2023年3月初旬


3月5日 日曜日 今日も早朝から蕎麦を打ったけれど …


 午前5時半過ぎの家の前の通りの風景。夜明け前の空には雲一つなく、終日曇りという天気予報が嘘のようなのでした。夕べは夜になってから蕎麦屋に出掛けてひと仕事したので、もっと眠っていたかったけれど、蕎麦が売り切れてまったくなかったので、今朝も朝飯前に一回打っておこうと蕎麦屋に出掛ける。三日続けて混むということはほとんどないけれど、馬鹿にしてはいけないのが日曜日。過去にも蕎麦が足らなくて困った苦い経験があるのです。

 小鉢の具材を冷蔵庫から全部取り出して盛り付けた後は、空になって何もなくなった蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めていく。そして、部屋の中が暖まったところで蕎麦打ち室に入り、今朝の蕎麦を打ち始めるのです。750g 8人分の蕎麦を、朝の6時から打つのは昨日と同じだけれど、一人営業で9人をこなした金曜日から蓄積した疲労は、昨日よりも溜まっている。夜も営業をして一日20人を超えるお客を相手にした昔は、まだ若くて体力もあったのだろうか。

 今から思えば、年間何10万円単位の赤字を覚悟で人を雇っていたから、随分とサポートしてもらっていたのでしょう。それがお客の少なくなったコロナ禍を機会に、背に腹は替えられず、週に何日かは女将に助けられながら、今の営業形態に変わったのです。必然と言えば必然でしょうが、夕刻からの営業はまだ諦めたわけではないのです。お客の動向を見ているというのが今の現状なのでしょう。生舟に8束の蕎麦を並べて、7時前には家に戻るのでした。

 朝食を終えて、空が少し曇ってきたところで再び蕎麦屋に出掛ける亭主。それほど寒くはなかったけれど、陽射しがないとどうしても肌寒いと感じるのです。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日二度目の蕎麦打ちを始める。500g 5人分の蕎麦を打って、合計13食分を用意するのでした。暖かかった昨日に比べれば、日曜日だとは言え、十分な数だと思えるのです。厨房に戻って、いつもの通り、金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻む。

 その間に、薬味の葱を刻んだり、大根を擦りおろしたり、湯の沸いた大釜から4本のポットに湯を入れたり、天麩羅油や天つゆを温めたりと、いつもの仕事をこなすのです。開店直後に電話が鳴って女将が出れば、今日は営業しているかと尋ねられる。20分ほど経って電話の主の若い職人風の男性二人がご来店。リピーターのようなのでした。ヘルシーランチセットの天せいろを大盛りで頼まれて、ワカサギの天麩羅までご注文。亭主は無言で調理をする。

 昼を過ぎて徒歩でいらっした熟年の男性一人が、カウンターの隅に座ってせいろ蕎麦の大盛りを頼まれる。蕎麦が好きな方なのか、薬味も一切使わずに、蕎麦湯は綺麗に飲み干して帰られた。これでもう1時は過ぎていたから、やはりそんなに続けては混まないと見込んで、亭主はかき揚げを揚げて端切れの蕎麦を茹で賄い蕎麦を食べておく。食べ終わらないうちに常連さんの車が駐車場に入って来る。いつも決まってヘルシーランチセットのせいろ蕎麦の方。

 2時過ぎには洗い物を終えて、女将と家に帰るのでした。息子と同じ年の隣の奥さんが、珍しく駐車場で車を洗っていたから挨拶を交わす。ご主人は趣味のサッカーの練習に出掛けているのだとか。のどかな日曜日の午後なのです。女将の後を追いながらみずき通りを渡れば、午後の太陽が随分と高い位置から薄陽を差していた。季節が替わって、太陽が通る道筋もどんどん高くなっているらしい。予報では明日は午前中は雨。どんな一日になるのだろうか。


