2022年7月初め

 午前6時に蕎麦屋に出掛けて、朝飯前のひと仕事。小鉢も蕎麦汁もあるから、カウンターに乾してある昨日の洗い物を片付け、乾いた洗濯物を畳む。あまり仕事はなかったのだけれど、なぜか朝のうちに店に一度来ないと落ち着かないのです。西側の小径に面した木槿の様子を見に行ったら、家と同じで紫の花が最初に開いている。枯れていく駐車場の紫陽花に替わって、「今度は私の番よ」とでも言いたげなのでした。先週、剪定をしたばかりなのに元気。

 7時前に家に戻って、居間のエアコンの風に当たっていたら、いつもより早く女将が朝食の支度を終えていました。亭主は女将が夕食に食べた残りのカレーを温め、自分でご飯を多めに盛り付けて食べ始める。夜のカレーと朝のカレーとどちらが身体に好いのか。二人ともそれなりに年を取ってきているから、あまり、胃に負担は掛けたくないのです。早く食べ終えた亭主は、女将がテレビを見ている間に、書斎に入ってひと眠りするのでした。

 朝ドラの終わる時間には目が覚めて、洗面と着替えを済ませ、出掛ける準備をする。まだ金曜日で営業二日目だというのに、随分と疲れた気がするのは暑さのせいだろうか。蕎麦屋に行く道すがら、ノウゼンカズラが見事に咲いているお宅の前を通って、今年も熱い夏がやって来たと実感する。今年は早くから梅雨が明けたから、この花も自分の番だと早くから花を咲かせていたのです。私たち人間も、様々な季節の中を、自分の番だと生き抜いてきたのだろうか。

 看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろしたら、蕎麦打ち室に入って蕎麦を打ち始める亭主。早朝からエアコンを入れたままだから、27℃、湿度45%と蕎麦を打つのにはちょうど好い。今朝は加水率を40%まで下げて、蕎麦粉を捏ねるのでした。やはり、この時期は40%なのだと、しっとりとした仕上がりに感心する。蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻り、大根をおろしして二つの大釜に水を張っておく。途中で、頼んでおいた減塩醤油が届く。

 宅配便の若者が「この店は子供連れでも大丈夫ですか?」と尋ねるものだから「子供用の椅子とかはないけれど、大丈夫ですよ」と応えれば、店置きのパンフレットを持って帰る。家族で一度来てみたいと思ってくれたなら、有り難い幸せなのです。今日の蕎麦を無事に打ち終え、厨房に戻って野菜サラダの具材を刻む。暖簾を出してしばらくしたら、最初のお客がご来店でした。リピーターの方でお婆さんは直ぐにぶっかけ蕎麦を注文をする。

 昼前に二組のお客が入って、「前の方にお料理をお出ししてからになります」と、天せいろを頼まれた親子らしい二人連れに言ってお茶をお出しする。外があまりにも暑いからか、皆さん店の中でゆっくりとなさるのでした。厨房の温度は32℃にまでなったから、亭主も首に巻くアイスノンを着けて熱中症予防を怠らない。本当に暑過ぎるのです。やっとお客が帰って1時になったから、蕎麦を茹でてぶっかけで昼飯を済ませてしまう。

 食べ終えて洗い物をすべて済ませたところで、駐車場に高級外車がエンジン音を唸らせて止まるのでした。二人とも髪を染めた若い女性と男性の二人連れ。二人とも、ぶっかけ蕎麦のご注文だったから、稚鮎の天麩羅をサービスで付けてお出しする。綠色の髪の男の子も見てくれとは違って礼儀正しいのでした。二人が帰ったのはもう2時近く。ひと休みをしながら、幟や暖簾をしまって、洗い物を済ませ、大釜を洗い、ゴミ箱のゴミを外に出したらもう3時過ぎ。

 ぶっかけ蕎麦と天せいろばかりで、三皿作った野菜サラダは出なかったから、全部家に持ち帰って女将に渡す。昨日のサラダもまだ残っている様子。二人の思いは同じで、夕食はまたもやお好み焼きなのです。今日は少し粉を硬く溶いて小さめに作ったら、「食べづらい」と女将は言う。柔らかな生地のお好み焼きが好きらしいのです。明日の土曜日は少し気温も下がると言うが、四皿作る野菜サラダが気にかかるのです。注文が多くて足らないこともあるのに …。

