2022年9月中旬

9月12日 月曜日 蕎麦日和なのにお客がなかった …

 今日は思ったほど雲が多くないので、青空が見えて爽やかな朝でした。それでも明日が定休日なので、蕎麦は打たないと決めていたから、昨日の残りの蕎麦だけで売りきれにするつもり。蕎麦屋に着いて、昨日の蕎麦の状態と冷蔵庫の小鉢や蕎麦汁の数を確認して、まだ早すぎるからと南側のミニ菜園に出て草取りを始める亭主。涼しいから7mほど進んで、ちょうど袋が一杯になったところで終わりにするのでした。あと何回やれば南側の菜園を終えられるか。

 紫蘇の葉の陰に居場所のなくなったバッタが逃げ込んでいた。お隣との境のブロック塀にはカナヘビが避難している。草が生えている間に、いろいろな生き物が住み家にしているから、草刈りを怠けているのも、まんざら悪いことではないという気になる。明日は業者が店のゴミを回収に来る日だから、どうしても今朝のうちに少し終わらせておきたかったのです。蕎麦を打たないと、朝の時間に随分と余裕があるから、好いような悪いような複雑な気分です。

 子どもの頃に家でよく見かけたカナヘビは、近ごろではすっかり見かけなくなった気がするのだけれど、この歳になってやっと子どもの頃のように、小さな生き物を見つける余裕が出来たと言うことなのかも知れない。蕎麦屋が忙しいときにはそんな暇もないだろうから、コロナ禍で草刈りをする暇が出来たのがその一因なのでしょう。ゴミ袋を西側のゴミ置き場まで運んで、手洗いを済ませて厨房に戻るのでした。まだ9時過ぎだから時間がありすぎる。

 まずは珈琲を入れてひと休み。外は晴れているから天気予報よりも気温は上がるかも知れない。用意した蕎麦は7食限りだから、もしかすると足りなくて大変になるのかも。しかし、天気が好くても涼しいから、そんなに甘くはないのかも。データでは最近の月曜日は、1~8名のお客だから、多分大丈夫だと自分に言い聞かせる。野菜サラダの具材を刻むのはまだ早すぎる。あまり早すぎるとキャベツやニンジンの千切りが乾燥してしまうのです。

 このところ、野菜サラダは毎日のように残っているから、そろそろ家で食べるのにも飽きてきた。野菜も随分と値段が上がっているので、贅沢な話だけれど、食べ方の工夫が足りないのかと、タブレットでいろいろ検索してみる。ついでに秋に植える野菜を見れば、リーフレタスやホウレン草などの葉物野菜や、来春に収穫のサヤエンドウ。今年はこのサヤエンドウを植えたものだから、他の夏野菜が植えられなかったので要注意。ホウレン草は店では使わない。

 やっと10時を過ぎたので、大釜に火を入れて、野菜サラダの具材を刻み始める。材料は今日までに使い切れるようにと仕入れているので、そんなに出るはずもないけれど、やはり三皿分盛り付けておく。天麩羅の具材を調理台に並べ、油を天麩羅鍋に注いで、天つゆの鍋をレンジに載せたら、後は店のテーブルをアルコール消毒液で拭いていく。いつもなら10分前には暖簾を出すのだけれど、用意した蕎麦が少ないので、今日はちょっと躊躇われるのでした。

 あれこれと心配を重ねて始まってみれば、天気が好いのにお客は来ない。天気予報も曇りから晴れに変わって蕎麦日和になったけれど、一向にお客の来る気配はないのでした。そもそも蕎麦屋の前のバス通りを通る車の数も少ないし、いつもならこんな陽気で散歩する人影も見えないのです。土日で出掛けた人が多いのか、来週から続く連休を前に、出掛けるのを控えているのか。1時を過ぎたのでかき揚げを揚げて、ぶっかけで賄い蕎麦を食べてしまう。

 蕎麦を食べ始めたら、スポーツクラブの予約が取れなかった女将が現れて、「今日はゼロだよ」と亭主が言えば、「ええっ、こんなに天気が好いのに」と驚いていた。家に持ち帰るために、残った天麩羅の具材を揚げる。小鉢も蕎麦豆腐もタッパに入れて持ち帰る。残った蕎麦と蕎麦汁も、野菜サラダも、冷蔵庫の野菜籠のキャベツや大根なども、全部袋に詰めて、二人とも両手に荷物をぶら下げて、家に帰るのでした。夜は早速、残飯整理が始まるのです。

