2024年3月中旬



3月11日 月曜日 向かいの畑の井戸掘り職人達がご来店…

 寒い朝でした。空は青く陽射しもあるのだけれど、蕎麦屋の向かいの畑には霜が降りていました。放射冷却で日の出前後が冷えるようなのです。今朝は昨日の蕎麦が沢山残っていたから、蕎麦は打たないし、小鉢も足りそうなので、朝飯前のひと仕事も、あまりすることがなかった。暖房を入れたら、足りないものがないかと確認をして、煙草を買いにコンビニまで車を走らせる。家に戻って女将の作る朝食を食べたら、今日はひと眠りをせずに居間で寛ぐのです。

 昨日は随分と疲れたらしく、夜の10時にはもう眠くなって、今朝は6時まで目が覚めなかったから、最近では珍しく8時間睡眠なのでした。寝不足で一日仕事をしたからなのでしょう。9時前に家を出れば、庭の黄色い姫水仙がとても可愛らしく並んで咲いていました。ちょうど塀の縁に植えてあるので、亭主は歩きながら見えるのだけれど、女将は庭からしか見えないのだと言う。俯いたように下を向いて咲くので、可愛い姿は眺められないのです。

 みずき通りも人影がなく、朝はまだ寒いのでした。蕎麦屋の向かいの畑に、クレーンを付けたトラックが停まっていたから、いよいよ始まるかと思って眺めるのです。電気も通って、ビニールハウスも出来たから、次は井戸を掘るのではと予想していたら、今日は午前中いっぱい井戸掘りの職人達が手際よく仕事をしていたのです。ちょうどお客も来なかったので、その作業振りを熱心に店の中から眺める亭主。次々とパイプを繰り出して掘り進めていく。

 1時を過ぎてその中の社長らしい親父様が、蕎麦屋にやって来て「今、3人で来ますから」と言ってまた仕事場に戻っていく。地中に入れたパイプを抜き取って、塩ビの管を何本も入れたら、やっと一区切りが着いたらしい。若手の二人と共に社長が店に入ったのです。天せいろとせいろ蕎麦の大盛りと鴨南蛮蕎麦のご注文でした。もう客は来ないだろうと、用意してあった野菜サラダをサービスでお出しする。「手際が好いから感心してみていましたよ」と亭主。

 50mもの深さまで掘って水を出したのだそうな。亭主はその掘削の仕組みにとても興味を惹かれるのでした。食べ終えればもう閉店の時間。一番若い天せいろのお兄さんだけ残って、モーターや水道を付けていました。亭主は洗い物を済ませて、持ち帰る食材をビニール袋に詰め、生ゴミを外の大きな袋に収納して、洗濯機に洗濯する物を入れたら店を出る。向かいの畑のお兄さんに「大変ですね」と声をかければ「お出かけですか?」「家が近所なので帰ります」



3月12・13日 火・水曜日 確定申告に時間を取られた週…

 この一週間は確定申告の申請の準備に追われていました。年に一度だから必要な書類も机の書棚から捜して、揃えるまでが大変なのです。まず古い書類や葉書などを片付けて、一昨年までの申告の葉書類は全部捨てているのですが、今回はどうも去年の国民年金の源泉徴収書まで捨ててしまったらしい。次に国税庁の申告書作成コーナーにアクセスして、一つ一つ入力していく。売り上げや仕入れの決算書はどこから仕入れたかまで入力しなくてはならない。

 家のパソコンで毎日欠かさずに入力して、年間の月別トータルが出力される表を作ってあるから楽なのだけれど、申請書の作成画面は一年前の作業を覚えていないから、もう一度初めから理解しなければならない。連日夜遅くまでパソコンに向かい、途中で止められないから二日ほどパソコンを点けたままで、やっと昨日の晩に提出書類を印刷できた。さて、何処に提出すれば好いのかは、また市のホームページで調べて、午前中に出掛けるのでした。

