2022年6月下旬

6月20日 月曜日 今までにない蒸し暑さで …

 今朝も6時になったら車で蕎麦屋に出掛けました。駐車場の紫陽花も、いよいよブルーの花が目立ってきた。昨日の片付けと今日の仕込みをしていたら、犬の散歩で蕎麦屋の前を通る近所の農家の親父様が、窓越しに手を振って挨拶をするから、厨房の亭主も手を振って応えた。今朝は昨日よりも幾分涼しいのでしたが、相変わらずの蒸し暑さで、薄い長袖のジャージを着ていったけれど、店の中ではもう脱いでしまう。室温27℃だから半袖半ズボン姿。

 予備の蕎麦汁を徳利に詰めて、10人分の蕎麦汁は確保できたけれど、小鉢は8人分だけ盛り付けておく。暑くなるとは言うけれど、蕎麦は打っても9人分だから、いい加減な用意なのです。珈琲を入れてやっと目が覚めてくる。やはり、週末の疲れは抜けていない。昨日も4,000円もした蕎麦徳利を割ってしまったし、今日は天ぷら粉の容器を落として、粉をばら撒いてしまった。女将も昨日、洗濯物を入れてスイッチを入れて、洗濯機の蓋を閉めずに帰った様子。

 7時過ぎに家に帰れば、台所で女将が何やら苦戦しているから、手伝いに行く。何十年振りかでハッシュドポテトを作ろうして、新しいカッターの使い方が解らなかったらしいのです。子供たちのいた昔は何人分も焼いて出したのにと悔しそう。亭主は食事の支度が出来るまで、居間の椅子に座って今日の段取りを考えている。右足の指は痛くはなくなったけれど、軟骨が潰れているから、まだ左足の1.5倍の太さ。いつになったら靴が履けるようになるのか。

 食後はひと眠りをせずに洗面と着替えを済ませ、女将の朝ドラの終わる時間には玄関を出る。玄関前の鉢植えには、彼女が昔、娘から母の日に贈ってもらったカーネーションが今年も花を咲かせていました。今日は帰りに持ち帰る荷物が多そうだったので、車で蕎麦屋に出掛け、駐車場の端に停めておく。平日の月曜日だから、お客はまずそれほど来ないのです。一度に沢山のお客が来ても、亭主一人では対応できないから、車は二台も停められれば十分。

 駐車場の紫陽花もだいぶ花が開いてきたらしく、遠目で見てもなかなかの眺め。朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つのでした。室温は27℃、湿度は67%だったのだけれど、昨日までの加水率で今日も蕎麦粉を捏ね始める。だいぶ気温が高いから、もしかしてお客の数が多いといけないと、蕎麦汁の数だけは蕎麦を用意しておこうと、850g9人分の蕎麦を打つことにしたのです。太陽がぼうっと雲の向こうに見える天気でした。 

 蕎麦を打ち終えたら、厨房に戻って野菜サラダの具材を刻む。今週最後の野菜サラダだからと、キャベツやニンジンを刻むのにも集中して、上手く出来たかと思ったけれど、今日はサラダは一つも出なかったのです。11時過ぎに車が一台入って来たけれど、開店の時刻を見たのか、また戻っていった。大釜のお湯は沸いていないし、ちょっと早すぎるのです。開店時刻の10分前には、暖簾を出したものの、昼前にはお客は来なかったのです。

 12時半になる頃に、隣町の常連さんがやって来て、この間食べた稚鮎とキスの天麩羅に辛味大根をご所望だったから、下ろしたての油で揚げてお出しする。続けてご夫婦でいらっしたお二人は、せいろ蕎麦の大盛りとぶっかけ蕎麦のご注文。1時を過ぎた頃に、もう一台車が現れたけれど、亭主の車があるから入れない。「車を停める場所は他にないのですか?」と言われたけれど、「ご免なさい」と断るばかり。常連さんが「いま僕が出ますから」と言ってくれた。

