2022年9月上旬

9月6日 火曜日 霧の朝、また暑さが戻った一日 …

 夕べは10時過ぎには床に就いたので、今朝も5時にはもう目が覚めて、水を一杯飲んだら蕎麦屋に出掛ける。濃い霧が出て初めは視界が悪かったけれど、明るくなるにつれて少し遠くが見えるようになりました。この定休日の朝には、南側のミニ菜園の草取りをしようと決めていたから、厨房で珈琲を一杯飲んで眠気を覚ますのでした。7時間も眠ったのに、なかなか目が覚めないのは、先週の疲れが抜けていないのか、それもやはり年齢なのかと不安になる。

 長ズボン長袖を着込み、首にはスポーツタオルを巻いて、軍手をはめたら90㍑のゴミ袋を手にして玄関を出る。歩く部分は石を敷いてあるから、深く根は張らないはずなのに、年月が経って土埃が溜まるのか、しっかり地面に根を張っている雑草もある。蔦は根っこから引き出さないとすぐにまた出てくる。入り口から5mほど進んだところで袋も一杯になったし、30分は経過したので、家に戻って今度は裏手に回り、先週切り残した無花果の樹の残り半分を切る。

 「先週の枝は全部ゴミに出しましたよ」と女将に言われていたので、今朝は何としても残る枝を落としておかなければならない。熟した無花果の実が沢山付いていたけれど、今朝は採っている暇はない。日影の足元に蚊が群がって、沢山食われたけれど気にせずにどんどん剪定ノコギリで切り進んでいく。朝日が当たる東側は、枝が随分と延びているのでした。やっと終わって居間に入ればもう7時前、今朝もベーコンエッグと豚汁で朝食を食べるのでした。

 夕べは十分に睡眠を取ったから、食後のひと眠りはせずに再び蕎麦屋に出掛け、仕入れに行く前に冬瓜の下茹でだけしておく。ついでに天麩羅鍋の焦げ付きを落とすために、大釜の中に入れて重曹で煮ておく。36cmの大釜に30cmの天麩羅鍋だから余裕で入った。どれほど効果があるのかは疑問だったけれど、高価な銅の鍋の外側も焦げつかせたままではいけないと、試して見たのです。9時前にはお袋様に電話をして迎えに行って、今日の仕入れの開始です。

 陽射しはどんどん強くなるばかりで、9時の車外温度は30℃になっていました。「彼岸まではなかなか涼しくはならないよ」とお袋様が言う。農産物直売所ではナスもキュウリも季節が過ぎたと見えて、あまり好いものがない。冬瓜をまた一つ買って、ミョウガやオクラももらっておくのです。梨は先週から豊水に変わっている。近所の農家で採れる野菜や果物をみると、季節の推移がよく判るのです。後は隣町のスーパーで近県のものを手に入れるのでした。

 昼は昨日揚げて帰った天麩羅をグリルで焼いて、蕎麦も沢山残ったから、亭主は珍しく大盛りで食べることが出来ました。この上ない贅沢と蕎麦湯までしっかり飲んで満足したら、今度は腹が苦しくて眠気が襲ってくる。女将のスポーツクラブの予約開始まで、書斎で横になってひと眠りです。定休日はこの休憩で、随分と疲れが取れるような気がします。2時5分の予約開始に間に合って、居間に置かれたスマホを操作。無事に一番好い席を取ることが出来た。

 稽古場から休憩で出て来た女将が水羊羹とお茶を運んでくれる。居間で洋画を観ていた亭主は、区切りの好いところで蕎麦屋に出掛ける。午後の仕込みは、朝のうちに下茹でをした冬瓜を、塩と砂糖と生姜と唐辛子で作った出し汁で、鶏の胸肉の粗挽きと一緒に煮込み、そぼろ煮を作ること。午前中に重曹で煮ておいた天麩羅鍋を金ダワシで擦れば、少しだけ綺麗な銅の色が見えてくる。明日の出汁取りの準備をして、洗濯物を干したら家に戻って夕飯の時間。

