2023年1月下旬

1月20日 金曜日 日中は暖かくなったけれど …



 夜のうちに雨が降ったのか、6時過ぎに蕎麦屋に出掛けたときには、まだ道路が濡れていました。空は雲に覆われて、最近は朝に曇りという日が多い。本当に晴れるのかがいつも心配になるのです。それでも今日の準備を始めておかなくてはと、昨日、出尽くした小鉢を今朝も盛り付けておく。家にもだいぶ持って帰った白菜のお新香が、もう少しで終わるからそしたら大根のなた漬けを仕込んでおこうと考えている。一度に三種類の小鉢を用意するよりも好いか。

 朝食を食べ終えて書斎で横になるけれど、30分ほど眠ったのかどうか。洗面と着替えを済ませて、再び蕎麦屋に向かう亭主。庭の金柑の木の下にマンリョウの赤い実が目に付いた。あまり低い位置なので、鳥たちにも食べられなかったらしい。そう言えば、今年はヒヨドリたちがあんなに沢山群れているのに、我が家の庭にはあまり飛来しない。何処かに美味しい餌のある場所を見つけたのかも知れない。見つからないうちに女将が次の金柑の収穫を終えれば好い。

 朝の間、あんなに雲がかかっていたのに、蕎麦屋に着く頃にはもう青空が広がっていました。看板と幟を出してチェーンポールを降ろす。早朝のうちに暖房を入れておいたから、店の中は暖かく、蕎麦打ち室も15℃まで上がっていた。すぐに蕎麦粉を計量して、捏ね始めるけれども、途中で昨日は随分と硬かったのを思い出して、水を足して再び捏ねる。やはり46%がこの時期の適切な加水なのでしょう。今朝はしっとりとした生地を仕上げて蕎麦玉を寝かせる。

 スムーズに伸しを終えて八つに畳み、包丁切りをすれば、切りべら26本で135gと、いつもの調子で蕎麦を切り終えるのでした。蕎麦の束は8人分と半分。生舟に昨日残ったひと束と合わせて、今日は9人分の蕎麦が用意できました。昨日よりも暖かいという予報だったから、ちょうど好いかも知れない。端切れもちょうど一人分くらいはあるから、亭主が食べる賄い蕎麦の分もあるのです。無事に蕎麦打ちを終えて厨房に戻り、次の仕込みに入る。

 金柑大福は昨日作った残りがあるので今日は作らない。野菜サラダを刻むだけだから、かなり時間には余裕があるのでした。ニンジンのジュリエンヌも丁寧に刻んで、天麩羅鍋に油を入れて天つゆとキノコ汁を温め、店の掃除を終えてテーブルを拭く。開店の10分前には用意が出来て、少し早めに暖簾を出すのでした。カウンターの奥の席に座ってお客を待てば、昼前に車が入って男性が一人。玄関の扉を開けてじっとこちらを見ているので、「いらっしゃいませ」

 マスクを外して、初めて前の職場の同僚だと気が付く亭主。定年になってもう何年か経つはず。積もる話を聞きながら、次のお客の車がもう駐車場に入ってきているので、急いで注文を聞くのです。「最近は食が細くなって」と言うから、聞けば仕事を辞めてから、毎日、家にいるのだという。「社会復帰のリハビリに何年かかかるんだよ」と、自分は調理師学校に行って、次の準備をしたことを話す。次のお客は天せいろとキノコつけ蕎麦のご注文なのでした。

 ご夫婦のお客が帰った後も、カウンターに座ったままの昔の同僚は話したりないらしく、昔の職場の話や子供や孫の話をするのでした。奥様は今もまだ働いているとかで、普段一人でいるから話し相手がないのだろうかと少し心配になる。そんなお客も何人かはいるから、他のお客もないし、珈琲を出してゆっくりとしてもらうのでした。1時をだいぶ過ぎた頃になって、見覚えのあるお客の車が入って、やっと彼は帰っていく。天せいろと辛味大根のご注文 …。



1月22日 土曜日 冷たい風の吹く中を …



 夕べは一週間ぶりにプールでリハビリのひと泳ぎ。朝飯前のひと仕事が沢山あったので、今朝は6時に家を出た。よく眠れたから5時半には目が覚めたのです。まだ夜明け前で東の空も薄明るい。思ったよりも冷たい風が強く吹いていて、電線がビュービューと鳴っているのでした。蕎麦屋に着いてエアコンの暖房を入れたら、早速蕎麦汁の補充をする。そして、小鉢の盛り付け。白菜のお新香が今日でもう終わりなのでした。美味しい時期に食べてもらえたかな。

