2023年9月初め



9月1日 金曜日 昼の暑さは納まらず …

 いよいよ9月になりました。明け方が少し涼しくなったお蔭で、6時過ぎまでゆっくりと眠ることが出来ました。少し花の数は少なくなったけれど、玄関前の木槿は今朝も元気に花を咲かせていました。団扇サボテンも今年二度目の花を付け初めて、暑さのせいで狂い咲きなのでしょうか。真紅のモミジアオイも、このところ連日、花を咲かせ続けている。人間は続く暑さに疲れているというのに、植物たちは気候に応じて何度も花を咲かせるのです。

 ご近所のオシロイバナやノウゼンカズラも元気に花を咲かせている。今年は百日紅もあちこちで見事な花を咲かせているから、人間界とは事情が違うようです。陽射しが強くなるに従って、通りを歩く人の姿は見かけなくなる。毎日、熱中症アラートが出て「外出は控えましょう」とスマホの画面に案内が出るのです。陽射しが強いから、日影で休みながら蕎麦屋まで歩く。普通なら3分で着くところを10分も掛けて歩くから、蕎麦屋に着いたらもう9時前。

 何はさておき、今朝の蕎麦を打って、今日の営業の準備を始めるのです。加水率は41%。今日も綺麗な蕎麦が仕上がる。昨日の残りと合わせて、12食の蕎麦を用意したけれど、平日はそんなにお客が来るはずもないのです。それでも緊張感を持って蕎麦を打つところが好い。厨房に戻って大釜に水を入れている間に、カウンターに干してある昨日の洗い物を片付ける。看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろすのです。青空が広がって今日も暑そう。

 隣のひまわり畑では、亭主と同年代の親父様が機械で草刈りをしている。昨日も蕎麦屋に来て営業時間を確認していたから、お客の来ない間に仕事をしてくれているらしい。それにしても畑は広いから、親父様一人では大変な仕事なのです。そんな姿を毎日見ているから、亭主も頑張らなくてはと、野菜サラダの具材を刻み始める。昨日も三皿全部を家に持ち帰って、女将と二人でサラダ三昧。この暑さではなかなかお客も来ないけれど、作っておかなくては。

 開店の準備が整う前で、暖簾も出してもいないのに、いきなり玄関の扉を開けるから「何かご用ですか?」と言えば、「蕎麦屋さんでしょ」と応える風変わりな若者でした。バスにのってやって来たらしい。外は暑いから中に入ってもらえば、カウンターの真ん中にに座ったものの、何か落ち着かない様子なのでした。お茶は沸いていたので、割り箸とおしぼりと共に席に持って行く。天麩羅の油はまだ温まっていないから、注文は受けられないのです。

 やっと支度が調って注文を聞けば、暖かいぶっかけ蕎麦を頼まれる。「最近は涼しくなりましたよね」と言うから、亭主も返答に窮するのでした。見れば長袖の上に上着を着ている。「お客が来ないのですね。ここに蕎麦屋があるって知らないんじゃないのですか」と、開店前に来てずいぶんなことを言う。「宣伝はしていないけれど、週末は結構お客が来ますよ。お蕎麦が好きな人が来てくれるのです」と、亭主も話し相手になるのでした。

 昼前にお客がいらっして、海老が駄目だから野菜の天せいろの大盛りにしてくれと言われる。蕎麦豆腐を二回も頼まれて、デザートの水羊羹までご注文。1時過ぎには綺麗に着飾ったご婦人がいらっして、天せいろを頼まれる。「とても美味しかったわ」と言って蕎麦湯も綺麗に飲み干して帰られた。今日は一人のお客が多かった。昼からお願いしているスタッフを帰して、亭主は一人後片づけをする。誰もいない家に戻って女将の帰るのを待つのでした。



9月2日 土曜日 暑い中を大勢のお客がいらっしゃった …

 今日も朝方は少し涼しかったけれど、蕎麦屋に出掛けるときにはもう、陽射しが強く感じるのでした。こうやって少しずつ涼しくなるのだったかなと、昔の記憶を思い出す。空には秋の筋雲と、夏の雲の名残が見えていたから、やはり、まだ暑さは続くのだろうか。蕎麦屋の中が以前ほど熱気がこもっていないのは、明け方に掛けて気温が下がっているからなのでしょう。蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦と合わせて13食を用意した。