9月13日 火曜日 涼しいのに動くと汗が出る陽気 …

 定休日の朝はゆっりとしていたいと思うのですが、朝食を終えたら女将が「無花果の枝を玄関前に運んだから切ってください」と、朝からひと仕事を仰せつかる。長い枝を剪定用のノコギリで切らないと、家庭のゴミ袋には入らないのです。わけもないことだからすぐに玄関先に出て、どんどん短く切っていくのですが、その間にもう女将がゴミ袋に詰めていく。朝から身体を動かす彼女との差がこんな所にも現れたという感じ。亭主はもっとゆっくりのペース。

 雨上がりの朝なのか、道路は濡れていました。お袋様との仕入れの前に、蕎麦屋に出掛けてひと仕事。郵便受けから新聞を取り出して、今朝の市内のコロナ感染者数を確認する。さすがに100人は切ったけれど、まだまだ多いのが気にかかるのです。いつになったらプールに出掛けられるのだろうかと、先が見えないのが辛い。蕎麦屋へ来店するお客も、きっとそうした思いを抱いているのだろうと思うと、なかなか来客数は伸びそうにない。

 農産物直売所で、近所の梨園で出している豊水が甘くて美味しかったから、今日も買って帰る。ナスやオクラやニンジンももらって隣町のスーパーに出掛けるのです。モノレールの女子大駅の前にある研修施設の構内では、メープルの黄葉がとても綺麗なのでした。隣町のスーパーでは、野菜の値段が軒並み上がっていたから驚きです。大根もパプリカもブロッコリーも200円もするから大変です。それでも必要な物は揃えなければならないから買って帰る。

 来週は小鉢の種類を変えて、冷凍室に凍らせてある南瓜と小豆の煮たのを使ってしまおうと、冬瓜のそぼろ煮を一週遅れにする予定にした。週末にかけての連休が続くから、どれだけ出るかは分からないけれど、なくなれば、切り干し大根の材料はあるし、冬瓜を使っても好いし、置いておける具材で対応できるから安心なのです。買って来た野菜を調理台に並べて、先週のように買い忘れがないかをチェックしたら、冷蔵庫に順次収納していくのです。

 36cmの大鍋に30cmの銅の天麩羅鍋を入れて、今日も重曹で煮てておきます。その間に、前のレンジでは南瓜を出し汁で煮て、砂糖と出汁醤油で味つけをする。午後に出汁を取る準備も済ませ、11時前には家に戻るのでした。昨日残った蕎麦を消化するために、残った具材を揚げて帰った天麩羅をグリルで焼いて天せいろ。蕎麦豆腐も揚げ浸しもすべて蕎麦屋の残り物ですが、文句一つも言わずに食べてくれる女将に感謝をしなければなりません。

 視点を変えれば、かなり贅沢な昼飯なのです。これが毎週のように続くと、蕎麦屋の営業の未来を思って気が滅入るけれど、いつもこういう定休日ばかりではないから救われる。昨日の午後は、亭主が焼売を仕込んで違う調理が出来たし、冷凍室には餃子と焼売とがストック出来て女将も喜ぶのです。食べる物を作るのが好きというのが亭主の道楽なのかも知れない。いつも同じの蕎麦屋のメニューだけでは飽き足りないけれど、それを解決する術はあるのか。

 午後は昼寝もせずに書斎でパソコンに向かっていたけれど、女将のスポーツクラブの予約の時間を気にしながら、ついウトウトとしてしまったのです。予約開始時間の5分過ぎに目が覚めて、彼女のスマホとを開けば、残り一つがいつもの席で、無事にゲットする。稽古場で寛ぐ女将に話せば、いつも取っている人が誰だか分かるから、きっと他の人が遠慮してくれたのだとか。ホッとした亭主は、遅い午後に蕎麦屋に出掛け、午後の仕込みをするのでした。

