2023年8月下旬



8月20日 日曜日 続く暑さで珍しくお客の少なかった日曜日 …

 午前4時半。今朝は出汁取りと蕎麦打ちとお新香の盛り付けと、いつになく仕事が多かったから、眠い目をこすりながら蕎麦屋に出掛けました。日の出が随分と遅くなったから、まだ夜の明ける前で向かいの森の上の空がうっすらと白んでいるのです。久し振りに夜もエアコンを入れないで眠れたから、昨日より涼しい朝でしたが、蕎麦屋の中は昨日の熱気がこもって30℃を超えていたのです。出汁取りの釜に火を入れて、冷えたアイスノンを首に巻く亭主。

 1時間かけて出汁を取り、返しの残っている分だけ蕎麦汁を作ったら、冷蔵庫から糠床を取り出してお新香を切り分け、小鉢に盛り付ける。タッパの中には大根のなた漬けも残っていたので、取りあえず12鉢もあれば足りるだろうと、コーヒーを飲みながらひと休みする。普段なら朝飯前のひと仕事は、これで終わりなのだけれど、今日は週末の日曜日とあって、昨日の混みようから考えると、蕎麦は二回打たなければならないと思えたのです。

 朝飯前に750g8人分を打って、家に帰って朝食を食べたら、ひと眠りしてまた蕎麦屋に出掛け、今度は500g5人分の蕎麦を打つ。昨日、残った二食分と合わせて、今日は15人分の蕎麦を用意したのです。11時には開店の準備が終わって、女将もやって来て、果たしてどれだけのお客が来るのかと、期待と不安で待っていたのですが、昼過ぎにご夫婦のお客が来たきり、今日は誰も来ないではありませんか。日曜日にしてはとても珍しい光景なのです。

 奥の座敷でひと休みする亭主は、南側の窓を開けて荒れ放題なのを確認する。いくら草取りをしてもすぐにまた生えてくるから、朝も暑いのでしばらく放っておいたのです。野菜を植えていた頃は、草も生えなかったのに、歳を取った亭主の活動は、自然の勢いに追いつかない。お隣の家との境の東側は何度も草取りをするから、少しは見られるのですが、駐車場の植え込みも手入れはしているけれど、やっとお客の車が入れるだけで、なかなかすっきりとしない。

 1時を過ぎてもお客がないので、天麩羅とかき揚げを揚げて、賄い蕎麦を食べておく。食べ終えてひと休みしようと思ったら、駐車場に車が入ってきたのです。女性の一人客で、テーブルに座ってゆっくりと天せいろを召し上がって帰られた。洗い物や片付けもすぐに終わり、明日は蕎麦打ちも小鉢の用意もなしだねと、暑い中を女将と家に戻るのでした。この暑さのせいなのか、確かに、歩いている人には出会わなかった。居間のエアコンも何とか動いている。




8月21日 月曜日 異常な暑さが蕎麦屋でも話題に …

 いつものように5時過ぎには目は覚めたのですが、今朝は早く蕎麦屋に出掛けてもすることのない定休日前でした。昨日は珍しく客が少なかった日曜日だったので、二回打った蕎麦と沢山用意した小鉢が残っていたのです。何時もの朝よりは少し涼しいような気がしたけれど、朝食を終えて9時過ぎに蕎麦屋に出掛ける頃には、何時もの暑さが戻っていました。日中が35℃を越える日が続いているからか、25℃の朝方が涼しく感じられるのです。

 今日は曇りという天気予報でしたが、雲の多い割には陽射しが強い一日なのでした。蕎麦屋に着いたら、カウンターに干した昨日の洗い物を片付け、大釜に水を汲みながら、ほうじ茶とコーヒーをいれる湯を沸かす。蕎麦打ちがないと朝のこの時間にもかなり余裕がある。野菜サラダの具材を刻み始める前に、大根をおろしてお茶や湯をいれるポットを用意しておきます。何時もの時間になったら、ブロッコリーとアスパラを茹で、キャベツを刻み始める。

