから、それが心配。南風らしく暖かくて、亭主が店に着く頃にはまだ小降りで助かったのです。

 かなり早い時間に店について、まずはコーヒーを一杯入れて飲む亭主。いつもの朝と段取りが変わるわけではないけれど、苺大福と野菜サラダは数を作らなければならない。その前に、やはり最初は蕎麦打ちと、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。室温は25℃。湿度は60%。もうこの時期は加水率は41%では多すぎると、この二三日で実証済みだから、今日は40.5%にして800gを打ったのです。それで何とか綺麗な蕎麦が仕上がった。無理をせずに8.5人分。

 畳んだ蕎麦の生地は、綺麗に仕上がっているときは最後まで上手く切れるのですが、柔らかい時には最後のひと束がすんなりと切れないのです。だから9人分採れるところを、8人分と諦めて138gといつもより多めに束ねたのですが、生地の状態が好かったから、最後まで綺麗に包丁が打てたのは嬉しい。蕎麦打ちを終えて厨房に戻って、葱切り、大根おろしを済ませて、苺大福を包む。野菜サラダの具材を刻んでいる間に、スポーツクラブを休んだ女将が登場。

 一人で営業することに慣れた亭主は準備万端で、店の掃除だけしてもらい、早めに暖簾を出す。ところが、お袋様を拾って来ると言っていた従兄たちが来る前に、降りしきる雨の中をお客がいらっしたから意外なのでした。男性の一人客で「カウンターに座った方が好いかな」とテーブル席を避けてくれたのが有り難かった。ご注文の天せいろを出したところで、奥の座敷で一休みしていた亭主に、「いらっしたわよ」と女将が声を掛ける。

 一年振りぐらいの再会なのだろうか、変わらないのは女将と同じ歳の奥様だけで、デイサービスに通っているという大伯母は身体が小さくなったように見えて、取締役をしていた会社に頼まれて、いまだに仕事をしているという従兄は、ひとまわり身体が大きくなったように見えたのです。「大きくなったねぇ」と昔の亭主の面影ばかりを覚えている大伯母が言う。最近は亭主も、昨日何を食べたかも思い出せないのに、昔のことばかりをよく思い出すのです。

 皆が帰ったのは1時過ぎで、それからお客が来る気配はなかったのです。雨が幸いしたのか、和やかに話が出来て好かったと女将と話しながら、洗い物を片付ける。それにしても老いは等しくやってくるもの。少しでも若いうちに、女将の両親の介護が出来たのは幸せだったか。時代が変わって生活のスタイルも変化した現代では、なかなか老いを受け入れられないのかも知れない。夕食は今日の残ったサラダに鶏の胸肉の塩麹漬けを焼いたものに新じゃがでした。

5月28日 土曜日 晴れて暑くなった昼は …

 今日は朝から晴れて昼の暑さを予感させるのでした。午前6時に朝飯前のひと仕事に出掛けようとすれば、玄関前の南天の木の枝が随分と伸びているのに気が付いた。あまり高くなると隣の金柑の木が日影になって好くないので、年に何度かはばっさりと短く切りそろえるのですが、その成長速度は思ったよりも早い。朝の青空の下で、鬱蒼と茂る木々の綠は、初夏を通り越してもう夏の気配なのです。蕎麦屋に着いて早速、浅漬けと蕎麦汁の補充をする。

 家に戻って朝食の食卓につけば、いつもと変わり映えのしないおかずなのだけれど、とても美味しく頂いた。納豆がでると、どうしてもご飯をもう一杯おかわりをしたくなるのは、幼い頃の記憶が頭にすり込まれているからだろうか。通風で通っている医者も、ご飯が一番いけないと言うから、食べ過ぎないように腹七分で止めておくのです。最近は歳を取って胃が小さくなったのか、直ぐにお腹が苦しくなってしまう。それが健康には好いのでしょう。

 今朝もひと眠りをせずに、女将の朝ドラが終わったところで蕎麦屋に出掛ける。ご近所のサツキがもう満開状態で、ご主人の手入れが好いから、家のサツキと同じ40年前に植えられたものなのに、よく花を咲かせて、今朝の青空に映えるのでした。昼や夕方の陽の光よりも、朝の陽の光を浴びる場所の方が、花はよく咲くような気がする。陽射しはじりじりと真夏のようで、女将は「夏の暑さに慣れておく時期よ」と言うけれど、急に暑くなるとショックなのです。

 蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終えて、今朝漬けておいた浅漬けを小鉢に盛り付ける。野蕗のキンピラと合わせて10鉢ほど用意して、足らなければまた盛れば好いと考えるのでした。今朝は最近にしては珍しく、蕎麦打ちの前に宅配便が届いて、代引きだから現金で支払う。四国は四万十の中村藤娘の純米吟醸生300mlが20本。とても美味しいお酒なのだけれど、日本酒好きの亭主は、このところ医者の勧めに従って日本酒を断っているのです。

 そして、今朝も蕎麦打ち室に入って8人分の蕎麦を打つ。加水率を40%強にしたら、気温は25℃、湿度は50%だったのに、いつになく硬くて、生地を捏ねるのに力が要るのでした。汗が滴り落ちてくるほどだったから、エアコンを入れて換気のために窓を少しだけ開けておく。切りべら26本で138g だから、昨日と同じ太さのはずです。昨日の残りの蕎麦と合わせて15食を用意しました。天気が好くて暑くなると言う予報だったから、お客が沢山来ると好い。

 厨房に戻って葱切り大根おろしを済ませたら、野菜サラダの具材を刻む。巻いたレタスがなくなったので、顔馴染みの農家から買ったリーフレタスを使い始めたら、随分と分量がある。早お昼から戻った女将が現れて、亭主はやっと奥の座敷でひと休み。暖簾を出して間もなく、年配のご夫婦がご来店で天せいろのご注文だった。料理を出し終えた頃に、小さな男の子を連れた若いご夫婦が玄関を開けて、奥様が「覚えていますか?」とカウンターの亭主を見る。

 ご主人は背の高い黒人の男性だった。流暢な日本語で「四年前に新婚旅行で石垣島へダイビングに行ったときに一緒だった」のだと言う。海メロのお客だから、三度の食事も一緒のはずなのです。東京から車を走らせて、佐倉城址を見に来たからと亭主の蕎麦屋を捜したらしい。有り難い話です。ちょうど近くでラベンダー祭りが始まっているから、話をしたら行ってみると言う。ゆっくりと食事をして車に乗り込んだ彼等を、玄関の外に出て女将と見送った。

 今日は店も2回転、10人を越えるお客で久し振りに賑わった。やはり天気が好くて暑くなったからでしょう。客が入れば、仕込んだ蕎麦汁も小鉢もなくなるから、ひと眠りした亭主は夕飯前に再び蕎麦屋に出掛け、切り干し大根の煮物を作り、出汁を取って蕎麦汁を作って、鍋のまま冷蔵庫に入れてくる。家では女将が残った野菜サラダを取り出して、亭主が夕食のお好み焼きを作るのを待っていたのです。早朝から実に忙しく、楽しい一日なのでした。

5月29日 日曜日 昨日よりも暑い日中は …

 昨夜も疲れて9時過ぎには床に就いたから、今朝も4時には目が覚めてしまった。ガレージのシャッターを開けて音を立てるのも気が引けるので、4時半になったら歩いて蕎麦屋出掛ける亭主。足の親指の痛みは気にならなかった。みずき通りを渡れば、通る車はライトを点けているけれど、すっかりもう明るくなっているのです。厨房に入って蕎麦汁を蕎麦徳利に詰め、小鉢の野菜類を盛り付けるだけの仕事だったから、1時間もかからずに店を出るのでした。

 午前5時半。向かいの森の影から太陽が姿を現した。今日は30℃を越える暑さになると言うだけあって、朝から陽の光が暑く感じるのです。世間では日曜日の朝だから誰も歩いていない。犬の散歩にもまだ早すぎるのでしょう。静かに家の玄関を開けて、居間でお茶を一杯入れて飲んだら、また布団の中に入って眠る亭主。ぐっすりと1時間以上眠って目覚めれば、女将が台所に立って朝食の支度をしている。魚を焼く好い香りが漂ってくるのです。

 亭主が蕎麦屋に行くのも帰って来たのも気が付かないほど、よく眠れたと女将が言う。久し振りに来客の多かった昨日の店の混みようで疲れたのだろう。亭主は昨日よりも暖かくなると言う、今日の日曜日がどうなるかと心配している。一人での営業ではないから、10人を越えてもたいしたことはないけれど、やはり、同じ時間帯に集中すると辛い。欲張らずに打つ蕎麦の数を決めておけば好い。一抹の不安を抱きつつも、ワクワクと緊張するのです。

 今朝は魚と納豆の他にも、先日残ったカレーが出たので、もう一杯ご飯を食べたかったけれど、そこはグッと我慢するのでした。朝ドラがないから、女将も朝から洗濯に忙しい。いつもより早く家を出て、また蕎麦屋まで歩くのです。ご近所のラベンダーが花を咲かせて、通りを歩くと仄(ほの)かに花の香りが流れてくるから嬉しい。朝から暑い陽の光に、紫色の花が涼しく感じられるのでした。お花好きのご近所のお蔭で歩く人の心が和むのですね。

 今朝渡ったばかりのみずき通りも、すっかりと夏の装いで、若葉が何時の間にか綠色濃くなっている。雛が孵(かえ)った燕たちが餌をくわえて忙しなく巣を行き来しているのです。何処の世界でも子供を育てるのは大変らしい。蕎麦屋に着くまでに何軒か、燕が軒下に巣を作っているお宅がある。外から見える場所にある巣では、生まれたばかりの子燕の頭が見えるからびっくり。蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、亭主は下着一枚になって蕎麦打ち室に入る。

 室温は26℃、湿度は55%と確かに昨日よりも暑い。加水率を40%強にして蕎麦粉を捏ね始めたら、やはりちょっと硬かったから、今朝は手を水で濡らして水分を調節する。切りべら26本で138gの蕎麦の束を生舟に並べながら、今日は14食の蕎麦で打ち止めにする。果たしてそれが何時になるのかは誰も判らないのです。12時半前に蕎麦がなくなれば、追い打ちを掛けると決めてはいるけれど、たまたまその時にいらっしたりするお客が、待ってくれるかどうか。

 女将が暖簾を出すと同時に常連のご夫婦がいらっして、いつもはカレーうどんのご主人も、さすがに今日は暑いらしく、お二人でヘルシーランチセットを頼まれる。女将がサラダと蕎麦豆腐を出している間に、亭主は盆と蕎麦皿をセットして、蕎麦を出すころには、もう次の常連客がご家族でご来店なのでした。こちらもいつもと同じくおろし蕎麦の普通と大盛り、そして奥様はぶっかけ蕎麦のご注文。全部出し終える前にカウンターにもお客が座ってとろろ蕎麦。

 駐車場はもう一杯だから、少しは時間が稼げるかと思ったら、最初のお客がお帰りになると直ぐに、次のお客が来るという状況。昼を過ぎる頃にはもう二回転目に入るのでした。明らかに昨日よりもペースが速い。いろいろな注文が入って、会計をするお客もいるから女将もてんてこ舞い。亭主は休む暇もなく、天麩羅を揚げたり、とろろ芋の皮を剥いてをおろしたり、楽しく調理をするのでした。忙しいときに入る電話は「空いていますか?」「蕎麦は四つと言っていますけれど」と女将が応える。12時半を過ぎた頃に、若い男性客がお二人でいらっして、生舟の蕎麦がなくなるのでした。

5月30日 月曜日 やっと5月の営業を終えて …

 昨夜は11時過ぎまで起きていたはずなのに、今朝は4時過ぎにはもう目が覚めてしまいました。まだ、布団の恋しい気分だったけど、店の混んだ翌日は、蕎麦汁も小鉢もなくなっているから、新しく補充しておかなくてはならない。そう自分に言い聞かせて、お湯を沸かしてコーヒーを入れる。足の親指の痛みがなくなったら、プール練習にも復帰して、少しは体力を付けなければいけないと思いながら、6時前に車を出して蕎麦屋に出掛けるのでした。 

 厨房に入って、まずは昨日の沢山の洗い物を片付けるのです。最近は新型コロナの感染者数もだいぶ減っているから、コロナ禍以前の生活が戻れば、今よりも更に忙しくなるのは必定。その準備期間として、10人を越えるお客にも、余裕で対応できなければ未来はないのです。キュウリやカブやナス、ニンジンを切り分け、浅漬けを漬けたら、作ってある蕎麦汁を徳利に詰めて、洗濯物を畳み、新しい洗濯物を干しておく。家に戻る前に煙草を買いにコンビニへ。

 早朝の大通りはまだ車の数も少なかった。今週末はだいぶお客も入って、女将にも苦労を掛けたからと、昨日は夕食に魚屋で作る特選寿司を買いに亭主が駅前まで車で行ったのですが、この通りを走る車の数が凄かったのです。街に活気が戻ったとでも言うのか、少しずつコロナ禍を抜け出しているような錯覚に陥る。油断は禁物というのが女将と亭主の考えだから、蕎麦屋も今でも消毒や人数制限をして営業しているのです。大通りにも閉めたままの店もある。

 家に戻れば、今朝は普段から亭主の望む理想的な朝食だったので嬉しかった。「一汁一菜」とは昔の話で、今ではご飯以外に、タンパク質と野菜が必須の食材。きのこ類や海草、そしてクエン酸の取れる梅干し。女将に言わせると、発酵食品の納豆が加わるのが好いらしいけれど、身体に良いからと全部は食べられない。青魚のある日には納豆がなくても好いような気がするのです。食後にひと眠りして、今朝も元気に朝ドラが終わったら蕎麦屋に出掛ける亭主。

 幟と看板を出して、大釜に水を張ったら、早朝に浸けておいたお新香を取り出して小鉢に盛り付ける。切り干し大根の煮物もあるから、10鉢もあれば十分に足りるはず。浅漬けの素も便利だけれど、糠味噌に漬けるのより早く漬けすぎると塩味がきつくなるのです。そして、今朝の蕎麦打ち。このところの暑さで、ちょっと適正な加水率を見失っていたけれど、今日は41%強の水で750g八人分の蕎麦を打つ。絶妙な水加減で、しっとりとした蕎麦が仕上がる。

 何がどのように加水率に影響するのかは、何年蕎麦を打っていても、未だに謎のまま。毎日データを残してはいるものの、温度と湿度だけではないというのが正直なところなのです。蕎麦打ちを終えて厨房に戻れば、いつもと同じく大根おろしに葱切り。今朝は最終の営業日である月曜日だからと、デザートの苺大福は昨日の残り二皿だけにする。野菜サラダの具材を刻み、平日だからと三皿だけ用意するのでした。10分前には暖簾を出して今日のお客を待つ。

 外は昨日よりは少し涼しい風が吹いていたけれど、店の中はエアコンを入れなければ暑い状態でした。隣のお花畑では初夏の花々が咲き乱れ、お爺さんの息子さんはまた新しく何か種を植えた様子。昼を過ぎた頃に、隣町の常連さんがいらっして「何か旬の物はないの?」と言うから、「インゲン、アスパラ、メゴチにキス」と店にある食材を言えば、「天麩羅にしてくれる?」と最近は旬の物狙いなのです。朝届いた辛味大根もおろしてお出しする。

 彼の高校時代の話を聞いているうちに、歩いていらしたらしい男性客がテーブル席に座って、おろし蕎麦とノンアルコールビールのご注文。続けて、賑やかな女性三人がご来店で、もう一つのテーブルに座るのでした。彼女たちの出で立ちを見てカウンターの常連さんが、「何か運動をしてきたみたいね」と言えば、卓球をやって来たのだと言う。女性達が連れ立って、蕎麦屋に来るのも久し振りなのでした。月初めにいらっして店が混んで入れなかったのだとか。

 結局、閉店間際までワイワイ大きな声で話をしているから、亭主はたまたまスポーツクラブのない女将に、電話をして助けに来てもらうのでした。人数は少なかったのですが、ずっと話の相手をするのも疲れるのです。お客が帰ってやっと亭主は遅い昼飯にありつくのでした。残った天麩羅の具材を揚げて、残ったおろしと葱を全部載せたら、立派なぶっかけ蕎麦になりました。コロナ禍の回復の兆しは嬉しいけれど、大人数に対応する体力を回復しなければ。

5月31日 火曜日 午前中は雨で …

 明け方の激しい雨音で目が覚めた定休日。蕎麦屋に出掛けてもあまり急ぐ仕事はなかったから、ゆっくりと床の中で目が覚めるのを待つのでした。今朝は炊いたご飯を酢飯にして、豚汁に切り干し大根の煮物をおかずに、いくら丼を食べた。豊洲の市場から送られた高級イクラは、またしても亭主が仕入れのネット注文で間違えて買ってしまったもの。辛味大根を頼むつもりが、セットになって買わされたのです。詐欺ではないけれど、やり方がどうも狡い。

 北海道育ちの親父に育てられて、自分の家の敷地に流れる川で、毎年獲れた鮭からイクラをとったのだという話を、子どもの頃から聞いて育ったから、決して嫌いではなかった。ただ、200gで4800円という金額に驚いて、とても美味しいけれど、今の自分には不釣り合いだと感じたのです。ひと休みしてお袋様に電話をして、毎週恒例の仕入れに出掛けました。雨のせいか、農産物直売所には、農家がまだ野菜を運んで来ていなかったのでした。

 幸い、顔見知りの農家のご主人が野菜を運んで来ていたので、新じゃがやインゲンをもらって、隣町のスーパーに向かうのでした。雨だったのに、今朝はお客が多く、駐車場も入り口近くは空いていなかった。それでも印刷した買い物リストの食材はすべて揃って、無事にお袋様を家まで送り、蕎麦屋に戻る。食材を冷蔵庫に収納して、昨日の洗い物を片付け、洗濯物を畳んでから洗濯機の中の洗い物を干したら、今日はもう11時過ぎなのでした。

 気温が朝から低くて、昼もまだ涼しいくらいだったから、今日は随分と久し振りにラーメンを買って帰ったので、昼は昔ながらのラーメンを女将と二人で食べたのです。東京の下町で育った亭主と違って、女将は曲がりなりにも山の手育ちだから、子供の頃にラーメンは食べていない。「たまにはお父さんの好きな物で好いわよ」と素朴なラーメンを二人で食べる。昔はチャーシューも自分で作っていたものですが、今はできあいのものを買って我慢している。

 昼食の後も書斎で少し横になるけれど、疲れていないからか眠くならないので、稽古場で仕事をする女将に声を掛けて蕎麦粉の支払いに郵便局まで出掛ける。雨も上がって鮮やかな中央通りの並木の緑を突き抜けて、お袋様の家まで大伯母の来た先日の写真を届けるのでした。蕎麦屋に戻って午後の仕込みをしようと思ったけれど、どうもやる気が起きない。コーヒーを入れて飲むけれど、先週の疲れが取れていないようで、すっかり休日気分なのでした。

 仕方がないから、レンジ周りの掃除をして、出汁取りの準備をしたら、家に戻って休憩中の女将と午後のデザートタイム。午前中に買って帰った宇和島ゴールドという果物が瑞々しく、とても美味しくて感動したのです。することがないから蕎麦屋に出掛けるという休日は最悪のような気もするけれど、家にいても面白いテレビもないから、せめて明日のためにと思って行動をしているから、救われているようなものです。平たく言えば、隠居だから暇なのですね。

 夕方も眠くないので何回も見ているテレビの映画番組を見て、ブログを書き始める。4時半になったから、居間に行けば台所に電気が点いていると思ったら、女将が亭主が午前中に買って帰った新じゃがを茹でてくれていた。ルクルーゼの鍋でも30分はかかるから、その間に亭主はイクラと一緒に買わされた一夜干しの烏賊の塩辛を小鉢に盛って、店に入った日本酒の味見と、ちびりちびりと飲んでいる。赤魚を焼いて蕪の葉を茹でた小鉢と新じゃがが揃って夕食。

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2022年5月下旬

5月20日 金曜日 午後から晴れて蒸し暑く …

 今朝も5時半にはもう目が覚めていたけれど、あまり仕事がなかったから、朝飯前のひと仕事には出掛けずに、家でゆっくりとしていたのです。薄曇りだったが、陽が出て風もなく、なんだか朝から蒸し暑い陽気なのでした。家の中の方がかえって涼しいくらいで、朝食を済ませたら汗をかいてしまった。半袖で出掛けても好いくらいだったけれど、薄手のポロシャツを腕まくりして、おまけにベストまで着て家を出る亭主。まったく暑いのか涼しいのか判らない。

 蕎麦屋の中は室温22℃とやはり暑かった。蕎麦打ち室は狭い部屋を閉め切っていたから、23℃と蒸している。湿度は53%だったけれど、今朝は41%の加水で水回しを始めました。先日は22%で少し柔らかかったので、この時期はもう41%と決めていたのです。するとどうでしょう、しっとりと水を含んだ蕎麦粉が綺麗に纏まってくれる。少し硬くなるかと思ったらとんでもないのです。この理由を説明するのは難しい。やはり、部屋の温度や湿度だけではなさそう。

 菊練りにして蕎麦玉を作ったら、少し寝かせて、その間に大釜に水を張り、カウンターに干してある昨日の洗い物を片付け、今日の分のほうじ茶を沸かして入れる。両の掌で生地を回しながら地伸しを始めれば、これが柔らかすぎずに実に滑らかに円形に広がってくれる。伸し棒で丸出しを始めれば、綺麗に正円になるのでした。こういう時は、厚味にもムラが出来ていないのです。厚味にムラがあるとどうしてもいびつな形になって、修正するのに手間がかかる。

 四つ出しも順調で、本伸しでぴったり80cmの幅で奥行き90cmの生地が出来上がるのでした。打ち粉を振りながら、これを八つに畳んで、包丁を打てば、切りべら26本で135gの蕎麦の束が仕上がる。これを八回繰り返し、昨日の蕎麦の残りと合わせて10人分の蕎麦が用意できた。今日の蕎麦打ちは、最初の加水の段階で成功したのが最後まで上手くいった理由と言えるのです。ゆめゆめ忘れてはいけない加水率の妙なのでした。「よしっ」と打ち台の掃除にかかる。

 厨房に戻って大根と生姜をおろしたら、昨日作った大福があるので、今日はサラダの具材を刻むだけ。今週のブロッコリーとアスパラは、昨日2分ちょっとで茹でたら、残ったサラダを家に持ち帰って食べたところ、少し硬かったので、今朝は3分を越えて茹でてみた。茹ですぎるとブロッコリーが崩れてきてしまうから要注意なのです。研ごう研ごうと思っていた包丁がそのままだったから、ニンジンのジュリエンヌはちょっと雑に仕上がってしまう。

 昨日は天せいろばかりが出たから、卸したおろしたばかりなのにもう油が減っていたので、新しい油を注ぎ足しておく。天つゆも温めて準備が整ったところで暖簾を出して、今日も営業開始です。11時半になったところで、滑るように白い車が駐車場に入ってくる。隣町の常連さんなのでした。カウンター席に座るなり、上に並んでいる野菜サラダをご自分で取って「ドレッシングください」とおっしゃるけれど、まだお茶も箸も出していないのです。

 歩いていらっしたらしい年配のご夫婦が、直後にテーブル席に座って、天せいろのご注文。カウンター席に先に蕎麦を出して、お茶と箸とおしぼりをお持ちする。今日も出だしは快調だけれど、昨日の様に同じ時間帯に混まないかと、一抹の不安が頭をよぎるのでした。今日は女将はスポーツクラブだから、SOSも出しようがないのです。幸いに今日は皆さんお帰りになって、亭主が洗い物を片付けてから、次のお客がいらっしたのです。例の少年がカウンター席に座る。今日は生活の様子など、少しは話をしてくれたかな。

5月21日 土曜日 曇天模様の一日でしたが …

 今朝の朝飯前のひと仕事は、空になった蕎麦徳利に新しい蕎麦汁を補充すること。そして、小鉢の浅漬けを作ってくることでした。小鉢は他に二種類つくってあるのだけれど、天せいろが出るとどうしてもさっぱりとしたお新香を付けるから、お新香が先になくなっていくのです。晴れた日ならばとっくに太陽が昇っている時間なのに、空は曇って暗い朝でした。それでも暖かいから、寒い朝なら花を閉じている隣のお花畑のポピーも、花を開いていたのです。

 家に戻れば女将が台所で食事の準備をしている。昨日、向かいの畑の親父様から水菜をどっさりと頂いたので、早速、昆布とニンジンを入れて浅漬けにしたらしい。シャキシャキとした歯ごたえで、なかなか美味しいのです。ちょっと亭主にはおかずが多すぎるのでしたが、せっかく用意してくれた女将に申し訳ないから、納豆はご飯を食べ終えて最後に喉に流し込む。女将も同じだけの量をたべられるのは、ゆっくりと食べる習慣があるからなのでしょう。

 朝食を終えて今朝はコーヒーを入れてもらって一服したら、書斎に入って10分ほど横になる。ちょっとは眠ったのか、去年まで飼っていたpekoの夢を見ながら、寒い晩はよく一緒に眠ったものだと、懐かしく思い出しているうちに目が覚めて、何処までが夢だったのかと不思議に思うのでした。最近はパッと起き上がらずに、目を開いて手指を動かしてからゆっくりと起き出すのです。歳を取ると、段々と自分の身体の扱い方も変わってくるようなのです。

 髭を剃って洗面と着替えを済ませ、「行って来ま~す」と玄関を出たら、外は雨が降っていた。早朝は暗い空だったけれど、まだ降り出していなかった。今日は一日曇りの予報だったのに。仕方がないから傘を差して、足の指をかばいながら、普段なら歩いて3分で着く蕎麦屋まで、10分近く掛けて行くのでした。幟が濡れるから朝の仕事は後回しにして、厨房に入ってまずは浅漬けを小鉢に盛り付ける。それから蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つのでした。

 室温は24℃もあるから、寒いわけではない。湿度は70%と高いから、今朝も41%弱と昨日よりも少しの加水で、蕎麦を捏ね始めたのだけれど、それでもまだ生地は柔らかめなのでした。こうなると、もう後は自分の蕎麦打ちの腕を信じるほかはない。均等な厚味で伸し広げるのにも慎重に、打ち粉を振りながら、綺麗に八つに畳んで包丁切りまでこぎ着ける。包丁を下ろすのにも集中して、勢いよく一気にトントンと切っていく。切りべら26本で135gの仕上がり。

