2022年10月上旬

10月6日 木曜日 朝から冷たい雨の降る寒い一日 …

 2日間の定休日に、ゆっくり朝寝をする習慣が付いてしまったらしく、今朝も6時半までぐっすりと眠ってしまった。朝飯前のひと仕事に出掛けないと、どうしても後の仕事が詰まってくるから、今朝は朝食後に朝ドラの終わるのを待って、蕎麦屋に出掛けました。朝から雨かが降って、今日は一日中冷たい雨が降るという予報だったから、お客も来ないだろうと車に乗って出掛けたのです。11月下旬の寒さと言うから、蕎麦を食べるには少し寒すぎる。

 蕎麦屋に着いたら、まずは昨日の洗い物を片付けて、小鉢を盛り付けたら、珈琲を一杯飲んで目を覚まします。店内の温度は19℃と本当に寒いというくらいなのでした。湿度も54%で、まさに冬の初めの寒さと言っても好い。蕎麦打ち室に入ってまず考えたことは、昨日と同じ加水率では生地が硬くなりすぎるだろうということ。かと言って、何%ならちょうど好いという答えがあるわけではないので、取りあえず42%で蕎麦粉を捏ね始めたのです。

 季節の変わり目は、ちょうど好いという加水率が微妙に変化するから、ほんの少しずつしか増やせない。それでも長年の経験で、ちょうど好い柔らかさで生地は仕上がる。わずか750gしかない蕎麦打つのに、二度に分けて加水するのももどかしいから、最近は一気に計量した水を粉に混ぜているのです。練り上げて蕎麦玉にしたら、ビニール袋に入れて寝かせておきます。その間に、厨房に戻って、今日は大根と生姜をおろし、薬味の葱を刻んでおきました。

 9時半になったところで再び蕎麦打ち室に入り、地伸し、丸出しから四つ出しにかかり、本伸しを終えたら八つに畳んで包丁切り。これで朝飯前のひと仕事に来なかった分の時間は取り戻せた。10時前に蕎麦切りを終えて、厨房に戻ってひと休み。外はまた冷たい雨がシトシトと降り続いている。この寒さではお客は来ないだろうと思えたから、今日は野菜サラダも二皿だけ盛り付けておきました。暖かい鴨南蛮やカレーうどんにもサラダを付けるからです。

 暖簾を出しても、こんな寒さの中を、お客が来るはずもなかったけれど、12時半前に雨の中を傘も差さずに例の少年がやって来た。「いつもので好いかい?」と亭主が言えば、こっくりと頷く。海老を一本天麩羅にして揚げて出してやれば、大事そうに食べているのでした。この寒さの中を七分ズボンで来たらしく、「カルピスは冷たいので好いかい?」と聞けばまたコックリと頷くのでした。亭主が話しかければにっこりと応えるけれど、他にあまり話はない。

 少年が帰って油の冷めないうちにかき揚げを揚げ、1時前にぶっかけで賄い蕎麦を食べておく。客が来なければ大釜の湯も天麩羅油も汚れないから、昼は抜きにしようと思っていたけれど、彼のお蔭で昼飯にありつけたのです。じきに雨の中を女将が「寒いわねぇ」と言ってやってきた。午前中に風呂釜の交換工事があったのだけれど、無事に済んでほっとしたらしい。「夕食は何にしましょうか」と言うのでかき揚げを揚げ、葱を持たせて鍋焼きうどんに決める。

 家に戻れば居間の室温はやはり19℃。急に冷えてきたから、エアコンを入れなければいられない寒さなのです。書斎でひと眠りしたら、荷物を届けるはずの業者から、電話が入って到着が5時過ぎになるというので、5時前に蕎麦屋に出掛けて、珈琲を入れる準備をしておく。新米の若者は店を回るのにも時間がかかるらしく、やっと来たのが5時半近くなのでした。西の空は少し明るくなっていたけれど、雨は止みそうにない。夜は鍋焼きうどんで温まった。



10月7日 金曜日 昨日よりも強い雨と寒かった一日 …


 今朝もゆっくりと眠った朝なのでした。寒さが昨日よりも増しているから、暖かくして眠ったのが好かったらしい。昨日はお客が少なかったから、取り立てて片付けるものも用意するものもなく、大根をおろして蕎麦を打てば、後は野菜サラダを二皿盛り付けて終わりなのです。雨は昨日よりも強く降っていたから、今日もお客は来ないだろうと、車を出して蕎麦屋で出掛けるのでした。店の中は、なんと16℃と最近にしては一番寒いのです。

