2024年3月上旬



3月5日 火曜日 啓蟄の日なのに終日の雨で…

 今朝は5時半に目覚めて、居間の部屋でコーヒーを入れて飲む。6時のニュースを少しだけ見たら、蕎麦屋に出掛けて昨日の洗い物の片付けと、持って帰ってこなかった食材の残りを家に持ち帰る。寒い朝だったから、朝食後のひと眠りも1時間も眠ってしまい、顔も洗わずにお袋様を迎えに行ったのです。農産物直売所に着くと、早くからもう店に来ているお客達がいた。今日の生椎茸はまずまずの出来、隣町のスーパーに行って沢山の品物を仕入れて帰る。

 野菜を冷蔵庫に収納して、白菜と大根を塩で漬けたところで昼飯の時間になったので家に戻る。昨日打った蕎麦の残りを女将は寒いからとキノコ汁に付けて食べる。亭主は二人分を盛り付けて、葱と山葵で食べた。お客が多かったわけでもないのに、天麩羅を揚げて帰るだけの体力が残っていなかったのです。食後は書斎で横になったけれど、少し眠ったかと思ったらもう目が覚めたので、蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをするのでした。雨はいよいよ本降り。

 出汁を取ろうと思って、朝から昆布と干し椎茸を鍋に入れておいたのですが、返しの甕に残りがもうなくなっていたので、先に返しを仕込むのでした。お客が増えた週は蕎麦汁も捌けるから、返しも直ぐになくなるのです。以前は、もう一つの甕も使っていたから、それだけお客の数が減っているのです。本当は作って一週間は寝かせなければいけないのですが、最初の一回はどうしても作ってすぐに使うことになる場合が多い。5㍑の鍋で大甕一杯分です。

 返しを作り終えたら、今度は出汁取りを始める。こちらは小一時間かかるから、間に洗濯機の中の洗い物を干したり、段ボールに入ったままの荷物を押し入れに並べたりする。3時過ぎまでかかって出汁を取り、蕎麦汁を作って水で冷やしてから、冷蔵庫に入れるのです。蕎麦屋に来る前に、女将の両親と亭主の父親の、墓の管理事務所に管理料を支払いに、コンビニに行った。その帰りにガソリンスタンドで灯油を買って来たけれど、車の中に忘れたまま。

 そのまま面倒だから取りに行かずに、夕飯を作ったのでした。ひとつ終えるともうなにか一つ忘れてしまう年齢です。冷たい雨は夜まで降り止まない。お好み焼きも蕎麦屋で残った野菜サラダを食べる爲に作り始めたけれど、最近では一人一枚は多すぎると、一枚を厚めに作って女将と半分にする。今日は亭主が串焼きもあったので女将が少し多め。確定申告の時期なのにやらなくてはならないとは思いつつも、眠ってばかりでなかなか先に進まないのです。


3月6日 水曜日 今朝も冷たい雨、去年の春よりも寒いのか…

 午前4時半には目覚めたけれど、例によって居間の部屋でコーヒーを飲みながらぼーっとしている。確定申告の準備もしなければならないし、今日は夕刻に夜の防犯パトロールがあるので、早くやれることはやっておこうと気持ちばかりが焦るのです。5時半を過ぎたら車を出して冷たい雨の中を蕎麦屋に出掛ける。車外温度は5℃と昨日の朝より気温は低い。まだ薄暗いので店の電気を点けて暖房を入れたら、厨房でまずは白菜のお新香の着け直しをする。

 やっと水が上がってきたので、昆布と唐辛子を切って柚子を散らして上下をばらばらと入れ替えるのです。まな板を出して、南瓜を切り分けてレンジでチーンしている間に、ピーラーで蓮根の皮を剥く。酢水に切り分けた蓮根を次々と入れて、5分ほど沸騰するまで茹でる。やっと外が明るくなったけれど、曇り空で雨まで降っているから、地面の中の虫たちもはいでては来ないだろうと思った。6時半を過ぎたので、家に戻って朝食の支度をする。

 亭主の仕事は蕎麦屋で残った野菜サラダを、肉と炒めてあんかけにすること。今朝は大きめの海老を入れてちょっと豪華。シジミの味噌汁にほっけの塩焼きを添えて、朝食はご飯のおかわりをしたいくらいなのでした。満足して居間でお茶をもらったら、書斎に入ってひと眠りする。定休日だからと気が緩んでいるのか、9時近くまで眠ってしまうのでした。台所で洗い物をしていた女将に「行ってきま~す」と声をかけて午前中の仕込みに出掛けるのでした。