7月2日 土曜日 朝から暑い一日でした …

 午前6時の蕎麦屋には、眩しいほどの朝の光が差し込んでいる。夕べ浸けておいた昆布と干し椎茸の鍋に火を入れて、今週二回目の出汁取りをする亭主。こればかりは時間を短縮することの出来ない作業だから、ゆっくりと落ち着いた気分で臨むのです。厨房の右端にあるIHではポットに湯を沸かし、今日一日分のほうじ茶を沸かし、グリーンの陶器のグラスに入れて冷蔵庫で冷やしておきます。鍋の壁から泡が出て来たら、鰹節を入れて灰汁を取り始めます。

 一番出汁は沸騰する前に火を止めて、鰹節が沈むまで待つこと約5分間。黄金色の美しい出汁が取れれば成功です。これを2㍑別の鍋に取って、返しを加えて蕎麦汁を作ります。残った一番出汁は、だいたいいつも 500m~1000mなので、ボールに取って水で冷やしてから容器に入れて冷蔵庫で保存する。鰹節を入れる前に取り出してあった昆布と椎茸を鍋に戻したら、水を加えて二番出汁を取り始めるのです。こちらは少し沸騰させてから容器に移して冷やす。

 調理台が片付いたところで、まな板を敷いて、冷蔵庫から糠床を取り出し、夕べ漬けたお新香の出来を確かめる。キュウリやカブの大きさや塩の付け具合にもよるけれど、その日によって出来は違うのが玉に瑕なのです。だから、いつも漬けておく時間を気にしなければならない。色が映えるだろうと、この時期はラディッシュを加えているのがひと工夫ですが、キュウリの綠とカブの白とナスの黒に赤は多すぎると暑苦しいから、薄く切って一切れだけ添える。

 レンジの火を消したことを「消した、消した」と声に出して確認して、玄関の鍵を「閉めた」と目に焼き付けてから、車に乗って家に戻る。年を取ると忘れることが多いので、いちいち意識に残すように努力しているのです。厨房では女将がジャガイモを剥いていたから、亭主がスライサーで千切りを作ってやる。昔懐かしいハッシュドポテトは、ポテトサラダ同様に、ハムエッグには合うのです。食後はジョンウェインの映画を観て、ひと眠りをしなかった。

 朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入れば、今朝点けておいたエアコンが効いているからか、室温は27℃、湿度は37%と動きやすい。加水率をぴったり40%まで下げて、蕎麦粉を捏ねれば実に好い具合に仕上がるのでした。蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱切りと大根、生姜をおろすことを済ませ、再び蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つのです。水の加減がぴったりだと、ひと束毎に蕎麦が、綺麗に包丁で打った姿を見せてくれるから嬉しいのです。

 毎回、こんな蕎麦が打てれば言うことはないのだけれど、季節が替わる度に水加減が替わるから、そこが難しいところなのですね。今日は、昨日の残りの蕎麦と合わせて、14食の蕎麦を用意する。10時前にはもう厨房に戻り、野菜サラダの具材を刻み始める亭主。蕎麦打ちが上手くいくと、包丁の切れ味まで好いような気がして、ニンジンのジュリエンヌも今朝は細く仕上がりました。週末だからと四皿のサラダを盛り付けたけれど、果たしてどれだけ残るか。

 給料日直後の先週末とは違って、今日は土曜日にしては少ないお客様。湿度が高くて蒸し暑いのも原因しているのかも知れない。それでも、開店直後にいらっした男性客は、カウンターの隅に座るや否や、この暑いのに、いきなり鴨南蛮蕎麦のご注文なのでした。孫の世話で奥様が来られないと言う常連のご主人は、例によって、カレーうどんとデザートの水羊羹のご注文。その後、二組ほどお客が入って、1時を過ぎたので亭主はぶっかけ蕎麦を作って昼飯。

 その後もお客はいらっしたけれど、閉店間際までゆっくりとされて、他の洗い物はもう片付いていた。女将と二人で2時半には蕎麦屋を出て、青空の広がる暑すぎる昼の陽射しの中を、亭主一人がゆっくりと後から家に着く。居間の温度は33℃まで上がっていたから驚きです。直ぐにシャワーを浴びてひと休み。夕食には昨日今日で残った野菜サラダに肉を入れ、カレー炒めにして食べる。夜になって、女将が、プルメリアの花が開いたと知らせに来ました。