 厨房に戻って、大根と生姜をおろしたら、薬味の葱を刻んで、苺大福の求肥を作るのに、白玉粉を氷糖蜜と水で溶かしている間に、苺を白餡で包んでひと休み。その間に遅れてやって来る女将は、店の掃除を終えて、洗濯物を畳んでくれる。彼女が早お昼を食べに家に戻る間に、亭主は大福を包んで、野菜サラダの具材まで刻んでおく。この天気ではお客も少なかろうと、今日はサラダは三皿だけ盛り付けておいた。雨は小降りになっているからもう止みそう。

 「最近は、土曜日はお客が少ないのよ」と、毎日来客数を記録している女将が言う。暖簾を出して1時間経ってもお客はなくて、1時を過ぎたからと、亭主もかき揚げを揚げてぶっかけで蕎麦を食べておこうと、一口食べたところで、車が一台駐車場に入ってくるのでした。若い人ではなさそうだったから、奥の部屋に入って亭主は蕎麦を食べ終えるのでした。女将がお茶を出して、亭主が厨房に戻ったところで、やっと注文が入る。見れば常連のご夫婦でした。

 年配のご夫婦で、運転するご主人はいつも辛味大根のおろし蕎麦を頼まれる。この時期は辛味大根はないので、普通のおろし蕎麦にしてもらう。奥様がいつも純米吟醸の生酒を頼まれて、天麩羅蕎麦をご注文。その飲みっぷりがいいから、どんな方なのかといつも気になっている。お客の来ない日には、こうした常連さんが本当に有り難い存在なのです。閉店時刻に合わせるようにして、お二人が帰って洗い物と片付けに入る。雨はすっかり止んでいたのです。

5月22日 日曜日 午後からからりと晴れて夏の陽射し …

 今朝も5時起床。5時半には蕎麦に向かい、まずはコーヒーを一杯入れて飲む。タブレットで昨日書いたブログを読み返しながら、朝飯前のひと仕事をどう始めるかを考えるのです。最近は床に就くとストンと眠りに入ってしまうので、明日は何をどうしようかとシュミレーションすることがあまりない。だから、昨日の記憶を辿って、天麩羅の具材が足りなくなりそうだと気が付いいたので、カボチャやレンコンの下茹でから始めるのでした。

 6時過ぎには仕込みが終わったので、煙草を買いにコンビニまで車を走らせる。今日は晴れるという予報だったけれど、そらはどんよりと曇ったままなのでした。車の通行量がやけに少ないと思ったら、今日は日曜日なのです。蕎麦屋にとってはかき入れ時の週末なのですが、昨日もほとんどお客がなかったので、あまり気にせずに毎日の繰り返しに黙々と耐えているといった感じ。好い時もあれば悪い時もあると、長年の習性で動じなくなっているのかも。

 家に戻ってもまだ朝食までは30分以上も間があるから、亭主は書斎に入ってひと眠りする。このところ、このパターンの朝が多いのです。早すぎる目覚めの朝を過ごす方法は、蕎麦屋でひと仕事をしたら、家に戻ってひと眠り。そうすれば、女将もゆっくりと朝食の支度が出来るというもの。「ご飯が出来ましたよ」と呼ぶ懐かしい女将の声に惹かれて、早朝から空腹だった自分を思い出すのです。食堂に入れば、今朝はちょうど好い分量のおかずで至極満足。

 食後にお茶を入れてもらって飲むのも、新茶の香りが香ばしくて心が和むのです。洗面と着替えを済ませて、今朝も早めに家を出るのでした。寒いかと思って長袖の下着を着たのは好いけれど、湿度が高いのか、早朝よりは気温が上がっているのか、ちょっと失敗したかも知れない。蕎麦屋の隣のお花畑を見たら、いつもは花を閉じているポピーが、朝から花を開いていたから、植物の方が年老いた亭主よりも敏感に陽気に反応していると驚かされるのでした。

 朝の仕事をし終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。室温は24℃もあって、湿度は60%。今朝も加水率を41%弱にして、生地を捏ね始めたらちょうど好い硬さなのでした。生地が滑らかになったところで菊練りをして、ヘソ出しをしたら円錐形を潰して蕎麦玉にする。誰に教わったわけでもないから、案外、いい加減な蕎麦打ちの行程なのかも知れない。ビニール袋に入れて寝かせている間に、厨房に戻って次の作業の準備にかかる。

 天気が悪くても、馬鹿にしてはいけない日曜日だからと、野菜サラダは四皿盛り付けておきます。大根もおろしたし、お茶のポットにもお湯を入れて準備が整う。今朝はあまり仕事がないと、勝手知ったる女将は、10分ほど遅れて早お昼から帰るのでした。少し早めに暖簾を出してお客を待てば、車が一台駐車場に入って、玄関前の看板を見てなかなか入らない。亭主が出てみれば「営業中」の看板が「準備中」になっていたから、お詫びをして中に入って頂く。

 年配のご夫婦で、沢山は食べられないと思ったのか、冷たいぶっかけ蕎麦をご注文。追加でデザートの苺大福を頼まれる。店内に流れるBGMだけが聞こえて、話もせずに食事をなさるお二人。初めてのお客さんなのでした。次ぎにいらっしたご夫婦もご新規さんで、とろろ蕎麦と天せいろのご注文をされる直後に、常連さんがカウンターに座っていつものせいろ蕎麦の大盛り。やはり、日曜日はお客の出足が遅いのです。洗い物を片付けた頃に、またご新規さん。

 外は青空ものぞいて随分と暖かくなった。用意したデザートはすべて売り切れて、野菜サラダだけが三皿残ったのです。亭主もぶっかけで賄い蕎麦を食べて、女将のスポーツクラブの予約の時間を待っていた。今週は、いつもの週末よりもお客は少なかったけれど、こんな週もあると残り物を家に持ち帰る。帰り道、陽射しが強くなっていたので驚く女将と亭主。気候の変化に直ぐについていけなくなったのかと、年齢を感じる二人なのでした。

5月23日 月曜日 午後からは晴れて爽やかな陽気 …

 夕べは何故か9時半には我慢が出来ない程に眠くなって、床に倒れ込むようにして寝入ってしまったのです。後で考えたら、昨日は大相撲の千秋楽だった。早くからテレビで観戦していたので、ゆっくり昼寝をする暇がなかったのでした。今朝は未明に雨の音で目が覚めて、居間の部屋で煙草を吸ったら、もう起床モード。ほうじ茶を入れて飲みながら、有名な画家の半生を描いた映画をしばらく観ていた。5時半になって外が明るくなる頃に、また布団に入る。

 7時に目覚めて食堂に行けば、「昨日はよく眠れたわ」と女将が朝食の支度をしていた。鰺の開きは女将と半分ずつ食べてちょうど好い分量。亭主が納豆を嫌いではないと判って、発酵食品は身体に好いからと、最近はよく出る。水菜の漬け物がシャキシャキとして美味しかった。どうしても、最後に梅干しが欲しくなるのは気候のせいなのか。髭を剃って顔を洗い、着替えをしたらコーヒーを入れて一服。今朝も「行ってきま~す」と蕎麦屋に向かうのです。

 朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。雲の多い朝なのでしたが、昼からは晴れると言う。室温は22℃と昨日よりは低く、湿度も57%でわりと乾いた空気なのでした。加水率は40%強と、昨日の朝よりも水を減らしてみた。すると、これがまたぴったりの塩梅で、捏ねても好し、伸しても好し。四つ出しの形が整うのは、生地が均等に伸されている証拠なのです。八つに畳んで今朝は切りべら27本で135g。500gだとどうしても生地が薄くなる。

 厨房に戻って大根をおろし、薬味の葱を刻んで、苺大福を作る準備をする。まだ10時前だったから、慌てることもないのだけれど、今日は女将がいないから、早めに仕事を終えなければいけない。仕込みが終えてから、店の掃除をする時間が必要なのです。苺が五つ残っていたから、今日は大福も五つ包んでおく。野菜サラダは平日だから、三皿の用意と決めている。これがすべて売り切れるとは、予想していなかった。平日に今日は珍しくお客が入ったのです。

 昼になるにつれて、天気予報通りに青空が広がり、隣のお花畑も綺麗に見える。昼前に、四人連れの会社の同僚らしい一行が、奥のテーブル席に座るのでした。ヘルシーランチセットを四つというご注文でしたが、「平日はサラダが三つしかないんですよ」と言えば唯一の男性が鴨せいろに替えてくれる。野菜サラダをお出しすれば女性たちは「わぁー綺麗!」と大騒ぎ。蕎麦豆腐をお出しすれば、「美味しそう!」とまた声を上げて楽しそうなのです。

 昨日解凍した鴨肉があったから、女性たちが野菜サラダを食べている間に、鴨せいろを先にお造りする。天麩羅を揚げて、蕎麦を茹でている間に、駐車場に車が入って年配のご夫婦がいらっしゃる。取りあえず、お茶をお出しするけれど、6人の調理が重なると亭主も大変。「注文をお願いします」と言われたけれど、「ちょっと待って下さい。今、蕎麦を洗っているので、直ぐに伺います」と言って先のお客に配膳をするのです。これが一人だと辛いところ。

 後からいらっしたお客も、ヘルシーランチセットをご希望だったけれど「ご免なさい。全部売り切れてしまたんですよ」と、天せいろに変更して頂く。注文の品をすべて出し終えたのは、12時半近くなのでした。賑やかな女性たちに、デザートの苺大福をお出しすれば「自家製なのですか?美味しい!」声を揃えて言うものだから、後のご夫婦も、会計の際に持って帰られた。次のお客が来るかも知れないからと、急いでテーブル席の後片付けに入るのです。

 流しに運んでは洗い、洗ってはまた盆を下げて、すべて洗い終わったら、もう1時を過ぎていました。やはり、一人で一度に6人は辛いのです。洗って拭けばしまえる食器は、少しずつ片付くのだけれど、デザートの厚い皿や蕎麦皿と盆はカウンターに干しておく。全部片付け終わらないうちに、駐車場にはまた車が入ってくるのでした。カウンターに座るお客の顔を見て、隣の町の常連さんだと気が付く亭主。「お久しぶりです」とお茶を出して注文を取る。

 最後のお客が帰ったのが、もう、ラストオーダーの時間だったから、暖簾と看板をしまって幟を降ろし、チェーンポールを上げて、やっとひと休みする亭主。天麩羅の具材の残りを揚げて、残った蕎麦と端切れを茹で、大盛りでぶっかけ蕎麦を食べるのでした。ゆっくり食休みをしてから、また洗い物。大釜を洗ったり、天麩羅のトレイを洗ったり、油を固めたり、ゴミ箱のゴミを表に出したり、まな板を消毒したり、洗濯をしたりとかなり疲れるのです。点検を済ませてやっと店を出たのが3時過ぎ。途中で、迎えに来てくれた女将に会って、ほっとするのでした。

5月24日 火曜日 8時過ぎから陽が出て青空が …

 夕べも煙草を一服してからと思ったけれど、急に眠気に襲われて10時半には床に就く亭主。だから今朝も5時にはもう目が覚めて、定休日だというのにコーヒーを飲んで蕎麦屋に出掛けるのでした。朝があまり早いとご近所に迷惑がかかるだろうと、今朝は家から鎌を持参して、道路に生えた雑草を刈り取る作業を始める。周囲の畑の土が飛んで道路脇に溜まると、植物の種がそこで発芽して草が生えるらしい。足の親指を庇いながら、西側の小径まで草取り。

 厨房に入って、昨日の洗い物を片付けたら、出汁取りの準備をして、昨日干した洗濯物を畳むのです。何のことはない、定休日の今日も朝からひたすら昨日の続き。それが良いのか悪いのか、歳を取ったら案外と楽な生活なのです。他に特別したいこともないから、このコロナ禍でも苦もなく持続できる。ワクワクとする気持ちは、燕や雀のような小さな生き物の行動を、毎日、見続けることで満たされているし、花や木々の季節の変化に驚くのも新しい発見。

 7時には家に戻って朝食の食卓につく。蕎麦屋で使い残した旬の絹さやが卵とじで出たのは嬉しかった。鰺の干物は昨日の続き。ご飯物を出さなくなった蕎麦屋から持ち帰った最新式の炊飯器で炊いたご飯も、なかなか美味しいのでした。7時半から9時近くまで書斎で横になってぐっすりと眠る亭主。お袋様に少し遅れると電話をして、出掛けた農産物直売所には、ちょうど顔馴染みの農家のご夫婦が野菜を運んで来ていたから、いろいろと仕入れられました。

 隣町のスーパーに行っても、開店時刻に入ったお客が買い物を終えた直後と見えて、駐車場も店の入り口の近くが開いていた。お袋様と話して、これからは10分遅く仕入れに出掛けることにしたのです。朝方曇っていた空も、青空が広がって陽射しは段々と強くなってくる。午前中に床屋に行くことは諦めて、先週のカレーを家に持ち帰り、昼は久し振りにカレーライスにしたのです。幾つになっても子どもの頃から食べ付けたカレーは、やはり美味しく感じる。

 食後のひと眠りをしたら、午後一番で床屋に出掛ける。ちょうど前のお客が入っていて、マスターは直ぐに近くの息子さんの理髪店に電話をして、奥様が空いていないかと聞いてくれる。しばらくして奥様がいらっして、見知った顔だから「○○さん、はいどうぞ」と髭を剃ってくれた。「お店ははどうですか?」と聞かれて、ありのままに話をするけど、彼女は話し出すと止まらないから困った。午後の仕込みを考えながら、早々に床屋を出る亭主なのでした。

 朝に出汁取りの準備をしておいたから、まずは出汁を取り、その間に大釜に火を入れて、野蕗のキンピラを作るために、茹でる準備をしておくのでした。カレーの具材を煮込んでとは思っていたけれど、出汁取りに時間がかかるので、やはり野蕗を茹でて終わりなのです。明日に仕事を残しても、あまり時間はかからないという判断なのです。スーパーで家のために仕入れた魚や果物を持って家に戻れば、女将はまだ買い物から戻っていない。

 4時半を過ぎていたから、コンビニで買った肴で焼酎を飲み始める亭主。女将は汗だくになって歩いて帰っきた。車の車外温度計は30℃を差していたのです。夕食の準備が始まり、今日は亭主の買ってきた鰯の梅煮がメインのおかず。ルクルーゼで煮込んで骨まで食べられる柔らかさ。野蕗のキンピラも切り干し大根も蕎麦豆腐も、すべて昨日蕎麦屋から持ち帰った食材なのでした。それなのに、今日は体重が減っていない。昼に食べたカレーライスが原因なのか。

5月25日 水曜日 朝から暑い陽射し一一日 …

 今朝はゆっくり目覚めて休日の気分。一度5時には目が覚めたけれど、たまにはもうひと眠りしようと蕎麦屋へは出掛けなかったのです。朝食を済ませて、女将の朝ドラが終わったところで「行って来ま~す」と玄関を出るのでした。青空に白い雲が浮かび、先月、剪定をした木槿はもう沢山葉を付けている。朝から暑い陽射しが容赦なく照りつけるものだから、半袖のTシャツ一枚で十分でした。今日は昨日にも増して暑くなると言うから大変です。

 蕎麦屋の店内は朝から25℃もある。それでも湿度が低いから、厨房の窓を開けるだけで、エアコンを入れる程でもないのです。コーヒーは目覚めたときに飲んだから、ほうじ茶を入れて陶器のグラスに三杯分。二つはラップをして冷蔵庫に入れておく。椅子に座ってお茶を飲みながら、まずは何から始めようかと考える。蕎麦豆腐の仕込み、返しの仕込み、レンコンと野蕗のキンピラ、カレーの仕込み、天麩羅の具材の仕込み、ぬか漬けの準備 … 。

沢山ありそうだけれど時間はかからない。まずはまな板を出したところで、大鍋に湯を沸かして、鴨南蛮や鴨せいろに添える小松菜を茹でておく。そして、午前中にキンピラとカレーを仕込んでおこうと、野菜を刻んでいく。フライパンに胡麻油を引いてから、ニンジンとレンコンを炒め、最後に昨日皮を剥いて刻んでおいた野蕗を入れる。出汁で煮込んで味つけをしたら、しばらく汁を飛ばす。その間にカレーの具材を刻んで、鶏肉に片栗をまぶして炒めていく。

 十分に火が通ったら新聞紙に開けて、今度は野菜を炒める。隣の火口で出汁を温めて具材を煮込んでいく。灰汁を取りながら、火が通ったところでカレーのルーを入れ、弱火でルーが溶けるまで待つのです。今日は茄子や南瓜や玉葱、人参の具が多いから、もう余計な物は入れない。火を止めて冷めるまで待つ間に洗い物。まだ熱いのだけれど、ジブロックにお玉でカレーを詰めて、ラップでくるんでステンレスの容器に並べていく。ちょうど六食分の分量だった。

 ここまで終えて時計を見れば、まだ10時半前なのでした。女将のスポーツクラブの予約は11時半だから、もう少し時間がある。汚れた布巾類は洗濯機に入れ、乾いた布巾や手ぬぐいをカウンターで畳む。2時間が集中の限界。後の作業は午後に回して、早めに家に戻るのでした。月曜日に持ち帰った先週作ったカレーが、まだ残っていたので、女将と今日の昼もカレーライスと決めていた。昼の支度はほとんどしなくて済むので今日は楽ちんなのでした。 

 ところが昼食を食べ終えて、女将のスポーツクラブの予約を取ろうとしたら、一番最初に画面を開いたのに、アプリの不具合で予約が出来ない状態。長い間、ログインしたままだったのがいけなかったのか、一旦、ログアウトして再びログインしたときには、もうすべて予約が埋まっていたのでした。その間、わずか5秒なのです。「えーっ」と女将は叫ぶけれどもう遅い。最近は会員数が増えているのだそうな。午前中の仕込みを早く切り上げた甲斐がなかった。

 夕刻に業者が食材を届けに来るので、あまり早く蕎麦屋に行っても時間の無駄。昼寝をしようと思ってもなかなか眠れないのです。仕方がないので、テレビで映画を観るけれど、以前に観て面白くなかったものばかり。ブログの写真を取り込んで、途中まで記事を書くけれど、パソコンの画面を見ているとやはり疲れる。書斎の電気の紐が切れたから、修復しようとしたけれど、20年も使っている蛍光灯の代物だから、買い換えた方が早いと家電量販店に行く。 

 蕎麦屋に出掛け、残りの仕込みを終えて、業者の持ってきた食材を受け取ったら、夕食前に書斎の電気を付け替える。最新のLEDだから、スイッチはリモコンで明るさや色調も調整できる。時代遅れの生活をしていた亭主も、やっと便利に暮らせるのでした。夕食は蕎麦屋で残ったみつせ鶏の団子の串焼き。茹でた新じゃがと葱の焼き浸しにキムチが、酒の肴にはちょうど好かった。明日も暑いと言うけれど、今日は半袖半ズボンがちょうど好いのでした。

5月26日 木曜日 晴れのち曇りの天気でも暑い一日 …

 午前5時。蕎麦屋の向かいの森から陽が昇ってくる。昨日のうちにやり残した返しの仕込みが気になって、今朝は早くから蕎麦屋に来ていました。調味料をすべて鍋に入れたら、沸騰させないように注意をしながら、定休日のうちに作っておいた蕎麦汁を、徳利に詰めていく。アルミホイルで蓋をして、冷蔵庫に入れたら、今度は糠床を冷蔵庫から出して、お新香を取り出すのです。漬けてから14時間ほどだから、味はちょうど好い塩梅でした。

 包丁を出してこれを切り分け、小鉢に盛り付けておく。茄子だけがまるまる一つ分残ったので、ラップに包んで家に持ち帰る。温かいご飯のおかずにはとても美味しいのです。ついでに、定休日に作った野蕗と蓮根のキンピラも小鉢に盛り付けて、ラップをかけて冷蔵庫に保存する。今週は取りあえず二種類の小鉢だけ。切り干し大根も用意してはあるのですが、週末に作った方が作りたてを出せると考えたのです。二回目のお新香を漬けるのも週末になる。

 ここまで終えたところで、鍋の返しが冷めてきたので、大甕に移して膝下の戸棚にしまう。時計は6時半をとうに回っていました。家に戻って朝食の支度を待つ亭主。早く家を出た日には、女将もそれを察知してか、早く食事の用意をしてくれるのです。「もう眠くなっちゃうわね」と、まるで幼い子供に言うように、急いでくれるから有り難い。4時起きだとさすがに、ひと仕事を終えて眠くなるのです。朝は青空が広がって好い天気になるかと思ったのです。

 今朝はちょうど1時間近くぐっすりと眠ったから、布団の中に未練はなかった。髭を剃って洗面を済ませ、今日はもう半袖でないとと、箪笥の中から昔DUNK島で買った襟付きのポロシャツを探し出して、蕎麦屋に出掛けるのでした。もう、15年以上も着ているけれど、しっかりとした生地で着心地も好い。晴れた朝の陽射しはジリジリと真夏の暑さで、蕎麦屋に着けば、蕎麦打ち室はもう24度なのでした。半袖のシャツも脱いでエプロンをつけるのです。

 湿度は51%だったから、ぴったり41%の加水で、蕎麦粉を捏ね始めたはずなのに、どうも少し柔らかい。蕎麦玉にして寝かせている間に、大根と生姜をおろして、さあ薬味の葱切りと思ったら、小葱を買うのを忘れていたのに気が付きました。仕方がないから、鴨せいろ用に買った長葱を刻んで薬味にするのです。今週は細めの長葱で好かった。再び蕎麦打ち室に入って、蕎麦の生地を伸せば、どうしても厚さが薄くなる。今日は切りべら28本で細い仕上がり。

 次は厨房に戻って苺大福を包むのですが、白玉粉が氷糖蜜と水に溶けるまでがやっとひと休みの時間なのです。店の中の温度は25℃になっていたから、エアコンを入れて換気のために窓を少し開けておく。気温が上がると、熱々の求肥で白餡にくるんだ苺を包むのにもひと苦労。熱くて手を真っ赤にして包み終えれば、次はアスパラとブロッコリーを茹でて、野菜サラダの具材を刻むのでした。早朝の時間がある時に包丁を研いだから、今日の野菜は細く切れた。

 朝の5時から今日の準備をしたのに、暖簾を出してもなかなかお客は来なかった。雲が出て来たけれど気温は相当に高いはず。県内の新型コロナの感染者は減っているのに、今日の市内の感染者数は昨日の倍になったから、そんな影響もあるのか知らん。1時前に例の少年が元気に歩いてやって来る。いつもの通り、お茶は飲まないからカルピスと菓子を出し、せいろ蕎麦を茹でて海老の天麩羅を揚げてやる。すると、不思議なことにお客が続けて来るのでした。

 蕎麦屋の入り口の壁には、お客の描いてくれた仙台四郎の色紙が掛けてあるけれど、彼はまさに客を呼ぶ少年なのです。女将のスポーツクラブの予約は1時半だからと、出掛けにスマホとスケジュール表を渡された。1時20分に最後のお客が帰られて、亭主は準備万端にして一番好い席を取るのでした。2時前に女将も店にやって来て、後片付けを手伝ってくれる。夜は残ったサラダを土台にして、肩ロースの塩ガーリック焼き。明日は雨だと言うから心配です。

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2022年5月中旬

5月15日 日曜日 昨日よりは気温が低かったけれど …

 朝食のおかずに出汁巻き卵を作って欲しいと言われて、店に残っていた一番出汁を取りに出掛けたのが6時過ぎ。週の終わりになると、蕎麦屋の残り物が出ることを見越して、女将は食料庫品の買い物をしなくなるのです。仕方がないから亭主は、銅の卵焼き鍋も一緒に持ち帰って、出汁巻き卵を作るのでした。しかし、しばらく使っていなかったから、油が直ぐに馴染まなくて、ちょっと上手く仕上がらなかった。味は好いのだけれど、見てくれが悪いのです。

 今朝も食後のひと眠りはせずに、8時にはもう家を出て蕎麦屋に向かうのです。とりわけすることがあるわけでもないけれど、日曜日はテレビもニュース番組がなく、亭主の居場所がないのでした。曇り空で少し肌寒いから、上着を着て出掛ければ、駐車場の美央柳がもう花芽を付けていました。モミジの青い葉の間には、赤いプロペラのような種が付いて、風に吹かれて飛ぶ準備を始めているのです。自然の営みはまさに種の保存の法則に則っている。

 新聞を取って、看板を出し、幟を立て、チェーンポールを降ろし終えたら、入念に手指を石鹸で洗って、蕎麦打ち室に入るのです。今日も500g5人分を打ち足して、14食の用意をするつもりなのでした。気温も低いし、昨日に引き続き曇り空が広がって、お客が来るとは思えなかったけれど、「日曜日を馬鹿にしてはいけない」と言うのが、過去の経験から学んだ亭主の戒め。加水率を42%弱にして丁寧に蕎麦を打つのでした。切りべら26本で135g。

 かなり満足な仕上がりだったから、「よ~しっ」と今朝も大きな声を上げて蕎麦打ち台の片付けに入るのです。女将がやって来て店の掃除を始めてくれる。「昨日よりもすこし寒いのね」と言いながら、駐車場の草が伸びているのを「店屋らしくない」とこぼすのでしたが、亭主は先日の金木犀の剪定で、足の親指がまた悪化したので、しばらくは我慢するしかない。屈んで作業をするとどうしても足の親指に力が入ってしまうと、医者にも指摘されたのです。

 厨房に戻って大根をおろし、苺大福を包んで、天気は悪いけれど日曜日だからと、野菜サラダの具材を刻み、四皿に盛り付けておきます。これが出なければ、家に持ち帰って、今夜はまたお好み焼きにでもするしかないのですが、そんなことを考えるのもまた楽しいものなのです。苺の時期がそろそろ終わるので、次のデザートは何にしようかとこの間から考えている。抹茶を買ってあるから抹茶小豆にでもしようか。白餡はもう仕入れなくてもいいだろう。

 農産物直売所で仕入れる旬の野菜のブロッコリーやアスパラは、とても好いものなのだけれど、これも時期が来れば替えていかなくてはならない。天麩羅に使う蓮根も新蓮根が出るまで、このまま値段の高い物を使うのだろうか。今週はパイナップルが甘くて美味しいものを選んだので、野菜サラダはとても作り甲斐があるのです。今日も思ったより沢山のお客が入って10人を越えたから、デザートの苺大福も野菜サラダもすべて売り切れたのでした。

 開店と同時に最初にご来店だったのは、すっかり常連さんになった隣町のご夫婦で、ご主人は相も変わらずカレーうどんと大福をご注文。奥様が鴨南蛮だったりすると、カレーと鴨肉との解凍で一つしかない電子レンジが大忙しになるけれど、今日はおろし蕎麦で助かったのです。駐車場には次々と車が入ったり出たりするから、三組目が店に入ったところで、直ぐに満席の看板を出す。
 鴨せいろやカレーうどんの大盛りまで出るから、調理場の亭主は楽しくなる。セットメニューは、女将が野菜サラダや蕎麦豆腐を出している間に、亭主が盆や蕎麦皿をセットして蕎麦を茹でるので、連係プレーでこなすのが絶妙なのです。歩いていらっしてビールやライムサワーを頼むご夫婦もいらっした。何人のお客が入ったのかそのうち判らなくなるのです。勿論、亭主は昼を食べる暇もない。