9月7日 水曜日 定休日二日目は湿気が酷くて …

 今朝は汗をかいて目が覚めた。涼しさに慣れた身体が、少しの気温や湿度の変化にも反応したのでしょうか。6時前だったので、珈琲も飲まずに蕎麦屋に出掛け、昨日から準備をしておいた出汁取りを開始する。鍋を沸かして10分ほどで鰹節を入れ、沸騰する前に火を止めて鰹節が沈むのを待つのです。これが一番出汁。濁らずに黄金色になれば成功です。2㍑の鍋には600ccの返しを入れて沸騰直前で火を止めて水で冷やす。残りは冷まして瓶に入れて冷蔵庫。

 結局、一時間をかけて出汁を取り、家に戻って朝食を食べる。再び蕎麦屋に出掛ける時に、門の脇に咲いたムクゲに元気を貰う。今朝は南側のミニ菜園の草取りもお預けでした。今日も定休日だからとゆっくりしていると、次の仕事がどんどん溜まってくるのです。隠居の道楽で始めた蕎麦屋も、仕事は歳を重ねるに従ってずっしりと重みを増している。まあ、それが毎日の励みとなっているのですが、身体が元気でないと続けられない仕事です。まだ大丈夫だよ。

 向かいの畑のコキア(箒草)が、この時期になって少しずつ紅葉している。農作物を作る畑で何を作るつもりなのか、未だに亭主には不思議でならない。厨房に入って揚げ浸しの準備をしながら、後ろのレンジでは大釜に銅の天麩羅鍋を入れて、重曹を加えて煮ている。ボコッボコッとお湯が沸いてきたから、どうなるのかと楽しみで、揚げ浸しは作り終えたら冷蔵庫に鍋のまま入れておく。床にこぼれた水を、例の電動マシーンで洗えば結構綺麗になるのでした。

 11時近くになったから、家に戻って昼食の用意。定休日二日目の今日はとろろ蕎麦と洒落てみました。またしても今日も大盛りだったから、蕎麦湯までしっかりと飲み干して、満腹になった亭主は書斎で昼寝を決め込むのでした。女将はその間にスポーツクラブに出掛け、亭主が目覚めた頃には居間の部屋は30℃になっている。湿気の多い昼なのでした。今日は通風の薬が切れたので、整形外科に行く日なのでした。先月の血液検査の結果も聞かなければならない。

 蕎麦屋に出掛けてひと仕事を終えたら、整形外科の開店5分前には廊下の椅子に座って医院の明かりが付くのを待つ亭主。駅前の高層マンションの二階のフロアには、眼科や歯科や婦人科、皮膚科、内科などいろいろなクリニックが集まっている。老人の多いこの団地では利用する人も随分と多いのです。検査結果は順調で、もう少し尿酸値の値を減らしたいからと、日に一度の薬を少し強い物に換えると言う。今度は2月に血液検査をしましょうと言われた。

 蕎麦屋への帰り道、24時間営業と開店したスポーツジムの前を通る。女将と亭主の通うスポーツクラブも24時間営業に変わったと言う。高齢者の多いこの団地で、そんな需要があるのだろうかと思うけれど、若い世代も暮らしやすいようにと考えられているのかな。店にも戻って明日の準備の詰めに入る。冷蔵庫で冷やしてあった揚げ浸しと冬瓜のそぼろ煮を小鉢に盛り付け、明日の天麩羅の具材を切り分けたら、糠床にお新香を漬け込んで今日の仕込みは終わり。

 ミョウバンを入れて大鍋で煮た天麩羅鍋は、見事に焦げが剥がれて銅の色が綺麗に見えて来た。金タワシでいくら擦っても落ちない焦げが、自然と皮を剥くように剥がれていくから面白い。試行錯誤を繰り返しながら、一つずつ課題を解消していかなくてはいけないのでしょう。新しい発見と驚きは次のステージへの活力となる。家に帰れば、女将は亭主の切り落とした無花果の樹から、熟した実を採ってまたジャムをひと瓶分作ったのだと言う。素晴らしい。