3月6日 月曜日 朝は雨、午前中は曇りで …


 雨の降る朝でした。まだ眠っていたかったけれど、急いで蕎麦屋に出掛けて、昨日残った蕎麦の確認をする。確かに、8食分の蕎麦が好い状態で残っていたから、洗い物を片付けて小一時間かけて白餡を作ったら、家に戻るのでした。モミジの枝に雀が一羽止まって朝の囀りをしていた。今日は午前中は雨という予報だったから、蕎麦は打たずに済まそうと考える。先週の月曜日は予想外に混んだから、多少の不安はあったけれど、8食あれば十分なのです。

 7時過ぎに家に戻れば、女将が朝食の支度をしてくれていた。塩鯖と小鉢が並んで、炊きたてのご飯と味噌汁。栄養価的にはこれで十分なのです。亭主はすぐに食べ終えてしまうから、お茶をもらって書斎に入る。今日は蕎麦打ちがないからと、たっぷりと1時間は眠って、目覚めればもう9時なのでした。香り豊かな珈琲を入れてテレビも点けずにゆっくりと憩いのひとときを過ごす。女将に声を掛けて家を出れば、もう雨は止んでいたのです。

 蕎麦屋の前のバス通りに出れば、ご近所のチンチョウゲの花が咲き始めていた。年に一度の風景で、空が曇っているのが惜しまれるのでした。蕎麦屋に着いたら、看板を出して幟を立て、チェーンポールを降ろす。昨日お隣の奥さんが綺麗に掃除していた車も、今朝の雨でまたずぶ濡れ。久し振りに、玄関脇に置いてある灰皿を洗って水を入れておく。曇ってはいても、空がそれほど暗くはなかったから、そのうちに陽が差してくるのかと期待が持てた。

 昨日に比べたら暖かさに慣れたせいか、少し風は冷たく感じられるのです。厨房に入って金柑大福を包み、大根と生姜をおろしたら野菜サラダの具材を刻み始める。この陽気ではお客はあまり見込めないと、過去の経験から判るのです。昨日はあんなに沢山の人が歩いていたのに、今日は犬の散歩に出る人の姿だけしか見られない。人間は気温の変化に敏感なのでしょう。昼過ぎまでお客を待って、誰も来ないと思っていたら、蕎麦好きの常連さんがいらっしゃる。

 「明日から随分と暖かくなるってね」と、新聞を見終えて亭主に話しかける。辛味大根とせいろ蕎麦の大盛りを食べて、綺麗に蕎麦湯をのんで帰られた。その後はもうお客は来ない。1時半を過ぎて亭主はかき揚げを揚げて、賄い蕎麦を食べ始める。残った天麩羅の具材を揚げて家に持ち帰る用意。お新香や切り干し大根など、残った小鉢もタッパに詰めて、月曜日は洗い物よりも、残り物の始末に時間がかかるから疲れる。3時過ぎに家に帰るのでした。

 女将はまだ帰っていなかったけれど、玄関に重い荷物を置いたまま、亭主は居間の部屋でひと休み。すぐに女将が帰ってお茶を入れてくれた。夜はプールに行かなくてはならないので、その時間から逆算して5時には夕食を食べなければならない。しばらくはパソコンに向かって、午後の陽射しを浴びながら一時間ほど昼寝をした。一週間ぶりのプールはやはり身体が重かったけれど、初心者コースで一人ゆっくりと身体をほぐすのでした。


3月7日 火曜日 好く晴れた定休日で …


 今日は朝の4時半から起き出して、確定申告の書類作りの三回目に挑戦。この何年かでやっと慣れた書類作成コーナーの入力形式がまた新しくなったので、「便利になりました」とはうたっているけれど、年寄りにはまた新しく覚えなければならないので、試行錯誤を繰り返すから大変。8時半には蕎麦屋に出掛けて、昨日の洗濯物を干したら、お袋様に電話をして火曜日の買い出しに出掛ける。空は青く景色も春めいて、気分が好いのでした。