 まな板を生もの用に替えて、鶏肉を刻んだら、キノコ汁を仕込む前に豚のハラミを袋の半分だけ解凍して、串に刺して他タッパにいれておく。包丁とまな板を洗ったら、キノコ類を半分だけ使って、鶏肉を出し汁で煮たところに入れて塩味で煮込む。残った半分は袋煮入れて冷凍室に入れておくのです。一度に全部を煮てしまうよりも、この方が味が落ちないと最近分かった。次に天麩羅の具材を切り分け、ラップをかけてから容器に入れて冷蔵庫で保存する。

 三つ葉を切ろうと思ったら、昨日の仕入れて買い忘れているのに気が付いた。午前中の仕込みはここまでにして、隣町のスーパーまで車を走らせる。11時には家に戻って、昼食の用意は亭主の仕事。女将が肉と野菜を刻んでおいてくれたから、鍋を振って炒めるだけなのでした。炒飯の素を買って来たので使ってみたら、これが案外と美味しかった。食後はひと眠りはせずに確定申告の準備。机の上に溜まった書類を片付けて、去年の決算書を印刷しておくのです。

 女将はその間にスポーツクラブに出かけ、亭主は買って来た三ツ葉を持って蕎麦屋に出掛け、午後の仕込みをするのでした。雨はまだ降り止まない。白菜のお新香となた漬けを小鉢に盛り付け、ラップをかけて冷蔵庫に入れておきます。3時過ぎに家に戻ったら、ちょうど女将が帰ってくるところでした。テレビを観てひと休みする亭主。6時前にはパトロールの集合場所に行かなくてはならないから、夕食は4時過ぎには食べた方が好いとラーメンを茹でる。



3月7日 木曜日 真冬に戻ったような寒い一日でした…


 今朝も6時過ぎに一度蕎麦屋に来たけれど、エアコンを入れて店の中が暖まらないうちに家に戻ったのです。朝食を食べて次に歩いて来た時には、なんと道路に白線が引かれていました。随分早くから仕事をしたものだと感心するばかり。亭主も負けじと蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。寒かったからなかなか家を出られなかったので、少し時間は遅れていました。女将が来てくれるのは開店からだから、その前に店の掃除も終わらせなければならない。

 あまり寒いから一度しまったセーターを着込んで来たけれど、厨房で動いているうちに暑くなるのでした。室温はまだ18℃だけれど火も使っているし、身体が動くとやはりセーターは暑すぎると、奥の部屋で脱いでくるのでした。開店の5分前に最初のお客が来た時には、まだ暖簾を出していなかったけれど、中に入ってもらって店の照明を点けてお茶を出す。天せいろのご注文なのでした。風も冷たいのに、続けて若いカップルがテーブル席に座るのでした。

 女将がやっと来てくれて、早くから車が2台も駐車場に停まっているので驚いていた。晴れるという予報でしたが、昼過ぎまで曇り空で風は強くなるばかりなのです。天せいろにヘルシーランチセットをお出ししたら、途中で白エビの掻き揚げも頼まれて、若い二人は食欲も旺盛なのです。「随分海老が大きいですね」と青年が言うから「氷見の白エビなんですよ」と亭主が応える。1時過ぎに黒いワゴン車に乗ってお坊さんがいらっしてぶっかけ蕎麦を頼まれた。

 やっと少し陽射しが見えて、女将のスポーツクラブの予約も無事に済んだので、亭主は賄い蕎麦を茹でて食べるのでした。洗い物を済ませて家に帰る頃には、手袋は要らないほどに暖かかった。それでも家に戻って居間の部屋に入れば、室温は11℃とストーブを点けなければいられないのでした。女将の稽古場は、陽射しが当たって20℃を越えていたと言うから、冷たい風で随分と違うものなのでした。明日は朝からみぞれ模様だと言うから、更に寒くなりそう。


3月8日 金曜日 雪で今日はお客は来ないと思っていたのに…

 夕べの天気予報では朝方にみぞれが降ると言っていたのに、6時過ぎに家を出たら大粒の雪が降り始めたのです。みるみるうちに向かいの畑が白くなって、車外温度は2℃だったから、昨日よりも寒い朝なのでした。とは言え、今日も営業するからには、食材を用意しなくてはならないから、空の蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、お新香を漬け物器から取り出して切り分ける。去年はこの時期20℃を越える暖かな春で、お客も沢山来ていたのに変われば変わるもの…。