 曇りだというのに、時折、差す陽が強いからか、厨房の温度計は早い時間にもう27℃を表示していた。昼前に最初のお客が来て、いきなりヘルシーランチセットの天せいろをご注文です。作ったばかりの野菜サラダが出るので嬉しい。今日は時間に余裕があったからか、人参のジュリエンヌも綺麗に切れている。昼からお願いしているスタッフがやって来て、後は彼女が配膳をしてくれた。蕎麦を出し終える頃に、次のお二人がいらっして、カウンターに座る。

 「最近の暑さは異常ですね」と親父様が話しかけるので、天麩羅を揚げながら亭主がそれに応える。厨房の温度計は28℃まで上がっていた。火の側にいる亭主は、汗だくに成りながら、首にアイスノンを巻いて調理をしているのです。ぶっかけ蕎麦を頼んだ隣に座った娘らしき女性が、白海老のかき揚げを追加で注文する。玉葱、人参、三ツ葉に、一握りの白エビを入れて揚げるかき揚げは、二つで150円。美味しさと値段の安さから、最近は頼む客が増えている。

 天せいろで1200円払うよりも、せいろ蕎麦とこのかき揚げとキスか赤いかの天麩羅を頼んで、1000円以下で済ませるお客もいるのです。割のいいメニューを捜すのが上手なお客もいるもの。胡麻油と綿実油の天麩羅油も天ぷら粉も、実は今月から3割ほど値上がりしているのです。常連さん達や女将も「値上げしたら」と言う。秋口から値上げをしようとは思っているのだけれど、他のメニューの値段にも影響が出るので、なかなか踏ん切りが付かない。
 午後はもう一組ご夫婦でいらっしたお客があって、最近の月曜日にしては珍しいことでした。外はむーっとした暑さで雲間から強い午後の陽射しが照りつけてくる。女将よりも早く家に帰って、全室のエアコンを入れて回る。冷えた西瓜を冷蔵庫から取り出して、一人で食べる亭主。甘みも最盛期のそれとは違って、西瓜の時期ももうそろそろ終わりらしい。書斎に入ってひと眠りをした後は、一足早く夕食にしてもらい、一週間ぶりでプールに出掛けました。



8月22日 火曜日 今日は新しいエアコンが入る日で …

 お袋様と仕入に出かける直前に、電気屋から電話があって、10時から12時の間にエアコンの取り付け工事をしに来ると言っていた。これはちょうど好いと、いつもの農産物直売所に着けば、お盆に、オクラを沢山持って来てくれた農家のご夫婦が野菜を運んでいた。先日の礼を言って今日も新鮮な野菜を幾つも買ったのですが、帰りがけに、今度は奥さんが「昨日の残りだから」とオクラをくださったから恐縮する。一日置いただけでもう品物を持ち帰るのも凄い。

 家に帰って、物置と化していた書斎に続く廊下の荷物を書斎に運び、天井に棚をつって置いていた沢山の釣り竿も一緒に移動する。居間の部屋から廊下の中空を通って、エアコンの室外機までの配管が施されているのです。これもそっくり新しいものに取り替えるから、簡単には終わりそうもないのでした。案の定、現場を見に来た青年が「時間がかかりそうだから、先に違う家の方を終わらせてきますから」と、昼過ぎになってまた来てくれたのです。

 それまでに昼飯を食べてしまわなければと、ちょうど亭主が今日買ってきた鰻があったので、入れ物を捜して鰻重にして食べる。女将もいろいろと用意しなくて済むから楽ちんなのでした。昼を過ぎてまた電気屋の青年がやって来て、いよいよ取り付け工事が始まるのでしたが、水の漏れる原因は、本体の側と室外機を繋ぐ部分の傾斜がおかしいからですと説明してくれる。新しく家の外壁に穴を開けて、適正な傾斜をとってくれたけれど、これは時間がかかった。

