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2022年8月末

8月27日 土曜日 夏の暑さが戻った日 …

 早くから起きていたのに、ぐずぐずしていたら蕎麦屋に出掛けるのが6時を過ぎてしまった。あまりすることがないと思っていたから、ちょっと気が緩んでいたのか。亭主の寝ぼけた頭のように、今朝の太陽もぼうっと森の向こうから昇って来たのです。昨日の洗い物を片付けて、小鉢を盛り付け、蕎麦汁の補充をしたら、もう7時を過ぎてしまいました。朝の30分は後になって効いてくるのです。急いで家に帰って食卓につく。

 ところが、こういう日は女将もゆっくりで、魚を焼きながらお新香を切り分けていたので、亭主が箸を並べ、小鉢を盛って、自分でご飯をよそうのでした。豚汁が出来上がってやっと「頂きま~す」なのです。今日は朝から何か蒸し暑いような気がして、二人ともエンジンがかかるのが遅かったか。食事を終えたら例によって亭主は書斎に入ってひと眠り。しかも、かなりぐっすりと眠ったのです。営業を始めてまだ三日目だというのに、朝から気怠いから困った。

 天気予報通りに雲が晴れて陽が差してきた。蕎麦屋の前のバス通りは、両側にひまわりの畑が広がって目を楽しませてくれる。夕べは雷の音がもの凄くて、怖いほどだったけれど、朝までには雨は上がっていた。看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろせば、もう蕎麦打ちの準備をする時間。早朝にエアコンを入れておいたから、快適なはずなのに、今朝は湿度がまだ70%となかなか湿った空気がなくならない。外は相当に蒸しているのです。

 そのせいか、43%の加水で捏ね始めた生地は柔らかめで、打ち粉を振っても包丁に絡みつく感じなのでした。なんとか切りべら26本で135gに仕上げ、8束を打ち上げて、昨日の残りの蕎麦と合わせて13食を用意する。隣の西の小径では草を刈る機械の音がするから、厨房の窓から覗けば、亭主と一つ違いだと言う親父様が、汗だくになって小径に伸び広がっていた雑草を刈ってくれていた。蕎麦屋の始まる前に終わらせようと気を遣ってくれたのでしょう。

 刈り終えた頃に店の窓を開けて「暑いのに有り難うございます」と挨拶をする亭主。早お昼を終えて女将が下の階段を昇って来るときには、奥様も出て刈った草を掃き集めていたと言う。やはり有り難うございますと挨拶をしたと言うから、歳を取って今日の暑さの中を動くのは大変だと思ったのでしょう。蕎麦屋はエアコンが効いてきたけれど、厨房はやはり暑いのです。11時前に車が駐車場に入ったから、どうしたのだろうと窓から見れば宇都宮ナンバー。

 遠くからいらっして時間よりも早く着いたのだろうと、大釜のお湯も沸いていたから、店の中に入ってもらったのです。聞けばそれぞれ埼玉と栃木の人で途中で落ち合って、二時間も車を走らせたのだとか。蕎麦屋巡りが好きで、「霊犀亭」を調べたら是非行ってみようとやって来たのだと言う。お二人ともヘルシーランチセットの天せいろをご注文で、野菜サラダと蕎麦豆腐を食べていただいている間に、天麩羅を揚げて蕎麦を茹でる。

 今日は四組8名だけのご来店だったけれど、大盛りが3名もいたり、デザートが出たりで、珍しくハラミとカシラの串焼きも随分と出たのです。週末だからか、皆さんゆっくりとされて、最後のお客が帰ったのは閉店時刻の2時少し前なのでした。前半のお客が昼前のご来店だったので、半分は洗い物が済んでいたから助かった。2時半には女将と二人で蕎麦屋を出る。外は猛烈な蒸し暑さで、夏が戻ったようなのでした。涼しさに慣れてしまったのが辛い。

 昼間、ノンアルコールビールを頼まれて、残りがなくなったと言うので、昼を食べ損ねた亭主は、家に帰るとすぐに隣町のスーパーに買い物に行く。パンでも買って食べようと思っていたのに、他の仕入れに忙しくてまたもや昼の食事を忘れてしまう。涼しい書斎でひと眠りして、夕刻には、再び蕎麦屋に出掛けて、小鉢がなくなったので、お新香を漬け、冬瓜を下茹でしておく。夜は女将の好物の鰹の刺身を買ってきたから、テレビを観ながら二人で食べる。

8月28日 日曜日 激しい朝の雨に …

 5時30分に車で家を出て蕎麦屋に出掛け、夕べ漬けておいた糠漬けを取り出した。味はイメージしたとおりに、ぴったり11時間でちょうど好い漬かり具合なのでした。茄子の色止めも効いている。今日と明日の二日間持ってくれれば好いのです。昨日茹でておいた冬瓜を、オクラと一緒に出汁で煮て、塩と砂糖と生姜と唐辛子で味付けをしたら、少し硬めに水片栗でとろみを付ける。多分、全部は出ないと思うけれど、これも今日と明日の二日だけの小鉢です。

 空いた蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、13人分の蕎麦汁を用意する。これは今日打つ予定の蕎麦と昨日の残った蕎麦を、合わせたよりも数が多い。雨の予報だったから、今日は12食の蕎麦で営業を開始するつもりでした。小止みになった雨の中を、西側の小径に出て、綺麗になった道路脇から、ひまわり畑の写真を撮っておく。家に戻れば、朝食の用意が調って「頂きま~す」食後は例によって書斎に入ってひと眠り。今朝は涼しかったからエアコンは点けなかった。

 これも最近の習慣なのでしょうか、食後の仮眠をぐっすりと1時間近く取るようになってしまった。目覚めたらザアザアと雨の音。外は酷い雨なのでした。午前中一杯この調子だと言うから、亭主は車を出して蕎麦屋まで行く。ガレージまで階段を下りる間も傘を差さないと歩けないほど。これではお客が来るはずもないのです。店に着いても、幟も出さず、チェーンポールも降ろさずに、蕎麦を打ちながら、しばらく様子を見ることにしたのです。

 北風のせいか北側の店の窓には雨が激しく当たって、店の中よりも外の方が涼しいくらい。昨日の暑さはまるで嘘のようなのです。蕎麦打ち室も暗かったから明かりを点けて、今朝は42%台で蕎麦粉を捏ね始めました。湿気があるとどうしても生地が柔らかくなってしまうから、昨日の失敗を繰り返さないように注意したのです。果たして、しっとりと仕上がりは好く、切りべら26本で135gの蕎麦が8束出来上がりました。今日は12食でも多い位なのかも知れない。

 ところが野菜サラダを盛り付け終える頃になると、雨は小降りになって、女将が早お昼から帰るとほとんど止んでいる。幟を出してチェーンポールを降ろせば、もう開店の準備。暖簾を出したら、程なくお客がやって来たのです。外の方が涼しいので、窓を少しずつ開けてエアコンは使わなかったけれど、十分に涼しい秋の風。女性の方は温かいぶっかけ蕎麦を頼まれて、男性はヘルシーランチセットのご注文でした。掻き揚げを揚げて汁を温め、蕎麦を茹でる。

 昼を過ぎれば今度は車二台で5人連れのお客がご来店。女性軍は天せいろが三つとお婆さんが温かい天麩羅蕎麦、そして男性は鴨せいろ大盛りなのでした。天せいろを先にお出しして、温かい天麩羅蕎麦はどうしても後になる。鴨せいろはその後でじっくりと鴨肉を焼いてお出ししたのです。お婆さんの食べた天麩羅蕎麦の汁を、女性たちが回し飲みしていたから、「汁が美味しいですか」と亭主が聞くと、「見られちゃった」と美味しさを隠せない様子。

 さすがに今日の天気では、これだけで十分なお客なのです。雨はその後も降ったり止んだりでしたが、天候には文句を言えない。コロナ以前の週末のお客の数と比べたら、半分ほどなのでしょう。それでも客の入りを見計らって、食材の用意をしているからあまり無駄はないのです。またしても昼を食べ損ねた亭主は、帰りにコンビニまで車を走らせ、サンドイッチと牛乳で空腹を満たす。風は涼しい秋の風。いつまで続くのか、無事に明日を終えたいところ。

8月29日 月曜日 午前中は秋晴れの陽気で …

 肌寒さで目が覚めた朝でした。外の陽気もすっかり秋の気配で、蕎麦屋に出掛ければ、青空に隣のひまわり畑が映えているのです。蕎麦汁の徳利は大盛り用も含めて10本、小鉢の数は8鉢用意して、打つ蕎麦の数は昨日の蕎麦と合わせて9人分と決めていた。天気は好いけれど、最高気温が25℃という予報だったから、お客はそんなには期待できないのです。今月の月曜のお客の数は4人止まりだから、これだけあれば十分に足りるはずなのでした。

 洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物を干したら、車に乗ってコンビニに煙草を買いに出る。空は何処までも青く、風は冷たい秋の風。早朝の中央通りはまだ車の数も少なく、家々が長い影を落としていました。家に戻れば女将が台所で朝食の用意をしてくれていたから、居間で一服したらちょうど食事の時間となるのです。家の中でも半袖ではもう涼しすぎる温度のようで、今朝は20℃ほどしかなかった。タオルケットにくるまって食後のひと眠りです。

 夜もしっかりと7時間は眠っているのに、食後のひと眠りも最近は1時間も眠ってしまう。気候が涼しいからよく眠れるのかな。酒を飲んで寝るから眠りが浅いのだと言われそうで、女将にはあまり言わないようにしている。まあ、身体が要求している睡眠が好きなだけ取れるのは、何と言っても隠居の特権なのかも知れない。しっかり髭を剃って、今朝は珍しく車で蕎麦屋に出勤した。月曜日は持って帰る荷物が多いので、一人だから大変なのです。

 週末ならお客が車を停められなくては困るからと、近い距離だからほとんど車では行かないのに。もしかして、一人で営業の日は一度に、一度に沢山お客が入っても大変だと、無意識のうちに思っているのも知れない。3台停められる駐車場の端を亭主の車が塞いでしまうと、あと2台しか入れないから、一度にお客が来ても知れているのです。そんなことを考えながら、厨房の椅子に座って珈琲を飲む。外は気持ちの好い陽気だから、窓は開けたままです。

 蕎麦打ち室に入って今朝は500g五人分の蕎麦を打ち、予定通り昨日の残りと合わせて九人分の蕎麦を生舟に並べる。野菜サラダはいつも平日の通りに三皿だけ盛り付ける。天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆの鍋を出して火口に据える。テーブルをアルコールで拭いてまわり、大釜の湯も沸いて、お茶の用意も出来たから、暖簾を出せば、珍しくすぐにお客の車が入ってきたのです。ご主人がぶっかけ蕎麦で奥様が天せいろのご注文なのでした。

 電話が鳴るので取れば、宅配会社からまた醤油の瓶が割れたと連絡があったので、先月も割れてキャンセルになったから今月は倍の1ダースも頼んだのに、返しが作れずに困っていると、つい大きな声で怒鳴ってしまった。狭い店だから、お客様にはお詫びをして事情を話したのでした。取りあえず割れなかった分を持って来て欲しいと言ったら、昼過ぎには大きな段ボール箱に横に並べて持って来た。これでは割れるはずだと、取り扱いの杜撰さに驚く亭主。

 昼過ぎには続けざまにお客がいらっして、そんなに車を停められないはずなのにと思ったら、歩いて来たご夫婦もいたのでした。最後の女性お二人がいらっしてカウンターに座ったところで、「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、順番に天麩羅を揚げて蕎麦を茹で、蕎麦湯を作ってお出しする。小鉢もなくなり、天麩羅の具材も切れたので、「最後の方はお待たせしたので、大サービスです」と言って、海老や野菜の天麩羅をぶっかけ蕎麦に載せてお出しした。

 カウンターの女性たちは厨房の亭主に話しかけ易いのか、「私より若いわね」などと会話の糸口を見つけてくる。団地の中に住んでいるのに、田んぼを借りて米を作っているのだと言う。デザートの水羊羹まで頼まれて、ゆっくりと話をしていかれる。閉店の時刻を過ぎて、亭主はやっと昼の賄い蕎麦をぶっかけで食べる。一人で洗い物と片付けをすると、一時間以上かかってしまうのでした。今日は残り物もなかったから、車で来る必要もなかったのでした。

8月30日 火曜日 朝はヒンヤリ、昼はムシムシ …

 定休日だと言うのに、今朝は4時起き。4時半には車で蕎麦屋に出掛けて、昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干したら、返しを作り始めるのでした。涼しいうちにやることは沢山あるから、6時前には家に戻って、女将に頼まれていた裏の無花果の樹の剪定をしたのです。今年は随分と実が付いて熟しているので、食べられそうな実はボールに取っておく。タラの樹も大きくなったから、短く刈り込んでやる。蚊がブンブンと顔や足を刺していくのが分かる。

 それでも30分ほどで退散して、切った枝の始末は後で女将に任せるのです。ボールに一杯の無花果の実は、ジャムにでもしてくれるのか、一粒食べてみたら甘い桃のような味わいなのでした。粒をもう少し大きくするには、摘果して実の数を減らさなければいけないのは分かってるけれど、そこまでは手が回らない。テレビのニュースを見ながら、女将の起き出して来るのを待つ。炊飯器のスイッチが切れたようだから、そろそろ朝ご飯の支度にやって来るはず。

 亭主が店で残った冬瓜のそぼろ煮を小鉢に盛っている間に、女将は豚汁を作り、ベーコンエッグを焼いて、お新香を切り分ける。自分でご飯を盛り付けて、「頂きま~す」と食べ始めるのでした。やはり朝が早かったからか、ひと仕事を終えてもう眠くて仕方がないのです。書斎に入って横になれば、涼しい朝だったから、あっという間に熟睡の境地。最近は1時間近くぐっすりと眠ることが多いのです。目覚めればもう8時半。洗面と着替えを済ませて蕎麦屋へ。

 まだ暗かった早朝に仕込んだ返しを甕に注ぎ、お袋様に電話をして週に一度の仕入れに出掛けるのです。最初に団地の外れの農産物直売所に向かう。ちょうど知り合いの農家の奥さんが野菜を運んで来たところで、「うちのは今日は稲刈りで」と言って新しく取れたばかりの茄子を籠に入れてくれた。「この間もらった南瓜もオクラも美味しかったよ」と言えば、「有り難うございます。今日も持って来ましたよ」と新鮮なものをくれるのでした。

 礼を言って車に乗り込み、隣町のスーパーに向かえば、運好く駐車場は最初に来た人たちが帰った後で、入り口に近い場所に停めることが出来たのです。夕べパソコンのプリンターで印刷した買い物リストに載っている品物は、全部揃えることが出来て大喜び。今日はレンコンがとても好いものが並んでいたので助かる。新レンコンの値段も、だいぶ落ち着いてきたらしい。店に戻ってすべての野菜類を冷蔵庫に収納し終えたら、11時近かったので家に帰って昼食。

 買い物から帰ったばかりの女将に、温かい湯麺と冷やし中華とどちらが好いかと尋ねれば「汗だくなので冷やし中華が好い」と言うので、麺と肉を茹でて昨日残ったサラダを載せてはい出来上がり。珍しく食後のひと眠りはせずに、朝の無花果の樹の剪定で使った脚立や剪定ノコを、もう一度車に積んで蕎麦屋に出掛ける。今度は蕎麦屋の月桂樹の木を剪定です。屋根まで伸びてしまった新しい枝をどんどん切っていたら、雨が降りだしたので厨房に戻る。

 8月の初めに草取りをした南側のミニ菜園は、今年は絹さやの後は何も植えていなかったから、もう草が伸びて大変な有様。暖かかったからか、今年は随分と草の伸びるのが早いような気がする。明日は少しは草取りが出来るだろうか。そんなことを考えながら、朝のうちに準備をしておいた出汁を取る。一番出汁を取って蕎麦汁を仕込んだら、二番出汁は5㍑の鍋に追い鰹で多めに作っておくのでした。涼しくなってくると温かい汁が出るのです。

