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2022年4月末

4月26日 火曜日 曇り空、躑躅が満開で …

 午前4時には目が覚めて、蕎麦屋に出掛けてひと仕事。最近は朝寝も昼寝も夜の睡眠も、目覚めてから次は何をするのだっけと考えるから、ちょっと怪しい精神状態なのです。そのくせ、夢に見るのは食べることばかりで、昔の職場の近くで何が美味しいからと、時間の都合を付けてかつての同僚と食べに行く有様。夜食を食べなくなって空腹なのだろうか。家に戻って朝食までの時間に、塀際の木槿の剪定を始めた。時期が違うけれど、女将の要望なのでした。

 朝食には蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやとアサリの味噌汁。昨日残った三ツ葉は女将の作ったしみ豆腐とで卵とじ。お腹が一杯になったら、またひと眠り。目が覚めたら洗面と着替えを済ませて、お袋様に電話をする。曇り空だったけれど、農産物直売所までの道には躑躅が満開なのでした。並木の赤い新芽も見事に育って、この時期に散る沢山の常緑樹の枯れ葉は、掃除をするのが大変だろうと思うのでした。時間が早かったからまだ店には野菜があまりない。

 お袋様を送ってマンションまで行けば、躑躅が満開で見事なのです。蕎麦屋で買ってきた野菜を冷蔵庫に収納したら、今日は床屋に行く日なので、急いで隣町まで出掛ける。前に一人お客がいたけれど、「直ぐ終わるから待っていて下さい」と親父様に言われて、話をしながら順番を待つのでした。今日の話題はウクライナ情勢と知床の遊覧船の事故。亭主同様に釣り舟で海に出ていた親父様も、3mの波では釣り船も出ないと言うのでした。

 昼飯の準備をしなければと時間を気にしていた亭主は、床屋が終わったら自宅に電話をして、女将に直ぐ帰るからと言う。今日は、昨日残った蕎麦と揚げて帰った天麩羅で、天せいろの予定なのでした。床屋にいた間に、何時の間にか雨が激しく降りだしていて、曇り空に新緑のハナミズキの通りもまた一興。今週末まで、天気も不安定の予報なのでした。今日は女将のスポーツクラブもお休みだから、大鍋にを沸かして、天麩羅を焼くばかりになっていた。

 昨日揚げて帰った天麩羅は、揚げ方が好かったのか、グリルで焼いたら揚げたてのような美味しさ。銅の天麩羅鍋の威力はこんな所にも現れるのでした。蕎麦湯を飲んで亭主は至極満足したから、お茶も飲まずに書斎に入って横になるのでした。定休日だから気兼ねは要らないと、1時間余り眠って果物を食べて目を覚まし、午後の仕込みに蕎麦屋に出掛けるのです。まずは、朝のうちに昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を沸かして出汁を取らなければ … 。

 その前に、午前中に買い忘れたレタスを何処かで調達しなければいけない。一番近い農産物直売所には、朝は野菜があまり出ていなかったけれど、この時間ならもう持って来ているかも知れないと、新緑の並木道を走って出掛けたのです。果たして、欲しかった野蕗も出ていて、少し古いけれどレタスもあったのでもらって帰る。野蕗のキンピラはなかなか美味しいから、もう一度は作りたかったのです。雨は上がったけれど曇り空で、新緑の並木も映えない。

 蕎麦屋に戻って出汁取りに1時間。やっと手に入れた野蕗を湯がいて皮をむいておこうかと思っていたけれど、夕食の時間が迫っている。明日の仕事が増えるとは思ったが、あまり無理をしてまで仕込みをすることはないと、家に戻って夕食を待つのでした。隠居仕事に無理は禁物というのが、最近の亭主の考え方なのです。それでも通風の足の具合はまだ完治していない。年を取ると治るのも遅いのかも知れない。朝のうちに木槿の剪定を一本だけ済ませて正解。

 夕食は、昨日残ったサラダを添えて鶏の胸肉の炒め物にジャガイモのサラダ。女将が10年ぶりで通風の発作が出た亭主のために、カロリーを減らすために考えてくれた食事療法なのですが、最近はこれで十分お腹が一杯になるから不思議。願わくば、早くプーで泳ぎたいとは思うけれど、まだ靴も履けない状態で夜の防犯パトロールにも参加出来ていない。あまり焦らずに自然の治癒を待つしかないのだと、今夜も焼酎をあおってブログを書いているのです。

4月27日 水曜日 朝まで風が強くて …

 昨夜は足の指の具合も良かったからか、珍しく焼酎のボトルを半分近く空け、9時半には床に就いてしまったのです。蕎麦屋には出掛けているとは言え、やはり定休日は、心も身体も安らぐのでしょう。お蔭で今朝は4時半にはもう目が覚めて、ビュービューという風の音を聞くのでした。夕べ寝るときにも風は吹いていたのに、酔っていたからか気にならなかった。5時のニュースを見てから、少し早い時間だったけれど、雨の中を車で蕎麦屋に向かうのでした。

 昨日は午後にもう一度農産物直売所に出掛け、朝は早すぎてまだ入っていなかった野蕗を二束仕入れて来たのです。先週の倍だから今朝のうちにせめて板ずりをして、皮を剥いて短く切りそろえておければと思ったのですが、塩を振ってゴロゴロとまな板の上を転がすまでは好かったのです。沸騰した大きな鍋で2分ほど茹でて、冷水に取ったらさあ皮剥き。これが細い蕗が何本もあるから、なかなかはかどらない。爪で先の方を剥いだら一気に皮を引っ張る。

 半分ほど終わった頃にやっと慣れて来て、次々と皮が剥けるようになったけれど、30分近くかかっただろうか。7時近くになってやっと家に戻るのでした。朝食の支度をしていた女将が、グリルから取り出したのは、昨日亭主が買って帰ったワラサのカマの塩焼き。魚の大きさがまだ鰤ではないのだろうが、脂が乗ってとても美味しかったのです。「随分食べる処があるわね」と女将もお腹が一杯になったらしく、二人とも満足な朝食なのでした。

 朝が早かった割には、食後に横になってもなかなか微睡めない。仕方がないから蕎麦屋に出掛けて、朝の続きを作業を始めるのでした。蓮根の皮を剥いて、切り分けて酢水で茹でたら、小さめの蓮根を切ってキンピラ用に取り分けておく。残りは明日の天麩羅の具材にする。冷凍してある油揚げを短冊に切って、蓮切りにしたニンジンと一緒に、輪切りにした唐辛子を入れたごま油で炒める。最後に野蕗を入れて出汁で煮て、味つけをして汁の少なくなるまで待つ。

 ちょうどその時に玄関が開いて、元のスタッフがまた筍を持って来てくれた。すぐ近くだとは言え、雨の中をわざわざ有り難うございますと、昨日買っておいた苺としらぬいを袋に入れて渡す。今年はこれで最後だと言う。短い期間だけれど旬の物とはそれで好い。コゴミもタラの芽も、今採ってあるものでお終いだから、旬の山菜の天麩羅は今週限りで終わりになります。その後はもう夏野菜になるのだろうか。天麩羅用に筍の先端を切って冷凍しておく。

 残った筍を家に持ち帰れば、「夜は筍ご飯にするわ」と女将が言う。スポーツクラブの予約があるので、早めに昼食の用意を始める亭主。女将は隣で筍の梅和えを作っている。スープはアサリとレタスのコンソメ味で作り、フライパンに油を引いて肉と玉葱、ニンジンを炒めてご飯を入れる。あまりにも亭主の手際が好かったので、11時前には早すぎる昼食を食べるのでした。お好み焼き用の青海苔と紅ショウガもあったから、ちょうど好い塩梅。

 食べたら直ぐに眠気が襲ってきたけれど、「眠いのに悪いけれど(予約開始は)11時半ですからお願いします」と女将に言われ、今日のブログの写真をパソコンに移す。パソコンの前に座っていれば忘れることはない。40分ほどブログの記事を書いて、5分前から壁の時計の秒針を眺めて、ぴったり11時半に予約を完了する。今日はまだ誰も予約を入れていなかったけれど、早い日には1分もしないうちに埋まってしまうのです。晴れてゆっくりと午後の昼寝。

4月28日 金曜日 朝はひんやりでしたが …

 夕べも早く休んだので、今朝はまた朝飯前のひと仕事です。外はひんやりとした空気で、北風が入り込んでいるらしい。向かいの休耕地に生えたポピーのオレンジ色が、曇り空なのにやけに映えるのでした。一日三本のバス停は、駅から団地の中を通って蕎麦屋の前に停まるから、近所の老人たちが買い物や通院に使うことが多い。この他にも、駅から10分ほどで蕎麦屋まで来る市のコミュニティーバスが一時間毎にあり、この区間は手を上げれば止まってくれる。

 気になっていたのが、昨日の夕刻に漬けた糠漬けなのです。塩を薄めにして漬け込んで、糠床を冷蔵庫に入れて14時間。これ以上長く漬けると塩辛くなってしまうから難しい。ラディッシュのあるうちは、赤い色がアクセントになってなかなか好い。ナスの色止めもしっかりと効いているのです。ラップを掛けて冷蔵庫に入れたら、次は昨日作った野蕗のキンピラを小鉢に盛り付ける。蕗を倍増したから香りが好い。亭主はかなり気に入っているのです。

 盛り切れなかったお新香は、小さなタッパに入れて家に持ち帰ったけれど、まだ前のお新香が残っていたらしい。食堂に入ればぷーんと懐かしい香りがしたのは、女将が鰺の開きを焼いていたから。便利な時代だから冷凍してある筍ご飯も、レンジでチーンすれば美味しく食べられる。食後のお茶をもらったら、例によって亭主は書斎でひと眠り。20分ほど微睡んで、髭を剃ったら着替えをする。女将の朝ドラが終わる時間に「行ってきま~す」と玄関を出る。 

 庭の芍薬の赤い蕾が大きくなっている。季節はいよいよ初夏なのです。蕎麦屋までの道程も、足の指をかばいながらも、だいぶ歩くのが楽になっている。それでもまだ親指の腫れは引かないから、今回はかなり重傷なのだろうか。靴が履けないのでは夜のパトロールにも参加出来ない。それが気がかりでならないけれど、女将は冷たく「痛いのを無理をして、酷くなっても知らないわよ」と言うのでした。年を取ってやはり回復が遅くなっているのだろうか。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。加水率42%でちょうど好い柔らかさ。室温は19℃だから、暖房を入れる程でもないのです。蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱を刻み、大根、生姜をおろしておきます。9時を過ぎた頃に、蕎麦打ち室に戻って、生地を伸して畳んで包丁切り。最近は、定休日明けには750gで八人分と決めている。コロナ禍になって平日に8人を越えるお客は滅多にないのです。

 再び厨房に戻って苺大福を包み、ブロッコリーとアスパラを茹でて、野菜サラダの具材を刻む。11時前には大釜の湯も沸いてポットに入れて、天麩羅鍋に新しい油を注いで、天つゆの鍋も火にかけておく。店の掃除は簡単に、箒で床を掃いたらアルコールでテーブルを拭く。亭主一人で始まる定休日明けの営業は、何となく心細い。もう8年になるというのに、最初のお客が来て身体が動き出すまでは、どこか気持ちが落ち着かないのです。

 今日は家の近所に住む同年代の女性が、久し振りに蕎麦を食べにいらっした。カウンターの隅に座って、文庫本を読みながら、天せいろが出来上がるのを待つ。「筍とコゴミの天麩羅をお付けしました」と言って盆を運べば、「コゴミが食べられるなんて」と懐かしんでいらっした。次のお客はご夫婦で、テーブル席に座ってやはり天せいろのご注文。食欲のなかった娘さんが、蕎麦を食べに来て美味しかったと、今度は親御さんが食べにいらっしたのでした。

 最後のお客はご夫婦で鴨南蛮蕎麦のご注文。野菜サラダを運んで行けば「わぁ、綺麗ね」と奥様が喜んでくれました。鴨肉を焼いて温かい汁でお出しすれば、玄関が開いて先ほどのお客が戻っていらっした。「お釣りを沢山くれすぎたわよ」と、千円札とレシートをを出して、亭主のレジの打ち間違いを教えてくれたのです。なんとも親切なお客様だと、残っていた苺大福を包んで持って帰ってもらったのです。「早く一人に慣れてよ」と言われてしまった。

 お客が帰って洗い物を片付けていたら、スポーツクラブから帰った女将が最後の手伝いに来てくれる。一緒に蕎麦屋を出るけれど、足の具合を気にする亭主はかなり後から家に着く。彼女のスポーツクラブの予約をするパソコンは、もうスイッチが入っている。一時間遅れで画面を開いて、残り一つの席をゲット。夜はあまり食べるものがないので、亭主がコンビに唐揚げを買いに出掛けた。ついでに週末は寒くなるらしいので灯油を買ってくる。1㍑140円 … 。

4月29日 金曜日 雨雨雨の金曜日でしたが …

 6時前から目覚めて居間で一休みしていたら、女将が台所に入る前に「また雉が鳴いているのよ」と知らせに来たのです。最近、家の裏の空き地に雉が来ると言うので、裏窓から様子を窺えば、確かに色の綺麗な雉の雄が、畑の草を啄んでいるではありませんか。鳴き声がキキーッと独特だから、女将も気になるらしいのです。蕎麦屋の前の畑にはいつも雉がいるのですが、何百メートルも離れた家の裏にいるのは同じ雉か、雌を呼んでいるのかも知れない。

 朝ご飯は骨取りの鯖が今朝のメインのおかずで、筍のお吸い物と筍のご飯が季節を感じさせるのでした。箸置きは陶芸家の古い友達の焼いてくれたもので、蕎麦屋の大福を載せる皿と同じ文様で、八角形の箸も彼女が何かの折に手渡してくれたものなのです。女将の作る食事と旧友の贈りものとが、亭主の心豊かな毎食毎の彩り。朝飯前のひと仕事に出掛けなかった分、今朝は少し早めに家を出て、ご近所の卯木の花を眺めながら蕎麦屋に向かうのです。

 今朝はまだ時間が早かったから、蕎麦打ちの前に大釜の湯を沸かす側のレンジ周りの掃除をしておく。家庭用のレンジをダブルキッチンにしてもらったのは好いけれど、大釜を二つ並べて湯を沸かす側は小さな火口が使えない。茹でる蕎麦粉がこぼれるのか、何日かすると白く湯垢がレンジの表面に固まっているのです。大釜に水を入れながら、洗剤で洗って雑巾で汚れを取って、今日も綺麗にして使うのでした。9時前になったので蕎麦打ち室に入る。

 昨日の蕎麦が三つだけ残っていたから、今日は天気も悪いし、雨が降り続くというので、750g を打って11人分の蕎麦を用意する予定でした。加水率は42%で、今朝は気温も低かったからか、ちょうど好い硬さの生地に仕上がりました。生地の仕上がりは、その後の伸しや畳みにも大きな影響を与えるので、今朝はとてもいい状況。こんな天気ではお客が少ないだろうと言う気持ちも、蕎麦打ちが上手く出来たという喜びでかき消えていくのです。