 家から車で30分ほどのとても分かりづらい場所に、市の中央公民館はあったのです。近くまで行ってやっと去年も来たところだと思い出す。車のナビがないと到底行き着くことが出来ないのです帰り道は。書類を提出して控えに検印を押してもらうだけで、僅か数分で終わった。青い空に強い風が吹いて、帰り道は気が晴れ晴れとしたから、道路の渋滞も気にならなかった。11時前には家に戻って、昼はラーメンを作る予定だったから、女将がホウレン草を茹でる。

 市販のチャーシューをたっぷりと入れて、魚介スープの醤油味。いつも麺だけ買っての塩ラーメンばかりだから、久し振りに美味しいラーメンを食べるのでした。食後は書斎でひと眠りして、女将がスポーツクラブに出掛ける時には、もう目覚めて亭主も蕎麦屋に仕込みに出掛ける。天麩羅の具材を切り分けたら、キノコ汁を作って明日の仕込みは完了です。明日は頼んだ蕎麦が配達されるし、夕刻には業者が食材を持ってくる。支払いは大丈夫かと心配する。

 4時には仕込みを終えて家に戻るのでした。夜のプールがあるから、早めに夕食を食べてひと眠りしたのは好いけれど、やはり疲れているのか2時間近くも眠ってしまったのです。それでもプールへ行くという決意は変わらないので、いつもより30分も遅れて、7時前に家を出て、人気のないプールでゆっくりと泳いで来る。帰りに地階のスーパーで、昨日買えなかったパイナップルと白玉粉を買って、ついでに冷凍食品の定番を手に入れて、家に戻るのでした。


3月14日 木曜日 朝は寒く、昼から暖かくなってお客が…

 日の出の時間に蕎麦屋に行けば、向かいの畑には真っ白な霜が降りていました。放射冷却で一番寒い時間帯に、朝飯前のひと仕事なのでした。昨日やり残した仕事は、なた漬けとお新香とを小鉢に盛り付けることで、今日打つ予定の蕎麦の数だけ盛り付けておいた。実は蕎麦粉がもう残り少なくて、今日の午前中に頼んだ蕎麦が届くはずなのですが、あと1kgぐらいは蕎麦粉があるだろうという感覚なのでした。850gで蕎麦を打てば9人分は取れる計算です。

 家に戻って朝食を済ませたら、書斎に入ってひと眠りするのでしたが、最近はどうも1時間以上眠ってしまうから困っている。夕べのプールが疲れたはずもないのに、やはり確定申告の申請書づくりで続けて夜更かしをしたのがいけなかったのか。9時前に家を出て蕎麦屋に出掛け、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのです。蕎麦粉の量が多いと打ちづらいだろうと、少し水を多めにしたのが好かったのか悪かったのか、奥行きが90cmで切りべら20本。

 いつもより20分ほど遅れていたから、金柑大福を作るのも野菜サラダの具材を刻むのも、意識を集中させて短時間で仕上げる努力をするのでした。今日は女将が来るのが開店時間からなので、店の掃除も自分でやらなければならない。油を天麩羅鍋にあけて、天つゆの鍋を火にかけ、ぎりぎり開店の時刻に間に合った。暖簾を出しても朝が寒かったからか、昼過ぎまでお客は来なかったのです。最初にいらっしたのは、向かいの畑の薩摩芋農家のご主人たちでした。

 天せいろの大盛りを頼まれて、芋作りの話を聞きながら天麩羅を揚げる亭主。それから暖かくなってきたと思ったら、今日は珍しく大勢のお客がご来店なのでした。1時半には生舟の中の蕎麦がすっかりなくなって、「お蕎麦売り切れ」の看板を出す。洗い物をする暇がなかったので、閉店してからが大変なのでした。女将と二人で話をする暇もなく黙々と片付け物をする。それでも3時前には家に帰って、遅い昼を食べるのでした。ひと休みして女将は買い物に。