 7時過ぎに家に戻って朝食を摂れば、30分だけのつもりで書斎でひと眠り。髭を剃って着替えをしてから珈琲を入れれば、もう9時前なのでした。それでも慌てずに一服して、女将に声を掛けて家を出る。風は強い北風でとても冷たく、陽が差していても身体が冷えるのでした。看板と幟を出してチェーンポールを降ろしたら、すぐに蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。加水率は迷わずに46%、昨日の失敗はもう繰り返さない。しっとりとした蕎麦が仕上がる。

 空は青空なのに天気予報で言っていたよりも強い風で、これではお客が来ないだろうと思ってやる気がめげるのですが、開店の準備はしておかなければならない。ため息をつきながら金柑大福を四皿分包んだら、野菜サラダの具材を刻み、今日も三皿盛り付けておくのでした。朝の出だしが遅かったから、開店時間ギリギリに準備が終わる。女将に暖簾を出してもらって、亭主は天麩羅油と天つゆを温めるのです。キノコ汁をIHに掛けてこちらもスタンバイ。

 前の通りを歩く人もなく、この寒さではさもありなんと女将と話をしていたのです。昼になってもお客は来ないから、亭主は奥の座敷で一休み。「お客さんです」と女将に呼ばれて厨房に戻れば、見覚えるあるご夫婦が奥のテーブルに座って、カレーうどんとヘルシーランチセットのご注文なのでした。どちらも野菜サラダが付いているから、すぐに二皿のサラダがなくなる。注文の品を出している間に、車が2台連なって駐車場に入ってくる。

 五人連れのお客がいきなり入ってきて、テーブルとカウンターに分かれて座る。こちらも見覚えのあるお客なのでした。天せいろは一つだけで、残りの方は皆さん天麩羅蕎麦。しかも、大盛りが二つと言うから、もう温かい汁がなくなるのが目に見えていた。出汁を鍋に入れて汁を作っておく。天麩羅は二人分を揚げて、一度火を止めて油を休ませてから、また三人分を揚げる。大盛りが出ると汁もさることながら生舟の蕎麦もみるみる減っていくのです。

 最初のお客がランチセットの金柑大福を食べたら美味しいと、また二皿持ち帰ったので、残りは一皿。車が一台出たら、また大きな車が入ってきて、先週もいらっしたご家族連れが奥のテーブルに座るのでした。バスケの練習を終えてきたから、お腹が空いているんですと言う二人の娘さんが、とろろ蕎麦の大盛りと普通盛りを頼まれて、お母様は天せいろ。いつも一番小さな娘さんが大盛りを食べるから亭主も女将も感心する。閉店までゆっくりとするのでした。

1月22日 日曜日 こんな寒い日でも日曜日だからか …



 寒い明け方にいつも寒さで早く目が覚めてしまうから、夕べはエアコンのタイマーというものを初めて使ってみたのです。11時に床に入ったから、6時間後に暖房が入れば朝の5時には部屋が暖まって、ぐっすりと眠れるはずだった。これが効き過ぎて、6時半まで眠ってしまったから大変。急いで蕎麦屋に出掛け、昨日の洗い物の片付けと、小鉢の盛り付けをするのでした。7時過ぎに家に戻って女将の用意してくれた朝食を食べる。8時過ぎにはまた蕎麦屋へ。

 暖房を入れておいたから、寒い朝だったけれど店の中は暖かい。すぐに蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。加水率は46%と最近はこれで上手く打てているのです。今日の天気は始めは終日曇りという予報だったから、蕎麦もいつも通りに8人分を打って、昨日の残りと合わせて10人分しか用意しなかった。肌を刺すようなこの寒さでは、雪が降らないだけでも有り難いことで、蕎麦を食べに来る人がいるとは思えなかったのです。

 それでも、昨日のうちに売り切れた金柑大福は、今日も四皿包んでおくことにした。家の庭で採った金柑は大粒のはずなのに、やはり市販のものよりは少し小さいから、半分に切って種を取ったものを、二つ合わせて白餡で包む。これをさらに求肥で包むから、一つの大福がいつもよりかなり大きいのです。食べではあるけれど、上品なお客にはちょっと大きすぎるのかも知れない。作った日にすぐに売れてしまうから、まだ、亭主も試食をしていないのです。