7月3日 日曜日 陽は陰り気味で蒸し暑く …

 今朝は特別に仕事はなかったけれど、6時になったら家を出て蕎麦屋に向かう。家の門の脇に咲いた白地に底の紅い木槿。茶道では「宗旦木槿」とも言われ、「日の丸」という名もあるようですが、あまりピンと来ない。その名前よりも花の雰囲気が清楚な感じで素敵なのです。家では紫や赤の木槿が最初に咲いて、その次ぎに咲くのがこの花。例年、真っ白な木槿は一番最後に咲くのですが、今年は暑いからか余り時間差がなかった。暑い夏には元気な花が好い。

 特に仕事がないとは言っても、蕎麦屋に来ればすることはある。今朝は小鉢を盛り付けて、蕎麦汁を蕎麦徳利に詰め、昨日の洗い物を片付けるのです。そして、乾いた洗濯物は畳んで、洗濯機の中の洗濯物を干しておく。たったこれだけのことだけれど、朝飯前のひと仕事にやっておくと後が楽なのです。昔と違って、一度にえいっとやってしまえないから、やはり年を取ったのでしょう。身体に無理をしないようにと、小分けに仕事をするのです。

 先日、剪定をしたばかりの蕎麦屋の西側の小径を覗けば、もう下草が生えている。こちらでも、木槿が紫色の花から咲いているのです。家で挿し木をしたものを、蕎麦屋に持って来て植えたから、同じ色の花が咲く。手前のモミジは、年末にあれだけ短く枝を落としたのに、夏になればご覧の通り、伸び放題なのです。夏場は伸びだ枝だけを、もう一度刈り込まなければいけない。東側と南側の菜園の草刈りもあるから、なかなか一度には片付かないのです。

 家に戻れば女将が台所で、朝食の支度をしてくれていた。ハムエッグは若い頃なら「手抜きの料理」と文句を言ったものだけれど、今ではちょうど好い食べ物になっている。添えた赤と黄色のアイコさんは、先週、農産物直売所で顔を合わせた農家の奥さんが「いつも沢山買ってもらうから」とお袋様と二人で一袋ずつ頂いたもの。切り干し大根の煮物は、蕎麦屋で作った小鉢の残り。蕪の葉の味噌汁も、何も無駄にしない女将のアレンジなのです。

 朝食を終えて書斎に入り、20分ほどひと眠りした亭主は、コーヒーを入れてもらって再び蕎麦に出掛ける。今朝は太陽も雲に隠れているのに蒸し暑い。近所のご主人に挨拶をすれば「朝から暑いね」と言ってすれ違うのです。みずき通りを渡ってバス通りに出れば、水まきをしていたご近所の奥さんが「今日も暑いわね」と声を掛けてくれた。気温は昨日よりも低いはずなのに、やはり湿度が高いのだろうか。エアコンを入れておいた店の中は快適なのでした。

 朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。エアコンが効いているから、室温は27℃、湿度は37%。昨日と全く同じ40%の加水だったけれど、今日の方が少し生地が柔らかいのです。初めは好い感じだと思っているのに、蕎麦玉を伸しているうちに段々と分かってくる。四つ出しをすると、尚更、柔らかさが目に見えて、四つの角を出すのになかなか長さが揃わないのです。明日は39%の加水率で打ってみようかしら。

 亭主は一人で営業するペースで野菜サラダの具材を刻むから、11時にはもう油も天つゆも用意が終わっている。早お昼を食べに帰った女将も、早く来ても仕事がないから、最近では、11時をだいぶ過ぎてから戻って来るようになったのです。それはきっと好いことなのでしょう。開店時刻の10分前には暖簾を出したけれど、昼を過ぎても今日はお客がなかなか来ない。日曜日は出足が遅いことが多いのです。やっとお客が来たと思えば続けて来るから忙しくなる。

 最後のお客が帰ったのは閉店時刻の2時を過ぎていたけれど、なんとか昨日よりはお客の数が増えているから嬉しい。暑さのせいか今日はさっぱりとせいろ蕎麦のご注文が多かった。値段は安いけれど、作る方も一番楽で早いのです。かくして四皿作った野菜サラダはすべて残って、亭主は夕食に冷やし中華を作り、サラダの一皿分を消化するのでした。日曜日は何もテレビが面白いものがない。やはり、こちらがお休みモードでないから波長が合わないのか。