 午後の仕込みに蕎麦に出掛けたのは3時過ぎで、女将も夕方から買い物に出掛けると言う。昨日の洗い物もカウンターに干したままだったから、まずこれを片付け、固めておいた天麩羅鍋の油を捨てて、明日の爲にほうじ茶をたっぷりと沸かして茶碗に入れておく。店の中は厨房が33℃もあったから、エアコンのスイッチを入れたら首にアイスノンを巻いて作業をするのでした。まずは5㍑の大鍋で返しを作る仕事。そして小鉢の一品目に揚げ浸しを仕込んでおく。

 約1時間半の仕込みでしたが、西日の当たる厨房は32℃までしか温度が下がっていなかった。具材本来の色を綺麗に出そうと、今回は薄口の出汁醤油を二番出汁で薄めて味つけをした。家に味見に持ち帰ったら、夕食の時に女将が「綺麗に出来たわね」と褒めてくれたのです。いつも最後の日に残った天つゆなどを使っているから、減塩醤油を使っているのでどうしても色が黒くなるのです。明日は床屋に行って、ひと月振りに親父様に髪を刈ってもらおう。



8月23日 水曜日 定休日二日目は忙しかった …

 夕べ雨が降ったのか、朝は少し涼しい空気なのでした。朝一番で国道沿いにあるいつもの床屋に出掛け、元気な親父様の声を聞くことが出来ました。亭主よりも10歳ほど年上のはずですが、腕は確かなのが有り難いこと。何時の間にか酒も煙草も止めているというから偉いのです。髪の毛が短くなってさっぱりとしたところで、蕎麦屋に戻って備品の残り具合を確かめて、西の町のホームセンターまで出掛け、天削げの割り箸や消毒液などを買い込んで来る。

 雨がかなり激しく降っていたけれど、西の空には青空が見えて、大気が不安定なのが分かるのです。店に荷物を置きに戻って、洗濯機に入れっぱなしだった洗濯物を干したところで、もう11時になるから、家に帰って昼飯の用意をするのです。蕎麦屋の残り物の野菜に肉を入れてカレー炒飯を作って、女将と二人で食べるのでした。デザートには冷たく冷えた桃が剥かれて、いつになく甘いので驚いた。やはり、大きさと値段とに美味さは比例するのだろうか。

 新しく入った居間のエアコンは快適で、27℃の設定なのに随分と涼しく感じるのでした。しばらく涼んでいるうちに、微睡んでしまったのか、気が付けば女将はもうスポーツクラブに出掛けていた。1時を過ぎていたので、亭主も蕎麦屋に行って残った仕込みをしなければと、重い腰を上げて車に乗るのでした。出汁取りと蕎麦汁、天つゆの仕込みに一時間はかかった。厨房は店のエアコンを入れているのに、29℃まで下げるのがやっとなのです。

 まな板を出して包丁を使う前にと、明日のデザートの抹茶小豆と蕎麦豆腐の仕込みをしておく。耐熱ガラスの容器に入れた粉寒天と糖蜜で溶いた抹茶が少し固まるまで、小豆を入れることが出来ないから、その間に蕎麦豆腐を造ってしまう。やっとまな板を出して、南瓜の種を取り天麩羅に使う部分を切り分ける。端の部分は形を整えて冷凍室にストックしておく。明日使う分をレンジでチーンしたら、今度は蓮根の皮を剥いて、輪切りにして酢水で湯がくのです。

 玉葱をスライスして水にさらしたら、人参を刻み、三ツ葉を切ってかき揚げの材料を作る。生椎茸の飾り切りをして、半分に切ったピーマンの種を取る。四つに切ったナスを天麩羅用に包丁を入れ、すべて容器に入れたらラップを掛ける。農家の親父様が朝採りのナスだと言っていただけあって、中が真っ白なのが嬉しい。全部を冷蔵庫に入れたら、糠床を取り出して、お新香を漬ける準備。ナスはすぐ酸化するから、一番最後にミョウバンを入れて漬けるのです。

 大して仕事をしているわけではないのだけれど、いつもの定休日と違ってエアコンの取り替えや床屋に出掛けたり、ホームセンターまで仕入れに行ったりと、歳を取ると違った行動を取るのがやたらと疲れる。あちらこちらに出掛けて、車で移動するのさえ面倒になるから困ったものです。午後の続けて3時間の仕込みもかなり疲れた。暑すぎるから尚更なのかも知れません。今日は35℃まではいかなかったけれど、湿気がもの凄かったのです。



