2023年12月初め




12月1日 金曜日 寒さにも慣れて来たけれど…

 蕎麦を打ち終えて玄関を出れば、今朝は雲に覆われた空で、一日中、寒いという予報の意味が分かった。それでも朝の寒さに慣れてきたのか、蕎麦屋の室温が12℃でも暖房を入れて、コーヒーを沸かすのでした。今日からいよいよ、新蕎麦の粉を使って蕎麦を打つ。新蕎麦は少し水分が多いような気がして、加水率は44%で捏ね始めたけれど、蕎麦玉にして伸してみると案外と硬いから意外だった。伸すのに手間取って、少し厚めの生地になってしまいました。

 それでも昨日に続けて昼にいらっした常連さんは、「蕎麦の香りがして、全然違うよ」と言っていた。この寒さの中を冷たい蕎麦を食べに来るのは、やはり相当な蕎麦好きなのでしょう。朝食を終えて蕎麦屋に向かう頃には、少し青空も見えていたけれど、昼間は雲が多くて晴れとは言い難い天気なのでした。お客もなく暇だったから、先月、横浜のそごうにあるイル・ピノーロというイタリアンのレストランで食べたパンナコッタについて調べて見た。

 コース料理の最初にテーブルに運ばれて、「パンナコッタです」と言われたから、デザートが最初に出るのかと不思議に思ったら、パンが付いていたので器に入ったペースト状のクリームを付けて食べてみた。アンチョビの味がしたので、これはバーニャガウタという本来熱々のソースに、クリームとゼラチンを入れて煮詰めて、冷やしたものだったと、店のタブレットでいろいろ調べて想像するのです。始めて味わったものだったから、印象に残っていたのです。

 最初に出して、ワインのつまみにもなるし、料理の口直しにもパンにつけて食べれば好いのです。イタリアンも、結構、奥が深いのだなあと思いました。蕎麦屋は一年ぶりに金柑大福を作った。昨日は求肥を作るのに、氷砂糖を溶かしたものを冷まさずに、粒々の白玉粉と混ぜてしまったから大失敗だったのです。今日は冷やした蜜に少しずつ白玉粉を溶き、もう一度火にかけていつもの求肥が仕上がった。女将に話したら大笑いで、レシピは大切よと言われた。

 昼になっても外は10℃にしかならなかったけれど、1時過ぎに年配の女性と娘らしい女性の二人連れがご来店なのでした。ヘルシーランチセットの天せいろを頼まれたから、食べきれないだろうと思って、お持ち帰り用のパックを一緒にお出ししたのです。食べきれない天麩羅とデザートの金柑大福をパックに詰めていた。それでも大変満足な様子で帰られたから好かったのです。雲は多いけれど、午後になって陽も差して、少し暖かくなってきました。


12月2日 土曜日 朝は日氷点下の寒さで…


 8時間も眠って、朝の6時前には目を覚ました。明るくなっている道を蕎麦屋に急げば、向かいの畑は真っ白な霜に覆われていた。まだ陽は昇っていないから、放射冷却で氷点下まで下がったようなのです。蕎麦屋の厨房に入って、コーヒーを入れながら、空の蕎麦徳利に蕎麦汁を詰め、昨日の洗い物を片付けるのでした。天気予報では今日は北風だと言うから、陽射しはあっても寒い昼になりそうです。昨日の残りの蕎麦の数を確認して家に戻る。

 朝は純和風の素朴な食事で、銀ダラの煮付けがとても美味しかった。居間の椅子に座って食後のお茶をもらえば、いつもなら眠くなって書斎に入るのに、今朝は十分に眠ったから早めに着替えて洗面を終える。土曜日だから二回蕎麦を打たなければならないところだけれど、この寒さでは、それほどお客は来ないだろうと思えるのでした。お袋様に編んでもらったレッグウォーマーがとても暖かい。女将が毛糸の帽子と襟巻きを用意しておいてくれた。

