2022年9月初め

9月1日 木曜日 外は蒸し風呂のような暑さで …

 定休日明けの木曜の朝はどことなく忙しなく、気持ちが落ち着かない。今朝もまだ暗い4時半には起き出して、居間で珈琲を飲みながら、ぼんやりとした頭で、蕎麦屋に行ってからまず何をしたら好いのかを考えようとする亭主。5時のニュースを見終えて、いよいよガレージに向かえば、外は以外と暑いので驚いた。朝焼けの綺麗な空なのです。陽が昇るのは日に日に遅くなっているらしい。店の中に入ってエアコンを入れ、厨房の明かりを点ける。

 定休日のうちに小鉢の食材は仕込んであるのですが、まだ盛り付けていないから忙しない気がするのか。お新香を糠床から取り出して、切り分けたらこれも盛り付けなければいけないので、やることが沢山あるように思えるのか。まずは心配していた小鉢の準備をし終えて約30分が過ぎた。それから、昨日のうちに出来なかったデザートと蕎麦豆腐の仕込みをするのです。どちらも火の前から離れられずに、それぞれ型と豊缶に流し込んでやっとひと安心。

 家に戻ればまだ6時過ぎだったから、朝食の時間までひと眠りする。朝飯前のひと仕事で心配だった準備を終えたこともあり、とにかく横にさえなればよく眠れるのが最近の亭主の傾向。6時間ではやはりちょっと睡眠時間が足りないのかも知れない。女将に起こされて食堂に行けば、ちょうど塩鯖が焼き上がるところでした。大根がなくなったらしく今朝はキャベツと油揚げの味噌汁。とろろ芋もお新香も蕎麦屋の残り物です。さすがに食後のひと眠りはなし。

 晴れていたと思った空は何時の間にか雲が広がって、家を出た頃にはぽつりぽつりと雨まで降りだした。蕎麦を打つ頃になると相当に強い雨になって、今日もあまりお客が見込めないだろうと思う。夕べは午前中から晴れるという予報だったから、今朝は850g9人分を打たなければいけないと思っていたのに、やはり、その日、その時の天気の情報を確実に知っておくことは大切です。43%で蕎麦粉を捏ね始めれば、これがまた柔らかすぎて大変なのでした。

 伸し棒で伸すのにも、ちょっと力を入れすぎると薄く伸びてしまうから、均等な厚味にするために相当な注意を払うのです。打ち粉を振りながら、何とか八つに畳んで包丁切り。切りべら26本で135gだから、上手く打てたと言うべきなのでしょう。人間の体感湿度よりも、蕎麦粉の方が敏感に大気の湿気に反応しているらしい。エアコンの効いている店内は60%以下の湿度なのです。厨房に戻れば電話が鳴って、頼んでおいた電動床磨き機がやっと届くのでした。

 こちらは床磨き専用で、先日届いた電動モップと合わせて使えばなんとか屈まずに床を綺麗に出来そうな気がする。やはり、作る人がいると言うことは、亭主のように使いたい人がいるのでしょう。早速、充電器に充電を開始して、試しの作業は明日の朝か。早朝のひと仕事をこなしたお蔭で、大根と生姜をおろすのも、薬味葱切りも、蕎麦玉を寝かせている間に終えたから、後は野菜サラダの具材を刻むだけ。今日はニンジンのジュリエンヌも細く仕上がった。

 新しい油を天麩羅鍋に注いで、天つゆの鍋を火口においたら、店の掃除とトイレの掃除。ひと息ついたところで玄関に出てみれば、外はまるでサウナ状態なのでした。雨は止んでいたけれども、この蒸し暑さは尋常ではない。玄関脇の馬酔木の枝には来春咲く新芽がびっしりと付いている。家の裏手の無花果ではないけれど、今年の暑さが幸いしているのだろうか。亭主が採った無花果の実を女将がジャムにしたら、とても美味しいと言われたのでした。

 開店すると同時に、家のご近所の奥様が久し振りにお友だちを連れていらっして、ゆっくりと話をされていた。パソコンを抱えて歩いて来たのは、いつもビールと天せいろの常連さん。平日は空いているから、長居をしても一向に気にならない。スポーツクラブが休みの女将がちょうど1時に来てくれて、亭主がやっと昼の賄い蕎麦を食べ始めたら、リピーターの若者が現れる。天麩羅と串焼きを沢山頼まれて、遅い昼食なのでしょう。凄い食欲に夫婦はびっくり。