 前のお客を追い出す形で、いらっしたのは女性の二人連れ。天せいろを二つ頼まれて、一人は海老は他の物に替えて欲しいとおっしゃるから、稚鮎とキスをお出しする。他のお客も皆帰られて、残った二人は蕎麦が伸びてしまうほどゆっくりと、遅い昼を召し上がるのでした。亭主は洗い物をすべて片付けて、厨房の椅子に座って待つけれど、ラストオーダーの時間になってもまだ話は終わらない様子。お蔭で家に帰るのが3時過ぎになって女将が心配していた。

6月21日 火曜日 夏至の今日は疲れていても早朝から蕎麦屋に …

 夕べも10時前にはもう瞼が重くなって床に入ったから、今朝はまた4時過ぎには目が覚めてしまうのでした。ぐっすりと眠ったはずなのに、また一時間ほど床の中でウトウトしている。5時半になったらもう眠るのを諦めて、車を出して煙草を買いにコンビニに行くのです。そのまま蕎麦屋に出掛け、珈琲を入れて一服する。午前6時の太陽は森の向こうにぼうっと光っているだけで、まるで亭主の寝起きの状態のようなのでした。梅雨だからか青空は見えない。

 先週は40人近いお客が来たから、それなりに身体が疲れているのだろうと思う。特に土日で続けて混んだのが応えたのでしょう。回復するのに時間がかかるのは、やはり年齢なのかも知れない。女将も疲れているのだろうと思って、朝食の支度を手伝う亭主。ナスとピーマンの肉炒めや、昨日揚げて帰った掻き揚げをグリルで焼いて食卓に載せる。新玉葱と人参、三ツ葉のかき揚げが美味しいと珍しく女将が言うのでした。油もおろしたばかりだから尚更かも。

 今朝は時間的には随分長く眠ったので、食後のひと眠りもせずに洗面と着替えを済ませたのでしたが、お袋様を迎えに行くにはまだ時間が早すぎる。女将は洗濯物を干して次を洗うのに忙しい。仕方がないから、テレビで朝ドラの後の番組を見ていたら、梅雨時の冷凍保存の話をやっていた。我が家で冷凍保存をする食材は、亭主の作った餃子や焼売だけだから、あまり関係がなかったけれど、食パンをアルミホイルで包んで冷凍すると好いと初めて知った。

 車で蕎麦屋に出掛ければ、車外温度は朝から29℃になっていたから、店のエアコンを入れてお袋様を迎えに行くのでした。「暑くてよく眠れなかった」と言う彼女を乗せて、農産物直売所に行けば、今日はインゲンが沢山出ていた。真竹の筍も出ていたから、二本も買ってきた。トマトや椎茸、アスパラ、ナス、ピーマン、キャベツなど、新鮮なものを仕入れて、隣町のスーパーに向かう。今日はアーリーレッドだけが手に入らないまま店に戻るのです。

 仕入れた野菜をすべて冷蔵庫に収納したら、今日は11時半に女将のスポーツクラブの予約があるので、少し早かったけれど家に戻る亭主。女将は出掛けているから、家に買った食材を冷蔵庫にしまって、書斎のパソコンで仕入れの入力をしていた。昼は昨日残った野菜サラダを全部使って、お好み焼きにする事になっていたから、女将が帰って二人で昼食の準備をする。フライパンを十分に熱して油を馴染ませれば、今日は二つとも上手く出来たのです。

 スポーツクラブ予約を終えたら、いつものように横になって少し休もうと思ったけれど、エアコンを入れて部屋を涼しくしても、何故か今日は横になっても眠れないのでした。かといって、頭が冴えているわけでもなく、ぼうっとした状態で涼んでいたら、何時の間にか眠りに就いたのです。目覚めれば時計は2時を回っていた。歯医者に定期検診に行くと言っていた女将は、稽古場で条幅を書いていました。西の町のホームセンターに行くと言って玄関を出る。