 農産物直売所では地元の農家の白菜はもう終わりらしく、トマトや生椎茸、ニンジンなどを買って、隣町のスーパーに出掛けるのでした。陽射しはもう春の暖かさで、今日は駐車場も空いていたから助かった。白菜はやはりそろそろ終わりらしく、半分や四分の一に切った物が並んでいた。今日は新聞に広告の出る日だったらしく、エノキが57円などと、随分と安く売られていた。予定の買い物を終えてお袋様を送り、蕎麦屋に戻れば、暖房も入れずに検品をする。

 調理台に並べた野菜を冷蔵庫にしまったら、まな板を出して白菜を根元から切る。一枚一枚の葉に塩をまぶして、樽の中に漬け込んでいくのです。これで11時前になったので、午前中の仕込みは終わりにして、家に戻って昼の支度を始めました。と言っても昼は蕎麦だったから、お湯を沸かして昨日揚げて帰った天麩羅の残りをグリで焼くだけ。最近、グリルの調子が悪いと女将がこぼしていたけれど、掃除をして騙し騙し使っているのです。

 そう言えば、蕎麦屋のグリルもまったく同じ状態で、ガスの出る口が油で汚れて詰まっているらしい。10年も使っていないのに、ガスレンジそのものを取り替えると10万単位のお金がかかるから、女将ではないけれど、重曹を水に溶かして霧吹きで吹きかけ、掃除をしているのです。蕎麦屋はダブルキッチンだから、グリルは二つあるのでそれで何とか凌いでいる。道具の掃除というのは大事なことなのだとつくづく感じさせられるのでした。

 昼を食べ終えて、確定申告の書類を印刷したら、まだ入力が足りない部分があったのに気づく。いろいろな用語が理解できていないから、気づかずに次に進んでしまったらしい。朝早くからパソコンの電源は入れたままで、目も疲れ果てたのでここでひと眠り。午後の陽射しを浴びながら眠るのはとても気持ちが好い。目覚めればもう3時過ぎで、あまり天気が好いから、女将の言っていた近所の農家の垂れ梅の古木を見に出掛けた。遠くに辛夷の花が咲いている。



3月8日 水曜日 定休日二日目は疲れた一日で …

 4時半起床。例によって居間の椅子にじっと座って30分。テレビを点けて5時のニュースを見たら、蕎麦屋に出掛ける。今日は満月なのか、西の空に赤い月が沈んでいくところでした。厨房に入って気になっていた白菜のお新香の桶を見れば、十分に水が上がって漬け直しのタイミングなのでした。昆布を夾んで塩を振りながら、小さめの漬け物器に漬け直す。小鉢を一つ作っておこうと、冷凍してある南瓜の端切れを煮て、小一時間かかる大豆を煮始める。

 やっと日の出前になって向かいの畑を眺めれば、真っ白に降りた霜が朝の光で蒸発して朝靄になるところ。蕎麦屋の店の中も11℃だったから、暖房を入れればすぐに暖かくなるのです。7時前に家に戻って、女将の用意してくれた朝食を食べる。書斎に入ってひと眠りすれば、9時半まで目が覚めなかった。今日は確定申告の書類を提出に行く予定だったから、昼前に用意をして準備万端で昼食の支度をするのでした。久し振りにスパゲッティーカルボナーラ。

 1.5人分を女将と二人で分けて、美味しくいただくのでした。食後のひと休みを終えたら、まずは確定申告と車で20分ほどの市役所に向かう亭主。晴れて気温も上がってきたから、気持ちの好い午後でした。ところが、いつもの受付場所に着けば、いつもの受付には「提出受付中止」の張り紙がしてあって、愕然とするのでした。中央公民館で受け付けると掻かれていたから、カーナビを駆使して何とか辿り着いたのが1時半。ところが、いざ提出してチェックをうけると

 「収支内訳書だけで確定申告書がありませんね」と言われる。そもそもが確定申告を何のためにするかが判っていないから、所得税の確定申告をするという意識がない亭主。用紙をもらってその場で記入しようと思ったけれど、パソコンで税務局の自動入力を利用しているから、計算が出来ない。仕方がないからもう一度家に戻ってパソコンで確定申告書の入力をする。これも去年と違って別のページを開かなければいけないのに、やっと気が付いたのです。

