2022年11月初め


11月1日 火曜日 今年もあと二ヶ月か …

 午前5時に家を出て、車で蕎麦屋に向かう亭主。今日は生ゴミの回収業者が来る日なので、昨日固めた天麩羅油を外のゴミ袋に詰めなければいけない。カウンターの洗い物を片付けて、出汁取りの準備を済ませたら、昨日の洗濯物を畳んで洗濯機の中の洗い物を干していく。冷蔵庫や膝下の戸棚の食材を確認して、今日の買い出しに忘れ物はないかと調べるのです。大分汚れた天麩羅鍋は大釜に入れて、重曹を加えて沸騰させる。いろいろと済ませて6時半。

 家に戻ってもまだ朝食の時間ではないから、台所のシンクに夕べ夜食に肉うどんを食べて、そのままにしてあった鍋や皿を洗うのです。女将が朝食の支度をするのに、シンクが汚れていてはやる気が失せるだろうと配慮するのでした。冷蔵庫の中を覗いてみたら、昨日の夜に肉うどんで使った肉は、今朝の豚汁の具材になるはずだったのではないかと気が付いて、慌てて蕎麦屋に車を走らせ、けんちん汁用に冷凍してあったバラ肉を持って帰るのでした。

 無事に朝食の支度に間に合って、縞ホッケの塩焼きと豚汁で今朝も美味しくご飯を頂くのです。食後のお茶を入れてもらって、今日の段取りを思い巡らす亭主。仕入れの後は出汁取りが待っている。それで昼食の支度に入ればまずまずだろうと思うのでしたが、今日はエアコンの修理に業者が来ることになっていた。女将のスポーツクラブの予約もあったから、午後は時間的にかなりタイトなのでした。お袋様に電話をして迎えに行き、朝の仕入れに出掛ける。

 農産物直売所で多くの新鮮な野菜を手に入れて、隣町のスーはパーでは買い残した食材を購入する。肉や魚や果物などの家の買い物もあるから、なかなか時間がかかるのです。先に買い物を済ませたお袋様が、出口の外で待っていてくれた。お袋様を家まで送って店に帰って検品をしたら、やはりレタスを買い忘れていました。明日にでももう一度出掛けて買ってこなければ、野菜サラダが作れないのです。そんな忘れ物もあるかと火曜日に仕入れに行くのです。

 蕎麦屋に戻って野菜を冷蔵庫に収納したら、早速、出汁を取り始める。一番出汁を取り終えて、返しを加えて蕎麦汁を仕込もうと思ったら、どうも返しの量が残り少ないのでした。仕方がないから、一番出汁を鍋に入れて冷やしたら、冷蔵庫に入れて午後一番で返しを仕込むことにしました。先週の残りの二番出汁で天つゆを作り、後片付けをして家に戻ったのが11時半。女将が蕎麦を茹でる用意をしてくれていたから、すぐに蕎麦を茹でて昼食を食べられた。

 スポーツクラブの予約の始まる2時過ぎまでは時間があるので、亭主は書斎に入って横になる。ぐっすりと1時間は眠って、慌てて起き出してスマホに向かうのでした。テレビ映画を観ているうちにエアコンの修理業者がやって来て、具合の悪いところを見てくれたから、無事に直って安心できた。風を送る羽の部分にも小さなセンサーが付いていて、その接触が悪くなったせいなのだそうな。部品を取り替えて1万7千円。買い換えるよりはずっと安かった。

 映画を最後まで見終えて、蕎麦屋に出掛ける亭主。女将は稽古場で今月提出の書を書いているのでした。店に着いたら早速、返しを仕込んで、夕刻までにもうひと仕事と、来週の小鉢にと筑前煮を作る。昨日の朝には切り干し大根も少し作っておいたから、明日にお新香を漬けておけば、週末までは十分に足りる計算です。後は木曜日の午前中に新蕎麦の粉と打ち粉が届くのを待つだけ。蕎麦打ち前に届けばちょうど好いのだけれど … 。

 片付けを終えて家に帰ったのは5時過ぎで、女将が鶏鍋の準備をして待っていてくれた。そんなに寒いとは感じなかったけれど、明日はもっと暖かいから、今日食べなければいけないと言われた。珍しく大きなサンマが一尾200円と安く手に入ったから、サンマの塩焼きを期待していたのですが、鶏鍋の後にうどんを入れてもうお腹は一杯なのでした。夜は焼酎もなくなったし、寒くならないうちに床に入ろうか。明日の晩はまた防犯パトロールがあるのです。