 すぐそこの見えない未来と向き合う気持ちは、不安でよりどころのないものだけれど、蕎麦打ちの技術の向上を目指す亭主の気持ちは、常に前向きなのが自分でも不思議なくらいなのです。これはほとんど隠居仕事の蕎麦屋の心境。予報よりも早くから雨の降りだした天気は、回復する兆しがないから、女将と二人で雨の降る外の景色を眺めながら、お客は歩いては来ないし、蕎麦屋に食べに行こうなどという気にもならないだろうと、話をするのでした。

 それでも、苺大福を包んで野菜サラダの具材を刻み、三皿だけ盛り付けておいたら、昼過ぎに雨の中を次々とお客がいらっしたから不思議なのです。 やはり休日だからなのでしょうか。天せいろにヘルシーランチセット、とろろ蕎麦に暖かい天麩羅蕎麦と、皆さんリピーターの方なのでした。デザートに用意した苺大福を、お持ち帰りで幾つも持って帰られるお客もいたのです。その後のお客には、「苺大福は売り切れてしまって」と女将が応える。

 結局、降りしきる冷たい雨の中を10人を超えたお客が入って、連休の始まりなのだという認識を新たにしたのです。最後にいらっしたお子様二人を連れたご夫婦も、閉店間際にいろいろと注文なさって、亭主は調理と片付けをしながら、女将が対応をする。このゴールデンウィークからは、ご飯物のメニューをなくすことにしたので、炊飯器もご飯や味噌汁の器も片付けたのです。寂しくもあるけれど、コロナ禍を乗り切るための工夫の一つです。

 終わってみれば、それほど忙しかったという気もしないから、少しは混んだ状態に慣れてきたのかも知れない。ご飯物のメニューを削った新しいメニューを、昨日の夜に完成したのに印刷をしようと思ったら、プリンターのインクがなくなっていたので、今日は駅前の量販店に行って買い求めて来た。休日だから、今日はニュースもなくてスポーツ番組ばかり。水泳の大会もやっていたけれど、プールを休んでいる亭主は、今ひとつ興味がそそられないのでした。

 昼食は食べる暇がなかったから、家に帰って女将に餅を焼いてもらって食べても、何処に入ったのか分からない。心待ちにしていた夕食は、ホウレン草と豚肉のロースの薄切りで常夜鍋。用意が出来るまで、亭主は筍の若竹煮と烏賊の辛子明太子で一献なのです。もう直ぐ大相撲も始まると言うから、また楽しみが増える。沈没した遊覧船が発見されたのも好いニュースだった。風呂上がりに体重を量ったら、昨日よりも1㎏も減っていたから嬉しかったのです。

4月30日 土曜日 早いもので今日で4月も終わり …

 夕べも10時前には床に就いたので、今朝も5時前には目が覚めてしまう。目覚めの珈琲も飲まずに、車で蕎麦屋まで出掛ける亭主。昨日は蕎麦が全部売り切れてしまったから、今日はどうしても二回蕎麦を打たなければならなかったのです。いつもの時間では、開店時刻に間に合わないから、朝飯前のひと仕事で、まずは一回目の蕎麦打ちを終えてしまおうと考えたのです。小鉢もほとんどなくなっていたから、浅漬けを漬けておけば好いと思った。

 蕎麦屋の厨房に入って、カウンターに干した昨日の洗い物を片付けながら、お湯を沸かして珈琲を入れたら、まずはしっかりと目を覚ますのです。5時過ぎにはもう朝日が昇ってくる。森のだいぶ北寄りに太陽が出てくるのは、季節が夏に向かっている証拠。店内の気温は14℃といつもより寒いくらいなので、エアコンを入れて暖めておく。次に蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始める。加水率はぴったり42%と、絶妙な硬さで8人分の蕎麦を仕上げました。

 再び厨房に戻り、キュウリ、ナス、カブ、ラディッシュを少し薄めにスライスして、ビニールの袋に入れたら浅漬けの素に漬けておく。最後に野蕗のキンピラを全部小鉢に盛り付け、時計を見ればもう直ぐ7時になるところでした。急いで家に帰れば、女将が台所で朝食の用意をしてくれていた。今日のおかずは鯖の塩焼き半分と、蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやの卵とじ。筍ご飯も今日が最後らしい。昨日持ち帰ったお新香のラディッシュが紅一点。

 女将の朝ドラが終わる頃に家を出て、蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終え、浅漬けが漬けすぎにならないうちに、取り出して小鉢に盛り付ける。ぬか漬けにした方が、ラディッシュの赤い色が綺麗に出るのが分かった。最近は、子どもの頃からぬか漬けを食べてこなかったような人も多いから、お客に出すのには簡単な浅漬けの方が無難なのですが、亭主はどうも添加物の匂いが気に入らない。これも時代なのでしょうか。年配の女性などはぬか漬けを褒めてくれる。

 そして、いよいよ本日二回目の蕎麦打ちにかかるのです。天気が好ければお客が入るかも知れないと、もう一度、八人分を打とうかとも考えたけれど、連休だから天気が好ければ何処かに出掛ける人も多いかと、悩んでしまう。明日は下り坂の天候と言うから、残ってしまうとまた困るという悪循環に陥るのです。結局、間を取って600g 六人分を打ち、早朝の分と分けて二箱の生舟に入れるのでした。加水が好かったから、今日は綺麗に蕎麦が仕上がった。

 天気が好いのに、昼まではお客がないので、やはり皆さんお出かけなのかと、女将と二人で暇をもてあます。昼過ぎから、やっとお客が入り始めて、満席の看板を出して対応する。この間、女性三人でいらっしたと言うお客は、今日はご主人らしき男性と二人でいらっしゃる。歩いていらっしてカウンターに座った年輩のご夫婦は、結婚50周年だと言うので、ご主人が日本酒を頼まれて、ゆっくりと話をして行かれた。野蕗のキンピラが好評なのでした。 

 昨日よりはお客の数は少なかったけれど、カウンターを夾んでゆっくりとお客と話が出来るのもまた一興。隠居仕事の蕎麦屋ならではの楽しみなのです。「今日で四月も終わりですね」と亭主が言えば、「早いわよねぇ」とお客が応える。晴れた天気は夕刻まで続いて、気温が少し下がってきたけれど、家に戻って亭主はこの間始めた木槿の剪定を終わらせる。この夏は花が少ないかも知れない。賄い蕎麦をぶっかけで食べたから、今日はゆっくりと午後の昼寝。

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2022年4月下旬

4月20日 水曜日 今日は朝から雨で気分も滅入るけれど …

 定休日の二日目だけれど、足の具合が少し良くなったので、今朝も朝飯前のひと仕事に出掛けました。あいにく朝から冷たい雨が降っていたけれど、蕎麦屋の前の畑にポピーが群生して、壮観な眺めなのでした。雨に濡れると花が閉じてしまうらしい。晴れた日にはもっと華々しく、きっと青空に好く映えるのでしょう。6時を過ぎていたから、大根とイカの煮付けと野蕗のキンピラの下準備に、米粒を入れて大根を茹で、板ずりをした蕗を茹でて皮を剥いておく。

 家に戻れば、女将が今年は何処かに消えたと言っていた十二単(ひとえ)が、金柑の木の周りに幾つも花を咲かせていました。名前の割には地味な花ですが、これも我が家の庭では、春の到来を告げる花の一つなのです。植えたままのチューリップが、早いものはもう花を終えて、ピンクの花だけがつぼみを膨らませていました。朝食には生鮭の塩麹漬けを焼いて、店で残った三ツ葉が悪くなるからと、ちくわ入りの卵とじが用意されていた。

 食事を終えて書斎でひと眠りを決め込んでいたら、スマホのアラームが鳴って起こされた。前のスタッフから電話で、また筍を持って来てくれると言うので、蕎麦屋に行っていますとお礼を言って、車で直ぐに向かうのでした。いつも悪いからと、今日は残った蕎麦と蕎麦汁をあらかじめ用意しておいたのです。大福に包むのに仕入れてあった苺を合わせて持たせたから、お袋様の分もお返しをしたかと安堵する。掘って皮を剥いて茹でて来るから大変なのです。

 早速、先端の部分を切り取って、急速冷凍にかける。先端が土の中にあるうちに掘ったばかりの筍だから、指で押したら崩れるくらいに柔らかい。店で売っているような大きな筍は、もう硬くて食べられないのです。残った部分は家に持ち帰り女将に預ける。季節とは言え、また筍づくしが続くので楽しみです。寝間着のジャージのままだったから、洗面と着替えを済ませてひと休みしたら、三度蕎麦屋に出掛ける亭主なのでした。定休日二日目の仕込みが始まる。

 胡麻油を引いたフライパンにニンジンから入れて、茹でた蓮根と油揚げを加え、最後に皮を剥いた野蕗を入れて炒めたら、出汁を入れて更に加熱。出汁醤油と砂糖を加えて汁気がなくなったところで火を止める。これで今週の小鉢の一品が出来上がり。彩りが好いので気に入った。次に出汁を沸かして出汁醤油と砂糖で味付けをしたら、下茹でをした大根を入れて弱火で沸かしておく。その間に烏賊を捌いて隠し包丁を入れたら、別の鍋で湯がいて大根に加える。

 二品目の小鉢の具材が出来上がったところで、鍋を洗って家に戻るのでした。昼は亭主が蕎麦屋から持ち帰った味見の小鉢と、冷凍してあるカルビ丼の具材をお湯で戻して、久し振りに食べるカルビ丼定食。蕎麦屋でのご飯物を止めると言っていながら、メニューの改訂がなかなか進まないので、食材を持ち帰ってしまおうと考えたのです。「たまには美味しいわね」と女将も満足そうな感想です。朝食後に眠れなかった分と、午後はゆっくりと昼寝の亭主。

 午後の仕込みは天麩羅の具材を切り分けて、お新香を糠味噌に漬けるだけだったけれど、煙草を買いがてら、女将が綺麗だわよと言っていたご近所の藤のお宅の前を通ってみた。毎年のことながら、見事な藤棚なのでした。今日は四度目の蕎麦屋に戻って、最後の仕込みをしていたら、玄関の扉を叩く音がして、お隣の奥さんが顔を出した。実家で長葱を持って来たので食べませんかと、泥葱を20本余りも袋に入れて来たのです。お返しには鴨肉を一本。有り難い。

 業者が今日は鴨肉を届ける予定だったから、残った一本だったけれど、今日は何故かもらい物の多い日なのでした。女将もスポーツクラブがお休みだったからと、夕飯には筍づくしで、若竹煮と筍の梅煮に筍の茶碗蒸し、そして筍ご飯と旬を満喫することになりました。卵以外にタンパク質がないからと、焼きちくわが付いたのもまた好かった。芽が出たばかりの木の芽が薫って香ばしいのです。明日は暖かいけれど天気は好くないとかで、また逡巡する亭主です。

4月21日 木曜日 暖かくなってきたら …

 朝一番で南側のミニ菜園を覗いたら、思った通りタラの木やコゴミはもうすっかり葉を伸ばしていました。お客も少ないから、店で使い切れないのに欲張っても仕方がないと、今年はもう採るのを止めてしまったのです。今朝は糠漬けを取り出しに朝飯前の一仕事。糠床にミョウバンを敷いて色止めをしたナスは、綺麗な色を出していたので嬉しい。今回は初めてラディッシュを漬けてみたのが成功でした。カブと似た食感だけれど、ちょっと赤い色があると好い。

 昨日作っておいた野蕗のキンピラと烏賊と大根の煮物も小鉢に盛り付けて、今日明日の小鉢はこれで十分なのです。6時前から蕎麦屋に来ているのに、あまりすることもなかったので、今朝は早めに家に戻るのでした。玄関前の馬酔木の木が赤い新芽を沢山出して、穀雨の終わった時期なのを痛感する亭主。隣の畑に群がって飛んでくる椋鳥も、随分と身体が大きくなっているのでした。自然のその勢いが羨ましいと思う自分が、何か小さな存在に見える。

 みずき通りを渡れば、今朝は曇り空だったけれど、白いハナミズキノの花がずっと向こうまで咲いているのが見えた。気温は上がると言うけれど、この天気ではどうも怪しい。定休日明けは、蕎麦を打つにもコロナ禍以降、750g8人分で足りなかったことがないから、今日も同じ数を打てば好いだろうと考えながら家に着く。もっと以前は二回打って16食を用意していたものです。今は細々と毎日打つということの繰り返し。仕入れも減らして持久戦なのです。

 それでも、蕎麦打ちは腕前を上げるという目標があるから、食事を終えて、今朝も食後のひと眠りをせずにまた蕎麦屋に出掛ける。そして、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのです。コロナ以前の半分の量だから、じっくりと気合いを入れて向き合うことが出来るというもの。半ば現実逃避的な側面もあるのかも知れませんが、もっと前向きに、今が腕を磨く機会だと思うようにしているのです。加水率43%では、今はもう、少し水分が多いのかも知れない。

 太さも均等に切りべら26本で132~135gで包丁を打てば、8人分と80gほどの蕎麦が取れる。最後の80gは切りにくいから、いつも端切れにして賄い蕎麦で食べていたのだけれど、最近は綺麗に最後まで包丁を打って大盛り用に使っているのです。これもコロナ禍で学んだ節約術なのかも知れない。蕎麦打ちを終えたら厨房に戻って、薬味の葱を刻み、大根と生姜をおろして、苺大福を包む。今週仕入れた苺はもう小さな粒がなかったので、自ずと大きな大福になる。

 野菜サラダの具材を刻み、ポットに大釜で沸かした湯を入れ、天麩羅油と天つゆを温めて準備完了。店内の掃除をするのが11時過ぎで、今日は若いカップルが向かいの地区の道をぶらぶらと歩いて来るのが見えた。蕎麦屋の看板を見ながら、なかなか店内に入らないので、もう次のお客が車でいらっしゃる。お茶をお出しして注文を待てば、若い二人はおろし蕎麦と天せいろ。年配の女性と娘さんらしき女性はヘルシーランチセット。「順番にお造りしますから…」

 時折、陽は差すけれど今日はやはり曇り空。それでも暖かいから暖房も入れずに窓は半分開けてある。「ここのお蕎麦は美味しいわねぇ」と近隣の蕎麦屋でも蕎麦を食べているという年配の女性が、蕎麦湯を飲みながら満足そうにおっしゃる。若いカップルも「美味しかった」と言ってくれた。皆さん初めてのお客なのでした。
 洗い物を片付けてテーブルを拭いたところで、後半のお客がご来店で、「静かで景色も好くて好いところね」とおっしゃる年配の女性が、天せいろを食べ終えて「ああ、お腹いっぱい。美味しかったわ」と言う。その後も三人連れのお客が車でいらっしたけれど、二人分しか蕎麦がないと伝えたら「また今度来ますね」と言って帰られたのでした。穀雨の後は人間もまた元気になるのだろうか。