 玄関脇の団扇サボテンの花が、びっしりと咲いて目を惹くのでした。植木鉢のカーネーションは、昨日よりも花の数が増えている。陽は出なくてもこの暑さだから、植物は一斉に花を咲かせているのです。久し振りに備品の仕入れに出掛けて、消毒液や台所洗剤、割り箸やラップやゴミ袋など、重たい荷物を担いで蕎麦屋まで帰る。午後の仕込みは、朝のうちに干し椎茸と昆布を浸けておいた5㍑の鍋を沸かし、まずは一番出汁を取って蕎麦汁を3㍑作るのです。

 残った一番出汁は瓶に詰めて、二番出汁をまた5㍑取るのです。水で冷やした蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めて、洗い物を終えたところで時計は4時半を回っていたのでした。後は明日と諦めて家に帰る。夕食は、質素にすべて蕎麦屋の残り物。鳥の手羽元を買って、店で残った大根と煮たのが、女将の工夫なのでした。これに厚揚げを焼いて半分ずつ食べただけなのに、風呂に入る前に体重計に乗ったらいつもより1㎏も体重が増えているから不思議なのでした。

 女将に「昨日の夜はざるラーメンと餃子を食べたでしょ」と言われて納得する亭主。風呂に入る前だったのに、寝るのが早かったからか、しっかりと身体に蓄積されていたのですね。酒も煙草も食べるのも、生活習慣だから癖になる。身体を動かせない今は、食べるのを我慢しなければ、体重も増えるのが当たり前なのでしょう。間食をする習慣はないから、なかなか食べないではいられないのが辛いところ。あまりくよくよしない方が好いのかも知れないな。

6月22日 水曜日 今日も蒸し暑い一日で … 

 夕べは10時半には床に就き、今朝は6時前まで眠っていた亭主。定休日の二日目は、いろいろ仕込みがあるけれど、朝飯前から蕎麦屋に出掛けなくてもいいと、朝食の時間までゆっくりとワールドニュースを見ていました。温暖化の影響なのか各地で水害が多発しているらしい。外は朝から霧が出て、今日は曇りの予報だけれど、もしかして晴れるのだろうかと、少しは期待するのです。朝食の用意が出来て、女将が食堂で呼んでいる。

 蒸し暑い日が続くから、亭主のためにモズクを買って来てくれたらしい。針生姜があればもっと好かったが、作ってもらっておきながらあまり贅沢も言えない。塩鯖も最近は骨を取ってあるのが売られるから食べやすいのです。今朝も食後のひと眠りをせずにいつもの時間に蕎麦屋に出掛ける。駐車場の紫陽花は今が盛りと綺麗な花をいっぱいに咲かせていました。まずはお客の車の妨げになるツツジの枝を切りそろえておく。これなら少し奥まで車を入れられる。

 90㍑のビニール袋に一杯の枝を詰めたら、西側のゴミ置き場に持って行くけれど、来週の火曜日までは業者は取りに来ないのです。厨房に入って、まずは蕎麦豆腐をしこんでおきます。次ぎに昨日買ってきた真竹のタケノコの皮を剥いて、キンピラを作る準備をするのです。1cm弱の輪切りにして、灰汁を取るために重曹を入れて茹でてみた。重曹を入れすぎたのか、直ぐに泡が溢れて大変。水で洗って半月状に切ったら、蒟蒻とニンジンを切って準備する。

 フライパンに胡麻油を引いて、唐辛子を輪切りにして色が変わるまで炒めたら、用意した具材を入れて火が通るまで炒める。次ぎに二番出汁を入れてタケノコに十分に火が通るまで茹でたら、出汁醤油と砂糖で味付けをするのです。最後に白胡麻を振りかけて完成です。真竹は茹でた孟宗竹のタケノコよりも硬いから、歯ごたえのある分、キンピラには向いているのかも知れません。牛蒡ほど硬くはないので、旬の料理としてはいいだろうと思うのです。