 前掛けに付いた粉を払いに玄関を出たついでに、隣のひまわり畑を覗いてくる。綺麗に雑草を刈った跡が見事なのでした。人が歩きやすいようにと団地の側の歩道に合わせて、向こうのバス停まで刈り込んであるから凄い。亭主も負けてはいられないと、厨房に入って野菜サラダの具材を刻み始めるのです。昨日も家に持ち帰って、夜のおかずの牡蛎フライと共に食べたのですが、こればかりは作らないわけにはいかないのです。出る確率は50%以下なのです。

 開店と同時に三人連れのお客が入って、続けてもう三人。どちらもリピーターの方なのでした。今日は天せいろが随分と出て、皿が足らなくなって女将が洗って使う始末。昼過ぎまでに8人が入ったので皿を洗う暇もなかった。やっと一息入れたけれど、亭主は汗だくで奥の部屋で涼んでくる。洗い物をしようと思ったら、後半のお客がもう駐車場に入ってくるのです。結局、1時過ぎには13食打った蕎麦がすべて売り切れて、暑いのに有り難い事だと女将と話す。

 最後のお客の父娘はカウンターに座って、何時ものぶっかけ蕎麦を頼まれる。今日はヘルシーランチセット以外でも蕎麦豆腐やデザートが出たのも有り難い。3時過ぎに二人で家に戻って、冷たく冷えた梨を剥いてもらう。書斎のエアコンが効いてきたのを確かめてから、亭主はパソコンに向かって今日のデータを入力する。そして1時間ほど横になってゆっくりと眠ったのです。夕食を食べ終えてから、また蕎麦屋に出掛けて出汁取りとぬか漬けを漬けてくる。




9月3日 日曜日 朝晩が少し涼しくなったけれど …

 絹雲がたなびく6時前の空。有り明けの月が蕎麦屋の屋根の彼方に見えています。昨日は蕎麦が売り切れたから、当然、小鉢もなくなって、一回目の蕎麦打ちと夕べ漬けたお新香を取り出しに来た。昼の暑さで疲れている身体は、眠っても眠ってもなかなか回復しない年頃。寝ぼけ眼で車を走らせ、蕎麦打ち室に入れば、室温は27℃しかなかったから、少しは涼しくなってきている。一回目の蕎麦打ちは750g8人分を打って約40分。糠床を冷蔵庫から取り出す。

 次の小鉢を作るにはまだ早すぎるかと、残ったキュウリとナスとカブを使って、今朝は12鉢のお新香を盛り付けた。沢山作っておいたなた漬けも、この3鉢でお終い。夕べ出汁を取って洗いかごに伏せておいた鍋類をしまって、昼の水分補給にほうじ茶を沸かして、グラスに3杯分、冷蔵庫に入れておきます。これで7時になったから、家に帰って朝食の食卓に着く。果たして今日の日曜日はどれだけお客が来るのだろうか。二回目の蕎麦打ちの数を思案する亭主。

 食後のひと眠りも、最近は30分ではなかなか起き上がれない。やっと居間の部屋に行って、台所でコーヒーを入れる。それから、一服して目を覚ましたら、洗面と着替えを済ませてやっと蕎麦屋に出掛けるのです。外は思ったよりも涼しかったけれど、陽射しはまだ夏のあの暑さで、休み休みみずき通りを渡って、蕎麦屋まで歩く。二回目の蕎麦打ちは600g6食だけにして、合わせて14食の蕎麦を用意する。二日続けて混むことも少ないが、日曜は馬鹿に出来ない。

 暖簾を出す前からもう駐車場には車が入ってくる。何時もカレーうどんを頼まれるお父さんが、奥さんを乗せて今日も来てくれた。奥さんはこのところいつも鴨せいろのご注文。手間のかかる注文だから、早めに来てくれるのは嬉しいのだけれど、今日はまだ大釜の湯が沸いていなかった。お二人が食べ終わる頃になると、次々とお客がやって来る。今日も一人のお客がカウンターに三人も座った。ビールや海老、キス、イカなど単品の天麩羅の注文も入る。

 12時過ぎまでに7人ほどのお客が入ったから、昨日とあまり変わらないのでした。ぶっかけ蕎麦や天せいろが次々と出た。前半のお客の盆や皿を洗い終わったところで、後半のお客が駐車場に入ってくるのでした。やはり、日曜日は馬鹿に出来ない。外は幾分気温が低いようでしたが、厨房は熱くて汗だくなのでした。亭主はアイスノンを首に巻いて調理を続ける。閉店15分前のラストオーダーの間際まで、お客は帰らなかった。お蕎麦売り切れの看板を出す。