4月22日 金曜日 初めてクーラーのスイッチを入れて …

 足の具合が良くなったからと、夕べはちょっと酒量が多かったので、今朝は8時間の睡眠から目覚めて、食後に蕎麦屋へ出掛ける亭主なのでした。天気予報通りで暖かな朝だったけれど、まだ曇り空なのです。駐車場の植え込みも新芽を伸ばして、手入れが追いつかない状態。東側のミニ菜園も植えたままだから、辛味大根などはもう花を咲かせている。野菜サラダに使っていたベビーリーフはもうとっくに大人に成長しているのでした。

 植木鉢に植えた実生のモミジは、今年も葉を伸ばしているから楽しみ。植えっぱなしの絹さやも、少し添え木をしたら次々に実を付けて、何度か収穫をしたのでした。朝の仕事を終えたら、厨房に入って、まずは蕎麦汁を徳利に詰めておく。コンスタントにお客が入ると、一番最初に蕎麦汁がなくなるのが道理で、今日は夕刻にまた新しい出汁を取っておかなくてはならないかも知れない。暖かくなると、コロナ禍以前の過去の経験が蘇ってくるのです。

 9時前には蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始める。室温は20℃もあるから、今日は43%弱の加水で蕎麦粉を捏ね始めたのですが、それでもまだ生地は若干柔らかめでした。無事に菊練りを済ませて蕎麦玉をビニル袋に入れて寝かせておく。厨房に戻って葱切りと大根おろしを済ませて、再び蕎麦打ち室に入れば、丸出し、四つ出しを終えて本伸しまで進む。右上の端の部分だけが修正できなかったけれど、均等な厚味で八つに畳んだら包丁打ちです。

 無事に8人分と70gの端切れを打ち終えて、厨房に戻れば苺大福を包む作業が待っている。大きな苺だから、今日も熱々の求肥は一つ当たり80gの計算で包んでいくのでした。次はいよいよ野菜サラダの具材を刻むのですが、その前に、昨日は天麩羅が随分と出たから、天麩羅の具材が切れたので、カボチャのスライスをしたら、生椎茸の飾り切りをして四等分に切ったナスに切れ目を入れる。小鍋にお湯を沸かして塩を入れ、ブロッコリーとアスパラを茹でる。

 平日だから三皿にサラダを盛り付け、天麩羅の具材と天ぷら粉を冷蔵庫から取り出して、天麩羅鍋に油を入れ、天つゆを温めたら、もう11時なのでした。ポットに大釜の湯を入れて、店の掃除をしたらいよいよ準備完了。開店の時刻の10分前には暖簾を出して、お客を待つ態勢が整うのでした。外は相当に暖かくなっているらしく、窓を開けていてもまだ暑い。長袖を脱いで店の半袖シャツを着た亭主も汗ばむほどで、クーラーを入れて22℃まで温度を下げる。

 それでも厨房の中の温度は24℃になっていたのです。開店の時刻の10分前に暖簾を出せば、ちょうど開店の時刻に女性二人のお客がいらっしゃる。天せいろととろろ蕎麦の注文を受けて、調理し始めたらもう次のお客がテーブルに座るのでした。若い女性の二人連れだったから、「ちょっとお待ち下さいね」と、天麩羅を揚げていたからしばらくお茶を待ってもらった。お客も亭主が一人で接客をしているのを見て、かなり好意的なのでした。

 すると、駐車場に見慣れた車が滑り込んで、車三台でもう満杯。隣町の常連さんがカウンターに座っていつものご注文なのでした。お茶は出したけれど、三組目までは手が回らない。カウンターの野菜サラダを自分で取って食べると言うから、ドレッシングだけは手渡すのでした。最初のとろろ蕎麦のお客がキスの天麩羅の追加を頼まれたので、蓮根と筍とタラの芽とコゴミを揚げてお出しする。二組目は天せいろだったから、やはり同じサービス。

 やっとカウンターの常連さんに料理を出し終えた頃に、四人で入れるかと女性が玄関を開ける。駐車場も一杯だし、店内も見れば分かるけれど四人分の席はない。「ご免なさい」とお断りした。女性客が多いから、直ぐには席が空きそうになかったのです。狭い店では昼時の混雑を凌ぐ術はない。慣れたお客は時間を見計らっていらっしゃるけれど、常連さん以外は皆さん初めての方らしかった。蕎麦は沢山用意したのに、昨日に続いて残念なことなのでした。

4月23日 土曜日 これが初夏の暑さなのか …

 霧の濃い朝でした。家の中は18℃もあるのに、何故か少しひんやりとして、ジャージの上着を羽織らなければいけませんでした。夕べは半袖を着て眠ったから、身体が冷えたのかも知れません。朝の6時になったら家を出て、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛ける亭主。足の具合がだいぶ好くなったので、ゆっくりと歩いて行ったのですが、蕎麦屋の前の畑にも霧が出ているのでした。米を研いで炊飯器にかけ、糠床からお新香を取り出して、小鉢に盛り付ける。

 みずき通りの角のお宅に、モッコウバラがとても綺麗に咲いていました。駅前の高層マンションも霧に煙っているのでした。霧の深い日は晴れるというけれど、青空はまだ見えないし、天気予報でも昼からしか太陽のマークは出ていない。気温は高くなりそうだし、風もない一日らしいので、お客が来ても大丈夫なように、今日は少し蕎麦を沢山用意しておこうかと考える。昨日、一昨日と、最後のお客をお断りしたから、その反省なのです。

 ゆっくりと歩いて家に帰ればもう朝食の時間。今朝は縞ホッケがメインで最後の筍ご飯なのだと言う。最近の魚類はどれも塩味が薄くなっているらしく、女将も食べやすいと喜んでいました。食後は例によって書斎で横になって20分ほど微睡むのです。これで頭がすっきりとして、洗面と着替えを済ませれば、しっかりと目覚めるから不思議です。女将の朝ドラが終わる頃を見計らって、「行って来ます」と言って玄関を出る亭主。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、9時前には蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打ちます。加水率43%なのに、やはりまだ生地が柔らかい気がする。もうそろそろ42%にした方が好いのかも知れない。蕎麦玉を寝かせいてる間に、厨房に戻って葱切りを済ませ、再び蕎麦打ち室に入って伸しを始める。今朝も綺麗に正円に丸出しを終えて、順調に蕎麦は仕上がっていく。生地が柔らかい分だけ、どうしても包丁切りで切りむらが出来るような気がするのでした。

 昨日出なかった苺大福は、今日までお客に出すことにして、三日目で少し硬くなったものは、女将に家へ持って帰ってもらった。野菜サラダは週末だからと四皿盛り付けておきました。この時点ではまだ外が晴れていなかったから、残ったらどうやって家で処理しようかと心配するのでした。暑くなったから、鰹の皿鉢料理でも食べたいなどと女将と話していたのですが、蕎麦屋の残り物が出るうちは、なかなかそうも言っていられないのです。

 外はしだいに暖かくなって、窓を開けていても店内は22℃もあるのでした。次第に陽も差して少しずつ青空も見えるのですが、暖簾を出して1時間経っても、お客の来る気配はないのです。前の通りを走る車の数は多いのに、昼に蕎麦を食べたい人ばかりではないからと、女将と二人でお客の来ない理由をあれこれ思う。結局、天気が好くなったのでお出かけなのかということで落ち着いた。開店前にガラス窓を叩いて開店の時間を聞いた小母さんも姿を見せない。

 亭主が一服しようと奥の部屋に入ったところで、「お客さんですよ」と女将が呼ぶ声がした。中年のご夫婦がテーブル席に座って、ヘルシーランチセットのご注文なのでした。ご主人はお蕎麦大盛りに大根おろしをご所望でした。野菜サラダのドレッシングが美味しいとご主人が言えば、キャベツが細く切ってあるのが好いと奥さん。蕎麦粉を溶いて作っている蕎麦湯が、とても美味しいと何杯も飲んでいた。何気ない会話がゆったりとした午後のひとときを満たす。

 結局、野菜サラダが半分残って、夜は亭主がお好み焼きを作ることになる。少なめの小麦粉に卵と水を入れて攪拌したら、まず肉を焼いて生地をフライパン一杯に流し込む。その上に野菜サラダのキャベツやニンジンのジュリエンヌ、パプリカ、赤玉葱を載せて蓋をすれば、二三分で出来上がりだからとても簡単なのです。油も少しにしているし、全体の量が少ないのに、食べ終わるとお腹が一杯になるから不思議なのです。野菜がたっぷり入っているからか。

4月24日 日曜日 午後からは雨 だったけれど…

 昨夜はぐっすりと眠って、起き出せばもう朝のご飯の時間なのでした。朝食にベーコンエッグが出てくると、我が家の冷蔵庫が空になったのが分かる。先週は亭主の通風を気にしてか、女将が肉を買わなかったらしい。亭主がプールで泳がない分、カロリーを減らさないと内臓脂肪は減らないというのが彼女の考えで、最近は亭主も納得しているのです。不思議なことに、少量の朝食でもうお腹が苦しくなるから、慣れというのは好いのか悪いのか。

 洗面と着替えを済ませて、珈琲を一杯飲んだら、いつものように朝ドラの時間に家を出る。今日は日曜日だから女将の見ている朝ドラはないのだけれど、同じ時間に家を出るのが、やはり生活習慣というものなのでしょう。ご近所の駐車場に、八重桜の花吹雪が散り集まって見事でした。このお宅の奥さんがいつもこの場所を掃いているのを見かけるけれど、この量では掃除が大変でしょう。ゆっくり歩いて蕎麦屋に着けば、前の休耕地に生えたポピーの花があまりにも沢山だったから、思わずカメラを向けたのです。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、まずは蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。お客の少なかった昨日の蕎麦が随分と残っていたので、今日は500g5人分だけを打つことにしました。曇り空で午後からは雨という予報だったけれど、日曜日を馬鹿にしては行けないと言うのが亭主の考え。朝から暖かいから、車のお客は来るかも知れないと思ったのです。加水率を42%まで落として蕎麦粉を捏ねれば、イメージどおりのコシのある生地が出来上がる。

 蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻ってひと仕事を終えたら、再び蕎麦打ち室に入って伸しにかかる。500gの蕎麦は奥行きはいつもと同じ90cmだけれど、幅が50cmと狭いから、伸した生地を横にしてから本伸しに入るという手間を省いて、そのまま本伸しに入るので時間も短縮されるのです。上半分の部分に打ち粉を打って、下から上に畳んでいきます。それをまた、打ち粉を打ちながら、右から左に、下から上に八つに畳んだらいよいよ包丁打ちなのです。

 切りべら26本で135gの束を五つ取ってもまだ余るから、端切れの80gほどを昨日の大盛りで使った残り半分と合わせて、亭主の食べる賄い蕎麦の分を確保しておきます。やはりこの時期はもう、加水率は42%が好いと確信しました。室温は20℃を越え、湿度も58%はあるから、天候にはかかわらず、季節はいよいよ夏に向かっているようなのです。女将が来て店の掃除を始めてくれる。亭主は厨房に戻って苺大福を包み始めるのです。

 白玉粉を四皿分の80g計量して、氷糖蜜と水を加えて溶けるのを待つ間に、苺や片栗粉、白餡を用意したのは好いけれど、白餡が残り少ないのに初めて気が付いた。こんな時は、求肥が四皿分出来てしまうから、白餡の足りない分は漉し餡を包んで、普通の大福を作ることにしている。黒い漉し餡で苺を包むのは亭主のイメージとは違うのです。食べて仕舞えば一緒かも知れないけれど、色のバランスというものがあるように思えるのです。

 大根と生姜をおろして野菜サラダの具材を刻めば、蕎麦打ちの時間が短かったから、いつもより早い時間に開店の準備が整うのでした。11時を過ぎた頃に、ちょうど車が駐車場に入ってきたから、暖簾を出して中で待ってもらえば、ちょうど女将もやって来て、お茶をお出し出来た。待ち合わせをしていたのだけれど、あとの二人が遅れると言うのです。可哀想に最初にいらっした女性は、ヘルシーランチセットを三人分注文されたまま、40分以上も待っていた。

 遅れていらっした二人の女性はリピーターの方で、予約が出来ないというので、初めての女性を先に来させたらしい。次のお客が入って、こちらはいつもコミュニティーバスの窓から、蕎麦屋を眺めていたとおっしゃる。ご夫婦で天せいろを頼まれて、お新香も美味しいし、お蕎麦も蕎麦湯も美味しいとおっしゃって、ゆっくりと食べていかれた。駐車場が満杯になった三組目のご夫婦は、天せいろとカルビ丼とせいろ蕎麦のセットのご注文。雨が降り出した。

4月25日 月曜日 初夏の暑さを思い出す晴れた一日 …

 朝の7時。駅前のスカイプラザがくっきりと見える。向こうの丘の木々も色濃く、ご近所の庭の木も新緑の葉を広げています。書斎の窓から見える景色は、すっかり夏の装いなのでした。女将の用意してくれる朝食を食べ終えたらまたひと眠りして、今日はなかなか家を出られなかった。それでも洗面と着替えを済ませ、のんびりと蕎麦屋まで歩いて出掛けたのです。澄み渡る青空と木々の緑がもう夏の気配だから、ポピー畑で今朝も写真を撮った。

 昨日の蕎麦が生舟に沢山残っていたから、今朝は蕎麦を打とうかどうかと随分と悩んでいました。どんなに天気が好くても、平日の月曜日だから、日曜日のお客の数を越えることはないだろうと、意を決したのは9時過ぎ。本当に久し振りで、蕎麦を打たない朝となりました。数を減らしながらも、毎日蕎麦を打つという方法が、土曜日のお客の入りが平日よりも悪かったので、通用しなかったのが原因でした。まさか、そこまでは読めなかったのです。

 天気が好いのに蕎麦を打てない日は気持ちが塞ぐ。厨房の椅子にす座って、じっくりと次は何をしようかと考えるのです。苺のへたの部分を切り落として、白餡で苺をくるんだら、白玉粉を氷糖蜜と水とに溶かしておいた鍋に火を入れて求肥を作る。蕎麦豆腐と同じで、これも途中で止められない作業です。十分に水分が飛んだところで鍋を布巾に降ろし、更にお玉で練り込んでいくと、白い求肥が出来上がる。熱々だから手に片栗粉をつけて素早く包んでいく。

 大根をおろして葱を刻み、野菜サラダのブロッコリーとアスパラを茹でて水に浸ける。まだ時間が早かったから、レタスを洗ったところでひと休み。包丁を使う前には意識を集中させないといけないのです。先日の「キャベツが細いのが美味しい」というお客の言葉を思い出しながら、芯に近い部分のキャベツの葉を丸めて、包丁の切っ先で刻んでいく。今週は包丁を研いでおいて好かった。アーリレッドを刻んだところで、盛り付けを始め、残る野菜を刻む。