9月8日 木曜日 こんなに涼しい日にお蕎麦売り切れで …

 朝から涼しい陽気で、曇り空で湿気が多いのも気にならないほどでした。定休日明けの今朝も朝飯前に蕎麦屋に出掛けて、糠床に漬けたお新香を取り出すのでしたが、今日は一日中曇りで雨さえ降ると言うから、沢山のお客は見込めないと思うのでした。キュウリもナスも明日の分までと沢山漬けたけれど、残れば家に持ち帰って食べなければならない。夏の野菜もそろそろ終わりだから、カブも一つ100円もするのです。次は何を漬けたら好いのか。

 朝飯前のひと仕事は、昨日の洗濯物を干すくらいで、7時には家に戻って朝食を食べる。鰺の開きに三ツ葉と厚揚げの卵綴じに豚汁が付いて、亭主にとっては少し多めのおかずなのでした。食べ終えてから女将が「ちょっとおかずが多すぎたわね」と言うので「厚揚げが余分だったね」と応えるのでした。なぜか腹が苦し過ぎてひと眠りも出来ない状態だったので、珈琲を入れてもらって眠気を覚ますのでした。夕べの睡眠時間は約7時間。涼しいからよく眠れた。

 空はどんよりと曇っていたけれど、湿気があっても気温が低いから涼しく感じる朝なのでした。店の中も蕎麦打ち室も25℃と涼しいのです。湿度は70%あるからそれなりに湿ってはいるのですが、窓を開けて新鮮な空気を入れて、今日の営業の開始を準備するのでした。蕎麦打ちは加水率を42%のままで蕎麦粉を捏ね始めたけれど、湿度があるせいかどうも生地が柔らかく仕上がる。気温が低いと硬くなるのが常だから、いけるかと思ったのですが、そこが難しい。

 それでも打ち粉を振りながら、生地を伸して八つに畳み、切りべら26本で八束の蕎麦を仕上げる。これでも蕎麦は残るだろうと、この時点では思っていたのです。明日に繋げればいいと思いながら、涼しい日にはお客は来ないと言う、データを管理する女将の言葉を思い出していました。厨房に戻って薬味の葱を切ろうと思ったら、冷蔵庫の中には細葱がないことに気づいて、ミニ菜園に新しく伸びた小葱を採って代用する。検品をしたつもりで忘れていたのです。

 家にいるはずの女将に電話をして、買い物に行くならと小葱を頼んでおく。ミニ菜園はこんな時に役に立つのですが、今年は何も植えていない。辛うじて球根の残っていた小葱が育ってくれていたのでした。大根と生姜をおろしてひと休みしたら、野菜サラダの具材を刻み始める。開店時間の10分前に、ご夫婦がいらっして玄関前で待っている様子だったから、店の中にご案内して座っていただく。「時間前なのに悪いわね」「ちょうどお湯が沸いていますから」

 歩いて来たご夫婦は、天せいろにキスの天麩羅を頼まれて、ご主人は日本酒までご注文。すぐに次のお客が三人連れでいらっして、お茶をお出ししながら、前のお客の酒やお通しを運ぶ亭主。天麩羅を揚げているのに、蕎麦豆腐を頼まれたりで、一人ではなかなか忙しいのです。無事に最初のお客の注文の品を出し終えて、天せいろと天麩羅蕎麦を頼まれた次のお客の天麩羅を揚げている間に、男性客お二人がカウンターに座って鴨せいろのご注文なのでした。

 まだ12時半前だったけれど、家にいるはずの女将に電話をして、早く来て欲しいとSOS。結局、カウンターのお客たちは鴨せいろの大盛りを頼まれたので、これで今朝打った蕎麦はすべてなくなったのです。その後も隣町の常連さんがいらっしたけれど、「お蕎麦がなくなったんです。ご免なさい」とお断りするし、車でいらっしたご夫婦も女将が出ていってお断りする始末。今日はとても涼しい陽気なのに、どうしたと言うことなのでしょうか。