 やはり昨日よりも少し寒いからか、カレーうどんを始めとして暖かい蕎麦が沢山出たのです。店の中の気温は23℃まで上がっていたけれど、暖かい日に慣れた身体は少しの気温の変化にも、敏感に反応するらしい。温かい汁の蕎麦やうどんは、洗う時に丼だけで済むので、作る時の手間と相反して片付けが楽なのです。亭主が今日は温かい汁が出そうだと、朝のうちに鍋をもう一つ仕込んでおいたのは正解でした。洗い物と片付けを済ませて2時半には蕎麦屋を出られました。隣の花畑のシロツメクサも今が盛り。

 右足の親指をかばいながら歩く亭主は、女将よりもだいぶ後から家に着く。その間に女将は、亭主の昼飯代わりにと、餅を焼いて海苔で包んでくれる。テレビの番組はスポーツか競馬中継だから、餅を食べ終わった亭主は書斎に入って、今日の売り上げと写真をパソコンに入力するのです。3時過ぎには横になってひと眠り。女将はその間に買い物に出掛ける。夕食には亭主が先週の残ったキャベツとニンジン、玉葱を肉とを蓋をして炒めてホイゴーロウ。塩と砂糖とコショウで味つけをして、片栗粉を水で溶いて入れるのがコツ。

 5月16日 月曜日 冷たい雨が降りしきる中を …

 夕べは早く休んだから、今朝は5時前にはもう目が覚めてしまいました。これは単に生活習慣の問題で、歳を取ったから早く起きるのではなくて、夜遅くまで起きている必要がなくなったから、早く寝て早くに目が覚めるのでしょう。睡眠時間をしっかりと確保することは健康にも繋がるし、朝飯前のひと仕事に出掛ければ、次の蕎麦屋での仕事が楽になるのです。自分の生活に合わせて、時間を上手く使えるようになったということなのかも知れません。

 雨の中を車で出掛け、蕎麦屋に着いたら、まずは珈琲を入れて一服しながら、今日の段取りをつらつらと考える。そして、蕗と蓮根のキンピラを盛り付けたら、キュウリとカブとナスとラディッシュの浅漬けを漬けておく。八鉢もあれば十分だろうと、残ったキンピラは家に持って帰る。平日の月曜日は特にお客も少ないから、まして一日中降ると言う今日の冷たい雨の中を、わざわざ蕎麦を食べに来るお客はいないと思ったのです。

 6時40分には家に戻って、女将が起き出してくる前に、ル・クルーゼの鍋に新じゃがの子芋を入れて、水から茹で始める。20分はかかるから、その間に出汁巻き卵を焼く準備を調えておくのです。女将が台所に入る頃には、炊飯器のご飯も炊きあがり、ご飯をよそって味噌汁とお新香を出すのは彼女の仕事。今朝のタンパク質は、卵と味噌汁の豆腐だけだったかとちょっと反省する。でも、これで十分におなかが一杯になってしまうのです。

 食後にお茶をもらって、亭主は書斎に入ってひと眠り。20分ほど微睡んだら、朝ドラの始まる前に洗面と着替えを済ませ、女将が食堂でテレビに見入っている間に、居間で静かに外を眺めて一服するのがいつもの習慣。朝ドラが終わる時間に「行って来ま~す」と、玄関を出れば、団扇サボテンの花芽がびっしりと付いているから、元気になるのです。冷たい雨は止まないので、今日は平日だし、お客も来ないだろうからと、車に乗って蕎麦屋に向かうのでした。

 駐車場の一番端に車を停めて、今朝漬けておいた浅漬けを小鉢に盛り付ける。万が一、足らない場合を考えて、残った浅漬けをタッパに入れておく。昨日の沢山の洗い物と洗濯物は、早朝に片付けてあるから、蕎麦打ち室に入って、蕎麦を打つのが実にスムーズ。今朝は、500g を打ち足して、昨日の残りの蕎麦と合わせて11食分を用意しておきました。毎週のことですが、月曜日はお客は来ても二人か三人で、この雨だから今日はどうなることか。

 それでもいつものとおりに、葱切り、大根おろし、生姜おろしを済ませて、苺大福を四皿包み、野菜サラダの具材を刻んで三皿分盛り付けておくのです。女将がいない平日は、その後に店の掃除を始めるから、11時にはここまでの仕事を終えておくのです。開店時刻の10分前には暖簾を出せたから、今日は順調なのでした。カウンターの端の席に座って、降り続く雨を眺めていたら、昼前に軽トラックが入って来たので、有り難いお客と出迎える準備をする。

 仕事の途中らしい男性客お二人だったから、いきなり天せいろの大盛り二つのご注文で、厨房の亭主は俄に活気づくのです。まずは盆と蕎麦皿、天麩羅の皿と天つゆの器と蕎麦猪口、薬味皿を用意して、冷蔵庫から刻み葱、おろした大根、山葵におろした生姜を取り出して皿に盛る。それから油を温めておいた天麩羅を揚げて、温めておいた天つゆを器に注ぎ、天麩羅を皿に盛り付けたら、直ぐに蕎麦を茹でるのです。素早く、丁寧に盛り付けたらできあがり。

 「お待ちどうさまでした」と配膳をして、あとは蕎麦湯を作るだけ。その間に、車が二台でやって来て、小さな一台は路肩に止めて親子らしい三人連れがご来店。なかなか注文が決まらないから、その間に前のお客の会計を済ませ、テーブルを片付けておきます。下げた盆や皿の洗い物を半分終えた頃に、やっと決まったご注文は三人とも違ったメニューで、温かい天麩羅蕎麦とぶっかけ蕎麦にせいろ蕎麦の大盛り。せいろ蕎麦が一番簡単だからと真っ先に出す。

 天麩羅を揚げて温かい汁を温めて、蕎麦を茹でたら水で洗って、一度氷で締めてからお湯を掛け、水気をよく切ったら丼に入れる。熱々の蕎麦汁を掛けて、その間に天麩羅を揚げて、二つ同時に完成です。その作業の間に、雨の中を例の少年が、今日も傘も差さずに蕎麦屋にやって来る。「ちょっと待ってね」と声を掛けて、配膳をする。休む間もないので、亭主一人だと同じ時間ではこの人数が限界か。と、思っている間に、また一組お客が入ってくるのでした。
 大盛りの注文が多かったから、生舟の蕎麦は残り少ない。急いで「お蕎麦売り切れ」の看板を出したのが1時過ぎ。1時間余りで8人のお客が入ったから、平日の一人営業では過去最高なのでした。例の少年は、大盛りにしてあげた蕎麦を食べ終わり、カルピスと菓子を食べて会計を済ませる。「気をつけて帰ってよ」と言って、釣り銭を渡しながら亭主が言う。「お孫さんですか?」と、お客の奥様が言うから、「お客さんです」と応えて事情を話すのでした。

 お客の帰ったのは2時少し前。暖簾を下ろして、看板を締まったら幟は外に干して、まずは腹ごしらえと、かき揚げを揚げながら、端切れを集めた蕎麦を茹でて、ぶっかけ蕎麦をゆっくりと堪能するのでした。洗い物はほとんど済んでいないから、それからが大変。女将には「今日は雨だし車で行くから来なくてもいいよ」と言ってあるし、孤立無援で八人分の盆や蕎麦皿、丼などを休み休み洗っては片付けるのです。持ち帰る食材を袋に詰めて、やっと家に戻ったのが3時半近く。夜の食事の時間までぐっすりと眠ってしまう。

5月17日 火曜日 今日も降ったり止んだりの空模様で …

 何だか梅雨のような陽気が続く今日この頃、居間の部屋が16℃だったから、朝からストーブを点けて冷えた身体を温める。6時のニュースを見ている途中で、車に乗って蕎麦屋に出掛けました。昨日の洗い物の後片付けもまだ終わっていなかったから、結構、大変なのです。亭主が孤立無援で力尽きたという印象が強かった。一つずつ片付けていかないと終わりようのない仕事だから、気長にやっていくしかないのです。洗濯機に残った洗濯物を干して、乾いて取り込んだものはカウンターに置いたままで家に戻るのでした。

 今日は第三火曜日だから、月に一度の町内の子ども会の廃品回収の日。蕎麦屋で出た段ボールや新聞紙も車に積んで、家の近くの集積所に持って行く。地域の子ども達のために、少しでも役立ててもらえれば好いと思うのです。7時前だったから、女将はまだ台所に立っていなかったけれど、亭主は昨日残って持ち帰った天麩羅の具材に、肉を入れて野菜炒めを作っておくのです。片栗粉を水で溶いてとろみを付けるのがポイントで、女将が味噌ダレを作る。

 炊き込みご飯に豆腐と若布の味噌汁が付いて、塩を足したと言うぬか漬けの漬け物が出たところで、やっと今朝の食事が始まりました。定休日だと言うのに、我が家の朝食の時間はいつもと変わらない。平日だから女将の朝ドラの時間までに、食事は終わらないといけない。亭主がお袋様と仕入に出かける前に、食後のひと眠りをすることも考えてくれているらしいのです。いつもと変わらぬ生活習慣が身体にも好いのかも知れないけれど、ゆっくりと休みたい。

 お袋様を車に乗せて農産物直売所に出掛ければ、そろそろ終わりかと思っていた野蕗の束がまだ売られていました。農家で採れる春キャベツや、ハウス物のナスやピーマンやブロッコリー、ニンジンなどもここで買って、店で仕入れる質の好い生椎茸やアスパラガスも買うものだから、最近は随分と金額が増える。それから隣町のスーパーに行って、残りの野菜や女将に頼まれた果物や魚や肉を買って、蕎麦屋に戻ったのが10時過ぎ。昼前に出来る仕事は限られる。

 まずは、鍋に水を入れて、出汁取りの準備に干し椎茸と昆布を浸しておきます。それから野蕗を塩で板ずりして、大釜に沸かしておいた湯で茹でること約2分。水にさらして一本一本丁寧に皮を剥いていくのです。これに時間がかかるから、昼飯の用意もあるのでざく切りにしてタッパに入れたら、レンコンを茹でて、ニンジンの皮を剥いて蓮切りにしたものと一緒に、これもタッパに入れて冷蔵庫で保存する。後は昼飯を終えてからの仕込みなのです。

 女将も買い物から帰っていたから、家に買って帰った品物を手渡し、亭主は書斎に入って、仕入れの伝票をパソコンに入力する。家の食料として買って来たものは、しっかりと女将から代金をもらうのでした。一回の仕入れでかかる費用は、コロナ禍の後は一万円以下に抑えるようにしている。足らなければまた買い足せば好いと考えて、仕入れを減らしているのです。それでも、毎週のように食材が余るので、やはり、お客の数は減っている。

 昨日の野菜サラダが三皿分も残っていたから、刻んだキャベツやニンジン、アーリレッド、パプリカだけは、別にして取っておくのです。これを肉を敷いてお好み焼きの生地を焼いた上に載せて、蓋をしてしばらく焼いたらひっくり返す。野菜の側も焼けたところで皿にストンと返したところで、モッツァレラチーズを掛けて、あとはお好みで生姜、青海苔、鰹節を掛けて頂くのです。女将はソースを掛けて食べている。子どもの頃によく食べたのだとか。

 午後の仕込みは女将のスポーツクラブの予約を終えてから。それまで、2時間はあるから亭主は書斎に入ってひと眠りなのです。女将は稽古場に入って黙々と仕事をする。無事にスポーツクラブの予約が取れて、女将に報告をすればお茶と昨日残った苺大福と林檎が出てくる。やっと目を覚ました亭主は、雨の降る中をまた車で蕎麦屋に向かうのでした。出汁を取って約1時間。洗い物を終えて、洗濯物を畳んだら、もう4時過ぎなのでした。

 夕食は、午前中に隣町のスーパーで仕入れた活きの好い大きな鰯を、刺身にしてもらって一献です。6匹で104円とあまりにも安いので直ぐになくなるから、今日は店員が棚に並べる前にもらって来たのでした。一日経つともう刺身では食べられない。痛風の対策でもあるけれど、肉はバラ肉ではなくロースにして、魚を多めに仕入れてきたのです。それにしても、夜まで雨は降り続き、まるで梅雨入りのような天気でしたが、明日からは晴れると言うから楽しみ。

5月18日 水曜日 朝は濃い霧に覆われて …

 霧の深い朝でした。午前6時の太陽は、蕎麦屋の向かいにある森の上に、ぼうっと光を投げかけているだけで、あたりは霞んで何も見えないのです。定休日の二日目だから、早朝からあまりすることもなかったけれど、いつもの習慣で車で蕎麦屋まで行く。家でテレビのニュースを見ていても、どうせ朝食の時間にはまた同じニュースを見ることになる。夕べも早くから床に就いたから、睡眠は十分なのです。珈琲を入れて飲んで、頭はすっきりとしているのです。

 蕎麦豆腐を仕込んで型に入れたら、唐辛子を輪切りにしてごま油で炒める。昨日、切っておいた材料をフライパンに入れて出汁で煮る。薄口の出汁醤油と砂糖で味付けをしたら、蓋をしてしばらく火にかけておくのです。これで小鉢一品の出来上がり。後は午前中の仕込みで切り干し大根でも煮ようか。家に戻れば、女将がいつもより早い時間なのに台所に立っていました。「後は鰯が焼ければ終わりです」と言って、味噌汁とご飯をよそってくれた。

 食後にお茶をもらったら、女将の朝ドラが始まる時間まで書斎で横になってひと眠り。これもいつもと同じだから、洗面と着替えを済ませて、8時半前には家を出て再び蕎麦屋に出掛ける。いつもと同じなのがストレスがないのか、お蔭で隠居の蕎麦屋は退屈しないで済むのが、好いのか悪いのか。隣のお花畑に陽が差してきたので少し歩いて、駅前の高層マンションが見えるところで写真を撮る。青空が見えないからか、くすんだ景色になってしまった。

 厨房に入って、まずは空の蕎麦徳利に蕎麦汁を詰める作業。まな板を取り出して、ニンジン、シイタケ、揚げを刻み、ごま油で炒めたら、お湯で戻した切り干し大根を入れて出汁で煮る。味付けは出汁醤油と砂糖。早朝に作ったキンピラと、作り方はあまり違わないけれど、キンピラはピリ辛で汁がないから、大人向けのひと品で、酒のつまみにも合う。切り干し大根は甘めで、綠がないので色合いが寂しいから、絹さやを茹でて添えることにした。

 次は天麩羅の具材を準備するのですが、レンコンの皮を剥いて酢水から煮ている間に、カボチャをスライスしてレンジに掛ける。それから、生椎茸、ピーマン、ナスを切って容器に詰め、ラップをして冷蔵庫に入れておく。ナスが酸化して少し種が黒くなるのが嫌だけれど、当日、その場で切っている暇はないのです。後はかき揚げの材料の玉葱と三ツ葉を刻んで、これもラップをして冷蔵庫に入れます。ニンジンは、野菜サラダのジュリエンヌの端切れを使う。

 ここまで終われば、糠床にキュウリとナスとカブとラディッシュを漬けるだけだから、時間的にまだ早いのです。今日は午後から、足の指の具合を医者に見てもらいに行くので、その帰りにでも漬けに来れば好い。例によって11時半には女将のスポーツクラブの予約があるから、それまでに昼飯の支度をして、食べ終えたらパソコンの前でスタンバイしていなければならない。太陽が眩しくなってきたので、隣の畑に出て矢車草の写真を撮っておくのでした。

 キャベツが沢山残っていたから、今日の昼飯は焼きうどんにしようかと、朝のうちに女将と話をしておいた。ところが、何枚もキャベツの葉を使ったのに、肉と一緒に炒めているうちにシュンとなって、大きめに刻んだ新玉葱ばかりが目立ってしまう。紅生姜と青海苔を掛けて食べるのは、ソース味だし、まるでお好み焼きと一緒だった。それでも無事に昼食を終えて、ちょうど11時20分。亭主は書斎に入って、壁の時計の秒針を見ながら予約の時を待つのでした。

 午後はゆっくりと昼寝をして、女将がスポーツクラブに出掛けている間に、医者に出掛けて足の具合を見てもらった。指の軟骨が変形しているから腫れが引かないのですと言われて、無理をして夜の防犯パトロールに出掛けたのがいけなかったと反省する。それでも今日から少し薬が変わって、尿酸を溶かす薬を出してもらえた。発作の起きている間は出せない薬なのだという。長く付き合う病気だからと、亭主も諦めて煙草と焼酎を買って家に帰るのでした。

5月19日 木曜日 昼前にどどどっと客が入って …

 今朝も5時半には蕎麦屋に出掛けました。昨日の夕刻に漬けたお新香が気になっていたのです。ナスの色止めも上手く仕上がって、味もちょうど好い感じでした。野蕗とレンコンのキンピラと、切り干し大根も盛り付けて、三種類の小鉢を準備しました。店の窓からは眩しい朝の光が差し込んで、日の出の時間がひと頃よりずっと早くなっているのだと実感するのでした。空は雲一つなく晴れ渡り、今日は昨日にも増して暑くなりそうなのです。

 家に戻ったら、まだ6時半過ぎだったので、亭主は書斎に入ってしばらく横になる。朝の気温はまだ17℃ほどだったから、少し寒いと感じるくらいなのです。30分ほど微睡んだところで、「ご飯の用意が出来ましたよ」と女将が起こしに来てくれた。ホッケの塩焼きが脂が乗って薄味でちょうどいいおかずなのです。三ツ葉の卵とじもなかなか好い。茹でたカブの葉には、鰹節と醤油をかけて食べるのですが、どうも梅干しが欲しいと思うのは通風のせいか。

 食後のひと眠りは食休みの替わり。洗面所に立って髭を剃る亭主なのです。顔を洗って着替えをすれば、もう、出掛けるモード。朝ドラが終わる時間には「行って来ま~す」「はい、行ってらっしゃい」といつもの挨拶を交わすのでした。右足の親指をかばいながらゆっくりと、みずき通りを渡っていきます。青い空とハナミズキの青葉が、初夏の到来を告げているかのようです。薄手のポロシャツ一枚でも、今日は暑いくらい。腕まくりをして蕎麦屋まで歩く。

 店内の気温は朝からもう20℃を越えていました。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って蕎麦を打てば、蕎麦打ち室の温度計はもう23℃を表示しているのです。湿度が55%だったから、加水を42%ぴったりにしたのだけれど、生地を捏ねて幾うちに少し柔らかめなのに気が付いた。伸して畳んで包丁切りをすれば、やはり柔らかめの生地なので、切り幅が安定しないから失敗だった。慎重に包丁を降ろして、切りべら26本で135gの蕎麦を何とか仕上げるのです。

 蕎麦打ちを終えても、まだ時間が早かったから、次の作業に入る前に、汚れたレンジ周りの掃除をしておきます。時間があれば掃除をすることが一番の仕事。とは思っているけれど、いろいろと汚れているところが多いので、気が遠くなりそう。せめてレンジ周りぐらいは毎日綺麗にしておこうという考えなのです。大根と生姜をおろして、薬味の葱を刻めば、二つの大釜に火を入れる時間。小鍋に白玉粉と氷糖蜜、水を計量して求肥を作る準備をする。

 苺大福を作る準備には、ます苺を蔕の部分を切って白餡で包んでおきます。白玉粉が溶けてきたところで、火にかけて練っていきます。熱々の求肥を掌に伸ばして、白餡で包んだ苺をくるんでいくのが、気温が上がってきたせいか、本当に熱くて手で持っていられない。片栗粉の中に降ろして尻を閉じる。皿に盛り付けたら、ブロッコリーとアスパラガスを冷蔵庫から取り出して茹でる準備です。野菜サラダも30分はかかるから、その間に大釜のお湯が沸く。

 終わったところで新しい油を天麩羅鍋に注ぎ、天つゆの鍋を火にかけておく。そして、テーブルやカウンターをアルコールで拭いていくのです。開店の時刻の10分前には暖簾を出して、今日のお客を待つのでしたが、11時半ぴったりに最初のお客がご来店。お茶を出して注文の品を調理する間に、もう次のお客がやって来る。あれよあれよと席が埋まって、お茶を出す間もないくらい。幸い、全員が天せいろのご注文だから、次々と盆や皿を並べて仕上げていく。

 今日はスポーツクラブの予約が取れなかったので、女将が家にいるのを知っていたから、SOSの電話を掛ける。昼食を終えたばかりらしかったけれど、急いで蕎麦屋に来てくれた。亭主は注文の伝票も書く間がなかったし、会計をしてテーブルを片付ける暇もない。平日に30分で四組ものお客が入るのは珍しいのです。最後の若い女性客には随分と待って頂いたから、苺大福をサービスでお出ししたのでした。いろいろ話をして「また来ますね」と言って帰られた。

 二週間後の金曜日のスポーツクラブの予約を取ろうと、女将はアカウントを登録してあるスマホを持って蕎麦屋にやって来ていた。1時半が予約開始の時間だったけれど、ちょうどお客がいなかったので、亭主は例によって予約画面と睨めっこで、一番で好い場所を取る早技をこなす。彼女が自分で予約を出来るようになるのはいつのことなのだろう。そのちょっとが難しい。洗い物を片付け、食べ損なった昼を、餅を焼いてもらって食べたのは2時半でした。

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2022年5月上旬

 5月7日 土曜日 少しはお客が戻っているのか …

 今朝も朝飯前のひと仕事で午前5時半に蕎麦屋に出掛けました。暖かい朝でしたが、雲行きは少し怪しい。雨野予報が曇りに変わったけれど、かすかな青空を多う黒い雲は紛れもなく雨雲のようでした。昨日早い時間に浸けたぬか漬けが気になって、漬け込み時間が14時間になるように思ったら、薄塩で浸けたからちょうど好い塩梅なのでした。早速、お新香を小鉢に盛り付けて、もう一品は野蕗のキンピラを五鉢だけ持っておきました。

 木曜金曜とそれなりにお客が入ったので、蕎麦汁も残り少なくなっていたから補充しておきます。週末の土曜日は、昨日一昨日よりはお客が来るだろうから、明日の分の蕎麦汁が足りなくなりそうなので、昆布と干し椎茸を3㍑の鍋に浸して、出汁を取る準備をしておく。6時間は浸けなければいけないから、営業の終わる頃には出汁を取れるという計算です。昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干して、7時前には家に戻るのでした。

 「お早うございます」と、女将が居間の亭主に食堂の扉を開けて挨拶をする。ぷ~んと懐かしい匂いが漂って、今朝も鰺の開きを焼いていると分かる。連休の安売りで、亭主が四枚入りの鰺の開きを500円で買ってきたのがそろそろ賞味期限なのです。冷凍物でも、時間が経てば経つほど乾燥して塩味が強くなってしまうから、早めに食べて仕舞わないといけない。アサリの佃煮と野蕗の葉の佃煮が小皿に盛られて、これだけでもご飯のおかずになる。

 今朝は食後のひと眠りをする暇もなく、髭を剃って洗面、着替えと忙しく準備をして、女将の朝ドラの始まる頃に、亭主は蕎麦屋に向かうのでした。昨日、蕎麦粉と一緒に届くはずだった打ち粉が、箱の中に入っていなかったから、直ぐに電話を掛けたら、今日の午前中にはお届けしますと言うことなのでした。何年も取引をしている農場なのに、珍しいこともあると思っていたら、蕎麦を打ち始めたら丁寧なお詫びの手紙と一緒に届けられたのです。

 昨日の蕎麦は三人分しか残らなかったので、今朝は850g9人分を打って、週末の土曜日に期待をするのです。蕎麦打ちを終えた亭主は、厨房に戻って薬味の葱切りを済ませたら、大根と生姜をおろして、女将が早お昼を食べに家に帰っている間に、苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻むのでした。昨日一昨日の二日間で天麩羅ばかり出たので、天麩羅鍋には新しい油を足して、天つゆを温め、開店の準備が整ったところで、暖簾を出したら店の電話が鳴る。

 女将が電話に出て、6人のお客だと言うので、「今は空いていますけれど」と応えていた。直ぐに行きますと言われたらしく、昼前には皆さんお揃いなのでした。顔を見れば、いつも娘さんと自転車出いらっしゃる常連のお客で、今日はご両親たちとご一緒。テーブル席に三人ずつ座ってもらって、注文はいつも同じ物を頼まれるご主人のお勧めか、ヘルシーランチセットが四つに天せいろと天麩羅蕎麦。二人ずつ天麩羅を揚げて熱いうちにお出しするのでした。

 その後もぽつりぽつりとお一人の客が入って、雨が降ったり止んだりの天気だったのに、昨日よりはお客がいらっしたのです。最後のお客は、女将が駐車場に入った車を見て「○○さんじゃない?」と言った通りに、長女と同じ年頃の女先生なのでした。石垣島で一緒にダイビングをして以来のお付き合いで、近所に住んでいるからよく来てくださる。空も少し晴れ間が出て、帰る頃には雨はすっかり止んでいました。駅からの市バスが蕎麦屋を通る時間です。

 家の前まで歩いて来たら、庭の塀際に芍薬の花がやっと開いて見事なのでした。今朝はまだ半開きの状態だったのに。書斎に入ってパソコンに向かい、今日の売り上げと写真を入力したら、遅い昼飯に女将が焼いてくれた海苔餅を食べる亭主。さすがに今日は腹が減って目が回るほどでした。それでも直ぐには眠れずに、郵便局まで車で行って蕎麦粉の支払いを済ませて来る。買い物に出掛けた女将が、夕食のおかずに亭主の希望した鰹の刺身を買って来たくれた。

5月8日 日曜日 お蕎麦が完売、少しずつお客が戻っている …

 昨日もかなりお客が入ったから、小鉢がなくなっていたので、今朝は5時半に蕎麦屋に出掛け、まずは浅漬けを漬けておくのです。そして、昨日使った蕎麦汁の空になった徳利をカウンターに干してあるので、これに新しい蕎麦汁を補充しておきます。時間のある早朝には、昨日残った蕎麦の数や冷蔵庫の中を見回して、何か足りない物はないかとチェックをしておくのです。更に今朝は、昨日の洗濯物を畳んで、洗濯機の中に洗ったままの布巾や手拭いを干した。