 36cmの大釜には30cmの銅の天麩羅鍋を入れ、重曹を加えて沸騰させる。先週、やはり重曹で煮たら、天麩羅鍋の半分くらいが、皮が剥けるように綺麗に焦げが落ちて、銅本来の色合いが戻ったのに気をよくしたのです。反対側のいつものレンジでは、朝のうちに出汁取りの準備をしておいた鍋で5㍑の出汁を取る。どちらも時間のかかる作業だから、その間に先日購入したポリッシャーで床を磨くことを考えた。完璧とは言えないがなかなか綺麗になるのです。

 5時前に家に戻れば、女将はテレビで大相撲を見ながら、晩の食事の材料を揃えておいてくれた。蕎麦屋で沢山残った野菜サラダを消化するために、今夕もお好み焼きを作ると亭主が言っておいたのです。このところお好み焼きが大きくなりすぎて、食傷気味だったから、今日は原点に戻って小麦粉をざっくりと水と卵で溶いたら、塩で味つけをして、フライパンの真ん中で小さく焼いていくようにしたのです。生地が焼けるのを待って刻んだサラダの具材と肉を載せて、フライ返しでひっくり返す。なかなかの仕上がりでした。

9月14日 水曜日 日中は真夏が戻ったと思った …

 今朝も6時前には蕎麦屋へ出掛け、明日からの営業の仕込みを開始する亭主。デザートには粒餡の水羊羹を作り、豊缶に入れて固まるまでに、他の仕事をこなしていくのでした。7時前に家に戻れば女将が台所に立って、朝食の支度をしてくれている。今朝は茄子焼きと三ツ葉の卵とじで、タンパク質は卵だけ。肉も魚もあるのだけれど、亭主と女将の感覚ではこれでちょうど好い。貧しかった学生時代には、よく茄子焼きだけで夕食を済ませたものです。

 朝食後はひと眠りをせずにゆっくりと寛いで、9時前に家を出て西の町のホームセンターに向かうのでした。古い団地を抜けたところに目指す店はある。ラップやペーパータオル、アルコール除菌液などの備品を買いそろえ、雪平鍋の取っ手を捜したけれど、今ではもう置いていないらしい。仕方がないので雪平鍋そのものを一つ買った。ネットで頼んでも送料がかかるので、結局は同じ値段になるのです。Do It Yourself も最近では当てにならない。

 折角、先日餃子を作ったのだからと、隣のスーパーでシマダヤの生ラーメンを買って、シナチクやチャーシューまで買っておく。夜に食べるのは好くないから、今日は夕飯をラーメン・餃子をしようと考えたのです。どうせ女将は食べないだろうから、たまには二人別の食事でも好いだろう。生ものを買ったので、早かったけれどそのまま家に戻れば、女将も外出から帰ったばかりで、「暑くて遠くまで行けなかった」と言うのです。車外温度は31℃なのでした。

 昼の食材もすべて蕎麦屋の残り物でしたが、蕎麦豆腐もお新香も揚げ浸しもとろろ芋も、とても美味しく頂きました。残った小鉢があればの話だけれど、これをセットで出したらどうなのだろうか?天麩羅は要らないというお客には、案外、喜ばれるのではないだろうか。午後は例によって書斎に入ってひと眠り。女将がスポーツクラブに出掛けている間に、亭主は蕎麦屋に行って午後の仕込みをするのです。午前中にゆっくりした分、仕事は沢山あるのでした。

 時間のかかる小豆を鍋に入れて煮始めたら、隣の火口で蕎麦豆腐を造り、レンコンを酢水で煮て、揚げ浸しの出し汁を作り、後ろのシンクで冷やしたら、具材を少なめにして、中華鍋で炒めていく。夏野菜もそろそろ終わるけれど、外は真夏の陽射しがまた戻ったようで、カラフルな色合いが今日の陽気にあうのでした。隣の小豆は柔らかくなるまでに小一時間はかかる。その間に使った鍋を洗っては洗い籠に伏せ、砂糖を三回に分けて入れるタイミングを待つ。

 だいぶ疲れて来たところで冷たいお茶を飲んで休憩をしたら、今度は天麩羅の具材を切り分けるのです。かき揚げの玉葱と三ツ葉とを刻み終えたら、全部にラップをかけて冷蔵庫に入れる。最後は、冷蔵庫から糠床を出して明日の分のお新香を漬けておく。そろそろ5時になるから帰ろうと思うのですが、しばらく研いでいなかった包丁が気になって、やはり包丁研ぎを始める亭主。切れ味が落ちると、明日の仕込みに影響するのです。火元の点検をして店を出る。