 女将が言うには「東京の感染者が減っているから、出掛けようという人が増えているのでは」それでも、買い物から帰る時に防護服を着た救急隊員が、家の近くで作業をしていたと言う。規制緩和の現実も、感染が身の回りで起きると生々しいものです。家に戻って遅い昼に餅を焼いてもらって済ませた亭主は、ひと眠りしてから店に戻って、明日の小鉢を盛り付け、蕎麦汁を補充しながら、業者が食材を届けるのを待つ。なぜか目まぐるしかった一日なのでした。


 9月9日 金曜日 昨日よりも涼しい秋の一日で …

 昨日にも増して涼しい朝でした。朝飯前のひと仕事に蕎麦屋へ出掛けようと玄関を出れば、霧雨の降る中、庭に紅いモミジアオイの花が見えた。今年はもう終わりかと思っていたら、最後の力を振り絞って咲いたという感じなのです。女将の稽古場のプルメリアも、涼しくなってもまだ咲いている。どちらもそんなに長い間咲く花だったかと、自分の記憶が定かでないのが悔やまれる。店に行ってもあまりすることはなく、洗濯物を畳んで家に帰るのでした。

 そんな朝は、南側のミニ菜園の草取りでもすれば好いのですが、小雨を理由にホッとしている亭主。本当は涼しくなったら、外回りはやることが沢山あるのです。億劫がって延び延びになるから、また新しい雑草が生えてくる。今朝の食卓には、先日、亭主が餃子を包んだ残りのニラを卵綴じにしたものと、例によって四枚ひと組で買って来た鰺の開きがおかず。昨日の朝食と変わり映えがしないけれど、少食になった亭主にはこれで十分なのです。

 食後はいつものように書斎に入って30分ほどひと眠り。女将の朝ドラが終わる頃に目を覚まし、洗面を済ませて髭を剃る。雨が降っていたら今朝は車で出掛けようと思ったら、早朝の雨はもう上がっていたので、少しでも歩いて運動になったか。今日はまだ金曜日だというのに、なぜか身体が重たいのは、やはり運動不足で体力が落ちているからなのでしょう。そろそろプールを再開したいけれど、市内の感染者はまだ三桁を下らないから要注意です。

 9時前に蕎麦屋に着いて、今朝は少し遅いからと急いで蕎麦打ち室に入る。昨日は蕎麦が足りなかったけれど、二日続けて混むということは滅多にないから、750g八人分の蕎麦粉を計量して、今日は41%のの加水で捏ね始めたのです。そうしたら、見事に勘が当たってちょうど好い硬さの生地に仕上がる。室温25℃、湿度79%なのでした。外はもっと涼しくて湿度もあるのでしょうが、蕎麦粉は正直に反応している。生舟に八束の蕎麦を並べて10時を過ぎたところ。

 蕎麦玉を寝かせている間に、大根をおろし、昨日女将に買ってきてもらった小葱を刻んだから、後は野菜サラダの具材を刻むだけ。涼しい日にはサラダが出ないのではと心配したけれど、今日は開店一番でいらっした男性が、ヘルシーランチセットの天せいろを頼まれたので、まずは上々の滑り出し。次のお客は、仕事の途中らしい若い女性が、お一人でカウンターに座って天せいろのご注文。このくらいのペースでお客が来れば好いのにと思いながらの昼過ぎ。

 昨日、蕎麦が売り切れで食べられなかった隣町の常連さんが、車を乗り付けて元気に店へ入って来る。「昨日は済みませんでした」と亭主が謝る。いつもの旬の野菜と魚の天麩羅は頼まずに、今日は鴨せいろを頼まれた。亭主はお客の姿が見えた時には、天麩羅鍋に火を入れていたけれど、取りやめて鴨肉を解凍するのでした。鴨肉が焼き上がって蕎麦を出す頃に、もう一台車が入って来る。ご家族四人連れで小さなお子様たちが一緒なのでした。

 若いお婆様は鴨せいろ、娘さんはとろろ蕎麦、子供にはかけうどんのご注文。どれもひと手間かかるものばかりだったけれど、上の男の子は、怪獣のミニチュアをテーブルの上に広げて遊び始める。リピーターの方だったのかしら。子ども達が賑やかになってきたので、亭主は先にうどんを仕上げてフォークと小鉢を付けて出してやる。とろろ芋をおろして蕎麦を茹でとろろ蕎麦を出したら、やっと鴨肉を焼いて鴨せいろ。子ども達にはカルピスと菓子を忘れない。