 野菜サラダの具材を刻み、今日も三皿用意してカウンターに並べる。天麩羅の具材もなくなっているので、切り分けなければならなかった。昨日は温かい汁が随分と出たので、出汁が足りなくなりそうで困った。開店と同時に、いつものカレーうどんのご夫婦がいらっして、続けて若い女性が一人でご来店で天せいろのご注文。全部の品を出し終えたら、朝のうちに昆布と干し椎茸を2㍑の鍋に浸しておいたから、出汁取りにかかるのでした。これが今日は正解。

 1時前の後半に、またどっとお客が入ったのです。三人連れの親子は天せいろとキノコつけ蕎麦の大盛りと普通盛り、カウンターに座ったご夫婦のリピーターさんは二人ともキノコつけ蕎麦のご注文で、生舟の蕎麦はみるみるうちになくなっていくのでした。1時半を過ぎて、やっと亭主は端切れの蕎麦を茹でて賄い蕎麦を食べる。こんな寒い日だというのに、やはり、日曜日を馬鹿にしてはいけないのでした。今週は寒さの割には随分とお客が入ったのです。

1月23日 月曜日 昼も外は3℃の寒さで …


 夕べは何故か9時には眠くなって、床に就いたのは好いけれど、やはり6時間で目が覚めてしまった。蕎麦屋に行くにも早すぎたから、パソコンに向かって明日の仕入れの一覧表を作って、個々の品物の値段を最近のものに替えていったのです。普段あまり気にせずに仕入れをしているけれど、数値を入れ直して驚いたのは、野菜の値段が2割から3割は上がっていることでした。テレビのニュースではよく見るけれど、我が身にも降りかかっているとは …。

 4時過ぎからもう一度床に入ってひと眠り。6時には目覚めて車で蕎麦屋に出掛ける。今日の小鉢に大根のなた漬けを盛り付けて、昨日までに空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めていく。昨日の営業時間の合間に出汁を取っておいて好かった。今週はかなりお客が入ったので、小鉢も蕎麦汁もなくなっていたのでした。昨日は女将が家で作った大豆と昆布とニンジンの煮物で小鉢を盛り付け、なんとか凌いだのです。仕込んでおいた大根のなた漬けがここで生きる。

 7時過ぎに家に戻れば、「里芋がまだ煮えていないからちょっと待って」と女将に言われて、やっと朝食の卓に付く。カブと葉を入れた味噌汁と、農家でもらって来たというホウレン草のお浸し。それにホッケと里芋。一汁2菜の朝食は質素だけれどバランスは取れているのでした。昨日の夜に何か食べるものはないかと冷蔵庫の中を覗いたら、綺麗に何もなくなっていたから、朝食はどうするのかと心配していたのです。主婦の知恵なのか、美味しく頂いた。

 食後は例によってひと眠り30分で、髭を剃って着替えをしたら、蕎麦屋に出掛けようと玄関を出れば、雨が降っているのでした。月曜日の帰りは持ち帰る荷物が沢山あるから、傘を差しては到底持って帰れないので車で出掛ける亭主。天気予報では曇りだったのに。まあ、雪でなくて好かったと言うべきか。暖房の設定温度を上げても、店の中はなかなか暖まらない。それほど今朝は寒いのです。二つの大釜にも火を入れて、お湯を沸かしてほうじ茶を入れる。

 やっと蕎麦打ち室の温度が10度を超えたから、蕎麦粉を計って捏ね始める。今日はこの天気だから、お客も来ないのではないかと、500g 五人分を打って、昨日の残りと合わせて八束の用意で済ます。500g でも蕎麦打ちは真剣だから、伸して畳んで綺麗な蕎麦を打ち上げるのでした。雨はひとしきり強く降って、外の寒さも増しているから、これで蕎麦を食べに来るお客がいるかと、さすがの亭主も弱気になっている。月曜日の常連さん達もこの寒さでは外出すまい。

 それでも野菜サラダはいつも通りに三皿盛り付けて、定刻には暖簾を出して開店の準備。客を待つ長い時間の合間に、金柑の甘露煮や白餡作りなど、他の事をできればいいのだけれど、調理台を使ってしまうと、いざ来客と言う時に支障があるので、急ぎのことでない限り、なかなか始められないのです。斯くして待つこと一時間。1時前にやっと車が駐車場に入ってきたのでした。年配の母親と息子らしかったけれど、ヘルシーランチセットのご注文でした。