7月4日 月曜日 珍しく混んだ月曜日で …

 朝の4時には目が覚めるけれど、まだ少し早すぎると、ぼうっとした頭で今朝の仕事のシュミレーション。やっと起き出して薬罐にお湯を沸かし、熱いコーヒーを入れて居間でひと休み。このまま床に入ればまた眠ってしまいそうなのです。気温が低いのか、エアコンは28℃に設定していてもまだ涼しく感じる。レースのカーテン越しに外を眺めれば、どうやら今朝は曇りらしい。涼しいうちに蕎麦屋に出掛ければ、東側のミニ菜園の草を少しは刈れるだろうか …。

 結局、家を出たのは5時半過ぎで、薄曇りの空には太陽が弱々しい光を放っているのです。車に乗ると意識を集中しなければならないから、やっと目が冴えてくる。蕎麦汁も徳利に13本もあるから、今日のお客には十分なくらい。小鉢も新しく盛り付けなくても足りるほどなのでした。空の大釜に水を張りながら、カウンターに乾しておいた昨日の洗い物を片付けて、女将の仕事を少しでも減らそうと、洗濯物を畳んで洗濯機の中の洗濯物を干しておく。

 結局、草刈りをするほどは時間が残らなくて、早めに家に戻って台所の女将の手伝いをするのでした。冷蔵庫に残っていたハムとトマトを使って、今朝は亭主が卵焼きを作る。昔、遠い南の島のホテルの朝食で、卵焼き専門の料理人がガス台の前に立って、客の一人一人に注文を聞き、その場で卵を焼いてくれた。味つけは塩とコショウだけ。刻んだトマトを入れた卵焼きが美味しかったのです。固まらずに焼きすぎないように、ふんわりと仕上げるのがコツ。

 亭主が手伝うと朝食は早く出来るから、食後は書斎に入ってゆっくりとひと眠り出来る。目覚めたら女将の朝ドラの終わる時間でした。洗面と着替えを済ませ、女将の入れてくれたお茶を飲んで一服したら、今週最後のお勤めと玄関を出る亭主。ところが外は雨が降っていたので、急遽、車を出して蕎麦屋に出掛ける。帰りに持ち帰る残り物が沢山あるだろうから、傘を差しながらでは持ちきれないのです。足の指を庇いながら歩かなくて済むから内心は嬉しい。

 今日は雨の予報ではなかったから、じきに止むだろうと幟も出さずに蕎麦打ちを始める亭主。早朝に来た時にエアコンを入れておいたから、蕎麦打ち室の温度は25℃、湿度は50%といつもより涼しいのです。外気温が低いからだろうけれど、湿度は随分と高そうなのでした。それでも、加水率を39%にして蕎麦粉を捏ねる。最初は硬くて大丈夫かなと思ったけれど、腕に力を入れて体重を掛けているうちに、生地が馴染んでちょうど好い具合に仕上がるのでした。

 やはり、力を入れないと生地は上手く仕上がらないものなのか。蕎麦玉にして寝かせている間に、厨房に戻って大根をおろし、次の仕事の準備をしておく。上手く仕上がった生地は伸してもかなり好い具合。包丁切りも軽やかに、今朝の蕎麦を打ち終えて、昨日の残りの蕎麦と合わせて12食の蕎麦を用意する。平日の月曜日に、こんなにお客が来るはずもないないけれど、週末もお蕎麦がなくなって帰って頂いたお客もいたから、余分に用意したのです。

 いつもと同じ時間に始めているのに、今日は野菜サラダを刻み終えるのが随分と早かった。お蔭で11時前にはもう支度が調って、亭主はカウンターの椅子に座ってひと休み。眠ってしまいそうで怖かったので、時々、立ち上がって身体を動かすほど。最初のお客は昼前にいらっして、ヘルシーランチセットのご注文。サラダを食べてもらう間に、蕎麦豆腐を用意して、天麩羅を揚げる。次のお客も女性でヘルシーランチセットのご注文。これで野菜サラダは終わり。

 平日なのに、次の男性客の二人連れもヘルシーランチセットをご所望でしたが、もうなくなったと言えば、天せいろに替えてくださった。カウンターの女性がやっと帰ったと思ったら、今度はいつもランチセットをたのまれる常連さんがやって来たから、「ご免なさい」と天せいろに替えてもらった。海老は駄目なんですとおっしゃるので、いつも月曜日に来る辛味大根の常連さんにと、用意してあったキスと稚鮎を揚げてお出ししたのです。