 3時前に注文してあった床掃除の機械が届いて、早速、梱包を開けて見れば、コードレスの充電式で自走式の優れもの。屈んで雑巾で店の床を拭くのは、この歳になるととても大変なので、どんな成果を上げるのか明日が楽しみです。2万円以上する高価な物だから滅多なことでは期待外れはないと思うのだけれど。このほかに、床を磨く機械も頼んであるから、この秋は店の掃除が楽しみです。明日は何から手を着けようかと考えながら、夕食の食卓に着く。

8月31日 水曜日 雨の音で寝覚めたけれど …

 珍しく夕べは夜更かしをして、0時近くに床に入ったのですが、これも習慣か朝は雨の降る音でいつもの時間に目が覚めて、居間で一服したけれどやはりまだ眠い。再び目が覚めたのは朝食の時間の少し前で、いつもと同じように7時間近くは眠ったことになる。蕎麦屋の剪定した木の枝を袋に詰めようと思っていたけれど、今朝の雨で濡れているからと諦めたのでした。さすがに朝食後のひと眠りはせずに、今朝は蕎麦屋に出掛ける亭主。

 バス通りの向こうにあるひまわり畑は、遅く種を蒔いたから今がちょうど盛りの時期なのに、どうもひまわりの花は陽の昇る東に向かって咲くらしく、バス通りからは花の顔が見えないのです。蕎麦屋の隣のひまわり畑はもう花も終わりらしく、種のこぼれて育ったという秋桜の花も盛りを過ぎていました。アゲハチョウが花に止まって、秋の訪れを感じさせるのですが、どうも今日はまた暑さがぶり返すらしく、あさから蒸しているのです。

 蕎麦屋の厨房に入って、今朝の仕込みは夏野菜の揚げ浸し。隣の火口では冬瓜を下茹でして、鶏胸肉の挽肉とのそぼろ煮を作る準備をするのでした。昨日届いた電動の床掃除機は、充電に3時間もかかるというので、セットしてコンセントに繋いだままにしておく。午後一番で試しに運転してみようと、楽しみにしている亭主なのでした。長い間に汚れた床は、一朝一夕で綺麗になるとは思えないけれど、新しい器材を導入して店を綺麗にする契機となればと思う。

 冬瓜を15分茹でたら透き通って竹串が通るようになったので、笊に上げて水で洗う。ピーラーでレンコンの皮を剥いて、隣の火口で下茹でをしてあったのを、水で洗い天麩羅の具材用にタッパに入れて冷蔵庫で保存しておく。午前中の仕込みはこのくらいにして、11時になったので家に戻って、昼の支度をしなければ鳴りませんでした。味見用に揚げ浸しを小さな容器に入れて、夕べで夜の酒がなくなったから、酒屋によって煙草と焼酎を買って家に帰る。

 昼は先週から残ったキャベツの処理に女将が困っていたので、焼きうどんにして大量のキャベツを消化する。フライパンに蓋をして油で炒めると、キャベツの半分の量がしゅんとなって、野菜が沢山摂れるのです。小鉢には午前中に作った揚げ浸しを添えて、焼きうどんは塩味に醤油を少しだけ垂らし、美味しく頂くのでした。食後のひと眠りも今日はパスをして、女将がスポーツクラブに出掛けたら、再び蕎麦屋に出掛ける亭主なのでした。

 フル充電を終えた床掃除機は、コードレスなので扱いやすく、リモコンのスイッチを入れれば散水する機能も付いていて、一分間に1000回という振動で床を擦るから優れもの。ただ、汚れの酷いところは、さすがにすぐには落ちないから、雑巾でこすって汚れを落とす。以前のように床に屈んで全部の作業をするよりは、確かに楽なのです。こんな機械を制作者が考えた理由は、やはり小さな店舗の掃除に苦労をしている人たちがいるからなのでしょうか。

 一時間ほどでトイレから店の入り口までの狭いスペースを洗ったら、もう午後の仕込みにかかる時間なのでした。午前中に下茹でをした冬瓜を入れる前に、二番出汁と塩と砂糖で出し汁を作って唐辛子と鶏胸の挽肉を入れて煮ておく。そこに輪切りにしたオクラを入れ、冬瓜を入れて最後に少しだけ出汁醤油を垂らす。水溶き片栗粉を加えて少し硬めに仕上げれば完成。今回は粗挽きの鶏胸肉を入れたので、ちょっと違う仕上がりですが味は抜群でした。

 明日の天麩羅の具材を切り分け、お新香を漬けたところで、業者が注文をしておいた食材を届けに来る。9月で会社を辞めるという担当者が、新しい若手を連れて挨拶に来た。来週からはこの地区を回るのが木曜日になるというので、亭主は忘れないようにカレンダーに記しておくのでした。とにかく、夏の暑さの戻った今日は、店の外も蒸し暑く、風も湿った生ぬるい風でした。家に戻ればもう夕食の時間で、味見に持ち帰った冬瓜のそぼろ煮とキュウリの梅和えで、早速、一献。メインのおかずは鶏腿肉のカリカリ焼きでした。

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2022年8月下旬


8月21日 日曜日 気温は低いけれど蒸した一日 …

 未明に激しい雨の音で目が覚めた。5時半過ぎには起き出して、夕べ漬けた糠漬けが気になっていたので、取りあえず蕎麦屋に出掛けようと玄関を出たら、もう止んでいる。蕎麦屋に着いた頃には、ひがしの空の雲の切れ間から、朝日が覗いて上空には青空も見え始めていたのですが、今日は一日中、晴れることはなかった。向かいの畑には朝靄が広がって、涼しいのだけれど何故か蒸し蒸しとした陽気なのでした。蕎麦屋の室内は気温25℃、湿度85%。

 昨日の洗い物を片付ける前に、冷蔵庫からヨッコラショと糠床を取り出して、野菜を切り分けたら小鉢に盛り付けていく。ついでに冬瓜のそぼろ煮と夏野菜の揚げ浸しも、最後の六鉢を作っておくのでした。今日、お客が混めば、何か別の小鉢を作らなければならない。カウンターの洗い物を片付け、すっかり空になっていた蕎麦と作りに予備の蕎麦汁を詰めていく。これも混めば明日の分まではないかも知れない。今日が終わってから考えることにしよう。

 洗濯物を干す暇もなく7時を過ぎたので、家に帰って女将の用意してくれた朝食を食べる。縞ホッケの塩味が薄かったからちょうど好かった。豚汁は店で大根や長葱が残る間は続けてくれるらしいから、貴重なおかずなのです。時間のある時に大根や人参だけ煮て、冷蔵庫に保存しておくのがコツらしい。この夏は大根も値が高くなっているから貴重らしい。油揚げや豚肉も入るから、栄養のバランスも好いし、朝は温かい物を食べるという理にかなっている。

 食後はお茶を入れてもらって、書斎で横になるけれど5分も眠れなかった。今朝は蕎麦を二回打たなければならないからと女将に言えば「前はお店も混んでいたからよく二回打っていたじゃない」と言われた。朝飯前のひと仕事を始める前は、混んだ日は夜に蕎麦屋へ出掛けて仕込みをしていたのです。歳を取ったのか、何時の間にか習慣になったのか、二回打つとなるとちょっと緊張する。玄関を出れば、しばらく花が少なくなったムクゲがまだ咲き続けている。

 そう言えば、以前は1kgずつ打っていたから、多い日はこれを二回打っていたのだ。そして、それが続いたから腕の腱鞘炎になってしまい、それから一度に打つ蕎麦粉の量を750gに変えたのだった。当時は加水量が少ない方が、美味い蕎麦が出来ると勘違いしていたから、尚更、力を込めて打っていたのでしょう。少ない量を打つのは力も少しで済むし、加水率を43%にしてからは、かく汗の量も少なくなったような気がします。ムクゲにあやかって頑張る亭主。

 野菜サラダも今日の天気では四皿も要らないかと思ったけれど、女将が「もうないのと言われる時が嫌なのよね」と言うので、休日の数を守って野菜を刻むのでした。今日は昼前に二組もお客が入って、これは幸先が好いかと思えた。ご主人がカレーうどんのご夫婦もいらっして、しっかりデザートまで頼まれる。酒を飲むわけではないのに、珍しく二組とも串焼きを頼んだから嬉しい亭主。若いカップルは、前にもいらっしてハラミの串焼きを頼んだ方でした。

 とろろ蕎麦にヘルシーランチせいろ蕎麦やおろし蕎麦のご注文だったから、昼前は具材が足りなくなるかと心配した天麩羅が出なかった。お客の来ない間にと亭主の食べる賄い蕎麦も、今日は大根おろしと山葵と葱だけ。揚げた天麩羅を入れるパッドが油で汚れていないので、自分がかき揚げを揚げて汚すのが憚られたのです。その分、後の洗い物が楽になる。などと考えていたら、午後のお客はいきなり天せいろのご注文。人生、思うようには行かないものです。

 1時を過ぎてもお客がなかったから、暇な亭主は取っての長い剪定鋏を持ちだして、切り残した紅葉の枝を払うのでした。隣にあるヤマボウシがちょっと刈り込みが足りないのか、モミジと同じくらいのボリュームになっているのが今後の課題か。最後のお客がお蕎麦が美味しかったと言って帰られたのは、もう閉店時間の間際なのでした。女将のスポーツクラブの予約を無事に済ませて、今日は早めに片付けが終わる。夜は串焼きとしめ鯖、モズクで一献。


8月22日 月曜日 久し振りに蕎麦を打たない月曜日で …

 曇ってはいたけれど、気温が低いからか、爽やかな朝でした。家の中では手に触れる場所がジトーッと汗ばんできたのに、外は風があるから心地よいのです。蕎麦屋に着けば隣地との境に生えていた草が綺麗に抜かれていた。ゴミ出しから帰った隣の奥さんが出勤するところだったから、挨拶をしながら「済みませんね。綺麗にしてもらって」と言えば「ついでだから」と笑顔で応える。まめなご主人が昨日の午後から草取りをしてくれたらしい。

 隣のお花畑を覗いたら、今朝も賑やかにひまわりの花が咲き乱れていました。空が灰色なのが惜しまれる。ついでに西側の小径のムクゲの様子を見ると、家のムクゲと同じで、ここに来てまた元気に花を咲かせているではありませんか。店の中に入り、看板を出して幟を立て、チェーンポールを降ろしたら、早速、箒と塵取りを持って掃除に出る。ついでに道路際の雑草も綺麗に抜いておいた。お隣の若夫婦に触発されたのが好かった朝なのでした。

 道路脇に溜まったほんの少しの土に種が飛んできて、雑草が生える仕組みらしい。風で飛んでくる土を畑に返すわけにも行かず、抜本的な解決には繋がらない。今朝は蕎麦を打たないと決めていたから、朝の時間に余裕があるのでした。昨日洗って火で乾かした大釜に水を張って、ポットを並べてお湯を入れる準備だけしておく。湯を沸かすのはまだ早いから、厨房の椅子に座ってひと休み。店の中を見渡せば、天井の換気扇が埃で丸く汚れているのでした。

 何ヶ月に一度かは取り外して洗っているのですが、このところ暑くてそんな元気がなかった。今朝は涼しいのと時間があったから、脚立を出してカバーを外し、タワシでゴシゴシ埃を落としたら、見違えるように綺麗になった。店の外も中も、埃というのは何時の間にか溜まってしまうらしい。小さな蜘蛛も例外ではなく、蕎麦打ち室の窓や、店のテーブルや椅子の下に何時の間にか糸を針巡らせているから要注意なのです。維持管理とは好く言ったものです。

 いつもの時間になったら、野菜サラダの具材を刻み、平日だから三皿だけ盛り付けておきます。店の外は時折陽が差して、青空も覗く陽気なのですが、天気予報通りに晴れにはならない。大釜の湯が沸いたので、いつもより早めに暖簾を出して、お客を待つけれど、今日は早いお客はないのです。昼を大分過ぎた頃に、車が駐車場に入って、若い男性客がいらっしゃる。天せいろの大盛りを頼まれてお出しすれば、蕎麦湯も綺麗に飲み干している。

 「お蕎麦かお好きなのですね」と亭主がカウンターのこちらから言えば、「東北の宮城の出身なので蕎麦が好きなのです」と言うから、「宮城はどちらのご出身ですか」と尋ねれば白石だ言う。昔、七ヶ宿によく渓流釣りに行ったという話をすれば、話が弾む。子供もまだ小さいと言うから、三十代ぐらいなのだろうか。近くの奥さんの実家に帰ってゆっくりと夏休みらしい。今日のお客はこれでお終い。閉店時刻を前に、亭主はぶっかけで遅い昼を食べるのです。

 残った天麩羅の具材を揚げて、家に持ち帰る準備をしながら、洗い物を片付ける亭主。店置きのパンフレットがなくなったから、デザートの抹茶小豆の写真を撮っておく。サラダも小鉢もすべて残ったから、一度家に車を取りに帰って、お盆に載せたまま運んで帰るのです。ちょうど女将がスポーツクラブから帰る時間だったから、荷物を玄関口に置いて煙草を買いに出る。書斎でハソコンに向かって今日のデータを入力したら、夕食までぐっすり寝込んでしまう。


8月23日 火曜日 朝夕は涼しく、昼は蒸し暑い日でした …


 最近は朝晩が涼しいのでよく眠れる。夜も早くに寝ることが多いから、朝は自然と早い時間に目が覚めて、今朝も定休日だと言うのに6時前には取りあえず蕎麦屋に出掛けました。片付け物もほとんどないから、青空が覗いているようなので、隣のひまわり畑を歩いて写真を撮ることから始めました。いつも蕎麦屋の側から眺めた風景を撮っているから、今日は少し先まで歩いて駅前の高層マンション群が見える辺りでシャッターを切ったのです。 

 それからやっと厨房に戻って、3㍑の鍋に昆布と干し椎茸を入れて水を汲み、午後の出汁取りの準備をしておく。奥の部屋に干してある洗濯物を畳み、今度は洗濯機の中の洗濯物を干していく。一つ一つは時間がかからないけれど、何でも一度にやろうと思うと大変になるから、気が付いたことは済ませておくのが年寄りの知恵か。厨房の椅子に座ってひと休みすれば、嗚呼、まだあれもやっておかなければと気が付くから、休憩も大切なのです。

 7時前に家に帰れば、女将が台所で茄子とピーマンの味噌炒めを作ろうとしていたから、亭主が代わってフライパンで炒めてやる。その間に女将はご飯を盛り付け、味噌汁をよそうのです。休みの日はやはり亭主も何処か余裕がある。昨晩は十分に眠ったはずなのにそれでも食後はひと眠り。満腹になると横になってしまうのがどうも習慣になっているらしい。子供の頃は食べて直ぐに寝ると牛になるなどと言われたものですが、身体にはどちらが好いのか。

 洗面を済ませて和室に着替えに行けば、辺り一面にプルメリアの甘い香りが漂っている。見れば蕾を幾つか残して、恐らく最後の花が開いているではありませんか。7月始めに咲き始めたのだから、2ヶ月近くも咲き続けていることになる。夏場は外に置いていた頃にはあまり気にならなかったけれど、女将が大切に育てているからなのか、随分と花の時期が長く続いている気がしてならない。お袋様に電話をして、今朝の仕入れに出掛ける亭主。

 農産物直売所で野菜をみつくろって買い終えたところで、知り合いの農家の親父様が今朝の野菜を持って来た。「朝採るからどうしてもこの時間になっちゃうんだよ」と値札を貼っていたから、太いキュウリや形の好い冬瓜や南瓜、オクラ、ナスなどをもう一度レジに行ってお金を払うのでした。隣町のスーパーにも出掛けて、足りない野菜や女将に頼まれた家の肉や魚や果物を買って、10時過ぎには蕎麦屋に戻寄って、残った蕎麦をお袋様に持たせて送って行く。