 亭主は陽の当たる書斎に入って、ひと眠りしようと横になったけれど、眠れないので居間の部屋でテレビ映画を観る。今日は夕刻に業者が食材を持ってくるので、また蕎麦屋に出掛けなければならないのです。4時半過ぎに車で蕎麦屋に出掛けたら、坂道を登ってくる女将の姿が見えた。蕎麦屋に着いて昼の洗い物を片付け、明日の蕎麦汁を徳利に詰めて、業者の若者に出すコーヒーを沸かしておくのです。5時過ぎに若者が来て、また余計な物を買わされる。


3月15日 金曜日 朝の5時から蕎麦を打った割には…

 明るくなるのが随分とはやくなった。今朝は4時半には目覚めて居間でコーヒーを入れて飲む。今日は女将が手伝いに来ない日だからと気を張っていたから、5時には家を出て蕎麦屋に出掛けるのでした。向かいの畑の端にある森の空が、綺麗な群青色に染まっているのです。思ったほど寒くは感じなかったけれど、畑には真っ白な霜が降りていた。日の出の時刻が一日で一番冷えるのです。蕎麦屋に着いて店と厨房の電気を点けたら、蕎麦打ち室に入るのです。

 このところ朝食後のひと眠りが長いので、家を出るのがどうしても遅くなってしまう。すると後の作業も遅くなるので、朝食前に蕎麦を打ってしまおうと考えたのです。室温は13℃もあるから、蕎麦を打つにもちょうど好い具合なのでした。伸した時に四隅を綺麗に撮るためには、最近は加水を少しだけ増やしている。今朝も47%強で蕎麦粉を捏ね始めました。蕎麦玉を仕上げて寝かせている間に、厨房に戻り、今日飲むほうじ茶を沸かしてグラスに入れておく。

 無事に蕎麦を打ち終えたら厨房に戻って、昨日すっかりなくなった小鉢の盛り付けをしておきます。今日打った蕎麦の数だけ盛り付けたら終わり。洗濯機の中に入ったままの洗濯物を干して、乾いた洗濯物は畳んで戸棚にしまう。あれやこれやで7時前になって、家に戻れば女将が朝食を用意している。今日はほっけが焼いて出て来た。食後は書斎に入ってひと眠りと思ったけれど、居間の椅子で少し眠っただけでもうすっかり目が覚めていた。

 ゆっくりと洗面と髭剃りを済ませて、着替えたら再び蕎麦屋に出掛けていく。外は暖かくなってきていたので、手袋も帽子もベストもなしで歩いて行けたのです。蕎麦打ちを済ませてあったから、9時半に蕎麦屋に着いても余裕がある。金柑大福を包んで、野菜サラダの具材を刻みながら、天麩羅の具材も切り分けておく。大根もおろしてすべての食材を調理台に並べて11時前なのでした。睡眠が足りていなくて大丈夫だろうかと、ちょっと心配になるのです。

 昼を過ぎて、今日は女性のお客ばかりがご来店でした。晴れて暖かくなった割にはお客の数が少なかったけれど、野菜サラダやデザートの金柑大福が二つずつ出た。毎日、混んでは逆に疲れるからこのくらいで好い。明日の土曜日からはまた更に暖かくなると言うから、女将のいる日にお客がいっぱい来てくれた方が好い。2時半には家に帰って、ひと休みしたら蕎麦粉の代金を支払いに郵便局に行く。それから夜のプールに行くまでひと眠りするのでした。



3月16日 土曜日 暖かな週末だからかお客が早くから…

 夕べのプールが疲れたはずもないのですが、今朝は6時過ぎまで眠ってしまう。「暖かいからよく眠れたわ」と朝食の準備をする女将が言うのを聞いて、自分もそうなのだろうかと思う亭主。仕方がないから、朝食を食べて身支度を調えたら、コーヒーを入れてひと休みする。書斎には眠りに入らなかったのです。9時前に家を出たところで、姫水仙が塀際に綺麗に咲いているのを見て、朝の元気を貰うのでした。空は青く、風も暖かいのです。