 家に戻れば女将が食堂で大相撲の中継を見ていた。観客の中にいつも同じ席に座る若い女性がいるから、どんな人なのだろうねと二人で想像する。亭主はコンビニで買ってきたハッシュドポテトとポテトサラダを摘みながら焼酎を飲む。「冷凍室に焼売も作ってあるよ」と女将に言うけれど、彼女はひじきの煮物と納豆で夕飯を食べ始めるのでした。昼間から計画していたラーメンと餃子は、風呂上がりに作って食べる。気分は満足だけれど腹が一杯でした。


9月15日 木曜日 だいぶ涼しくなってきたけれど …


 午前6時の空はどんよりと曇り空。だいぶ涼しくなったから、夕べもぐっすりと眠れたのです。漬けたお新香が気になって、車で蕎麦屋に乗り付ければ、ちょうど好い味に漬いていました。ついでにカボチャの従姉妹煮と揚げ浸しも盛り付けて、今日と明日ぐらいの分量を冷蔵庫に入れておきます。お新香もなくなったらまた夕方に店に来て着ければ好いのです。出来るだけ新鮮なものを、お客に提供したいと思うのが亭主の考え。洗濯物を干したら家に帰る。

 居間の椅子に座って一服したら、もう7時を過ぎていたけれど、それもそのはずで、朝食はやけにボリュームがある品揃えなのでした。大きな鰺の開きは女将と半分ずつだけれど、茄子焼きも豚汁もかなり量があるのです。先日、向かいの畑の親父様から頂いた長茄子が新鮮だからか、青森県産の高価な大蒜が美味しいのか、醤油を付けてご飯に載せると甘みを感じるから不思議。もう少し若ければご飯のお替わりをするところでした。

 今朝は7時間もぐっすりと眠ったから、朝飯後のひと眠りもせずに、髭を剃って着替えをしたら、朝ドラの終わる時間に家を出る。昨日から、雪駄を止めて運動靴を履いてみているのですが、足の親指も軟骨が固まったらしく、やっとスタスタと歩けるようになりました。玄関前のムクゲも最後の力を振り絞って花を咲かせている。季節の推移に敏感なのは、人間だけではないので、夏の花もそろそろ終わりを迎えるのです。風は涼しい秋の風。

 蕎麦屋に着いたら、昨日使って洗っておいた鍋類を片付け、まずはガスレンジの上を綺麗に掃除しておく。1週間もすればまた汚れてしまうのですが、何事も初めが肝心と蕎麦打ち前に済ませたのです。店の窓を全開にすれば涼しい外気が気持ちが好い。蕎麦打ち室も25℃、湿度は58%なのです。先週の木曜日は、蕎麦が足りなくて困ったけれど、滅多にないことなので、今日も750g八人分を計量して蕎麦粉を捏ね始める。41.5%の加水でちょうど好かった。

 捏ね初めは少し硬いかなと思うのだけれど、捏ねていくうちに水が馴染んでしっとりとした感触に変わってくる。向かいの畑では、親父様がもう作業をしているのでした。菊練りまで終えて、蕎麦玉を作ったところで、ビニール袋に入れて寝かせておくのです。厨房に戻って大根と生姜と細葱を冷蔵庫から取り出し、おろし金でおろしたら、葱を刻んで水に浸す。ここで休んでしまうと、時間ばかり過ぎてしまうので、疲れていないうちに一気に終わらせる。

 やはり、よく眠れた朝は仕事も順調にこなせるのでした。再び、蕎麦打ち室に戻って、20分ほど寝かせておいた蕎麦玉を伸していくのです。両方の掌で押して伸ばす地伸しで、40cmほどの円形にしたら、今度は伸し棒を使って丸出しに入る。生地の硬さがちょうど好いと、この作業もすんなりとこなすことが出来るのです。生地を均一の厚味の正円にしたところで、四つ出しの作業に入る。今朝は、最初の加水が上手くいったので、順調に本伸しまで辿り着く。