 エアコンが壊れているから、奥の座敷のエアコンを二つともフル回転にして、店との間にある扉を開け放って、なんとか暖を取るのでした。蕎麦は昨日の残りが随分あったけれど、500g五食分だけ打ち足しておくのです。今日もお客が来なければ、明日で調節するしかない。明日は雨も上がると言う土曜日だから、朝に二回打つのは避けたかったのです。蕎麦打ち室も寒かったけれど、湿度が70%近くあったから、今朝は41%の加水率で何とか生地を捏ねました。

 冷たい雨は昨日の様に霧雨になることはなく、かなりしっかりと降っていた。風は北西から吹いているようで、秋桜の咲く隣の畑側から窓に雨しぶきが当たる。その窓から見えたのは雀たちの群れ。何羽も蕎麦屋の柵に止まって雨に打たれている。しばらくすると皆で飛び立って、向かいの畑の中に消えていく。ひまわりを刈った後だから、種がこぼれているのかも知れない。見上げれば、電線には何十羽も鈴なりに雀が止まっているではありませんか。

 暖簾を出してもこの寒さでは、蕎麦を食べに来る人がいるはずもなく、1時近くまで待ってから、油を温めて天麩羅とかき揚げを揚げる。少し粉っぽいまま揚げた方がパリッとするから、200℃の設定にして蕎麦がゆで終わるまで揚げた。実に美味しい蕎麦なのでした。食後のひと休みをしていたら、1時半を過ぎてから駐車場に車かが入ってきたのです。若い真面目そうな青年がぶっかけ蕎麦の温かい汁をご注文。先ほど練習をしたばかりだったから楽勝でした。

 ご両親は四国の方だからうどんだけれど、彼は茨城出身だとかで蕎麦が大好物なのだとか。今度来た時は、冷たいせいろ蕎麦を頼みますと言って帰って行った。後片付けをしていたら、エアコンの修理の人たちが来て、何処が悪いのかとチェックをしてくれた。ピッと鳴ったところでリモコンに出た記号を見て「基盤が壊れている」と言うから大したものです。亭主にはこのピッが聞こえない。日曜日の午後には基盤を持って出直してくると言うから助かった。

 家に帰ってひと休みしたら、傘を差していてもずぶ濡れで帰った女将を迎える。夜の女将のパトロールもなさそうなのでひと安心。4時からは今度はディラーに出掛けて、車検の見積もりをしてもらわなければなりませんでした。まったく今週は忙しい。蕎麦屋と一緒で相手があることだから、自分のペースでは行かないのです。車のチェックが終わったのに約一時間待たされて、やっと見積書が出来る。向かいの有名店でトンカツを買って夜は女将とカツライス。



10月8日 土曜日 やっと雨の止んだ一日 …


 久し振りに雨が上がって、蕎麦屋の隣のコスモス畑も元気に花を咲かせていました。蕎麦屋の屋根には小雀たちが沢山集まって、羽を休めているのです。雨の降り続けた昨日までは、いったい何処で暮らしていたのか。小さな生き物たちの心配をするよりも、お客の来ない蕎麦屋は、いったいどうやって営業を続けていけば好いのかと、心配すべきなのでしょうが、亭主はいつもの通りのんびりと、辺りの写真を撮っている。これが隠居仕事というものなのか。

 西の空には青空も覗いて、鯖雲が広がっていました。まだ気温は低いけれど、昨日までの雨の日よりはずっと好い。三連休の初日だから、天気さえ持てば少しはお客も来るのではないかと期待する。朝の厨房は17℃と昨日よりは少し暖かかったけれど、奥の座敷のエアコンをフル回転させて、店の方も20℃近くまで室温を上げておくのでした。蕎麦打ち室に入っても、思ったよりも湿度はあるから、今朝は41%強の加水で蕎麦粉を捏ね始める。

 昨日までに残った蕎麦は、生舟の中に沢山あるのでしたが、週末はやはり15食は用意しておかなければ心配なのです。去年の今日は19人のお客があったと女将が言う。夜の営業もしていたから、夜の営業を休んでいる今年とは随分と違うだろうけれども、今はちょっと状況が違うのです。ちょうど好い水加減で、伸して畳んで包丁切り。向かいの畑では、親父様達が朝の仕事に精を出しているのでした。馬酔木の木の下で小雀たちが遊んでいるのが見える。