 蕎麦屋に着いたら、早速、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つのでした。昨日の蕎麦が4束残っていたので、今朝は9束打って、13人分の用意でいいだろうかと、47%強の加水で蕎麦粉を捏ねていく。暖かくなったせいか、少し柔らかめに仕上がって四隅は綺麗に取れたのですが、最初は、生地の柔らかい分、切り幅が上手く揃わない。無事に9,5人分の蕎麦を打って、10時前には厨房に戻ることが出来た。すぐに金柑大福を包む準備をするのです。

 店の中は16℃もあったから、エアコンを消して作業をするのでした。動いているとどうしても身体が熱くなるのです。野菜サラダの具材を刻み、いつもの通り3皿ずつ用意して、11時過ぎには開店の準備が整うのでした。ところが、もう駐車場には車が停まって、油が温まるまで店の中で待ってもらうのでしたが、次の車がまた入って来たから暖簾を出さずに開店状態。お湯は沸いていたので女将がお茶を出して注文を取る。やっと暖簾を出して30分で7人のお客。

 12時半には最初のお客がもう帰られた。と思ったらまた次のお客がいらっして、天せいろの大盛りとヘルシーランチセットの天せいろを頼まれる。天麩羅の具材が足りないので、切りわけたり大忙しで厨房は楽しさ一杯。早めに洗い物と片付けを初めたので、2時半過ぎには家に帰ることが出来ました。ひと休みしたら、女将はお彼岸の墓参の準備に墓の掃除に出掛け、亭主は書斎に入ってひと眠りです。早めの夕食を一人で食べて、夜の防犯パトローに出掛ける。

3月17日 日曜日 昨日よりも暖かく更にお客が増えて…

 本当に珍しく今朝はセットした目覚ましのタイマーで目覚めた。いつもは大体で起きるのだけれど、今日はする事が沢山あるのでした。まだ薄暗い5時には蕎麦屋に出掛けて、厨房の明かりの下ですっかりなくなっていた空の蕎麦徳利に蕎麦汁を補充する。予備の一番出汁も使って蕎麦汁を作り、これだけあれば大丈夫というくらいの数を用意した。もし今日もお客が多かったら、出汁取りから初めてまた蕎麦汁を作らなければならない。夜の仕事になるのです。

 コーヒーを入れて飲みながら、次の仕込みの支度をする。小鉢がほとんどなくなったから、残った食材で今日明日の分の小鉢を作らなければならない。切り干し大根を膝下の引き出しから見つけて、冷凍してある干し椎茸と油揚げに人参の端切れを入れ、一緒にごま油で炒める。出汁を入れて煮込んで出汁醤油と砂糖で味付けをしたら、二日分の煮物が出来上がるのでした。早速、小鉢に盛り付けて今日の分を準備したら、残りはタッパに入れて保存しておきます。

 ちょうど森の影から朝日が昇る時間だったから、玄関に出て写真を撮っておく。水蒸気が多いからか、空は晴れているのにぼうっとした明るさなのです。外はいつになく暖かくて、店の中も暖房を入れなくても作業が出来るのでした。予報でも今日が一番暖かいらしく、昼からは風の強いのが難点なのでした。家に戻って朝食を食べたら、書斎に入ってひと眠りする。ぐっすりと1時間近く眠って、髭も剃らずに着替えを済ませ、蕎麦屋に出掛けるのでした。

 誰にも会わないと思ったら、今日は日曜日なのです。看板と幟を出したらチェーポールを降ろして、蕎麦打ち室に入ったのが9時ちょうど。昨日残った3束の蕎麦に加えて、今朝は800gの蕎麦粉を捏ねて、8束半の蕎麦を用意した。風が強い日にはお客が来ないという経験知からなのですが、今日も開店の20分前からもうお客が駐車場に集まっていた。暖かくなったら、蕎麦でも食べようかと思うのでしょうか。早めに暖簾を出したのは好いけれど、後が大変。