 蕎麦屋に着いたら、幟を立ててチェーンポールを降ろし、看板を玄関脇に出しておく。蕎麦打ち室に入って温度計を見れば8℃だった。この冬一番の寒い朝なのです。これからはまだ寒くなるから、心してかからなければいけない。今朝は900gの蕎麦粉を捏ねて、10人分の蕎麦を仕上げるつもり。生舟の中には3束の蕎麦が残っていたので、お客が多く来たとしても、何とか足りるだろうと考えたのです。捏ねた蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻ってひと仕事。

 夕べはユーミンが出るテレビは番組があったので、プールをお休みにして、早くから酒を飲んでしまったから、お新香を漬けにいけなかったのです。だから今日の小鉢は、大根のなた漬けとこの切り干し大根の煮物。一番早く簡単に作れる小鉢なのです。作り終えたところで再び蕎麦打ち室に入り、蕎麦玉の伸しにかかります。45%で打ったのに、寒いからかどうしても硬めになってきて、四隅が綺麗に決まらない。何とか10食分を包丁切りして生舟に並べる。

 残っていた白玉粉を全部使って、今日は6皿分の金柑大福を作りました。徐々に去年の感覚も戻って、熱々の求肥で白餡にくるんだ金柑を包むのです。慣れて来ればわけもないことなのですが、勘を取り戻すのに随分と時間がかかったような気がする。野菜サラダをいつものように三皿盛り付けたら、天麩羅の具材の足りない分を補って、開店時間ギリギリに暖簾を出すのでした。直ぐにリピーターの母と娘がやって来て、寒いからと鴨南蛮蕎麦を頼まれる。

 蕎麦を出し終えた頃に次の車が駐車場に入って、若いご夫婦がテーブル席に座る。せいろ蕎麦と天せいろのご注文で、直ぐに天麩羅を揚げて蕎麦を茹でるのでした。外は北風だからとても寒いので、換気のための窓の開放もほんの少しだけ。寒い日なのに続けて開店からお客が入ったのも珍しいと思ったけれど、最初だけで後はまったくお客がない。犬の散歩の人も含めて外を歩いている人もいないから、こんな日は表に出ないのだろうと女将と話していた。


12月3日 日曜日 昨日よりはほんの少し暖かかったけれど…

 夕べは風呂に入って身体が温まったら、9時にはもう眠くなって床に入るのでした。8時間は眠って5時過ぎに目が覚める。やはり前の日の習慣を引きずってしまっているらしい。悪いことではないから、よく眠ったと喜んでいればいいのですが、毎日、8時間も眠っていては、ちょっと心配になる。今朝もコーヒーを一杯飲んだら蕎麦屋に出掛け、余りすることがなかったけれど、洗い物を片付けたり、細かな仕事を済ませて、昨日残った蕎麦の数を確認する。

 家に帰れば朝食は昨日の晩のおでんが温められていました。作ったその日よりも、次の日ぐらいの方が味が染みて美味しいのだけれど、もう具がなくなっている。久し振りにナメコの味噌汁が出て、亭主は昔スキー場で飲んだ味噌汁を思い出している。身体が暖まったらまた眠くなって、書斎に入って30分だけひと眠り。庭の黄色くなった金柑を眺めながら、再び蕎麦屋に出掛けるのでした。今朝は風が南風で、その分だけ寒さが和らいでいる感じなのでした。

 蕎麦屋に着いたら、看板と幟を出してチェーンポールを降ろし、蕎麦打ち室に入るのです。暖房は今朝点けたままだったから、室温は16℃まで上がっていた。そのせいか、加水率45%でも少し生地が柔らかに感じたのです。綺麗に伸して包丁切り。昨日の蕎麦が8束残っていたから、今朝は600g6人分だけ蕎麦を打つことにしたのです。晴れて南風の日だからと、お客が沢山来るかと思ったけれど、現実はなかなか厳しいものがあるのでした。

 開店と同時に車が入って、若いご夫婦が天せいろの大盛りと、普通盛りに蕎麦豆腐のご注文。「今週から新蕎麦になっています」と女将が言えば、「蕎麦は何処の蕎麦ですか?」と奥様が聞くから、亭主がカウンターのこちらから「茨城です。常陸蕎麦です」と応えるのでした。お客が帰って洗い物が終わったと思えば、また車が駐車場に入ってくる。更に若いご夫婦がテーブル席に座って、ぶっかけ蕎麦ととろろ蕎麦のご注文。メニューまで写真に撮っていた。