 調子よく打てた生地は畳んで包丁切りをしても、綺麗に切り揃って気持ちが好いのです。生舟に八束の蕎麦を並べて蕎麦打ちを終える。時間は10時前だったから、前半の踏ん張りが効いたかな。朝の8時半から店で仕事をしているから、90分が一つの区切り。ひと休みして、野菜サラダの具材を刻み始める。昨日包丁を研いだから、今日は切れ味も抜群で、ストレスなく盛り付けることが出来た。天麩羅の具材を並べて、天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆを用意する。

 大釜の湯をポットに入れて、店の掃除を終わらせたら、開店時刻の分前。5分前には暖簾を出して、カウンターの椅子に座ってお客を待つのです。昼過ぎに駐車場に車が入って、見れば女性の一人客のご来店で、カウンターに座ってぶっかけ蕎麦のご注文。何かの帰りでここの美味しい蕎麦を食べようといらっしたのだそうな。デザートまで頼まれて、粒餡の入った水羊羹は硬すぎるかと思ったけれど、歯ごたえがあって美味しいと言われた。有り難いことです。




9月16日 金曜日 秋晴れの蕎麦日和だったけれど …


 今朝は5時半過ぎに家を出て、蕎麦屋の東側のミニ菜園の草取りをしました。残すところ5mというところで止まっていたので、気にはなっていたのですが、店の仕事があったりで、なかなかはかどらなかったのです。両手に軍手をはめて90㍑のビニール袋を用意して、お隣に響かないようにそっと草をむしる。突き当たりまで行ったら、先日剪定した月桂樹の葉が、刈れてそのままになっていたから、細い枝は剪定ばさみで短く切って袋に詰めたのです。

 黒いビニールシートを敷いた上に玉砂利を敷いてあるから、雑草もそんなに深くは根を張れないはずなのです。それでも飛んでくる畑の土が溜まるのか、玉砂利が見えないほどに草は生い茂っていたから、自然との闘いは不断の心がけが大切。一番日当たりの好い場所には何を植えようかと、先日、ガーデンセンターに見に出掛けたけれど、葉物野菜ぐらいしかなかったので、しばらく検討中なのです。何か植えないとまた雑草が生えてきてしまうから大変です。

 7時になったから家に戻れば、今朝は鰺の開きにベーコンエッグと、野菜サラダで残ったレタスをスープにして出してくれた。残り物を決して廃棄しないのが女将の偉いところ。毎日漬けているキュウリのお新香も味が好くなっている。朝ご飯がボリュームがあるのは、昼がいつ食べられるか分からない亭主にとっては嬉しい限り。食後は書斎に入って、朝ドラの終わる時間までぐっすりと眠るのです。珈琲を入れてもらって、やっと目を覚まして家を出る。

 今朝は気持ちの好い青空が広がって、陽射しは強いけれど涼しいのでした。蕎麦屋に着いたら、早速、幟を立てて、蕎麦打ち室に入るのです。昨日は客が少なかったから、この天気なら今日は少しは客が入るかと、蕎麦を打つ手にも力が入る。シャツ一枚にエプロンをしているだけなのに、蕎麦を打ち終わればもう汗びっしょりなのです。蕎麦打ち室の温度は25℃、湿度は60%。涼しくなっているのにやはり蕎麦打ちは力を入れるからか、汗が出てくるのです。

 今日は湿度も低く天気が好いから、奥の座敷も洗面所もすべて窓を開けて風を入れておきました。畳も押し入れも湿気が溜まると黴が生えるので要注意なのです。蕎麦の加水も41%でちょうど好い硬さで、切りべら26本で135gの束を八人分、生舟に並べるのでした。やはり蕎麦打ちは最初の水回しから、ずっと一連の作業が繋がっているのです。何処かでおかしな事をしてしまうと、後の作業に響いてくる。きちんと打てた日には胸を張って暖簾を出せるのです。

 野菜サラダの具材も包丁が切れるとすんなりと終わる。このところ、野菜サラダを全部家に持ち帰っているから、あまり威張れないのですが、そもそも平日のお客の数が少ないから、三皿では少し多すぎのかも知れない。と言って減らしてしまうと、注文があった時にお客の側からすれば「なんだ」と言うことになる。11種類の野菜を使って、いつも同じ物を作るのも、結構、大変なことなのです。蕎麦屋で野菜サラダが食べられるのを喜んでくれる客が減ったか。