 外は雲一つない青空が広がり、風もなく幟の文字がくっきりと読める。昼過ぎに続けてお客がいらっして、カウンターに座った親父様が「BGMはご主人の好みかい?」と聞く。小野リサのボサノバが流れていたのでした。ラテンミュージックが好きなのだとか。続いていらっしたご夫婦は、ヘルシーランチのご注文で、デザートにお出しした苺大福が白餡で包んであるのに驚いていた。巷の苺大福が黒餡なのは、餡を作る手間を省いているからではないかと思った。その昔、夢中になって読んだスタンダールの『Le Rouge et le Noir』ではあるまいし、色のバランスからしても白餡の方が優れているし、砂糖の入った既製の黒餡は甘さがしつこいと感じるのです。

 お客が来なくなったら、残った蕎麦を茹でて賄い蕎麦を食べておく亭主。それでも暇だから、東側のミニ菜園に出て絹さやを収穫する。もう何回も家に持ち帰って女将に手渡したのです。何の手入れもしていないから、目が慣れるまで何処に実があるのか見分けにくい。ラストオーダーの時間を過ぎところで、暖簾と幟と看板をしまって、明日の定休日を前に家に持ち帰る食材を吟味する。天麩羅の具材は油も古くなったから、全部揚げて夜のおかずとなりました。

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2022年4月中旬

4月12日 火曜日 とにかく陽射しが熱い …

 朝のうちは室内は19℃で、暖かいはずなのにまだ半袖を着る勇気が出ないけれど、外に出ると陽射しは熱く、これはもう五月の陽気なのです。定休日が始まると、早速、先週の蕎麦屋の残り物の処理が始まり、今朝は小鉢三種類と三ツ葉の卵とじでご飯を食べます。ナスの色止めがよく効いて、三日経っても色が変わらないから、これは成功だった。ミョウバンを茄子の皮にこすりつけるより、糠床に敷いて皮の面をおいた方が効果的なのが分かった。

 今朝は仕入れに行くのに、いろいろ確認しなければならなかったから、新しくなったと言う女将の朝ドラの前に玄関を出て蕎麦屋に向かう。庭の釣鐘水仙も花が多くなって、木槿の新芽もどんどん伸びて来ている。女将が「少し切ったら」と言うけれど、木槿の剪定は冬場だから、新芽の出るこの時期には眺めているほかはない。出過ぎた枝を払うくらいがせいぜいなのです。あまり手入れもしないけれど亭主の大好きな夏に綺麗な花を咲かせてくれるのです。

 先週は随分と暖かくなったから、寒い時期よりはお客が入ったけれど、お客が増えれば食材も早くなくなるので、蕎麦粉の発注を掛けなければならないし、天麩羅の海老や天ぷら粉も頼んでおかなくてはならない。どれを優先するかを見極め、先週の売り上げで間に合う範囲で注文をするのです。そして、今朝の仕入れ分の費用を差し引いたら、今週もまた預金は出来そうにないと悔しがる。毎週のように銀行に預金の出来た以前とはやはり違うのです。

 厨房の片付けを終えてミニ菜園に出れば、植えたままで手入れもしていない絹さやがもう実を付けているではありませんか。南側の庭に出れば、草刈りも間に合わぬのに、もうコゴミの群生が葉を広げているのです。二日前に採ったばかりなのに、やはり間に合わない。タラの木の先端を眺めれば一目瞭然。摘んでも摘んでも新しい芽が伸びてくるから、そろそろ降参。天麩羅に使い切れないほどのコゴミやタラの芽が冷蔵庫に溜まっているのです。

 辛味大根のスペースでは、もう花が咲いているから、試しに茎を引き抜いてみたけれど、やはり、間引きをしなかったので根は大きくなっていない。蕎麦粉を頼んでいる農場に電話をして聴いてみたけれど、辛味大根はもう終わりの季節なのだと言う。いま冷蔵庫に残っている分だけで、もう終わりなのです。後、四人分ぐらいか。もっと丁寧に育てておけば好かった。寒い時期に色々するのが面倒で手入れをしなかったから、天罰覿面なのでした。

 お袋様を迎えに行って、農産物直売所に出掛ければ、今日は珍しく車が沢山停まって、お客が多いのでした。いつもの農家のトマトを買って、蕎麦屋の常連さんの農家からはラディッシュをもらう。以前は店のミニ菜園でも育てていたけれど、野菜サラダにスライスして添えるだけだから、沢山取れすぎても使い道がないのです。隣町のスーパーに行って、印刷したメモの食材をすべて仕入れたら、後は女将に頼まれた魚類と果物を買って蕎麦屋に戻るのでした。

 買い込んで来た食材を冷蔵庫にしまって、洗濯機の中の洗濯物を干したらもう10時半を回っていました。家に戻って書斎のパソコンに向かい、仕入れと午前中の写真の入力を済ませたら、台所に入って蕎麦を茹でる準備をする。気温はどんどん上がっているらしく、家の中でも長袖を着ていられないほどの暑さなのでした。買い物から帰った女将も、汗びっしょりだと言っていた。亭主が蕎麦を茹でている間に、女将が天麩羅を焼き、ヤリイカを茹でてくれる。 

 大盛りの蕎麦を食べた亭主はもうすぐに眠くなる。女将のスポーツクラブの予約までには二時間ほどあったから、書斎に入って小一時間は熟睡したのです。女将は稽古場で黙々と書を書いている。亭主は3時過ぎに重い腰を上げて蕎麦屋に出掛け、返しを仕込んでおくのでした。木曜日の午前中着で蕎麦粉の発注は済ませたし、昼前に注文した天ぷら粉と海老と山葵は明日の夕刻に届けられる。煮物の作業は明日に回して、今日のところはこれでお終い。

4月13日 水曜日 定休日二日目の朝は …

 夕べは今日もお休みだからと少し遅くまで映画を観たけれど、やはり眠くなって11時過ぎには床に就いたのです。朝はゆっくり眠っていたいと思うけれど、これも習慣で5時過ぎには目が覚めてしまう。日の出は早いから、梅干しを食べながらお茶を飲んでも、朝食の時間にはまだまだ時間があるのでした。散歩でもして身体を動かそうかとも考えるけれど、通風の右足の親指はまだ痛むから、如何ともし難い。仕方なく蕎麦屋まで朝飯前のひと仕事に出掛ける。

 仕事ならばと少しの痛みは我慢しなくてはいけないから、歩いてみずき通りを渡れば、空は霞んで春らしく、並木の新緑も優しくてみずきの花も咲き始めているのでした。蕎麦屋の向かいにある休耕地の菜の花はまだ枯れずに、その奥では森の木々が薄緑色に輝いている。何羽もの燕が飛び交って、巣作りの準備なのだろうか。やり出せば切りが無いほど仕事はあるのですが、明日の営業のためにはそれほどやることはないと店に着けば、室温19℃と今朝も暖かい。

 昨日作った返しの鍋がそのままになっていたから、甕に移して鍋を洗う。残っていた返しと先週の出汁で、今週の天つゆを作っておきます。来てみればやはりやることはあるのかと、珈琲を入れて飲みながら今日の段取りをあれこれと考える亭主。夕刻には業者が食材を届けに来るから、ぬか漬けのお新香はその時に漬ければ好い。洗い物をして家に持ち帰るものを確認したら、さっき来た道を引き返すのです。家の近くの公園の木々も新緑が眩しいほどでした。

 定休日だからと女将の朝食の用意もゆっくりで、亭主が玄関に入ったのを確認してから、魚を焼き始めたらしい。蕎麦屋のミニ菜園で採れた春菊を胡麻和えにして、今朝も小鉢が三鉢、骨を取ってある鯖の塩焼きがメインのおかず。脂が乗って美味しい身をほぐしながら、のんびりとお休みの日の朝食を味わうのです。食後のお茶は居間の椅子に座ってBSのニュースを観ながら飲む。世界のトップニュースはやはりウクライナ情勢で、伝え方も日本より強い調子。

 洗面を済ませて着替えようかと思っていたら、元のスタッフから電話が入り、また筍を掘ったから店に届けるというのでした。まだ八時半だったけれど、ひと眠りする暇もなく、車を出して蕎麦屋まで出掛ける。時期に自転車に乗った彼女が現れて、今日はお袋様の分もと、随分沢山の筍を持って来てくれたのです。すべて皮を剥いて湯がいてくれてあるから、本当に手間のかかること。丁重にお礼を言って、早速、お袋様に電話を掛けるのでした。 

 お袋様のところにいただいた筍を届けたら、今度は蕎麦屋に戻って店で使う分を処理する亭主。筍の先端部分を7cmほど切り取ったら、円錐形を縦に6等分して、ラップを敷いたステンレスのバットに並べ、上からもラップを掛けて急速冷凍をかけておくのです。使う分だけ解凍すれば、来週いっぱいの天麩羅の具材になる。ドウダンの花が咲き始めたご近所の景色を眺めながら、家に戻って女将に筍を渡す。ちょうど昆布と大豆を煮終えたところのようでした。

 ひと眠りする暇がなかった朝だから、9時近くだというのに書斎で横になってやはりひと眠り。目が覚めても頭がぼうっとしているから、とうとう午前中には仕込みに出掛けられなかった。昼は亭主が焼きうどんを作って野菜サラダの残りを食べ尽くす。最近は青海苔と紅生姜を買いそろえてあるから、女将もなかなかやりますね。11時半に女将のスポーツクラブの予約があるから、亭主は急いで昼食を終え、パソコンの前で時計の秒針と睨めっこなのです。

 午後は女将が買い物から帰るのを待って蕎麦屋に出掛けるのでした。終わっていない仕込みは沢山あったから、次から次と仕込みを続けるのです。白餡を煮詰めながら蓮根を湯がいて、小松菜を茹でたら天麩羅の具材を切り分ける。使った道具をすべて洗い終わったところで、切り干し大根の具材を切り、ごま油で炒めて出汁で煮たら出汁醤油と砂糖で味付けをする。最後に明日のお新香を漬けて、業者が来るのを待つのでした。明朝はまた出汁を取らなければ…。

4月14日 木曜日 暗い朝、寒い一日 …

 今朝も5時半に家を出て、朝飯前のひと仕事です。定休日のうちに終わらなかった出汁取りをしたら、お新香を糠床から出して切り分け、小鉢に盛り付けておきます。そして、昨日仕込んだ切り干し大根の煮物も小鉢に盛っておく。これで一時間余りがすぐに過ぎてしまうから、朝から忙しいのです。夕べは通風の足の調子もだいぶ好かったのに、朝になったらズキズキと痛むから、わずか300mの蕎麦屋までの距離を車で移動したのでした。

 痛くないときは酒を飲むからコレが行けないのか。ライムを入れたり梅干しを入れたり、アルカリ性にして強炭酸で薄めた焼酎を飲んでいるから、眠る時まで痛みを感じないのです。でも、これは夕食後に服用している痛み止めが効いているからかも知れない。試しに飲まないでみようかとも思うのだけれど、夕食は早い時間で夜は長いから、どうしても割きイカや枝豆などをちょっと肴を当てにして、テレビを見ながら寝酒を飲んでしまうのです。

 家に戻れば今朝はいつもより寒いから、朝飯は鮭粥だったのが嬉しい。昨日のうちに、灯油を半分だけ買ってきたから、寒いと思ったらストーブを点けるようにしているのですが、実際には部屋の中は16℃とかで、直ぐに暑くなる。この微妙な寒暖差が難しい。今日は蕎麦粉が届く日だったから、早めに車で蕎麦屋に出掛けました。天気も悪いから、駐車場が一杯になるほどはお客は来ないだろうと考えたのです。蕎麦屋の店内は18℃あったから暖房は点けない。

 今朝は加水率43%弱にして蕎麦粉を捏ね始めたのですが、もうこの時期は44%ではやはり多すぎるようです。少し柔らかめの生地に仕上がって、今日も自然と薄く伸したから細めの仕上がりです。切りべら28本で135g の蕎麦を8束作って生舟の中に並べました。定休日明けはやることが多いから、蕎麦豆腐も朝のうちに作っておいた。大根と生姜をおろして、薬味葱を切り、苺大福を包んだら野菜サラダの具材を刻む。新しい油を天麩羅鍋に注いでおきます。

 早めに暖簾を出して営業を始めましたが、最初のお客が来たのはやはり昼過ぎで、皆さんお昼を食べる時間は決まっている。ヘルシーランチセットと天せいろの注文を受けて、苺大福を子供たちにも食べさせたいと、全部土産でお持ち帰りなのでした。天麩羅を揚げている間に、次のお客がいらっしてお茶をお出ししたら、男性客三人だから直ぐに注文が入ったので、これは相当に忙しい。三人がそれぞれ違うメニューで大盛りだから、蕎麦はすぐになくなった。

 1時過ぎには生舟の蕎麦が残り一つになったので、「お蕎麦売りきれ」の看板を出す。1時半近くにはお客も帰り、亭主は痛い足を引きずりながら洗い物と後片付けをするのでした。スポーツクラブから帰った女将が手伝いに来てくれた。車だったから帰りがけに郵便局に寄って、蕎麦粉の支払いを済ませておく。今日の売り上げがあったから今週も無事にすべての支払いが完了。夕食は一年ぶりに筍ご飯でした。鶏の胸肉の塩麹焼きもなかなかの味なのです。

4月15日 金曜日 冷たい雨の降る一日 …

 午前6時に雨の中を車で家を出て、朝飯前のひと仕事。金曜日はあまりすることもないのだけれど、居間の椅子に座って朝食まで一時間も待つのは健康に悪いと、痛い足を引きずりながら車に乗るのでした。来週の定休日には医者に行こうなどと、漠然とした期待を持ってはいるが、それまでに治まらないものかとも考えたりする。尿酸値の検査をして通院しなければならないし、痛み止めと尿酸を溶かす薬が出るだけだから、治まってくれるのが一番なのです。

 カウンターの洗い物を片付けて、昨日全部空になった大盛りの蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めたら、部屋干しの洗濯物を畳んでやろうかと奥の部屋に行くけれど、この天気だからまだ乾いていないのです。家に戻れば、女将が台所で食事の用意をしていたので、居間の椅子に座って天気予報を見る。今日は一日中雨らしく、市内は気温も揚がらないという予報。こんな日にも営業をしなければならないのが商売というものなのでしょう。まして蕎麦屋は寒い雨の日は辛い。

 筍の時期は、筍料理がしばらく続くのが嬉しいやら飽きて来るやら、今朝は縞ホッケの塩焼きが出たから美味しく食べたのです。食後に鎮痛剤とお茶を飲んで、時計を気にしながら書斎に入ってひと眠りする亭主。30分ほど微睡んだら頭がすっきりとして、その分、足の親指の痛みも増したような気がするのでした。洗面と着替えを済ませて、今朝もまた車に乗って出勤です。今朝は寒いから靴下を履いて雪駄を突っ掛けていたのです。 