 冬瓜は割高だけれど小さめのものが使いやすい。切らずに置いておけば冬まで持つから冬瓜と言うらしい。切って茹でたら冷凍してもおける。亭では小さめのものを二回に分けてその週の小鉢に煮ている。皮を剥き、小さく切って、塩を入れて15分ほど下茹でをすれば、綺麗な透き通った宝石のような色になるので、これをいろいろな煮物に入れて使う。鶏の胸挽きとオクラ、唐辛子の輪切りと煮て塩と砂糖、生姜で味を付け、隠し味に薄口醤油をたらし、片栗でとろみを付けると、綠の色が涼し気なのです。冷やして食べたい。

 昼は昨日残ったそばを茹でて、天麩羅の具材の残りを揚げて帰ったから、グリルで焼いて天せいろ。3㍑の鍋で蕎麦を茹でるのだけれど、二人分を一度に茹でると、どうしても蕎麦屋で茹でるような艶が出ない。蕎麦屋のお客が「家で茹でるとどうしても美味しく出来ない」と言っていたと女将が言う。やはり茹でるお湯の量に関係があるのか。午後は先週盆休みだった床屋に出掛け、久し振りに親父様と四方山話。夕刻まで蕎麦屋で出汁取りをして今日は終わり。



8月24日 水曜日 涼しくなったのに蒸し暑く感じた一日 …

 夕べは夕食の後に風呂の時間まで、ぐっすりと遅すぎる昼寝をしてしまったから、夜がなかなか寝付けずに、午前2時過ぎにやっと眠りに入るのでした。たまにこういう失敗をするから、今朝は朝食の時間にやっと間に合って目を覚ます。あれもしなければと頭の中にはスケジュールが一杯で、定休日二日目は試練の日なのでした。朝ドラの終わる時間に蕎麦屋に出掛け、昨日の続きで冬瓜のそぼろあんかけを作る準備をするのが最初の仕事です。

 冬瓜を半分だけ切り分けて、皮を剥いたら2cmほどの大きさに切って塩水で茹でる。茹で上がる少し前にオクラを鍋に入れて火を通しておきます。これを冷蔵庫で冷やして、午後の仕込みの準備をしておくのです。ここまで終えたところで、今日は西の町に蕎麦屋の消耗品を仕入れにいかなくてはならなかった。早い時間に済ませておかないと、億劫になるから、思い切って昼前に出掛けて行くのでした。ラップやキッチンペーパー、消毒液などを買い込んで来る。

 帰り道、団地の中央部の農村地区を横切れば、稲穂の広がる水田の向こうに駅前の高層マンション群が見える。子どもたちがまだ小さな頃、螢を見に来たのも確かこの辺りです。今では休耕田もだいぶ多くなったけれど、この土地に住み始めた頃の懐かしい原風景が残っている。以前はこの地区から蕎麦屋に来てくれたお客もいたのです。駅から循環しているモノレールはこの農村地区の外側をぐるりと回るように団地の中を走っているのです。

 昼はまたしても蕎麦。今日は3㍑の鍋で一人分ずつ蕎麦を茹でたら、ツヤのある美味しい蕎麦が出来た。やはりお湯の量に関係があるでした。冷えたとろろ芋をおろして、蕎麦屋で残った蕎麦豆腐をつまみながら、美味しくいただくのです。今日は午後の仕込みが沢山あったので、食後の昼寝もせずに1時過ぎには再び蕎麦屋に出掛ける亭主。業者が荷物を持ってくる夕刻まで頑張れるだろうかと、多少の不安はあったけれど、やるしかないのでした。

 まずは、午前中に下準備を終えた冬瓜とオクラを鶏胸挽と出汁で煮て、砂糖と塩で味つけし、薄口の出汁醤油を垂らす。ここまで書いたところで、唐辛子を入れたのに、生姜を入れるのを忘れていたことに気が付いた。明朝、生姜を擦って加えても遅いだろうか。隣の火口では、カレーの具材を煮込んでいる。南瓜と人参が少し柔らかくなったらルーを入れて、後は余熱で十分。普通なら8人分の分量だけれど、汁が少なく具が多いから5人分に分けて冷凍する。

 2時間ほど頑張ったところで少し疲れてきた。厨房の椅子に座ってひと休みしながら、夏野菜の揚げ浸しに入れる食材を冷蔵庫から出しておきます。先週残ったレンコンは初めて入れるけれど、硬すぎないか心配。一度茹でてはあるけれど、最初に揚げて十分に火を通し、油が少なくなってきたから、火の通りにくい食材から炒めていく。いつもよりは量を少なくしてあるのは、何日も汁に浸けておくと色落ちして鮮やかさが薄れるから。2,3日が限度かな。

 冬瓜のそぼろ煮もそうだけれど、お客が順調に入ってくれると週末にもう一度作れるのです。こればかりはなかなか予測できないから、運を天に任すだけ。後は天麩羅の具材を切り分けて、蓮根の皮を剥いてスライスしたらを茹でる。南瓜を盛り付ける形に切り分けたらレンジでチーンして、かき揚げの玉葱と三つ葉を刻んで容器に入れる。ここまで約30分、残るはお新香を漬けて、蕎麦豆腐とデザートを仕込むのですが、業者が来るので珈琲を沸かして待つ。

 4時過ぎに荷物が届いて、久し振りに顔を見る若者は、9月から担当者が代わりますと言うから、理由を聞けばどうも結婚するらしい。新居からは会社が遠いので、今の会社は退職するのだと言う。新しい仕事も業種は違うけれどやはり営業らしく、若い人の決断に感嘆する亭主なのでした。若いうちに転職するのが今の時代らしいと、自分の人生をふと振り返る。5時過ぎに家に帰れば、女将が珍しくオーブンとグリルを両方使って夕食を用意していました。



8月25日 木曜日 今朝も早くから蕎麦屋に出掛け …

 昨日は夕刻まで頑張って仕込みをしたけれど、やはり全部は終わらなかった。今朝はその遅れを取り戻そうと5時半には家を出て、蕎麦屋に向かう亭主。向かいの森の雲の影から、日の出の遅くなった朝日が光を投げかけていました。定休日明けの平日だから、新型コロナの感染者が増え続けている中で、お客がそれほど来るとは思えなかったけれど、準備だけはしておかなければというのが亭主の考え。車で乗り付けた蕎麦屋のたたずまいは深閑としている。

 涼しい朝だったから、郵便受けから新聞だけ取り出して、エアコンも点けずに厨房に入り、昨日使って洗いかごに干してあるいくつもの鍋を片付ける。最初に取りかかるのは、固まるまでに時間のかかる抹茶小豆の仕込み。上に甘く煮込んだ小豆を載せたいのだけれど、少し沈むくらいの硬さで載せるのがポイントなのです。次ぎに蕎麦豆腐を仕込んで型に流し込み、冷蔵庫から糠床を取り出して、ナスやキュウリ、カブを切り分け、小鉢に盛り付ける。

 昨日仕込んでおいた冬瓜のそぼろ煮と夏野菜の揚げ浸しを、冷蔵庫から鍋のまま出して、小鉢に盛り付けていきます。味付けはもちろんのこと、見た目にも美味しそうだとお客に思われるように、いろいろな工夫をしているつもり。冬瓜の透き通った感触が涼し気なのが亭主のお気に入り。オクラの綠と唐辛子の赤をアクセントにしたのですが、2、3日のうちに出し終えないと色は褪せてくる。そんなことを考えながら準備をするのが楽しいのです。

 洗濯物を干して7時前に家に帰れば、今朝は厚揚げが入った三ツ葉の卵綴じがメインのおかずでした。亭主が持って帰ったお新香の残りと揚げ浸しが、少しは花を添えたかな。豚汁も涼しい朝にはちょうど好いのでした。栄養のバランスが良いのが何よりなのです。7時半から女将の朝ドラが終わる時間まで、亭主は書斎に入ってぐっすりと寝込んでしまう。洗面と着替えを済ませ、洗濯物を干すのに忙しい女将に「行って来ま~す」と声をかけて店に出掛ける。

 空は曇ってきたけれど、涼しくて気持ちの好い朝なのでした。蕎麦屋に入る前に西の小径に散ったムクゲの具合を見て、ついでに隣のひまわり畑に入って写真を撮っておく。いつも元気で賑やかに咲いているこの花に、どれだけ励まされることか。歳を取るに従って自然の草花との会話が出来るようになるものらしい。それだけ孤独と向き合うようになるのかも知れない。今朝も散歩の老人たちが、ひまわり畑で写真を撮っていたのでした。

 店内の気温は25℃、窓を全開にして空気を入れ換えておく。蕎麦打ち室に入っても湿度は40%台だったから、今日は本当に涼しい朝なのでした。昨日のうちに蕎麦粉の発注をしておいたけれど、蕎麦粉の届く土曜日に打つ分まで、蕎麦粉があるのかと心配だった。今朝も750g八人分の蕎麦を打ち、残りを見れば何とか足りそう。気温の低い日が続くと言うから、市内の新型コロナの感染者も増えていることだし、そうそうお客が来るとは思えないのです。

 それでも野菜サラダは平日の決めた三皿を盛り付け、新しい天麩羅油を鍋に注ぎ、開店の準備は着々と進む。暖簾を出して開店前のひとときに、カウンターの椅子に座ってひと休みすれば、眠ってしまうのではないかと思うけれど、さすがに眠ることはないのです。バス通りの向こうを見れば、あちらの畑のひまわりも随分と花を咲かせてきた様子。近くまでは寄れないけれど、お隣のご主人が道楽だからと言って耕した畑の広さには驚くばかり。

 ボサノバの明るい曲を流して待ち続けるけれど、予想通りにお客は来ない。1時前になってやっと常連さんが来てくれたけれども、「今日は涼しいからサラダはいらない」と言われて、辛味大根をおろして、レンコンと南瓜、稚鮎とキスの天麩羅を揚げる。「夏が旬の野菜って何なのですか」と聞かれるから、「うちで出しているのが全部旬の野菜ですよ」と応える亭主。昼飯を終えた女将が手伝いに来てくれて、二人で後片付けをして家に帰るのでした。

8月26日 金曜日 曇り空だけれど蒸して暑い日 …

 昨日はお客が少なかったから、準備するものもないので、今朝は朝飯前のひと仕事はお休みにしようと思っていたのです。ところが習慣とは怖いもので、いつもの時刻に目が覚めてもう一度眠ることも出来ない。仕方がなく、洗濯物でも片付けてこようかと車で蕎麦屋に向かうのでした。まずは西側の小径にムクゲの花が散っていないかを確認して、新聞を取って店の中に入れば、昨日の朝よりは蒸している感じ。市内のコロナの感染者数は相変わらず200名近く。

 距離的には近いすぐ隣の市でも300名を越えているから、高齢者にとっては不要な外出を自粛すべき状態が続いているのです。家に帰って女将とこの話をすれば、「お盆で広がってるし、夏休みが終わらないと、当分収まらないんじゃないの」と言う。「学校が始まったらまた広がるのでは」と心配する亭主。高齢者ばかりの夜の防犯パトロールも、9月一杯は休止にするという連絡があった。これでは今日もお客が見込めないと、食後のひと眠りをするのでした。

 いつもよりは遅く、9時前に家を出て再び蕎麦屋に向かう亭主。昨日の蕎麦が随分と残っているから、今日は500g5人分だけ打とうと決めていたのです。それでも蕎麦打ち一回は一回だから、43%の加水で丁寧に蕎麦粉を捏ねて、丸出し、四つ出しを終えて伸し広げていく。綺麗に八つに畳んで包丁打ちをすれば、今朝は調子が好くて、不思議と切りべら26本で135gに揃うのでした。135gだと端切れがけっこう残るので、86gは大盛り用にと束にしておくのでした。

 昨日の蕎麦と合わせて11人分の蕎麦の束を生舟に並べ、10時前に蕎麦打ちを終える。いつもと同じ時間なのです。大根をおろして、ブロッコリーとアスパラガスを茹で、レタス、キャベツ、赤玉葱と切り分けたら、野菜サラダの皿を用意する。レタスを敷いて刻んだキャベツと赤玉葱を盛り付けたら、パプリカをスライスして、ニンジンのジュリエンヌ。キュウリ、トマト、パイナップルを切り分けて皿に載せたら、最後にブロッコリーとアスパラを添える。

 昨日も全部残って家で女将となんとか朝までかかって消化した。今日も残ったら大変だとは思いながらも、盛り付けてカウンターに並べると、ホッとするのです。お客の少ない蕎麦屋でも、それが調理人の喜びというものか。昼前に男性客がお一人でご来店て、温かいぶっかけ蕎麦をご注文。「少し涼しくなったから温かいのがいいかと思って」とおっしゃるので、「お腹には好いのですよ」と亭主が応える。確かに店内は28℃と以前よりは気温が低い。

 1時前に女性客5人がテーブルを占領して、皆さんバラバラのご注文。お婆様とお母様が前にいらっして、今日は親子孫と三代で来て下さったそうな。二人ずつ蕎麦を茹でてお出しして、天麩羅を揚げて天せいろを二つ出したら、最後に鴨せいろを作る。5人分の調理をしている間に、次のお客が来たらとうしようかと気が気ではなかった。一人で営業する日は、お茶出しも盆や蕎麦皿のセットもすべて自分でやらなければいけけないから、これが大変なのです。

 無事に5人分の蕎麦を出し終え、女性ばかりだからかいろいろと話をする。デザートの抹茶小豆も3人が頼まれて「これは美味しいわ」と褒められた。1時半には皆さんお帰りになったけれど、それから洗い物と片付けに入るのが大変。1時45分のラストオーダーの時間を過ぎたので、看板と暖簾と幟を閉まって、チェーンポールを上げていたら、車が止まってもう終わりかと言う。御免なさいと頭を下げる。遅い昼は家に帰ってから冷やし中華を作って食べる。

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2022年8月中旬

8月13日 土曜日 台風上陸通過の日だったけれど…

 昨日、一昨日と続けて平日の二日にお客が入ったので、お新香も蕎麦汁も底をついたのです。昨日のうちにお新香は糠床に漬けて、出汁を取る準備をしておいたから、今朝は6時前に蕎麦屋に出掛けました。出汁を取りながら、糠床から取り出したお新香を切り分けて、蕎麦汁まで作って約1時間。今日は蕎麦豆腐とデザートを仕込まなければいけなかったけれど、7時を過ぎたので家に帰ることにしました。隣のひまわり畑を眺めれば、可愛い花が沢山でした。

 日中、畑の様子を見て回っていたお隣の息子さんに挨拶をして、立ち話をすれば、去年、種が沢山取れたので、今年は広い範囲に播いたのだとか。「道楽でやっているから」と言うので、「私の蕎麦屋と同じですね」と言えば、予約をしなくても食べに行けるかと聞かれ、いつでもどうぞと応えておいた。家に戻れば、今朝は庭の隅にアオイと並んでモミジアオイが一輪ずつ咲いていた。蒸すけれども涼しい朝なのでした。気温は低いのでしょうか。

 女将の用意してくれた朝食は、いつになくボリュームがあって、全部は食べきれない。二人でホッケを半分ずつ残して、晩のおかずにすることに決める。今日は台風だからあまりお客も期待できないので、食後のひと眠りもゆっくりと、30分ほど熟睡するのでした。それでも、やることは沢山あったから、8時半過ぎには家を出て、エアコンの効いた蕎麦屋に向かう。台風がいつ上陸するのかをよく知らずに、少し北に進路を変えたことだけを覚えていた。 

 とは言っても、台風の進路の南側は雨風が心配されるから、みずき通りを渡りながら、この雲行きはもう台風の影響なのかと考えている亭主。まだ雨こそ降りだしていないけれど、店は開店休業になるかも知れないと、心配をするのでした。蕎麦屋に着いて幟を立てるのだけれど、雨風が強くなれば耐えられないかも知れないと、あらかじめ隣との境に立てた幟を降ろす場所を確認しておく。青空も見えてそれほど激しい天候ではないのが、ちょっと心配ではある。