 いつもいらっしゃるカレーうどんのご主人ご夫婦が、開店の時刻に来たのだけれど、テーブル席は一杯でカウンターに座っていただくしかなかったのです。12時を過ぎた頃には、もう生舟の中の蕎麦は残り少なくなって、厨房はてんてこ舞い。ひと休みする暇もなく洗い物も出来ない。ヘルシーランチセットの天せいろを頼まれたご夫婦が最後かと思ったら、もう一台車が入って男性の一人客がご来店なのでした。天麩羅の具材も底が尽きたので、困ったのです。

 「もう天せいろは出来ませんので、天麩羅が食べたければ、せいろ蕎麦と単品でご注文下さい」と亭主があらかじめ言っておいたので、せいろ蕎麦と赤いかの天麩羅と白エビの掻き揚げをご注文なのでした。海老天をサービスでお付けして、なんとかカバーしたつもり。最後のお客達は随分ゆっくりとなさって、1時半近くに皆さんお帰りになる。女将と二人でひと休みです。それから大量の洗い物を黙々とこなして、家に戻ったのは3時前なのでした。


3月18日 月曜日 強い北風で畑の土も舞い上がる…

 キーンキーンという風の音で目覚める朝。100mも上空にある送電線がもの凄い音を立てて鳴るのです。居間の部屋でコーヒーを一杯飲んで一服したらもう6時になる。朝焼けの空を眺めながら、車を出して蕎麦屋に出掛ける亭主。玄関前に置いたベンチが強風で倒れていた。店の中は暖かかったけれど静かな夜明けではないのです。蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打ってしまおうと考えた。昨日の蕎麦はまったく残っていなかったが、8人分も打てば十分でした。

 季節が変わったのか、47%の加水でも少し柔らかめに仕上がるから、四隅がきちんと取れて気持ちが好い。でも、柔らかい分、油断をするとぐにゃっと包丁がずれてしまうことがあるので、気をつけながら包丁を打ち下ろすときに駒板をぎゅつと押さえる。これで最後まで蕎麦を打ち、8人分の蕎麦を生舟に並べたら朝飯前のひと仕事は終わりです。朝食後の次にする仕事の準備をして、家に戻って女将の用意してくれた朝食を食べるのです。

 食後は書斎に入って1時間ほど眠るのですが、やはり送電線のキーンという音が気になって深く眠れなかった。二日ぶりに髭を剃って着替えを済ませたら、女将に「行ってきま~す」と声をかけて蕎麦屋に向かうのです。みずき通りの角にあるお宅の白い椿が、青空を背景に綺麗に咲いていました。蕎麦打ちを終えているという安心感が、今朝の仕事をスムーズにさせてくれる。南瓜を切り分けてレンジにかけたら、天麩羅の具材を切り分けて容器に入れていく。

 前の畑は、時折、強く吹く風で土が舞い上がって、それがいつまでも続くから、土の量が減るのではないかと心配してしまうほど。立てた幟の生地は端の方が少し風で切れてしまったらしい。もう何年も使っているから、今度壊れたら1200円と書いてある天せいろの値段を上げようと決めているのです。実際、ここ2、3年で天麩羅の油や天ぷら粉は3割も値上がりしているし、天麩羅は赤字の種なのです。値上げはしないと幟に印刷したからなかなか上げられない。

 この強風の中を昼の前後にお客がいらっしたから有り難かった。大きなゴールデンレッドリバーを後部座席に載せた年配のご夫婦は、せいろ蕎麦の大盛りと普通をご注文で、車に残した犬を気づかうように早めに食べて帰られた。後からいらっした若いカップルはヘルシーランチセットの天せいろとせいろ蕎麦を頼まれたから、作ったばかりの野菜サラダと金柑大福が二つずつ出たので嬉しかったのです。男性が「全部美味しかった」と言って帰られた。