 ラストオーダーの時間も過ぎて、今日はこれで終わりかと思ったら、駐車場に車が入って「まだ大丈夫ですか」とご主人が玄関を開ける。「天麩羅の具材がなくなったので、それ以外ならば」と言えば、せいろ蕎麦を二つのご注文。話を聞くと、この間は12時半に来たらもう蕎麦が売り切れだったとか。週末は16食を用意しても、そんなこともあるのです。朝早くから蕎麦を打つから、もうそれ以上は打てないので申し訳ない。これで目一杯なのです。
 洗い物を片付けていたら、県のコロナ対策調査の係員が来て、いつものようにあれこれとチェック。最後の洗い物を済ませ、油の処理や大釜の掃除、ゴミ箱の清掃、洗濯を済ませ、3時半にやっと家に戻って女将に今日の報告をする。昨日と同じ数のお客が来たからと驚いていたのでした。ひと眠りして、夕食の食卓につけば、今日は冷蔵庫の残り物を総動員して、ジャガイモとズッキーニのグラタンと野菜サラダの残りで野菜炒め。食後もまたひと眠りする亭主。

7月5日 火曜日 台風と雲の行くへは …

 今日は終日曇りという予報だったから、朝早くに煙草を買いに出て、そのままみずき通りを登って蕎麦屋に向かう。明日は朝から雨だと言うので、涼しいうちに少し、東側のミニ菜園の草取りをしようと考えたのです。ところがまだ6時だから、ちょっと早すぎる。庭の接するお隣に申し訳ないと、蕎麦屋の中の片付け仕事を先に済ませるのです。洗ってよく乾さなければならない盆や蕎麦皿、蕎麦徳利は一晩乾かしてから戸棚の中にしまうことにしている。

 乾してある洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物を乾してやっと6時半。軍手をはめて90㍑のビニール袋を持ち、いよいよ草取りを開始すれば、20分ほどで 5mを進んだきり。ゴミ袋はまだ半分なので、朝食の後でまた続けるしかない。やはり以前とは違って、一気には終わらせることが出来ないのです。突き当たりの月桂樹の木まで行けば、脚立を立てて屋根の高さまで伸びた枝を剪定する予定。明日は雨だと言うから、南側の菜園まで進むのはいつになるのか。

 家に戻れば、女将が台所に立って朝食の準備をしている。後は、亭主が残っているアイコさんを使って、昨日のように卵焼きを作ってくれるのを待っていたらしい。中身が崩れない堅いトマトがこの卵焼きにはちょうど好いらしく、なんとかメインディッシュを仕上げる亭主。今日は草取りの続きがあったから、ひと眠りは出来ないのです。いつもの朝よりもなぜか忙しい感じなのでした。曇りだと言われたのに、外は青空が覗いて暑くなりそうな陽気なのでした。

 和室に着替えに行ったついでに、プルメリアの花の様子を見ればだいぶ咲き始めている。表に出せばと女将に言うけれど、直ぐに花が終わってしまうのが惜しいらしい。朝ドラの始まる時間に蕎麦屋に出掛けて、ゴミ袋が一杯になるまで草取りをする。今日は業者が一週間の店のゴミを回収に来る日なのです。9時前に月桂樹まであと少しというところで仕事を終わらせ、お袋様に電話をして仕入れに出掛けるのでした。お隣のご夫婦はとっくに仕事に出ていた。

 車に乗り込んだお袋様は、「予報では曇りだと言ったのに朝から晴れて暑いねぇ」と言って、この間、亭主が買ってやった首に巻くアイスノンを使っていると喜んでいた。元来、汗かきの彼女は、動くともう暑くなるらしいのです。とても今年米寿を迎える老人とは思えない元気さで、亭主も嬉しいのです。四回目の新型コロナのワクチンの接種申し込みも、電話を掛けて自分で済ませたと言っていたから、安心なのでした。亭主と女将も明日には申し込まないと。

 農産物直売所では、さすがに暑いと見えて、昨日入るはずの生椎茸は冷蔵庫に入っていた。大きなキュウリが安く出ているけれど、漬け物には持って来いの大きさなのです。夏の野菜もハウスで暖房を使わなくなって、随分と安くなっていた。隣町のスーパーに向かってまずは家の女将に果物の桃や巨峰を買い、用意したメモにある食材をすべて揃えたつもりが、書いていなかった冷凍うどんを買い忘れてしまった。冷やし中華の麺も違うメーカーのものを買った。