 3時過ぎにやっと確定申告書を印刷していたら、女将がスポーツクラブから帰って来る。パソコンの画面を睨みつけて、頭がふらふらの亭主は、彼女に事の次第を説明したら、果物をもらってひと休みする。夕刻は道も混んでいて、提出の会場までは30分ほどかかった。先刻、受け付けをしていた男性がまだ仕事をしていて「家が遠いもので時間がかかりました」と言えば、他に並んでいる人もいなかったからか「ユーカリじゃ遠いですね」と同情してくれた。

 やっと家に戻ったのが夕刻の5時前で、今日はプールに行く日だから、蕎麦屋で午後の仕込みをする時間はない。蕎麦豆腐と天麩羅の具材を切り分けるだけだから、明日の朝でも好いだろうと、女将の用意してくれた焼き肉丼を食べ「6時には起こして」と言って書斎で横になって少し眠るのでした。プールに行く前から、今日は相当に疲れた気分で、パソコンに向かって目を酷使したからか肩が凝って、プールで泳いでも身体が重く感じるのでした。

3月9日 木曜日 暖かくなったら急にお客が増えて …



 昨日の夜は疲れ果ててもう動けなかったから、今朝は4時に起き出して蕎麦屋に出掛けるのでした。天麩羅の具材を切り分け、キノコ汁を仕込んだら、白菜のお新香を切って小鉢に盛り付ける。南瓜と小豆の従姉妹煮も少しだけ盛っておく。合わせて10鉢。これが今日の客数の予想なのです。だいぶ暖かくなっているから、店の中もエアコンは点けていない。これだけ暖かくなってしかも晴れると言うのだから、どうしたってお客が来ないはずはないのです。

 6時過ぎに駐車場に出れば、小雀たちが朝の囀り。モミジの枝の中にも二羽ほど止まって鳴いている。家に戻ってもまだ女将は起き出して来ないから、亭主は書斎に入ってもうひと眠りするのです。7時過ぎに目を覚まして約一時間の仮眠なのでした。女将も最近は随分ゆっくりと朝の支度をするので、今朝はちょうど好い具合なのです。鰺の開きと小鉢が二つで、とても美味しく朝食をいただく。例によって食後は20分ほど椅子に座って、固まっている亭主。

 女将の朝ドラの最中に髭を剃って着替えを済ませたら、再び蕎麦屋に出掛けていく。今朝も蕎麦打ちは二回だから、少しでも早く打ち始めたい。750gと500gの13食分を続けて打って、蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って生姜や大根をおろして薬味の葱を刻む。加水率を47%強にして少し柔らかめに打てば、伸す時間も短縮されて、柔らかい生地でも、包丁切りも最近は上手く出来るようになったのが嬉しい。厨房に戻って金柑大福を包み始める。

 白餡が少し柔らかかったけれど、これも慣れで求肥を硬めに仕上げて上手く金柑を包み込む。野菜サラダの具材を刻んで、新しい胡麻油を鍋に入れ、天つゆを温めたら、天麩羅の具材を調理台に並べていよいよ開店の準備が整うのです。今日は昼前に、先日来たばかりの常連さんが、年配のお友だちを連れていらっしゃる。せいろ蕎麦の大盛りと辛味大根を二つ。それからが、暖かい今日の混みようで、駐車場は満杯。女将が早く来てくれてとても助かった。

 隣町の常連さんもいらっして、いつもと同じに野菜サラダに辛味大根とキノコつけ蕎麦のご注文。1時半近くまで話をして帰られるから、それから亭主は賄い蕎麦を茹でて食べるのです。家に戻ればこの暖かさで、庭の塀沿いに植えてある姫水仙が一斉に花を咲かせていた。書斎のパソコンに向かって今日の写真と売り上げのデータを取り込んで、亭主は1時間ほど昼寝をするのでした。5時前に業者の若者が食材を届けに来て、夜は久し振りにお好み焼きを作る。