 雨だから、看板を出したら隣に傘立てを置いて、幟はしばらく様子を見てから立てようと思った。まずはやはり蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日まで43%の加水とばかり思っていたのに、計算したら44%で打っていたから生地が柔らかかったと判明。今朝はしっかり43%で蕎麦粉を捏ね始めたら、これが好い塩梅なのでした。切りべら26本で135gの蕎麦を、今日も八人分生舟に並べて蕎麦打ちを終える。厨房に戻って昨日売り切れた苺大福を包んでおく。

 この時点では、冷たい雨だからお客は来ないなどと言うことは、もうどうでも好いのでした。葱切りをして大根をおろし、野菜サラダの具材を刻んで三皿に盛り付ける。いつもと同じことの繰り返しが大事なのだと自分に言って聞かせる亭主。小雨の中を幟を立て、昼になってもお客は来ないから、やっと乾いた洗濯物を畳んでおきます。賄い蕎麦でも食べておきたいところだけれど、天麩羅の油や蕎麦を茹でる大鍋が汚れると洗わなくてはならないのが嫌だった。

 こんな雨の中を昼を食べに来るのはやはり常連さんで、「寒い寒い」と言いながら1時過ぎにいらっして「今日は筍を食べたい」と言うから、筍の天麩羅にコゴミとタラの芽の天麩羅を添えて、せいろ蕎麦と辛味大根をお出ししたのです。しばらく話をして、珍しく今日は早めに帰られた。これで亭主もやっと昼飯が食べられると、コゴミとタラの芽の天麩羅に蓮根を揚げて、ぶっかけ蕎麦を食べれば、ほのかな苦味が堪らなく美味しいと感じられるのでした。

4月16日 土曜日 寒い朝だったけれど …

 通風の足の指の痛みは鎮痛剤の効き目が切れる朝方が酷く、朝飯前のひと仕事は車で蕎麦屋に出掛ける亭主。幟を立てて看板を出し終えたら、厨房に入って米を研いで炊飯器にかける。小鉢も足りなくなっているから、新しく盛り付けておくのです。それでも週末だから心配なので野菜の浅漬けを漬けておく。次に来た時には漬かっているだろうから、小鉢に盛れば好い。洗濯物はまだ乾いていないから、奥の座敷も暖房を入れておくのでした。

 寒い朝だったから、女将が気を利かせて今朝もしゃけ粥にしてくれた。身体が温まるから助かるのです。部屋の中は14℃と、じっとしているとやはり寒いので、ストーブを点けて暖を取る。しかし、以前とは違ってすぐに室温が上がってまた消さなければならない。足の指が痛いので椅子から立ち上がるのも億劫。早く一日二回の薬を飲んで、この痛みから解放されたいと思うのでした。ひと眠りして再び蕎麦屋に出掛ける時も車で行かなければならなかった。

 蕎麦打ち室に入って、今朝は500gだけ蕎麦を打ち足しておいた。加水率43%で、ちょうど好い硬さになった生地は、包丁を打つにもとても調子よく、切りべら26本で一人前135gの蕎麦を五人分。昨日の残りの蕎麦と合わせて12食の蕎麦を用意したのです。寒い日は、お客も少ないだろうと考えていた。最近は週末でも滅多に10人を越えないから、寂しいけれどコロナ禍の現実です。女将がやって来て洗濯物を畳んで、店の掃除をし始めたから、今日は助かる。

 早朝に浸けておいた浅漬けは、ナスとキュウリとカブとラディッシュ。少し薄めにスライスしてあるから、薄味でちょうど好い仕上がりでした。いつもなら夜のうちに糠味噌に漬けに来るのですが、今は足の指の痛みに耐えかねるから、背に腹は替えられない。味は悪くないのですが、昆布出汁を使用しているとは言え、添加物の味がどうしても気になるのです。若いお客などはお新香は残すけれどこの浅漬けは残さないから、添加物に馴染んでいるのかしら。

 薬味の葱を刻んで、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻み始めれば、そろそろ包丁を研がなくてはいけないと、切れ味の悪くなった包丁を騙し騙し使うのでした。痛み止めの薬が効いて来たのか、蕎麦打ちにしても野菜サラダにしても集中しているときには指の痛さを忘れているから不思議です。夕べ風呂上がりに体重計に乗って内臓脂肪を計ったら、これ以上はないくらいメーターが上がっていたから、夕食の後はほとんど物を食べずに過ごしたのです。

 少し日が差してきたから、もしかしてお客が入ったら困ると思って、乗ってきた車を家に置きに帰る。片道だけ歩けば好いから、ゆっくりと歩けば何とか痛みに耐えられると考えたのです。団地に接する農家の八重桜が見事に咲いていました。青空も覗いて気温もだいぶ上がってきた様子。燕があちこち飛び回って巣作りに忙しそうなのでした。こんなに好い陽気になったのに、気が晴れないのは自業自得と言おうか、コロナ禍でプールを休んでいるのも大きい。

 晴れた陽射しに向かいの森の新緑が眩しかった。朝が寒かったからか、お客の出足は遅く、昼過ぎからぽつりぽつりとお客が入ったのです。中には残っていた苺大福を全部お土産で持ち帰るお婆さんもいました。お爺さんにたべさせるのだとか。「今度は違う子どもと一緒に来ます」と言って、店置きのパンフレットを持って帰られたのです。それにしてもお客の少ない土曜日でした。夜の防犯パトロールは、責任者の方に電話をしてお休みさせていただいた。

4月17日 日曜日 お客の出足の遅い日曜日は …

 昨日よりも更に少し寒い朝だったから、今朝はシジミ粥にしてもらったのです。珍しく寝坊したと言う女将は好く眠れたらしく、ぐっすりと眠った亭主も朝食の遅れは気にしないから、のんびり出来る隠居生活は気楽なもの。困ったのは鎮痛剤の切れた朝方は、足の親指の具合が悪いことで、どうしても力が入るから何をするにも痛いのです。「10分かけて行くから大丈夫」と、わずか300mを足をひきずりながらゆっくりと歩くのです。

 さすがに日曜日だから駐車場は満杯になる可能性が高いのです。いつもと違って少しずつのろのろと歩くから、ご近所に咲く躑躅や芝桜の花に自然と目が行く。青い空に赤や紫の花々の色が映えて、幸せな気分になるのでした。二時間ほどしたら少しずつ薬が効いてくるらしく、歩けば痛いけれど我慢できないほどではなくなって、幟を立ててチェーンポールを降ろし、今朝の準備を始めるのです。蕎麦は幾つ打てば好いだろうかと逡巡する。

 昨日の蕎麦が生舟に七束も残っていたから、八人分を打ったらやはり多すぎるだろうし、五人分では足らないかも知れない。コロナ禍になってからというもの、値段の高い蕎麦粉も大切に扱っているから、残って自分で食べるのではもったいないと思うようになったのです。結局、600g 六人分を打って13人分なら大盛りが出ても大丈夫だろうと、蕎麦粉を計って水回しを始めました。足らなくなれば「売りきれ」にしても後ろめたくない数なのです。

 加水率は43%。生地はこのところ好い具合に硬く、足の指の痛みも忘れる程に集中しているのでした。蕎麦玉を作って寝かせいてる間に、厨房に戻って苺大福を包む。お土産で全部持ち帰ったお客がいた昨日のこともあったので、今日は六つ作って六皿も用意した。野菜サラダが四皿だから、単品で頼まれても、ちょうど好いかも知れないと考えたのでした。女将が来て店の掃除を始めてくれたので助かる。亭主は再び蕎麦打ち室に入って伸しにかかるのでした。

 両手で蕎麦玉を丸く広げていく地伸しを終えたら、伸し棒を使って更に正円に伸していくのが丸出しなのですが、これがまたなかなか難しい。左右の掌を同時に動かしながら、厚味を均等にしていかなければならないのです。ここで失敗すると、本伸しの前の四つ出しが上手くいかないし、修正するのにひと苦労する。足の指が痛いなどと言っていられないから、楽しくも緊張する時間です。本伸しまで終えて八つに畳んだら、いよいよ包丁打ち。

 500g では五人分取れるけれど、135g では少し端切れが大きくなるから、600g で六人分はちょうど好い分量なのでした。生舟に並べた13人分の蕎麦を冷蔵庫にしまって、厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、大釜の湯をポットに詰め、大根おろしをすっておくのです。早お昼を食べに帰った女将が戻り、亭主は天麩羅油と天つゆの鍋に火を点けて、いよいよ開店の準備が整う。10分前に暖簾を出せば、ちょうど開店の時刻に常連のご夫婦がいらっしたのでした。

 ご主人は相も変わらずカレーうどんとデザート。奥様は暖かくなったからか、鴨南蛮ではなく鴨せいろのご注文でした。昼前はもうひと組のご来店でしたが、今日は1時を過ぎてからが混み始めたから大忙しです。最後の若いカップルはカウンター席に座ってヘルシーランチセット。女将が「お蕎麦売り切れ」の看板を出す。「今日もとても美味しい」とカウンターの女性が言えば、テーブル席の奥さんが「大満足です」と言ってくれた。嬉しい日曜日でした。

4月18日 月曜日 新緑の前で只管打坐の境地 …

 足の親指の痛みは足首まで広がって、歩く度に激痛が走ったけれど、今朝も朝飯前のひと仕事に、車で蕎麦に出掛けた亭主でした。「今日は蕎麦屋をお休みにしたら」と女将は言うけれど、家にいても痛さは変わらないから、気晴らしになるというのが亭主の考え。昼の仕事が終わったら医者に行くことにしていたので、あと半日の我慢だと自分に言い聞かせて、ブレーキのペダルを踏むのにも足が痛いから、車の運転も慎重に無事に蕎麦屋まで辿り着く。

 お客で混んだ昨日の洗い物はカウンターの上に山積みになっていたから、まずは盆や蕎麦皿を片付けて、漆塗りのお椀や厚手のデザートの皿を戸棚にしまう。そして、冷蔵庫に残っているナスとキュウリとカブとラディッシュを取り出して、浅漬けの素に漬け込んでおくのです。家に戻れば、女将が台所に立って朝食の支度をしてくれていた。「筍ご飯はこれで終わりです」と言われ、ホッケとベーコンエッグなどをおかずにして朝食を済ませる。

 食後に飲む市販の鎮痛剤も最後になって、いよいよ医者に行かないと困る状況。薬が少し効いてきた頃にまた車で家を出て、弱く暖房を入れておいた店内に入れば、もう20℃になっていたので、エアコンを消して厨房に入る。浅漬けを取り出して小鉢に盛ったら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのでした。加水率は43%でいつものようにしっとりとした生地の仕上がり。蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻って、薬味の葱を刻み、大根をおろしておく。

 最近は、だいぶこの硬さに慣れて来たから、今朝も綺麗に丸出しや四つ出しを終えて、本伸しもスムーズに出来た。八つに畳んで包丁を打てば、一束135gの蕎麦が美味しそうに仕上がるのでした。昨日の残りの蕎麦と合わせて、今日は八人分の蕎麦を用意した。お客は来ても6人ぐらいが関の山だろうと読んでいた。外は晴れ間も覗いたのだけれど、昼に掛けてずっと曇りの予報。時折、小雨がぱらついて、夜はもう雨なのだそうな。

 野菜サラダを刻んで、天麩羅の油や天つゆを温め、足が痛いので歩き回ることも出来ずに、厨房とカウンターの椅子に長いこと座って、亭主は窓から見える景色を眺めていました。燕や雀や椋鳥たちが電線に止まっては飛び立っていくのを、じっと眺めては何を思うのでもなく、自分が新緑の春の風景に溶け込んでいくような気がするのです。前の通りを車は沢山通るけれど、たまに蕎麦屋を見ていく車があるくらいで、一台も駐車場には入って来なかった。

 混んだ週末の翌日は得てしてこんなものなのです。菜の花畑の手前、道路際の草の間に、今年もオレンジ色のポピーが沢山咲き始めた。隣の畑には主の植えたポピーが咲き始めている。その前に一列綠があるのは何の花なのだろうか。所々に紫の花が咲いているように見える。蕎麦屋との間の小径には、シロツメクサの群生がもの凄い勢いで広がって、花も咲き始めている。90歳を越えるお爺さんが畑をやらなくなったから、息子さんが管理しているのです。

 昼を過ぎてもお客は来ないから、空腹を覚えた亭主は、昼の賄い蕎麦を食べたいのだけれど、蕎麦を茹でる大釜もお客が来なければ洗わなくて済むと思うと、なかなかその気になれないでいる。7年もの経験で、こんな日もあるとは分かっているから、心は穏やか。と、見慣れた車が駐車場に滑り込んで、隣町の常連さんが今週二回目のご来店なのでした。「また筍の天麩羅を食べたい」と言って、カウンターに置いてある野菜サラダを取って食べ始めるのです。

 いつものように辛味大根をおろして、蕎麦を茹でようと言う時になって、もう一台の車が駐車場に入ってきたから、分からないものです。ラストオーダーの時間まで、お客がいたから昼までの退屈さが紛れたというもの。お客が帰ったその後は、やっと亭主も昼の賄い蕎麦をゆっくりと食べられる。天麩羅鍋の油が温かいうちに、蓮根、筍、コゴミにタラの芽を揚げて、春を満載したぶっかけ蕎麦を食べるのでした。「ああ、美味しい」と独り呟く。

4月19日 火曜日 晴れて暖かな初夏の陽射し …

 昨日の遅い午後についに医者に行ったら、受付の女性が「診察券はありますか」と言うので「もう10年以上前になるから」と応えると、「2011年にいらっしてますね」と、パソコンの画面を見て教えてくれました。元気だった医者も白髪の老人になって、「特効薬を出しますよ」と言ったきり、昔のことは覚えていないらしい。   
 大震災直後に、初めて通風の発作が膝に出たのを覚えてはいたけれど、大学病院の夜間外来で女将に車椅子を押されて、診療室まで行った記憶があるだけで、後は遠い記憶の彼方。女将に話をすれば彼女もうる覚えで、古い日記を取り出して2011年の3月11日を調べたらしく、確かに夜間外来に行って、専門の医師が不在だからと、痛み止めをもらって帰って来たのだとか。

 朝食は今朝もサラダとベーコンエッグ。定休日前は家の冷蔵庫にも残り物がなくなるから、亭主が仕入れをする火曜日には、隣町のスーパーで家に肉や魚や果物を買ってくることが多いのです。往復3キロ以上を歩いて買い物に行く女将には、一度には持って帰れない量だからです。今朝も魚と果物を頼まれて、お袋様と一緒に仕入れに出掛ける亭主。玄関前の釣鐘水仙は随分と背丈が伸びて、花の数も増えているのでした。足を引きずりながら車に乗った。