 いつもは女将がやってくれるのですが、先週も彼女は週に四日も働いてくれたので、せめてもの亭主の心遣い。7時前に家に戻ればちょうど女将が作った豚汁を温めていたところで、亭主は食卓についてご飯の運ばれるのを待つのでした。今朝は三ツ葉の卵とじと昆布と大豆の煮物、家で漬けた糠漬けがおかずでした。この歳になると、もうこれで十分な量なのです。そして、クエン酸が足の指に溜まった尿酸によかろうと、梅干しを食べるようにしている。

 早めに食事を終えたから、今日は少しゆっくり眠れるかと思ったのですが、蕎麦屋で珈琲を飲んできたせいか、書斎で横になっても微睡むどころか目が冴えてしまい、20分ほどで諦めて洗面にいく。だから8時過ぎにはもう家を出て蕎麦屋に向かうのでした。庭の芍薬がいよいよ花を開いて見事なのです。昔、母の日に女将に買ってきた株が増えて、今は隣家との境にも花を咲かせる。毎年、母の日のこの時期に咲くから、女将に「有り難う」と言われるのです。

 蕎麦屋に着いたら玄関脇に看板を出して、幟を立て、チェーンポールを降ろすのが最初の仕事。厨房に入って、早朝に漬けておいた浅漬けと、野蕗のキンピラを盛り付け、昨日の残りの小鉢と合わせて、今日用意する予定の蕎麦の数だけは確保するのでした。お酒が出た場合は突き出しとしても利用するので、少し多めに作って、盛りきらないものは、タッパに入れておくのです。小鉢はラップで包んで冷蔵庫に入れ、いよいよ今朝の蕎麦打ちなのですが…。

 早朝は少し青空も見えていたのに、天気予報が時間毎に変わり、次に晴れる時間は段々と遅く午後になっているではありませんか。気温もあまり上がらないと言うから、どれだけ蕎麦を打てば好いのか思案の時なのです。昨日も10人には届かなかったから、お客が来てもせいぜい10人止まりだろうと、結局、いつものように750g八人分を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせれば十分だろうと考えるのでした。足りなくなれば、売りきれ御免で勘弁していただく。

 加水率は42%、ちょうど好い硬さの生地で、畳んで包丁切りまで順調に進むのでした。少し伸した生地の奥行き足りなかったから、切りべら28本にして、一人前135gほどで仕上げる。「よしっ!」と今朝も声を上げて蕎麦打ち室を出た亭主は、厨房に戻って大根をおろし、昨日「五つしかないの?」と言われた苺大福を、今日は六つ作ってカウンターに並べる。残れば明日が最後の営業日だから、少しは楽が出来るかと思っていたのです。

 野菜サラダの具材を刻んで、まだ盛り付けに入らないうちに、もう駐車場に車が入って「11時開店と間違えました」とお客が言うので、中に入って待ってもらうように女将に言えば、もうひと家族と待ち合わせをしているからと言う。その間にサラダを盛り付け、天麩羅油と天つゆを温め、開店の準備を済ませるのでした。子供連れの二家族がテーブル席に座って、ヘルシーランチセットが三つに、せいろ蕎麦にせいろ蕎麦の大盛り、冷たいうどん等々…。

 女将はサラダと蕎麦豆腐を出して、亭主は蕎麦を食べたことのないと言う子供にうどんを先に茹で、盆と蕎麦皿を用意してまずは天麩羅を揚げてしまう。順々に調理していくその途中で、玄関が開いて見知った顔のお客が「四人なんだけど」とおっしゃるから、「カウンターになりますけれど」と断って座っていただく。1グループ四人だから問題はないはず。それでも満席だから、直ぐに看板を出したのです。次にいらっしたお客は、店内の様子を見て帰られた。

 生舟の中の蕎麦はどんどん残り少なくなって、家族連れは直ぐに帰るはずもないし、カウンターの四人組は早く料理を出さないと、大きな声で話をするから大変。珍しく賑わった店内は、どこかコロナ禍前の雰囲気なのでした。12時半になる頃には、皆さん引き上げてくれたから、やっと洗い物が出来ると思ったけれど、またしても駐車場に車が入ってきたのです。素早く女将がテーブル席の一つを片付けて注文を取り、亭主は次のお客の料理を作るのでした。

5月9日 月曜日 日中の気温は急降下で …

 昨日に比べたら寒い朝でした。部屋の中は15℃ほどなのに、最近の暖かさに慣れてしまった身体には、とても寒く感じるのです。それでも昨夜は10時に床に就いたから、5時前に起き出して、お茶を入れて目を覚ます。足の指の具合を気にしながら、一ヶ月ぶりに運動靴を履いて蕎麦屋に出掛ければ、やはり親指が腫れたままだから痛いのです。蕎麦屋の西側の小径に出てみれば、クローバーが花盛り。雨で畑の土が流れ出るのを防ぐために植えてくれたものです。

 沢山の昨日の洗い物を片付け終えて、蕎麦徳利に蕎麦汁を補充したら、ニンジンと油揚げ、出汁を取った残りの干し椎茸を刻んで、お湯で戻した切り干し大根を胡麻油で炒め、出汁で煮込んで出汁醤油と砂糖で味付けをする。浅漬けが三鉢以外には、小鉢が一つもなかったので、今日の分の小鉢の準備なのです。しかし、この寒さではお客が来るのかと心配する亭主。それでも、仕込みはいつもと同じにしておかなければいけないのが商売というものか。

 前の畑の休耕地には野生のポピーがずっと向こうまで咲き始めている。空はどんよりと垂れ込める雲行きで、今にも雨が降ってきそうな天気なのでした。7時前に家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしてくれていた。今朝は親子丼の具に卵を落として、ひじきの煮物が添えられていた。味付けは抜群、というのも蕎麦屋でご飯物を出さなくなったので、冷凍してあった親子丼の具材を持ち帰ったのです。一般のお客向けには少し砂糖が多いほうが好まれる。

 今朝も食後に書斎で横になったけれど、昨日と同じくただ休むだけで微睡みもしない。洗面と髭剃りを終えて、また珈琲を入れて飲む亭主。靴を履いたせいで足が痛くなったから、小雨も降っているからお客も少ないだろうと、今度は雪駄を履いて、車で蕎麦屋に出掛けるのでした。かなり治っては来ているのに、歳のせいかなかなか腫れが引かないのです。気温が低いせいか、ポピーの群生も花が眠たそうに閉じたままでした。幟を立てて看板を出す。

 朝の仕事が終わったら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日は全部売り切れたから蕎麦が残らなかったけれど、月曜日が最後の営業だから、750g八人分を打ってお終いにしようと考えていたのです。この天気では、そんなに出るはずもない。蕎麦が残れば、お袋様のところに持って行って、あとは家で食べれば好い。それでも残れば木曜日の賄い蕎麦にする。42%の加水率で水回しを始めれば、ちょうど好い具合の硬さの生地が仕上がる。

 蕎麦玉にして寝かせておく間に、厨房に戻って早朝に作った小鉢を盛り付けておきます。外は冷たい小雨が降り始めているから、今日はあまりお客が望めない。混んだ日曜日の後はいつもそんなものなのです。再び蕎麦打ち室に入って、伸して畳んで包丁切りを済ませる。今朝も綺麗な仕上がりだから、こんな日にお客に食べて欲しいもの。まだ10時前だったから、今日はかなり時間に余裕があるのでした。あとは葱切り、大根おろし。そして大福を包む。

 お客が来ないとは思っていても、大福と野菜サラダはいつもと同じ数を作っておくのが決まり。雨の日でもかなりお客の入ることもあるから、いろいろな過去の経験で、数は変えないことにしているのです。残れば家で消化できる数なのがポイント。暖簾を出して、待つこと1時間。雨が北側の窓に当たるから、換気のために開けていた窓を閉める。とうとう1時になって、これは今日は駄目だと、今朝打った蕎麦を茹でてぶっかけにして食べておくのでした。

 綺麗に打てた日の蕎麦が美味しいこと。天麩羅を揚げないで天かすを載せるのは、バットなどの洗い物を増やしたくないから。1時半になって雨も上がっている様子なので、お袋様に電話をして、蕎麦や天麩羅、大福などを取りに来ないかと言ってやる。この天気では家に閉じこもっているに違いないのです。天麩羅の具材を揚げ終えた頃に、バス通りを歩いて来るお袋様の姿が見える。「昨日はカサブランカを有り難うね」と言って、洗い物を手伝ってくれた。

 今年米寿を迎えるというのに、昔取った杵柄で、その素早さと言ったら実に見事。お蔭で亭主一人で片付ける時間の半分で終わり、車で家まで送っていったのでした。いつもなら、休み休み片付けをしているから、女将が心配して蕎麦屋に来てくれるのに、今日は女将がスポーツクラブから帰る前には家に着き、ゆっくりと出来たのです。明日は仕入れと、市の食品衛生連合会の会費納入と検便申し込み。隣町のホームセンターに行って備品も仕入れなくては … 。

5月10日 火曜日 一転、終日晴れた一日で …

 何故か久し振りの休日のような気がして、今朝はゆっくりと7時まで眠っていました。居間に入ればやっと女将が起き出して来て、今朝は亭主が早朝に玄関の鍵をガチャガチャ言わせて開ける音がしなかったので、ぐっすりと眠れたのだそうな。早朝に朝飯前のひと仕事に出掛けなかったから、二人とも遅くまで眠れたことになる。食事の支度が出来るまで、亭主は玄関から脚立を運んで前の通りに立てて、いつも下からしか撮せない芍薬の姿を、今朝は正面からしっかりと写真に収めるのでした。日当たりが良い場所だから満開。

 朝食は昨日店で残った野菜サラダに、鶏の胸肉の塩麹漬けを焼いたもの。ひじきとお新香が付いてかなり健康的な食事なのでした。食後に珈琲を一杯飲んで、洗面と着替えを済ませたら、少し早めに蕎麦屋に出掛ける。お袋様を迎えに行くにはまだ早かったので、様々なお花が咲き乱れる隣の畑の様子を見に出たのです。矢車草やポピーはお馴染みだけれど、ベニバナツメクサ(ストロベリーキャンドル) は図鑑で調べて初めて知った。見事なお花畑状態です。

 道路沿いのクローバーと芝を植えた部分を、芝刈り機を入れて道を作ってくれたので、200mほどの歩道のないバス通りが歩きやすくなった。90歳を過ぎたお爺さんが始めたひまわり畑が、亭主と同年代の息子さんご夫婦が引き継いで、道行く人たちの目を楽しませてくれている。有り難いことなのです。お袋様に電話をして、今朝の仕入れに向かうのでした。昨夜までの天気予報が変わって、一転、晴れた暖かい陽射しの朝となったから嬉しい。

 今日は農産物直売所に旬の野菜が随分と沢山出ていた。顔見知りの農家の奥さんから、朝取りだという春キャベツをもらい、茄子やピーマンやアスパラガスや生椎茸も、良いものが出ていたのでもらっていく。少し太い蕗が葉を付けたまま置いてあるから、これは好いと買い物袋二つに一杯仕入れて来た。隣町のスーパーで残りの野菜類を仕入れて、ついでに女将に頼まれた魚や果物に焼売の材料を買って帰る。蕎麦屋に戻ってダッシュで野菜を収納する。

 生ものを家に置きに帰ったら、女将は買い物に出掛けているので冷蔵庫の中にすべて収納して、その足で市の食品衛生連合会の会費納入と検便の申し込みに、隣町の保健福祉センターに向かうのでした。久し振りに団地の駅の南側に行くのです。新しい衛生管理ノートを買って、センターを後にすれば、まだ昼間では1時間あったから、西の町のホームセンターに向かって、ひと月振りで店の備品類を購入する。隣のスーパーで足りない家の買い物も済ませる。

 昼になる頃だったから、途中で女将に電話してもう直ぐ帰ると伝えておく。彼女のスポーツクラブの予約は、2時過ぎだから余裕なのです。ちょうど昼には家に戻って、女将が湯を沸かしておいてくれた鍋で蕎麦を湯でて、やっと昼食なのです。今日は忙しい半日なのでした。昨日打った蕎麦と蕎麦湯がとても美味しかったのは贅沢な話。天麩羅もとろろも切り干し大根の小鉢も、すべて蕎麦屋の残り物です。霊犀亭に食品ロスがないのは不幸中の幸いか。

 食後は書斎に入ってパソコンに向かい、今日の仕入れの結果を入力しておきます。それから例によってひと眠り。2時前に女将がやって来て「そろそろ予約をお願いします」と言うので寝覚め、無事に席を取ることが出来ました。珈琲を一杯入れてもらって、女将が稽古場で条幅を書いている間に、また蕎麦屋に出掛ける亭主。天気が好いからやることは沢山あるのだけれど、まずは車の中に入れたままの備品類を片付け、洗濯物を畳み、洗い物を干すのです。

 そして、今日の仕込みにかかるのでしたが、最初に白餡を溶かして火にかけたら、蕗を湯がいて皮を剥き、キンピラの材料を刻んで唐辛子と胡麻油で炒めたら、出汁を入れて味付けをする。味が染みるまで煮立てている間に、日曜日に取った出汁に返しを加え、木曜日からの天つゆを作っておきます。と、女将からの電話で、今朝亭主が買って帰った鰯が少し古くて刺身には出来ないと言う。今日は焼いて食べて、後は煮付けることにするのでした。

 鰯が6匹で180円の安売りのスーパーは、賞味期限内でもこれだから大変。鱗が付いていても、捌いて内臓が崩れているからと直ぐに電話をくれたのは、さすがは女将なのでした。一緒に買ったお袋様にも女将が電話をしたら、やはり判ったらしく、直ぐに煮付けてしまったと言うから好かった。白餡作りは時間がかかるので、鍋のままに入れて続きは明日。5時前に家に着いて大相撲を見ながら、今日も一献なのでした。夜は焼売を仕込むのが亭主の仕事らしい。

5月11日 水曜日 今日も日中は晴れて暑くなった …

 今朝は5時半に家を出て蕎麦屋に向かう亭主。昨日のうちに鍋に浸しておいた昆布と干し椎茸で出汁を取り、蕎麦汁を作っておくためでした。隣の火口には、昨日作りかけの白餡の鍋を、弱火でかけておくのです。冷凍の漉し餡を使っているのに、硬くなるまでには2時間はかかる。大手亡豆を一晩水に浸して、茹でて皮を剥き、柔らかく煮込んで、濾し網で漉すことを思えば、時間は短縮されているのです。朝飯前のひと仕事を終えたらもう陽が昇っていました。

 煙草を買いに大通りまで出れば、新緑の並木が鬱蒼と茂っているのでした。常緑樹は新しい葉が出る時に沢山の落ち葉が出るから、掃除をするのが大変。昨日も道路を片側通行にして、あちこちで業者が落ち葉をかき集めていた。歩道に溜まった落ち葉は前の家の人が掃いているところもあるらしい。団地の景観を保つにも、いろいろな人の努力があっての賜物なのでしょう。家に戻って女将の用意してくれる朝食には、昨日の鰯の煮物が出た。骨まで食べられる。

 食後はゆっくりと書斎で横になって30分ほど眠ったのだろうか、洗面と着替えを済ませて、珈琲を一杯入れて飲んだら、剪定の道具を車に積み込んで蕎麦屋に出掛ける。定休日二日目は、朝飯前のひと仕事もしたし、あとは天麩羅の具材を仕込んでぬか漬けを漬けるだけだったから、気になっていた駐車場に伸びた金木犀を、刈り込もうと思っていたのです。お客の車も停めにくいので、取りあえず周りの枝を払ったけれど、切った枝を袋詰めするのが大変でした。

 30分切っては30分休んで、30分袋に詰めたら、90㍑のビニール袋が満杯になった。屈んで枝を拾う作業で、足の親指に力が入ったのか、ちょっと赤く腫れてきた。今日は医者に行く日だというのに、拙いことになったと思いながら、11時前には家に戻るのでした。女将が蕎麦を茹でる湯を沸かしておいてくれたから、すぐに蕎麦を茹でて昼食の支度が始まる。とろろとモズクが付いて、昼も健康的な食事なのでした。またしても食後のひと眠りを決め込む亭主。

 朝のうちだけ晴れという予報がずれたのか、昼を過ぎてもまだ晴れて暑いくらいだったから、半袖に着替えて一時間以上も眠ってしまうのでした。目を覚ませばもう1時を過ぎていたのです。女将はスポーツクラブに出掛けたかと思ったら、今日はお休みだそうで、食堂で一生懸命何やらやっている様子。見れば取っておいたと言うカッシアの種を、サヤから取り出しているのでした。暇だから播いてみようと思ったらしい。玄関の靴箱を掃除して、何年も前の朝顔の種を見つけ、これも播いたらしい。芽が出れば好いけれど。

 亭主は午後の仕込みに出掛け、そのまま整形外科の医者に行くからと言い残して家を出る。3時から始まる医院は、たしか15分前が受け付け開始だから、早く仕込みが終わっても余裕があるのです。最初に蕎麦豆腐を仕込んで、蓮根の皮を剥いて茹でたら、カボチャを切ってレンジに掛ける。他の野菜をカットして、20分ほどですべて終了。ぬか漬けにはまだ早すぎるから、ゴミ箱のゴミを大きな袋に詰めて外に捨てたり、まな板を消毒したりと時間をつぶす。

 漬け物も終えて蕎麦屋を出たのは2時半過ぎでした。駐車場に車を入れて医者に着いたのが45分。もう沢山の客が待っていたのだけれど、整形外科はリハビリの人が多いから、処方箋をもらうだけの人も含めて、直ぐに名前を呼ばれたのでした。右足の親指を見て、「全然好くなっていないなぁ」と言う医者の言葉に驚く亭主。痛みはだいぶ軽減しているのに、やはり、金木犀の選定作業で、親指で踏ん張ったのがいけないらしかった。また特効薬を出してもらって家に戻るのでした。気長に付き合うしかないと諦める。

5月12日 木曜日 蒸し暑い一日 …

 5時半に蕎麦屋に出掛けて、心配していた糠漬けを取り出せば、薄塩で漬けたからちょうど好い味でひと安心。太陽は出ていたけれど、南の空は怪しい雲行きで、晴れ間は続かないと思えたのです。お新香を切り分けて小鉢に盛り付けたら、蕗と蓮根ののキンピラと切り干し大根も盛り付けて、ラップを掛けて冷蔵庫に入れておくのでした。あまりすることがなかったので、6時過ぎには朝飯前のひと仕事を終えて家に帰るのです。

 塀際の芍薬の花が昨日にも増して、全開で見事だったから、またしても亭主は、写真に撮っておくのでした。芍薬の茎は花の大きな割にはあまりにも細いので、朝露や雨で直ぐに垂れ下がってしまうのです。「立てば芍薬 … 」とは、その華奢で美しい姿を形容したのかも知れない。現代の強い女性のイメージとは、ちょっと合わない気がする、と思うのは亭主ばかりだろうか。「花の命は短くて … 」という言葉も、女性の長寿の時代には、時代遅れなのでしょうね。

 女将の用意してくれた朝食は、炊き込みご飯と鰺の開きがメインなのでしょうが、モズクに納豆、ナメコ汁にキンピラと、身体に好いものばかりが大集合。たまにはステーキでも食べたい、などと言ったら大変なことになること請け合い。お蔭で最近は体重が徐々に減り続けているから嬉しいのです。女将に言わせると、亭主が蕎麦屋で立って仕事をし続けているのも、身体には好いらしいのです。プールへ通わなくても痩せるのなら、これに越したことはない。

 今朝もひと眠りはせずに、今度は蕎麦屋まで出掛け、朝の仕事を始めるのでした。昨日剪定をした金木犀は、ちょうど駐車場の車止めが見えるように枝が払われている。気温は随分高いのだけれど、空はもう曇り空で、今にも雨が降り出しそう。蕎麦屋の店内は21℃もあるのでした。店の窓をすべて開け放ち、今朝の蕎麦を打ちに蕎麦打ち室に入って、750gの蕎麦を捏ね始める。湿度が高かったから加水率は42%弱にしたら、ちょうど好い柔らかさなのでした。

 切りべら26本で135gの束を八つ仕上げて生舟に並べる。暖かくても、この天候ではあまりお客は望めないから、これだけで十分なのです。コロナ禍以前なら、平日でも10人分以下の用意などで営業を始めるなどとは考えられなかった。しかし、3年もお客が減った状態で、いつのまにかそれが普通になったから怖いのです。夜の営業も休んでいるけれど、いつになったら始めるのか、自分でも分からない。それだけの体力がなくなってきたような気もするのです。

 そんなことを考えながらも、今日も苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで皿に盛り付ける。小雨が降り出して、夕刻から雨という天気予報とは少しずれている。開店時刻の5分前には暖簾を出して、お客を待つけれども、昼を過ぎなければ来ないだろう、と思って昼を待てば、まだまだお客は来そうにない。店の中で身体をストレッチしたり、僅か数メートルの距離を行きつ戻りつ運動のつもりで、時間の経つのをもどかしく思う亭主なのでした。

 1時になったので、蕎麦を茹でておろしと山葵でぶっかけで食べる。コシがあって、蕎麦汁も味わい深く、何と美味しい蕎麦だろうか。自分は蕎麦が好きだからそう感じるのだろうかと、いつも思うのです。そんな一人芝居をしているうちに、駐車場に車が入って、女性二人のお客がいらっした。年配の母親と娘らしいお二人が頼まれたのは、ヘルシーランチセットのせいろ蕎麦。隣町からいらっしたそうで、ゆっくりと遅い昼を召し上がった行かれたのです。

 早朝の仕込みから考えたら、何時間も待ってのお客だから、とても有り難いことなのだけれど、一番嬉しかったのは、今日作ったデザートの苺大福と野菜サラダが出たことなのです。売り上げの多少はもう頭にないのが、やはり趣味でやっている蕎麦屋。閉店間際までお客がいたから、女将が来てくれてほっとする亭主。洗い物も少なかったから、2時過ぎには二人で家に戻るのでした。珍しく昼寝もせずに相撲を見る亭主に、早い夕食にはまたご馳走です。 

5月13日 金曜日 終日の雨 …

 夕べからの雨がまだ降り止まず、今日は一日中雨という予報でした。玄関を出れば庭の木々が生い茂り、先日剪定したばかりの木槿の木にもびっしりと若葉が伸びているのでした。女将の稽古場の脇の団扇サボテンも、この間、花芽を残して剪定したと思ったら、もう青々と葉を付けているから、自然の勢いは凄まじい。朝食の前にコンビニまで煙草を買いに出掛けて、ついでに蕎麦屋まで行って、チェーンポールを降ろしてくる。今日は車で出勤の予定なのです。

 駅前からの大通りは木々の緑が鮮やかだけれど、雨のお蔭で空はどんよりと曇っているのでした。家に戻れば、女将が台所で朝食の用意をしてくれている。「今朝のおかずは何ですか?」と聞けば、「鰺の開きと納豆で … 」という答えが返ってきた。海苔とひじきの煮物と蕪のお新香が付いて、味噌汁には蕪の葉と油揚げ。先週の蕎麦屋の二番出汁を持って帰っていたから、味は抜群なのですが…。子どもの頃、郷里の特産だった納豆は、毎日のように食べていた。

 同じく地域の特産だった干し芋や蒸かした薩摩芋もおやつ代わりによく食べた。その反動なのか、大人になったらほとんど食べなくなったのです。別に嫌いなわけではないのですが、どうしても敬遠しがちな食品なのでした。発酵食品だから身体に好いと、女将はご飯と納豆を海苔でくるんで食べている。最近はそれを亭主にも勧めるのです。寿司屋の〆の感じか。昔なら納豆だけで最初のご飯一膳を食べたけれど、今ではお替わりもしないし、おかずが多すぎる。

 今朝は食後にひと眠りをせずに、髭剃り洗面を済ませて、早めに蕎麦屋へ行く亭主。終日の雨だと言うので、お客も来ないだろうと傘を差して雪駄で歩くのを嫌がって車で出掛けたのです。天麩羅の季節の絵柄を描いた天紙が午前中に届く予定だったのです。雨が弱まるまで幟を立てるのを止めて、まずは蕎麦を打っておく。昨日の残りが大分あるから、500g五人分だけ打ち足して、直ぐに厨房に戻るのです。苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで盛り付ける。

 雨が小降りなって来たので、幟を立てて暖簾を出したけれも、昼過ぎになってもお客は来ない。待っているだけでは気が滅入るばかりと、ちょうど腹も空いてきたので、洗い物が増えるのを覚悟で、冷めた油を温め、かき揚げを揚げて蕎麦を茹でる。久しぶりの天婦羅付きのぶっかけ蕎麦です。新玉ねぎが甘くて美味しかった。やはり、食べるものはきちんと食べないと落ち着かないのです。こんな時にお客が来るのを恐れながら、最後の汁まで飲んで満足。

 珍しく、近くのマンションに住む例の子供が一人でやって来た。しばらく見ないうちに随分と大きくなっていたから驚いたのです。「いつものでいいのかい?」とせいろ蕎麦を茹でて、嫌いな薬味も小鉢も付けずに海老の天麩羅を揚げてやる。そして、カルピスとバームクーヘンのお菓子のサービス。無口な子だからあまりしゃべらない。「お婆ちゃんが入院した」とぼそりと話をするので、いろいろ尋ねるけれど、何を言っているのか亭主にはよく聞き取れない。

 男の子が玄関を出るのと、次のお客が入って来るのがほぼ同時なのでした。あの子が来るとお客が続くと、以前のスタッフがよく言っていたのを思い出す。まずはビールのご注文で、天せいろにカレー蕎麦を頼まれる。グラスは一つだけ出して、「どちらが運転ですか?」と尋ねれば、娘らしい若い女性の方が「私です」と応える。突き出しには蕗と蓮根のキンピラをお出しして、蕎麦を出し終えて二本目のビールにはお新香をサービスした。

 話をしながらゆっくりと食べて行かれたので、ラストオーダーの時間を過ぎたら、亭主は片付け物と洗い物を始める。お二人が帰った2時前には、鍋の火を落として大鍋の洗いと天麩羅鍋の油を漉し器に通す。帰り道、コンビニに寄っていつもの焼酎と揚げ物を買って帰宅する。若い店員が「今日は煙草は好いのですか?」「朝のうちに買いに来たから」と応える亭主の顔を覚えているらしい。今日残ったサラダとパリチキンとハッシュドポテトでまた焼酎を飲む。

5月14日 土曜日 未明から土砂降りの雨で …

 未明から土砂降りの雨で、雨の音で目が覚める有様。5時過ぎから起き出して、珈琲を入れて飲む亭主は、朝飯前のひと仕事も考えてしまうのでした。ガレージの車に乗り込む前にずぶ濡れになってしまうし、蕎麦屋のチェーポールを降ろすにもこの雨では大変なのです。テレビを点ければちょうど「YESTERDAY」という映画をやっていたから、以前ちょっと見て好かったので、初めからしっかりと観る。ビートルズが存在しない世界に目覚めた男の物語でした。