 家に帰れば寒いからと女将が親子丼にしてくれて、若布と豆腐の味噌汁で身体が温まる。食後は例によって、30分ほど書斎で横になって休むのでした。少し小降りになった雪の中を、傘を差して蕎麦屋まで歩けば、道路もシャーベット状に雪が溶けて流れ出ていました。さすがに通りには人も車も見えないのです。今日はセーターの上にジャージの上着を着て、さらにジャンパーを着た上にマフラーまでして出掛ける亭主なのでした。勿論、皮の手袋は必須です。

 蕎麦屋に着いたら、雪の降る中を看板と幟を出して、チェーンポールを降ろすのです。早朝にエアコンの暖房を点けて家に帰ったのだけれど、室温は11℃までしか上がっていたなかった。蕎麦打ち室に入り、蕎麦粉と小麦粉とを計量して47%の加水で生地を捏ねる。生地を寝かせている間に大鍋に水を汲んで、次の仕事の準備をしておく亭主なのでした。今日は女将が来ない日だから、時間に遅れてはならないのです。店の掃除の分の時間が必要だからです。

 何時の間にか雪が霙(みぞれ)に変わり、霙が雨に変わって、向かいの畑の白い雪がどんどん溶けていく。蕎麦はいつもより若干太めで仕上げて、今日は昨日の残りと合わせて9食分の用意でした。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、天麩羅の具材を切り足したら、大根をおろして、天麩羅鍋に油を注ぐ。大釜のお湯が沸いてきたら、四つのポットにお湯を入れて、温かい汁を作っておく。11時を過ぎてやっとテーブルを拭き始めて、10分前には暖簾を出す。4

 開店と同時にリピーターのご夫婦がカウンターに座って、なんとカレーうどんのご注文なのでした。寒いところを有り難いのです。いつも奥様がカレーうどんだけれど、今日はご主人まで同じ注文。まずは野菜サラダをとドレッシングをお持ちしたら、カレーを溶かしてうどんを茹でて、時間のかかる作業の途中で、もう次のお客様が入って来るではありませんか。こちらはキノコつけ蕎麦と天せいろを頼まれたが、カレーうどんの出来るまでは調理が出来ない。

 こんな寒い日によくぞまあご来店下さって有り難い事なのです。「今日はご主人一人なのですか?」と言われて、「はい、月曜日と金曜日は女将がスポーツクラブに出掛けるのですよ。お客も少ない日ですから」と亭主が応える。12時半には皆さんお帰りになって、亭主は下げた盆や蕎麦皿や器を洗い始めるのです。1時半になってお客も来そうになかったので、天麩羅を揚げて賄い蕎麦を食べる。女将の帰る前に家に戻って、夜のプールまで書斎で昼寝です。


3月9日 土曜日 陽射しはあったものの昨日よりも寒く…

 6時過ぎの日の出も空は雲に覆われて、向かいの畑の真っ白な霜ばかりが目立っていました。朝飯前のひと仕事は10鉢もあれば足りるだろうと、小鉢を盛り付けただけ。車外温度は3℃と昨日とあまり変わらなかったが、冷たい風が強く吹いて、相当な寒さなのでした。朝食を食べてひと眠りしたら、1時間もぐっすりと眠ってしまったから、慌てて家を出る。夕べのプールが効いたのか、疲れが取れていないのかも知れない。やはり年齢を感じるのでした。

 蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つのでしたが、8人分を打っていざ生舟に入れようと思ったら、昨日の蕎麦が随分と沢山残っているではありませんか。「カレーうどんのお客が二人いたのよ」と女将に言われて合点がいった。蕎麦は当然その分出ていないので今日は14食の蕎麦を用意して営業を開始することになったのです。厨房に戻って金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻んでいつもの通り3皿ずつ並べて、時計は11時を回ったのです。

 開店間際まで、天麩羅の具材を切り分けたり、結構、忙しなかったのです。暖簾を出したらすぐにお客さんが入って、続けて次のお客がいらっしたから、ちょっと驚いた。この寒さの中をよくぞ蕎麦を食べに来て下さったと感謝の気持ちなのでした。ところが、今日はそれからずっとお客が途切れることなくご来店で、なんと天せいろが10人分も出たからびっくりなのです。やはり晴れているからなのでしょうか。多いかと思った蕎麦も最後はまったくなくなった。