 ハラミとみつせ鶏の団子を焼いて火加減を見ているところに、女将がスマホを持って来て「予約をお願い」と言うから慌てた。亭主の太い指で急いで画面をタッチするものだから、折角、セットした予約画面が消えてしまう。予約開始30秒で、再び表示した時にはもう残り三席で、辛うじて席を取れたから冷や汗ものなのでした。蕎麦湯まで出し終えて、亭主は奥の座敷でやっと食後のひと休み。2時半前には店を出て家に帰る。東の空は青空が覗いていました。

9月2日 金曜日 終日の雨にも関わらず …

 夕べはもの凄い雨の音で、雷まで鳴ってどうなるのかと思ったけれど、朝になったら雨も小雨になって、亭主は6時前に車で蕎麦屋に出掛けるのでした。今朝の朝飯前のひと仕事は、昨日届いた電動ポリシャーの試運転が主な目的でした。薄めてある台所洗剤を床に撒いて、スイッチを入れればゆっくりとブラシの部分が回転を始めて、思ったよりも床が綺麗になるので安心。これを今まではデッキブラシで磨いていたから、隔世の感があるのです。

 気をよくした亭主は、トイレの出口から玄関の入り口までを一気に洗ってしまう。その後でこれもおニューの電動モップで丁寧に拭き取っていく。今までは作業が面倒でなかなか掃除が出来なかったけれど、これなら頻繁に汚れを落としていけそうです。最後はやはり水モップで洗剤を拭き取り、床が乾いたらワックスを掛ける事を考えなければいけない。浪人時代に予備校代を捻出しようと、ビル掃除をしていたから、手順は好く判っているつもり。

 何か清々しい気持ちで家に戻り、女将の支度してくれた朝食を食べれば、今朝は食後のひと眠りもせずに、髭を剃って、着替えを済ませ、再び蕎麦屋に出掛けていくのでした。電動のポリシャーとモップのお蔭で、蕎麦屋の仕事もまた一つ楽しみが増えたような気がするのでした。小雨の降る中を傘も差さずにみずき通りを渡れば、空はどんよりとした雨雲が広がって、今日もお客が来そうもないと思いながら蕎麦屋に着く。雨の降る中を幟を立てるのでした。

 お客が来そうにないとは言っても、蕎麦だけは明日の土曜日を見据えて、しっかりと打っておかなくてはならない。今朝も750gの蕎麦を、加水を少し減らして捏ね始めたら、やはり相当に湿気があるから、42%ぐらいでちょうど好かった。蕎麦玉を寝かせている間に大根をおろし、本伸しを終えたところで、打ち粉を振りながら生地を八つに畳んでいく。切りべら26本で135gのペースを守りながら、無事に八人分の蕎麦を仕上げ、昨日の残りと合わせて12食を用意。

 これなら、今日残った分は明日に回せるから、明日の朝は蕎麦打ちは一回で済む計算。雨は次第に強くなって、風の吹き付ける北側の窓を換気のために明けておいたのを締める。まあ、お客が来なければ、明日は少しだけ打てば好いなどといろいろ考える。10時前に厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み始めたら、今日はキャベツもニンジンもやけに切り易くて、千切りも細く、ジュリエンヌも綺麗に仕上がるのでした。いつになく随分と早い時間でまだ11時前。 

 雨は降ったり止んだりを繰り返して、時折、強くなって窓を閉める。涼しいからエアコンを切って外の温度と同じ27℃で我慢するのです。暖簾を出してもさすがに今日はお客が来ない。12時半になって腹も空いてきたけれど、大釜の湯も天麩羅の油も使っていないから、自分の食べる分で汚したくはないのです。1時になったら昼飯を食おうと店の中を歩き回ってカウンターの椅子に腰を下ろせば、隣町の常連さんの車が駐車場に入ってくる。

 「こんにちは」「いらっしゃいませ。いつもので好いですか。涼しいからサラダはなしで?」常連さんのスペシャルメニューで天麩羅を揚げようとすれば、例の少年が雨の中を傘も差さずにやって来た。ついでに少年用に海老を揚げて、常連さんの辛味大根をおろしたら、同時に蕎麦を茹でて二人に蕎麦を出す亭主。何度も会っているのに「学校は昼で終わりかい?」と少年に話しかける常連さんだったけれど、亭主が「給食が食べられないんですよ」と応える。