 流れる音楽がすべてビートルズのヒットメドーで、世界の誰もビートルズの音楽を知らないから、彼がギターを片手に歌って大反響を得るのでした。翻訳の歌詞もテロップで流れるから、こんな意味だったのかと、改めて聞き馴染んだ曲の素晴らしさを知るのです。今朝は朝食を終えてひと眠りもせずに、小降りになったからと傘を差して蕎麦屋に向かう。雨のみずき通りもまたおつなもので、歩道に植えられた姫車輪梅の花が満開になっているのに感動した。

 蕎麦屋に着いたら、まずは浅漬けを漬けて、空になった蕎麦徳利に新しい蕎麦汁を詰める。幟や看板を出すのはもう少し小降りになってからにしようと考える。店の室温は22℃と高く。今朝はとても暖かい朝なのでした。木曜も金曜もあまりお客がなかったので、生舟の蕎麦は随分と残っていたけれど、午後から天気が回復するという予報だったから、思い切って前向きに600gだけ蕎麦を打つことにした。今朝観たハッピーエンドの映画の影響だろうか。

 600gは六人分の蕎麦が取れる量で、八つに畳むと幅30cmになるのです。これを均等な幅で包丁で打っていくから、六回の試し打ちということになる。意識を集中して包丁を振り降ろし、切りべら26本で135gの蕎麦を六束作れば好いのですけれど、緊張する時間でもあり、これが楽しいひとときでもあるのです。これはやはり趣味の蕎麦屋なのかと、自分でもつい笑ってしまう。採算が度外視なのはちょっと悲しいけれど、なかなか止められないのです。

 今日は600g 6人分を打って、13人分の蕎麦を用意したけれど、気温も高く、昼から雨も上がると言うから、一縷の希望を持つのでした。切りべら26本で135gの束を生舟に並べて、「よ~し」のかけ声と共に、蕎麦打ち台の片付けに入るのです。週末だから手伝いに来てくれた女将も、雨が弱くなって好かったと言って、店の掃除を始める。亭主は看板と幟を出して厨房に戻るのです。今日も同じく、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻むのでした。

 苺大福は昨日作ったものですが、二日目までは十分に柔らかい。野菜サラダはこの雨だからと、三皿だけ盛り付けておきました。暖簾を出して1時間はお客もなく、亭主はかき揚げを揚げてぶっかけで賄い蕎麦を食べておく。「休んできて好いわよ」と女将に言われて、奥の部屋で一服。その間に、汚れた床を濡れ雑巾で拭いてくれて、随分綺麗になったから感謝なのでした。1時前になって、駐車場に車が入って、今日初めてのお客がご来店。

 とろろ蕎麦とヘルシーランチセットのご注文で、女将が野菜サラダを出している間に、亭主はとろろ芋をすり下ろして天麩羅を揚げ始める。若い奥さんと中学生らしい息子が、静かに語らう昼のひととき。外は雨も上がって、道路も乾き始めていました。もう一組ぐらいは来ても好さそうなのに、朝からの天候を考えると難しい。連休で出掛けた人々は今週は外食もしないというのが、店の暇な時間の女将の分析なのでした。こんな週末の日もあるのです。

 ラストオーダーの時間になったら、暖簾と看板をしまい、幟を降ろしてチェーンポールを締まったら、今日の片付けに入る。二人でやるから早いるで助かるのです。火の元の確認をして、忘れ物はないかと亭主が後から店を出るのですが、やはり朝差していった傘を忘れてしまう。家に戻れば、今日残った大福とお茶が出て、寛ぎのひととき。夕食には残ったサラダと漬け物と、冷しゃぶと新じゃがが出て、夫婦で大相撲を観ながらあれこれと語らうのでした。

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2022年5月初め

5月1日 日曜日 曇り空で寒い一日で …

 午前5時半に家を出て、蕎麦屋に向かう亭主。玄関前の木槿の木は、晴れた昨日のうちにやっと剪定を終えて、女将の言うように風通しが好くなった。しかし、今年の夏はあまり花が着かないだろうと思うのでした。剪定には時期というものがあるのです。蕎麦屋に着いたら、まずは昨日の洗い物を片付け、ほとんどなくなっていた小鉢の追加として、浅漬けの残りを盛り付け、明日の営業もあるからと、切り干し大根の煮物を作っておく。

 少しだけ味見にタッパに入れて、家に持って帰るのはいつものこと。帰りがけにミニ菜園の絹さやの様子を見たら、まだ随分と沢山実が付いていたので、ビニル袋一杯に収穫して、食堂で朝の食事の支度をしていた女将に手渡すのでした。早速、絹さやの卵とじにして出してくれたけれど、「下茹でもしないのに柔らかくて甘いわ」と女将が喜ぶ。植えた早春から何の手入れもせずに放っておいたのに、もう何回収穫したか。自然の恵みの有り難さを感じた。

 食事を終えて居間でゆっくりとしていたら、女将が「また雉が無花果の木の下で鳴いているのよ」と知らせに来る。二階に続く階段の踊り場の窓から見れば、確かにこちらを向いて鳴いているのでした。雌を呼んでいるのたろうか、雉の雌は大体少し離れた場所に隠れていて、滅多に地面には降りてこない。洗面と着替えを済ませて今朝も再び蕎麦屋に出掛ける亭主。曇り空の広がる天気で、南風とは言いながら、今朝も冷たい朝なのです。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入り、今朝の蕎麦を打つ。ちょっと多いかとも思ったけれど、750g 八人分を打って、昨日の残りと合わせて15人分の蕎麦を用意する。日曜日を馬鹿にしてはならないとは思うけれど、曇り垂れ込めた今朝の天気と連休というその日その日が読めない状況が、どう影響するか。初日は確かにお客も多く、女将の言うように休みで子供や孫が帰ってきたから、近くの外で食べようとお客が入ったのかも知れない。

 そう言えば、冷たい雨の日にもかかわらず、娘さんや孫と一緒にいらっしたお客が多かった。昨日もまずまずの数のお客が入ったのですが、天気が好かったか割には少ないのでした。今日は、今にも雨の降りそうな寒い曇り空で、店内も朝から暖房を入れていたのです。それでも苺大福を包み、野菜サラダを盛り付け、開店時刻の10分前から暖簾を出してお客を待ったのです。果たして、開店の時刻ぴったりに、常連のご夫婦がいらっしたからほっとした。

 毎週日曜日には決まっていらっしゃる常連さんで、ご主人はいつもカレーうどんとデザートの苺大福、奥様は鴨南蛮蕎麦のご注文なのです。野菜サラダが付いているから、健康にも気を遣われているのかも知れない。今日はあまり話もせずに、静かに食べてお帰りになる。お二人とも綺麗に汁まで飲んで、満足そうに店を出られるのでした。「有り難いことですね」と女将が言うものだから、亭主も静かに頷いて帰る車を見送るのです。

 しかし、その後いくら待ってもお客は来ない。天気が悪いからなのかも知れないけれど、毎年、連休中の来客の予想は立てにくいのです。このところなかなか取れない女将のスポーツクラブの予約開始の時間が迫っていたから、今日は少し早めに店じまいをして、急いで家に帰る女将と亭主。やっと時間に間に合って、亭主はパソコンの前に座って残り二つの席の一つを確保しました。急いで歩いたから、足の親指が痛いのでした。まだ完治していないのか。

 今日も野菜サラダが半分残ったから、夜は当然、お好み焼きだろうと思ってはいたのです。書斎の暖房を入れて、ぐっすりと昼寝をした亭主が目覚めて食堂に入れば、女将は買い物から帰ってお肉を買って来たと言う。今日はきちんと小麦粉と水の分量を量って、亭主がお好み焼きを作り始める。小麦粉は一人前70g。水が150cc。卵を入れてよくかき混ぜたら、油を引いたフライパンに肉を並べ、溶いた小麦粉を流し込む。サラダの刻んだ野菜を載せて蓋をします。

 こんがりと焼けた頃合いを見計らって、野菜を載せた生地をひっくり返すのが亭主の腕前。何のことはないフライ返しを添えて、フライパンを振るだけなのですが、女将には出来ないらしい。また蓋をして野菜の側をしばらく焼いたら、再び今度は大皿にこの生地をひっくり返して載せるのです。綺麗に仕上がると心も楽しい。生姜と青海苔を載せて、今日の夕食なのでした。明日は八十八夜の大型連休の中日。蕎麦は打たなくても十分なくらいなのですが … 。

5月2日 月曜日 久々に平日のお客が10人を越えて …

 蕎麦屋の隣のお宅に引かれている電線に、一羽のツバメが止まっていました。どうやらお隣の軒下にある燕の巣が気になる様子。身体が大きいから雄なのでしょうか。雌がそろそろ産卵の時期なのかも知れない。今朝は亭主も時間があったから、しばらく観察していたのです。玄関前の看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろしたら、ほうじ茶を飲んで今朝の段取りを考える。昨日のお客が少なかったので、蕎麦は生舟に二箱残っているのです。

 昨日は、野菜サラダが付いたカレーうどんと鴨南蛮蕎麦のお客だったから、小鉢もそのまま残っているし、蕎麦汁も十分な数があるのです。月末に届くと連絡のあった減塩醤油が、今朝の段階ではまだ届いていないのが気がかり。連休中の宅配が遅れているのだと言う。大甕に残った返しはもう僅か。仕方がないから一本だけ残っていた減塩醤油を使って2㍑弱の返しを作っておくことにしました。やはり、作ってから少しは寝かせないと宜しくないのです。

 小さな甕を用意して冷めた返しを鍋から移したら、冷蔵庫の中から昨日作った苺大福をカウンターに並べ、蕎麦豆腐も味噌ダレも今日の分ぐらいはあることを確認しておきます。後は大釜の湯が沸くのを待って、お茶のポットや暖め用のポットに湯を入れれば好い。まだ野菜サラダの具材を刻むにはちょっと早すぎるのです。細く刻んだキャベツやニンジンが乾いてしまうから、できるだけ開店の間際に作って、ラップを掛けるようにしている。

 大根をおろしても、蕎麦打ちや他の仕事がないがないと、一時間近くは余裕があるのです。雪駄を履き替えて前の畑に出て、そろそろ終わりのポピーの群生と雲のかかった青空を撮したり、隣の畑の様子を眺めたり、終いには東側のミニ菜園に出て、時期の終わる絹さやの最後の収穫をするのでした。ビニール袋に今年は6回も採ったから、手入れもしないのに、自然の恵みを美味しく頂いた。その後の菜園の手入れもやらなければならない仕事の一つなのです。

 開店と同時に年配のお客がいらっして、蕎麦を食べながらゆっくりと話をしていかれた。隣の市の有志で作る歩く会の下見に来たのだとか。洗い物を済ませて昼を過ぎた頃に、四人なんですけれど、まだ一人が来なくてと年配の女性が歩いて呼びに行く。その間に、隣町の常連さんがいらっゃる。これは大変だと珍しく家にいる女将に電話をして、手伝いに来てもらうのでした。電話を終えたら、もう次のお客がぞろぞろと店に入って満席になるのでした。

 続けてまた一台車が入ってきたけれど、店の中を混み様をご覧頂いてお断りする。一度に10人の注文は聞けないので、早く頼まれた人から順番に調理を始める亭主。普段はのんびりと話をしていかれる常連さんも、今日は黙って野菜サラダをカウンターから取って、静かに蕎麦を食べておられた。混んだ時に限って、大勢でいらっしたお客が、一人一人違うメニューを注文するのです。天せいろに温かい汁のぶっかけ蕎麦、天麩羅蕎麦に鴨せいろ、カレーうどん。

 さすがの亭主もこう同じ時間帯では、女将の手伝いなしでは注文の順番も覚えきれない。たまたま今日のスポーツクラブの予約が取れなかったから、女将が家に居たので助かったのです。すべてのお客が帰って洗い物を始めたから、片付け終わったのは3時近く。連休の谷間だからなのでしょうか、東京の子供夫婦が来たからとか、会社の同僚でいらっしたらしい5人連れとか。家に帰って夕食には女将にお礼にと、亭主は魚屋に特選寿司を買いに出掛けたのです。

5月3日 火曜日 気持ちよく晴れた一日で …

 昨日は早い夕食を終えたら、風呂の時間までぐっすりと眠ったから、夜は遅くまでブログを書いていたのです。定休日だからと早朝には蕎麦屋に行かないつもりでしたが、いつもの習慣で車で出掛けて昨日の片付けをするのでした。昆布と干し椎茸を鍋に入れ、出汁を取る準備をして、家に戻ろうとすれば、6時半の太陽はもう随分と高く昇っているのです。女将が台所で朝食の支度をしてくれていました。採り立ての絹さやの卵とじと納豆がメインのおかず。

 今朝は珍しく食後のひと眠りをせずに、洗面と着替えを済ませてお袋様を迎えに行くのでした。週に一度の仕入れの日だけれど、天気が好いと気分も晴れやか。農産物直売所に向かう道々、躑躅と並木の新緑を眺めながら、お袋様とこの一週間の出来事を話し合うのです。通風の具合はどうかと、幾つになっても子を思う親の気持ちが有り難いのでした。今日は、まだ野蕗が出ていたのでもらって帰る。農家の野菜もそろそろ夏の物に変わりつつあるのです。

 お袋様を家まで送ったら、蕎麦屋に戻って隣町のスーパーでも仕入れた野菜を冷蔵庫に収納します。今日はもう少し頑張って、先週なくなったカレーの具材を煮込み、その間に後ろのレンジで湯を沸かして野蕗を湯がく。少し大きく育っているから、二把も買って来たのに、皮を剥くのがとても楽だった。カレーの鍋の様子を見ながら、ミニ菜園で採って来た月桂樹の葉とルーを加えて、しばらく弱火で煮込んでおく。今回は具材がちょっと多すぎたかな。

 昼の支度に間に合うようにと、午前中の仕込みはここまで。皮を剥いた野蕗の茎は、5cm幅に切ってタッパに入れておきます。悪くなるわけではないけれど、煮物も含めて小鉢の具材は、できるだけ定休日の二日目に作りたいというのが、亭主の考えなのです。五日間の営業だから、これまでも食材が残っても、まだ家に持ち帰って食べている。それでも、できるだけ作りたての美味しい物を、お客に出したいと思うのは、調理人の心理なのでしょうか。

 だから、一度に沢山作らずに、お客の入り方ににもよるけれど、五日のうちに二回は小鉢の仕込みをしたいのです。家に戻れば、女将が蕎麦を茹でる湯を沸かして待っていました。今日は蕎麦だけではタンパク質が足りないだろうと、昨日残った野菜サラダを皿に盛って、鶏ささみの塩麹漬けを焼いてくれたのです。先週残った山芋も擦ってあったから、亭主は蕎麦を茹でて蕎麦皿に載せるだけ。とてもリッチな気分で昼食を食べる。蕎麦湯が甘くて美味しい。

 やらなければならないことは沢山あるのに、昼を食べて満足した亭主は、例によって書斎に入ってひと眠り。朝に眠らなかった分、今日は2時間もぐっすりと眠ってしまった。これも生活の習慣なのでしょうか。まるで食べて眠って料理を作るだけの一日なのです。ほとんど歩かないので、体力が落ちているのかも知れないから、早く足の指が治ってプールに通う生活を始めたいものです。3時過ぎに家を出てまた蕎麦屋に行って仕込みの続き。

 冷ましておいたカレーの具材を袋に詰めて冷凍したら、朝から昆布と干し椎茸を浸けてあった鍋に火を入れて、出汁を取り始める。先週は温かい汁の蕎麦が沢山出たから、二番出汁が足りなくなったので、今日は追い鰹で二番出汁を5㍑も作っておきました。一番出汁で作る蕎麦汁も冷やして蕎麦徳利に詰めて、まだ1.5㍑も残ったけれど、容器に入れて冷蔵庫で保存する。時計がもう4時半を回ったので、家に戻って夕飯の支度を待つのでした。

 昼のうちに打合せをしていたとおりに、女将がアスパラガスの肉巻きを焼いて、ついでに今年最後のタラの芽とコゴミも炒めてくれました。渓流の宿ではこの時期に、一年分の山菜を採って塩漬けにすると言うけれど、都市近郊に住む私たちは、その時期だけでもう食べ飽きる。それで十分に季節の推移を堪能しているのです。テレビのニュースはいつもと同じであまり伸展がない。明日はどこまで仕事が出来るのか、亭主にとってはそれが大問題なのです。

5月4日 水曜日 風の強い五月晴れの一日で …

 定休日だというのに、今朝も早くから目を覚まして、蕎麦屋に歩いて出掛けたのです。ちょっと右足を引きずるけれど、靴が履けるようになればもう少しは歩けるかも知れない。やっと減塩醤油が届いたから、一週間は寝かせなければならない返しを作るのが、一番の仕事だったけれど、乾いた洗濯物を畳んだり、昨日使った鍋やボールを片付けたりと、やることは沢山あるです。7時前には仕事を終えて前の畑のポピーを眺めれば、朝日はもう高く昇っている。

 家に戻れば、女将はもう台所に立って、朝食の支度をしてくれている。沢山採れたミニ菜園の絹さやの卵とじと納豆は昨日と同じだったけれど、野蕗の葉を佃煮にして出してくれたのが、亭主にはとても嬉しかった。ほろ苦い味が季節の香りなのです。蕎麦屋の天麩羅の具材も味噌汁にして使ってくれた。カボチャの甘みが美味しいのです。4時半から起き出したから、食後のひと眠りはぐっすりと1時間。「よく寝られるわね」と女将には言われるのです。

 その間に、彼女は洗濯とゴミ出しを終わらせ、朝ドラを見てしばしの休憩なのです。蕎麦屋で昨日新しくカレーを作ったから、残った分は家に持ち帰ったので、亭主は今日の昼にカツカレーを食べたいと、隣町のスーパーに出掛けて買い求めてくる。見るからに大きなカツが一枚150円だから安い。ついでに冷凍の白餡や蕎麦屋の備品、女将に頼まれたトイレットぺーパーを買って、そのまま蕎麦屋に直行する。午前中の仕込みはタイムリミットあるから大変。

 まずは蕎麦豆腐を作って、白餡を氷糖蜜と水で溶かして火にかけてから、野蕗のキンピラを作るのでした。白餡の仕込みには1時間以上はかかるので、他の仕事をしながら時折お玉で掻き回して、気長に硬く仕上げなければいけない。時間に余裕のある定休日でなければ、なかなか出来ないことなのです。それでも冷凍の白餡を使うようになって、豆から煮て皮を剥いたり、煮た豆を濾したりする手間がなくなったから、少しは楽になった。

 女将のスポーツクラブの予約は11時半に開始される。二週間後の予約を取るのだから大変なのです。今日も5分前にはパソコンの前に座って、壁の時計の秒針を見ながら、ぴったり11時30分に画面を開いたら、まだ誰も予約していない。しめたとばかり一番前の席をクリックすれば、もう予約が入っていると表示さてれ、次の席を取る間に他の席はすべて埋まっていたから驚きです。この間わずか30秒。「連休でみんな家にいるから取れるのよ」と女将は言う。

 「5Gのスマホの方が速度が速いから、早く取れると皆言っているわ。」と女将も知っていた。仕方がないから、前日のヨーガの教室の残り二席の一つを取って、何とか汚名挽回。初心者向きではないけれど、出たいインストラクターの教室というものがあるらしい。昼は念願のカツカレーライスを食べて、至極満足な亭主は書斎に入ってまたひと眠り。身体に好いのか悪いのか、「よく寝れるわね」とまた女将に言われるのでした。食って寝て料理をするだけ…。

 これでせめてプールで泳げれば、運動も出来てバランスも取れるのですが、連休中に感染者数が減っているのはまだ安心できない。沖縄や北海道が関東よりも感染者が多いのは、こちらから出掛けて行く人が多いからなのでしょう。足の具合もあるから、亭主はまた蕎麦屋に出掛けて明日の仕込みをするのでした。先週は予想通りに鴨の料理がよく出たので、添える小松菜がなくなっていたから、茹でて冷凍庫に入れておく。新鮮な農家の野菜が有り難いのです。

 天麩羅の具材を切り分けて容器に入れたら、明日のお新香を糠床に漬けて、1時間半の午後の仕込みは終了です。定休日の仕込みはのんびりやるからストレスがない。帰りにコンビニに寄っていつもの焼酎とつまみを買って、家に帰ればもう夕飯の時間です。休日だから、マイナーな夫婦の見たい番組はやっていない。二人でいろいろな話をしながら夕飯を食べて、亭主は杯を重ねる。今日はとても暖かい一日でした。明日は蕎麦を二回打たなければいけないのか。

5月5日 木曜日 昇る朝日が眩しすぎて …

 午前6時前の東の空に昇った朝日は、やけに眩しくて、日中の暑さを予感させるのでした。草むらの向こうでキキーッと雉の鳴く声がする。見れば開けた草の間に見慣れた雄の雉がいるではありませんか。家の裏手の草むらまでは、バス通りを隔て100m以上の距離があるけれど、その間を言ったり来たりしているのだろうか。蕎麦屋に着いて、早速、気になっていた糠床を冷蔵庫から取り出し、切り分けて小鉢に盛り付ける。薄塩で14時間だからちょうど好い味。

 今日は祝日こどもの日で、連休最後の一日。店の電話に昨日は何件かの着信履歴が残っていたから、きっと「営業していますか」という問い合わせだったのでしょう。大晦日以外は一年中、火曜水曜が定休日と決めているので、その分、今日はお客が来るかも知れないと、早朝から一回目の蕎麦を打っておく。あんまり時間が早いので、ちょうど朝日が蕎麦打ち室の窓から差し込んで、目映い程の明るさなのです。これではかなり蕎麦が打ちづらい。

 伸した蕎麦の厚味は縁の影で見るから、今日は眩しいのでちょっと感覚が掴めなかったのです。仕方がないから、掌で触って暑さを確かめるのでしたが、硬さもちょうど好い具合なのに、包丁切りも珍しく思うように上手く出来なかった。こんな時間にしかも太陽が眩しい時に、蕎麦を打つことがあまりないから、朝飯前のひと仕事にしては、ちょっと拙かったかも知れない。それでも無事に八人分の蕎麦を打って家に戻るのでした。時計を見ればもう7時前。

 女将の用意してくれる朝食も、あとは魚の焼けるのを待つばかりで、銀の小皿にお新香を入れたのが、ラディッシュの赤とキュウリの綠が映えて綺麗なのでした。三点盛りは女将特製の蕗の葉の佃煮と、アサリの佃煮、そして大豆の昆布煮。これだけでも十分に朝飯のおかずなのに、昨日の縞ホッケがまだ残っていたと見えて、ちょとおかずが多すぎた。満腹になった亭主はすぐに書斎でひと眠り。ところが、今朝は10分ほど微睡んだらもう目が冴えてしまった。

 やはり、連休最後の一日というプレッシャーなのだろうか。普通の飲食店なら、連休は休まず営業のでしょうが、亭主もお客も段々と年を取ると、いつ営業しているのか分からないと言われるので、最近では、年中、火曜水曜が定休日と言うことにしているのです。朝から気温も高く、快晴の空なので、どれだけお客が来るかと、取りあえず二回目の蕎麦打ちをして、今日の営業に備えるのでした。女将がやって来て、洗濯物を畳んで店の掃除をしてくれる。

 蕎麦打ちを終えた亭主は、苺大福を包み、野菜サラダを盛り付けたら、新しい天麩羅油を鍋に注ぎ、天つゆを温め始めるのでした。「こどもの日には例年お客が少ないわよ」とは女将の言葉。そうは分かっていても、開店の時刻にはやはり緊張するのです。昼をだいぶ過ぎた時間に、やっと最初のご夫婦がご来店。自転車に乗ってサイクリングの途中らしかった。続けて車が駐車場に入って、二組目のご来店。どちらもご新規のお客さんなのでした。

 結局、この二組で今日はお終い。洗い物を片付けて大鍋を洗ったら、女将と二人で店を出るのでした。向かいの休耕地は草が伸び放題で、森の木々の葉も色濃くなって、まさに立夏の季節なのです。気温はとうに25℃を越えているはず。家に戻って短パン・半袖になった亭主は、書斎に入ってパソコンに向かう。薬を飲むのも忘れてひと眠りです。女将は稽古場に入って次回の雑誌に出す書の下調べをしていた。夜はカレーの残りと今日のサラダの残りを食べる。

5月6日 金曜日 立夏も過ぎて暖かな一日でした  

 珍しくゆっくりと起きた朝でした。夜中に目が覚めて居間で煙草を一服してから、再び床に入ったのですが、暖かかったからまたぐっすりと寝に入ったのです。半袖でも十分なくらいでしたが、ちょっと心配だったから、長袖の薄いジャージを羽織って蕎麦屋に出掛ける。ところが、店の中は朝からもう20℃もあって、動き出したらもう暑くなった。蕎麦打ちを始めたら暑くて堪らなくなり、ノースリーブのシャツ一枚になって厨房に戻る。

 隣の畑のポピーも今朝は朝から花を広げている。朝の涼しかったこの間まで朝は、花びらを閉じていたのです。植物も敏感に気温に反応しているらしい。昨日の蕎麦が生舟に一箱残っていたから、今日は500gだけ打つことにして、練習のつもりで丁寧に包丁切りまで進むのでした。等間隔に切れているから、同じ太さの蕎麦が仕上がったのです。こうやって毎日上手に打つことを積み重ねないと、沢山打ったり、急いで打ったりした時に、ぼろが出てしまうのです。

 切りべら26本で包丁を打ち終え、打ち粉を払って計量すれば大体135gなのです。加水率はもう42%を切っているから、やはり季節の推移と共に、上手い具合に水を減らさなければならない。植物の花のように蕎麦粉も生き物だと思えることがよくある。毎日、蕎麦粉と会話をしているかのようで、黙々と蕎麦を打ち続ける自分が、元気をもらっているような気がします。上手くいった日には「よし」と大きな声で言って、道具を片付け始めるのです。

 昨日はお客が少なかったから、今朝はあまり仕事がない。早めに蕎麦屋に来たのは、蕎麦粉が届く日だからなのです。それでも宅配の業者の都合で、今日も蕎麦を打ち終えた頃にやっと荷物を持ってきた。「お蕎麦食べられますか?仕事も終わったので」と蕎麦粉を運んで来た若者が言うけれど、10時前だったからまだ湯も沸していなかった。開店時刻の張り紙を見て「あっ、11時半からですね」と一人納得して帰って行ったのです。食べさせてやりたかったなぁ。