 女将も動きっぱなしで疲れただろうと、洗い物を終えたところで先に家に帰した。大釜の洗いや油の処理やまな板の消毒、洗濯物は亭主が一人で休みながら気長に終えるのでした。それよりも冷蔵庫の中の小鉢は後から盛り付けた物を含めて、何もないので困った。蕎麦汁もほとんど残っていないのです。夜にまた蕎麦屋に来て仕込みをしなければいけないと思うと、気が遠くなる思いなのでした。庭の姫水仙が陽射しを浴びて可愛らしく咲き並んでいるのでした。

 珍しく蕎麦屋も混んだので、3時過ぎに家に戻ってひと休みしたら、書斎に入ってひと眠りするのでした。ぐっすりと眠って目覚めればもう5時を過ぎていた。女将のおかずを先に作って、亭主は後からモヤシラーメンを作って食べる。夕べ買ってきた豚骨スープで食べたのですが、これが美味しいから汁まで飲んでしまう。ところが、後からずっしりと腹に応えて苦しくなってくる。やはり若い頃とは違うのです。6時半になったら蕎麦屋に出掛けていく。

 昔、蕎麦屋が混んでいた頃は、やはり夜の仕込みをしていたのだったろうか。まだ体力もあった年齢だから、あまり気にならなかったのかも知れない。風呂の時間まで1時間半ほどで何とかなると思ったのだけれど、蕎麦汁を空の蕎麦徳利に詰めて、お新香を切り分けて小鉢に盛り付け、南瓜の従姉妹煮を作ったところで、もう時間になった。金柑の甘露煮と蓮根を茹でるのは明日の朝になるのでした。明日は蕎麦を二回打たなくてはならないから朝から忙しい。


3月10日 日曜日 空は快晴で昨日よりも暖かかったけれど…

 朝の6時過ぎ。もう陽が昇ってくる。季節はどんどん移り変わっているのに、気持ちがついて行けない自分に一抹の不安を感じる。昨日の夜に仕込みが終わらなかった分を、朝飯前のひと仕事で片付けなければと、頑張って起き出して来たのです。夕べは、疲れているはずなのに何故か眠りに就けなくて、睡眠不足の朝なのでした。うっすらと霜が降りて、風の弱まった分だけ昨日よりも暖かかったけれど、車外温度は昨日と同じく3℃。

 厨房に入ってまずは蓮根の皮を剥き、酢水で茹でる。次に金柑を半分に切って種取りをしたら、こちらも酢水で湯がいて糖蜜で茹でるのです。夕べ作った南瓜の従姉妹煮を小豆と共に盛り付けて、ラップをかけたら冷蔵庫に入れる。これで時計は6時半を回るから、洗い物を済ませて家に帰るのです。女将の作った朝食を食べて、書斎に入って、時間を気にしながらひと眠りする。今朝は蕎麦を二回打たなくてはならないから、気が気ではないのです。

 9時前に蕎麦屋に着き、蕎麦打ち室に入って蕎麦玉を二つ分こしらえて、寝かせている間にもう女将がやって来る。いつもなら10時前には蕎麦を切って生舟に並べるのですが、今日は二回分だから、30分ほど遅れて厨房に入った。金柑大福を包もうと思ったら、白餡が少ししか残っていなくて、二つ分しか出来なかった。野菜サラダはいつもと同じく三皿用意してカウンターに並べる。ギリギリ5分前に開店の準備か終わり、やっと暖簾を出すことが出来たのです。

 ところが、こんな好い天気なのになかなかお客が来ないから、日曜日だからゆっくりなのかと女将と二人で待つのでした。昼を過ぎてリピーターのご夫婦がいらっして、天せいろとヘルシーランチセットをご注文。天麩羅を揚げていたら、もう次のお客がご来店なのです。続けてもう一人女性が玄関を入って「駐車場はもうないのですか?」と尋ねるから3台は入れると応えたけれど、そのまま戻って来なかった。温かい天麩羅蕎麦とせいろの大盛りの注文でした。

 さらにキス、赤いか、ワカサギ、白エビの掻き揚げを頼まれるから、食べられるだろうかと心配しながら天麩羅を揚げたけれど、若い息子さんが全部食べたから驚いた。1時過ぎに皆さんお帰りになって、亭主は早めに賄い蕎麦を食べる。昨日は混んで大変だったから、あれだけ苦労をして今日の準備をしたものの、今日は天気の好い割にはお客が少ないのでした。分からないものだと女将と話しながら、洗い物と片付けを済ませるのです。