8月24日 木曜日 平日なのに何故かお客が多かった …

 糠漬けのお新香を取り出すために、今朝は5時半に蕎麦屋に出掛ける。日の出が遅くなって、森の影から太陽がやっと顔を出す時刻なのでした。少し前に比べれば、朝が涼しくなったけれど、蕎麦屋の中は28℃と昨日の午後の暑さが残っていました。エアコンを入れて冷蔵庫から糠床を出して、お新香を切り分ける。今日は蕎麦を9食分打つ予定だったから、小鉢は明日の分を含めて12鉢用意しておきました。昨日使った鍋釜を片付けて、洗濯物を干しておく。

 木曜日にお客が多かった時期には、朝飯前に一度蕎麦を打っていたのですが、8月になって10人はお客が来ないから、今日も少しゆっくりとしていたのです。蕎麦粉も値段が高いので、無駄に打って残してしまうよりは、売れ切れにして翌日新しい蕎麦を打った方が好いと考えたのです。隣のひまわり畑も元気に花を咲かせていたから、駅前の高層マンション群を背景に、今朝の青空を写真におさめておきました。気温は少し低いけれど、今日も暑くなりそうです。

 ところが朝食を食べてひと眠りした後で、蕎麦屋に出掛ける頃には、黒い雲が広がって不穏な雲行きなのでした。大気が不安定だというのが目で見て分かる空模様なのです。幸い雨には降られずに、エアコンの効いた蕎麦屋まで行って、今朝の蕎麦を打ち始めることが出来ました。加水率は41%、蕎麦打ち室の温度は28℃、湿度は47%まで下がっていたので、これで十分なのです。果たして、しっとりとした生地が仕上がり、無事に9食分の蕎麦が打ち上がる。

 週末ならば蕎麦を打っている時間に女将がやって来るのですが、木曜日は昼からの出勤だから、昼までは亭主が一人で頑張らなくてはいけない。元来、依存心が強いからなのか、どうしても当てにしてしまうのが欠点かと、最近はよく思う事がある。週に三日も手伝いに来てくれるだけでも有り難いと思わなくてはいけないのです。昼前にはもうお客がいらっして、天せいろの普通と大盛りにキスの天麩羅を追加でご注文。天麩羅を揚げ終わる頃に女将が現れる。

 常連さんもいらっして、あれよあれよという間に生舟の中の蕎麦がなくなっていく。最後のご家族がテーブル席に座って、1時にならないうちに生舟の中の蕎麦はなくなったのです。「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、後からいらっしゃったお客は、3組ほどお断りしたから、もの凄い勢いなのでした。全部の蕎麦を出し終えて1時過ぎだったから、沢山打ったとしても、座る席もなかったし、出し切れるものではないのでした。小さな蕎麦屋の悲哀でしょうか。




8月25日 金曜日 暑い昼、開店前からお客が来たけれど …

 

 今朝は6時前に蕎麦屋に出掛けて、小鉢の用意と今日の水分補給用にとほうじ茶を沸かして冷蔵庫に入れる。コーヒーを入れて一杯飲みながら、昨日の混み様を思い返して、蕎麦を余分に打つかどうかを考えるのでした。平日に二日も続けて混むことはないと、洗濯物を畳んだだけで、家に帰って朝食を食べる。ひと眠りして9時過ぎに家を出れば、もう陽射しは真夏の様相。エアコンの効いた蕎麦屋に逃げ込んで、蕎麦打ちを始めるのでした。

 加水率は昨日と同じで41%に。蕎麦打ち室の湿度は37%、室温は27℃でした。上手く仕上がった生地は、包丁で打っても綺麗に仕上がるから嬉しい。蕎麦は水回しからと言われる由縁が理解できる。厨房は朝のうちは24℃と涼しかったのに、時間が経つにつれて27℃まで上がり、外はサウナ状態。野菜サラダの具材を刻みながら、大根をおろしたり、天麩羅の具材を切り分けたりと時間との勝負で、11時を過ぎた頃には、もうお客の車が駐車場に入って来る。