 ラストオーダーの時間までお客はゆっくりとしているから、亭主はテーブルの盆や皿を片付けて、洗い物をし始める。それから、遅い昼の賄い蕎麦を茹でて食べるのです。食後はひと休みするから、どうしても一人だと片付けに時間がかかる。3時過ぎにやっと片付けを終えて家に戻れば、女将はスポーツクラブから帰ったばかり。

 鴨せいろに入れる小松菜が切れ、巻きの悪いレタスもなくなりそうだったから、隣町のスーパーに出掛けて仕入れてくるのでした。豆乳や天麩羅鍋の漕げ落としの重曹も買って、店に寄ってお新香を漬ける。昼寝をする暇がなかったので、夕飯を食べたら風呂の時間までぐっすりと眠ってしまいました。

9月10日 土曜日 清々しい秋晴れの日なのに …

 5時前に蕎麦屋に出掛ければ、向かいの森の空が朝焼けでとても綺麗なのでした。夕べは夕飯の後で遅過ぎるひと眠りをしたばかりに、夜がなかなか寝付けずに、結局、3時半頃に目が覚めてしまったのです。珈琲を沸かして飲んだら、昨日漬けたお新香が気になって、明るくなるのを待って蕎麦屋に出掛けたという次第。ナスもキュウリもカブももうそろそろ終わりの時期なのに、まだ同じ漬け物を漬けている自分が可笑しくもある。

 5㍑の鍋に湯を沸かして小松菜を茹でたら、5cmの長さに切りそろえ、小さなタッパに入れて急速冷凍室で凍らせておく。涼しくなったからこのところ鴨せいろが随分と出るのです。知り合いの農家の親父様が、犬の散歩で店の前を通るから、いつものようにお互いに片手を上げて挨拶を交わす。農家も朝が早いから、蕎麦屋の親父も頑張っているよと、窓越しに無言のエール交換。他の小鉢を盛り付けて、蕎麦徳利にはストックの蕎麦汁を補充しておく。

 まだ6時過ぎだったけれど、朝が早すぎたので家に戻って食事の前にひと眠りするのでした。7時過ぎには女将が起こしに来て、食堂に入ればぷ~んと好い匂いがする。塩鯖を焼いたのと豚汁のご馳走で、亭主はこれだけでもう腹が一杯になる。お茶も飲まずにまた書斎に入って寝込んでしまうのでした。昨日の蕎麦はほとんど残っていなかったから、週末の今日は店が混んだら困ると蕎麦を二回打つ覚悟で、少し遅いけれど9時前には家を出る亭主。

 今朝は湿気がないからか、青空が広がって陽射しも強いのに、涼しくて爽やかな陽気なのでした。定休日が明けてまだ二日しか営業していないのに、もう何日も経ったように感じるのは、やはり少し身体が疲れているのか。滅多にないのですが、夜の睡眠が足りない日は特にそう感じるのかも知れない。蕎麦屋に着いて看板と幟を出し、チェーンポールを降ろしたら、石鹸で手指をしっかりと洗って厨房に入り、まずは少なくなっていた蕎麦豆腐を仕込んでおく。

 時計は9時15分を回っていた。蕎麦粉を750gと500gの二種類計量して、41%の加水で捏ね始める。一度に1250gを捏ねれば早いのでしょうが、以前やってみたら、やはり打ち台が狭くて上手く打てないのです。140g近くで一束にしているから、1kgでは11人分しか取れないので、やはり普段打ち慣れたこの方法がベスト。急いでいるからか二回目は少し切りムラが出来たけれど、手打ちの蕎麦はこんなものだろうと、打ち終えれば10時過ぎなのでした。

 女将が来てくれる日だったから、掃除や洗濯物干しなどは全部任せて、亭主は厨房に戻って野菜サラダの具材を刻む。天気の好い日にはサラダは出そうな気がする。蕎麦豆腐もデザートも揃えてあるし、ヘルシーランチセットが出れば嬉しい。サラダと蕎麦頭部を出して食べていただいている間に、天麩羅を揚げたり蕎麦を茹でたり出来るのです。ところが、準備は万端の時には、暖簾を出しても何故かお客は来ないから不思議。バス通りは車の量が多いのに…。