 看板を出してチェーンポールを降ろしたら、厨房に入って抹茶小豆と蕎麦豆腐の仕込みを済ませる。抹茶が少し固まらないと小豆が沈むから要注意。蕎麦打ちが終わったら、薬味の葱を刻んで、大根をおろせば、後はいつもの野菜サラダの具材を刻む行程。少し仕事の多い分、時間はどんどん過ぎて行くのでした。蕎麦打ち室に入ったのは、女将が来た9時半過ぎなのです。今日は一回だけ打てば好いから、慌てることはないと慎重に蕎麦粉を捏ねていく。

 ちょうど43%の加水率で、今日もしっとりとした生地が仕上がったので、蕎麦玉を作って生地を寝かせる間に、厨房に戻って葱きりと大根おろしを済ませる。時間のない時には、ここで休憩をしてはならないと自分に言いかせるのです。一度椅子に座ってしまうと、立ち上がるまでに時間がかかるのが歳を取った証拠。大釜に火を入れたら、直ぐに蕎麦打ち室に戻って伸しにかかるのです。今朝も綺麗に伸して畳んで、八人分の蕎麦を仕上げ、生舟には12食の蕎麦。

 時折、雨が降る天気だったけれど、12時半を過ぎた頃にやっとお客が来てくれました。続けて1時を過ぎてリピーターのカップル。天せいろの大盛りとヘルシーランチセットを頼まれて、今日は綺麗に出来上がったと思っていた野菜サラダが出たので嬉しい。それでも空が暗くなって雷鳴が鳴り響く有様だったから、今日はこれでお終いだろうと、亭主はかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べるのでした。女将も残った野菜差サラダを包み、片付けに入る。

 家に帰って冷たく冷えた梨を剥いてもらって食べる。女将が美容院に行こうと電話をしたら、台風だからともう店を閉めたと言われたそうな。亭主は書斎に入って、今日の売り上げと写真のデータをパソコンに入力したら、横になってひと眠りする。目が覚めたらもう4時を過ぎていたから、随分と長い時間寝たことになる。夕食には早いから、ブログを書き始めて外が雨なのに気が付いた。明日は台風一過でお盆の墓参りが出来る天気。店は混むのだろうか。

8月14日 日曜日 台風一過、お盆も休まずに営業したら …

 台風が過ぎた翌朝は、からりと晴れ渡るかと思いきや、薄雲がかかった森の向こうから、今朝の太陽が光を放っていました。天気予報では昼過ぎまで曇り。お盆で墓参をするにはちょうど好い陽気だけれど、コロナ前のように墓参帰りのお客が来るということも、最近ではあまりない。以前なら、この時期はいつが休みかと電話が鳴ったもの。斯くして、定休日以外は休まずに営業をしようと女将と話していたから、今朝も6時には蕎麦屋に出掛けて行ったのです。

 陽は差していたけれど、見渡せば空には雲ばかり。隣のひまわり畑の写真を撮りながら、西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集める亭主。今日は日曜日だから、こんな早い時間には通る人もいない。昨日作っておいた蕎麦汁を徳利に詰めて、カウンターに干してあった盆や蕎麦皿を片付け、洗濯物を干してもまだ時間が早かったのです。小鉢は11人分を用意してあるけれど、余裕があった方が好いだろうと、インゲンを茹でて胡麻和えの準備をしておく。

 家に帰れば朝食の支度が調い、今朝は卵焼きと厚揚げ、とろろ芋のおかずで美味しくご飯をいただくのです。ナスの味噌汁も子どもの頃はよく食べたのですが、ナスは栄養がないと思い込んでいる女将の嗜好で、我が家ではあまり出た試しがない。冷蔵庫に残った食材がそろそろ尽きてきたらしく、今朝は珍しくナスの味噌汁。食後は面白そうなテレビの映画も観たかったけれど、書斎に入って横になれば、30分ほど熟睡出来たのです。頭がすっきりした。

 蕎麦屋に出掛ければ今朝はいきなり蕎麦打ち。750gを打って、昨日の残りと合わせて15食の用意をしました。馬鹿に出来ない日曜日だからと、野菜サラダも四皿盛り付けて、女将が早お昼から帰る頃には、もう開店の準備が終わっていたのです。10分前には暖簾を出して、沢山ある蕎麦が少しでも捌ければと思ったのですが、願いが通じたのか昼前に続けてお客がいらっした。天せいろの老夫婦に配膳をしたら、カウンターに座った若い女性はぶっかけ蕎麦。

 それからしばらくお客は来なかったから、亭主は蕎麦を茹でてぶっかけで食べようとした矢先、駐車場に車が入ってきたから、奥の座敷でスルスルッと昼を済ませる。厨房に戻れば「6人なんですって、分かれて座ってくださいと言いましたよ」と女将が言うので、注文の決まるのを待てば、天せいろに鴨せいろ、せいろ蕎麦に天麩羅蕎麦とてんでにバラバラなご注文。天せいろとせいろ蕎麦を先に出して、鴨せいろ二つを出して、最後が天麩羅蕎麦の順に出す。

 話す言葉を聞けばどうも中国の人らしく、天つゆの器に薬味の葱や山葵を入れたりして、女将が対応していた。旅行なのか、何処か観光が出来ないかと捜しているらしかったけれど、この時期はもうラベンダー祭りも終わっている。小一時間ほど涼んでいる間に、常連さんの女将の友人がいらっして「いつものを」とご注文。暑い中を1キロ近くも歩いて来たらしいのです。今日はお客の帰るのが遅かったから、片付けにも時間がかかった。

 帰り道、みずき通りで珍しくアブラゼミを間近で見た。その名の通り油で揚げるようなジリジリという音で鳴いていました。家に帰れば、先に着いた女将がエアコンのスイッチを入れておいてくれたから、ヒンヤリと涼しい。冷たい梨を剥いて、居間で涼む亭主の所に持って来てくれるのは有り難いことです。昨日行けなかった美容院に電話をして、直ぐに出掛けた女将でしたが、5時前には戻らないだろうと、亭主はかしらを焼いて、珍しく日本酒で一献です。

8月15日 月曜日 お盆の中日、終戦記念日 …

 午前5時半、家を出て蕎麦屋に向かう亭主。西側の小径に散ったムクゲの花の様子を見ながら、隣のひまわり畑を眺めれば、いつのまにか沢山の花が開いているではありませんか。毎日、見ているのに、今朝は急に花の数が増えているような気がするのです。蕎麦屋に入ってエアコンのスイッチを入れ、厨房の明かりを点けたら、まずは朝刊を開いて、昨日の市内の感染者数を調べるのです。三桁が続いていたのに16名と激減しているのは、お盆のせいだろうか。

 厨房に入って冷蔵庫にある小鉢のお新香に、インゲンの胡麻和えを作れば全部で七鉢。そんなにお客が来るとも思えないけれど、ギリギリの数ではちょっと心配だったから、残っていたキュウリとナスとカブをスライスして、浅漬けを漬けておきました。急に足りなくなっても、直ぐには小鉢は作れないのです。残ったら残ったで家に持ち帰って食べるだけ。食材は少し多めに種類と数を仕入れてあるから、何をいつどう使うのかが思案の分かれ目なのです。

 カウンターに干してある昨日の洗い物を片付けたら、洗濯室に行って、洗濯機の中に洗ったままの布巾や手拭いを干していきます。昨日は混んだから洗濯物が沢山あったのです。隣の風呂場は綺麗なままで、ほとんど使っていないから勿体ない。よほど暑い日には、仕事が終わったからシャワーを浴びたりもしたけれど、ガス会社の点検の人には、「たまには水を入れて沸かした方が、風呂釜が長持ちしますよ」と言われているけれど、そのままです。

 7時前に家に戻れば、今朝は早くから女将が台所に立って朝食の支度をしてくれていた。とは言っても、空っぽに近い冷蔵庫の中身を知っているから、あまり期待はしていない。それでも、あり合わせの材料で、美味しいおかずを揃えるのは、さすがとしか言いようがない。そう言えば夕べはひじきを煮ていたっけ。早めに朝食を終えて、亭主は書斎に入ってひと眠りするのでした。エアコンで除湿していたから、ぐっすりと30分ほど眠れたのです。

 元気を取り戻して再び蕎麦屋に向かおうと玄関を出れば、相変わらず綺麗な花を咲かせている木槿(むくげ)が、朝日を浴びて亭主を見送ってくれているようなのでした。9時前だというのに、もう家々の影はほとんどなくて、今朝は熱い太陽が照りつけている。エアコンを効かせている蕎麦屋の涼しさを思って、わずか300mの暑さを我慢して歩く。駐車場の入り口でふと足を止める亭主。お隣の軒下の巣から飛び出してくるツバメの集団がまた飛び回っている。

 今朝はいつもと違って低く滑空したり、蕎麦屋の換気口に止まって休んだりと、興味深い動きをしているのでした。しばらくカメラを構えて何度かシャッターを切る。子ツバメが疲れて休んでいるのを、親ツバメが飛び立たせようとしているのだろうか。換気口に止まっているツバメは確かに身体の大きさが小さいのです。ジリジリと照りつける朝日に我慢が出来ずに、亭主は涼しい店の中に入って朝の仕事を開始するのでした。

 早朝に漬けておいた浅漬けを取りだして、鉢に盛り付ければ五鉢分だけ作れた。時計はとうに9時を回っていたから、急いで蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦が4束残っていたから明日から定休日なので、今朝は500g5人分だけ打って9人分の蕎麦を用意しておきました。平日の月曜日だから、これで十分に足りるはず。厨房に戻って大根をおろし、ブロッコリーとアスパラを茹でて、野菜サラダの具材を刻み始める。

 後はいつもの手順で、11時前には大釜の湯も沸いて、店の掃除を終わらせてひと休み。と、開店時刻の20分も前だというのに、駐車場に車が入ってくるではありませんか。早すぎるけれど、湯が沸いていれば断るわけにもいかないので、暖簾を出して中に入ってもらうのでした。年配のご夫婦だったから、時間も気にしていないらしいのです。奥様が「天麩羅が食べたいわ」と天せいろ二つを頼まれて、お二人でゆっくりと蕎麦を召し上がるのでした。

8月16日 火曜日 風の強い定休日 …

 今日は定休日だからと夕べは少し夜更かしをしました。それでも朝はいつもと同じ時刻に目が覚めるから、ちょっと寝不足気味の亭主なのでした。お湯を沸かしてコーヒーを入れたら、目を覚まして蕎麦屋に出掛ける。駐車場の金木犀が伸びすぎて、お客の車を入れるのにもバックセンサーが反応するのではないかと、少しずつ剪定ばさみで刈り取って、ついでに脚立を出して上に伸びた枝を刈り取ったのです。今年は花が咲かないかも知れないと心配する。

 90㍑のゴミ袋が一杯になったところで作業を止めて、エアコンの効いた店内に戻って、カウンターに乾した洗い物を片付け、洗濯機の中の洗濯物を乾すのです。これでちょうど7時前になったから、家に戻ってやっと朝食です。今日の買い出しで亭主が家の食料も仕入れてくるから、空っぽの冷蔵庫を見回して、女将は最後の力を振り絞ったと言う感じ。すべて蕎麦屋で昨日残った食材なのですが、見事にアレンジされていた。今朝も美味しくご飯をいただいた。

 食後はエアコンの効いた書斎に入って横になれば、朝が早かったから30分ほどぐっすりと眠れました。寝不足の上に早朝から身体を動かして、満腹になれば、人間幸せに眠れるものなのです。すっきりした頭で目覚めて、お袋様に電話をして仕入れの迎えに行く。農産物直売所に向かいながら、まだお盆は終わっていないから、今日は休みじゃないかと気が付いた。隣町のスーパーは今朝の新聞に広告が入っていたから大丈夫と、今日は沢山買い物をする。

 お袋様が畑をやっている知り合いから冬瓜をいただいたと言うので、半分分けてもらって蕎麦屋へ戻って早速茹でる亭主。彼女は冬瓜をあまり食べないと言うので、先週作った鶏胸肉挽肉とのあんかけ煮の話をしたら、作って見る気になったらしい。蕎麦屋に帰ってから電話をして、15分ほど下茹でしたら、塩と砂糖と生姜に醤油で味つけをして、挽肉を入れて片栗でとろみを付けるところまで念を押しておく。彼女も調理が好きだから、上手く作るはず。

 茹でた冬瓜を冷蔵庫に入れて、家に帰ればちょうど女将も買い物から帰ったところで、二人とも汗だくだから大笑い。昼は昨日残った野菜サラダを載せて冷やし中華にしようと話していたから、湯を沸かして亭主が麺としゃぶしゃぶ用の肉を茹でる。皿のまま車で持ち帰った野菜サラダを、茹でて冷やした肉とそのまま載せて、附属の酢味のタレをかけるだけだから、とても簡単なのです。亭主は麺の下に氷を敷いて、最後は汁まで綺麗に飲み干すのでした。

 食後は昼寝もせずにパソコンに向かい、食材の購入記録を入力して、忘れないうちにとお袋様の米寿のお祝いを発注しておく。女将は二週間後のスポーツクラブの予約をしてくれと、自分のスマホを持ってくるのです。午後の2時過ぎ暑い最中に蕎麦屋に出掛けて、午前中の仕込みの続きをするのでした。先週のレシピを少し変更して、オクラと京唐辛子を輪切りにしてそれぞれ二本入れて見ましたが、オクラが冷えても色が悪くならなければ好いのですが、

 次ぎに定番となった夏野菜の揚げ浸し。硬い野菜から先に炒めてミョウガとシメジは後から入れて、冷やしておいた出し汁にさっと浸ける。小鉢二品の仕込みは終わったから、明日はデザートと蕎麦豆腐、天麩羅の具材の切りわけ、そして夕刻にぬか漬けを漬ければいい。朝は蕎麦汁を作らなければと、干し椎茸と昆布を3㍑の鍋に浸けておくのでした。家に戻っての夕食は鶏のもも肉のカリカリ焼き。これで昨日残った野菜サラダは食べ終わった。

8月17日 水曜日 定休日二日目は、飽きずに小豆を煮る亭主 …

 午前6時に蕎麦屋に出掛けたら、隣のひまわり畑がまた一段と賑やかに花を咲かせていたので、しばらく眺めていたのでした。左手の蕎麦屋は金木犀の枝を剪定したのは好かったけれど、つい先日枝を払ったばかりと思っていたモミジの枝がまだ残っていた。次は西の小径の側に脚立を立てて上に伸びた枝を払わなければいけない。今朝の朝飯前のひと仕事は、昨日、準備しておいた出汁を取って、蕎麦汁を仕込まなければならなかったのです。

 出汁取りはどんなに急いでも小一時間はかかるから、蕎麦汁まで作って、天つゆを仕込んだら、もう7時近くになっていた。先週の残った一番出汁でも蕎麦汁を作り、二番出汁を取る鍋と、天つゆの鍋と三つの火口を全部使って作業を進めるのでした。洗い物を済ませて、水で冷ました蕎麦汁と天つゆは鍋のまま、二番出汁は容器に入れて冷蔵庫に収納する。作ったばかりの蕎麦汁は、冷ましてストックしてあるものと一緒に蕎麦徳利に詰めて、これも冷蔵庫に。

 家に戻れば、女将は台所に立って朝食の支度をしていました。今朝のおかずは、昨日、亭主が買って帰った鰺の開きと蕎麦屋の残り物の最後の小鉢。長葱の塩焼きも蕎麦屋で残ったものだけれど、よくぞまあ、バランス好く組み合わせてくれたと感謝。食欲旺盛な若い頃なら、旅館や民宿で食べる小さな鰺の開きなどは、どうしてこんなに小さいのだろうと思ったものですが、今では沢山食べられないから、かえって味わいのあるひと品なのです。

 食後は例によって書斎に入ってひと眠り。定休日の二日目は、あまり多くの仕事はなかったから、午前中に床屋に出掛けて髪を刈ってもらおうと考えていたのです。お盆休みがいつからなのかを確認していなかったけれど、40年も通って世間の盆休みの後で休むと知っていたから、出掛けて行ったのです。果たして、今日は盆の明けなのに休みになっていた。仕方がないから、酒屋に寄って焼酎を買って帰ろうと思ったら、こちらも10時開店で閉まっていた。