 野菜サラダと蕎麦豆腐を出して、食べてもらっている間に、天麩羅を揚げて蕎麦を茹でてお出しする。デザートの金柑大福もこれで全部売り切れ。「美味しく頂きましたわ」とお母様が言って帰られた。1時半を過ぎたので、亭主もかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べる。天麩羅油も今日で終わりだから、先週仕入れたワカサギの冷凍物を解凍して、南蛮漬けを作って見た。食べるもののない我が家では、これが夕食のおかずになるから嬉しいのです。

 ひと休みしたら夜のプールに出掛ける亭主。月曜日は一人の営業で片付け物が沢山あるから、ひと眠りした後で夕食を食べると遅くなってしまう。それでいつもプールに行き損なってしまうから、今日は頑張って出掛けたのです。行けば行ったで身体を動かすから、血流も好くなるのでしょう。夜の酒が美味しかった。ブログを書きながら、明日の予定を復唱すれば、仕入れに出掛けた後で床屋に行く日なのだと気が付いた。結構、また忙しくなりそうなのです。

1月24日 火曜日 今朝も朝から冷たい雨で … 


 夜に少しでも泳いだ晩は、ぐっすりと眠れるのです。7時間目覚めることもなく眠って、6時に居間の部屋に入ってストーブに当たる。コーヒーを飲みながら今日一日の予定を考えて、そろそろ蕎麦屋に出掛けなければと思うけれど、なかなかストーブの前から立ち上がることが出来ない。やはり今朝も寒いのです。歳を取るにつれて、この寒さに弱くなるらしい。無理をせずに動き出せば好いとは思うけれど、いつまで経っても椅子に座っていることになる。 

 30分以上じっと座り続けて、やっとスイッチが入ったのか出掛けるモードに入る。朝飯前のひと仕事は、カウンターで乾かしておいた盆や皿、ボールやバッドを片付けたら、天麩羅鍋の固めた油を外のゴミ箱に移すのです。洗濯で洗ったままのタオルや布巾などを干して、今日の仕入れのメモを見ながら、膝下の戸棚や冷蔵庫の中を確認して、7時過ぎには家に戻る。亭主が定休日で時間に余裕があるからと思ってか、女将もまだ台所に入っていなかった。

 銀ダラの煮付けにカブの味噌汁で朝食を食べれば、カブが随分と甘いので驚いた。今朝は食後のひと眠りもせずに、朝ドラの終わる時間に家を出て再び蕎麦屋に出掛ける亭主。出汁を取るにしても、肝心の返しの甕が空になっていたから、残り二本になっていた減塩醤油で、作れるだけの返しを作っておく。最近はいろいろな食材を余分に仕入れないようにしているから、なくなってくると急に困るのです。出汁取りの準備をして、お袋様を迎えに行く。

 昨日の夜から随分と考えた仕入れの食材でしたが、女将に頼まれる家の買い物もあるので、とにかく種類が多すぎて何を買ったか点検しないと忘れていることがある。今日は確かに買ったと思っていた珈琲がないので驚いたのです。なくてもいいものだから好かったけれども、これが店で使う食材だと、またそれだけを買いに出掛けるのも大変なのです。大根も一本97円でかなり得をした気分なのでした。新鮮な野菜がそろったときにはやはり嬉しいのです。

 午前中に床屋に行くのを諦めて、農産物直売所で買って来たばかりの白菜を、早速、塩で樽に漬けていく。早ければ今日の夕方には水が上がってくるはずなのでした。野菜は新鮮なうちに処理をした方が、間違いなく美味しくなるのです。塩の加減は経験値で、好い塩梅とは好く言ったものです。少し早かったけれど、午前中の仕込みはこれで終わりにして家に戻る。女将もすぐに買い物から帰って来て、二人で昼の支度に入るのでした。

 昨日作ったワカサギの南蛮漬けをおかずにして、昼は店で残ったキノコ汁を温めて蕎麦を茹でる。亭主は大盛りで汁に三ツ葉を沢山載せて、お客がどんな物を食べているのだろうかと、自分で実際に食べてみるのでした。大盛りだと蕎麦を食べ終わるまでに、少し汁が薄まってしまうのが分かって、ここは改善の必要があると感じたのです。ワカサギの南蛮漬けは小鉢に使えると嬉しくなった。いつも同じものばかりでは、特に常連さんは飽きてくるからです。

