2023年6月初め



6月1日 木曜日 朝から晴れて梅雨入り前のすがすがしさ…

 夕べはそんなに早く床に就いたわけでもないのに、今朝は4時半にはすっきりと目が覚めてしまいました。日の出前の外が明るすぎて、青空も広がっていたのです。何故か女将も起き出していたから亭主は仕方なく蕎麦屋に出掛ける。昨日、早い時間に漬けすぎたお新香を取り出す必要があったのです。蕎麦屋に着けば、未央柳と柊南天の脇に植えた紫陽花が小さな花を沢山付けていのでした。いよいよ梅雨の始まりなのでしょう。今年は剪定が上手く出来た。

 冷蔵庫に入れてあるとは言え、この時期の14時間はちょっと長すぎる。薄味の女将に馴らされた亭主の味覚では、少し塩辛い味のお新香が出来上がっていました。醤油を掛けて食べる客も多いから、普段はきっともう少し薄味なのでしょう。今日のお客は誰も残さなかったから、味覚の個人差は判らないものです。時間が早すぎたので、蕎麦打ち室に入って一回目の蕎麦を打っておく。この天気ならば、二回打っても少しは捌けるのではないかと思ったのです。

 加水率42%弱で、蕎麦粉を捏ね始めたけれど、もう少し水分があった方が好かったかと思う硬さで、何とか8食の蕎麦を仕上げる。木曜日は昼から女将が来てくれるから、お客が少し多いぐらいでも十分に蕎麦を出せる計算なのです。早めに家に戻ったら、7時前だというのにもう台所に女将が立って朝食の支度をしてくれていた。食後は、朝が早かったから、お茶も飲まずに書斎に入り、1時間ほどぐっすりと眠ったのです。これで頭もすっきりとしました。

 半袖のシャツを着て歩いて出掛けたけれど、蕎麦屋で二回目の蕎麦を打つ頃には、もう暑くなって下着一枚になる。定休日明けの木曜日は朝の仕事が沢山あるから、薬味の葱切りや大根と生姜をすり下ろすのを先に終わらせて、苺大福を包み始める。のんびりとやっているようだけれど、分刻みで時計を気にしながら、11時までには野菜サラダの具材も刻み終えて盛り付けを終えるのでした。新しい油を天麩羅鍋に入れて、お茶のポットにお湯を入れるのです。

 開店前の10分間で、テーブルをアルコール消毒液で拭き終えて、暖簾を出して初めて店用のシャツを着る。すぐにお客が来ないときには、だいたい昼前にいらっしゃる。今日も車が一台入って来たと思ったら、女性がお一人でテーブル席に座って、天せいろをご注文なのでした。12時を少し過ぎた頃に女将が姿を見せたので、ほっとする亭主。「お蕎麦が美味しかった」と帰る女性。1時前には四人連れで女性たちがいらっして、店の中は急に賑やかになる。




6月2日 金曜日 台風の影響だからどうしようもない雨の一日…

 強風と激しい雨の中を夜のプールに出掛けた亭主。プールは空いていて一人一コース。ゆっくりと三種目を泳いで、帰りに階下のスーパーに寄って、大阪の王将の冷凍餃子を三パックと、超熟成のパン三切れのパックと小岩井の牛乳を買い求めて、家に戻るのです。12個入りの餃子は1パックで125円だから、具材は少ないけれど手間を考えたら、自分で作るよりはるかに安い。今宵は昨日業者の若者が持って来た鮪のたたきを酢飯の丼にして食べたのです。

 朝から雨の一日でしたが、こんな時もあるからと、亭主は案外、平気な様子で蕎麦を打つ。今朝はゆっくりとしてテレビのニュースを見ながら、朝飯前のひと仕事もせずに、車で蕎麦屋に出掛けたのでした。蕎麦打ち室の湿度は80%を越えていたから、気温が24度もあるので、加水率は42%弱。打ち粉が切れて、新しい蕎麦粉と打ち粉が届く日なので気が気ではなかった。それでも、昨日の蕎麦の残りと合わせて12食の蕎麦を用意して、今日の営業を待つ。

 この雨の日だから、お客がなくても文句は言えない。それでも厨房に入って、野菜サラダは三皿用意する。苺大福は昨日作った物。こんな雨の日でも、お客があるもので、昼前に若いご夫婦がいらっして、天せいろの普通と大盛りを頼まれた。会計の時に「ここで蕎麦を打っているのですか?」と聞かれたので、蕎麦打ち室の扉を開けて見せてやる。お新香や蕎麦湯まで綺麗になくなっていたから、リピーターになってくれれば好いけれどと帰る姿を見送るのです。

 雨は、時折、激しく降っていたから、1時を過ぎたら、昨日仕入れた富山産のしら海老をかき揚げにして、賄い蕎麦を食べるのでした。食材が先にあるので、どうやって出そうかと考える亭主。値が張るものだから、生でも食べられると言うけれど、そうそう酒の肴ばかりでは出ないだろうと思うのです。家に戻り、夕食を済ませて、プールから帰ったら、夜の酒の肴に鶏の塩ずりの醤油揚げを試食する。こりこりしてとても美味しいけれど、これも酒の肴です。