 さすがに週末だからと、今日は野菜サラダを三皿用意しました。この寒い日に、野菜サラダを単品で頼む客はいないと思うけれど、カレーうどんや鴨南蛮蕎麦にはサラダを付けるから、念のためにと作っておくのです。昨日までに毎日残ったサラダは、家で今朝やっと蒸し野菜にして食べ終わっただけに、今日売れ残ったらどうしようという気持ちの方が強かった。三皿残ったらお好み焼きにするしかないかと、女将に言えば嫌いでないから笑っていたのでした。

 暖簾を出してお客を待てば、昼過ぎにご家族連れのリピーターさんがいらっして、せいろ蕎麦二つにぶっかけ蕎麦の温かい汁、天せいろのご注文でした。お子様達のせいろ蕎麦を先に出して、ぶっかけ蕎麦と天せいろの天麩羅を揚げていく。その間に、家のご近所の常連さんがやって来てカウンターに座るのです。いつも座るテーブル席も空いているのに、カウンターに座るときは少しは話をしたい時。気の好い夫婦はゆっくりと話し相手になっていました。

 1時になってお客も来そうになかったから、亭主はかき揚げを揚げてぶっかけで賄い蕎麦を食べてしまう。ボールに残った衣を硬めに溶いて揚げたから、本当にカラッと仕上がって美味しかったのです。昨日の蕎麦だったけれどコシがあって歯ごたえも好いのです。女将と片付け物をし始めたら、ラストオーダーの時間にお客が入って、暖かいぶっかけ蕎麦とハラミとカシラの串焼きを注文される。「ここら辺は食べる所がないですね」と美味しそうに蕎麦を啜る。

 閉店時刻をだいぶ過ぎてお客が帰ったら、亭主は洗い物を済ませて大釜を洗い、女将は洗い物を片付けてまな板を消毒する。家に戻って梨を剥いてもらったら、亭主は今日のデータをパソコンに入力して、横になってひと眠りなのです。朝も食後のひと眠りをしなかったからかぐっすりと眠り込んで、5時を過ぎた頃に「お腹が空いたわ」と女将に起こされ、台所に入ってお好み焼きを作る。今日残った三皿の野菜サラダが全部なくなったのでした。

10月9日 日曜日 日中は陽も差して昨日よりも暖かい一日 …

 今日は朝から少し青空が覗いていました。日中も陽が差して、晴れるのかと思ったけれど、やはり今日は曇り空一色。でも、そのせいか気温は上がって、店の中の温度は朝で18℃もあったのです。厚着をしていた昨日までとは違って、薄手の長袖シャツにベストを羽織って蕎麦屋に出掛けた亭主。腕まくりをして蕎麦打ち室に入るのでした。生舟の中の蕎麦をチェックしたら、8食分しかなかったので、今朝も500g5食分を打ち足しておきます。

 このところ連日500gを打っているのですが、練習と思って気楽に伸している。それが好いのか悪いのか、短時間で打てるから楽なのですが、どうも厚味にムラがあるような気がするのです。少し加水が多すぎるのかも知れない。力を入れすぎるとすぐに生地が広がってしまうから、加減して伸し棒を転がすから、その分、厚味が均一にならないのだろうか。切りむらがあるわけでもないけれど、太さが揃わない時があるのです。明日はもう一度試して見たい。

 野菜サラダは三皿盛り付けておいたのですが、最初のご夫婦がヘルシーランチセットを頼まれたので、すぐに二皿なくなってしまいました。奥様がいつも亭主の書くブログを読んでくださっているとかで、一人でも来たくなるのだと言う。お蕎麦が美味しかったとおっしゃって帰って行かれた。いつも一人でいらっしゃる常連さんが今日はお友だちを連れていらっしゃる。二人とも辛味大根を頼まれたけれど、一人分しかなかったので半分ずつにしてお出しした。

 気温は昨日よりも高かったけれど、22℃止まりだったから、やはり蕎麦を食べるには涼しすぎるのか、日曜日にしてはお客が少なかった。天麩羅が出ないのも珍しい。かき揚げを揚げてぶっかけ蕎麦でも食べたかったけれど、自分だけのために油のパットを洗うのも憚られたので昼は抜き。蕎麦も明日のことを考えると微妙な数が残るのでした。片付けを終えて女将が帰った後に、点検をして亭主が後を追う。道の途中でエアコンの修理に来る業者から電話が入る。