 少年の来る日には決まって他のお客も来るから不思議。雨の中を今日も駐車場は満杯になったのです。「来年は中学で何の部活に入るんだい?」と亭主が水を向ければ嬉しそうに笑って、運動部に入りたいと言う。未来が希望に満ちあふれているのは、若者の方が顕著なのでしょう。新たにいらっしたお客さんに、天せいろやヘルシーランチセットを出して、雨の日なのにまずまずのお客の入り。やっと昼の賄い蕎麦を食べたのは、1時半を過ぎた頃でした。

 今日は後半に混んだから、洗い物が大変でした。女将がいない日は、倍の時間がかかるから、休み休みなので余計に時間がかかる。それでも3時過ぎには家に帰り、女将の剥いてくれた梨を食べる。「昨日の方が甘かったね」と言えば「今日のは水っぽいだけのいつもの豊水ね」と笑って応える。夕食の前にひと眠りして、また蕎麦屋に出掛けてぬか漬けを漬けてくる。明日は晴れると言うけれど、お袋様の米寿のお祝いをするから、午後が忙しくなるのです。

9月3日 土曜日 お袋様の米寿のお祝いで …

 午前5時半。まだ陽は昇っていないのです。もりの上空にかかった雲にこれから昇る朝日が光を投げかけている。眠い目をこすりながら蕎麦屋に着いて、珈琲を沸かして飲みながら、冷蔵庫から糠床を取り出して、キュウリとカブとナスを切り分ける。今日と明日の分と思って、夕べは少し沢山漬けておいたのです。小鉢に盛り付けてまな板を片付けたら、夕べ干し椎茸と昆布を浸けておいた鍋に火を入れて、出汁取りの開始です。ここから約1時間はかかる。

 7時前に家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしてくれていました。朝が早かったせいか亭主はもう眠くて仕方がなかったから、食事を終えたらお茶も飲まずに書斎に入ってひと眠りする。やはり7時間は眠らないと身体が言うことをきかない年齢なのか。プールを長くお休みしているから、最近はかなり体力も落ちているのでしょう。9月は子どもたちのスイミングの終わった時間に、そろそろリハビリを開始しようと思ってはいるのですが … 。

 県の感染者数が減っているのに、市内の感染者数は相変わらずの毎日が続いているのです。いつもの時間に家を出て蕎麦屋に向かえば、今朝は涼しい秋の日を思わせる陽気でしたが、青空は覗いているものの、なかなかすっきりと晴れてくれない。気温が低いとお客が来ないと言うこともあるから、晴れ間が出ないと難しいのです。女将の言うように「涼しいと蕎麦を食べたいとは思わない」というのが一般の人の感じ方なのかも知れない。

 それでも週末だからと、今朝も蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つ亭主。涼しいから蕎麦打ち室の窓を開けて、42%で蕎麦粉を捏ね始めるけれども、それでもまだ生地が柔らかい。湿度計は75%を表示していたから、蕎麦粉は正直だと変なところで感心をしてしまう。気温は25℃だから、やはり秋の涼しさなのです。蕎麦を打って身体は少し汗ばんで温かくなって来たけれど、エアコンを入れる程ではない。女将がやって来て、今日はちょうどいい気候だと言う。

 蕎麦の生地が柔らかくても、いつもの切りべらで、いつもの分量を打てるようにはなったけれど、柔らかすぎるとどうしてもエッジの効いた蕎麦には仕上がらない。そのためにはもう少し加水を減らす時期なのかも知れない。今日は開店直後からお客が入って、皆さん男性お一人ずつなのでした。カウンターに座ったご近所のご主人はいつも天せいろで、今日は珍しく話をした。カレーうどんのご主人は、前回に続きハラミとカシラの串焼きにデサートをご注文。

 1時を過ぎたらもうお客の来る気配はなく、亭主はおろし蕎麦をぶっかけで食べておく。夕刻はお袋様の米寿のお祝いで、仕事を終えて弟もやって来るから、その準備もしておかなければならない。女将と二人、早めに家に戻って、ひと眠りした亭主は車で魚屋に寿司を買いに出掛ける。珍しく弟が早めにやって来て、車を家に置きに帰った亭主は、お袋様が来たところで、天麩羅を揚げ始めるのです。串焼きを焼いて小鉢を出したら、皆で揃って乾杯なのでした。