 1時前になってやっとお客が見えて、車を見れば常連の女先生。久し振りだから「元気でやってますか」と尋ねる亭主。話題はやはり新型コロナの感染状況で、新学期の始まった学校では、思ったほど感染者が出ていないのだそうな。趣味の野球観戦でストレスを発散して、家と職場を往復する生活なのだとか。お客が少ないと後片付けも楽ちんで、2時過ぎには女将と蕎麦屋を出る。四皿も残ったサラダは家に持ち帰り、例によってお好み焼きにするのでした。

9月11日 日曜日 珍しく蕎麦を打たない日曜日 …

 前日の反省から、夕べは10時には床に就いて、朝までぐっすりと眠る亭主。涼しくなったから、疲れているわけでもないのに、本当によく眠れるのです。風呂上がりに焼酎をオンザロックで飲んで、軽いつまみは食べるものの、以前のように寝る前にラーメンを食べたりはしなくなったのは少し進歩かな。5月に10数年振りに通風の発作が起きて、これも十分に反省をしているつもり。それでも、明け方に見る夢は、食べている夢だから面白い。

 女将は亭主が食べるのが好きだからだろうと言うのだけれど、間食もせずに朝も質素に食事を済ませ、遅い昼には食べられれば蕎麦一杯。夕食も女将とまったく同じ量だけだから、食べ過ぎと言うはずはないのです。その証拠に体重は増えない。最近はグルメリポートなどとテレビで食べる番組を見る機会があるので、その影響なのだろうか。調理師だからどうやって作るのかと言うことに興味があるだけで、これは食べてみたいという料理は多くないのです。

 昨日はほとんどお客がなかったので、わざわざ二回打った蕎麦がたくさん生舟に残っていたのです。今日は蕎麦を打つことを断念して、いつもの時間に出掛けては早すぎると、ジョン・ウェンの名作をテレビで見ていたのです。9時過ぎになって重い腰を上げ、着替えと髭剃り・洗面を済ませて、マスクをして家を出る。随分と涼しくなったから、最近はマスクを付けて蕎麦屋に出掛けることが多いのです。みずき通りの風景も昨日とは大違いで、一面の曇り空。

 女将が店の掃除を終えた頃に、向かいの畑の親父様が、両腕に何やら畑から採ったばかりの作物を抱えて、蕎麦屋に向かって来るではありませんか。女将が出て挨拶をすれば、今採ったばかりの長ナスを10本ばかり頂いたのでした。家の野菜がなくなってきたので、今日は何か買いに出掛けなければと思っていたと言う女将。いつももらうばかりで何もお返しが出来ないのが残念でならない。蕎麦屋に食べに来て下さいと言うのですが、なかなか機会がない。

 今日は開店の20分ほど前に車でご夫婦がやって来て、大釜の湯が沸いているからどうぞと、店の中に入ってもらったのです。蕎麦を打たなかった分、準備が早く終わって早お昼を食べに帰った女将が戻る頃には、もうお客がテーブルに座る有様。駐車場に車が止まっていれば、時間が早くても店が開いていると分かるから、開店時刻の前にまた一台。この調子でお客が入れば蕎麦は直ぐになくなると心配するほど、早い出足なのでしたが、後がなかなか続かない。

 昼過ぎにまたご夫婦でいらっしたお客は、ぶっかけ蕎麦の冷たい汁と温かい汁のご注文。余分に揚げすぎたかき揚げは、1時過ぎに亭主が賄い蕎麦を食べるときに載せた。今日は前のお客との時間が空いていたからか、天麩羅の揚がり具合がカリカリと好い具合なのでした。洗い物も終えていたから、ラストオーダーの時間が過ぎたら早めに店を閉めて、女将と家に帰る。また野菜サラダが全部残ったので、夜は久し振りにスパゲッティー・ミートソースを作る。