 もう近くまで来ているというので、家に帰って車を出してまた蕎麦屋に逆戻り。外に置いてある室外機の基盤が壊れたらしく、新しい基盤を取り付けて30分ほどで運転できるようになった。修理の時間を利用して、朝のうちに出汁取りの準備をしておいたから、出汁を取って蕎麦汁を仕込む。さすがに明日の分の蕎麦汁がもうなかったのです。帰りがけに酒と煙草を買いにコンビニと酒屋に寄って、パンを買ってやっと遅い昼飯。夜はカシラの串焼きで一献です。



10月10日 月曜日 三連休の最終日だったけれど …



 朝は雨が降っていたから、玄関を出てみればもう上がっていた。伸びすぎた団扇サボテンの葉を切ってやろうと思ったけれど、女将がまだ花が咲きそうだから可哀想だというので、新聞を取って家に入る。この天気では外の物干しには洗濯は干せないから、まだこのままでもいいのかも知れない。雨なら車で蕎麦屋に出掛けてしまおうかと思ったが、考えたら今日は三連休の最終日で、暖かくなると言うから、もしかするとお客が来るかも知れない。

 最近は、お客が少ないから朝飯前のひと仕事にも出掛けずに、その分、亭主は食後のひと眠りもしなくなった。洗面と着替えを済ませたら、お茶をもらって朝ドラの時間が終わったら、蕎麦屋に向かうのです。すっかり道路も乾いて、みずき通りのハナミズキは紅葉を通りすぎてもう枯れ始めている。午後からは晴れて暑くなるという予報だったけれど、天気が不安定だから予報もあまり当てにならない。朝は薄い長袖のシャツにジャンパーを羽織っていた。

 8時半前に家を出ても、今日も500gしか蕎麦を打たないので、朝の蕎麦屋では、幟を立てて看板を出したら、ゆっくりと珈琲を飲んで、昨日のブログを読み返す。朝のうちはまだ肌寒いから、直ったばかりのエアコンの暖房を入れておく。そして、この後の段取りを考えたら、重い腰を上げて蕎麦打ち室に入るのです。室温は22℃、湿度は65%。暖かくなると、加水率をまた変えなくてはならない。今朝は41%の加水で水回しを始めるのでした。

 昨日の反省から、伸しはしっかりと厚味を揃え、伸し棒も60cmの伸し棒を使って、丁寧に伸していく。ところが、やはり生地が小さいだけに、つい力が入りすぎてどうしても伸し幅が55cmほどになってしまう。50cmが適正なのだけれど、5cm幅が広いと生地が薄くなるから、包丁切りの際に、切りべら26本では120g程にしかならないのです。切りべらを28本にしてなんとか135g以上の束にしました。昨日よりは満足な仕上がりで生舟の中に並べるのです。

 向かいの畑の親父様は、朝から紅葉の終わったコキアを抜く作業をしているらしい。毎日、蕎麦を打ちながら、朝から自然相手に仕事に出るから偉いといつも見ている亭主。今日も野菜サラダは三皿盛り付け、暖かくなるというのを期待していました。ところが、雨が降り出したり、陽が差したりと目まぐるしい空模様で、結局は曇り空。暖簾を出して1時間経ってもお客は来なくて、女将と暇をもてあましていたのです。やっとお客が来たのは1時前なのでした。

 4700ccの国産の高級車で乗り付けた隣町の常連さんは、いつもと同じご注文でしたが、辛味大根だけが品切れなのでした。女将が野菜サラダを出している間に、亭主は季節の野菜と稚鮎、キスの天麩羅を揚げてせいろ蕎麦を出す。彼の今日の話題は葉山の友だちに誘われてのカワハギ釣りの話。亭主も毎週のように釣りに出掛けた昔を思い出して懐かしい。今は昔の世界なのは、彼も同じらしいけれど、亭主よりも若いから記憶がはっきりしているのでしょう。

 明日は定休日だから片付けが終わったら、今週の残り物を女将と手分けして、家に持ち帰る準備をする。天麩羅も少しだけ揚げて、沢山残った蕎麦を、お袋様と家と定休日明けの賄い蕎麦の分とに分けて持ち帰るのでした。青空も覗いて暖かくなったから、柿を剥いてくれた女将が「ムクゲの剪定を始めますか」と言うので、亭主は半袖に雪駄をつっかけて、脚立と剪定ばさみをもって通りに出る。一番大きな木を刈り終えたところで30分。後は明日の朝に回す。