3月10日 金曜日 やはり今日も暖かいからなのか …


 午前5時半に家を出て、蕎麦屋に向かう亭主。定休日明けの初日からお客が入ったので、週末までの蕎麦汁が足りなくなりそうだったから、今朝は出汁取りから始めるのです。出汁を取っている間に曇っていると思った東の空から朝日が昇る。6時17分。随分と日の出が早くなったのです。すっかりなくなった小鉢も盛り付けて、朝飯前のひと仕事を終えて家に戻るのでした。7時前だったけれど、女将が台所に入って朝食の支度をしてくれていた。

 朝食のおかずは塩鯖と茄子焼きだったけれど、これで十分なのです。ナスをすり下ろした大蒜と醤油で熱いご飯に載せて食べれば、甘く美味しい香りがする。子どもの頃からよく食べたせいか、ナスは身近な食べ物なのでした。昔は栄養がないなどと言われたものだけれど、水分の多いナスも、最近ではポリフェノールやカリウムなどの栄養素の効果が見直されてきたらしく、高血圧や免疫力アップにも効果があると言われているのです。

 朝食を終えた後は、例によって書斎に入ってひと眠り。朝ドラの終わる時間には目覚めて、洗面と着替えを済ませて、珈琲を入れたら一服してまた蕎麦屋に出掛ける。ガレージに下りる階段の脇に黄色い水仙が見事に花を開いていた。早い時期に咲いた水仙は、もう女将が葉を束ねているのに、庭にはこの時期、姫水仙の他に白い水仙とこの黄色い水仙が咲いているのです。誰が植えたのかと亭主と女将が言い合うけれど、何度も楽しめて好いのです。

 蕎麦屋に着いたら、早速、蕎麦打ちにかかる。加水率は47%強。今までの亭主の経験からは、少し柔らかめだけれど、最近はこれが早く打ち上げるコツなのかと、少し考え直している。切りべら25本で140gの束を八つ揃えて、今日も13食を用意したのです。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、開店の準備を整えたら、今日も昼前からお客が入ったから有り難い。一人のお客が続けて入って、例の少年もやって来た。歩けないお婆さんの蕎麦を持って帰る。

 三人のお客が入って四人分の蕎麦が出て、1時を過ぎたから亭主は賄い蕎麦を食べておく。今日はこれで終わりかと思ったら、いきなり四人のお客がいらっして、常連さんの元気なお婆さんが「来たわよ-」と、ご主人と娘婿と孫とを紹介する。若い二人は天せいろなのに、食べ終わってまたせいろ蕎麦を注文するのでした。高校生らしい孫も大きな声で話をするものだから、元気なお婆さんも大変なのです。やっと帰ったのがもう2時半近くで、後片づけが大変。

 7人しかお客が来ていないのに、蕎麦は10食分が出たから、沢山用意しておいて好かった。3時半近くまで亭主が一人で後片付けをしていたら、スポーツクラブから帰った女将が心配してくれて蕎麦屋に来てくれた。今日は暑かったから混んでいるのではないかと思ったのだそうな。最後の片付けを手伝ってくれて、4時前には家に帰ることが出来たのです。亭主はひと眠りして夜のプールに行く準備をする。何か随分と忙しいという一日なのでした。 



3月11日 土曜日 何年かぶりに15食の蕎麦が売り切れた …



 昨日の蕎麦もほとんど売り切れたから、今朝は4時半から蕎麦屋に出掛けて、まだ真っ暗なうちから最初の蕎麦を打つのでした。蕎麦粉が底をついて、今日の午前中に届く予定だけれど、ギリギリの攻防なのです。テレビの野球が夜遅くまでやっているので、睡眠時間は4時間ほど。元気をもらってなんとか頑張れるのです。蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って小鉢の切り干し大根を作る。白菜のお新香も南瓜と小豆の従姉妹煮も今日の分が足りるかと心配。 