 痛風で赤く腫れた親指の痛みは、医者の言ったようにぴたりと止まったのは特効薬のお蔭か。その代わりに、この二週間、痛い足をかばって歩いた足首が腫れて関節痛になったらしいのです。週に一度の仕入れがなければ、家でじっとしていたいほどの痛さだから、まだまだ完治するまでには先が長い。広がる青空や春の風景が、憂鬱な気分を少しでも晴らしてくれるから、蕎麦屋に寄って昨日の片付けをしてからお袋様を迎えに行くのでした。

 お袋様を乗せて農産物直売所に着けば、足を引きずりながら歩く亭主を、野菜を運んで来た知り合いの農家の奥さんが「あら、どうしたの?」と見つけてしばし立ち話。先週もらったラディッシュが美味しかったという話をしたら、「どうやって食べるの?」と聞かれたから、浅漬けにしたら色も鮮やかだし店でも出したと応える。ご主人がいろいろな珍しい野菜を育てて持ってくるから、蕎麦屋の亭主はどうやって出しているのかと聞かれることが多いのです。

 陽射しは暖かく、中学校の通りには躑躅が見事に咲き始めていました。この時期、季節の移ろうのは実に早いと感じるのです。「万緑の 中や吾子(あこ)の歯 生え初むる」と詠った草田男の句が思い起こされるのでした。今は亡き、昔の渓流釣り仲間の先輩が、山の中に入って野生の躑躅を見つけると、「渓流では山吹が咲いて躑躅が咲くと、次は藤の咲く季節なんだよ」と言っていたのを思い出す。山奥に新居を構えた彼も、蕎麦打ちが好きだったのです。

 無事に仕入れを済ませてお袋様を家まで送ったら、蕎麦屋に戻って野菜類を冷蔵庫に収納する。先週の大根が残ったから、今日はまた烏賊を二杯も買って来たのでした。農産物直売所では、季節柄、野蕗も出ていたから、少し面倒ではあるけれど、店にある油揚げやニンジンや蓮根の残りを入れて、蕗のキンピラでも作って見ようかと新しい工夫を考える。色合いが鮮やかなのが好いかなと思いついた。地味だけれど、季節のものを喜ぶお客も少なくないのです。

 昼は昨日残った蕎麦を茹でて、カロリー少なめに済ませるのでした。タンパク質がないからと、女将が大豆の煮物を添えてくれた。結局は残った浅漬けも、二日目でも薄味で結構美味しかった。朝は天気が好いので女将が枕カバーとシーツを洗うだろうと、食事の後にひと眠りをしなかったから、シーツの敷いてない布団にそのまま横になってぐっすりと眠り込んでしまう。日に三回飲む食後の薬のせいもあるのだろうか。目覚めればもう2時過ぎなのでした。

 稽古場で雑誌に送る書を書いていた女将に声を掛けて、蕎麦屋に出汁取りに出掛ける亭主。足の調子はだいぶ痛みが取れて、親指よりも足首の痛みが気になる程度なのでした。外は雲が出て来たけれど暖かいので上着も要らない。ジャージを羽織ったまま、まずは洗濯物を畳み、洗濯機の中の洗い物を干しておく。先週の残った出汁はペットボトルに詰めて家に持ち帰り用として、新しい蕎麦汁を徳利に詰めていく。やることは沢山あるけれど今日はここまで。

 我が家の早い夕飯は5時前に始まる。女将が亭主の内臓脂肪を心配してか、豚のロースの切り身を生姜焼きにして、夜食を食わぬようにと味噌汁まで付けてくれた。昼の蕎麦は美味しいのだけれど、やはり腹が減って仕方がないのです。夕食が早いから、どうしても寝酒の肴に何か食べたくなるのが人情で、今夜も焼きするめのピリ辛醤油味をちぎりながら、少し早い快気祝いに一献なので明日は明日はまだ仕込みが沢山残っているから朝から忙しい。

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2022年4月上旬

4月6日 水曜日 暖かな一日 …

 やっと暖かな朝が来ました。桜の花は昨日のうちに見て回ったから、今日は蕎麦屋のミニ菜園の様子を見に行った。この間、採ったばかりのタラの芽が、また新しく生えてきている。季節の天麩羅の具材にと、摘んでに三日は保存しておくけれど、お客が少ないから使い切れない。そのうちに彼等の勢いに負けて、葉が伸び広がってしまうのが例年のことなのです。コゴミの畑も去年の枯れた葉の間から、新しい芽が吹き出してくる。これもどんどん採らないと … 。

 今朝の食事は昨日買ってきた魚かと思ったら、豚汁と親子丼の具が出たから、やはり蕎麦屋の残り物が優先されるのです。二人だけだと余った食材を消化するのもひと苦労。早く使ってしまった方が好いものから、手を替え品を替え、おかずを作る女将の苦労がよく分かります。それで亭主は何とか蕎麦屋を続けていられるから、本当に有り難いのです。今朝は20年も前のジム・キャリーの「マジェスティック」という映画を観て、蕎麦屋に出掛けたのです。

 明日の支度はそれほど大変ではなく、仕込んで置いた蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めて、大根とイカの煮物と蓮根のキンピラを小鉢に盛り付ける。女将のスポーツクラブの予約を取るには、まだ時間があったから、天麩羅の具材を切り分けて冷蔵庫に保存するのでした。ぬか漬けを朝のうちに漬けておいたから、夕刻に取り出しに来れば明日の支度は完了なのです。今日からコロナ禍でしばらくお休みだった夜の防犯パトロールが始まるので、早めに準備したのです。

 乾いた洗濯物を畳んで、最後に蕎麦豆腐を仕込んだら、午前中の仕込みは終わりなのでした。店の中は暖房を入れなくても18℃はあるから、日中は随分と気温も上がっている様子。吹く風も爽やかで青空も広がっている。早めに家に戻り、蕎麦を茹でる鍋に水を汲んで、レンジに掛けるのです。食堂のテーブルを拭いて、箸を並べて蕎麦猪口や薬味の葱や大根おろしを用意するのも亭主の仕事。やっと稽古場にいた女将が現れて、小鉢の野菜を温め始めます。

 今日は蕎麦を食べるにはちょうど好い暖かさで、冷凍してあった天かすを鉢に盛って用意したら、女将も結構食べてくれた。蕎麦汁に天かすを入れると、コクが出るというのか、味わいがまた一つ違うのです。蕎麦を茹でた鍋から蕎麦湯を汲んで、亭主は余韻を楽しむ。昼は蕎麦一杯ではちょっと物足りないというのが正直なところなのです。夕刻に、ぬか漬けのお新香を取り出しに蕎麦屋に行くまで、何をしようかと考えながら、書斎で横になってしばし微睡む。

 あまり天気が好くて暖かいので、蕎麦屋から持ち帰った剪定用のノコギリを持ち、脚立を出して、花の咲き終わった庭のスモモの木を少し丈を短く切っていく。一本の木の先を切り終えたところで、ちょっと疲れたのでまた今度と家の中に入る。庭の水仙が咲いていた辺りに、もう芍薬の新芽が伸びていました。今朝方女将が「今年はあんなにあった十二単が一つもなくなっている」と言った辺りを見れば、茨城の祖母にもらった釣鐘水仙が花を咲かせていました。

 花の大好きだった祖母は、とうの昔に亡くなったけれど、未だに我が家の庭には花が残っている。何の手入れもしていないけれど、毎年のように、庭の何処かに芽が出て花を咲かせるのです。書斎に戻って今日の写真をパソコンに取り込んでいたら、去年まで蕎麦屋に来てもらっていたスタッフから電話が入って、筍を茹でたから持って行くと言われ、急いで車で蕎麦屋に出掛ける亭主。懐かしい顔を見て、お互いに「ご無沙汰しています。お元気ですか」と挨拶。

 平日の三日でも務めがあった頃は、やはり生活に張りがあったと言う彼女。元気にはしているけれど、自分が呆けてしまうのではないかと心配していた。なかなかお客の戻らない店の現在を話して、亭主は申し訳なく思うのでした。糠床から野菜を取り出して、小鉢に盛り付けたら、家に帰って早めの夕食を済ます亭主。薄暗くなってからの夜の防犯パトロールには、三ヶ月ぶりで老人達が集う。久し振りの 5kmの夜行で足が痛くなったのでした。

4月7日 木曜日 今日も暖かな一日で …

 長い時間床の中にいたからか、今朝もストーブを点けるほど寒くはなかった。昨日の夜間パトロールで久し振りに随分と歩いたものだから、夕べは10時半には床に入ったのに、朝は7時まで目が覚めなかったのです。珍しく女将に起こされる。やはり、適度な運動が身体には好いのでしょう。薄塩のほっけとお新香の朝飯も美味しく食べられた。いつもの時間に家を出れば、幼稚園の裏口の階段を保母さんらしき女性が掃いていた。無数の桜の花びらが散っていた。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、まずは蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。室温が16℃もあったから、暖房も入れずに蕎麦粉を捏ね始める。加水率は43%だったけれど、暖かくなったからと冷たい水で水回しをしたら、今日はなかなか水気が出て来なくて生地が硬いのです。冬の間、手が冷たすぎるからとお湯を使っていたから、加水率が低くても上手くいったのかも知れない。いつもより長い時間捏ねて、やっと蕎麦玉が出来上がるのでした。

 蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱切り、大根・生姜のおろしを済ませ、再び蕎麦打ち室に帰って蕎麦玉を伸す作業。八つに畳んで包丁切りを始めれば、生地が少し硬かった分、綺麗なエッジのついた蕎麦が仕上がるのでした。この方が蕎麦のコシがあるように思えるのです。最近は慣れてきて少し柔らかい方が打ちやすいと思っていたけれど、初心は忘れてはならないのでしょう。今日は一人分135g で切りべら26本、800g 9人分の蕎麦を用意しました。

 厨房に戻って苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んでいると大釜のお湯が沸く。ポット四つにお湯を注いで、蕎麦茶も入れておきます。黄色と赤のパプリカを、キャベツとレッドアーリの上に並べて写真を撮ったら、ニンジンのジュリエンヌを刻む。キュウリのスライス、トマト、パイナップルを切って、最後にブロッコリーとアスパラを添える。天麩羅の具材や天ぷら粉を冷蔵庫から取り出し、新しい油を天麩羅鍋に注ぎ、天つゆの鍋を火にかけて11時過ぎ。

 店の掃除も直ぐ終わるから、昨日近くに住む前のスタッフに貰った筍を切って、冷凍保存するのでした。暖かくなったせいか、平日の割にはお客が来た木曜日。三人連れのお客に、別々のメニューを頼まれるとさすがに時間がかかる。お茶を出しながら「順番にお造りしますから、お待ち下さいね」と言って、亭主は黙々と調理に取りかかるのです。洗い物を済ませて暖簾をしまったら、自分の昼飯に蕎麦を茹でて食べておく。女将が手伝いにやって来てくれた。

4月8日 金曜日 初夏を思わせる暖かさ …

 先日来、右足の親指が痛いから、また爪が丸まってきたのかと思っていたのです。水曜日の晩に、痛いのを我慢して夜のパトロールに出掛けたものだから、悪化したのだろうぐらいに考えていた。ところが、本人は、昔のことなどとっくに忘れていたから怖いもの。東北の大震災の折に、職場で夜まで対応をして膝が痛くて歩けなくなったことがある。夜間外来に車椅子に乗って診療を受けたところ、痛風の発作だということで、しばらく医者に通ったのでした。
 尿酸値が高いのは血筋ですよと若い医者が言ったのを思い出す。体重を減らすことと、脱水症状にならないように水分を補給することが大切と、自分でも心がけて、その後、発作は起きなかったのです。「酒を飲んだ後は水を飲め」とは、昔からよく言われることだけれど、アルコールを分解するのに水分を要するから、水に溶けて体外に出るはずの尿酸が関節に結晶化してしまうらしいのです。

 痛い足を引きずって歩いて蕎麦屋まで歩くのも嫌なので、今朝は車で出掛けて朝飯前のひと仕事。念のためにと机の引き出しにあったロキソニンを飲んだから、少し痛みはやわらいでいるのです。そう言えば、以前は処方箋をもらわないと手に入らなかったのに、この薬があるということは、最近も発作が起きていたのか。とにかく、昨日今日の二日間は亭主一人の営業だから、接客の際に辛いのも困るのです。小鉢を盛り付け、天麩羅の具材を切って家に戻る。

 足の親指のことを気にしながら、居間の椅子に座ってお茶を一杯飲んでいるうちに、朝食の支度が出来て「ご飯ができました」と女将が声を掛ける。今朝のメインは蕎麦屋で残った三ツ葉の卵とじ。ちくわが入っているのがひと工夫。多すぎる小鉢を食べ終える前に茶碗の飯はなくなっているのでした。「寝るのだったらシーツや枕カバーは後で洗うわ」と女将に言われ、朝が早かったからそのまま床に横になって30分ほど眠るのでした。今日は洗濯日和なのか。

 晴れ渡った空を見上げながら蕎麦屋に出掛ける亭主。朝の仕事を終えたら、今日も早速、蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つ。小麦粉の袋を空にしたら、ちょうど180g あったので、今朝は 900g の蕎麦を打つことにした。二八だから、小麦粉と蕎麦粉と2:8の割合は変わらないのです。久し振りに多めの粉を捏ねて、室温も18℃はあるから身体がぽかぽかしてくる。加水は43%だったけれど、今朝はお湯を使ったから硬さはちょうど好い具合なのでした。

 八つに畳んで、切りべら26本で一人前135g で包丁を打てば、10人分の蕎麦が取れた。暖かくなってお客も増えるから、平日はこのくらいの分量でちょうど好いのかも知れない。昨日の蕎麦が三人分残っていたから、合わせて13人分の蕎麦が用意できたのです。蕎麦の数に余裕がないと、どうしても神経を使うから、多少は残ってもいい。残りすぎるのも困るのでそこが難しいところなのです。今週はまた値の張る蕎麦粉を発注しなければいけない。

 厨房に戻って苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んでも、まだ11時前だったから、朝のひと仕事が効いている。テーブルを拭いて店の掃除をし終えた頃には、店内は20℃近くあったから、エアコンも入れずに換気のために窓を開けていた。今日は昨日にも増して蕎麦日和に違いない。コロナ前なら10人を越える客が来たものです。小学校の入学式らしく、若い夫婦と着飾ったこどもが蕎麦屋の前を何組も通って帰るのでした。桜は終わったけれど天気は好い。

 陽射しはまるで初夏のようで、太陽の光は熱いくらい。暖簾を出してしばらくすると、駐車場には次々と車が入ってくるのでした。テーブル席とカウンターとそれでも二回転はしないから、そこがコロナ前と違うところ。上手い具合に前のお客の調理が終わってから次のお客がいらっしゃるから、「今、お茶をお持ちしますのでお待ち下さい」と声を掛けて、前のお客に注文の品を運ぶ亭主。これが一度にご来店だったらどうしようといつも心配するのです。