 仕方がないから蕎麦屋に行って、明日の小鉢を盛り付けておく。夏野菜の揚げ浸しと冬瓜と鶏胸挽のそぼろあんかけ。旬の野菜が食べたいと通われる常連さんがいらっしたら、どちらを出そうかと迷ってしまいそう。ラップで蓋をして冷蔵庫に入れたら、今度は小豆を煮て抹茶小豆の仕込みです。ところが、この小豆を煮るにはやはり1時間はかかるから、洗濯物を畳んだり、朝の洗い物を片付けたりと時間をつぶすのが大変なのでした。

 隣の火口では小鍋に抹茶の粉に寒天とタピオカ粉を混ぜ、水と氷糖蜜を加えて沸騰するまで火を入れる。これが少し固まるまで待たなければならないから、小豆の煮えるまでの時間でちょうど好い。ほどよく固まった頃に、三回に分けて砂糖を入れた小豆の鍋に塩を少々。このタイミングがとても大切で、小豆は沈まずに表面に浮いたままで抹茶が固まってくれる。水羊羹ではないからタピオカ粉を加えて、ぷるんとした食感が欲しいところなのです。

 11時過ぎには家に戻ったら、女将がもう鍋に湯を沸かして、朝から話していた焼きうどんの準備をしてくれていました。亭主は台所に入って、肉と残り物のキャベツとピーマンを柔らかくなるまで炒めたら、茹でたうどんを加えて中華鍋を振る。本当は豆板醤をちょっと加えて作りたいところなのだけれど、辛いのが苦手な女将を気にして塩と胡椒だけで仕上げる。仕上げにほんの少しだけ出汁醤油を垂らして、昼のひと品が完成なのです。

 午後は天麩羅の具材の切り分けと、ぬか漬けの漬け込みだけだったから、スポーツクラブの予約のために、女将の持って来たスマホで無事に予約を済ませたら、また蕎麦屋に出掛けて今日最後の仕込みに取りかかるのです。本当に蕎麦屋が道楽でなければ、休みの日にもここまで頑張れないかな。夕食には女将が久し振りにピカタを作ると言っていたから、亭主は蕎麦屋で用意した小鉢を味見に持って帰るのでした。美味しい食事は人を幸せにするとは名言です。

8月18日 木曜日 午前中は雨の陽気で …

 雨の音で目が覚めた朝。夕べ漬けておいた糠漬けが気になって、6時前には車で家を出て蕎麦屋に向かう亭主。エアコンを入れなくても涼しい朝だったから、お新香を切り分けて小鉢に盛り付け、昨日の洗い物を片付ける。他に仕事はなかったから、西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集めて、小鉢に入りきれなかったお新香の残りを持って家に戻るのです。天気予報を何度も見ているのに、その都度変わるから、目の前の天気で今日の予定を立てるしかない。

 今朝の食事は鰺の開きと豚汁、高野豆腐に亭主が持ち帰ったばかりのお新香。鰺の開きは四枚でひと組だから、二日続くのも仕方がないか。蕎麦屋で残った長葱を焼いて添えるのも女将のひと工夫。豚汁は店で残った大根のあるうちは続きそう。これで十分美味しい食事だから、満足して食後のお茶を飲むのでした。まだ7時半前だから、食後は書斎に入って女将の朝ドラの終わる時間までゆっくりとひと眠り。これがまた至福の時なのです。

 台所で朝の洗い物をしている女将に頼んで、珈琲を入れてもらったら、傘を差すのは嫌だけれど、仕方なく蕎麦屋に出掛ける亭主。今朝はエアコンを入れなくても涼しい朝なのでした。みずき通りを渡って、バス通りを蕎麦屋に向かえば、お盆が明けたせいかいつもより車の通りが激しいような気がする。いつも群れている鳥たちは姿を見せずに、蕎麦屋の隣の畑にひまわりだけが、今朝も変わらずに咲いているのでした。静かな朝なのです。

 昼には雨が止むという予報だったから、チェーンポールも降ろさず幟も立てずに、今朝はまず蕎麦打ち室に入って、定休日明けの蕎麦を打つ亭主。店の中の温度は26℃と低かったけれど、湿度は60%を越えてやはり雨のせいなのです。それでも加水はいつもと同じく43%。捏ねて行けば少し柔らかいかなという感触でしたが、これは伸し方を加減すれば解消できる程度の問題です。蕎麦玉をビニール袋に包んで寝かせている間に、厨房に戻って次の準備をする。

 一週間、毎日、蕎麦屋に通っているから、定休日明けとは言っても、今日が何日目の営業日なのか、つい忘れてしまうことがある。女将には「呆けてんじゃないの?」などと言われることもあるけれど、決してそうではなくて、毎日が同じ繰り返しなだけなのです。だから、「今日は木曜日なので」と仕切り直して、また蕎麦を打つのです。気温の低い雨の日の営業では、お客の数はあまり見込めないから、いつもと同じく750g八人分を打って生舟に束を並べる。

 野菜サラダは平日だからと従前の決まりに従って三皿だけ盛り付ける。ところが今朝は、ブロッコリーを仕入れるのを忘れたことに気が付いて、家に電話をして女将に買い物に行くのかと尋ねれば、「雨だし今日は行かない」との応え。仕方がないから、何か綠の野菜はないかと冷蔵庫の中を捜せば、オクラが予備に買ってあるのに気が付いた。塩で茹でて斜めに切ってブロッコリーの代わりにしたら、食べたお客は「案外あうものですね」と喜んでくれた。 

 雨の日のお客は、あらかじめ来ようと思っていたお客か、通りがかりのお客。今日も開店前に電話が入り「予約できますか」と言うので、予約はやってないけれど、空いているから大丈夫と言えば、暖簾を出して直ぐにいらっしゃる。聞けば、仕事でいらっした義理の息子さんが、白髪の老婦人を連れてきたのだとか。前にもいらっしてお蕎麦が美味しかったから、蕎麦好きの息子さんを連れて来たとおっしゃる。ヘルシーランチセットの天せいろを頼まれた。

 閉店間際になって仕事の途中らしい若い男性がカウンターに座ってせいろ蕎麦のご注文。スポーツクラブが休みの女将が来てくれて亭主は少し気が楽になる。1時半に彼女のヨガ教室の予約があったので、スマホを朝から渡された亭主は気が気ではなかったのです。早めに店の片付けを終えて、亭主がブロッコリーを買いに行くと言えば、午前中が雨で何処にも出掛けなかった女将が、珍しく一緒に行くと言う。お蔭で夜は鯛や鮪の刺身のご馳走を食べられた。

 夕食後に、スマホを持って歩かない女将に、いつも何処のお花が綺麗だったとか話をするので、少しは写真でも撮ってみたらと、食後に亭主が被写体になってカメラの練習。夜は夜でラジオを聞きたいといつも言っていたから、スマホにアプリを入れてやって使い方を教えてやるのです。二人とも時代遅れのアナログ人間なのだけれど、女将は必要がないものには関心を示さないから合理的。彼女が子供や孫たちとテレビ電話で話せる日は来るのでしょうか。

8月19日 金曜日 晴れて爽やかな陽気だったけれど …

 朝が涼しかったからか、今朝は6時過ぎまでぐっすりと眠った。昨日はお客が少なかったから、朝飯前のひと仕事もお休みで、台所に入った女将が、朝食の支度をしてくれるのを、居間の椅子に座ってじっと待つ亭主。床が椅子に変わっただけで、まだ頭が働かない状態なのです。「ご飯が出来ましたよ」と言われて食堂に行けば、今朝のおかずは鯖の塩焼きで、ちょっと食べ応えのありそうな大きさなのでした。最近の魚は骨が取ってあるものが多いので助かる。

 朝食が終わっても今朝はひと眠りをせずに、やはり居間の椅子に座って、テレビも点けずにじっと物思いに耽る亭主。今週はまだ営業を開始して今日が二日目だというのに、随分と日にちが経ったような気がしてならないのでした。お茶を運んでくれた女将に話をすれば、「お客が少ないから、待ってる時間が長いんじゃないの?」と、朝の仕事が忙しいから相手にされない。今年は盆休みも取らなかったから、夏の疲れが出始めているのだろうか。

 洗面と着替えを済ませ、女将の朝ドラの始まる前に、自分で珈琲を入れたら、またしばらく椅子に座って朝ドラの終わるのを待つ。今朝は昨日買ってきたブロッコリーや油や豆乳を、蕎麦屋まで持って行かなければならなかったから、短くなった日影を選んでゆっくりと歩いて行くのでした。朝の空気は涼しかったのですが、陽射しはまだジリジリと暑いのです。夏から秋にかけてはいつもこうだったからしらと、思い出すすべもないのです。

 蕎麦屋に着いたら看板を出し、幟を立てて、チェーンポールを降ろしたところで、ゴミ捨てから帰るお隣の奥さんに出会って挨拶をする。いよいよ盆休み明けの出勤らしく、制服を着て車に乗り込むのでした。若い人は見るからに元気そのもの。老いた自分は傍目にはどんな風に見えるのだろうかと、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打ち始めるのです。「疲れを知らない年代は遠い昔」だけれど、疲れても日々の稼業は休むことは出来ないと空元気を出す。

 いつも決まってこの時間帯に燕たちが飛び回るのです。蕎麦屋の駐車場の上野電線には、五羽の子ツバメが羽を休めていた。中には止まったまま毛繕いをするものもいれば、眠っているかと思えるものまでいる。親鳥は何処にいるのだろうか。そろそろ移動の時期なのだろうけれど、今年は随分と長い間、一箇所に止まっているような気がするのです。43%の加水で今日もしっとりとした生地が仕上がり、750gで八人分の蕎麦を打ち上げて、生舟の中に束を並べる。

 昼前にリピーターの母娘がご来店で、天せいろのご注文。随分とゆっくりと食べて行かれたけれど、その後はしばらくお客がなかったので、1時過ぎに亭主はかき揚げを揚げて、賄い蕎麦をぶっかけで食べておく。月曜日に残った五日目の蕎麦でしたが、これがまた美味しい。お客には出すことはないけれど、よく締まってコシの効いた味わいになるのです。1時半を過ぎてそろそろ片付けを始めようとしていたら、バイクの音がして最後のお客がご来店でした。

  天せいろにキスとメゴチの天麩羅を追加で頼まれ、しっかりと昼の食事を摂られて帰るのでした。片付けは少しだけでしたが、大釜の洗いや天麩羅油の後処理など、することは沢山ある。全部片付けて家に帰ったのは3時過ぎ。暑さもそれほどではなかったから、それほど辛くはなかった。女将もスポーツクラブから戻ったばかりで、二人で桃を剥いて食べる。亭主は書斎に入ってパソコンに向かい、ひと眠りしたら蕎麦屋に出掛けてお新香を漬けてくる。夜は残った野菜サラダに肩ロースの肉を焼いて一献です。


8月20日 土曜日 久々の満員御礼、お蕎麦売り切れ …

 午前5時半、蕎麦屋に出掛ければ、森の向こうから雲間に朝日が昇ってきました。隣の畑のひまわりたちも朝の太陽を待つかのように、みんな東を向いている。朝はまだ少しの間、青空が見えたのです。夕べ漬けておいたお新香が心配で、厨房に入って冷蔵庫から糠床を取り出せば、ナスはちょっと硬めだけれど、皮を剥いたカブはちょうど好い味で、キュウリもすっきりと甘い香りがする。空の蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、今日一日の分を用意するのでした。

 カウンターに干してある盆や蕎麦皿を戸棚にしまい、洗濯物を畳んで、大釜に水を張ったところで、今朝の仕事はもう終わり。お客が少ない分、片付け物も少しだから楽なのです。朝早くから姿を見せるのは鳩の群れ。次ぎに鴉が現れて、燕の親子は9時過ぎになってやっと活発に飛び回る。このところ赤とんぼが畑の上を随分と飛んでいるのが見えるから、やはり季節は移り変わっているのです。名残惜しそうに蕎麦屋のたたずまいを眺めながら家に戻る亭主。

 夏の初めに蕎麦屋の向かいの親父さんが持って来てくれた南瓜の一つは、蕎麦屋で天麩羅にして使ったけれど、もう一つは女将が家に持ち帰って涼しい玄関に転がしてあった。昨日、これを煮て食べようと、鰺出刃で切ったけれどやはり切れないと言うから、亭主が蕎麦屋に持っていって牛刀で四つに切り分けてきた。家にも出刃があった筈なのに、古くなって使わない物は捨てるのが女将の習慣らしい。これが今朝はやっと食卓に上り、柔らかいので驚いた。

 朝ドラの終わる時間まで書斎で横になってひと眠り。雲が出て陽が翳った頃に家を出て蕎麦屋に向かえば、今朝は随分と蒸し暑いのに今ごろになって気が付いた。早く店についても、今朝はもうあまり仕事がない。昨日の蕎麦がそのまま生舟に残っているから、今日は500g5人分だけ打ち足して、13食の蕎麦を用意する。天気も悪くなると言うので、今日はこれだけあれば十分と考えたのです。蕎麦豆腐を仕込んで、野菜サラダは週末だからと四皿盛り付けておく。

 その写真を撮ってやろうとカウンターの向こうからカメラを構えていたら、大釜の湯が沸いて白い湯気が立ち上っていた。お茶のポットと温め用のポットに四本湯を入れて、天麩羅油を鍋に入れ、天つゆの鍋を冷蔵庫から出したら、もう開店の準備は出来上がり。早お昼を食べに帰った女将も、あまり仕事がないのを知ってか、11時を10分過ぎてやっとやって来る。早いお客が店の前で車を停めたけれど、暖簾の出ていないのを見て帰ってしまう。

 昼はしばらく見なかった椋鳥が戻って来たらしく、畑や電線に群れていた。昼前に3人のお客がいらっして、今日はこれで終わりかなと思っていたら、1時前から一挙に10人のお客が続けてご来店。厨房は嬉し楽しの大忙しで、女将もお茶出し、配膳、会計と休む暇がないのでした。新しいお客とリピーターの方と常連さんと、それぞれがゆっくりと食事をなさって帰って行く。最後のお二人がいらっして、「お蕎麦売れ切れました」の看板を出すのでした。

 二人で洗い物をして片付けても今日は後半が混んだから、珍しく3時過ぎになって家に帰る。いつも運動が足りないと買い物に出る女将も、雨が降ってきたこともあるけれど、今日は疲れて出掛けなかった。カレー蕎麦のお客に野菜サラダを出しただけだったから、サラダは三皿分持ち帰っている。万札を出したお客が多く、釣り銭もなかったから、亭主が車を出して夕食の総菜を買いながら両替をしてくる。かくして久々に出来合いのおかずでサラダを食べた。

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2022年8月上旬

8月6日 土曜日 蝉の声が聞こえる …

 今朝はアオイの花だけが一輪咲いていました。カッシアの影に隠れているからか、背丈も小さくひっそりと咲いていると言った感じです。考えたらムクゲもアオイ科の花だから、作りが似ていると言えば似ているかな。今朝は蕎麦打ちも一回で済みそうだったから、朝食も少し遅い時間で、珍しいホッケの味醂干しを買ってあったので、焼いてもらっておかずにする。女将が作った揚げ浸しともずくも添えられて、美味しくいただくのでした。

 蕎麦屋までの道程も涼しい朝だったから楽なのでした。お隣のひまわり畑も、日に日に花の咲いている数が増えて、満開の日が楽しみなのです。看板と幟を出して、チェーンポールを降ろせば、今日はもう週末だから早いもの。昨日一昨日の二日間が、あまりにもお客が少なかったので不安だったけれど、女将の三年日記によれば、去年の夏も緊急事態宣言が出ていて、平日はとてもお客が少なかったのだとか。店の窓を全開にして涼しい朝の空気を入れる。