 ところがそれっきりで昨日と同じ。気温も上がって前の道を通る人も昨日に比べたら多かったけれど、蕎麦を食べに来る人はいないのでした。女将に言わせれば「例年冬場はこんなものじゃない?」1時前になったら、蕎麦を茹で、せいろに入れて蕎麦汁につけて、賄い蕎麦を食べてしまう。少し綠がかった新蕎麦は、この食べ方が一番美味しい。蕎麦の香りや味わいが、ぶっかけで丼に入れてしまうと薄れてしまうような気がする。蕎麦湯までしっかりと飲む。

 とろろ芋が切れたので、家に帰るや否や女将を誘って隣町のスーパーに出掛ける。火曜日の仕入れで、家の買い物をしなくて済むから亭主は楽ちんなのでした。ついでに洗濯洗剤やトイレの掃除道具やカレーのルーや醤油、白玉粉など足りないものを買って帰るのでした。昼寝の時間を買い物でつぶしたから、夕食は早めにお好み焼きを作って女将と二人で食べる。寒いからか野菜サラダはまったく出ないので、お好み焼きに入れて食べてしまうのです。


12月4日 月曜日 晴れて南風の一日でした…

 夕べも9時にはもう床に就いてしまいました。やはり、生活習慣なのか。朝まで眠れればそれでも好いのだけれど、どうしても4時間ほど眠ったら一度目が覚める。それでもまた眠って朝の5時には本当に目覚めた。コーヒーを一杯飲んで、6時前には家を出て蕎麦屋に向かうのです。東の空はまだ夜明け前の明るさで、だいぶ陽の昇るのは遅くなって、東の方向に日の出の位置が変わってきているようなのです。昨日の朝よりは暖かく、室温は8℃もありました。

 まずは干した洗濯物を畳み、洗濯機の中に洗ったままになっている洗濯物を干してしまう。カウンターの上に洗ったまま干してある盆や蕎麦皿を戸棚に収納して、今日の分のほうじ茶を沸かして、グラスに入れるのです。これだけの作業が今日の朝飯前のひと仕事。ものの30分もかからないから、蕎麦打ち室の冷蔵庫を開けて、生舟の中の蕎麦の数を確認しておくのです。9食分の蕎麦があるので、今日は蕎麦は打たないことにするのでした。

 家に戻って居間の部屋で一服したら、「ご飯ができましたよ」と女将が声を掛ける。質素な朝食だけれど、亭主には十分な量と種類なのでした。食後のお茶をもらって、書斎でひと眠りしようと横になったけれど、身体を休めただけで20分ほどしたらもう起き出すのです。着替えと洗面を済ませて、女将の朝ドラの終わる時間には、もう蕎麦屋に行く支度が調っている。冬だから寒くはなったのけれど、慣れてきたのか寒さが心地よい。

 蕎麦打ちがないので時間があるから、ゆっくりと金柑大福を包んで、野菜サラダの具材を刻む。昨日よりは暖かくなると言うから、期待をして開店の準備を終えるのでした。ところが、暖簾を出しても一向にお客の来る気配はなく、去年のデータを見ればこの月曜日はゼロの記録があったから、不安になるのです。1時過ぎまでお客がないから、蕎麦を茹でて食べようとしたところに、駐車場に車が入ってきました。しかも続けて2台も来るではありませんか。

 テーブル席の盆を片付けないでもう終わりかと思っていたら、もう1台のワゴン車が入ってきたから、慌てて盆をカウンターに下げて、テーブルを拭くのでした。橋の向こうの常連さんが、今日は背広姿で息子さんと一緒にいらっしたのです。今週は三日連続のご来店でした。お孫さんの授業参観だったらしく、嬉しそうに注文をする。天せいろの大盛りとせいろの大盛りに辛味大根のご注文。皆さんが帰られてから、茹でてのびた蕎麦を食べて洗い物を始める。