 切り干し大根の煮物を作り終えたら、また蕎麦打ち室に戻って、蕎麦玉を伸して畳んで包丁打ち。47%の加水率で、ちょうど好い柔らかさで、このところ好い具合に仕上がっているのです。それにしても、この週末に向けてはお客が多かったので、注文しておいた蕎麦粉が、こんなにすぐに必要になるとは思っていなかった。蕎麦農場の係の女性に無理を言って、昨日電話をして今日の午前中に送ってもらうことにしてあったのです。これが果たして大正解でした。

 蕎麦を打ち終えた頃に、やっと東の空が明るくなって、日の出の直前の風景を写真に納める。向かいの畑にはうっすらと霜が降りているようだったから、やはり朝は気温が下がるのです。それでも蕎麦屋の店の中は15℃もあるので、夜の間に気温があまり下がらないらしい。陽が昇ると寝不足の身体も少し元気が出る。まだ6時過ぎだったから、家に戻って朝飯の前に眠っておくのです。7時を過ぎて女将が起こしに来てやっと目が覚めるのでした。

 朝食を終えて洗面と着替えを済ませ、珈琲を一杯飲んだら、今日は蕎麦粉が届くからと早めに家を出る亭主。出がけに見た庭の白い水仙があまりに端正に咲いているから、写真を撮っておく。この場所は秋には菊の花が咲く場所で、春はチューリップが咲く場所なのに、女将が球根を植えたらしいのです。とは言っても本人ももう覚えていないから、結果オーライで花を楽しむことにしている。日当たりの好い場所だから、一年で随分と育ったようなのです。

 蕎麦屋に着けば、早い時間に蕎麦粉が届いたから、二回目の蕎麦打ちが出来た。15食の蕎麦を用意して、今日は万全の体勢だと思ったけれど、それよりもずっと多くのお客が来て、お蕎麦売りきれで対応できなかったのは、とても残念なのでした。コロナ前の一日20人のお客が会った頃を思い出す。一回に1kg11食の蕎麦を二回打っていたのです。あまり続いたもので、腕の腱鞘炎が酷くなったのを覚えている。混むのは嬉しいけれど、ほどほどでないといけない。

 来て下さるお客には申し訳ないけれど、打つ蕎麦の数の上限を決めておくのが一番好い。身体を壊さずに長く続けるためには、日に適度の蕎麦打ちでないといけない。今日も駐車場は満車で、続々とお客が来て下さった。何組かが入れずに帰られた様子。コロナ感染の危機感が薄れたのと、気温が上がって暖かくなったのとが大きな原因なのでしょう。女将と二人で息つく暇もないほど忙しかった。洗い物と片付けが大変で、亭主はとうとう昼も食べられなかった。

 そんな日に限って、今日は夜の防犯パトロールがあるのでした。暗くなるのが随分と遅くなって、「今晩は」と挨拶をするのにもまだ明るい時間に集合場所に集まり、約5kmの距離を歩くのです。家に戻ればちょうど野球のテレビ中継の始まる時間で、合間を見てこのブログを書くのも大変なほど。テレビをずっと観ていられない女将は、翌日の新聞の記事を見て情報を得ているらしい。明日はまた沢山のお客が見込まれるから、朝早くから出掛けて行くしかない。



3月12日 日曜日 混んだ日の翌日は仕込みで忙しい …


 今朝も午前4時半に家を出て蕎麦屋に向かう亭主。昔なら、前日の夜に来てやっていた仕事も、10年近い年月が過ぎたから体力が落ちた。まずは昨日の沢山の洗い物を片付け、空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を補充しておく。それでも蕎麦汁が足りないから、ストック分の一番出汁に返しを加え、鍋で温めるのです。二番出汁で作る天つゆや温かい汁も、もう残り少なかったから、3㍑の鍋に昆布と干し椎茸を入れて水に浸しておく。水分補給のほうじ茶も忘れない。 