 強い風の吹く中を、幟が折れるのではないかと心配しながら、ラストオーダーの時間になったら暖簾をしまう。洗い物はすべて終わっているから、帰りの支度は残った食材を持ち帰る準備をするだけなのでした。2時半前に女将のいない家に帰ってひと休みです。パソコンに今日の売り上げと写真のデータを入力したら、暖かい陽射しの差し込む書斎で横になってひと眠り。ビーフシチューをご飯にかけて夕飯を済ませたら、相撲を最後まで観てプールに出掛ける。


3月19日 火曜日 今日は仕入れと墓参と仕込みをして…

 今朝はちょっと冷えたからか、女将も亭主も少し起きるのが遅かった。「寝坊しちゃったわ」と台所に現れた女将に、「俺が作るから好いよ」と言ってナスとピーマンと肉を炒めて、味噌味のあんかけにしたのです。味噌汁の代わりにキノコ汁を温めて朝食の支度は終わり。肉以外のおかずはすべて蕎麦屋の残りものなのでした。今日は買い出しの間に墓参りに行くので、朝のひと眠りもせずに女将が朝ドラを見ている間に、早めに蕎麦屋に出掛けるのです。

 お袋様を車に乗せて農産物直売所へ行けば、中学校の裏手に桜が咲いていました。毎年、ソメイヨシノよりも早く咲く品種で、五分咲きほどだったけれど、やっと春が来たと感じるのです。直売所の入り口にはいつもと違って段ボールに書いた「9時から」と看板が出ていた。最近、お客が増えて早くから買いに来る人がいるらしい。店の中に入ればぷ~んと甘い苺の香りが漂って、見れば1パックで600円もする苺が並んでいる。沢山買って帰る人もいるので驚く。

 隣町のスーパーに行く前に家に寄って女将を車に乗せる。9時半前だったけれど、洗濯物を干して彼女にはちょうど好い時間なのでした。女将が外で墓に供える花を選んでいる間に、お袋様と亭主は店の中でいつも通りの買い物を済ませる。それから近くの霊園に行ってまずは三つの墓の草取りをして、亭主が水を汲んで線香に火を点ける役目。無事に墓参を終えたら、お袋様と女将を家に送り届けて、蕎麦屋に戻るのです。野菜類を片付けてお新香を漬ける。

 前の畑では沢山の車が停まって、何やら仕事を始めている。ネットで調べたらかなり大規模な薩摩芋農園で、若いご主人の力量が知られるのでした。若い人が休耕地に入って農業を続けるのは、とても好いことで地域の活性化に繋がると、店に来るお客も言っていたのです。11時過ぎに家に戻って、今日は堅焼き蕎麦を作って女将に喜ばれる。多めに油を入れたフライパンに焼きそばを並べて、焦げ目が付くまで焼いたら裏返し、隣の火口ではあんかけを作る。

 肉の他に海老や鶉の卵やヤングコーンにマツシュルームなどを入れ、野菜は白菜、人参、ピーマンと色とりどり。久し振りにあんかけ焼きそばを食べて、満足した亭主は書斎に入ってぐっすりと眠るのでした。女将のスポーツクラブの予約があったから、2時前に目覚めて無事に席を予約する。それから蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みに入るのです。鶏肉を使う都合上、カレーの具材を刻み、キノコ汁の具材を隣の火口で同時に作って、煮詰めていきます。

 4時半にはすべての仕込みが完了して、家に戻れば女将はテレビの相撲中継をかけながら、台所で夜のご飯の支度をしていた。10匹で160円の鰯が出ていたのを、亭主が買って帰ったから、早速、女将が腸と頭とを落として焼いて食べるのでした。今日も忙しかったけれど、一つ一つ行事が終わるのは心安らかになれる時なのだと、つくづく思うのです。明日はまた朝から蕎麦屋に出掛け、今週の仕込みの後半を続けなければ。これが健康の秘訣なのかも知れない。