2024年3月初め



3月1日 金曜日 朝まで降った雨、昼からは青空が…

 朝はまだ冷たい雨が降り続いて、蕎麦屋に出掛けて朝飯前のひと仕事を済ませて家に帰る亭主。7時前に家に戻れば、女将が朝の支度をし終えて二人で向き合って朝食を済ませるのでした。食後は例によって書斎に入り、30分ほどひと眠りするのです。昨日は随分とぐっすりと眠れたのに、腹が一杯になると眠くなるのは習慣なのかも知れません。今日は蕎麦打ちが少しだけだったから、少し遅れても大丈夫という安心感もあったのかも知れなせん。

 蕎麦屋に出掛ける頃には雨は上がっていたけれど、空は厚い雲に覆われて、昼からは晴れるという天気予報も信じられない。洗濯物を干したら、宅配の置いていった荷物を片付け、段ボール箱を奥の座敷に入れて、蕎麦打ち室に入るのです。今日は女将が来ない日だから、少し仕事が多いのできびきびと動く亭主なのです。加水率は47%で500gの蕎麦を打って、綺麗に揃えて蕎麦切りをする。昨日の残りの蕎麦と合わせて、今日は10食の用意で営業を始めるのです。

 野菜サラダの具材を刻んで皿に盛り付けたら、外は青空が広がって来ていたから、天気予報もまんざら嘘ではなかったかと感心するのでした。気温はどんどん上がって、昼の頃には13℃まで上がり、暖房を入れている店の中は23℃まで室温が上がる。昼過ぎに年配のご夫婦がいらっして、天せいろのご注文をされる。天麩羅の油もおろしたばかりで、今日初めての料理を丁寧に仕上げてお出しする。蕎麦湯も綺麗に飲み干して「美味しかったわ」と言って帰られた。

 空はどんどん晴れ間が増えて、店内は24℃まで室温が上がった。通る車は多いのに、蕎麦屋に来る客がいないのが不思議なくらい。1時半近くになって、リピーターの母と娘がご来店で、お二人とも天せいろのご注文なのでした。晴れると天麩羅が出るという経験知はここでも生きたのです。娘さんが海老アレルギーだというので、海老の代わりにキスと赤いかを揚げてお出しすれば、綺麗に食べてくれました。閉店時間いっぱいまでゆっくりと食べて帰られた。

 それから盆や蕎麦皿をカウンターに載せて、まずは暖簾をしまって看板と幟を片付ける。そして、洗い物をする前に亭主は賄い蕎麦を食べておくのです。どうしても食後はひと休みするから、洗い物までに時間がかかるのです。今日は夜のプールがあるから、早く帰ってひと眠りしたいところ。3時過ぎには家に戻って、5時まで昼寝をしたら、早めの夕食を食べてプールに出掛ける。帰りに地階のスーパーに寄って、酒のつまみに冷凍のたこ焼きを買うのでした。


3月2日 土曜日 寒い一日だったのにお客が大勢いらっして…

 5時半に目覚めて居間の部屋に行くけれど、まだ頭が醒めていない。熱いコーヒーを入れて飲むけれど、煙草を吸う元気がない。夕べのプールが疲れたわけでもないのに、最近はこんな場面がよくあるのです。若い時代とは違うからと、今の自分の有り様を受け入れるゆとりは年を取ったからからか。辺りがすっかり明るくなる頃に蕎麦屋に出掛けるのでした。ちょうど日の出の時間で、陽の昇る位置が少し北側に移動している。最近は6時過ぎにはもう陽が昇る。

 なくなった小鉢にお新香を切り分けて盛り付けておく。今日の水分補給用にとほうじ茶を沸かし、換気扇を回して煙草を一服しながら、今朝の段取りを考える亭主。昨日が少し暖かかったから、今日は晴れる土曜日だというので、お客が来るかも知れない。蕎麦は多めに打っておこう。金柑大福を包まなければいけないし、朝食後は早めに蕎麦屋に来て仕事をしなければと考えて、家に戻るのです。昨日残ったサラダを炒めてあんかけにするのは亭主の仕事でした。