 昨日は暖かいのに、何故か温かい汁の蕎麦を頼むお客が多かったのです。それからやっと蕎麦打ち室に入って、まだ暗いうちに蕎麦を打ち始めるのです。加水率は47%で、少し柔らかめの方が早く打てる。菊練りまで済ませてへそだしをして、これを潰して蕎麦玉を作ったら、ビニール袋に入れて寝かせておく。すぐに厨房に戻って捏ね鉢を洗い、蕎麦打ち室に戻したら、まずは蕎麦豆腐の仕込み。そして、小鉢にワカサギの南蛮漬けを仕込んでおくのです。

 7鉢分14尾のワカサギを蕎麦打ち前に解凍して、二番出汁とお酢と出汁醤油、砂糖で漬け汁を作っておいたから、後はワカサギに天ぷら粉をまぶして、水で溶いた天ぷら粉で揚げていくだけ。カリッとするまで好く揚げないと、漬け汁に浸かってすぐに衣が剥がれるから、注意しないといけないのです。薄く切った玉葱と千切りにした人参を間に入れながら、静かにタッパに並べていく。天麩羅の具材もすべてなくなっていたから、まだまだ仕事はあるのです。

 やっと蕎麦打ち室に戻って、寝かせておいた蕎麦玉を伸す。生地が柔らかいと伸す作業がとてもやりやすい。あまり柔らかすぎると今度は伸し棒に丸める生地がくっいたりするから、適度な柔らかさが肝心なのです。時々打ち粉を振りながら、八つに畳んで包丁切りに入る。包丁打ちも生地が柔らかすぎると、包丁の刃にくっついてしまったりするので、これも要注意。切りべら26本で140gの蕎麦を8束取って、端切れは亭主の賄い蕎麦用に取っておく。

 蕎麦打ちを終えて、どっと疲れた夜明け時。1時間半は集中して朝飯前のひと仕事をしたのでした。今日も天気が好く温かくなりそうだったから、昨日の混み具合を勘案して、蕎麦は16食用意するつもりでいた。家に戻ればまだ女将も起き出していないので、朝飲み残した珈琲をすすってストーブで冷えた身体を温め、書斎に入ってひと眠りする。40分ほど眠れたのだろうか。女将が起こしに来たので、食堂まで歩いて今朝のご飯を食べるのでした。

 ところが、ご飯を食べ終えるとまだ眠気が覚めないから、今朝はもう一度眠ることにしたのです。後一回蕎麦を打ったら、大根生姜を擦って薬味の葱を刻み、レンコンを切って湯がいて、南瓜を切ってレンジにかけ、天麩羅の具材を切り分けて … と、頭の中でシュミレーションをしている間に、もう眠りに落ちていた。目覚めたらもう8時半なのでした。洗面と着替えを済ませて、急いで蕎麦屋に向かうのです。ご近所の椿がとても綺麗に咲いていた。

 幟と看板を出して、チェーンホールを降ろしたら、早速、蕎麦打ち室に入って二回目の蕎麦を打つ。今回も加水率47%でちょうど好い柔らかさ。切りべら26本で8束の蕎麦が取れた。80gほどの端切れは、一回目の端切れと合わせて、亭主の賄い蕎麦になるのです。厨房に戻って残った仕込みを終えようと、野菜サラダの具材を刻んで、盛り付け終えたところで、開店前にお客がいらっした。久し振りに鴨せいろの注文が入って、作ったばかりの野菜サラダが出た。

 次にいらっした女性のお客が、ヘルシーランチセットを頼まれたから、サラダや蕎麦豆腐を食べている間に、蕎麦を茹で、金柑大福を包んだのです。話をしながらハラミとカシラの串焼きも注文。更に残った三つの金柑大福を、お土産で持ち帰りたいとおっしゃるので、ラップで包んで袋に入れて差し上げる。その後も、ぽつりぽつりとお客が来たけれど、昨日の半分ほどではなかったので、チャンスとばかり、蓮根を茹でたり、出汁を取って蕎麦汁を作った。