 コロナ前とは違うけれど、昨日今日と平日の割にはお客が入ったので、更に暖かくなるという週末が楽しみです。洗い物を片付け、昼の賄い蕎麦を食べ、大釜の洗いを残して亭主は一休み。今日は女将の帰りが少し遅いから、助けには来てくれないと分かっている。ミニ茶園の春菊を袋に一杯採って、菜の花と新緑の森を眺めながら誰もいない家に戻れば、家の中も随分と暖かいのでした。今日は夕飯を食べ終えたらお新香を漬けに、また蕎麦屋に出掛けなければ。

4月9日 土曜日 外の方が暖かい一日 …

 午前5時半に目が覚めて、今朝は出汁取りとお新香を糠床から取り出しに、蕎麦屋へ行かなければと眠い目をこする亭主。通風の足の指が痛いので、歩いて行くのは億劫だったから、ガレージを開けて車で蕎麦屋まで行く。6時の東の空には、もう陽が昇っていました。季節はどんどん移り変わっていくらしい。老いた人間の方が、付いて行くのが難しいと感じる程です。夕べ野菜を漬けた糠床は、調理台に出したままにして置いたから、ちょうど好い漬かり具合。

 隣のレンジでは昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を沸かしあったから、直ぐに出汁取りの作業にかかるのでした。店の中は18℃とかなり暖かいのです。それでもやはり出汁取りはたっぷり小一時間はかかるかので、朝食の時間に間に合うかが心配です。今日の分の蕎麦汁はあるのだけれど、明日の分には到底足りないので、今朝のうちに出汁は取っておかないと間に合わない。後から忙しい思いをするのは嫌だから、今朝は頑張って朝飯前のひと仕事を終える。

 何とか朝食に間に合って家に戻れば、今朝は鯖の塩焼きがメインのおかずで、久し振りに脂の乗った鯖を美味しく食べたのです。最近の鯖は、塩気も少なくて、あらかじめ骨を取ってあるらしく、年寄りにはとても食べやすい。食事の後はまたひと眠りする亭主。女将が洗濯物を干したり、台所の洗い物を終えて朝ドラを見る間に、書斎に入って横になるのです。30分ほど微睡んだら、頭はすっきりとして、9時前に今度は歩いて蕎麦屋に出掛ける。 

 「庭の隅のチューリップが増えてているのよ」と女将が言うものだから、かつての花壇を見てみると、確かに去年は一組しかなかったのが、二組に増えていた。二つが離れているから球根で芽が出る以外に、花が咲くのだから恐らく種でも育つのではないかというのが亭主の考え。あまり手入れをしない庭の水仙などが、何年も経って違う場所に花を咲かせるのも、皆、同じような仕組みなのではないかと思っている。「植えていないのに不思議ね」と女将は言う。

 暖かい風に吹かれながら蕎麦屋に着いたら、朝の仕事を終えて、週末だからご飯物を出すので、米を研いで炊飯器にかける。最近はご飯物がほとんど出ないから、女将ともそろそろご飯物は止めようかと話しているのです。安く美味しいご飯物を出す店は、近隣でも沢山あるし、コロナ禍でお客の数の減る中で、蕎麦以外の食事を求めて来店するお客は少なくなっているのでしょう。美味い蕎麦を食べていただくの一点に絞るべきなのかというのが亭主の考え。

 今朝は750g 八人分の蕎麦を打ち、昨日の蕎麦と合わせて12人分を用意しました。天気も好く暖かくなったとは言っても、週末でも10人を越えるお客が来る日はなかなかないのが実情です。それでも今日は、駐車場が満杯になって、座席も二回転目に入ったところで営業時間が終わりになる。皆さんリピーターの方たちなのでした。元来、蕎麦が好きというお客が、昼に蕎麦を食べに来ることがほとんどなのだと、この時期より鮮明に思い知らされるのでした。

 娘さんらしき女性とともにいらっしたお婆さんが、「ここはご夫婦が穏やかで好いお店だよ」と、教えてあげたお友だちも食べに来たのだとおっしゃる。これからチューリップ祭りに出掛けるのだとお友だちと一緒にいらっした女性は、家の直ぐ近所の常連さん。暖かい日は天麩羅がよく出るから、今日も具材を切り足すのでした。筍やタラの芽、コゴミなど旬の山野菜の天麩羅ををサービスでお付けした。暖房も入れずに窓は開けたまま、本当に暖かい一日。

 ラストオーダーの時間までお客を待って、片付け物や大釜の洗いに入る。明日もどれだけお客が来るかは分からないけれど、今日打った蕎麦を亭主が食べてしまうと一人分減るので、家に帰って女将に餅を焼いてもらって遅いお昼にしました。パソコンに向かって、今日の売り上げと写真を入力したら、亭主はごろりと横になってひと眠り。女将は買い物に出掛けて、夕食のおかずを仕入れてくる。久し振りに新鮮な鰺があったと、晩はこりこりした鰺の刺身 … 。

4月10日 日曜日 初夏を越える暑さで蕎麦日和 …

 暖かい朝でした。室内は20℃近くあるのに、ちょっと薄ら寒いのは、最近の暖かさに慣れてしまったからなのだろうか。今日は半袖かしらと思ったけれど、薄手の長袖に替えて蕎麦屋に出掛けていく亭主なのです。空は何処までも青く、蕎麦屋の向かいの畑の菜の花が、後ろの森の木々の新緑と相俟って、まだ春のような、そしてもう初夏のような風景を見せている。耕作をしていない畑に植えてあった小松菜が広がって、この菜の花になっているらしかった。

 今朝は蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、直ぐに厨房で小鉢に盛る野菜を仕込むのでした。お客が多くなったので、用意した小鉢の具材が足りなくなっているのです。今朝は今週はまだ作っていない切り干し大根を煮て、今日の分がなくなったら盛り足そうと思います。女将が家で春菊を湯がいて、すり胡麻と一緒に持って来てくれた。胡麻和えにしろと言うことなのですが、これは食べる直前に作らないと水が出てしまう。使うのは明日になるか。

 今朝も昼の暖かさを見込んで、蕎麦は余裕を見て850g 9人分を打って、加水率43%で仕上げました。800g だと少し足りない時があるので、しっかりと数を揃えたい場合には多めに打つのです。切りべら26本で135gの蕎麦を生舟に9束並べて、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分の用意をしました。コロナ禍以前はいつも15人分は用意していたけれど、お客が減ってあまり蕎麦粉を無駄にしないようにと考えているのです。それでも今日はすべて売り切れた。

 苺大福と野菜サラダとを作り終えた頃には、あまり暑いので亭主は長袖のシャツを脱いで、タンクトップの下着の上に店の上着を着て前掛けをする。開店までにはまだ間があったから、草刈りもしていないミニ菜園に出て、タラの芽とコゴミを摘んでくる。天麩羅がよく出る陽気だから、筍と合わせてタラの芽とコゴミをサービースで付けているのですが、毎年のこととながら、そろそろ彼らの成長の早さに、店で出す数が追いつかなくなっている。

 開店して間もなく、若いカップルがご来店で、この暑いのに、いきなり熱々の鴨南蛮蕎麦を頼まれたから驚いた。早い時間だったから、野菜サラダを食べていただく間に、余裕を持って鴨と葱を焼苦ことが出来る。料理を出し終えた頃に次のお客がいらっしゃるというタイミングの好さ。ほとんどが天せいろのご注文で、たまにせいろ蕎麦や大盛りが出る。今日は駐車場も入れ替わり立ち替わりで、満席の看板を出しながら、二回転10人以上のお客が入ったのです。

 コロナ禍で少なかったお客も、久々の10人越えで、女将も亭主も休む間がなかったから、忙しくても嬉しかったのです。お客も皆さん菜の花畑や森の新緑を眺めながら、暖かく晴れた今日の青空を楽しんでいる様子なので好かった。洗い物と片付けを終えたら、家に戻ってパソコンに向かう亭主。ひと眠りして夕食の支度に台所に入れば、今日もまた野菜サラダの刻んだ野菜をお好み焼きにして消化する。夕食後はまた蕎麦屋に出掛け、お新香を漬けて片付けです。

4月11日 月曜日 燕が飛び交う季節 …

 5時前に目が覚めたけれど外が薄明るかったので、蕎麦屋で掛けて朝飯前のひと仕事。定休日前なのに、夕べ糠味噌に野菜を漬け込んだのが気になっていたのです。小鉢が足りなかったから、残った野菜で少しだけお新香を作っておこうと思った。ついでに二つの大鍋に湯を張りながら、カウンターに積まれた沢山の盆や蕎麦皿を片付けておく。店の中は朝から20℃と昨日の暖かさが残っているのでした。明るくなって、犬の散歩に通る顔見知りの農家の親父様と、お互いに手を振りながら挨拶を交わす。

 家に戻れば女将もいつもより早く台所に立って、早めに朝食の支度をしてくれていた。筍の若竹煮とぬか漬けの小鉢に今、朝のメインは蕎麦屋から持ち帰った親子丼の具材を煮込んだもの。コロナ禍での対策として、平日はご飯を出さなくなったから、昨日出た親子丼の具材が半分残ってしまったのです。もう直ぐご飯物そのものを止めることにしているので、こうした無駄はなくなるけれどちょっと寂しい気もするのでした。臨機応変に考えなければ。

 朝が早かったので朝食を終えたら小一時間ほど眠る亭主。家の中は20℃もあるというのに、なぜか薄ら寒い気がするのでした。季節が移り変わって、このところ段々暖かくなっているから、それに慣れてくると、不思議なことに、もうこの間とは身体の反応が違っている。早朝に店でいろいろ準備を終えてきたから、今朝は9時過ぎに家を出て、ゆっくりと出勤です。家々の間を燕がやたらと飛び交っているから、今年もそんな時期になったのかと驚くのでした。

 燕は去年作った巣の近くで待ち合わせをするのだとか。大きな身体の方が雄なのだそうな。毎年燕が巣を作る蕎麦屋の隣のお宅にも燕がやって来ていた。電線に止まるつがいの燕を見れば、確かに片方が小さくて、もう一方が大きな燕だったのです。朝の仕事を終えて、20℃もある蕎麦打ち室に入り、今日の蕎麦を打つ亭主。加水率は43%といつもと同じなのに、暖かいせいか少し柔らかい生地になる。直ぐに伸し広げられるから、今朝はちょっと細めの仕上がり。

 開店前に電話が鳴って、「今日は営業していますか?」と品の好さそうな女性の声。早めに暖簾を出しておいたら、15分ほど後にご夫婦でいらっして、天せいろとヘルシーランチセットにビールをご注文なのでした。歩いて来たからご近所かと思ったら、以前まで団地に住んで家はまだあるのだそうで、今は東京に住んでいるのだとか。昔を懐かしむように畑や森を眺めて、ゆっくりと話をしていかれたのです。空いている平日の店だから亭主も心が和むのでした。

 時計が1時を回って、お客が来ないものだから、今日の蕎麦は残るだろうとぶっかけで賄い蕎麦を食べてしまう亭主。ちょうど食べ終えた頃になって、バイクに乗った若い男性がご来店。天麩羅蕎麦の大盛りに、キスやメゴチの天麩羅を追加で頼まれたから、大きな椀に蕎麦を茹で、筍やコゴミ、タラの芽を加えて沢山の天麩羅を載せてお出ししたのです。用意した天麩羅の具材が残ったから、全部揚げて家に持ち帰り、夜は女将と天麩羅でご飯を食べたのでした。

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2022年4月初め

4月1日 金曜日 やっと薄陽が出て …

 今日は少しは日が差しました。満開の桜も光を浴びて生き生きと感じられたのですが、青空が見えないのが心残り。朝は蕎麦屋に出掛ける直前まで冷たい雨が降っていたので、4月の初めも天気には恵まれないのかと、やる気の出ない亭主なのです。それでも、いつもより早く蕎麦屋に出掛けて、小鉢を盛り付けたり、洗濯物を畳んたり、干したりして、蕎麦打ち室に入るのでした。今朝は3℃と冬に戻ったような寒さで、暖房を入れてもなかなか暖まらなかった。

 蕎麦打ち室の温度が10℃を越えたのを見計らって、今朝は500gだけ蕎麦を打つことにしたのですが、湿度は50%を越えてているのに温度が低いから加水が難しかった。43%の加水で水回しを始めたら指先がちょっと乾いた感触だったので、少しだけ水をたしたのですが、わずか5gぐらいの加水で生地は柔らかくなりすぎた。打てないほどではないから、打ち粉を多めに振ってなんとか蕎麦切りまで辿り着く。切りべら26本で140g の蕎麦が仕上がったのです。

 雨上がりの外は、風はなかったけれど気温は低いのです。今朝は寒いから身体を動かそうと、テーブルやカウンターにある下の物置の棚まで、最初に店の掃除を終え、こんな日にはお客が来ないのではないかしらと、不安と言うよりは一種の諦めの気持ちで、厨房に入るのでした。それでも包丁を持てばいつもの調子に戻って、大根をおろし、苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻むのです。二皿だけでも好いかと思うけれど、平日はやはり三皿と決めている。

 ブロッコリーや農産物直売所で仕入れて来たいつもの農家のトマトが、新鮮で美味しいので野菜に救われる思いなのです。最近は、お客が来るまでデザートと野菜サラダをカウンターに並べておくから、これを見てヘルシーランチセットを頼むお客が多い。今日も昼もだいぶ遅くなってから女性の二人連れがいらっして、注文されたのです。賄い蕎麦で昼を食べようと思って、茹でた蕎麦を客が来たからと冷蔵庫に入れたら、食べる頃にはもうコンビニの蕎麦。

 それでも、閉店間際にも母と息子らしい二人連れがご来店で、天せいろのご注文。今日は初めてのお客が多かったから、皆さんに店置きのパンフレットを差し上げた。ラストオーダーの時刻はとうに過ぎていたけれど、洗い物をしながらお客が食べ終えてひと休みするのを待つのです。洗い籠に溜まった蕎麦皿や沢山の皿類を、一つ一つ拭いては片付ける。少ないお客だからこれが出来るけれど、一度に大勢のお客が来たら、こうはいかないのです。

 大釜や天麩羅鍋の掃除の前に、ひと休みしようと調整池の桜を見に出れば、曇り空だというのにやはりもう満開。西の空には青空も見えてきたけれど、今年も晴れた空の下の桜は敵わなかった。家に帰る途中、幼稚園の桜をもう一度見ようと裏口の階段を昇れば、少しだけ陽が差して、垂れ込める雲と桜と菜の花と雪柳が、絶妙なコントラストを描いているのでした。女将はまだスポーツクラブから帰っていなかった。明日は彼女の助けがあるから気分も楽か。