 気が急いていたからか、食後のお茶をもらって15分だけ書斎で横になる。洗面と着替えを済ませて、二階の窓から富士が見えたので写真に撮っておくのでした。雲がかかっていたけれど、空気は澄んでいるらしい。陽射しはあるのでしたが、風の冷たい朝なのです。蕎麦屋に着くまで誰にも会わずに、今日は土曜日なのだと改めて思うのでした。息子と同じ年のお隣の奥さんが車で仕事に行くのに出会って会釈をする。看板と暖簾を出してチェーンポールを降ろす。

 暖房を入れておいたから、蕎麦屋の中は快適な暖かさで、蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始めるのでした。加水率は今日も47%。袋の蕎麦粉がなくなるまで計ったら850gあったけれど、勢いで蕎麦粉を捏ね始めたのは好いけれど、量が多いと意外と大変で、時間もかかるのでした。今朝は四隅が綺麗に決まったから嬉しい。蕎麦を伸している頃に女将が「今朝は寒いわね。マフラーをしてくるのを忘れちゃった」と言いながら玄関を入って来るのでした。

 蕎麦打ちが終わって一息入れる前に、次の仕事の準備を住ませておく。金柑大福を包む材料を冷蔵庫から取り出して、白玉粉を糖蜜で溶かすのに時間がかかるから、その間にひと休み。時計は10時を回っていたから、いつもの時間で進行しているのです。大福を包み終えたら野菜サラダの具材を刻み、11時前にはカウンターに並べるのでした。いきなり玄関が開いて親父様が入って来たから「11時半からなのですけれど」とお帰りいただいた。

 ところがそののすぐ後に、車が2台やって来て、玄関を開けて入って来るから「11時半からですけれど、中でお待ちいただいてもいいですよ」と応える。まだ開店の30分も前なのでした。注文を急かされるけれど「まだ準備が終わっていないので、今、女将が来ますから」と待ってもらうのでした。こんな調子で、今日は12時前に8人ものお客が入って、始まりから大わらわ。カウンターもテーブルも満杯の状態なのでした。昔はこんな日が多かったなあと思う。

 いつも日曜日にいらっしゃるご主人がカレーうどんのご夫婦も、珍しく土曜日に来てくださった。最初のご夫婦がヘルシーランチセットの天せいろにハラミの串焼きを頼まれたかと思うと、次ご夫婦はカレーうどんにおろし蕎麦とハラミの串焼きのご注文。先ほど帰って行った親父様がカウンターに座って天せいろ。若いカップルがカウンターの反対側に座ってキノコ蕎麦と鴨せいろと、今日はいろいろな注文が殺到して、厨房は大忙しなのでした。近所のご主人に蕎麦を出す頃には12時半近くになっていた。1時を過ぎて女将の友人が来て、自分の食べる蕎麦以外に天麩羅の盛り合わせを二人分頼まれたので、今日はこれまでと「お蕎麦売り切れ」の看板を出す。


3月3日 日曜日 空は晴れて昨日よりも多くのお客が…

 夕べは夕食後に蕎麦屋に出掛け、昼の洗い物を片付けて蕎麦汁の補充やお新香の盛り付けを済ませてきた。どうしてもお客が多くなると、少なかった時の用意では間に合わなくなるのです。お客の少ないことに慣れてしまうと怖い。昔はよく夜の仕込みに出掛けて行ったと、女将の方が好く覚えていました。今朝は朝食後のひと眠りをしないで、8時過ぎには蕎麦屋に出掛け、朝のコーヒーを厨房で入れて飲むのでした。今日の方が暖かくなると言うから心配です。

 8時過ぎに蕎麦屋に着いたら、向かいの畑のビニールハウスの作成がもう始まっていました。3人の作業員が手際よくビニールシートをかけて、瞬く間に仕上がったから驚きなのです。向かいの奥の畑では親父様が鍬を持って畑を耕している。亭主も頑張らなければと蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つのです。加水率はいつもと同じく47%。早朝に暖房を入れに来なかった割にはすぐに室温が上がって、蕎麦はちょうど好い具合に仕上がるのでした。