9月4日 日曜日 再び暑さが戻って …

 今朝はちょっと遅く6時に蕎麦屋に出掛け、珈琲を沸かして目を覚ましたら、夕べの洗い物の片付けから始めました。盆や蕎麦皿がないだけでも作業はスムーズ。4人分の天麩羅皿と天つゆの小鉢、串焼きを乗せた皿など、洗いかごに伏せたままだったから、布巾で拭いて戸棚にしまう。寿司を載せた飯台も、昔はよく刺身を盛ってお客に出したものでしたが、久し振りに使ったので懐かしかった。今日の小鉢を盛り付けて、ゴミ袋を外の大きなゴミ箱に移す。

 7時近くに家に戻って朝食を終えたら、亭主は例によってひと眠り。今日は蕎麦を少しだけ打つ予定だったから、ゆっくりと眠れるかと思ったけれど、30分ほど眠って10分ほどウトウトしたら、起き出して洗面所で髭を剃る。着替えを済ませて一服したら、台所で洗い物をする女将に「行って来ま~す」「はい、行ってらっしゃい」ご近所の花壇に今年もランタナが咲いているのに気が付いた。花の時期が長いから彩りが鮮やかになって目を惹いたのか。

 かと思えばノウゼンカズラがまた咲き始めたお宅もある。この花も随分と花の時期が長いのです。夏の長かった今年の陽気が関係しているのか、一度、花が終わったかと思っていたら、また咲き始めているのでした。百日紅のまだ鮮やかに咲くお宅もある。お花の好きなご近所が多いから、季節の変わり目でも目を楽しませてくれるのです。自分の家もそうだけれど、最近は朝顔を育てるお宅が少なくなったような気がするのです。花にもブームがあるのかな。

 日曜日の朝だからみずき通りも車が少ない。ハナミズキがやっと紅葉してきたらしく、秋の訪れを感じさせるのです。それにしても今朝は朝から蒸し暑いと感じる。毎年、こんな風に秋がやって来るのだったかしら。去年の事はもう覚えていないから、確かめる術もないけれど、涼しくなったり暑さが戻ったりしながら、季節はどんどん変わっていくのでしょう。今日は暑くなればきっとお客が沢山いらっしゃるはずだと、気持ちを切り替えて蕎麦屋に向かう。

 昨日の蕎麦が随分と生舟に残っていたので、今朝は500g五人分だけ打ち足しておくことにしました。加水率をぴったり22%にして蕎麦粉を捏ね始めたら、今朝は柔らかすぎずにしっとりとした生地に仕上がる。蕎麦玉を寝かせいてる間に厨房に戻って大根や生姜をおろし、次の作業の準備に余念のない亭主。伸しても畳んでも今朝は好い感じで、包丁打ちの時に包丁の刃にくっつかないのが上手く打てている証拠なのです。果たして、どれだけ出てくれるだろうか。

 野菜サラダを何皿作ろうかと悩んだけれど、女将が「ないんですかと言われるのが嫌なのよねぇ」とまた言うものだから、いつもの休日の通り四皿盛り付けておくのでした。お客の少なかった昨日は一皿出ただけで、残りは夕方から開いたお袋様の米寿のお祝い会で出したのです。野菜が嫌いだと思っていた弟も、歳を取ったせいか綺麗に食べてくれたので助かった。毎日同じ野菜の顔を見ている亭主は、家に持って帰って食べるのはちょっと敬遠したいのです。

 今日は雲は出ていたけれど天気も好く、開店の時間から閉店の時間まで切れ目なくお客が入って、忙しかったのです。野菜サラダの付いたヘルシーランチセットも幾つか出たので嬉しい。ぶっかけ蕎麦、おろし蕎麦、とろろ蕎麦と多少の変化もあって、女将がいるので亭主は調理に専念できるから嬉しいのでした。「蕎麦が美味しいわ」「小鉢が美味しい」「また来ます」などとと言って帰られるお客が有り難いのでした。年配の方と若い方が半々ぐらいでした。

 「馬鹿にしてはいけない日曜日」の言葉通りに、コロナの時期だから以前の半分程度のお客だけれど、お客が10人を超えたのでまずまずの成果。洗い物も営業中は次から次へとお客が入るので、全く手つかずだったのに、何故か早めに終わった。亭主が疲れていなかったのが一番大きな理由かも知れない。2時半にはすべて片付けも終わって、冷蔵庫の中を確認して明日の支度を考える。蕎麦汁と小鉢は明朝補充しなければならないのでした。気持ちの好い午後 … 。