 女将のスポーツクラブの予約が2時過ぎだから、それまで書斎で1時間ほどちょっとひと眠り。テレビの映画も初めて見るものだったから、3時過ぎまで居間の椅子に座って寛いでいたのです。定休日なのだから、あまり慌てないでゆっくりとした方が好いと思うからなのでした。映画が終わって気を取り直し、蕎麦屋に出掛けていく亭主。午後の仕込みは、出汁取りと蕎麦汁の仕込みなのです。寒い時期は、温かい汁に使う出し汁が沢山出るので油断できない。

 4時過ぎに仕事が終わって西の空を見れば、寒空に輝く太陽も決して暖かくはなかった。家に帰れば、明日にかけて更に寒くなると言うので、鍋にしようかと女将が近所の農家に白菜をもらいに行った。それでも一把は食べきれないからと、半分は亭主が漬け物に漬けてやるのでした。夜は珍しく店で残った野菜を使って、女将が春巻きを揚げてくれた。その昔はよく食べた物だねと、二人で夕食の卓について、亭主は焼酎をあおるのです。

1月25日 水曜日 一日中冷蔵庫の中のような寒さで …


 今朝も早くから蕎麦屋に出掛けた。車の車外温度は300m走っただけで、ガレージの中に置いてあった時の4℃から0℃まで一気に下がる。外は-4℃というのが天気予報の数値です。昔も-6℃などになって水道が凍ったこともあるけれど、若い頃は寒さなどは全く苦にならなかったから、変われば変わるもの。それでも蕎麦屋の中は、4℃と昨日の温もりがまだ残っているのか。エアコンを入れて大釜に火を入れ、ポットにお湯を沸かしてほうじ茶を入れる。

 丸ごと一把を漬けた白菜は、すっかり水が上がっていたので、調理場に桶ごと持って行って小さな漬け物器に移すのです。今朝は、家でも夕べ漬けた半把の白菜を、漬け直して昆布を入れて来た。どちらも農家で採ったばかりのものだから、水の上がりが早い。子供の頃、母がやはり白菜を何把も樽に漬けて、毎日のように食卓に出していたのを思い出す。今は少し値の張る昆布を、何枚も入れて旨味を出して食べるから、それだけ贅沢になったのかも知れない。

 調理台が片付いたら、今度はまな板を出してニンジン、牛蒡、里芋などの硬い根菜類を下茹でしておく。レンコンは天麩羅の具材の残り物。干し椎茸も出汁を取った残りで、食材は粗末に扱わない。生もの用のまな板を出して、鶏肉を小さく切り、半分はキノコ汁用に冷蔵庫で保管する。残りを十分に加熱した中華鍋に油を引いて炒めたら、次々と野菜や蒟蒻を入れて炒めるのです。出汁を入れて少し煮込んだら、出汁醤油と砂糖で味付けをして、筑前煮の完成。

 7時過ぎに味見用に熱々の筑前煮を少し持って家に戻れば、女将が鰺の干物を焼いて味噌汁を作っていた。最近の鰺の干物は小骨を取ってあるし、薄味だから食べやすい。亭主の持ち帰った筑前煮も少しだけ小鉢に盛られていた。朝食を終えて、亭主は書斎に入ってひと眠り。定休日だからと油断をしたら、なんと1時間以上も眠って、床屋に出掛けるのが遅くなってしまう。9時過ぎでも車外温度1℃だったから、先客が来ているはずもないのでした。

 親父様も相変わらず元気で、あまりの寒さで自宅の水道が井戸水なのに凍ったと話していた。亭主と同じで店のストーブの前を離れられないのだとか。一時間あまりでさっぱりと髪を切ってもらい、帰る道は青空が広がっていた。昼近い時間だというのに、車外温度は2℃だから、相当な寒さなのです。通りを歩く人影さえない。定休日は亭主が昼の食事を用意するから、今日は残り物の野菜と昨日買ってきた肉とで久し振りにカレー炒飯にする。