4月2日 土曜日 開業8年目の春は …

 今年の桜の季節の中では、今朝の空が一番の青空。6時前には、もう高層マンションに朝日が当たって、とても眩しいのでした。裏の幼稚園に咲いた満開の桜も、青い空に生えてこの春一番の美しさなのです。朝飯前のひと仕事に、蕎麦屋へ出掛けた亭主は、ゆうべ糠漬けを漬けに行かなかったから、短時間で仕上がる浅漬けを漬けて米を研いで炊飯器にかける。店の中は8℃と寒い朝なのでした。大釜に湯を沸かし、カウンターに干した蕎麦皿や盆を片付ける。

 小鉢は切り干し大根と南瓜と小豆の従姉妹煮と浅漬けの三種類。今日の蕎麦は13人分と決めているから、小鉢の数も15鉢だけ。晴れてはいても風がとても冷たいから、どれだけお客が来るかは分からないのです。それでも、今朝の青空に助けられて亭主の気持ちは前向きで、お蕎麦の好きなお客はきっと来ると思えるのでした。コロナ禍でさんざん大変な思いをしたせいか、空が青くて陽が出れば、もう元気になっているから救われる。

 家に戻って、今朝は亭主がアサリのお粥を作ると言ってあったので、土鍋に水とむき身のアサリを入れて、沸いたところでご飯と餅を小さく切ったのを入れ、塩味だけをつけておきます。最後に刻み葱を入れ、寒い朝に熱々のお粥。身体が温まって暖房も消してしまうほど。洗面と引け剃り、着替えを終えたところで、女将が「今日はもう寝ないの?」と、シーツと枕カバーを洗濯に持って行ってくれる。晴れた日は洗濯日和でもあるのでした。

 朝ドラの始まる頃に家を出て、幼稚園の裏の階段の下から、今朝の青空と桜の写真を撮りました。いつもなら団地の近所から通う園児が、春休みなので勿体ない風景なのです。風は冷たく掌が凍えそうだけれど、気持ちのいい朝だと調整池の桜を見に行きました。この間、訪ねた時にはまだ五分咲きで空も曇っていたけれど、今日は桜の花に朝日が差して青い空に映えている。木の上で鴬の鳴き声がします。大きなヒヨドリまで鳴きながら飛び立っていきます。

 蕎麦屋の裏に続く階段を昇って玄関に着いたら、早速、看板を出して幟を立て、チェーンポールを降ろします。屈んで地面までポールを入れる動作のたびに、背筋を伸ばしてこれも前屈の運動。毎日続けていれば少しは身体に好いのかも。早朝に暖房を入れておいたから、店の中は暖かく蕎麦打ち室も16℃になっていました。今朝は750g 8人分の蕎麦を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分。
万が一、足らなくなっても今日はそれで売りきれにしよう。

 今日も切りべら26本で140g の蕎麦を打つのでしたが、最近、お客が蕎麦を食べている姿を見て、ふと気づいたことがあるのです。蕎麦の1本が長すぎて蕎麦猪口に入れるのに苦労しているお客が多いのです。蕎麦を食べ慣れた人なら、蕎麦汁に浸けてスルスルッと次の蕎麦を蕎麦猪口に運ぶのだけれど、これを改善したいと思い、畳んだ蕎麦の上の耳の部分を切ることにしたのです。これなら、蕎麦1本は 50cm 以内になるから、食べやすくなること請け合い。

 朝からの天気が幸いしてか、今日は随分とお客の入った土曜日でした。歩いて来るお客や自転車のお客もいたので、当然ながらビールがよく出た。付け出しに小鉢を出すから、最後には小鉢が足りなくなってしまう。天せいろはもちろんのこと鴨せいろにカレーうどんなど、種類も豊富なのでした。8年目の開店記念日は、かくして賑わった一日なのです。亭主は昼を食べる暇もなく、家に戻って車を出したら、コンビニでサンドイッチを買って食べるのでした。

4月3日 日曜日 寒い朝 …

 昨日の青空が嘘のように、今朝は朝から雨が降っていました。この時期、部屋の温度が10℃を下回るのは、やはり寒いのです。そんな朝は、女将と二人でシャケ粥を啜るのが最近の朝食。身体が温まるから好いといろいろな食材を入れて試して見たけれど、やはり脂の乗った鮭を焼いて、お粥に入れるのが一番美味しい。小さな茶碗に二杯ほど食べたら、亭主はもうおなかが一杯でお茶をもらうのでした。部屋のストーブも消して食休みのひととき。

 日曜日だから朝ドラはないのですが、習慣とは恐ろしいもので、洗面と着替えを済ませて、その時間には傘を差して家を出るのです。夕べ風呂から上がって蕎麦屋に出掛け、出尽くしてしまった小鉢の野菜を作り足したから、今朝はその盛り付けから始める。今日と明日とで今週の営業も終わりだから、それぞれ少しずつ作っておいたのです。お新香だけは数の調節が利かないから、残ったら家で食べようと、いつもの量を漬けておきました。

 キュウリが二本、カブが二つ、ミョウバンで色止めしたナスが二つ。冷蔵庫に入れて12時間余りだから、あまり塩味はきつくない。漬ける時間との調整が大変で、手間はかかるけれど、天麩羅に添える小鉢としてはさっぱりとしていると思うのです。今日も天せいろの注文が多かったから、お新香ばかりが随分と出た様子なのです。最近はぬか漬けが苦手なお客もいるから、「お新香大丈夫ですか」とたまに女将がお客に聞いている。

 小鉢の仕込みが終わったら、やっと11℃になった蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打ちます。寒いから暖房を入れてもなかなか暖まらないので、身体を動かして暖を取ろうという意気込みが、我ながらまだ若いかなと感じたのです。加水率は43%でも、今朝は雨が降るほどだから大気が湿っていてちょっと柔らかめ。単に湿度の問題ではないというのが、近ごろの亭主の考え方なのです。捏ねて蕎麦玉にしたら30分ほど寝かせて、その間に葱切りや大根おろし。

 寝かせておいた蕎麦玉を潰して最初に地伸しをするのですが、何と言ってもこれが水回しに続いて蕎麦打ちの基本だと思うのです。均等な厚味で正円を描くように、両手の掌で生地を回しながら伸し広げていくのですが、均等でないと伸し棒で丸出しをする時に、伸し始めても結局は左右上下に厚味の差が出来て、先に進めば進むほど修正するのが難しくなるのです。だから、地伸しの段階で丁寧に形を整えておくことが大切なのだとつくづく思うのです。

 今日は冷たい雨が降っているというのに、12時前にもう駐車場が満杯になって、「ただ今満席です」の看板を出すのでした。皆さん今日は蕎麦屋に行こうと思って来て下さったお客のようで、注文も直ぐに決まるから助かるのです。亭主一人が狭い厨房で調理をするから、天麩羅も二人分ずつしか揚げられないし、次々と仕上げていくしかないのです。いつもカレーうどんと鴨南蛮蕎麦を頼まれる常連さんご夫婦は、とても手間がかかるから最後で助かりました。

 12時半には皆さんお帰りになって、洗い物を済ませて1時前にはちょっと時間があったから、亭主は賄い蕎麦をぶっかけで食べておく。昨日も食べる暇がなかったから、なんと月曜日に打った蕎麦の残りなのですが、これが冷蔵庫の中で好く締まって美味しい。1時を過ぎてまたお客がいらっしたから、腹ごしらえをして元気になった亭主は一踏ん張り。今日は「お蕎麦美味しかった」と言って帰られるお客が多かった。それが一番嬉しいことなのですよね。

4月4日 月曜日 終日の雨でしたが …

 夕べは9時半になったらもう眠くなって、床に就いたのは好かったけれど4時半には激しい雨の音でもう目が覚めてしまいました。居間の部屋で珈琲を飲みながら一服して、あまりすることはなかったけれど、切れた煙草を買いに出たついでに車で蕎麦屋まで行く。店の暖房を入れて大釜に水を張り、カウンターに干してある盆や蕎麦皿を片付けたら、冷蔵庫の中身を確認するのです。家に戻れば今朝も鮭のお粥で、刻み海苔を掛けてお茶漬け気分です。

 いつもの時間に家を出てみずき通りを渡れば、スカイプラザのマンションが霧雨に煙って見えるのでした。出がけに、去年のこの時期の月曜日はお客がなかったと女将に言われ、意気消沈のまま蕎麦屋に着いたけれど、やることはあるからまずは洗濯物を畳んで、お茶を沸かしてひと休み。たとえお客があってもなくても仕事はするから、身体を動かし、頭も使う。これが元気と健康の源なのかも知れません。雨の中を幟を立ててチェーンポールを降ろすのです。

 早朝に暖房を入れてあったので、室温は16℃になっていたから、早速、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ亭主。加水率は43%。昨日よりは若干硬めの生地を捏ねて、寝かせている間に厨房に戻って葱切りをするのです。大根や生姜もすりおろしておきます。20分ほどで蕎麦打ち室に帰り、蕎麦玉を潰して地伸し、丸出し、そして四つ出し。地伸しの段階で均等な厚さになっていたから、四つ出しも綺麗な形で伸し広げられました。

 これを90度回転させていよいよ本伸しにかかります。生地が硬めだと、十分に伸さないと奥行き90cmまで伸びてくれない。蕎麦粉を捏ねる時よりも、むしろこの伸しの方が身体が温まるのです。八つに畳んで包丁切りをする時には、「よしッ」とかけ声が入る亭主。切りべら26本で140g。たった500g の蕎麦を打つのにも、気合いが入るから楽しい。この蕎麦を食べてくれるお客が来れば一番好い。毎日がこの調子だから、前向きになれるのかも知れません。

 再び厨房に戻って苺大福を包んだら、野菜サラダの具材を冷蔵庫から取り出して、大釜のお湯が沸くのを待ってポットに入れていくのです。二つは蕎麦茶のポット、もう二つは蕎麦湯や温かい汁の器を温めるためのポットです。明日は定休日だから、サラダの具材も今日で使い終わるようにと使ってきたけれど、キャベツは大きかったから残ってしまう。天麩羅の具材もやはり多めに仕入れてくるから、どうしても残るのは仕方がないのです。

 今朝の女将の言葉が呪文のようで、降りしきる雨の景色を眺めてお客を待っていたら、激しく降る雨の中を車が駐車場に入ってくるのでした。男性の一人客がカウンターに座ってヘルシーランチセットのご注文。サラダや蕎麦豆腐を食べていただいている間に蕎麦を茹で、デザートを出しているところで、次のお客がいらっしゃる。リピーターの女性の二人連れなのです。こんな天気の中でも蕎麦屋に来てくれるお客がいるのは、有り難くも嬉しいことなのでした。

4月5日 火曜日 曇りのち晴れの定休日 …

 朝の6時に車で家を出て、蕎麦屋の前のバス通りを右折。こんもりと繁った森の入り口にある桜を見に行きました。ソメイヨシノはもう散り際で、雨上がりの地面には命を終えた花びらが、一面に散り敷かれているのでした。この通りの桜の木はどれも大木で、森の中央にある出羽三山を祭った石碑も、かなり古いものなのです。たまに鳥居の前で手を合わせている人を見かける。わずか40年あまりの新興の団地は、何百年の歴史を持つ地区の生活には敵わない。

 蕎麦屋に着いて昨日の片付けを済ませたら、中簿の椅子に座ってコーヒーを飲みながら、今日の仕事の段取りを考える亭主。お袋様と仕入に出かけたら、出汁取りと煮物を作り終えれば午前中が終わるだろうと、定休日のゆったりとした頭で考える。昨日は持ち帰れなかった小鉢の残りを盆に載せたまま家に戻れば、早速、朝食に出してくれたので助かった。まずは蕎麦屋の残り物の処理から定休日は始まるのです。タンパク質を補給しようと目玉焼きが付いた。

 仕入れに行くまでにはまだ時間があったので、100m程離れたところにある公園まで歩いて、椿と桜の花の写真を撮る。このあたり一帯の桜は山桜なのか、葉が出ているのに花が咲いているのです。公園の北側からは、いつも女将が野菜を分けてもらっている農家の桜が、菜の花畑の向こうに綺麗に咲いていました。ここの桜もソメイヨシノではないから、咲き出すのが遅いのだと女将が言う。これで空が青ければ、好い写真になるのにと思うのでした。

 居間で休んでいたら、女将が「テッシュペーパーとトイレットペーパーを買って来て」とメモを持って来る。仕入れ出買うのには多すぎるから、車をを出して駅前のドラッグストアに行く。お袋様に電話をして迎えに行けば、「今朝も寒いね」と車に乗り込む。農産物直売所では、いつもの農家のトマトが沢山並んでいた。ちょっと高いけれど、地元のファームで作っている取れたての新鮮な完熟苺を買ってみる。前に並んだ奥さんは何パックも買って帰った。

 蕎麦屋での午前中の仕事を終えたら、家に戻って食材の仕入れをパソコンに入力する亭主。湯が沸いたからと台所に呼ばれて、今日の昼飯に蕎麦を茹でるのです。明日の分の蕎麦もまだ蕎麦はあるから、少しは暖かくなって女将も嫌がらないので助かるのです。この時期、やはり蕎麦は美味しい。蕎麦屋から持ち帰った蕎麦汁も、手前味噌ながら最高の味なのです。食後は書斎で横になってひと眠りすれば、1時間足らずで目が覚めて、午後の仕込みに出掛ける。

 蕎麦屋まで車で行ったら、今朝の仕入れで通った小学校の桜並木が散り際の華やかさだったので、駐車場に車を止めたまま、100m ほど歩いて坂を下ったのです。少し青空が見えてきたので、好い写真が撮れるかと思ったけれど、スマホの写真はいろいろ設定を変えて何枚も取るけれどまだまだです。蕎麦屋まで戻って、下茹でしておいた大根を煮付け、烏賊を捌いてさっと湯がいたら一緒にして、小鉢の一品の完成。続けて出汁取りをして蕎麦汁を仕込む。

 二時間ほどで仕込みを終えて使った鍋やボールを洗ったら、定休日一日目の仕事はこれでお終いです。空が晴れて陽が差してきたから気持ちが好いのでした。通りには散歩で歩く人たちがちらほらと出ている。前の畑も菜の花ももう終わりなのだけれど、新芽が芽吹いた後ろにある森の木々のうっすらとした綠と相俟って、午後の青空に美しく映えているのでした。家に帰って今日撮った写真の整理をする亭主。女将が夕食の支度をしてくれている。

 今夜は湯豆腐にでもしようかと言っていたのに、食卓には酒の肴にはぴったり品が並んだ。蕎麦屋のミニ菜園で採れた春菊の胡麻和えはなかなかの味。テレビのニュースは朝も見たウクライナの惨状を報じていました。最近はコロナの感染ニュースよりも多いような気がする。決まって「いゃ~ね」と言う女将。彼女は新聞も詳しく読んでいるから、解説にいとまがないのです。亭主は昼も夜もBSのニュースを見ているから尚更なのです。今日はこれでお終い。