2023年11月始め



11月1日 水曜日 本当に秋らしい一日でした …

 午前6時前に蕎麦屋に出掛けて、朝飯前のひと仕事をするのでした。家でコーヒーを入れるよりも、蕎麦屋のIHの方が早くお湯が沸くので、目覚めの一杯は厨房で飲む。次は何をするのだったかと考えながら、寝ぼけ眼でデザートの水羊羹と蕎麦豆腐を仕込んで、やっと頭が目覚めてくるのでした。店の中は17℃だったから、暖房を入れる程でもない。洗い籠に洗ったままになっていた鍋やボールを片付けて、今日一日の仕事の段取りを考えるのです。

 家に戻って女将の用意してくれた朝食を食べたら、満腹になって書斎に入り、一時間ほど眠るのでした。ゆっくりと寝覚めた定休日二日目の仕事は、まずは蕎麦屋に出掛けてレンジ周りの油汚れを、重曹を振りかけてお湯を垂らしてキッチンペーパーで覆っておいたのを、綺麗に拭き取る。油汚れには重曹が利く。レンジの回りの壁も、同じようにしてそのうちに綺麗にしようと思っているけれど、なかなかそこまで手が回らないのです。

 昨日作っておいたカレーの鍋を冷蔵庫から取り出して、ジブロックの袋に詰めて冷凍室に入れる。次に空になった蕎麦徳利を取り出して、作っておいた蕎麦汁を詰めるのです。そして、2㍑の鍋でキノコ汁を塩味にして仕込む。これに蕎麦汁を加えてキノコつけ蕎麦の汁にするのですが、注文があってから蕎麦汁を入れないと、汁が黒くなって美味しそうではないのです。鶏肉の出汁とキノコの香りが効いてかなり美味しくなる。寒くなる時期にはよく出るのです。

 昼は家に戻って焼きそばを作る。買って来た蒸し焼き蕎麦を袋のままレンジで1分ほど温めて、肉とむきえびとを野菜類を炒めて、麺を入れるのですが、塩とコショーにソースを少しだけ加えて、高温炒めの設定でかなり美味しく仕上がるのでした。亭主は本当はあんかけの五目焼きそばが食べたいのですが、どうも女将はソース焼きそばが好きらしくて、暖かくなった昼だから、今日もソース焼きそばになった。それでも美味しかったから好かったのです。

 食後は午後の陽射しが暖かい書斎でまたひと眠り。女将がスポーツクラブに出掛けている間に、亭主は目覚めて蕎麦屋に出掛けるのです。駐車場の植え込みの剪定を始めて、車が入ってもセンサーに感知されない程度に刈り込んだつもり。後はビオウヤナギの枝の剪定と、上に伸びたヤマボウシとモミジの剪定が残るだけ。蕎麦屋の南側の庭はその後だから、まだまだ仕事は続くのです。厨房に戻って、天麩羅の具材を切り分ける。これで今日の仕込みは終わり。

 後は明日の朝しかないけれど、何か忘れていることはないかと、いつも強迫観念に囚われているのが、蕎麦屋の亭主の日常なのです。4時前に家に戻って、今夜は防犯パトロールがあるからと、早めに夕食を食べておく。五目あんかけ湯麺を作って、一人で居間でテレビを見ながら食べるのでした。満腹になったらまたひと眠り。5時半になったら女将が書斎に起こしに来てくれた。暗くなった通りを、老人達と一緒に拍子木を叩きながら4㎞ほど練り歩く。




11月2日 木曜日 今日ものどかに暖かな一日でした …

 今朝も6時前に蕎麦屋に出掛けて、一回目の蕎麦打ちをするのでした。暖かくなると言うから、蕎麦は二回打たなくては足らなくなるのではないかと心配したのです。蕎麦打ちの前に小鉢を盛り付けておきます。暖かい日には酒を飲む人もいるかも知れないので、先付けを出す事も考えて、取りあえず9鉢用意しました。果たして、亭主の思惑通りにビールを注文されたお客が二人、7人のお客が入って、蕎麦も二回分打ってちょうど好かったのです。