6月3日 土曜日 大雨だったのが、思いの外、早くから晴れて …

 激しい雨の音で目が覚めた明け方。夜のプールが効いたのでしょうか、7時間以上もしっかりと眠ったから、起き出して蕎麦屋に出掛ければ、車に乗り込むまでに傘を差さないと、ガレージへの階段を降りられない状態。ワイパーも久し振りに、間欠ではない普通の速さで動かすのです。途中、一部冠水している曲がり角があった。昨日の夜に漬けたお新香を糠床から取り出して、小鉢に盛り付けたら、蕎麦打ち室の冷蔵庫を開けて、生舟の中の蕎麦を確認する。

 家に戻れば玄関脇の団扇サボテンの花も、この酷い雨に花びらを閉じているのでした。今朝は蕎麦打たないと決めたから、食事の後はテレビでコッポラの指揮した「秘密の花園」を見ていました。風景の映像が綺麗で、こんな話だったっけと子どもの頃に読んだのを思い出す。ハッヒーエンドなのが何よりも素晴らしく、心が温まるのでした。土曜日だけれど、この大降りの雨では車で出掛けるしかなかった。恐らく、お客は来ないと思っていたのです。

 午後の2時まで雨の予報だったけれど、苺大福を包んで野菜サラダを例によって三皿盛り付けたところで、外はだいぶ明るくなってきた。女将には、雨が酷いから11時に来れば好いからと言っておいたので、あまり、雨に濡れずに蕎麦屋まで来られたと言う。昼になると雨はほとんど止んで、暖簾を出せば、昼過ぎには、なんと、お客がいらっしゃる。天せいろが三つ出た後で、お隣の市からいらしたと言うご夫婦はヘルシーランチセットを二つ。

 買い物のついでに野菜サラダのある蕎麦屋を捜したのだそうな。続けていらっしたご夫婦は、天せいろとヘルシーランチセットのご注文で、今日は野菜サラダがすべて出たので嬉しかった。昼からお客が入ったというのに、いつもの土曜日並みに蕎麦は売り切れて、亭主は残った1把を茹でて、かき揚げを揚げ、賄い蕎麦を食べる。晴れて陽射しも出て来たので、家に帰ってすぐに女将は洗濯物を外に出す。夕刻には明日のお新香を漬けにまた蕎麦屋へ行く亭主。



6月4日 日曜日 暖かくなったら、やはりお蕎麦売り切れ …

 今日の朝は寒かった。気温13℃だから、昼の27℃との温度差が凄いのです。晴れて暖かくなると言うから、朝の5時前には長袖のジャージ上下を着て蕎麦屋に出掛け、まずは一回目の蕎麦を打つ。加水率は42%強で、まだ室温も低かったからか、少し硬めの仕上がりになるのでした。蕎麦玉をビニール袋に入れて寝かせている間に、厨房に戻って昨日の夜に漬けに来たお新香を糠床から出し、切り分けて小鉢に盛り付ける。少し多めの10鉢を用意しておきます。

 蕎麦打ち室に戻って、蕎麦玉を伸して畳んで包丁打ち。もう朝日が差し込む時間帯なので、綠色の蕎麦が綺麗に写真に写っている。まずは8食を生舟に並べて、朝食後には何食分打とうかと考えるのでした。500gか750gか、先日の晴れた土曜日には、750gを打っても足りなかったけれど、3時になっても洗い物が終わらずに、疲れが何日も残ったのです。あまり欲張らずに、後からいらっして店に入れないお客様には申し訳ないけれど、二回目は500gと決める。

 厨房に戻って、昨日までに売り切れた蕎麦豆腐を仕込み、ステンレスの型に四つ分流し込んで、冷蔵庫で冷やしておきます。出ないときはまったく出ないのですが、最近は、新しいお客様も増えたのか、一度は食べてみようと頼まれる方が多いようなのです。女将が家から自家製味噌を持って来て、味噌ダレを作ってくれるから助かる。今日は忙しくなりそうだからと、薬味の葱切りと生姜をおろすことだけを済ませて、家に戻るのでした。

 天麩羅に添える大根おろしと生姜はたくさん要らないのです。大根は毎日すり下ろして新しくしているけれど、新しい生姜は二日は使えるから頼もしい。河童橋で買って来たステンレス製のおろし金は、裏が生姜や大蒜をおろせるように出来ていて、生姜の繊維が綺麗に切れて下ろせるので優れものです。この黄色い色が新鮮さの証です。たまに古い生姜を仕入れてしまうと、もっと茶色くなってしまう。味は変わらないのかも知れないけれど、見た目が好くない。

 朝食を済ませて30分ほど書斎で眠り、頭をすっきりさせて洗面と着替えを済ませる。半袖を着て出られるほどに気温は上がっていたから驚く。青空とハナミズキの青葉が繁るみずき通りを越えたら、蕎麦屋までは100mほど。看板と幟を出したらチェーンポールを降ろして、午前中の仕込みにかかる。今日は開店前に二組もお客が来たので、その分、早く売りきれになった計算。とにかく天麩羅ばかりよく出たので、明日の具材は足りるだろうかと心配するのでした。