 店内の気温は25℃と昨日よりも涼しい。ただ、湿気に弱い亭主には、ちょっと動くと汗が出るのが辛いところ。蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打てば、もう汗が噴き出してくる。加水率43%で捏ねた生地はちょうど好く仕上がって、伸して畳んで包丁を打てば、切りべら26本で140g前後の束が8つ取れた。昨日の残りの蕎麦と合わせて、今日は15食の蕎麦を用意しました。どれだけお客が来るのか分からないけれど、蕎麦の数を越えることはないと思うのです。

 野菜サラダもこのところ涼しいからかあまり出ないので、週末だけれど今日は三皿だけ盛り付けておくことにしました。暑いから、作って直ぐに冷蔵庫に入れてしまうと、カウンターに並べてお客が見て頼むということがないから、ちょっと残念ではあるのですが。天麩羅油を鍋に注ぎ、天つゆの鍋を隣の火口にかけて、天麩羅の具材や天ぷら粉を調理台に並べたら、開店の準備は完了です。一度来て店の掃除を済ませた女将が、11時過ぎに早お昼から戻って来た。

 時間に余裕のある亭主は、真空フリーザーで半解凍した豚ハラミを串に刺して、誰か頼まないかなと皮算用をする。週末に出なければ、家に持ち帰って亭主の酒の肴にするから、それはそれで嬉しいのだけれど、コロナの影響で夜の営業を休んでいるから、あまり期待は出来ないのです。昼前からぽつりぽつりとお客が入って、何時の間にか駐車場は満杯。歩いて来るお客もいるから店の中も、満席になるのでした。厨房は俄に忙しくなるから楽しい。

 今日は新しいお客がほとんどで、女将も顔を見たことがないお客ばかりだったと言う。鴨せいろが二つも出て、天せいろに天麩羅蕎麦、ぶっかけ蕎麦など、種類も幅があるのでした。1時過ぎには、皆さんお帰りになるから、混むのは申し合わせたように昼の一時間ばかり。洗い物をする暇もなかったから、女将と二人でせっせと洗っては片付ける作業を繰り返す。外が涼しいからか、厨房も27℃を越えなかったのが幸いでした。とても動きやすいのです。

 残った幾つかの蕎麦を賄いで食べて仕舞うと、明日の分が少なくなるから亭主は家に帰るまで空腹を我慢する。みずき通りに折れる所の森の木々から、蝉の声がやけに賑やかに聞こえてくる。女将は蕎麦屋に居ても森の木々から蝉の声が聞こえるというけれど、亭主には耳鳴りばかりが煩くて、それと気が付かないのです。でも外に出て実際にミンミン、ジージーと鳴く声を聞くと、夏の風物詩。角のお宅では、これもアオイ科の芙蓉の花が咲いていました。

 餅を焼いてもらって30分ほどひと眠りしたら、女将が買い物から帰って来た。亭主はまた蕎麦屋に出掛けて、明日のお新香を漬けて洗い物を片付けてくる。5時を回っても夫婦の見たいテレビ番組はなく、週末の夕食時は本当にテレビを消したママなのです。野球や競馬やゴルフなどスポーツの好きな人は、テレビを観る楽しみも多いのかも知れない。夕食には沢山残った野菜サラダを使って、定番になったお好み焼きを作る。亭主は串焼きがあるから半分だけ。

8月7日 日曜日 今日は不安定な空模様で …

 午前5時半、家を出て車で蕎麦屋に向かえば、重苦しい雲が一面に空を覆っていました。夕べ漬けたお新香を取り出さなければと、早い時間に出掛けたのですが、11時間のつけ込みで、味は上々なのでした。キュウリは太い物の方が、甘く漬け上がる気がしてならない。農家で取れたばかり野菜は美味しく漬かるのです。カウンターの上に干した昨日の洗い物を片付け、洗濯物を畳んだら、洗濯機の中に洗ったままになっていた昨日の分を干して、家に戻ります。

 それでもまだ6時半過ぎだったから、女将はまだ寝覚めのヨーガの時間で、台所には現れない。亭主は仕方がないから、エアコンの効いた書斎に入って横になれば、湿気がないのでぐっすりと寝込んでしまう。7時過ぎに女将に起こされて朝食の席に着く。週末になると定休日の買い出しまでに、冷蔵庫の中の食材がが片付いてくるので、予想通り、ハムエッグと煮物のおかずで美味しく朝食を食べるのです。洗面と着替えを済ませて、いつもの時間に蕎麦屋へ。

 何時の間にか青空が広がって、早朝の天気が嘘のようなのです。蕎麦屋の駐車場には、お隣の軒下からツバメの軍勢が次々と飛び立って、蕎麦屋の周りを高く低く飛び回っているではありませんか。蕎麦屋を背景にしてカメラを構えて待つけれど、スピードが速すぎてシャッターを押す頃には、もう屋根の上に飛び去っていく。連写の機能が付いている一眼レフでないと、なかなか難しいようです。ジリジリと陽射しが首を焼くから、直ぐに店の中に入る。

 今朝も43%の加水率で蕎麦を捏ね始める。最近はこの加水にもすっかり慣れて、生地が少し柔らかければ打ち粉を多めにして伸していく。今日も8人分の蕎麦を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分を用意する。この週末もあまりお客は多くないから、十分に足りるはず。女将から聞いたのだけれど、昼前になると市役所からの放送で、毎日コロナの感染拡大を注意する放送が流れているのだとか。お客が減ったのは天候のせいばかりでもないのかも。

 それでも今日は10時半から駐車場に車を止めて、開店を待っているらしいお客がいたのです。陽が差して暑くなってきたから「まだ準備が終わっていないけれど、中でお待ちになったら」と言えば、「助かります」と店の中に入る。大釜のお湯も沸いていないので、亭主の飲む冷えたほうじ茶を出して、野菜サラダの具材を刻み、お湯が沸いたところでお茶を入れて注文を聞く。近くの介護施設の夜勤明けで遠くまで帰る途中なのだとか。リピーターの方でした。

 11時前に配膳したのは開業以来初めてでした。女将が来る頃にはヘルシーランチセットをもう食べ終えて、礼を言って帰られた。混んだのは昼過ぎの一時だけで、今日も日曜日なのに10人はお客が入らない。「以前のように補償もないのにねぇ」と、珍しく女将が行政の批判をするから驚いた。途中で大粒の雨がザーッと降ってきたと思ったら、直ぐに止んで陽が差してくる。東の空には黒い雨雲、西の空には青空が覗く、そんな天気の一日なのでした。

8月8日 月曜日 立秋が過ぎて再び暑さが戻った …

 いつものように22時に就寝、5時起床。最近はこの習慣が続いています。台所に行ってお湯を沸かし、コーヒーを入れて、明かりもテレビも点けずに窓の外を見ている亭主。食堂の窓に朝日が当たってとても眩しいから、今日はきっと暑くなると思えたのです。5時半を過ぎたらガレージのシャッターを開け、車に乗って蕎麦屋まで出掛ける。あまりすることはないけれど、昨日の盆や蕎麦皿を片付け、洗濯物を畳んで、西側の小径のムクゲを掃き集める。

 隣のお花畑は、また少しひまわりの花が咲いて、日に日に彩りが加わってくるのでした。ひまわりには青い空がよく似合う。来月、米寿を迎えるお袋様の住む低層マンションも、朝日を浴びてこんな早い時間からさぞ眩しかろう。一緒に仕入れに出掛ける明日には、お盆の墓参りの打合せをしなければ。お墓の草取りは近くに住む弟がもう済ませてくれたらしい。西側の小径に散ったムクゲを掃きに出れば、伸びていた葛の蔦をお隣で刈り取ってくれたのでした。

 家に帰れば女将が朝食の支度を済ませて、味噌汁とご飯を運んでいる。その湯気が朝日に当たってちょうど見えるから、亭主は居間の椅子から立ち上がり食卓に着くのです。いよいよ我が家の冷蔵庫には食材がなくなってきたらしく、蕎麦屋の残り物にウィンナや卵をあしらって、美味しそうに見せるのは女将の神業か。豚汁も肉がなくなったから、タンパク質は油揚げだけで、大根と人参に刻み葱を入れて、結構、美味しく出来上がっているのです。

 食事が終わったら、洗面と着替えを済ませて、エアコンの効いた書斎で10分間だけ微睡む亭主。今朝は新聞がないから休憩が出来ないと、お茶を入れている女将に所望して、美味しいお茶で目を覚ますのです。ご近所の百日紅の花が綠の木々を背景にして、鮮やかだったから、ウッドデッキから写真を撮らせてもらった。今日も暑そうな空なのです。蕎麦屋に出掛ける途中、ご近所のご主人に後ろから「昨日までは涼しかったのだけれどねぇ」と挨拶される。

 早朝にエアコンを入れておいた蕎麦屋に着いて、朝の仕事を終える亭主。今朝は500gだけの蕎麦打ちだったから、慌てることはないのです。昨日の残りの蕎麦と合わせて11食分を用意して、厨房に戻る。まだ10時前なのでした。二つの大釜に火を入れたら、まずは野菜サラダのアスパラとブロッコリーを茹でておく。10時になると、例によって市の放送が始まるから嫌になる。感染拡大を注意する、この放送のお蔭で、確かに随分とお客は減っているのです。

 野菜サラダの具材を刻み、天麩羅の具材を調理台に並べ、天麩羅油を鍋に注いで、天つゆの鍋を隣の火口に乗せたら、もう大釜の湯が沸いているのです。11時には準備か終わるから、それからテーブルをアルコール除菌液で拭いていく。今日は11時20分には暖簾を出した。エアコンを入れても、換気のために窓を少し開けているから店内は27℃どまり。それでも、湿気が取れるからか、蒸し風呂のような外に比べたらかなり涼しいのです。

 12時を過ぎてやっと車が駐車場に入ってくる。一台入ると続けてまた入るから不思議なもので、天せいろやヘルシーランチセットを続けて出すのでした。でも、今日はそれでお終い。1時を過ぎたところでかき揚げを揚げて、自分の食べる賄い蕎麦を茹でるのです。お客が少なくても、月曜日は後片付けが大変で、洗い物と片付けの他に、ゴミ袋を外の混み箱に移したり、洗濯物を洗ったり、持ち帰る食材を袋に詰めたりと、汗だくで1時間近くかかるのでした。

8月9日 火曜日 暑さはますます酷くなって …

 どうも定休日というのは、ゆっくり寝ていられない性分らしい。あれをしようこれもしておこうと、考えて寝付くからか、午前4時には目が覚めて、珈琲を飲みながら明るくなるのを待つのでした。それでも実際には時間と体力とが足りなくて、全部は終われない。今朝も5時には家を出て、森の影から朝日が昇るのを眺めながら、返しを仕込んで出汁取りの準備。昨日の後片付けや洗濯物を畳んだり干したり。南側のミニ菜園の草刈りまでは手が回らなかった。

 家に戻れば朝食の時間で、亭主の希望で今朝は茄子焼きと銀ダラの塩焼き。学生時代にナス焼きだけで夕食を食べていた記憶が、未だに懐かしく、自分の原点のように思えてならないからです。我が家の冷蔵庫もほとんど空になって、茄子やキャベツなどの野菜だけが残っていたのです。週に一度の仕入れの日にも、亭主が家の分の肉や魚や果物を買ってくることが多くなった。暑いから2キロの道程を歩いて買い物に行く女将だけでは、到底持って帰られない。

 お袋様と二人で買い出しに出掛け、盆の墓参りの打合せをする。暑くて眠れない夜は、氷枕にタオルを何重にも巻いて寝ているというから、いろいろ工夫をするものだと感心する。新レンコンがやっと少し安くなったから、天麩羅の具材に使おうと買って帰る。いつもより少ない量なのに、値段が高いのはこの暑さで野菜の値が上がっているかららしい。ひとパック100円だった茗荷も一挙に300円だから驚いた。大根も小振りなのに一本200円を超えていた。

 早朝に準備をしておいたから、出汁を取って蕎麦汁を仕込んでおく。一番出汁二番出汁と取って冷やさなければならないので、どうしても小一時間はかかるのです。昼の時間を気にしながら、何とか11時過ぎには仕込みを終えて、家に戻って昼食の準備にかかる。買い物から帰った女将も慣れたもので、蕎麦を茹でる鍋に水を汲んで火にかけ、昨日、亭主が揚げて帰った天麩羅をグリルに入れて、蕎麦が茹で上がる頃に焼き上がるように段取りをつけるのです。

 昨日の蕎麦が随分と残ったから、お袋様にも持って帰ってもらったのですが、亭主は念願の大盛りにして腹一杯食べられた。それでも、家で一番大きな3㍑ほどの鍋で二人分茹で、小さな笊とボールで蕎麦を洗うから、どうしても上手く仕上がらないのです。一人分ずつ茹でれば好いのに、つい面倒で二人分を一緒に茹でてしまう。女将は美味しそうに食べてくれるけれど、蕎麦屋の主は納得がいかない。茹でた蕎麦に艶が出ないのが見てくれも好くないのです。

 居間の椅子に座って女将の運んでくれるお茶を飲んだら、テーブルの隅に彼女の携帯が置いてあるのに気が付いた亭主。スポーツクラブの予約が2時過ぎにあったのでした。ひと眠りする時間はあるから、エアコンの効いた書斎に入って横になる。朝が4時起きだとどうしても昼寝が必要なのか。それでも20分ほど微睡んだだけで、午後の仕込みのことを思うと気が気ではないのです。無事に女将が希望する席を取って、亭主は蕎麦屋に出掛けていくのです。

 蕎麦屋に着いたらまずは、今朝やり損ねた南側のミニ菜園の様子を見に行った。予想通り、もう荒れ放題で、やはり耕して野菜を作っていないと、自然に帰ってしまうのだと痛感するのでした。明日こそは、長袖長ズボンに手袋をはめて、この雑草を刈り取ってやろうと思うのです。午後の仕込みは小鉢の準備なのですが、先週買った冬瓜を、何とか使おうとあちこちのレシピを覗いて考えたのですが、結局は揚げ浸しのようにして作ったまでは好かったのですが。

 冬瓜を茹でるのを忘れたから、なかなか火が入らない。一年振りだからやはり失敗なのでした。どうやって修正しようか、こんなこともあろうかと、今日は半分だけ使って量を減らしておいて好かった。家に帰って女将に話をすれば、「しばらくやっていないと、忘れてしまうことが多いのよ」と言われる。夜は今日買って帰った小振りの鰯を焼いて食べる。他はすべて先週の蕎麦屋の残り物。さあ明日は早く起きたら涼しいうちに、草刈りに精を出そうか。

8月10日 水曜日 今日は墓参の日 …

 今朝も早くから起きてはいたのですが、どうもなかなか疲れが抜けなくて、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛けて草刈りが出来なかったのです。朝食を終えたら洗面と着替えを済ませて、9時前にお袋様を迎えに行って、近くの霊園に盆の墓参りに出掛ける夫婦。霊園の入り口には青空に映える百日紅が見事で、まだ誰も来ていなかったから、三人で手分けをして花を供えて線香を上げる準備をするのでした。盆の入りは週末にかかるので、混むといけないと配慮。

 亭主が桶に水を汲みに行っている間に、女将とお袋様が花を切りそろえて、線香に火を点けたら、それぞれが隣り合った三箇所の墓に参る。この霊園の出来たばかりの頃に、一番早くに墓を買ったので、正面の手前、真ん中の場所を手に入れることが出来たのです。それから何十年、今では墓地の規模も何倍にも広がって、随分と立派な霊園になった。家からは歩いても来られる距離だから、昔はお袋様も散歩がてらに好く来ていたと言う。

 お袋様と女将とを家まで送ったら、亭主はその足で蕎麦屋に出掛け、午前中の仕込みを済ませる。昨日作って冷やしておいた蕎麦汁を徳利に詰めて、揚げ浸しの野菜の中から冬瓜だけを取り出して、もう一度火を通して柔らかくする。イメージ通りに仕上がらなかったのが悔しくて、二回目は冬瓜をあらかじめ茹でて柔らかくしておく。トマトも湯引きして皮を剥いておくのでした。蕎麦羊羹と蕎麦豆腐を仕込んだところで、午前中の仕込みを終わりにしました。