 家に戻って女将の用意してくれた朝食を食べたら、亭主は書斎に入って30分ほどひと眠りするのです。それで頭がすっきりとしたところで、着替えと洗面を済ませてまた蕎麦屋に出掛ける。いつものことだけれど、もう少しゆっくりとしたいと思うのは、最近の傾向で、ちょっと困ったことなのです。定休日のゆっくりをそのまま引きずっているという感じ。玄関を出れば明るい陽射しが暖かく、庭の金柑の実がまた一段と黄色くなっているのに驚いた。

 門を出て歩き出せば、隣の家の蜜柑が随分と黄色くなっている。今年は蜜柑が豊作なのだとは、夜のパトロールの年寄り達の話でした。蕎麦屋まで行く間に、幼稚園に通ういつもの幼子を抱いた母親と子供に出会うから、「行ってらっしゃい」と言って見送るのですが、お兄ちゃんの方はグスグスとお母さんのあとから歩いて来る。こんなお宅が他にもあるから、下の子がお母さんを占有して、上の男の子が甘えたりないのだろうかなどと、勝手に思うのでした。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って二回目の蕎麦を打つ。加水率は41%でちょっと硬めの蕎麦になるのです。茹でても硬くて歯ごたえはあるのですが、季節の変化に合わせて、もう少し柔らかく打っても好いのかも知れない。葱を刻んで、大根と生姜をおろしたら、野菜サラダの具材を刻んで、開店の準備を整える。今日は暖簾を出したら直ぐにお客が続いて、昼に女将の来るまでに、5人もお客が入ったのです。やはり暖かい日は違うのか。



11月3日 金曜日 今日も秋晴れ、気温は午後から急に上がり …

 朝焼け雲が綺麗でした。朝飯前のひと仕事は、夕べ漬けた糠漬けを取り出して小鉢に盛り付けること。まな板の上に並べて包丁で切っていくと、小鉢9鉢分の量がありました。このほかに、大根のなた漬けと切り干し大根の煮物があるから、今日明日は十分に足りる量なのです。酒を飲むお客のために、茶豆を解凍して鉢に入れておく。後は解凍した豚のハラミを切り分けて、串に刺せば終わりなのですが、7時を過ぎたから家に戻って朝食の時間なのです。

 朝食を終えたら早めに着替えを済ませて、新しく買った運動靴で蕎麦屋に出掛ける。足の調子が好かったから、店を越えてコスモス畑の方まで歩き、蕎麦屋を写真に撮っておく。空にはもう雲がなくなっていました。犬の散歩のご夫婦が歩いて行く。幟と看板を出したら、チェーンポールを降ろして、やっと今日の始まり。蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。昨日の残った蕎麦が4束ほどあったから、今日は750g8人分をいつもより多めの水で捏ね始めた。

 41.5%まで水を増やしたけれど、まだ硬い生地のままで、捏ねても捏ねても水分が馴染んで来る気配がないのです。丸出しをしても少し端がひび割れてしまう。明日は42%で打ってみようと思いながら、伸して畳んで包丁切りをする。仕上がりは上々で、昨日よりは少し硬さが取れたかとは思うけれど、細くてもこんなに硬い蕎麦はお客にどう受け入れられるのだろうか。大根をおろして野菜サラダの具材を切り始める。11時過ぎには開店の準備が整った。

 連休の初日だからお客の出足も遅いだろうと思っていたら、案の定、最初のお客がいらっしたのは12時半近くなのでした。橋の向こうの常連さんが最初で、キノコつけ汁の大盛りをご注文。続けて、歩いていらっした中年の男性が、同じくカウンターに座って天せいろを頼まれた。そして、二人連れのご夫婦がいらっして天せいろの大盛りと普通盛りを注文するのでした。キノコ汁は温めてあるし、天せいろは天麩羅を揚げるだけだから、調理は簡単なのです。