 苺大福は昨日作った物が全部残ってたから、あとは大根をおろして野菜サラダの具材を刻むだけ。時間のある時には、ゆっくりと丁寧に包丁を使う。ブロッコリーとアスパラを茹でて、新キャベツも出来るだけ細かく刻む。ニンジンもジュリエンヌと言えるくらいに細く刻んで、以前、注文をしたお客が「わあっ、綺麗ね」と言った姿を思い出すのです。それでも、昨日もサラダとデザートは一つも出なかったから、こちらの思うようにはいかない。

 開店の時刻の10分前に暖簾を出したら、大きな白い車が滑るように駐車場に入ってきた。隣町の常連さんで、珍しく混んだ月曜にも来たばかり。「筍まだありますか?」と、今日は野菜サラダは食べずに、筍の天麩羅とせいろ蕎麦をご所望なのでした。亭主に言われて旬の物を食べるようにしているのだとか。満席だったこの間は話も出来なかったから、今日は早い時間からゆっくりと、ご自分があちこちで暮らしたという世界の情勢を話して行かれたのです。

 連休の後だから、今日はこれでお終いなのかなと思いながら、洗い物を済ませていたら、車が一台二台と駐車場に入ってくる。待ち合わせをしていたらしい若い四人のお客がテーブルについて、天せいろ四つと二人の男性はビールのご注文。二回に分けて天麩羅を揚げるから、お二人ずつお出しする。一人で営業をする時には、盆に蕎麦皿や天麩羅を載せる皿、天つゆの皿を載せ、小鉢や蕎麦徳利、薬味の皿を用意してから、天麩羅を揚げて蕎麦を茹でる。

 1時過ぎまでゆっくりと食事をなさったお客が帰って、亭主は片付け物と洗い物で忙しくなる。1時半になってもう終わりだろうと野菜の天麩羅を揚げて、ぶっかけ蕎麦でも食べようと蕎麦を茹でたところで、また一台車が入ってくるのです。平日にしては珍しい。開店から閉店時刻を過ぎるまで、お客が絶えなかったのは嬉しい。伸びた蕎麦に汁を掛けながら、一人で遅い昼食を食べるのでした。洗い物を終えて片付けをしていたら、とうに3時半を過ぎていた。

 この時間なら大丈夫かと、冷蔵庫から糠床を出して、明日のお新香を漬けておく。残った野菜サラダと苺大福を包んで、蕎麦屋を出たら向こうから女将がやって来る。「あんまり遅いから、どうしたのかと思ったわ」と亭主の荷物を持ってくれた。家に着けば芍薬の堅いつぼみがやっと開いて、今にも花が咲きそうなのでした。居間に入ってパソコンに向かった亭主は、今日の売り上げと写真とを入力したら、ばったりと横になって夕食までの遅い昼寝。

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2022年4月末

4月26日 火曜日 曇り空、躑躅が満開で …

 午前4時には目が覚めて、蕎麦屋に出掛けてひと仕事。最近は朝寝も昼寝も夜の睡眠も、目覚めてから次は何をするのだっけと考えるから、ちょっと怪しい精神状態なのです。そのくせ、夢に見るのは食べることばかりで、昔の職場の近くで何が美味しいからと、時間の都合を付けてかつての同僚と食べに行く有様。夜食を食べなくなって空腹なのだろうか。家に戻って朝食までの時間に、塀際の木槿の剪定を始めた。時期が違うけれど、女将の要望なのでした。

 朝食には蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやとアサリの味噌汁。昨日残った三ツ葉は女将の作ったしみ豆腐とで卵とじ。お腹が一杯になったら、またひと眠り。目が覚めたら洗面と着替えを済ませて、お袋様に電話をする。曇り空だったけれど、農産物直売所までの道には躑躅が満開なのでした。並木の赤い新芽も見事に育って、この時期に散る沢山の常緑樹の枯れ葉は、掃除をするのが大変だろうと思うのでした。時間が早かったからまだ店には野菜があまりない。

 お袋様を送ってマンションまで行けば、躑躅が満開で見事なのです。蕎麦屋で買ってきた野菜を冷蔵庫に収納したら、今日は床屋に行く日なので、急いで隣町まで出掛ける。前に一人お客がいたけれど、「直ぐ終わるから待っていて下さい」と親父様に言われて、話をしながら順番を待つのでした。今日の話題はウクライナ情勢と知床の遊覧船の事故。亭主同様に釣り舟で海に出ていた親父様も、3mの波では釣り船も出ないと言うのでした。

 昼飯の準備をしなければと時間を気にしていた亭主は、床屋が終わったら自宅に電話をして、女将に直ぐ帰るからと言う。今日は、昨日残った蕎麦と揚げて帰った天麩羅で、天せいろの予定なのでした。床屋にいた間に、何時の間にか雨が激しく降りだしていて、曇り空に新緑のハナミズキの通りもまた一興。今週末まで、天気も不安定の予報なのでした。今日は女将のスポーツクラブもお休みだから、大鍋にを沸かして、天麩羅を焼くばかりになっていた。

 昨日揚げて帰った天麩羅は、揚げ方が好かったのか、グリルで焼いたら揚げたてのような美味しさ。銅の天麩羅鍋の威力はこんな所にも現れるのでした。蕎麦湯を飲んで亭主は至極満足したから、お茶も飲まずに書斎に入って横になるのでした。定休日だから気兼ねは要らないと、1時間余り眠って果物を食べて目を覚まし、午後の仕込みに蕎麦屋に出掛けるのです。まずは、朝のうちに昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を沸かして出汁を取らなければ … 。

 その前に、午前中に買い忘れたレタスを何処かで調達しなければいけない。一番近い農産物直売所には、朝は野菜があまり出ていなかったけれど、この時間ならもう持って来ているかも知れないと、新緑の並木道を走って出掛けたのです。果たして、欲しかった野蕗も出ていて、少し古いけれどレタスもあったのでもらって帰る。野蕗のキンピラはなかなか美味しいから、もう一度は作りたかったのです。雨は上がったけれど曇り空で、新緑の並木も映えない。

 蕎麦屋に戻って出汁取りに1時間。やっと手に入れた野蕗を湯がいて皮をむいておこうかと思っていたけれど、夕食の時間が迫っている。明日の仕事が増えるとは思ったが、あまり無理をしてまで仕込みをすることはないと、家に戻って夕食を待つのでした。隠居仕事に無理は禁物というのが、最近の亭主の考え方なのです。それでも通風の足の具合はまだ完治していない。年を取ると治るのも遅いのかも知れない。朝のうちに木槿の剪定を一本だけ済ませて正解。

 夕食は、昨日残ったサラダを添えて鶏の胸肉の炒め物にジャガイモのサラダ。女将が10年ぶりで通風の発作が出た亭主のために、カロリーを減らすために考えてくれた食事療法なのですが、最近はこれで十分お腹が一杯になるから不思議。願わくば、早くプーで泳ぎたいとは思うけれど、まだ靴も履けない状態で夜の防犯パトロールにも参加出来ていない。あまり焦らずに自然の治癒を待つしかないのだと、今夜も焼酎をあおってブログを書いているのです。

4月27日 水曜日 朝まで風が強くて …

 昨夜は足の指の具合も良かったからか、珍しく焼酎のボトルを半分近く空け、9時半には床に就いてしまったのです。蕎麦屋には出掛けているとは言え、やはり定休日は、心も身体も安らぐのでしょう。お蔭で今朝は4時半にはもう目が覚めて、ビュービューという風の音を聞くのでした。夕べ寝るときにも風は吹いていたのに、酔っていたからか気にならなかった。5時のニュースを見てから、少し早い時間だったけれど、雨の中を車で蕎麦屋に向かうのでした。

 昨日は午後にもう一度農産物直売所に出掛け、朝は早すぎてまだ入っていなかった野蕗を二束仕入れて来たのです。先週の倍だから今朝のうちにせめて板ずりをして、皮を剥いて短く切りそろえておければと思ったのですが、塩を振ってゴロゴロとまな板の上を転がすまでは好かったのです。沸騰した大きな鍋で2分ほど茹でて、冷水に取ったらさあ皮剥き。これが細い蕗が何本もあるから、なかなかはかどらない。爪で先の方を剥いだら一気に皮を引っ張る。

 半分ほど終わった頃にやっと慣れて来て、次々と皮が剥けるようになったけれど、30分近くかかっただろうか。7時近くになってやっと家に戻るのでした。朝食の支度をしていた女将が、グリルから取り出したのは、昨日亭主が買って帰ったワラサのカマの塩焼き。魚の大きさがまだ鰤ではないのだろうが、脂が乗ってとても美味しかったのです。「随分食べる処があるわね」と女将もお腹が一杯になったらしく、二人とも満足な朝食なのでした。

 朝が早かった割には、食後に横になってもなかなか微睡めない。仕方がないから蕎麦屋に出掛けて、朝の続きを作業を始めるのでした。蓮根の皮を剥いて、切り分けて酢水で茹でたら、小さめの蓮根を切ってキンピラ用に取り分けておく。残りは明日の天麩羅の具材にする。冷凍してある油揚げを短冊に切って、蓮切りにしたニンジンと一緒に、輪切りにした唐辛子を入れたごま油で炒める。最後に野蕗を入れて出汁で煮て、味つけをして汁の少なくなるまで待つ。

 ちょうどその時に玄関が開いて、元のスタッフがまた筍を持って来てくれた。すぐ近くだとは言え、雨の中をわざわざ有り難うございますと、昨日買っておいた苺としらぬいを袋に入れて渡す。今年はこれで最後だと言う。短い期間だけれど旬の物とはそれで好い。コゴミもタラの芽も、今採ってあるものでお終いだから、旬の山菜の天麩羅は今週限りで終わりになります。その後はもう夏野菜になるのだろうか。天麩羅用に筍の先端を切って冷凍しておく。

 残った筍を家に持ち帰れば、「夜は筍ご飯にするわ」と女将が言う。スポーツクラブの予約があるので、早めに昼食の用意を始める亭主。女将は隣で筍の梅和えを作っている。スープはアサリとレタスのコンソメ味で作り、フライパンに油を引いて肉と玉葱、ニンジンを炒めてご飯を入れる。あまりにも亭主の手際が好かったので、11時前には早すぎる昼食を食べるのでした。お好み焼き用の青海苔と紅ショウガもあったから、ちょうど好い塩梅。

 食べたら直ぐに眠気が襲ってきたけれど、「眠いのに悪いけれど(予約開始は)11時半ですからお願いします」と女将に言われ、今日のブログの写真をパソコンに移す。パソコンの前に座っていれば忘れることはない。40分ほどブログの記事を書いて、5分前から壁の時計の秒針を眺めて、ぴったり11時半に予約を完了する。今日はまだ誰も予約を入れていなかったけれど、早い日には1分もしないうちに埋まってしまうのです。晴れてゆっくりと午後の昼寝。

4月28日 金曜日 朝はひんやりでしたが …

 夕べも早く休んだので、今朝はまた朝飯前のひと仕事です。外はひんやりとした空気で、北風が入り込んでいるらしい。向かいの休耕地に生えたポピーのオレンジ色が、曇り空なのにやけに映えるのでした。一日三本のバス停は、駅から団地の中を通って蕎麦屋の前に停まるから、近所の老人たちが買い物や通院に使うことが多い。この他にも、駅から10分ほどで蕎麦屋まで来る市のコミュニティーバスが一時間毎にあり、この区間は手を上げれば止まってくれる。

 気になっていたのが、昨日の夕刻に漬けた糠漬けなのです。塩を薄めにして漬け込んで、糠床を冷蔵庫に入れて14時間。これ以上長く漬けると塩辛くなってしまうから難しい。ラディッシュのあるうちは、赤い色がアクセントになってなかなか好い。ナスの色止めもしっかりと効いているのです。ラップを掛けて冷蔵庫に入れたら、次は昨日作った野蕗のキンピラを小鉢に盛り付ける。蕗を倍増したから香りが好い。亭主はかなり気に入っているのです。

 盛り切れなかったお新香は、小さなタッパに入れて家に持ち帰ったけれど、まだ前のお新香が残っていたらしい。食堂に入ればぷーんと懐かしい香りがしたのは、女将が鰺の開きを焼いていたから。便利な時代だから冷凍してある筍ご飯も、レンジでチーンすれば美味しく食べられる。食後のお茶をもらったら、例によって亭主は書斎でひと眠り。20分ほど微睡んで、髭を剃ったら着替えをする。女将の朝ドラが終わる時間に「行ってきま~す」と玄関を出る。 

 庭の芍薬の赤い蕾が大きくなっている。季節はいよいよ初夏なのです。蕎麦屋までの道程も、足の指をかばいながらも、だいぶ歩くのが楽になっている。それでもまだ親指の腫れは引かないから、今回はかなり重傷なのだろうか。靴が履けないのでは夜のパトロールにも参加出来ない。それが気がかりでならないけれど、女将は冷たく「痛いのを無理をして、酷くなっても知らないわよ」と言うのでした。年を取ってやはり回復が遅くなっているのだろうか。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。加水率42%でちょうど好い柔らかさ。室温は19℃だから、暖房を入れる程でもないのです。蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱を刻み、大根、生姜をおろしておきます。9時を過ぎた頃に、蕎麦打ち室に戻って、生地を伸して畳んで包丁切り。最近は、定休日明けには750gで八人分と決めている。コロナ禍になって平日に8人を越えるお客は滅多にないのです。

 再び厨房に戻って苺大福を包み、ブロッコリーとアスパラを茹でて、野菜サラダの具材を刻む。11時前には大釜の湯も沸いてポットに入れて、天麩羅鍋に新しい油を注いで、天つゆの鍋も火にかけておく。店の掃除は簡単に、箒で床を掃いたらアルコールでテーブルを拭く。亭主一人で始まる定休日明けの営業は、何となく心細い。もう8年になるというのに、最初のお客が来て身体が動き出すまでは、どこか気持ちが落ち着かないのです。

 今日は家の近所に住む同年代の女性が、久し振りに蕎麦を食べにいらっした。カウンターの隅に座って、文庫本を読みながら、天せいろが出来上がるのを待つ。「筍とコゴミの天麩羅をお付けしました」と言って盆を運べば、「コゴミが食べられるなんて」と懐かしんでいらっした。次のお客はご夫婦で、テーブル席に座ってやはり天せいろのご注文。食欲のなかった娘さんが、蕎麦を食べに来て美味しかったと、今度は親御さんが食べにいらっしたのでした。

 最後のお客はご夫婦で鴨南蛮蕎麦のご注文。野菜サラダを運んで行けば「わぁ、綺麗ね」と奥様が喜んでくれました。鴨肉を焼いて温かい汁でお出しすれば、玄関が開いて先ほどのお客が戻っていらっした。「お釣りを沢山くれすぎたわよ」と、千円札とレシートをを出して、亭主のレジの打ち間違いを教えてくれたのです。なんとも親切なお客様だと、残っていた苺大福を包んで持って帰ってもらったのです。「早く一人に慣れてよ」と言われてしまった。

 お客が帰って洗い物を片付けていたら、スポーツクラブから帰った女将が最後の手伝いに来てくれる。一緒に蕎麦屋を出るけれど、足の具合を気にする亭主はかなり後から家に着く。彼女のスポーツクラブの予約をするパソコンは、もうスイッチが入っている。一時間遅れで画面を開いて、残り一つの席をゲット。夜はあまり食べるものがないので、亭主がコンビに唐揚げを買いに出掛けた。ついでに週末は寒くなるらしいので灯油を買ってくる。1㍑140円 … 。

4月29日 金曜日 雨雨雨の金曜日でしたが …

 6時前から目覚めて居間で一休みしていたら、女将が台所に入る前に「また雉が鳴いているのよ」と知らせに来たのです。最近、家の裏の空き地に雉が来ると言うので、裏窓から様子を窺えば、確かに色の綺麗な雉の雄が、畑の草を啄んでいるではありませんか。鳴き声がキキーッと独特だから、女将も気になるらしいのです。蕎麦屋の前の畑にはいつも雉がいるのですが、何百メートルも離れた家の裏にいるのは同じ雉か、雌を呼んでいるのかも知れない。

 朝ご飯は骨取りの鯖が今朝のメインのおかずで、筍のお吸い物と筍のご飯が季節を感じさせるのでした。箸置きは陶芸家の古い友達の焼いてくれたもので、蕎麦屋の大福を載せる皿と同じ文様で、八角形の箸も彼女が何かの折に手渡してくれたものなのです。女将の作る食事と旧友の贈りものとが、亭主の心豊かな毎食毎の彩り。朝飯前のひと仕事に出掛けなかった分、今朝は少し早めに家を出て、ご近所の卯木の花を眺めながら蕎麦屋に向かうのです。

 今朝はまだ時間が早かったから、蕎麦打ちの前に大釜の湯を沸かす側のレンジ周りの掃除をしておく。家庭用のレンジをダブルキッチンにしてもらったのは好いけれど、大釜を二つ並べて湯を沸かす側は小さな火口が使えない。茹でる蕎麦粉がこぼれるのか、何日かすると白く湯垢がレンジの表面に固まっているのです。大釜に水を入れながら、洗剤で洗って雑巾で汚れを取って、今日も綺麗にして使うのでした。9時前になったので蕎麦打ち室に入る。

 昨日の蕎麦が三つだけ残っていたから、今日は天気も悪いし、雨が降り続くというので、750g を打って11人分の蕎麦を用意する予定でした。加水率は42%で、今朝は気温も低かったからか、ちょうど好い硬さの生地に仕上がりました。生地の仕上がりは、その後の伸しや畳みにも大きな影響を与えるので、今朝はとてもいい状況。こんな天気ではお客が少ないだろうと言う気持ちも、蕎麦打ちが上手く出来たという喜びでかき消えていくのです。

 すぐそこの見えない未来と向き合う気持ちは、不安でよりどころのないものだけれど、蕎麦打ちの技術の向上を目指す亭主の気持ちは、常に前向きなのが自分でも不思議なくらいなのです。これはほとんど隠居仕事の蕎麦屋の心境。予報よりも早くから雨の降りだした天気は、回復する兆しがないから、女将と二人で雨の降る外の景色を眺めながら、お客は歩いては来ないし、蕎麦屋に食べに行こうなどという気にもならないだろうと、話をするのでした。

 それでも、苺大福を包んで野菜サラダの具材を刻み、三皿だけ盛り付けておいたら、昼過ぎに雨の中を次々とお客がいらっしたから不思議なのです。 やはり休日だからなのでしょうか。天せいろにヘルシーランチセット、とろろ蕎麦に暖かい天麩羅蕎麦と、皆さんリピーターの方なのでした。デザートに用意した苺大福を、お持ち帰りで幾つも持って帰られるお客もいたのです。その後のお客には、「苺大福は売り切れてしまって」と女将が応える。

 結局、降りしきる冷たい雨の中を10人を超えたお客が入って、連休の始まりなのだという認識を新たにしたのです。最後にいらっしたお子様二人を連れたご夫婦も、閉店間際にいろいろと注文なさって、亭主は調理と片付けをしながら、女将が対応をする。このゴールデンウィークからは、ご飯物のメニューをなくすことにしたので、炊飯器もご飯や味噌汁の器も片付けたのです。寂しくもあるけれど、コロナ禍を乗り切るための工夫の一つです。

 終わってみれば、それほど忙しかったという気もしないから、少しは混んだ状態に慣れてきたのかも知れない。ご飯物のメニューを削った新しいメニューを、昨日の夜に完成したのに印刷をしようと思ったら、プリンターのインクがなくなっていたので、今日は駅前の量販店に行って買い求めて来た。休日だから、今日はニュースもなくてスポーツ番組ばかり。水泳の大会もやっていたけれど、プールを休んでいる亭主は、今ひとつ興味がそそられないのでした。

 昼食は食べる暇がなかったから、家に帰って女将に餅を焼いてもらって食べても、何処に入ったのか分からない。心待ちにしていた夕食は、ホウレン草と豚肉のロースの薄切りで常夜鍋。用意が出来るまで、亭主は筍の若竹煮と烏賊の辛子明太子で一献なのです。もう直ぐ大相撲も始まると言うから、また楽しみが増える。沈没した遊覧船が発見されたのも好いニュースだった。風呂上がりに体重を量ったら、昨日よりも1㎏も減っていたから嬉しかったのです。

4月30日 土曜日 早いもので今日で4月も終わり …

 夕べも10時前には床に就いたので、今朝も5時前には目が覚めてしまう。目覚めの珈琲も飲まずに、車で蕎麦屋まで出掛ける亭主。昨日は蕎麦が全部売り切れてしまったから、今日はどうしても二回蕎麦を打たなければならなかったのです。いつもの時間では、開店時刻に間に合わないから、朝飯前のひと仕事で、まずは一回目の蕎麦打ちを終えてしまおうと考えたのです。小鉢もほとんどなくなっていたから、浅漬けを漬けておけば好いと思った。

 蕎麦屋の厨房に入って、カウンターに干した昨日の洗い物を片付けながら、お湯を沸かして珈琲を入れたら、まずはしっかりと目を覚ますのです。5時過ぎにはもう朝日が昇ってくる。森のだいぶ北寄りに太陽が出てくるのは、季節が夏に向かっている証拠。店内の気温は14℃といつもより寒いくらいなので、エアコンを入れて暖めておく。次に蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始める。加水率はぴったり42%と、絶妙な硬さで8人分の蕎麦を仕上げました。

 再び厨房に戻り、キュウリ、ナス、カブ、ラディッシュを少し薄めにスライスして、ビニールの袋に入れたら浅漬けの素に漬けておく。最後に野蕗のキンピラを全部小鉢に盛り付け、時計を見ればもう直ぐ7時になるところでした。急いで家に帰れば、女将が台所で朝食の用意をしてくれていた。今日のおかずは鯖の塩焼き半分と、蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやの卵とじ。筍ご飯も今日が最後らしい。昨日持ち帰ったお新香のラディッシュが紅一点。

 女将の朝ドラが終わる頃に家を出て、蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終え、浅漬けが漬けすぎにならないうちに、取り出して小鉢に盛り付ける。ぬか漬けにした方が、ラディッシュの赤い色が綺麗に出るのが分かった。最近は、子どもの頃からぬか漬けを食べてこなかったような人も多いから、お客に出すのには簡単な浅漬けの方が無難なのですが、亭主はどうも添加物の匂いが気に入らない。これも時代なのでしょうか。年配の女性などはぬか漬けを褒めてくれる。

 そして、いよいよ本日二回目の蕎麦打ちにかかるのです。天気が好ければお客が入るかも知れないと、もう一度、八人分を打とうかとも考えたけれど、連休だから天気が好ければ何処かに出掛ける人も多いかと、悩んでしまう。明日は下り坂の天候と言うから、残ってしまうとまた困るという悪循環に陥るのです。結局、間を取って600g 六人分を打ち、早朝の分と分けて二箱の生舟に入れるのでした。加水が好かったから、今日は綺麗に蕎麦が仕上がった。

 天気が好いのに、昼まではお客がないので、やはり皆さんお出かけなのかと、女将と二人で暇をもてあます。昼過ぎから、やっとお客が入り始めて、満席の看板を出して対応する。この間、女性三人でいらっしたと言うお客は、今日はご主人らしき男性と二人でいらっしゃる。歩いていらっしてカウンターに座った年輩のご夫婦は、結婚50周年だと言うので、ご主人が日本酒を頼まれて、ゆっくりと話をして行かれた。野蕗のキンピラが好評なのでした。 

 昨日よりはお客の数は少なかったけれど、カウンターを夾んでゆっくりとお客と話が出来るのもまた一興。隠居仕事の蕎麦屋ならではの楽しみなのです。「今日で四月も終わりですね」と亭主が言えば、「早いわよねぇ」とお客が応える。晴れた天気は夕刻まで続いて、気温が少し下がってきたけれど、家に戻って亭主はこの間始めた木槿の剪定を終わらせる。この夏は花が少ないかも知れない。賄い蕎麦をぶっかけで食べたから、今日はゆっくりと午後の昼寝。

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2022年4月下旬

4月20日 水曜日 今日は朝から雨で気分も滅入るけれど …

 定休日の二日目だけれど、足の具合が少し良くなったので、今朝も朝飯前のひと仕事に出掛けました。あいにく朝から冷たい雨が降っていたけれど、蕎麦屋の前の畑にポピーが群生して、壮観な眺めなのでした。雨に濡れると花が閉じてしまうらしい。晴れた日にはもっと華々しく、きっと青空に好く映えるのでしょう。6時を過ぎていたから、大根とイカの煮付けと野蕗のキンピラの下準備に、米粒を入れて大根を茹で、板ずりをした蕗を茹でて皮を剥いておく。

 家に戻れば、女将が今年は何処かに消えたと言っていた十二単(ひとえ)が、金柑の木の周りに幾つも花を咲かせていました。名前の割には地味な花ですが、これも我が家の庭では、春の到来を告げる花の一つなのです。植えたままのチューリップが、早いものはもう花を終えて、ピンクの花だけがつぼみを膨らませていました。朝食には生鮭の塩麹漬けを焼いて、店で残った三ツ葉が悪くなるからと、ちくわ入りの卵とじが用意されていた。

 食事を終えて書斎でひと眠りを決め込んでいたら、スマホのアラームが鳴って起こされた。前のスタッフから電話で、また筍を持って来てくれると言うので、蕎麦屋に行っていますとお礼を言って、車で直ぐに向かうのでした。いつも悪いからと、今日は残った蕎麦と蕎麦汁をあらかじめ用意しておいたのです。大福に包むのに仕入れてあった苺を合わせて持たせたから、お袋様の分もお返しをしたかと安堵する。掘って皮を剥いて茹でて来るから大変なのです。

 早速、先端の部分を切り取って、急速冷凍にかける。先端が土の中にあるうちに掘ったばかりの筍だから、指で押したら崩れるくらいに柔らかい。店で売っているような大きな筍は、もう硬くて食べられないのです。残った部分は家に持ち帰り女将に預ける。季節とは言え、また筍づくしが続くので楽しみです。寝間着のジャージのままだったから、洗面と着替えを済ませてひと休みしたら、三度蕎麦屋に出掛ける亭主なのでした。定休日二日目の仕込みが始まる。

 胡麻油を引いたフライパンにニンジンから入れて、茹でた蓮根と油揚げを加え、最後に皮を剥いた野蕗を入れて炒めたら、出汁を入れて更に加熱。出汁醤油と砂糖を加えて汁気がなくなったところで火を止める。これで今週の小鉢の一品が出来上がり。彩りが好いので気に入った。次に出汁を沸かして出汁醤油と砂糖で味付けをしたら、下茹でをした大根を入れて弱火で沸かしておく。その間に烏賊を捌いて隠し包丁を入れたら、別の鍋で湯がいて大根に加える。