 お湯が沸いていないからと、しばらく車の中で待ってもらい、慌ててテーブルを拭いて、着替えを済ませて暖簾を出すのでした。初めてのお客らしく、デザートを最初に頼まれる。せいろ蕎麦の大盛りとぶっかけ蕎麦を注文されて、調理が終わる頃にスタッフがやって来た。すると、続けてもう一台車が駐車場に入ってくる。今日は蕎麦を沢山用意していなかったから、この勢いではどうなるのかと一瞬、不安に思ったけれど、その後は続かないのでした。

 それでもリピーターらしい女性二人のお客は、ヘルシーランチセットのご注文で、駐車場とテーブル席が埋まってまずまずなのでした。急いで開店したものだから、BGMも流さずにレジの鍵も付け忘れていた。1時半には賄い蕎麦を食べて、スタッフが帰った後で亭主が一人で、ゆっくりと大鍋を洗ったり、後の始末をするのです。一番暑くなる時間に汗だくになりながら家路を辿り、女将の帰っていない家に帰ってエアコンを入れ、冷えた果物を買いに出掛ける。

 ついでに酒屋に寄って今夜の焼酎と強炭酸を買って帰る。それでもまだ3時過ぎだから、女将に果物を渡して書斎に入ってひと眠りするのです。夕食を女将と一緒に食べて、6時を過ぎたらまた蕎麦屋に出掛けて、明日の仕込みを開始する。デザートに水羊羹を作って、糠床を冷蔵庫から取り出して、キュウリとカブとナスを漬けるのです。蕎麦豆腐を仕込んだところで、明日の小鉢はお新香だけだから、種類が足りないと思ったけれど、7時を回っていたから帰宅する。明朝はどうしても二回蕎麦を打たなければならない。



8月26日 土曜日 目まぐるしい天候の変化の中を …

 うっかり寝過ごして目覚めれば6時。テレビで夕べのドキュメンタリー番組を観たのが仇となった。急いで蕎麦屋に出掛けて一回目の蕎麦を打つ。41%の加水で蕎麦粉を捏ね始めたのだけれど、いつになく柔らかいから驚いたのです。室温も湿度もあまり昨日と変わりがないのに、少し包丁に蕎麦がくっついて、切りむらが出来る。昨日の蕎麦が三束だけ残っていたから6食分を打って、朝食後に残り6食を打てば、15食の用意が出来るという計算なのです。

 夕べ漬けたお新香を糠床から取り出して小鉢に盛り付ける。11鉢は用意が出来たけれど、お新香ばかりで次の日の用意にも影響するから、もうひと品作っておきたいところなのでしたが、出だしが遅かったからその暇はなかった。7時半近くに家に戻れば、朝食は鮪のたたきの手巻き寿司で、女将が鮨飯を用意してくれたから、簡単に美味しく食べられて好かった。食後のひと眠りもせずに、蕎麦屋にとって返して、二回目の蕎麦を打つ亭主。

 天気予報は時々刻々に移り変わって、取りあえず朝は晴れ。捏ねた蕎麦玉を寝かせている間に、大根をおろし、切り干し大根の煮物を作って、忙しない朝の仕込みなのでした。二回目の蕎麦は同じ加水率なのにしっとりと仕上がって、綺麗に畳んで切りむらもなく仕上がったから好かった。この原因は解明されていないから困った。エアコンを入れる前と後との温度と湿度の差としか考えられない。野菜サラダの具材を刻み、今日の開店の準備を済ませる。

 11時を過ぎた頃から、黒い雲が広がって、あっという間に土砂降りになる。西の空にはまだ夏の青空が見えるのでした。今日は昼に掛けてもこの繰り返しで、かなり沢山の雨が降った。その合間を縫うようにして、お客が来てくれたのは有り難い事なのでした。リピーターの老夫婦は天せいろを頼まれて、ご主人がノンアルコールのビールとデザートの水羊羹を追加して、食べきれないのは年齢のせいだと弁解する。90歳近い年齢だから仕方がないのかも知れない。