 開店時刻の10分前に暖簾を出したら、女性の二人連れが駐車場に車を止めてご来店。天せいろとおろし蕎麦のご注文だったから、盆や蕎麦皿を用意して、大根おろしを小鉢に盛り付け、薬味を揃えたところで天麩羅を揚げ始めるのです。蕎麦を茹でてお出しすれば、「コシがあって美味しいわ」「何処の蕎麦粉ですか」と聞きながらも、二人は話し出すと箸が止まる。水切りをきちんとしなければ、蕎麦が伸びてしまうので要注意なのです。

 1時になってもお客は来そうになかったから、亭主は天麩羅の具材の端切れを揚げて、賄い蕎麦をぶっかけて食べてしまう。こんな好い天気の日なのに、そう言えば、外を歩く人影もないのは不思議なのでした。シルバーウィークなどと言って、三連休が続くから、金曜日はじっとしているのだろうか。明日一日だけが天気で、後は台風の影響で雨が降るらしい。読みの難しい週末になりそうです。明日の朝は狭い南側の庭の掃除をしようか … 。



9月17日 土曜日 昼はまた暑さが戻って …


 毎日、何かを念じながら眠ると新しい朝が来るもので、夕べは9時過ぎにもう眠くなって床に入れば、今朝は涼しいうちに目が覚めて、蕎麦屋の南側の庭を掃除することが出来た。先日、剪定した月桂樹の枝を庭に倒しておいたら、だいぶ刈れてきたからゴミ袋に詰めるにはちょうど好かったのです。ゴミの回収業者は重さでお金を取られるから、出来るだけ水分をなくしてと言われている。無理矢理袋に詰め込んで、やっと地面が見えて来た。

 残るは10mほどの草取りと、突き当たりに植えたタラの樹の剪定だけ。大きくなる木だから放っておくと大変なことになるのです。その手前には、コゴミを植えてあるのですが、どちらも元々ミニ菜園の畑にしていた土地だから、他の植物に邪魔されないのでどんどん伸びる。生産調整をしないと、同じ時期には出し切れないほど採れるから困ったもの。明日からは台風の影響も出てくるから、またしばらくは庭の手入れもお休みになります。

 家に戻れば朝食の時間で、今朝はほっけの塩焼きと豚汁がメインでした。店で残る大根もしっかりと煮物にしてくれるから助かる。薄味のキュウリのお新香はすっかり美味しさが定着して、糠床の手入れはやはり大切だと思うのでした。食後はひと眠りをせずにアンソニー・ホプキンスの「アトランティスのこころ」という映画を観て、不思議なストーリーに引き込まれていた。気が付けはもう9時なのでした。急いで蕎麦屋に出掛け、朝の仕事を終える。

 生舟の中には昨日の蕎麦が沢山残っていたけれど、週末だからと今朝は500gだけ打ち足して、15食の蕎麦を用意した。三連休というのはやっかいな代物で、お客の動きが予想できないので、一応、目一杯の準備だけはしておこうと考えました。暖簾を出してすぐにいらっしたのは、大盛りのせいろ蕎麦と辛味大根の常連さんで、新聞を読みながら黙々と蕎麦を啜る。次ぎはカレーうどんのご主人と奥様は今日は鴨せいろ。串焼き4本とデザートもご注文。

 その後しばらくはお客がなかったが、ご近所の小母さんから電話が入って、娘夫婦が来るのだけれど、閉店までに来られるかというものでした。女将が電話口で少しならお待ちしますと応えていたようで、ラストオーダーの時間を過ぎてのご来店なのでした。もう暖簾も下ろしていたので、残っていた野菜サラダを食べてもらっている間に、天せいろを三つ仕上げてお出しする。秋分の日の前に墓参りに来たのだそうな。洗い物や片付けをしながら話を聞く亭主。