11月2日 水曜日 今日も再び朝から好く晴れて…


 午前5時半まだ夜明け前。夕べも10時にはもう瞼が重くなって、今がチャンスと床に入れば、今朝の5時前まで目覚めずに眠った。定休日で早寝早起きの習慣がつくのは実に喜ばしいことなのです。今日は夕刻から防犯パトロールがあるので、午後はゆっくりした方が好いかと、朝飯前のひと仕事で、蕎麦屋に出掛けようと考えた。冷蔵庫に鍋のまま入れておいた一番出汁に返しを加え、火にかけて蕎麦汁を作る。水で冷やしている間に天麩羅の具材を切り分ける。

 南瓜を切り分けたらレンジでチーンして、レンコンは皮を剥き、スライスして酢水で茹でる。玉葱は薄く切って水に浸け、三ツ葉を刻んで一緒に容器に入れる。あとは新しく昨日買った南瓜の種を取り、四つに切り分けてラップをかける。端の部分は形を整えて、いつか従姉妹煮にでもカレーにも使えるから、ジブロックに詰めて冷凍しておくのです。これで普段の午後の仕込みが完了。まだ時間があったから、冷めた蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めておきます。

 早朝の一時間半でほぼ一日分の仕込みが済んでしまうから、いつもはいかにだらだらと過ごしているかを思い知る。昨日のうちに筑前煮と出汁取りだけを済ませておいたのが正解なのでした。慌てることはないけれど、先へ先へと少しでも予定を早めておけば、時間に余裕が出来て次のひと仕事に取りかかれるというもの。亭主一人のやり繰りだから、これが可能なのでしょう。 家に戻れば、昨日の美味そうなサンマが焼かれていた。蒸し野菜も美味しかった。

 食事の後は居間の椅子に座って『ベルエポックをもう一度』という映画を最後まで観てしまう。デジタル化社会について行けない初老の主人公に共感を覚えたのです。映画のセットを使ったタイムトラベルサービスというのも面白かったし、3年ほど前に劇場公開された映画らしいが、それにしてはテレビで放映するのが早過ぎる。9時近くまでテレビの前に居て、書斎で横になったらすぐにウトウトしてしまうのでした。目覚めればもう10時を過ぎていた。

 蕎麦屋に出掛けても、厨房の仕事で残っているのは、キノコ汁の仕込みとお新香を漬ける仕事だけで、漬け物にはまだ時間が早すぎるのでした。あまり天気が好いので、こういう日のために、車に脚立と剪定ばさみを積んでおいたから、気になっていた駐車場の金木犀の剪定を始めたのです。蕎麦屋の常連の小母さんが、自転車で通りかかって挨拶をしてくれた。「自分でやってるんだあ」と言って通りすぎる。田んぼの様子でも見に行ったのか元気なのでした。

 40分ほど剪定を続けて、やっと形が整ってきた。90㍑のビニール袋も一杯になったので、家に帰って昼飯の用意。女将が肉と玉葱・ニンジンを刻んでおいてくれたから、亭主は中華鍋で炒めて卵を入れたらご飯を散らして、久し振りにカレー炒飯を作るのです。野菜スープはサラダの残りの野菜を入れたコンソメ味で、これがなかなか美味しいのでした。ひと休みしたら昨日買い忘れたレタスを買いに出て、ついでに焼酎と炭酸を買ってまた蕎麦屋に出掛ける。

 午前中に剪定した金木犀の木が、丸く綺麗な形になって見違えるようなのでした。ヤマボウシの枝も払わなければならないし、南側の菜園の草刈りもあるし、やることはまだまだ沢山ある。取りあえず次の仕事の段取りを確認して、家に帰って整形外科に出掛ける。尿酸値を下げる薬をもらうだけだから、すぐに終わってそのまま蕎麦屋に寄り、キノコ蕎麦の汁を仕込んで、小鉢を盛り付けておく。最後に糠床に茄子と胡瓜と蕪を漬け込んで家に戻るのでした。