 女将は午後からスポーツクラブでヨーガ教室だから、亭主は蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをするのです。まずはキノコ汁の仕込みをして、1600ccの鍋一杯に5人分ほどのキノコ汁を仕込む。500ccの出汁でキノコと鶏肉を煮たら、塩で味つけをしておいて、食べる直前に蕎麦汁を加えて温めるのです。次に南瓜を切り分けレンジでチーンしたら、蓮根の皮を剥いて切り、酢水で煮て、天麩羅の具材を切り分ける。最後に蕎麦豆腐を仕込んで午後の仕込みは完了です。

1月26日 木曜日 朝は-6℃、日中は7℃まで上がった …


 エアコンのタイマーを上手く使ったせいか、朝の5時過ぎまでぐっすりと眠れたのです。いつもなら3時過ぎには寒さで目が覚めてしまう。珈琲を入れて朝飯前のひと仕事で何をするのかを考え、6時過ぎには家を出る。車の車外温度計は-4℃を表示していた。路面凍結注意の表示も出ている。寒すぎて霜も降りていないのです。蕎麦屋に着けば、蕎麦打ち室の温度計は1℃。さすがに寒いのでした。エアコンを入れて、厨房の大釜に湯を汲んで火を点ける。

 午前6時の東の空は夜明け前のほのかな明かり。どうやら雲はないらしい。天気予報で朝の7時が一番気温が低くなるのは、放射冷却で更に地表が冷えるからだろう。冷蔵庫から漬け物器を取り出して、白菜取り出し、切り分けたら小鉢に盛り付けるのだけれど、厨房の中そのものが3℃しかないので、冷蔵庫の中で作業をしているようなもの。そして、次に筑前煮を同じ数だけ盛り付けておく。蕎麦は八束しか打たない予定なので、これで十分なはずです。

 家に戻れば、女将がいつもより早くおじやを作って待っていた。昨夜の鍋の残りに三ツ葉と卵を散らして、身体が温まるからと亭主は一味を振りかけて食べるのです。小さ目の茶碗に二杯食べたら、もう終わりなのはいつものこと。朝は身体を温めるだけで十分だとこの歳になって腹八部を実践している。残りは女将が食べるから、彼女の方が沢山食べていることになる。お茶を入れてもらって、亭主は書斎でひと眠り30分なのです。

 洗面と着替えを済ませて、朝ドラの終わる時間に家を出る亭主。風はなかったけれど外は冷蔵庫の寒さで、空は澄んだ青空なのですが、今朝はこれまでにない寒さなのでした。早く蕎麦屋に着いて暖まりたいと思うのは人情で、暖房を入れてきた甲斐があるというもの。全国的に寒波が襲っているとはニュースで聞くけれど、それぞれの地方でいつもと違った寒さを、皆が味わっているに違いないのです。蕎麦屋の中に入ると暖かいからホッとするのでした。

 それでも蕎麦打ち室はまだ12℃にしか室温が上がらず、いつもと同じ46%の加水で捏ね始めたら、やはり少し硬い。気温が低いと蕎麦は硬くなるのです。蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻り、葱切りを済ませて、大根と生姜をおろしてまた蕎麦打ち室に戻る。硬い生地を何とか伸し終えて蕎麦切りに入れば、今日は切りべら24本と少し太い蕎麦に仕上がった。カレー蕎麦や暖かい蕎麦にはいいけれど、せいろ蕎麦で出すにはちょっと太いと感じるのでした。

 10時には厨房に戻って金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻むのです。開店の準備を整えて暖簾を出せば、いつもならビールとカレー蕎麦を頼まれるお客が来るはずなのに、今日はぶっかけ蕎麦を頼まれたお客がカウンターの奥に座る。すぐにいつもの常連さんがいらっしてビールとカレー蕎麦のご注文。天せいろの大盛りのお客は入り口のテーブルに座る。珍しく皆さんお一人の男性客ばかりなのでした。一人ずつだと亭主の仕事は増えるから大変。

 女将の来てくれた時間には、もう二回転目のお客が入っていた。晴れてはいるけれど外は7℃だから、こんな寒い日によくお客が来てくれるものだと有り難く思うのでした。カウンターには若い男性客が座って、串焼きに蕎麦豆腐とビールを二本も続けて頼まれる。聞けば飲食業で働いているのだと言う。いろいろな店を経験して自分で店を出したいと言うから、人ごととは思えないのでした。常連さんも次々といらっして、こんな寒い日なのに蕎麦売りきれです。