 3時前には二人で家に帰って、女将の剥いた梨を食べながら、今日の夕食は何にすると話をすれば、彼女はこれから美容院に出掛けると言うので、亭主は昼寝を諦めて足りなくなった野菜を買いながら、夜はお刺身にしようということになった。週末だから、隣町の魚屋スーパーも好い食材が出ているのでした。帰りがけに蕎麦屋に寄って、明日のお新香を漬けてくる。明日の大型台風の影響がどれほどになるのかが、ちょっと心配なのでした。


9月18日 日曜日 蒸し暑く、曇り時々雨の天候で …


 朝飯前のひと仕事もさすがに外回りの仕事が二日も続いたので、今朝は厨房に入って、夕べ漬けたお新香を糠床から取り出し、蕎麦汁を蕎麦徳利に補充しておきました。歳を取って動きが遅くなったこともあるけれど、時間はいくらあっても足りないのです。2時間半の昼の営業のために、どれだけの時間をかけているのだろうかと思うことがある。それが健康の秘訣だと笑って言えれば好いなあ。外はうっすらと青空も見えていましたが、天気予報では曇り雨。

 二週間前に作ったばかりの返しも、もう甕に残り少ないから、蕎麦汁が足りなくなって出汁を取ったとしても、すぐには作れない。今日のお客の入り如何では出汁取りの準備をしなければならない。そして何よりも、一週間も寝かせなければいけない返しを作っておかなければ。ただ、台風の影響で天気が悪いと言うから、亭主はなんとか今日明日を乗り切れないかと思っているのです。明日の朝にでも返しを仕込んで、定休日に出汁を取れれば一番好い。

 家に戻れば例によって女将が台所で朝食の用意をしている。今朝はホッケの塩焼きと茄子とピーマンの味噌炒め。食事を終えて書斎でひと眠りしようと思ったけれど、今朝はかなり蒸し暑いので、洗面と着替えを済ませたら、蕎麦屋に出掛けて涼むことにする。朝のうちに今日はエアコンを点けてきたのです。大気全体が南風の影響でむーっとした暑さに包まれている。これはやはり大型の台風の影響なのでしょう。今日の営業も思いやられるのでした。

 千切れた雲がどんどん流れて行くのが分かる。青空も何時の間にか消えていくのでした。日曜日の朝だからバス通りには車の通りも少なく、いつもの時間帯にジョギングをしている人たち以外には人影も見えないのです。幟を出してチェーンポールを降ろしたら、亭主はヒンヤリと冷えた店の厨房に入って、デザートの水羊羹を作り始める。今週のために作った羊羹は、あと二人分しかないので、足りない時のためにと仕込んでおくのです。

 前回は小豆を煮たのを入れたのに漉し餡が多すぎて、仕上がりが硬かったから、今日は漉し餡を少なめにして小豆の煮汁をそのまま使う。勿論、氷糖蜜は入れるのだけれど、小豆が多すぎて豊缶に入りきれなかった。こんな時のためにガラスのカップを用意して、二人分は余分に出来た計算。蕎麦打ちを終える頃には、冷蔵庫に入れられるくらいに固まっているはず。この分量だと、木曜日までは持ちそうなので取りあえずひと安心なのです。

 9時前に蕎麦打ち室に入って、今日も500g5人分だけ打ち足しておく。蕎麦粉は来週末までは持ちそうだけれど、早めに発注しておかなければ。蕎麦打ち室の温度は27℃で、湿度は78%とかなり湿気が多い日なのでした。エアコンが効いているのにこの数字だから、外は相当に蒸し暑いのでしょう。女将の来る頃には、雨もぱらついて来た。玄関脇に傘立てを出して、来るかどうか分からないお客に配慮するのでした。空は暗く、これから雨が強くなるのだと言う。

 それでも日曜日だからと野菜サラダは四皿盛り付けておく。結果的には一皿しか出なかったから、無駄な労力だったけれど、それを止めてしまっては、営業も先細りになるような気がするのです。南風だったから、店の窓は雨が吹き込まず、少し抱けて明けて換気をしておく。いつもと同じ時間に暖簾を出して、女将と二人で客を待つのでした。1時間経ってもお客の来る気配はなく、外は、時折、激しい雨が降ってはまた止んでの繰り返し。