9月5日 月曜日 今日は暖かかったけれどお客が少なくて …

 当てにならないのが最近の天気予報で、晴れると言っても途中で午後からに変わることが多い。今朝も5時半に蕎麦屋に出掛けたのですが、今にも雨が降りそうな空模様。東側のミニ菜園を覗けば、三週間ほど前に草取りをしたばかりなのに、もう茫々に雑草が生えているではありませんか。こうなると人間と自然の闘いのようで、諦めしまうと大変なことになる。雨さえ降らなければ、明日の朝には再び挑戦する覚悟で蕎麦屋に入るのでした。

 まずは洗濯機の中の洗い物を干して、奥の座敷の真ん中に置いておくのです。湿気があると以前も畳に黴が生えたので、部屋の真ん中に置いておくのが正しい干し方のようです。厨房に戻って、昨日の洗い物を片付けて、蕎麦汁を蕎麦徳利に補充しておく。小鉢を盛り付けてみたら、八鉢しか出来なかったので、そんなにお客は来ないだろうとは思いながら、足りなかった場合の事を考えておく。浅漬けを少しだけ作っておくのが一番手っ取り早い。

 家に戻って女将に小鉢の話をすれば、彼女の作ったひじきの煮物を持って行くかと言われたけれど、今朝のおかずで食べたかったから、やはり浅漬けにすることに決めた。蕎麦屋の週の営業が終わる日には、先週仕入れた食材の家の分がなくなってくるから、今朝はベーコンエッグに豚汁。冷蔵庫の中は空っぽだった。野菜サラダは昨日の残り物で、これでやっと食べ終わる。一週間で食材が完全に消化されるのは、考えてみれば健全なのではないかと思う。

 食後はお茶も飲まずに書斎に入ってひと眠りする亭主。だいたい横になったら、蕎麦屋に行ったら次は何をすべきなのかと考える。考えてもしようのないことを反芻するから、何時の間にか夢見心地になるのです。30分ほど微睡んだら一度目が覚めて、それから手足を伸ばして10分ほどウトウトとする。若い頃のようにパッと起きられないのが、歳を取った証拠かな。洗面と着替えを済ませて居間で一服したら、今朝も「行って来ま~す」と家を出る。

 夏休みが終わって幼稚園が始まったから、送ってくる親御さんや園児に会うので、マスクをして歩き出す。蕎麦屋の向かいの畑のひまわりが、初めは陽の出る東を向いていたのに、このところこちらを向いているような気がするから不思議なのです。隣のひまわり畑はもう花が終わりらしく、花の部分が黒い種になっている。蕎麦打ち室の湿度は80%と随分と湿気があるのでした。加水率を42%弱にまで減らしたけれど、捏ね上げた生地はまだ柔らかい。

 包丁打ちをしても、昨日より包丁の刃にくっつく時が多いから、蕎麦粉は正直なのです。それでも切りべら26本で135gをキープして五人分の蕎麦を打ち終えるのでした。昨日の蕎麦と合わせて10食分を用意して、今日のお客に備えるのです。先週は確か月曜日に珍しく8人もお客がいらっして驚いたけれど、そんな嬉しい日はそう長くは続かないと、長い経験で知っている。それでも野菜サラダは平日の三皿を盛り付けておきました。果たして何皿出るのやら。

 天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆの鍋を火口に置いたら、沸いた大釜の湯をポットに入れて、11時10分前。蕎麦打ちが少なかった分だけ時間が早いのです。次亜塩素酸の入った薬剤でトイレや入り口のドアを消毒して、テーブルや椅子はアルコール除菌のスプレーを使って拭いて歩く。夏から秋にかけてはノロウィルスの感染が特に心配だから、お客の手で触る部分はしっかりと拭いておくのです。後はコロナのウィルス除去。ノロはアルコールでは死なないのです。

 開店と同時にノートパソコンを持って歩いて来た常連さんが、カウンターの隅に座ってまた仕事場を開設する。注文は前回と同じくビールとカレー蕎麦。パソコンと出した食事を置くスペースと二人分の席を使うけれど、この時期は空いているから亭主も黙っているのです。料理が出たらビールを飲んで食べるだけだから、待っている時間に仕事をするのだろうか。亭主と会話をするという意識がないのかも知れない。外は青空が広がってやっと秋晴れが復活した。