 洗い物を半分は片付けていたので、片付けが終わって早めに家に戻れました。小鉢も蕎麦汁もなくなっているから、夕刻に蕎麦屋に行かなければと思いつつも、身体が疲れて5時半まで眠ってしまうのでした。女将が一人で食堂で夕食を食べていたけれど、亭主は起きてすぐには食べられない。明日の朝は、早めに出掛けて小鉢の食材を調理しなければいけない。雨だと言うし平日だから、蕎麦も一回だけ打てば好いだろうと考える。少しは涼しくなるだろうか。



9月4日 月曜日 今朝は未明から土砂降りの雨でしたが …

 夕べは蕎麦屋の混んだ週末の疲れか、10時前に床に就いたのですが、朝の3時過ぎには激しい雨の音で目が覚めてしまうのでした。居間の部屋に行って、台所でコーヒーを入れたら、椅子に座ってゆっくりと今朝の段取りを考える。この雨だから、お客は少ないだろうけれど、蕎麦は打たなければならない。小鉢は5鉢残っていたから、後は残った食材で揚げ浸しを作れば好い。早くから出掛けて行っても、洗い物の片付けと洗濯物を干すぐらいしかないのです。

 蕎麦屋に着いてみると、奥の座敷のエアコンは点けっぱなしで、店の扇風機も回したままなのでした。昨日は、大釜を乾かすのに火を点けて、帰り道で消し忘れたのに気が付いて、店に戻ったのに、エアコンと扇風機には気が付かなかった。やはり、疲れていたのでしょう。火の元は何度も消したことを確かめるのに、最後に忘れてしまった。家庭用のガスコンロだから、火を点けて空だきをすると自然に火が消える仕組みだけれど、気をつけなければいけない。

 家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしてくれていた。味見用に持ち帰った揚げ浸しが、早速、小鉢に盛られて出て来る。質素な朝食だけれど、年を取った二人にはちょうど好い量なのです。野菜サラダに使うキャベツが五日分使ってもまだ残るから、女将が蒸して味噌汁などに入れてくれる。本漬けのたくわんも、業者が持って来たもので、味わい深いのです。我が家の食材は、蕎麦屋の残りものをどう消化するかで、美味しく食事を食べられる。

 食後のお茶をもらってひと休みしたら、書斎に入ってひと眠りしようと思ったけれど、なかなか眠れそうにない。身体が休んだところで、洗面と着替えを済ませて、また蕎麦屋に出掛けるのです。雨は、結構、激しく降っていたから、ズボンの端を巻くって雪駄で道を歩くのも大変。来週から補修工事が始まるという蕎麦屋の前のバス通りも、車が通る度に水しぶきが飛んで歩きにくい。それでも雨の降った分だけ外は涼しく、久し振りに30℃以下なのでした。

 雨が少し小振りになったらと思って、幟も出さずに、チェーンポールも降ろしていなかった。蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打てば、湿度が高いからか、同じ加水率でも少し柔らかめに生地が仕上がる。柔らかいとどうしても切りむらが出来るので残念。平日の月曜日だから、今朝は8人分の蕎麦を用意しておく。明日が定休日だから、残しても無駄になるのです。一番仕入れの値段が高い蕎麦粉を大事に扱うようになったから、少しは進歩しているのかな。

 厨房に戻って野菜サラダの具材を刻みながら、昨日使い果たした天麩羅の具材を準備する。新鮮な蓮根は皮を剥いて酢水で茹でる。古くなるとこの白さが黄ばんでくるから、売り場でよく見てから買うようにしているのです。今日は開店するなり、先週の土曜日にいらっしたばかりのご家族三人が来て下さって、カレーうどんにぶっかけ蕎麦の大盛りと、お父様が天せいろ。昼過ぎに女性お一人のお客がテーブル席でせいろ蕎麦を頼まれた。

 2時前にスタッフを帰して亭主は賄い蕎麦をぶっかけで食べる。ひと休みしてから最後の洗い物と片付けなのです。家に帰る頃には雨も上がっていたけれど、空にはまだ雨雲が連なっていました。家に戻り、女将が帰るのを待って居間の椅子に座ったまま、しばらく眠ってしまったらしい。5時すぎに夕食を軽く食べて、家の買い物と夜のプールに出掛ける。最近は週に一回か二回の水泳なので、足のリハビリと体力回復を兼ねて、ゆっくりと少しだけ泳いでいる。