 1時前に亭主がしびれを切らして、天麩羅とかき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べる。何かしていないと間が持たないし、腹が減っては客を待つ元気も出ないのです。奥の座敷で食後のひと休みをしていたら、「○○さんが来たわよ」と女将が亭主を呼ぶ。女将の友だちの常連さんが、こんな雨の中をよく来てくれたものです。デザートをサービスして、残ったサラダも持って帰ってもらった。明日は今日よりも天気が悪いと言うから、果たしてどうなることか。


9月19日 台風接近の敬老の日は …


 昨日は朝食後のひと眠りも午後の昼寝もしなかったから、夜は9時になったらもう眠くなって、床に就くのでした。ぐっすりと眠って目覚めれば4時だから、7時間は眠ったことになる。まだ暗いから、珈琲を沸かしてテレビで台風情報を見る。随分早い時期から台風のニュースをやっていたのに、まだ九州を過ぎた辺りだと言うから、台風の速度が随分と遅いのか。日本列島の半分以上を勢力圏にしているのだから、相当に大きな台風のようなのです。

 やっと辺りが少し明るくなったので、車で蕎麦屋に出掛ければ、向かいの森はまだ日の出前で、空がぼーっと紅くなっている。どうやら雲がないので青空になりそうなのでした。それにしても、朝からむーっとする生暖かさで、これも台風の影響なのかと店のエアコンを入れる。厨房は朝から27℃、湿度は78%もあるのです。今朝の朝飯前のひと仕事は、ほとんどなくなった返しの仕込み。出汁を取るよりは時間がかからないけれど、寝ぼけ眼で調味料の分量を間違えてはいけないと、しっかりと計量するのでした。

 30分ほど火にかけて沸騰直前で火を止めたら、まだ6時前だったから、昨日の洗い物を片付けたり、大釜に水を張ったり、洗濯機の中の洗濯物を畳んだりと動き回る亭主。明日は第三火曜日で子ども会の廃品回収の日だから、最後にまだ片付けていない段ボールを紐で括って廊下に出しておく。やっと6時を過ぎたから、家に戻って朝食までの時間をひと眠り。1時間ほど眠ったところで女将が起こしに来てくれました。久し振りにベーコンエッグで朝食を食べる。

 テレビでは台風関連のニュースがやたらと多く、今日も朝から雨という予報だったのに、外は晴れて青空が広がっている。まだ台風本体が遠いので、風が強くて雲が流れているという状態なのです。洗濯物をどこに干したら好いのかしらと、女将にとっては判断に迷う天気のようでした。家を出て蕎麦屋に向かえば、気温は高く、陽射しは強く、みずき通りも夏の陽気で、クーラーの入っている蕎麦屋の店の中に逃げ込むようにして入るのです。

 幟を出して、チェーンポールを降ろしたら、蕎麦打ち室の冷蔵庫を開けて、昨日残った蕎麦のチェックをする。生舟にはしっかりと打った蕎麦が13食分もあるから、連休最後の日とは言え、明日は定休日だから蕎麦を残したくないので、今日は蕎麦を打たずに営業をすることにしました。そうなると急に時間に余裕が出来るので、厨房の椅子に座ってお茶を飲みながら、明日の仕事を考えておく。換気扇のレンジフードの掃除と出汁取りが最優先かも知れない。

 タブレットで油汚れの落とし方について調べ、銅鍋と同じく重曹が有効なことが分かったので、明日は早速試して見よう。いつもと同じ10時を過ぎたところで、大釜に火を入れて、少し早いけれど、野菜サラダを作り始める。電話が鳴って今日は営業しているかという問い合わせ。台風前でも外は晴れて暑いくらいだから、結構お客は来るのかも知れない。果たして、開店と同時にテーブル席が一杯になり、ヘルシーランチセットは最初の三人で売り切れました。

 カウンターに座ったご夫婦は、ご主人がカレーうどん、奥様が天せいろのご注文で、店のブログを読んでくれているとおっしゃる。これで今日はお客も終わるかと思ったら、まだ1時前だというのに後半でまたテーブルとカウンターにお客が入ったのです。みるみる蕎麦はなくなって、1時過ぎにはお蕎麦売り切れの看板を出すのでした。隣町の常連さんが最後にいらっして、蕎麦が残っていて好かった。お客が帰る頃に外は土砂降りの雨になった。これも幸いか。