 家に帰って気づいたのですが、袋が同じような柄で年寄りには分かりづらい。マルちゃんの冷やし中華は、麺も汁も今ひとつ口に合わないのです。麺はコシのあり、汁もコクのあるシマダヤと決めているので、今日は女将に言い訳をして昼の冷やし中華を作る亭主。そうしたら女将も、牛乳を古い値引きの物を買ってしまったと言って、「年を取るとパッと見て識別できる能力が落ちるのね」と二人で笑うのでした。昼は冷やし中華と亭主の作った焼売を食べる。

7月6日 水曜日 やはり大気は不安定で …

 今朝も5時前にはもう起き出して、居間の椅子に座ったまま煙草をくわえて、ぼうっとしていたのです。夕べの予報どおり、霧雨が降っていたので蕎麦屋で草取りも出来ない。くわえた煙草には30分たっても火を点けることはない亭主。休みなのだから、もう一度、眠った方が好かったのかも知れないが、蕎麦屋に出掛けて、少しでも仕込みをしておかなければ、今日一日がまた忙しくなってしまうのです。車に乗って煙草を買いに出ながら、蕎麦屋へと向かう。

 確か昨日の朝は二箱も煙草を買って帰ったのに … 。雨は上がったけれど、西の空は真っ黒な雨雲なのでした。郵便受けから新聞を取り出して、昨日の市内のコロナ感染者の数を確認する。このところまた増えているから気になるのです。昨日使った鍋やフライパンを片付け、厨房の椅子に座って冷やしたほうじ茶を飲みながら、iPadで今日の天気や昨日書いたブログを見る。取りあえず蕎麦豆腐を仕込んでおかなければと、重い腰を上げて作業を始めるのでした。

 7時前になったので、火の元を確認して家に戻る。休みだからか女将もゆっくりで、ちょうど塩鮭をグリルに入れたところ。居間の椅子に座ってまた亭主はじっとしている。身体は今朝からの惰性で起きているのに、頭の中はお休み状態なのです。朝が早すぎて集中力が続かないのだろうか。朝食の食卓について、自分が買ってきた美味そうな塩鮭をおかずに飯を食べたら、お茶をもらって直ぐに書斎で横になる。ちょっと夢を見て微睡んだら頭はすっきりした。

 いつもの時間に今朝は車で家を出て蕎麦屋に向かう。まずはデザートの水羊羹を仕込んで、次ぎにいよいよ夏の野菜の揚げ浸しを作るのです。向かいの畑の親父様にもらったズッキーニが、あまりにも大きかったので、ナスやインゲン、パプリカ、シメジなどを入れていくうちに、随分と分量が増えてしまう。二回に分けて素揚げして、新しく汁も作って、揚げた野菜をどんどん鍋に入れていく。そのまま蓋をして冷蔵庫で冷やしておくのです。

 家に戻って、女将のスポーツクラブの予約を取る準備をしたら、四回目の新型コロナのワクチン接種の予約申し込みを電話で済ませる。以前よりもずっと繋がり易くなって、三回目の接種のちょうど五ヶ月後の夕方が上手く空いていた。11時過ぎに台所に入って、亭主は肉韮炒めとトマトとオクラとナメコの酢の物を作る。その間に女将が残った野菜で豚汁を作った。家にいても調理をする間は、妙に集中しているから不思議です。女将の席を取ったらひと休み。

 食後はまた一眠りで、午後は1時間ほどゆっくりと眠った。今日は涼しいからエアコンも入れていない。その間に、女将はスポーツクラブに出掛け、亭主は3時前に整形外科に向かう。今日は薬を一種類だけもらって、来月は血液検査をしますと言われた。帰り道、酒と昨日買い残した食材を買って一度家に戻る。お新香を漬けるにはまだ時間が早かったのです。4時になったら、三度、蕎麦屋に出掛け、天麩羅の具材を切り分け、お新香を漬けて家に帰る。

 沢山作った揚げ浸しを試食用に持って帰ったら、早速、夕食の食卓に並ぶ。タンパク質は先ほど買って帰ったトンカツ。キャベツは亭主が刻み、女将の作ったポテトサラダの脇に盛り付けられていました。今夜の亭主の仕事は、焼売を包むだけ。また雨が降りだして道路が濡れている。今日はほんの少しだけ陽も差して、青空も見えたけれど、曇り時々雨という天気なのでした。明日は曇りだと言うけれど、あまり当てにはならない。蕎麦をどれだけ打とうか。