 1時を過ぎた頃にもうひと組のご夫婦がご来店で、やはり天せいろを頼まれる。天せいろの値段が安いからか、暖かく晴れた日だからか、このところ天麩羅がよく出るのです。午後になって、急に暖かさが増して、店の中も24℃まで室温が上がった。1時半を過ぎたので、亭主はかき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べておきます。洗い物を済ませて2時半には家に帰る。亭主は書斎に入ってパソコンに今日のデータを入力したらひと眠り。女将は買い物に出掛けた。
 5時過ぎにプールへ行こうと用意をしていたらしていたら、女将に「今日は祝日だから、プールも早く終わるんじゃない?」と言われ、文化の日を忘れていた自分が情けなかった。仕方がないから、店から持ち帰った豚のハラミの串焼きを焼いて、昼に残ったサラダの皿に盛り付けて、焼酎を飲み始めるのでした。



11月4日 土曜日 三連休の中日、暖かく好天だったけれど …

 午前6時に朝飯前のひと仕事で蕎麦屋に出掛ける。昨日の洗い物を片付けて、空になった蕎麦徳利を盆に並べ、新しい蕎麦汁を入れていく。10年前の開業時に、陶芸家に頼んで焼いてもらった15個の徳利も二つ割ってしまって、今では13個しかなくなってしまった。花より団子かと大盛り用に、青の唐草模様の徳利も揃えたけれど、こちらは値段が安かった割には長持ちしているのです。蕎麦徳利ももう閉業するまでは揃えることはないだろうと思う。

 7時を過ぎたので家に戻り、朝食を食べたら食休みがてら、またテレビで映画を観ている亭主。8時半になる前に終わって、洗面と着替えを済ませる。今日は昨日よりも暖かくなると言うので、半袖の上にジャージの長袖を羽織って蕎麦屋に出掛けるのでした。朝と昼との温度差が激しいから、どうしても朝は一枚余分に着込むのです。みずき通りのハナミズキも何時の間にか赤く紅葉した葉が落ちて、いよいよ冬に向かう準備を始めている。

 今朝の蕎麦打ちは加水率42%で捏ね始めたのだけれど、やはりまだ生地が硬いという感覚がぬぐえない。腕の力がなくなったのだろうか。体重を掛けるからそんなことはない筈なのに、蕎麦粉が変わったからか、何か以前と違うのです。それでも切りべら26本で140gほどの束を8つ揃えて、昨日の残りと合わせて12食分の蕎麦を用意したのです。最近は、10人を越えるという日が少ないから、これで十分なのです。余分な蕎麦粉を使わないというのが大切なのです。

 蕎麦を打ち終えたら、大根や生姜をおろして、野菜サラダの野菜を刻み、いつものように三皿盛り付けてカウンターに並べる。1時間ほど出しておいたら、すぐに冷蔵庫にしまっておきます。開店の準備が整って、暖簾を出したけれど、今日は昼を過ぎてもお客の姿は見えなかった。前の通りを歩く人影がないのです。外が急に暑くなったのか、家の中の方が涼しいから外に出ないのか、午前中の部活を終えた中学生達が家に帰るだけなのでした。

 1時半を過ぎたところで、かき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べる亭主。熱々のかき揚げはカラッと揚がってとても美味しい。大根おろしと山葵の味わいが蕎麦の風味を倍増してくれる。自家製の蕎麦汁が細くてコシのある蕎麦に絡んでとても美味しい。ラストオーダーの時刻が過ぎたら、暖簾を降ろして幟と看板をしまう。チェーンポールを上げたら、本日の営業はお終いです。2時前には女将と家路に就くのでした。暖かく天気も好いのに、こんな土曜日も珍しい。