 二品目の小鉢の具材が出来上がったところで、鍋を洗って家に戻るのでした。昼は亭主が蕎麦屋から持ち帰った味見の小鉢と、冷凍してあるカルビ丼の具材をお湯で戻して、久し振りに食べるカルビ丼定食。蕎麦屋でのご飯物を止めると言っていながら、メニューの改訂がなかなか進まないので、食材を持ち帰ってしまおうと考えたのです。「たまには美味しいわね」と女将も満足そうな感想です。朝食後に眠れなかった分と、午後はゆっくりと昼寝の亭主。

 午後の仕込みは天麩羅の具材を切り分けて、お新香を糠味噌に漬けるだけだったけれど、煙草を買いがてら、女将が綺麗だわよと言っていたご近所の藤のお宅の前を通ってみた。毎年のことながら、見事な藤棚なのでした。今日は四度目の蕎麦屋に戻って、最後の仕込みをしていたら、玄関の扉を叩く音がして、お隣の奥さんが顔を出した。実家で長葱を持って来たので食べませんかと、泥葱を20本余りも袋に入れて来たのです。お返しには鴨肉を一本。有り難い。

 業者が今日は鴨肉を届ける予定だったから、残った一本だったけれど、今日は何故かもらい物の多い日なのでした。女将もスポーツクラブがお休みだったからと、夕飯には筍づくしで、若竹煮と筍の梅煮に筍の茶碗蒸し、そして筍ご飯と旬を満喫することになりました。卵以外にタンパク質がないからと、焼きちくわが付いたのもまた好かった。芽が出たばかりの木の芽が薫って香ばしいのです。明日は暖かいけれど天気は好くないとかで、また逡巡する亭主です。

4月21日 木曜日 暖かくなってきたら …

 朝一番で南側のミニ菜園を覗いたら、思った通りタラの木やコゴミはもうすっかり葉を伸ばしていました。お客も少ないから、店で使い切れないのに欲張っても仕方がないと、今年はもう採るのを止めてしまったのです。今朝は糠漬けを取り出しに朝飯前の一仕事。糠床にミョウバンを敷いて色止めをしたナスは、綺麗な色を出していたので嬉しい。今回は初めてラディッシュを漬けてみたのが成功でした。カブと似た食感だけれど、ちょっと赤い色があると好い。

 昨日作っておいた野蕗のキンピラと烏賊と大根の煮物も小鉢に盛り付けて、今日明日の小鉢はこれで十分なのです。6時前から蕎麦屋に来ているのに、あまりすることもなかったので、今朝は早めに家に戻るのでした。玄関前の馬酔木の木が赤い新芽を沢山出して、穀雨の終わった時期なのを痛感する亭主。隣の畑に群がって飛んでくる椋鳥も、随分と身体が大きくなっているのでした。自然のその勢いが羨ましいと思う自分が、何か小さな存在に見える。

 みずき通りを渡れば、今朝は曇り空だったけれど、白いハナミズキノの花がずっと向こうまで咲いているのが見えた。気温は上がると言うけれど、この天気ではどうも怪しい。定休日明けは、蕎麦を打つにもコロナ禍以降、750g8人分で足りなかったことがないから、今日も同じ数を打てば好いだろうと考えながら家に着く。もっと以前は二回打って16食を用意していたものです。今は細々と毎日打つということの繰り返し。仕入れも減らして持久戦なのです。

 それでも、蕎麦打ちは腕前を上げるという目標があるから、食事を終えて、今朝も食後のひと眠りをせずにまた蕎麦屋に出掛ける。そして、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのです。コロナ以前の半分の量だから、じっくりと気合いを入れて向き合うことが出来るというもの。半ば現実逃避的な側面もあるのかも知れませんが、もっと前向きに、今が腕を磨く機会だと思うようにしているのです。加水率43%では、今はもう、少し水分が多いのかも知れない。

 太さも均等に切りべら26本で132~135gで包丁を打てば、8人分と80gほどの蕎麦が取れる。最後の80gは切りにくいから、いつも端切れにして賄い蕎麦で食べていたのだけれど、最近は綺麗に最後まで包丁を打って大盛り用に使っているのです。これもコロナ禍で学んだ節約術なのかも知れない。蕎麦打ちを終えたら厨房に戻って、薬味の葱を刻み、大根と生姜をおろして、苺大福を包む。今週仕入れた苺はもう小さな粒がなかったので、自ずと大きな大福になる。

 野菜サラダの具材を刻み、ポットに大釜で沸かした湯を入れ、天麩羅油と天つゆを温めて準備完了。店内の掃除をするのが11時過ぎで、今日は若いカップルが向かいの地区の道をぶらぶらと歩いて来るのが見えた。蕎麦屋の看板を見ながら、なかなか店内に入らないので、もう次のお客が車でいらっしゃる。お茶をお出しして注文を待てば、若い二人はおろし蕎麦と天せいろ。年配の女性と娘さんらしき女性はヘルシーランチセット。「順番にお造りしますから…」

 時折、陽は差すけれど今日はやはり曇り空。それでも暖かいから暖房も入れずに窓は半分開けてある。「ここのお蕎麦は美味しいわねぇ」と近隣の蕎麦屋でも蕎麦を食べているという年配の女性が、蕎麦湯を飲みながら満足そうにおっしゃる。若いカップルも「美味しかった」と言ってくれた。皆さん初めてのお客なのでした。
 洗い物を片付けてテーブルを拭いたところで、後半のお客がご来店で、「静かで景色も好くて好いところね」とおっしゃる年配の女性が、天せいろを食べ終えて「ああ、お腹いっぱい。美味しかったわ」と言う。その後も三人連れのお客が車でいらっしたけれど、二人分しか蕎麦がないと伝えたら「また今度来ますね」と言って帰られたのでした。穀雨の後は人間もまた元気になるのだろうか。

4月22日 金曜日 初めてクーラーのスイッチを入れて …

 足の具合が良くなったからと、夕べはちょっと酒量が多かったので、今朝は8時間の睡眠から目覚めて、食後に蕎麦屋へ出掛ける亭主なのでした。天気予報通りで暖かな朝だったけれど、まだ曇り空なのです。駐車場の植え込みも新芽を伸ばして、手入れが追いつかない状態。東側のミニ菜園も植えたままだから、辛味大根などはもう花を咲かせている。野菜サラダに使っていたベビーリーフはもうとっくに大人に成長しているのでした。

 植木鉢に植えた実生のモミジは、今年も葉を伸ばしているから楽しみ。植えっぱなしの絹さやも、少し添え木をしたら次々に実を付けて、何度か収穫をしたのでした。朝の仕事を終えたら、厨房に入って、まずは蕎麦汁を徳利に詰めておく。コンスタントにお客が入ると、一番最初に蕎麦汁がなくなるのが道理で、今日は夕刻にまた新しい出汁を取っておかなくてはならないかも知れない。暖かくなると、コロナ禍以前の過去の経験が蘇ってくるのです。

 9時前には蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始める。室温は20℃もあるから、今日は43%弱の加水で蕎麦粉を捏ね始めたのですが、それでもまだ生地は若干柔らかめでした。無事に菊練りを済ませて蕎麦玉をビニル袋に入れて寝かせておく。厨房に戻って葱切りと大根おろしを済ませて、再び蕎麦打ち室に入れば、丸出し、四つ出しを終えて本伸しまで進む。右上の端の部分だけが修正できなかったけれど、均等な厚味で八つに畳んだら包丁打ちです。

 無事に8人分と70gの端切れを打ち終えて、厨房に戻れば苺大福を包む作業が待っている。大きな苺だから、今日も熱々の求肥は一つ当たり80gの計算で包んでいくのでした。次はいよいよ野菜サラダの具材を刻むのですが、その前に、昨日は天麩羅が随分と出たから、天麩羅の具材が切れたので、カボチャのスライスをしたら、生椎茸の飾り切りをして四等分に切ったナスに切れ目を入れる。小鍋にお湯を沸かして塩を入れ、ブロッコリーとアスパラを茹でる。

 平日だから三皿にサラダを盛り付け、天麩羅の具材と天ぷら粉を冷蔵庫から取り出して、天麩羅鍋に油を入れ、天つゆを温めたら、もう11時なのでした。ポットに大釜の湯を入れて、店の掃除をしたらいよいよ準備完了。開店の時刻の10分前には暖簾を出して、お客を待つ態勢が整うのでした。外は相当に暖かくなっているらしく、窓を開けていてもまだ暑い。長袖を脱いで店の半袖シャツを着た亭主も汗ばむほどで、クーラーを入れて22℃まで温度を下げる。

 それでも厨房の中の温度は24℃になっていたのです。開店の時刻の10分前に暖簾を出せば、ちょうど開店の時刻に女性二人のお客がいらっしゃる。天せいろととろろ蕎麦の注文を受けて、調理し始めたらもう次のお客がテーブルに座るのでした。若い女性の二人連れだったから、「ちょっとお待ち下さいね」と、天麩羅を揚げていたからしばらくお茶を待ってもらった。お客も亭主が一人で接客をしているのを見て、かなり好意的なのでした。

 すると、駐車場に見慣れた車が滑り込んで、車三台でもう満杯。隣町の常連さんがカウンターに座っていつものご注文なのでした。お茶は出したけれど、三組目までは手が回らない。カウンターの野菜サラダを自分で取って食べると言うから、ドレッシングだけは手渡すのでした。最初のとろろ蕎麦のお客がキスの天麩羅の追加を頼まれたので、蓮根と筍とタラの芽とコゴミを揚げてお出しする。二組目は天せいろだったから、やはり同じサービス。

 やっとカウンターの常連さんに料理を出し終えた頃に、四人で入れるかと女性が玄関を開ける。駐車場も一杯だし、店内も見れば分かるけれど四人分の席はない。「ご免なさい」とお断りした。女性客が多いから、直ぐには席が空きそうになかったのです。狭い店では昼時の混雑を凌ぐ術はない。慣れたお客は時間を見計らっていらっしゃるけれど、常連さん以外は皆さん初めての方らしかった。蕎麦は沢山用意したのに、昨日に続いて残念なことなのでした。

4月23日 土曜日 これが初夏の暑さなのか …

 霧の濃い朝でした。家の中は18℃もあるのに、何故か少しひんやりとして、ジャージの上着を羽織らなければいけませんでした。夕べは半袖を着て眠ったから、身体が冷えたのかも知れません。朝の6時になったら家を出て、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛ける亭主。足の具合がだいぶ好くなったので、ゆっくりと歩いて行ったのですが、蕎麦屋の前の畑にも霧が出ているのでした。米を研いで炊飯器にかけ、糠床からお新香を取り出して、小鉢に盛り付ける。

 みずき通りの角のお宅に、モッコウバラがとても綺麗に咲いていました。駅前の高層マンションも霧に煙っているのでした。霧の深い日は晴れるというけれど、青空はまだ見えないし、天気予報でも昼からしか太陽のマークは出ていない。気温は高くなりそうだし、風もない一日らしいので、お客が来ても大丈夫なように、今日は少し蕎麦を沢山用意しておこうかと考える。昨日、一昨日と、最後のお客をお断りしたから、その反省なのです。

 ゆっくりと歩いて家に帰ればもう朝食の時間。今朝は縞ホッケがメインで最後の筍ご飯なのだと言う。最近の魚類はどれも塩味が薄くなっているらしく、女将も食べやすいと喜んでいました。食後は例によって書斎で横になって20分ほど微睡むのです。これで頭がすっきりとして、洗面と着替えを済ませれば、しっかりと目覚めるから不思議です。女将の朝ドラが終わる頃を見計らって、「行って来ます」と言って玄関を出る亭主。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、9時前には蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打ちます。加水率43%なのに、やはりまだ生地が柔らかい気がする。もうそろそろ42%にした方が好いのかも知れない。蕎麦玉を寝かせいてる間に、厨房に戻って葱切りを済ませ、再び蕎麦打ち室に入って伸しを始める。今朝も綺麗に正円に丸出しを終えて、順調に蕎麦は仕上がっていく。生地が柔らかい分だけ、どうしても包丁切りで切りむらが出来るような気がするのでした。

 昨日出なかった苺大福は、今日までお客に出すことにして、三日目で少し硬くなったものは、女将に家へ持って帰ってもらった。野菜サラダは週末だからと四皿盛り付けておきました。この時点ではまだ外が晴れていなかったから、残ったらどうやって家で処理しようかと心配するのでした。暑くなったから、鰹の皿鉢料理でも食べたいなどと女将と話していたのですが、蕎麦屋の残り物が出るうちは、なかなかそうも言っていられないのです。

 外はしだいに暖かくなって、窓を開けていても店内は22℃もあるのでした。次第に陽も差して少しずつ青空も見えるのですが、暖簾を出して1時間経っても、お客の来る気配はないのです。前の通りを走る車の数は多いのに、昼に蕎麦を食べたい人ばかりではないからと、女将と二人でお客の来ない理由をあれこれ思う。結局、天気が好くなったのでお出かけなのかということで落ち着いた。開店前にガラス窓を叩いて開店の時間を聞いた小母さんも姿を見せない。

 亭主が一服しようと奥の部屋に入ったところで、「お客さんですよ」と女将が呼ぶ声がした。中年のご夫婦がテーブル席に座って、ヘルシーランチセットのご注文なのでした。ご主人はお蕎麦大盛りに大根おろしをご所望でした。野菜サラダのドレッシングが美味しいとご主人が言えば、キャベツが細く切ってあるのが好いと奥さん。蕎麦粉を溶いて作っている蕎麦湯が、とても美味しいと何杯も飲んでいた。何気ない会話がゆったりとした午後のひとときを満たす。

 結局、野菜サラダが半分残って、夜は亭主がお好み焼きを作ることになる。少なめの小麦粉に卵と水を入れて攪拌したら、まず肉を焼いて生地をフライパン一杯に流し込む。その上に野菜サラダのキャベツやニンジンのジュリエンヌ、パプリカ、赤玉葱を載せて蓋をすれば、二三分で出来上がりだからとても簡単なのです。油も少しにしているし、全体の量が少ないのに、食べ終わるとお腹が一杯になるから不思議なのです。野菜がたっぷり入っているからか。

4月24日 日曜日 午後からは雨 だったけれど…

 昨夜はぐっすりと眠って、起き出せばもう朝のご飯の時間なのでした。朝食にベーコンエッグが出てくると、我が家の冷蔵庫が空になったのが分かる。先週は亭主の通風を気にしてか、女将が肉を買わなかったらしい。亭主がプールで泳がない分、カロリーを減らさないと内臓脂肪は減らないというのが彼女の考えで、最近は亭主も納得しているのです。不思議なことに、少量の朝食でもうお腹が苦しくなるから、慣れというのは好いのか悪いのか。

 洗面と着替えを済ませて、珈琲を一杯飲んだら、いつものように朝ドラの時間に家を出る。今日は日曜日だから女将の見ている朝ドラはないのだけれど、同じ時間に家を出るのが、やはり生活習慣というものなのでしょう。ご近所の駐車場に、八重桜の花吹雪が散り集まって見事でした。このお宅の奥さんがいつもこの場所を掃いているのを見かけるけれど、この量では掃除が大変でしょう。ゆっくり歩いて蕎麦屋に着けば、前の休耕地に生えたポピーの花があまりにも沢山だったから、思わずカメラを向けたのです。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、まずは蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。お客の少なかった昨日の蕎麦が随分と残っていたので、今日は500g5人分だけを打つことにしました。曇り空で午後からは雨という予報だったけれど、日曜日を馬鹿にしては行けないと言うのが亭主の考え。朝から暖かいから、車のお客は来るかも知れないと思ったのです。加水率を42%まで落として蕎麦粉を捏ねれば、イメージどおりのコシのある生地が出来上がる。

 蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻ってひと仕事を終えたら、再び蕎麦打ち室に入って伸しにかかる。500gの蕎麦は奥行きはいつもと同じ90cmだけれど、幅が50cmと狭いから、伸した生地を横にしてから本伸しに入るという手間を省いて、そのまま本伸しに入るので時間も短縮されるのです。上半分の部分に打ち粉を打って、下から上に畳んでいきます。それをまた、打ち粉を打ちながら、右から左に、下から上に八つに畳んだらいよいよ包丁打ちなのです。

 切りべら26本で135gの束を五つ取ってもまだ余るから、端切れの80gほどを昨日の大盛りで使った残り半分と合わせて、亭主の食べる賄い蕎麦の分を確保しておきます。やはりこの時期はもう、加水率は42%が好いと確信しました。室温は20℃を越え、湿度も58%はあるから、天候にはかかわらず、季節はいよいよ夏に向かっているようなのです。女将が来て店の掃除を始めてくれる。亭主は厨房に戻って苺大福を包み始めるのです。

 白玉粉を四皿分の80g計量して、氷糖蜜と水を加えて溶けるのを待つ間に、苺や片栗粉、白餡を用意したのは好いけれど、白餡が残り少ないのに初めて気が付いた。こんな時は、求肥が四皿分出来てしまうから、白餡の足りない分は漉し餡を包んで、普通の大福を作ることにしている。黒い漉し餡で苺を包むのは亭主のイメージとは違うのです。食べて仕舞えば一緒かも知れないけれど、色のバランスというものがあるように思えるのです。

 大根と生姜をおろして野菜サラダの具材を刻めば、蕎麦打ちの時間が短かったから、いつもより早い時間に開店の準備が整うのでした。11時を過ぎた頃に、ちょうど車が駐車場に入ってきたから、暖簾を出して中で待ってもらえば、ちょうど女将もやって来て、お茶をお出し出来た。待ち合わせをしていたのだけれど、あとの二人が遅れると言うのです。可哀想に最初にいらっした女性は、ヘルシーランチセットを三人分注文されたまま、40分以上も待っていた。

 遅れていらっした二人の女性はリピーターの方で、予約が出来ないというので、初めての女性を先に来させたらしい。次のお客が入って、こちらはいつもコミュニティーバスの窓から、蕎麦屋を眺めていたとおっしゃる。ご夫婦で天せいろを頼まれて、お新香も美味しいし、お蕎麦も蕎麦湯も美味しいとおっしゃって、ゆっくりと食べていかれた。駐車場が満杯になった三組目のご夫婦は、天せいろとカルビ丼とせいろ蕎麦のセットのご注文。雨が降り出した。

4月25日 月曜日 初夏の暑さを思い出す晴れた一日 …

 朝の7時。駅前のスカイプラザがくっきりと見える。向こうの丘の木々も色濃く、ご近所の庭の木も新緑の葉を広げています。書斎の窓から見える景色は、すっかり夏の装いなのでした。女将の用意してくれる朝食を食べ終えたらまたひと眠りして、今日はなかなか家を出られなかった。それでも洗面と着替えを済ませ、のんびりと蕎麦屋まで歩いて出掛けたのです。澄み渡る青空と木々の緑がもう夏の気配だから、ポピー畑で今朝も写真を撮った。

 昨日の蕎麦が生舟に沢山残っていたから、今朝は蕎麦を打とうかどうかと随分と悩んでいました。どんなに天気が好くても、平日の月曜日だから、日曜日のお客の数を越えることはないだろうと、意を決したのは9時過ぎ。本当に久し振りで、蕎麦を打たない朝となりました。数を減らしながらも、毎日蕎麦を打つという方法が、土曜日のお客の入りが平日よりも悪かったので、通用しなかったのが原因でした。まさか、そこまでは読めなかったのです。

 天気が好いのに蕎麦を打てない日は気持ちが塞ぐ。厨房の椅子にす座って、じっくりと次は何をしようかと考えるのです。苺のへたの部分を切り落として、白餡で苺をくるんだら、白玉粉を氷糖蜜と水とに溶かしておいた鍋に火を入れて求肥を作る。蕎麦豆腐と同じで、これも途中で止められない作業です。十分に水分が飛んだところで鍋を布巾に降ろし、更にお玉で練り込んでいくと、白い求肥が出来上がる。熱々だから手に片栗粉をつけて素早く包んでいく。

 大根をおろして葱を刻み、野菜サラダのブロッコリーとアスパラを茹でて水に浸ける。まだ時間が早かったから、レタスを洗ったところでひと休み。包丁を使う前には意識を集中させないといけないのです。先日の「キャベツが細いのが美味しい」というお客の言葉を思い出しながら、芯に近い部分のキャベツの葉を丸めて、包丁の切っ先で刻んでいく。今週は包丁を研いでおいて好かった。アーリレッドを刻んだところで、盛り付けを始め、残る野菜を刻む。

 外は雲一つない青空が広がり、風もなく幟の文字がくっきりと読める。昼過ぎに続けてお客がいらっして、カウンターに座った親父様が「BGMはご主人の好みかい?」と聞く。小野リサのボサノバが流れていたのでした。ラテンミュージックが好きなのだとか。続いていらっしたご夫婦は、ヘルシーランチのご注文で、デザートにお出しした苺大福が白餡で包んであるのに驚いていた。巷の苺大福が黒餡なのは、餡を作る手間を省いているからではないかと思った。その昔、夢中になって読んだスタンダールの『Le Rouge et le Noir』ではあるまいし、色のバランスからしても白餡の方が優れているし、砂糖の入った既製の黒餡は甘さがしつこいと感じるのです。

 お客が来なくなったら、残った蕎麦を茹でて賄い蕎麦を食べておく亭主。それでも暇だから、東側のミニ菜園に出て絹さやを収穫する。もう何回も家に持ち帰って女将に手渡したのです。何の手入れもしていないから、目が慣れるまで何処に実があるのか見分けにくい。ラストオーダーの時間を過ぎところで、暖簾と幟と看板をしまって、明日の定休日を前に家に持ち帰る食材を吟味する。天麩羅の具材は油も古くなったから、全部揚げて夜のおかずとなりました。

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2022年4月中旬

4月12日 火曜日 とにかく陽射しが熱い …

 朝のうちは室内は19℃で、暖かいはずなのにまだ半袖を着る勇気が出ないけれど、外に出ると陽射しは熱く、これはもう五月の陽気なのです。定休日が始まると、早速、先週の蕎麦屋の残り物の処理が始まり、今朝は小鉢三種類と三ツ葉の卵とじでご飯を食べます。ナスの色止めがよく効いて、三日経っても色が変わらないから、これは成功だった。ミョウバンを茄子の皮にこすりつけるより、糠床に敷いて皮の面をおいた方が効果的なのが分かった。

 今朝は仕入れに行くのに、いろいろ確認しなければならなかったから、新しくなったと言う女将の朝ドラの前に玄関を出て蕎麦屋に向かう。庭の釣鐘水仙も花が多くなって、木槿の新芽もどんどん伸びて来ている。女将が「少し切ったら」と言うけれど、木槿の剪定は冬場だから、新芽の出るこの時期には眺めているほかはない。出過ぎた枝を払うくらいがせいぜいなのです。あまり手入れもしないけれど亭主の大好きな夏に綺麗な花を咲かせてくれるのです。

 先週は随分と暖かくなったから、寒い時期よりはお客が入ったけれど、お客が増えれば食材も早くなくなるので、蕎麦粉の発注を掛けなければならないし、天麩羅の海老や天ぷら粉も頼んでおかなくてはならない。どれを優先するかを見極め、先週の売り上げで間に合う範囲で注文をするのです。そして、今朝の仕入れ分の費用を差し引いたら、今週もまた預金は出来そうにないと悔しがる。毎週のように銀行に預金の出来た以前とはやはり違うのです。

 厨房の片付けを終えてミニ菜園に出れば、植えたままで手入れもしていない絹さやがもう実を付けているではありませんか。南側の庭に出れば、草刈りも間に合わぬのに、もうコゴミの群生が葉を広げているのです。二日前に採ったばかりなのに、やはり間に合わない。タラの木の先端を眺めれば一目瞭然。摘んでも摘んでも新しい芽が伸びてくるから、そろそろ降参。天麩羅に使い切れないほどのコゴミやタラの芽が冷蔵庫に溜まっているのです。

 辛味大根のスペースでは、もう花が咲いているから、試しに茎を引き抜いてみたけれど、やはり、間引きをしなかったので根は大きくなっていない。蕎麦粉を頼んでいる農場に電話をして聴いてみたけれど、辛味大根はもう終わりの季節なのだと言う。いま冷蔵庫に残っている分だけで、もう終わりなのです。後、四人分ぐらいか。もっと丁寧に育てておけば好かった。寒い時期に色々するのが面倒で手入れをしなかったから、天罰覿面なのでした。

 お袋様を迎えに行って、農産物直売所に出掛ければ、今日は珍しく車が沢山停まって、お客が多いのでした。いつもの農家のトマトを買って、蕎麦屋の常連さんの農家からはラディッシュをもらう。以前は店のミニ菜園でも育てていたけれど、野菜サラダにスライスして添えるだけだから、沢山取れすぎても使い道がないのです。隣町のスーパーに行って、印刷したメモの食材をすべて仕入れたら、後は女将に頼まれた魚類と果物を買って蕎麦屋に戻るのでした。

 買い込んで来た食材を冷蔵庫にしまって、洗濯機の中の洗濯物を干したらもう10時半を回っていました。家に戻って書斎のパソコンに向かい、仕入れと午前中の写真の入力を済ませたら、台所に入って蕎麦を茹でる準備をする。気温はどんどん上がっているらしく、家の中でも長袖を着ていられないほどの暑さなのでした。買い物から帰った女将も、汗びっしょりだと言っていた。亭主が蕎麦を茹でている間に、女将が天麩羅を焼き、ヤリイカを茹でてくれる。 

 大盛りの蕎麦を食べた亭主はもうすぐに眠くなる。女将のスポーツクラブの予約までには二時間ほどあったから、書斎に入って小一時間は熟睡したのです。女将は稽古場で黙々と書を書いている。亭主は3時過ぎに重い腰を上げて蕎麦屋に出掛け、返しを仕込んでおくのでした。木曜日の午前中着で蕎麦粉の発注は済ませたし、昼前に注文した天ぷら粉と海老と山葵は明日の夕刻に届けられる。煮物の作業は明日に回して、今日のところはこれでお終い。

4月13日 水曜日 定休日二日目の朝は …

 夕べは今日もお休みだからと少し遅くまで映画を観たけれど、やはり眠くなって11時過ぎには床に就いたのです。朝はゆっくり眠っていたいと思うけれど、これも習慣で5時過ぎには目が覚めてしまう。日の出は早いから、梅干しを食べながらお茶を飲んでも、朝食の時間にはまだまだ時間があるのでした。散歩でもして身体を動かそうかとも考えるけれど、通風の右足の親指はまだ痛むから、如何ともし難い。仕方なく蕎麦屋まで朝飯前のひと仕事に出掛ける。