 金柑大福も野菜サラダも昨日はすべて出てしまったので、今朝はまずは金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻みながら、大根をおろしたり、薬味の葱を刻んだり。大釜の湯が沸いて四つのポットにお湯を入れたら、天麩羅鍋に油を注いで、調理台に天麩羅の具材を並べるのです。早お昼から帰った女将が、サラダや金柑大福にラップをかけてくれた。昨日は早くからお客がいらっしたから、今日は10分前には暖簾を出して、お客が来るのを待つのでした。

 昨日お蕎麦売り切れの看板を出した後にいらっした女性が、今日は一番でやって来て奥のテーブルに一人で座ったのです。天せいろを仕上げてお出ししたところで、入り口側のテーブルに3人が座ってぶっかけ蕎麦の温かい蕎麦と天せいろのご注文。今日も昼前からお客は続いたのです。6人続いたところで一段落。洗い物をし終えて、女将もひと休み。亭主は賄い蕎麦を食べておくのでした。今日はこれで終わりかと思ったら、それからがまた大変なのでした。

 駐車場に車が入って、見れば女性一人のお客さんだったから、もうひと踏ん張りとヘルシーランチセットの天せいろを仕上げる。1時半を過ぎてから、リピーターの四人家族がいらっして、温かい天麩羅蕎麦二つと天せいろとせいろ蕎麦を頼まれる。今日は蕎麦も天麩羅の具材も沢山用意してあったので助かったのです。やはり、暖かいというのが一番の原因かも知れない。2時過ぎに皆さんお帰りになって、もう一度洗い物をして家に帰ったのは3時前でした。


3月4日 月曜日 朝は寒く、日中は暖かな一日でしたが…

 昨日の夜は疲れ果てて、蕎麦屋に後片づけに来られなかった。今朝は4時に目覚めて、居間の部屋で1時間近くボーッとした後で、蕎麦屋に出掛けていく。カウンターの上に干した盆や蕎麦皿を片付け、洗濯物を干したら、何もなくなった小鉢に盛り付けるために、切り干し大根の煮物を作るのでした。隣の火口では二番出汁で温かい汁を作っておくのです。天麩羅の具材もすっかりなくなっていたので、残った分だけ切り分けて容器に入れておきます。

 東の空から陽が昇って明るくなった頃に、家に戻って朝食のおかずの用意をする。昨日残った野菜サラダの具材に、解凍した海老と豚肉を入れ、塩胡椒と顆粒の鶏ガラ、砂糖で味つけをしたら、片栗粉を水で溶いてあんかけ煮にするのです。寒い朝にはちょうど好いおかず。女将がどろっとした卵焼きを作って鰹節と醤油をかけて、ナメコと豆腐の味噌汁で朝食を食べるのでした。食後は例によって書斎に入り、ぐっすりと1時間は眠ったのです。

 9時前には家を出て蕎麦屋に向かう。蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打ち、厨房に入って大根と生姜をおろす。いつもの時間になったら、野菜サラダの具材を刻んで、今週最後の盛り付けをするのでした。テーブルとカウンターを吹き終えたら、11時過ぎには開店の準備が整って、今日も早めに暖簾を出しておくのです。昨日までの混みようが怖かったので、緊張してお客を待つのでしたが、天気は好くても、月曜日だからそんなにお客が来るはずもないのです。

 昼過ぎに橋の向こうから常連さんがやって来て、いつものように大盛りのせいろ蕎麦と辛味大根のご注文。その後は女性のお客がいらっして、天せいろを頼まれた。きちっと仕上げてお出ししたら、「とても美味しかったわ」とおっしゃって蕎麦湯まで綺麗に飲んで帰られた。店の駐車場にあるヒイラギナンテンの実を食べに、大きな黒いヒヨドリが二羽で何度もやって来ていた。かき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べたら、急に疲れが出たのか身体が重くなった。

 お客が来なくても緊張して待っているからか、どうも疲れるらしい。洗い物もあまりなかったけれど、月曜日は家に持ち帰る食材があるので、容器や皿など後から沢山洗う物が出て来るのです。女将よりも早く家に帰って、今日のデータをパソコンに入力したら、そのまま横になって5時半まで眠ってしまった。夕食を食べる暇もなく、お茶を一杯もらって夜のプールに出掛けるのでした。寝起きで泳ぐのもなかなかおつなもので、夜のお酒が美味しかった。