 親子でいらっした男性客は、二人とも天せいろの大盛りのご注文で、見事な食べっぷりで早々に帰られる。母と娘でいらっしたお客は、天せいろに白エビのかき揚げを追加で頼まれた。親が富山の出身だとかで、白エビは懐かしい食べ物なのだとか。一時は混んだけれど、この雨の中をよくぞ来て下さったと言うお客様達。雨の上がった真夏の陽射しの中を、女将と二人で家に帰る。朝から忙しかったせいか、書斎でひと眠りしたら1時間以上も眠ってしまう。
 夕食を女将と一緒に食べて、亭主はもう夜の防犯パトロールに出掛ける支度を始める。女将は夜が眠れなくなるからと、歩いて買い物に出掛けるのでした。虫の声も聞こえて、風が吹くと涼しく感じる夕べなのですが、歩き始めると湿気が凄いから、汗が滝のように流れ出てくるのでした。今日はあれだけ沢山の雨が降って、夕刻にはもう道路が乾いてしまうのだから、空気中の水分は多いに違いないのです。明日は果たしてどんな天気になるのやら…。



8月27日 日曜日 暑さと湿気でかなり疲れた週末でした …

 昨日の夜のパトロールが効いたのか、今朝は何故か疲れていました。昼も夜も暑いから汗をかきっぱなしで動いているから、体力も消耗するのかも知れない。それでも今朝は昨日の失敗を繰り返さない様にと、6時前には蕎麦屋に出掛けたのです。空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を補充して、カウンターに干してある昨日の盆や蕎麦皿を片付ける。小鉢に切り干し大根の煮物を盛り付けて、お新香と合わせて15食分、今日の予定の蕎麦数だけ用意しておくのでした。

 天気予報を確認するのは毎日の日課で、雨雲レーダーまで観て、その日の気象状況を確認するのです。しかし、これもだいたいの話で、目の前の森や畑の上の空が一番の目印。今朝は晴れていたけれど、風が東風で少し涼しく感じられた。店の中の温度もエアコンを入れたら23℃まで下がっているから、涼しい朝なのでしょう。最大で15食用意しようと思っている蕎麦は、果たして適正な数なのか。残れば最終日の明日に回せば好いから気は楽なのです。

 家に帰って朝食を食べ終え、今朝は、30分だけひと眠りをしました。コーヒーを飲んで蕎麦屋に出掛ける道々、家々の通りから南の空を見れば、白い雲と黒い雲が交互に流れてくる。午前中から雨が降ると言う予報は当たるかも知れないと、急いで蕎麦屋に向かう亭主。晴れているのだか曇っているのだか、分かりづらい今朝の天気なのです。蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つ。加水率は41%で、このところ毎日同じ加水なのでした。今日は上手くいった。

 しっとりと仕上がった生地は、包丁打ちをしても綺麗に切れる。予定通り15食の蕎麦を用意して、厨房に戻って開店の準備を進めれば、昼前にご夫婦のお客がいらっしゃって、天せいろのご注文なのでした。次に見えたのはリピーターの四人家族で、品のいいお婆様の顔を亭主も女将も覚えていた。続けて若いご夫婦がカウンターに座ろうとしていたから、帰ったばかりのお客がいたテーブル席を片付けて座っていただく。と、駐車場に車を停めて若い男性が …。

 玄関を開けて「子供を入れて四人なんですけれど」とおっしゃるから「カウンターでよければどうぞ」と応える。「考えます」と言って車に乗ったらそのまま帰られた。小さな店だから、それ以上の対応は出来ないのです。途中、雨が降ったり止んだりしたけれど、今日もまずまずのお客の入りでした。ほとんどが天せいろだから、天麩羅の具材が足りなくなって、冷蔵庫から取り出して野菜を切り分ける。涼しいはずなのに汗だくだったから、疲れたのです。