 仕事ならばと少しの痛みは我慢しなくてはいけないから、歩いてみずき通りを渡れば、空は霞んで春らしく、並木の新緑も優しくてみずきの花も咲き始めているのでした。蕎麦屋の向かいにある休耕地の菜の花はまだ枯れずに、その奥では森の木々が薄緑色に輝いている。何羽もの燕が飛び交って、巣作りの準備なのだろうか。やり出せば切りが無いほど仕事はあるのですが、明日の営業のためにはそれほどやることはないと店に着けば、室温19℃と今朝も暖かい。

 昨日作った返しの鍋がそのままになっていたから、甕に移して鍋を洗う。残っていた返しと先週の出汁で、今週の天つゆを作っておきます。来てみればやはりやることはあるのかと、珈琲を入れて飲みながら今日の段取りをあれこれと考える亭主。夕刻には業者が食材を届けに来るから、ぬか漬けのお新香はその時に漬ければ好い。洗い物をして家に持ち帰るものを確認したら、さっき来た道を引き返すのです。家の近くの公園の木々も新緑が眩しいほどでした。

 定休日だからと女将の朝食の用意もゆっくりで、亭主が玄関に入ったのを確認してから、魚を焼き始めたらしい。蕎麦屋のミニ菜園で採れた春菊を胡麻和えにして、今朝も小鉢が三鉢、骨を取ってある鯖の塩焼きがメインのおかず。脂が乗って美味しい身をほぐしながら、のんびりとお休みの日の朝食を味わうのです。食後のお茶は居間の椅子に座ってBSのニュースを観ながら飲む。世界のトップニュースはやはりウクライナ情勢で、伝え方も日本より強い調子。

 洗面を済ませて着替えようかと思っていたら、元のスタッフから電話が入り、また筍を掘ったから店に届けるというのでした。まだ八時半だったけれど、ひと眠りする暇もなく、車を出して蕎麦屋まで出掛ける。時期に自転車に乗った彼女が現れて、今日はお袋様の分もと、随分沢山の筍を持って来てくれたのです。すべて皮を剥いて湯がいてくれてあるから、本当に手間のかかること。丁重にお礼を言って、早速、お袋様に電話を掛けるのでした。 

 お袋様のところにいただいた筍を届けたら、今度は蕎麦屋に戻って店で使う分を処理する亭主。筍の先端部分を7cmほど切り取ったら、円錐形を縦に6等分して、ラップを敷いたステンレスのバットに並べ、上からもラップを掛けて急速冷凍をかけておくのです。使う分だけ解凍すれば、来週いっぱいの天麩羅の具材になる。ドウダンの花が咲き始めたご近所の景色を眺めながら、家に戻って女将に筍を渡す。ちょうど昆布と大豆を煮終えたところのようでした。

 ひと眠りする暇がなかった朝だから、9時近くだというのに書斎で横になってやはりひと眠り。目が覚めても頭がぼうっとしているから、とうとう午前中には仕込みに出掛けられなかった。昼は亭主が焼きうどんを作って野菜サラダの残りを食べ尽くす。最近は青海苔と紅生姜を買いそろえてあるから、女将もなかなかやりますね。11時半に女将のスポーツクラブの予約があるから、亭主は急いで昼食を終え、パソコンの前で時計の秒針と睨めっこなのです。

 午後は女将が買い物から帰るのを待って蕎麦屋に出掛けるのでした。終わっていない仕込みは沢山あったから、次から次と仕込みを続けるのです。白餡を煮詰めながら蓮根を湯がいて、小松菜を茹でたら天麩羅の具材を切り分ける。使った道具をすべて洗い終わったところで、切り干し大根の具材を切り、ごま油で炒めて出汁で煮たら出汁醤油と砂糖で味付けをする。最後に明日のお新香を漬けて、業者が来るのを待つのでした。明朝はまた出汁を取らなければ…。

4月14日 木曜日 暗い朝、寒い一日 …

 今朝も5時半に家を出て、朝飯前のひと仕事です。定休日のうちに終わらなかった出汁取りをしたら、お新香を糠床から出して切り分け、小鉢に盛り付けておきます。そして、昨日仕込んだ切り干し大根の煮物も小鉢に盛っておく。これで一時間余りがすぐに過ぎてしまうから、朝から忙しいのです。夕べは通風の足の調子もだいぶ好かったのに、朝になったらズキズキと痛むから、わずか300mの蕎麦屋までの距離を車で移動したのでした。

 痛くないときは酒を飲むからコレが行けないのか。ライムを入れたり梅干しを入れたり、アルカリ性にして強炭酸で薄めた焼酎を飲んでいるから、眠る時まで痛みを感じないのです。でも、これは夕食後に服用している痛み止めが効いているからかも知れない。試しに飲まないでみようかとも思うのだけれど、夕食は早い時間で夜は長いから、どうしても割きイカや枝豆などをちょっと肴を当てにして、テレビを見ながら寝酒を飲んでしまうのです。

 家に戻れば今朝はいつもより寒いから、朝飯は鮭粥だったのが嬉しい。昨日のうちに、灯油を半分だけ買ってきたから、寒いと思ったらストーブを点けるようにしているのですが、実際には部屋の中は16℃とかで、直ぐに暑くなる。この微妙な寒暖差が難しい。今日は蕎麦粉が届く日だったから、早めに車で蕎麦屋に出掛けました。天気も悪いから、駐車場が一杯になるほどはお客は来ないだろうと考えたのです。蕎麦屋の店内は18℃あったから暖房は点けない。

 今朝は加水率43%弱にして蕎麦粉を捏ね始めたのですが、もうこの時期は44%ではやはり多すぎるようです。少し柔らかめの生地に仕上がって、今日も自然と薄く伸したから細めの仕上がりです。切りべら28本で135g の蕎麦を8束作って生舟の中に並べました。定休日明けはやることが多いから、蕎麦豆腐も朝のうちに作っておいた。大根と生姜をおろして、薬味葱を切り、苺大福を包んだら野菜サラダの具材を刻む。新しい油を天麩羅鍋に注いでおきます。

 早めに暖簾を出して営業を始めましたが、最初のお客が来たのはやはり昼過ぎで、皆さんお昼を食べる時間は決まっている。ヘルシーランチセットと天せいろの注文を受けて、苺大福を子供たちにも食べさせたいと、全部土産でお持ち帰りなのでした。天麩羅を揚げている間に、次のお客がいらっしてお茶をお出ししたら、男性客三人だから直ぐに注文が入ったので、これは相当に忙しい。三人がそれぞれ違うメニューで大盛りだから、蕎麦はすぐになくなった。

 1時過ぎには生舟の蕎麦が残り一つになったので、「お蕎麦売りきれ」の看板を出す。1時半近くにはお客も帰り、亭主は痛い足を引きずりながら洗い物と後片付けをするのでした。スポーツクラブから帰った女将が手伝いに来てくれた。車だったから帰りがけに郵便局に寄って、蕎麦粉の支払いを済ませておく。今日の売り上げがあったから今週も無事にすべての支払いが完了。夕食は一年ぶりに筍ご飯でした。鶏の胸肉の塩麹焼きもなかなかの味なのです。

4月15日 金曜日 冷たい雨の降る一日 …

 午前6時に雨の中を車で家を出て、朝飯前のひと仕事。金曜日はあまりすることもないのだけれど、居間の椅子に座って朝食まで一時間も待つのは健康に悪いと、痛い足を引きずりながら車に乗るのでした。来週の定休日には医者に行こうなどと、漠然とした期待を持ってはいるが、それまでに治まらないものかとも考えたりする。尿酸値の検査をして通院しなければならないし、痛み止めと尿酸を溶かす薬が出るだけだから、治まってくれるのが一番なのです。

 カウンターの洗い物を片付けて、昨日全部空になった大盛りの蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めたら、部屋干しの洗濯物を畳んでやろうかと奥の部屋に行くけれど、この天気だからまだ乾いていないのです。家に戻れば、女将が台所で食事の用意をしていたので、居間の椅子に座って天気予報を見る。今日は一日中雨らしく、市内は気温も揚がらないという予報。こんな日にも営業をしなければならないのが商売というものなのでしょう。まして蕎麦屋は寒い雨の日は辛い。

 筍の時期は、筍料理がしばらく続くのが嬉しいやら飽きて来るやら、今朝は縞ホッケの塩焼きが出たから美味しく食べたのです。食後に鎮痛剤とお茶を飲んで、時計を気にしながら書斎に入ってひと眠りする亭主。30分ほど微睡んだら頭がすっきりとして、その分、足の親指の痛みも増したような気がするのでした。洗面と着替えを済ませて、今朝もまた車に乗って出勤です。今朝は寒いから靴下を履いて雪駄を突っ掛けていたのです。 

 雨だから、看板を出したら隣に傘立てを置いて、幟はしばらく様子を見てから立てようと思った。まずはやはり蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日まで43%の加水とばかり思っていたのに、計算したら44%で打っていたから生地が柔らかかったと判明。今朝はしっかり43%で蕎麦粉を捏ね始めたら、これが好い塩梅なのでした。切りべら26本で135gの蕎麦を、今日も八人分生舟に並べて蕎麦打ちを終える。厨房に戻って昨日売り切れた苺大福を包んでおく。

 この時点では、冷たい雨だからお客は来ないなどと言うことは、もうどうでも好いのでした。葱切りをして大根をおろし、野菜サラダの具材を刻んで三皿に盛り付ける。いつもと同じことの繰り返しが大事なのだと自分に言って聞かせる亭主。小雨の中を幟を立て、昼になってもお客は来ないから、やっと乾いた洗濯物を畳んでおきます。賄い蕎麦でも食べておきたいところだけれど、天麩羅の油や蕎麦を茹でる大鍋が汚れると洗わなくてはならないのが嫌だった。

 こんな雨の中を昼を食べに来るのはやはり常連さんで、「寒い寒い」と言いながら1時過ぎにいらっして「今日は筍を食べたい」と言うから、筍の天麩羅にコゴミとタラの芽の天麩羅を添えて、せいろ蕎麦と辛味大根をお出ししたのです。しばらく話をして、珍しく今日は早めに帰られた。これで亭主もやっと昼飯が食べられると、コゴミとタラの芽の天麩羅に蓮根を揚げて、ぶっかけ蕎麦を食べれば、ほのかな苦味が堪らなく美味しいと感じられるのでした。

4月16日 土曜日 寒い朝だったけれど …

 通風の足の指の痛みは鎮痛剤の効き目が切れる朝方が酷く、朝飯前のひと仕事は車で蕎麦屋に出掛ける亭主。幟を立てて看板を出し終えたら、厨房に入って米を研いで炊飯器にかける。小鉢も足りなくなっているから、新しく盛り付けておくのです。それでも週末だから心配なので野菜の浅漬けを漬けておく。次に来た時には漬かっているだろうから、小鉢に盛れば好い。洗濯物はまだ乾いていないから、奥の座敷も暖房を入れておくのでした。

 寒い朝だったから、女将が気を利かせて今朝もしゃけ粥にしてくれた。身体が温まるから助かるのです。部屋の中は14℃と、じっとしているとやはり寒いので、ストーブを点けて暖を取る。しかし、以前とは違ってすぐに室温が上がってまた消さなければならない。足の指が痛いので椅子から立ち上がるのも億劫。早く一日二回の薬を飲んで、この痛みから解放されたいと思うのでした。ひと眠りして再び蕎麦屋に出掛ける時も車で行かなければならなかった。

 蕎麦打ち室に入って、今朝は500gだけ蕎麦を打ち足しておいた。加水率43%で、ちょうど好い硬さになった生地は、包丁を打つにもとても調子よく、切りべら26本で一人前135gの蕎麦を五人分。昨日の残りの蕎麦と合わせて12食の蕎麦を用意したのです。寒い日は、お客も少ないだろうと考えていた。最近は週末でも滅多に10人を越えないから、寂しいけれどコロナ禍の現実です。女将がやって来て洗濯物を畳んで、店の掃除をし始めたから、今日は助かる。

 早朝に浸けておいた浅漬けは、ナスとキュウリとカブとラディッシュ。少し薄めにスライスしてあるから、薄味でちょうど好い仕上がりでした。いつもなら夜のうちに糠味噌に漬けに来るのですが、今は足の指の痛みに耐えかねるから、背に腹は替えられない。味は悪くないのですが、昆布出汁を使用しているとは言え、添加物の味がどうしても気になるのです。若いお客などはお新香は残すけれどこの浅漬けは残さないから、添加物に馴染んでいるのかしら。

 薬味の葱を刻んで、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻み始めれば、そろそろ包丁を研がなくてはいけないと、切れ味の悪くなった包丁を騙し騙し使うのでした。痛み止めの薬が効いて来たのか、蕎麦打ちにしても野菜サラダにしても集中しているときには指の痛さを忘れているから不思議です。夕べ風呂上がりに体重計に乗って内臓脂肪を計ったら、これ以上はないくらいメーターが上がっていたから、夕食の後はほとんど物を食べずに過ごしたのです。

 少し日が差してきたから、もしかしてお客が入ったら困ると思って、乗ってきた車を家に置きに帰る。片道だけ歩けば好いから、ゆっくりと歩けば何とか痛みに耐えられると考えたのです。団地に接する農家の八重桜が見事に咲いていました。青空も覗いて気温もだいぶ上がってきた様子。燕があちこち飛び回って巣作りに忙しそうなのでした。こんなに好い陽気になったのに、気が晴れないのは自業自得と言おうか、コロナ禍でプールを休んでいるのも大きい。

 晴れた陽射しに向かいの森の新緑が眩しかった。朝が寒かったからか、お客の出足は遅く、昼過ぎからぽつりぽつりとお客が入ったのです。中には残っていた苺大福を全部お土産で持ち帰るお婆さんもいました。お爺さんにたべさせるのだとか。「今度は違う子どもと一緒に来ます」と言って、店置きのパンフレットを持って帰られたのです。それにしてもお客の少ない土曜日でした。夜の防犯パトロールは、責任者の方に電話をしてお休みさせていただいた。

4月17日 日曜日 お客の出足の遅い日曜日は …

 昨日よりも更に少し寒い朝だったから、今朝はシジミ粥にしてもらったのです。珍しく寝坊したと言う女将は好く眠れたらしく、ぐっすりと眠った亭主も朝食の遅れは気にしないから、のんびり出来る隠居生活は気楽なもの。困ったのは鎮痛剤の切れた朝方は、足の親指の具合が悪いことで、どうしても力が入るから何をするにも痛いのです。「10分かけて行くから大丈夫」と、わずか300mを足をひきずりながらゆっくりと歩くのです。

 さすがに日曜日だから駐車場は満杯になる可能性が高いのです。いつもと違って少しずつのろのろと歩くから、ご近所に咲く躑躅や芝桜の花に自然と目が行く。青い空に赤や紫の花々の色が映えて、幸せな気分になるのでした。二時間ほどしたら少しずつ薬が効いてくるらしく、歩けば痛いけれど我慢できないほどではなくなって、幟を立ててチェーンポールを降ろし、今朝の準備を始めるのです。蕎麦は幾つ打てば好いだろうかと逡巡する。

 昨日の蕎麦が生舟に七束も残っていたから、八人分を打ったらやはり多すぎるだろうし、五人分では足らないかも知れない。コロナ禍になってからというもの、値段の高い蕎麦粉も大切に扱っているから、残って自分で食べるのではもったいないと思うようになったのです。結局、600g 六人分を打って13人分なら大盛りが出ても大丈夫だろうと、蕎麦粉を計って水回しを始めました。足らなくなれば「売りきれ」にしても後ろめたくない数なのです。

 加水率は43%。生地はこのところ好い具合に硬く、足の指の痛みも忘れる程に集中しているのでした。蕎麦玉を作って寝かせいてる間に、厨房に戻って苺大福を包む。お土産で全部持ち帰ったお客がいた昨日のこともあったので、今日は六つ作って六皿も用意した。野菜サラダが四皿だから、単品で頼まれても、ちょうど好いかも知れないと考えたのでした。女将が来て店の掃除を始めてくれたので助かる。亭主は再び蕎麦打ち室に入って伸しにかかるのでした。

 両手で蕎麦玉を丸く広げていく地伸しを終えたら、伸し棒を使って更に正円に伸していくのが丸出しなのですが、これがまたなかなか難しい。左右の掌を同時に動かしながら、厚味を均等にしていかなければならないのです。ここで失敗すると、本伸しの前の四つ出しが上手くいかないし、修正するのにひと苦労する。足の指が痛いなどと言っていられないから、楽しくも緊張する時間です。本伸しまで終えて八つに畳んだら、いよいよ包丁打ち。

 500g では五人分取れるけれど、135g では少し端切れが大きくなるから、600g で六人分はちょうど好い分量なのでした。生舟に並べた13人分の蕎麦を冷蔵庫にしまって、厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、大釜の湯をポットに詰め、大根おろしをすっておくのです。早お昼を食べに帰った女将が戻り、亭主は天麩羅油と天つゆの鍋に火を点けて、いよいよ開店の準備が整う。10分前に暖簾を出せば、ちょうど開店の時刻に常連のご夫婦がいらっしたのでした。

 ご主人は相も変わらずカレーうどんとデザート。奥様は暖かくなったからか、鴨南蛮ではなく鴨せいろのご注文でした。昼前はもうひと組のご来店でしたが、今日は1時を過ぎてからが混み始めたから大忙しです。最後の若いカップルはカウンター席に座ってヘルシーランチセット。女将が「お蕎麦売り切れ」の看板を出す。「今日もとても美味しい」とカウンターの女性が言えば、テーブル席の奥さんが「大満足です」と言ってくれた。嬉しい日曜日でした。

4月18日 月曜日 新緑の前で只管打坐の境地 …

 足の親指の痛みは足首まで広がって、歩く度に激痛が走ったけれど、今朝も朝飯前のひと仕事に、車で蕎麦に出掛けた亭主でした。「今日は蕎麦屋をお休みにしたら」と女将は言うけれど、家にいても痛さは変わらないから、気晴らしになるというのが亭主の考え。昼の仕事が終わったら医者に行くことにしていたので、あと半日の我慢だと自分に言い聞かせて、ブレーキのペダルを踏むのにも足が痛いから、車の運転も慎重に無事に蕎麦屋まで辿り着く。

 お客で混んだ昨日の洗い物はカウンターの上に山積みになっていたから、まずは盆や蕎麦皿を片付けて、漆塗りのお椀や厚手のデザートの皿を戸棚にしまう。そして、冷蔵庫に残っているナスとキュウリとカブとラディッシュを取り出して、浅漬けの素に漬け込んでおくのです。家に戻れば、女将が台所に立って朝食の支度をしてくれていた。「筍ご飯はこれで終わりです」と言われ、ホッケとベーコンエッグなどをおかずにして朝食を済ませる。

 食後に飲む市販の鎮痛剤も最後になって、いよいよ医者に行かないと困る状況。薬が少し効いてきた頃にまた車で家を出て、弱く暖房を入れておいた店内に入れば、もう20℃になっていたので、エアコンを消して厨房に入る。浅漬けを取り出して小鉢に盛ったら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのでした。加水率は43%でいつものようにしっとりとした生地の仕上がり。蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻って、薬味の葱を刻み、大根をおろしておく。

 最近は、だいぶこの硬さに慣れて来たから、今朝も綺麗に丸出しや四つ出しを終えて、本伸しもスムーズに出来た。八つに畳んで包丁を打てば、一束135gの蕎麦が美味しそうに仕上がるのでした。昨日の残りの蕎麦と合わせて、今日は八人分の蕎麦を用意した。お客は来ても6人ぐらいが関の山だろうと読んでいた。外は晴れ間も覗いたのだけれど、昼に掛けてずっと曇りの予報。時折、小雨がぱらついて、夜はもう雨なのだそうな。

 野菜サラダを刻んで、天麩羅の油や天つゆを温め、足が痛いので歩き回ることも出来ずに、厨房とカウンターの椅子に長いこと座って、亭主は窓から見える景色を眺めていました。燕や雀や椋鳥たちが電線に止まっては飛び立っていくのを、じっと眺めては何を思うのでもなく、自分が新緑の春の風景に溶け込んでいくような気がするのです。前の通りを車は沢山通るけれど、たまに蕎麦屋を見ていく車があるくらいで、一台も駐車場には入って来なかった。

 混んだ週末の翌日は得てしてこんなものなのです。菜の花畑の手前、道路際の草の間に、今年もオレンジ色のポピーが沢山咲き始めた。隣の畑には主の植えたポピーが咲き始めている。その前に一列綠があるのは何の花なのだろうか。所々に紫の花が咲いているように見える。蕎麦屋との間の小径には、シロツメクサの群生がもの凄い勢いで広がって、花も咲き始めている。90歳を越えるお爺さんが畑をやらなくなったから、息子さんが管理しているのです。

 昼を過ぎてもお客は来ないから、空腹を覚えた亭主は、昼の賄い蕎麦を食べたいのだけれど、蕎麦を茹でる大釜もお客が来なければ洗わなくて済むと思うと、なかなかその気になれないでいる。7年もの経験で、こんな日もあるとは分かっているから、心は穏やか。と、見慣れた車が駐車場に滑り込んで、隣町の常連さんが今週二回目のご来店なのでした。「また筍の天麩羅を食べたい」と言って、カウンターに置いてある野菜サラダを取って食べ始めるのです。

 いつものように辛味大根をおろして、蕎麦を茹でようと言う時になって、もう一台の車が駐車場に入ってきたから、分からないものです。ラストオーダーの時間まで、お客がいたから昼までの退屈さが紛れたというもの。お客が帰ったその後は、やっと亭主も昼の賄い蕎麦をゆっくりと食べられる。天麩羅鍋の油が温かいうちに、蓮根、筍、コゴミにタラの芽を揚げて、春を満載したぶっかけ蕎麦を食べるのでした。「ああ、美味しい」と独り呟く。

4月19日 火曜日 晴れて暖かな初夏の陽射し …

 昨日の遅い午後についに医者に行ったら、受付の女性が「診察券はありますか」と言うので「もう10年以上前になるから」と応えると、「2011年にいらっしてますね」と、パソコンの画面を見て教えてくれました。元気だった医者も白髪の老人になって、「特効薬を出しますよ」と言ったきり、昔のことは覚えていないらしい。   
 大震災直後に、初めて通風の発作が膝に出たのを覚えてはいたけれど、大学病院の夜間外来で女将に車椅子を押されて、診療室まで行った記憶があるだけで、後は遠い記憶の彼方。女将に話をすれば彼女もうる覚えで、古い日記を取り出して2011年の3月11日を調べたらしく、確かに夜間外来に行って、専門の医師が不在だからと、痛み止めをもらって帰って来たのだとか。

 朝食は今朝もサラダとベーコンエッグ。定休日前は家の冷蔵庫にも残り物がなくなるから、亭主が仕入れをする火曜日には、隣町のスーパーで家に肉や魚や果物を買ってくることが多いのです。往復3キロ以上を歩いて買い物に行く女将には、一度には持って帰れない量だからです。今朝も魚と果物を頼まれて、お袋様と一緒に仕入れに出掛ける亭主。玄関前の釣鐘水仙は随分と背丈が伸びて、花の数も増えているのでした。足を引きずりながら車に乗った。

 痛風で赤く腫れた親指の痛みは、医者の言ったようにぴたりと止まったのは特効薬のお蔭か。その代わりに、この二週間、痛い足をかばって歩いた足首が腫れて関節痛になったらしいのです。週に一度の仕入れがなければ、家でじっとしていたいほどの痛さだから、まだまだ完治するまでには先が長い。広がる青空や春の風景が、憂鬱な気分を少しでも晴らしてくれるから、蕎麦屋に寄って昨日の片付けをしてからお袋様を迎えに行くのでした。

 お袋様を乗せて農産物直売所に着けば、足を引きずりながら歩く亭主を、野菜を運んで来た知り合いの農家の奥さんが「あら、どうしたの?」と見つけてしばし立ち話。先週もらったラディッシュが美味しかったという話をしたら、「どうやって食べるの?」と聞かれたから、浅漬けにしたら色も鮮やかだし店でも出したと応える。ご主人がいろいろな珍しい野菜を育てて持ってくるから、蕎麦屋の亭主はどうやって出しているのかと聞かれることが多いのです。

 陽射しは暖かく、中学校の通りには躑躅が見事に咲き始めていました。この時期、季節の移ろうのは実に早いと感じるのです。「万緑の 中や吾子(あこ)の歯 生え初むる」と詠った草田男の句が思い起こされるのでした。今は亡き、昔の渓流釣り仲間の先輩が、山の中に入って野生の躑躅を見つけると、「渓流では山吹が咲いて躑躅が咲くと、次は藤の咲く季節なんだよ」と言っていたのを思い出す。山奥に新居を構えた彼も、蕎麦打ちが好きだったのです。

 無事に仕入れを済ませてお袋様を家まで送ったら、蕎麦屋に戻って野菜類を冷蔵庫に収納する。先週の大根が残ったから、今日はまた烏賊を二杯も買って来たのでした。農産物直売所では、季節柄、野蕗も出ていたから、少し面倒ではあるけれど、店にある油揚げやニンジンや蓮根の残りを入れて、蕗のキンピラでも作って見ようかと新しい工夫を考える。色合いが鮮やかなのが好いかなと思いついた。地味だけれど、季節のものを喜ぶお客も少なくないのです。

 昼は昨日残った蕎麦を茹でて、カロリー少なめに済ませるのでした。タンパク質がないからと、女将が大豆の煮物を添えてくれた。結局は残った浅漬けも、二日目でも薄味で結構美味しかった。朝は天気が好いので女将が枕カバーとシーツを洗うだろうと、食事の後にひと眠りをしなかったから、シーツの敷いてない布団にそのまま横になってぐっすりと眠り込んでしまう。日に三回飲む食後の薬のせいもあるのだろうか。目覚めればもう2時過ぎなのでした。

 稽古場で雑誌に送る書を書いていた女将に声を掛けて、蕎麦屋に出汁取りに出掛ける亭主。足の調子はだいぶ痛みが取れて、親指よりも足首の痛みが気になる程度なのでした。外は雲が出て来たけれど暖かいので上着も要らない。ジャージを羽織ったまま、まずは洗濯物を畳み、洗濯機の中の洗い物を干しておく。先週の残った出汁はペットボトルに詰めて家に持ち帰り用として、新しい蕎麦汁を徳利に詰めていく。やることは沢山あるけれど今日はここまで。

 我が家の早い夕飯は5時前に始まる。女将が亭主の内臓脂肪を心配してか、豚のロースの切り身を生姜焼きにして、夜食を食わぬようにと味噌汁まで付けてくれた。昼の蕎麦は美味しいのだけれど、やはり腹が減って仕方がないのです。夕食が早いから、どうしても寝酒の肴に何か食べたくなるのが人情で、今夜も焼きするめのピリ辛醤油味をちぎりながら、少し早い快気祝いに一献なので明日は明日はまだ仕込みが沢山残っているから朝から忙しい。