 家に帰ってそろそろ昼の支度をしなければと思っていたら、珍しく時間に買い物から女将が帰っていない。仕方がないから、とろろ芋をおろして、天麩羅の残りを焼き、蕎麦を茹でるばかりに準備を調えておいたら、やっと女将が帰ってきた。薬局の小母さんと長話をしていたのだとか。今日は蕎麦を一人分ずつ茹でて、氷で締める笊とボールも用意したから、少しは味が良くなっただろうか。冷たいとろろがヒンヤリと美味しいのでした。 

 食後はひと眠りをせずに、1時過ぎには蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをする亭主。ナスとミョウガとシシトウを油で炒め、薄口の出汁醤油に砂糖を入れて作った汁に、茹でた冬瓜とトマトと一緒に漬け込む。二回目のチャレンジは、冬瓜とトマトを茹でたのと、色を薄く仕上げたのが違う。透き通った冬瓜の涼しさが出ないのがやはり失敗。残った冬瓜を今度は出し汁と塩と砂糖で煮込んだら、鶏胸肉の挽肉を入れ、出汁醤油を垂らし、片栗粉でとろみを付けた。

 今度はイメージ通りに上手く出来たのです。透き通った冬瓜の涼しげな色が夏場の涼と、やっと一年前を思い出した亭主。天麩羅の具材を切り分け、糠床にお新香を漬けたところで、時計は既に4時を回っていた。エアコンを入れていても30℃を越える厨房で、今日は随分と頑張って仕込みをしたものです。気になっていた包丁を研いで、ついでに砥石が真ん中だけへこんできたので、砥石削りで少し平らにしておく。なかなかここまでやる暇がなかった。

 新しく別の業者から仕入れた豚ハラミを真空のフリーザーで解凍しておいたら、二日目なのにもうドリップが出ている。家で味見をしておこうとラップにくるんで、先ほど仕込んだ鶏胸挽きと冬瓜の煮込みと共に家に持って帰る。帰り道、いつもの酒屋まで遠回りをして焼酎と炭酸を買い、ついでにガソリンを入れて帰宅する。午後の陽射しはますます強く、車外温度は40℃を越えているのでした。みずき通りに折れる中央通りの風景もいかにも夏の午後らしい。

 台所で夕食の支度をしていた女将の用意してくれたのは、亭主の好きなジャガイモのバター焼き。モズクの酢の物とインゲンの胡麻和えと酒の肴には持って来いでした。それに亭主の持ち帰った豚ハラミの串挿しとシシトウを焼いて、冬瓜と鶏挽肉のあんかけ煮を加えれば、立派な酒飲みの夕食となるのでした。珍しくテレビも野球をやっていないから、女将と二人で静かに今日一日を振り返る。明日は祝日だから、蕎麦は少し多く打った方が好いと女将が言う。

8月11日 木曜日 朝夕が少し涼しくなったのか …

 午前6時の隣のお花畑。ひまわりの花が随分と沢山咲いてきた。花が小さいから、遠目にスマホのカメラで撮ると黄色い点に見えるけれど、人間の目で見ると確かに一つ一つの花がよく見える。西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集めて、早速、厨房に入って夕べ漬けたお新香を取り出す。ついでに昨日作って鍋のまま冷やしておいた冬瓜とナスとミョウガとトマトの煮浸しを盛り付けておく。二回目の方が汁を薄くしたけれど、冬瓜はやはり染まってしまう。

 家に戻れば女将が台所で朝食の支度をしてくれていた。今朝は先日までの朝からの暑さが感じられない。湿気はあるからエアコンを使っているけれど、窓を開ければ涼しい風が入って来るのでした。店から持って帰った先週の三ツ葉がまだ残っていたのか、卵とじにして食卓に並ぶ。朝は暖かい食べ物が有り難いと思う年頃だから、豚汁がおかず代わりになって、とても美味しく感じられるのです。女将の漬けるお新香は、亭主は醤油をかけないと食べられない。

 食後は例によって短い時間だけれどひと眠り。今朝は珈琲も飲んでいなかったのを思い出す。20分ほど微睡んで頭がすっきりとしたところで、蕎麦屋に出掛けていく亭主。みずき通りを渡る頃には、随分と雲が出ていたけれど、時折、太陽を隠すので、陽射しが熱くないからちょうど好い。蕎麦屋の四軒隣の奥様が、花壇に植えたお花に水遣りをしていたので挨拶をする。古くから住んでいる人たちは、皆、亭主たちよりは年上の方なのです。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。女将の記録によると、去年は非常事態宣言が出ていたのに、山の日は10人を越えるお客があったらしい。それは大変だと今朝になってから慌てて、二回蕎麦を打つことにしたのです。750gと500gとに分けて、43%の加水でしっかりと蕎麦粉を捏ね、丁寧に伸して畳んで包丁切り。時間はかかるけれど、これだけあれば安心だと、生舟に蕎麦を並べて厨房に戻るのでした。

 やはり、いつもの時間に蕎麦屋に来て、蕎麦を二回打つというのは、その分だけ時間がかかる。特に定休日明けはやることが多いから、大根と生姜をおろして薬味の葱を刻んだところで、いつもだったら野菜サラダの具材を盛り付けている時刻。今日は祝日だから女将が手伝いに来てくれるのが、唯一の救いなのでした。胡麻油も新しい一斗缶を開けなければならず、重たい一斗缶を持ち上げて天麩羅鍋に油を注ぐ。大釜の湯が沸いたのでポットに詰める。

 これでもう開店5分前だったから、女将が「暖簾を出すわよ」と珍しく亭主をせっつくのでした。それだけ急いで準備を間に合わせたけれど、昼を過ぎてもお客は来なかった。今日もぴったり10時には市の放送が入って感染拡大が続いていると大音量でアナウンス。去年もこの放送でぴたっと客足が落ちたのだとか。幸いにも、1時近くになってお客が入り始めたから好かったのです。ご家族連れは墓参の帰りらしかった。続けて沢山の調理をするから忙しい。

 やっと亭主が遅い昼を食べたのは1時半過ぎでした。新しい油で揚げた天麩羅はやはり美味しい。今日のお客もそう感じてくれただろうか。月曜日に打った蕎麦を、今日の昼用にひと束残しておいたのだけれど、これも締まってなかなかいけるのです。最後のお客が帰ったのが遅かったから、全部の片付けを終えて2時半を過ぎた。女将はとっとこ先に帰って、ゆっくりと歩く亭主は家々の日影を通って家まで辿り着く。冷たい梨を女将が剥いてくれたのが嬉しい。

8月12日 金曜日 世間はお盆休みなのか …

 駅前の高層マンションが輝いて見える朝は、朝日が昇って強烈な陽射しを放っている証拠。今日こそは、蕎麦屋の南側の草刈りをしようと決めていたから、5時に起き出して珈琲を入れてひと休み。30分ほど居間の椅子に座って目を覚ましたら、意を決して玄関を出る。庭を見ればモミジアオイがぽつんと咲いていたので、写真に撮っておく。女将が愛でるだけあって、その姿が凛々しくも見える。ガレージのシャッターを開けて車に乗り込む。

 蕎麦屋に着いたら、他の事はさておき、軍手と鎌を手にしてミニ菜園に向かうのでした。月桂樹の枝を払いながら、西側の小径の手前まで一挙に草を抜いて行く。蔦が絡みついて大変だったけれど、定期的に草刈りをしているから、見てくれほど草の数は多くなかった。店の中に戻って90㍑のゴミ袋を持って帰り、刈った草を詰めて行くのですが、これがあっという間に一杯になってしまう。30分ほど奮闘して、ゴミ袋一つで今朝はお終いです。

 厨房に戻って昨日の洗い物を片付け、洗濯機の中の洗濯物を干したら、もう6時半を過ぎているのでした。朝の空気はヒンヤリとしていたけれど、やはり動いたから汗が滴り落ちて、家に帰る頃には暑い暑いと言ってクーラーの風で涼む亭主。それでも朝食は温かい方が好い年頃。豚汁はたっぷり肉が入っているから、唯一のタンパク源。自分で作った冬瓜と鶏胸挽きのそぼろ煮は、生姜の隠し味が利いていて、なかなか美味しい。来週はこれを店で出してみよう。

 朝から身体を動かしたからか、食後はすんなりとひと眠りには入れた。洗面と着替えを先に済ませ、エアコンの効いた書斎で30分ほど熟睡して、お茶を一杯飲んだら再び蕎麦屋に向かうのです。蕎麦屋の並びのご近所の奥さんたちが、玄関脇のお花に水遣りをしていたから、挨拶を交わしてちょっと立ち話。蕎麦屋の隣のひまわり畑も、今朝の強い風で揺れていました。空の色が真夏の空よりも青いような気がするのは、風が秋を感じさせる風だからだろうか。

 早朝にエアコンを入れておいたので、蕎麦屋の中は快適です。蕎麦打ち室も26℃で湿度は35%。それが、亭主が蕎麦を打ち終える頃には28℃、45%になっている。汗だくになった亭主の熱気が、狭い部屋を暖めているのかも知れない。今朝は750g八人分を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分を用意する。平日だけれど、世間はお盆のお休みだからと、少し余裕を持って打っておいたのです。それが今日はぴったり当たって、昨日よりも多いお客がご来店。

 昼近くになって、三人連れのお客がいらっして、「美味い蕎麦を食べに来ましたよ」と年配の男性が大きな声で言う。初めての方なのにと思ったら、連れの女性の一人がリピーターで、「美味しい蕎麦を食べさせる店だから」と、友だちを連れて西の町から来てくれたのでした。蕎麦好きの方たちらしく、全員がせいろ蕎麦で男性だけは大盛りのご注文。年配の方達だから亭主も気が楽で、いろいろな質問に答えながら蕎談義に付き合う付き合うのでした。

 次のお客がいらっして、お茶をお出ししたところで、前のお客はお会計。ヘルシーランチセットとせいろ蕎麦のご注文だったから、野菜サラダと蕎麦豆腐をお出ししてその間に盆に蕎麦皿や蕎麦汁、薬味、小鉢をセットして、蕎麦を茹でる。天麩羅を揚げないと随分と楽なのです。時計は1時を回っていたから、今日はこれで終わりかなと、平日のつもりでいたのが迂闊なのでした。やっと洗い物を済ませた頃に、車が続けて駐車場に入ってくる。

 後半は皆さん天せいろや単品の天麩羅のご注文で、最後のお客は隣町の常連さんなのでした。とりあえずお茶をお出ししたら、前のお客の配膳をしてから、「いつもので好いですか」と確認をして、カウンターに野菜サラダを持って行く。盆と蕎麦皿、天麩羅皿と天つゆの器を用意して、インゲンと稚鮎とキスを揚げ、辛味大根をおろして、蕎麦を茹でる。前のお客がお会計を済ませて帰った後は、常連さんのいつもの四方山話に付き合う。有り難いことなのです。

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2022年8月初め

8月1日 月曜日 朝の8時から30℃を越える暑さで …

 今朝も4時半から朝飯前のひと仕事に蕎麦屋へ出掛けたけれど、カメラを持って行くのを忘れて、向かいの森の空が真っ赤に染まった美しい朝焼けも、写真に撮れませんでした。カウンターの上の洗い物を片付けて、新しい天つゆを作り、浅漬けを漬け込んだら、洗濯機の中の洗濯物を干して、最後に西の小道の槿の花びらを掃き集めるのでした。家に戻ってもまだ6時半だったから、エアコンを効かせた書斎で20分ほどひと眠りする亭主。

 7時を過ぎたので食堂に行って朝食を食べる。痩せたサンマの開きが焼かれていました。ジャガイモを茹でてバターを塗って食べればご飯が進むのです。朝ドラの終わらないうちに宅急便の配達が来て、受け取りに出た女将が「今朝は外も相当に暑いわよ」と言っていました。今日から8月だと、元気に蕎麦屋に出掛ける亭主でしたが、陽射しの強いのには閉口するのでした。早朝の雲はどこかに消えて、みずき通りも真夏の暑さ。明日は定休日と頑張って歩く。

 今朝も燕の親子がお隣の軒下から、蕎麦屋をめぐって元気に飛び交っていました。よく見ると中に小さな燕が何羽かいるようで、時折、電線に止まって休んでいる様子。やはり、今年は二回産卵したようで、親鳥以外にも身体の大きな燕がいるのは、先に生まれて育った兄弟らしいのです。何とか、カメラの画角の中に収めようと、少し粘ってはみるけれど、スピードが速すぎて、そのうち朝日がジリジリと肌に照りつけるから、エアコンの効いた店内に逃げ込む。

 店内は27℃までしか下がっていないのですが、湿度も下がっているから蕎麦打ちには快適な環境。早速、蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦はほとんど売り切れたから、今朝は750g八人分を打つと決めていました。7月の月曜日は、毎週6~8名のお客の数だったから、それ以上の場合は御免なさいと、売切れにしようと考えていました。しかし、混んだ週末の翌日は判らないのです。暑さやコロナの感染者数の増加もあって、読めないのが本音。

 43%の加水率で蕎麦粉を捏ねれば、今朝は幾分生地が柔らかい。少し包丁の刃に蕎麦が絡みつく場面もあったけれど、なんとか凌いで、切りべら26本で135gの蕎麦を八束仕上げるのでした。蕎麦粉の袋にはあと一日分の蕎麦を打つだけしか残りがないから、この定休日には次の蕎麦粉を注文しなければならない。天婦羅の具材の海老も今週は頼まなければならないし、天婦羅油も来週にはなくなる。明日の仕入れもあるから、今日の売り上げ如何で持ち出しになる。

 そんなことを考えながら、蕎麦を打ち終えて厨房に戻り、早朝に漬けておいた浅漬けを取り出して小鉢に盛り付ける。揚げび浸しもあるから、蕎麦の数だけ小鉢が出来れば好いという計算。定休日前は、出来るだけ食材を残したくないと言うのが正直なところなのです。野菜サラダも今週は毎日のように随分と残ったけれど、メニューに出しているからには、ある程度用意しておかなければならないのです。昨日も夜になってから、辛味大根を捜しに出かけた。

 月曜日には常連さんが来て辛味大根を頼まれることが多いので、駅前のショッピングモールに出掛けたけれど、そこにはなくて、隣の小さな八百屋に辛味大根のコーナーがあったので助かった。一昨日も西の街のスーパーでたまに出ていることがあるからと、他の買い物がてら出かけてみたけれど置いていなかった。ネットや蕎麦粉の農場で頼めばすぐに手に入るのだけれど、送料が入ると倍の値段になる。ミニ菜園が機能していればこんな苦労はないのですが。

 開店の準備が整って、10分前だったけれど車が駐車場に入って来たので、待っていましたとばかりに、暖簾を出して「営業中」の看板を掲げたのです。母と娘らしい女性二人お客が店に入られて、しばらくメニューを眺めてから、せいろ蕎麦と天せいろのご注文。盆と蕎麦皿に蕎麦猪口、薬味の皿と蕎麦汁、小鉢を用意してから、天婦羅を揚げる。蕎麦を二人分茹でたら盛り付けて配膳。次のお客が来ても慌てないように、しっかりと練習のつもりでお出しする。

 ところが今日は珍しく後が続かないのです。ゆっくりと食べて帰られたお客がいなくなって、後片付けと洗い物を済ませたら、ぽつねんと椅子に座って次のお客を待ち続ける亭主。そういえば辛味大根の常連さんは金曜日に来たばかり。1時を過ぎたのでかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べておく。それでもお客は来ないから、残った天婦羅の具材をすべて揚げて、家に持ち帰る準備を始める亭主。夜は残った食材を消化しながら一献なのです。