 夜の防犯パトロールは暗くなった6時からだから、5時40分には蛍光オレンジのジャンパーに反射板のたすきを掛けて、帽子を被って集合場所に歩いて行く。右足の親指はもう痛くはないのだが、どうもやはり右足は地面をきちっと掴んでいる感触がない。左の足はかかとからつま先までしっかりと地面に触れるのに、右足はかかとからいきなりつま先が地面に触れるのです。リハビリが必要だと思って意識して歩くけれど、見た目には辛そうに映るらしい。


11月3日 木曜日 文化の日だというのを忘れていて …

 午前6時過ぎの日の出前。今朝も早起きで朝飯前のひと仕事に蕎麦屋へ出掛ければ、地表の水蒸気が冷気に触れて朝靄が立ち上る。朝日が昇る直前までに見られる光景です。夕べ漬けたお新香が気になって、カウンターの洗い物を片付けたら、まずは糠床から取り出して、切り分けたら小鉢に盛り付ける。味は薄めでちょうど好い感じなのでした。珈琲を入れて飲みながら、今日の段取りをじっくりと考える亭主。取りあえず、冷蔵庫の中を確認して家に戻る。

 今朝は蕎麦粉が届くからと、朝食を食べてひと眠りをせずに、朝ドラの終わる時間に家を出る。ご近所の蜜柑が色づいた向こうには銀杏の黄葉が見えるのでした。今朝も雲一つない青空で、陽が出たからか随分と暖かいのでした。バス通りを蕎麦屋に向かえば、宅配便のトラックがハザードを点けて店の前で止まったから、小走りで近づいて、「今行きますよ」と運転手に知らせるのでした。今日は新蕎麦が届く日だから、受け取らないと蕎麦か打てないのです。

 古い蕎麦粉はまだ少し残っていたけれど、今日は蕎麦饅頭も作る予定だったから、新しい新蕎麦の粉が届いてホッとするのでした。早速、蕎麦を打って、今日は打ち粉も沢山届いたから、42%の加水でたっぷりと使って、蕎麦切りまで終わらせる。やはり花粉の打ち粉は欠かせない。蕎麦がくっつかずに綺麗に切り終えて、満足なのでした。ところが、亭主は今日が祭日だと、もうすっかり忘れていたから、750g八人分だけを打って厨房に戻ったのです。

 蕎麦饅頭を仕込んで蒸かしているうちに、時間はどんどん押してくる。野菜サラダの具材を刻んでいるうちに、もう駐車場に車が入ってくる。大きなワゴン車が入ってまた一台と、続けてお客がいらっしゃるのです。二人、三人、四人と入ったところで、もう満席の看板を出す。蕎麦は八人分しかなかったけれど、小さなお子さんがいたので救われた。12時過ぎには蕎麦がもう売り切れなのでした。亭主が今日が休日だとすっかり忘れていたと言えば店内は大笑い。

 慌てて準備中の看板を出して、亭主は蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つ亭主。子連れの若いご主人がそれを見に来て「年越し蕎麦も自分で打つのですが、どうも短く切れてしまうんです」と言うから、「同じ事を言うお客がいたけれど、やはり年季が入らないと … 」と応えるのでした。「しっかりと捏ねないと繋がらない」と菊練りをする様子を見せたのです。今日は「新蕎麦が美味しかったです」と言って帰られるお客が多かった。蕎麦を打ち終えたところで … 。

 また駐車場には車が続けて入って来る。お婆様と一緒の三人連れのお客には、キノコつけ蕎麦を進めてみたら、三人とも注文されたから、前のお客に天せいろをお出しして、すぐに蕎麦を茹でてキノコ汁とともに配膳したのです。これが大当たりで「家庭ではこんなに沢山のキノコは食べられない」と、汁まで綺麗に飲んで喜ばれたのでした。1時前には追い打ちした蕎麦もすべて売り切れてしまいました。最近になく大勢のお客が入ったから後の始末が大変。

 お蕎麦売り切れの看板を出して、後からもまたお客が来たけれどお蕎麦がないとお断りしたのです。今日は盆や皿を洗う暇もなかったから、カウンターの上に下げた盆や皿を載せて、次々と亭主が洗っていくのを、女将が拭いて片付けていく。亭主は昼を食べる暇もなかったから、蒸かした蕎麦饅頭をかじって腹の足しにする。3時前にやっと片付けが終わって、女将と二人で家に戻るのでした。青空に鰯雲が出て、暖かな陽射しが心地よかった。

 今日は車検で車をディーラーに持って行かなくてはならなかったので、昼寝をする暇もなかった。約束の時間前に納車して、代車で蕎麦屋に出掛け、今度は海老や鴨肉が届くのを待つ。先月から新人に配達が代わって、やはり配達するのに時間がかかるらしい。待っている間に明日の天麩羅の具材を切り分けたり、カウンターの洗い物を片付け、蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めたりして、やっと荷物が届いて家に戻ったのは6時前なのでした。昼の早かった女将は、夕食を済ませていたから、手羽中を焼いて、里芋の杵担ぎで一献です。


11月4日 金曜日 午前中は晴れたけれど風が冷たく … 

 夕べも10時に床に入って今朝は6時に目覚める。若い頃は仕事の都合もあって、遅く寝ても早く起きるという生活だったけれど、最近は安定して7時間は眠っているから、身体の調子が好いのだろうか。冷えてくる明け方にトイレに行くことはあっても、またすぐに眠ってしまうのです。今朝も6時半近くに蕎麦屋に出掛け、夕べ漬けたお新香を糠床から取り出して、切り分けたら小鉢に盛り付けておく。洗濯物を干して畳んで家に戻るのでした。

 女将が台所に立って朝食の支度をしている間に、亭主はテレビで洋画を観ている。ジャン・レノとナタリー・ポートマンの出演する何度も観た『レオン』という映画だけれど、朝食を終えてもまた続きを観るのでした。8時半には映画も終わり、髭を剃って着替えたら蕎麦屋に出掛ける。今日は蕎麦打ちから始めれば好かったから気が楽なのです。新蕎麦の粉は打ちやすく、仕上がりも好いので楽しい。ただ、42%の加水ではちょっとまだ硬い気がするのです。

 生地を伸す時に硬いと、どうしても四隅が綺麗に仕上がらない。明日は43%にして少し柔らかめに仕上げて見ようか。巻き棒に巻いて丁寧に伸した方が好いのかも知れない。そのために伸し棒は60cmと75cmも揃えてあるのだから、これを使わない手はないのです。それでも今朝は八人分の蕎麦の束を生舟に並べて、無事に完了です。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻んで、三皿を盛り付けておく。早めにお客が歩いていらっして、ヘルシーランチセットをご注文。

 続けて男性の一人客が車でご来店で、カウンターに座って天せいろを頼まれる。三つ作った野菜サラダが二皿出ただけでも亭主は嬉しいのです。注文した物静かなご夫婦は、新蕎麦が美味しいと喜んで下さった。「美味しい蕎麦屋がなくて捜していたのよ」と、どこまでお世辞だか分からないけれど、もう一度いらっしゃればその真意が分かる。12時前にいらっしたお客が帰ると、また静けさが戻って来るのです。隣町の常連さんが来たのは1時前なのでした。

 野菜サラダがもう一つ残っていたから、これが出るのかと思ったら、辛味大根とキノコつけ蕎麦のご注文なのでした。5回目のコロナのワクチンを接種したら、熱が出て何も食べずに一日寝込んだのだとか。三ヶ月という短くなった接種間隔が、副反応の原因なのではないかと心配される。キノコ汁を汁まで綺麗に飲み干して、頗る満足だと言って帰られた。亭主はかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べる。やはり新蕎麦はコシがあってとても美味しい。

 休み休み後片付けをして、3時前には家に帰る亭主なのでした。今日は5時に車検にだした車が戻るというので、代車に乗ってまずは蕎麦粉の支払いを済ませに郵便局に行く。女将が帰って来たら、今度はキノコ汁に食材のキノコ類と鶏肉を買いに隣町のスーパーに出掛ける。ついでに蜜柑とトイレットペーパーを頼まれて、大荷物になるのでした。明日の朝はキノコ汁の仕込みから始めなくては。蕎麦饅頭もまた作らないと足りなくなりそうなのです。

 今日は写真が少なかったから、女将の撮したプラタナスの落葉の一枚を借りることにしました。少しずつ撮り方が進歩しているのが目に見えるので嬉しい。彼女がスマホを持ち歩く習慣が出来て、ホッとする亭主なのです。明日は寒くなると言うけれど、どれだけお客が来るやら。午前中に発注してあったおしぼり600個が届く予定です。定休日が明けてまだ二日しか経っていないのに、随分と日にちが過ぎたような気がするのは、日に何回も蕎麦屋に行くからか。