8月2日 火曜日 佐倉も午後は38℃になるとの予報 で…

 定休日の今朝は朝飯前のひと仕事には出掛けずに、冷蔵庫の中が空になったから、残り物で質素に朝食を済ませるのでした。食後のひと眠りもせずに、女将の朝ドラの時間に亭主は前の通りに脚立を持ち出して、お隣の家との境に伸びた紫陽花の剪定に取りかかる。雪柳や連翹の伸びた枝に蔦がからまって、鬱蒼とした状態なのでした。お隣の奥様も出て来て「助かるわぁ」と水撒きを始める。朝日陽の差す前でないと、暑くて仕事が出来ないのです。

 蕎麦屋に寄ってエアコンのスイッチを入れて、お袋様を迎えに行けば、「今日は朝から暑いねぇ」と言って車に乗り込むのです。農産物直売所に着けば、ナスやキュウリなどの夏野菜が沢山並んでいる。「天麩羅にするならこの大きさが好いよ」と農家の親父様が、まだ値札を貼っていないナスの袋を持って来てくれた。知り合いの農家の親父様に「冬瓜とナスをもらったよ」と挨拶をすれば、オクラの袋を抱えてお袋様に渡していた。有り難いことなのです。

 隣町のスーパーに足を伸ばせば、朝から凄い暑さのせいか、今朝はお客が少ないのでした。小葱以外は新鮮な野菜がすべて揃って、店に帰って買って来た野菜を冷蔵庫にしまうのにひと苦労。昨日の洗い物もまだ片付けていないのです。20℃の設定で冷房を入れていているのに、店の中の温度は29℃。外は相当に暑くなっているらしい。野菜籠に入りきれない野菜は、上の冷蔵室に並べて、すぐに使うものは取り出しやすいように見える場所に入れておく。

 カウンターに干した盆や皿を片付け、洗濯物を干し終えたら、もう11時近くになっていたから、家に戻って昼食の支度を始めるのでした。亭主は鍋にお湯を沸かして昨日残った蕎麦を茹で、女将は亭主が昨日揚げて帰った天麩羅をグリルで焼くのです。家で茹でる蕎麦は、どうしても鍋の大きさが蕎麦屋とは違うので、水で洗うにしても狭い場所でボールと笊に入れるから、仕上がりが違ってくる。氷で締めないから綠色だけれど、食感はやはり今ひとつなのです。

 それでも天麩羅もカリッとして立派な天せいろだから、贅沢な昼食なのです。最後に蕎麦を茹でた鍋から蕎麦湯を蕎麦猪口に取って啜るのがまた格別。女将には一人前130gの蕎麦ではちょっと多いので、いつも100gほどにして盛り付けてやる。その分、亭主が余計に食べられるから嬉しいのだけれど、食べ終えてみるとやはりまだ物足りない。スルスルスルッと食べるのが早いから「満腹中枢がまだ働かないのよ」と女将に言われる。

 居間で食休みをすれば、女将がお茶を入れて持って来てくれる。ついでに二週間後のスポーツクラブの予約をして欲しいと、彼女のスマホと記録するノートを置いていくのです。2時5分が予約開始の時刻だから、今日はまだ何も仕込みをしていなかったので、彼女のスマホをポケットに入れて、まずは酒屋に出掛けて焼酎と炭酸を買って蕎麦屋に行く。時間通りにスマホを操作して予約を済ませたら、朝のうちに準備しておいた出汁を取って蕎麦汁を作るのです。

 3時過ぎには仕込みは終わったけれど、エアコンを効かせた蕎麦屋は34℃より室温が下がらないので、首にアイスノンを巻きながらも、次の仕込みに入る元気がなかった。午前中に手に入らなかった小葱を買いに、橋を渡って団地の中のスーパーに行こうと、車に乗り込めば、駐車場の日影に停めておいた車の車外温度計は、なんと45℃を表示しているではありませんか。外は確かに体温よりも暑いのです。アイスノンを首に巻いたまま、マスクも忘れて店内へ。

 明日が定休日のスーパーには、野菜も残り少なくなっていたけれど、無事に小葱を手に入れたついでに、上手そうな冷凍銀ダラを買って、だいぶ陽の傾いた中央通りを家路につくのでした。女将は稽古場でまだ頑張っている。亭主は昨日残ったハラミの串刺しと茹でたジャガイモをグリルで焼いて、一足先に晩酌を始める。やっと女将が台所に現れたところで、野菜サラダとかき揚げの具材の残りでカレー炒めを作る。二人が同じ事を考えていたから不思議です。

8月3日 水曜日 暑い暑いとばかりは言っていられずに …

 夕べは暑くて何度も汗をかいて目が覚めたけれど、エアコンのタイマーを30分にセットしてまた眠る亭主。夜中27℃より下がらなかったらしいから、熱帯夜もいいところなのです。5時半にはすっかり目覚めて、コーヒーを入れて一服したら、蕎麦屋に出掛けて朝飯前のひと仕事。昨日は家の庭木の剪定をしたから、今朝は蕎麦屋の駐車場のヤマボウシとモミジの剪定をしようと、車に脚立を積み込んで出掛けて行ったのです。6時前だというのに陽射しが強い。

 突き出た枝を手の届くところは剪定ばさみで切り、脚立を使ってもう少し上まで切っていく。落ちたら危ないからと、次は高枝鋏を伸ばして上に飛び出た枝を切り落とす。朝の散歩の奥様が挨拶をして通りすぎる。90㍑のビニール袋に切った枝を詰めていくと、ちょうど満杯になる分量で、亭主も少し疲れてきた。袋を運ぼうとチェーンポールのチェーンをまたいだつもりが、足が引っかかって歩道に転んでしまった。通りがかりの車が止まって「大丈夫ですか」

 朝食の時に女将にこの話をすれば「ぼうっとしてると危ない年齢なのよ」とたしなめられた。身体の感覚が鈍くなってくるのです。車を運転していても、時々、注意が散漫なことがある。気をつけないと高齢者の事故になりかねないから、いつも通り慣れた道で蕎麦屋に向かうのです。午前中に切り干し大根の煮物と揚げ浸しと、小鉢二種類を仕上げて、冷蔵庫で冷やしておいた蕎麦汁を徳利に詰める。洗い物を終わらせればもう11時なのでした。

 店のエアコンを最強にして運転しても、厨房の温度は29℃までしか下がらない。外はうだるような暑さなのでした。車のエアコンを入れて家まで帰れば、玄関まで歩くのも暑いのです。「昼は何を食べようか」と女将に聞けば、まだキャベツが二玉も残っていると言うから、亭主が台所に立って回鍋肉を作り、女将がレタスと若布のスープを作ってくれた。甜麺醤を入れて本格的に味つけをしたのは好かったけれど、香りが強すぎて好きではないと女将が言う。

 世界に誇る中華料理も、子どもの頃から食べつけない女将には縁遠い料理らしいのです。そう言えば、昔、隣町にあった中華料理屋で食べた回鍋肉は、もっと甘くて優しい味だったかも知れない。日本人向けに工夫をして出していたのでしょうか。我が家でも豆板醤も辛いからとあまり好かれないから、砂糖を入れて甘めに仕上げる必要があるのです。午後は整形外科にひと月振りに出掛け、血液検査をして尿酸値を計ってもらう。少しは薬の効果があるのかな。

 そのまま蕎麦屋に行って、午後の仕込みをする亭主。蕎麦豆腐と明日のデザートを作ったら、天麩羅の具材を切り分けて、お新香を漬け込む。その間に、業者が天麩羅油と海老と稚鮎を持って来るのでした。油も海老も値上がりしたばかりだから、明日は蕎麦粉が届くけれど、果たして支払いが間に合うかどうか。家に戻れば、女将がコロナの感染者数がまた増えていると大騒ぎ。世の中の人は自分たちとはかなり違う感覚らしいと二人でニュースを見るのでした。

8月4日 木曜日 未明から激しい雨と雷の音で …

 朝まだ暗い時分でした。ドドーンという雷鳴と共にザーッと激しい雨の音で目が覚めたのです。夕べ蕎麦屋で漬けたお新香を取り出さなくてはならないし、小鉢も盛り付けなければと、コーヒーを一杯飲んでから5時半過ぎに、雨の降る中を車に乗り込む亭主。これでは今日は開店休業だろうなぁと、昨日作った揚げ浸しも少なめに盛り付けて、6時過ぎにはもう家に戻るのでした。することもないから、また床の中に横になって夢の続きを見るのでした。

 珍しく女将が「ご飯ですよ」と起こしに来てくれた。いつになく涼しい朝だったから、ぐっすりと寝込んでしまったらしいのです。食堂に行けば定番の和食のメニュー。まずは豚汁で身体を温める。蕎麦屋で大根が残ると家に持ち帰って来るのだけれど、夏場の豚汁も馬鹿に出来ないのです。若い頃は暑い夏にはなんでも冷たい物を欲しがったものですが、最近は女将の出す暖かな料理が嬉しい。鰺の干物も小さなもので十分なのです。

 今日は車で出掛けようかなと言っていたのに、雨が上がったらしく、涼しい朝の風の中を、蕎麦屋までゆっくりと歩いて行くのでした。隣のお花畑もやっと小さなひまわりが咲き出して、これからが見物だろうと楽しみになる。耕すのも種を蒔くのも大変だろうに、よく続けてくれるのです。蕎麦屋に来るお客様が「素敵ですね」と言う姿が今から目に浮かぶようです。雨の上がっているうちに、西の小径に散ったムクゲの花を掃き集めておく。

 幟を立てて看板を出し、チェーンポールを降ろしたら、手指をよく洗って今日の蕎麦打ちに入るのです。いつも定休日明けの木曜日は、沢山お客が来たらどうしようかと多少の躊躇いがあるけれど、今日はこの天気ではあまり期待できないと、750g八人分をしっかりと打つのです。加水率はいつもと同じ43%でしたが、湿度が高い分だけちょっと柔らかめ。心が落ち着いているからか、今朝は打ち下ろす包丁の運びも軽く、140g前後の蕎麦の束を生舟に並べました。

 雨は降ったり止んだりで、空は暗いままでした。小鳥たちの姿も見えずに、亭主は一人厨房に帰るのです。蕎麦玉を寝かせている間に、薬味の葱も刻んだし、大根も生姜もすり下ろしておいたから、まずはブロッコリーとアスパラを茹でて、レタスの葉をちぎり、キャベツを三皿分だけ刻んでしまいます。お客が来なければ野菜サラダも出るはずもないのですが、アーリーレッドとパプリカをスライスして、ニンジンのジュリエンヌ。今日は綺麗に切れました。

 キュウリとトマトとパイナップルを載せて、最後にブロッコリーとアスパラを添えて今朝の仕込みは完了です。時計はまだ11時前。新しい天麩羅油を鍋に注いで、作っておいた天つゆをレンジに乗せたら、ちょうど大釜の湯が沸いて、蕎麦湯の器を温めるポットと、蕎麦茶用の四つのポットに入れて行く。後は店の掃除をするだけ。開店までに早朝を含めて4時間の準備をして、2時間半の営業は、考えたら割に合うものではないかも知れない。

 それでも毎日飽きずに続けられるのは、やはり好きだからなのでしょうか。お客に趣味の蕎麦屋だと言われても、最近では笑って済ませることが出来るようになったのです。店内は換気のために窓を開けていても、今日は27℃より上がらない。外はだいぶ涼しいのです。1時前になってもお客の姿がなかったので、下ろしたての天麩羅油でかき揚げを揚げて、月曜日に打った蕎麦を茹でて賄い蕎麦を食べておく。木曜日のヨーガのなくなった女将が来てくれた。 

 何かすることはないかと言うけれど、お客が来ていないから昨日の洗濯物を畳むことぐらいしか仕事はないのです。亭主は奥の座敷に入って一服させてもらう。やっと陽が差してきたらしく、障子に映る蔦の影が素敵でした。ラストオーダーの時間の1時45分になったところで、暖簾と幟と看板をしまい、チェーンポールを上げて、大釜の掃除に取りかかるのです。女将は天麩羅のパッドを洗い、亭主の昼飯の後片付けをしてくれる。2時前には店を出るのでした。

 家に戻れば、雨の降っていた朝には撮れなかったアオイの写真をじっくりと撮っておく。ピンクのアオイも何時の間にか交配したのか、花の芯の方がモミジアオイの真紅になっているから不思議なのです。まだ蕾もあるから、当分は楽しめそうで嬉しい。珍しくエアコンを入れない居間で、女将の切ってくれた桃を食べる亭主。書斎に入って今日の写真のデータをパソコンに取り込んだら、ひと眠りするのでした。お客が来なくても7時間の労働は疲れるのです。

8月5日 金曜日 今日も涼しい一日で …

 女将の稽古場に置いてあるプルメリアの花がまだ咲いている。7月の初めからだから、ひと月近くも次々と咲き続けているのです。部屋に立ちこめる香りが好いと、炎天下の外には出さずにおいたのが好かったのでしょうか。常夏の島では大きな木になるのに、植木鉢に植えられて本来の姿ではないのが、ちょっと可哀想な気もするけれど、30cmほどのただの棒切れがここまで育ったことを考えると、生命力の素晴らしさを感じないではいられないのです。

 朝食を終えて朝ドラが終わる時間に家を出て、みずき通りを渡れば、陽が出ていないからか風は涼しいのでした。先日、農家のお兄さんが、草刈りをして耕したばかりの向かいの畑には、もう青々とした雑草が伸び広がっている。やはり、作物を植えていないと、手入れが行き届かないのでしょう。蕎麦屋のすぐ前の親父様の畑は、しょっちゅうトラクターを走らせているから、黒い土が綺麗に見えているのでした。蕎麦屋のミニ菜園もまったく同じことが言える。

 今日は昨日の蕎麦が生舟に一杯残っていたので、蕎麦の様子を確認して今朝は蕎麦を打たないと決める。昨日と同じように暑くならないという予報だったし、コロナの感染者数もあまり減っていないから、今日もお客は期待できないと思ったのです。それでも野菜サラダはいつもの平日のように三皿盛り付けて、準備は万端で開店の時刻を待つ亭主。そろそろ暖簾を出そうかと思っていたところに、ガス屋さんが来て一酸化炭素の検知器の交換だと言う。

 ブザーが鳴ったら直ぐに電話をするという仕組みで、随分と親切なことだと感心する。亭のガスレンジは年老いた時のことを考え、一般の家庭用のレンジを向かい合わせて二つ入れているから、空だきや鍋の温度が高くなり過ぎても自動で火が止まる仕組み。厨房の天井にはガス漏れの検知器も設置してあるし、このコロナの時期には常時窓を開けているから、まずは心配がないでしょう。二重三重に安全を確保して、蕎麦屋の営業をしているから安心です。

 隣のお花畑のひまわりも、昨日よりは咲いている花の数が少し増えたのです。道路を挟んで向かいの畑も同じ農家の畑で、やはりひまわりの種を蒔いたらしく、全部が咲いたら圧巻だろうと今から楽しみにしているのです。昼を過ぎてもお客はなくて、賄いの蕎麦を茹でてさあ食べようかと思ったところに、駐車場に車が入ってきたから、汁は入れずにラップをかけて冷蔵庫にしまった。きっと食べる頃にはコンビニのざる蕎麦状態になっている。

 奥のテーブルに座ったご夫婦のこ注文はヘルシーランチセット。サラダは作って直ぐに冷蔵庫に入れてあるから、「まずはサラダを召し上がっていてください」と、ドレッシングと共にお出しする。蕎麦豆腐をお出しして、天麩羅を揚げないから出すのに時間はかからない。「今日は奥様はいないのですか」と聞かれて、彼女の来てくれるのは週末だけだと応える亭主。以前にもいらっしたお客なのだろうかと思いながらも、蕎麦湯とデザートまでお出しする。

 家に帰って女将がスポーツクラブから戻る前に、蕎麦粉の支払いに郵便局まで車で出掛ける亭主。銀行でお金を下ろしたついでに、いつもの酒屋まで車を走らせる。女将の帰ったところで、このお客の話をすれば、いつも休みの日に来てくれていた方ではないかと、好く覚えているから凄い。雪の降った日にもいらっしたのだとか。厨房で調理をする亭主は、元来、話をしてもあまりお客の顔を見ていないのかも知れない。物忘れが激しいのでなければ好いけれど。