 ツツジの剪定をしたから、かなり時間が取られて、午前中の仕込みはこれで終わり。11時半に女将のスポーツクラブの予約があるから、昼食を作って食べ終わるためには家に戻らなければならないのでした。女将がうどんを茹でるために、大きな鍋に湯を沸かしてくれた。亭主は冷蔵庫の野菜籠から先週店で残ったキャベツを取り出して、20cmほどのキャベツの芯を取り除いて適当な大きさに切る。ニンジン、ピーマン、長葱をまずは油を引いたフライパンで炒める。

 蓋をして蒸すような感じで野菜が小さくなったら、肉を入れて炒め直す。茹でて水で洗ったうどんを入れ、フライパンにくっつかないように鍋を振りながら、しばらく炒めて出来上がり。青海苔と鰹節に紅ショウガを載せて食べるのでした。塩とコショウと少々の醤油で味付けを下のだけれど、炒めた野菜の甘みでとても美味しい。昨日の昼に食べたお好み焼きと、材料がすべて同じだねと言って女将と笑うのでした。店の残り物を消化するのも同じなのでした。

 外が随分明るくなってきたからと、二階へ通じる階段の踊り場の窓から幼稚園の畑を眺めれば、なんと久し振りに青空が覗いているのでした。食後のひと眠りと思ったけれど、最近は横になってもなかなか寝付けない。夜の睡眠が足りているからなのか、身体の疲れが取れてきたのか。クーラーの壊れている居間で、テレビを観ていても蒸し暑くて堪らないから、書斎に入ってエアコンを効かせる。今度は横になれば何時の間にか眠りに落ちている。

 女将は暑い中をスポーツクラブに歩いて出掛け、亭主は3時過ぎまで眠っていた。女将の帰る音で目が覚めて、夕刻に業者が荷物を届けに来るからと蕎麦屋に出掛ける。午後の仕込みは、小鉢の二つ目、切り干し大根の煮物を仕込んで、明日の天麩羅の具材を切り分けるのです。4時過ぎに業者の若者が天ぷら粉と海老を届けに来たから、珈琲を入れて代金を払う。7月からは、天ぷら粉も油も海老も値上げになると言う。宅急便の送料も上がるのだそうな。

6月23日 木曜日 平日なのにお蕎麦は売り切れで …

 今朝は5時半になったら家を出で車で蕎麦屋に向かうのでした。向かいの畑では、鳩の群れが耕したばかりの畑の中を餌を啄んでいる。蕎麦屋に入って厨房にい行けば、今朝の仕事が頭に浮かぶ。まずは夕べ漬けておいたお新香を取り出して、切り分けたら小鉢に盛る。そして、タケノコのキンピラと切り干し大根の煮物も盛っておくのです。ラップを掛けて冷蔵庫の中に入れたら、次の仕事を始める前に、お茶を飲んで一服する。

 デザートを作っておいた方が好いだろうと考えて、水羊羹か抹茶小豆かと悩んだけれど、煮た小豆を解凍してあったから、今日使ってしまった方が好い。小さな鍋に抹茶と粉寒天を入れて、水と氷糖蜜で溶いたら、火にかけて沸騰するまで待つのです。これを荒熱を取ってから耐熱ガラスの器に注いで、少し固まってくるのを待つのですが、早朝の時間では間に合わないと、急速冷凍室に入れて、表面が少し硬くなったら小豆を載せる。白餡も少し浮かべてみた。

 後から気づいたのだけれど、寒天だけでは硬くなり過ぎるから、いつもはタピオカ粉を同量入れていたのです。それでぷるぷるの食感が出るのですが、もう遅い。昨日の洗い物を片付け、洗濯物を畳んで7時前には家に戻るのです。女将が珍しく早くから台所に立って、今朝の食事の支度をしてくれていた。今日は先週に蕎麦屋で残った三ツ葉を使って卵綴じ。大根の残りは手羽元と煮込んである。試食用に持ち帰ったタケノコのキンピラも出してくれた。

 朝食を終えたら、いつものように書斎で横になってひと眠りの亭主。ぴったり朝ドラの終わる時間に目が覚めて、洗面と着替えを済ませたら、珈琲を一杯飲んで歩いて蕎麦屋に出掛けるのです。玄関前の紫陽花は、いよいよブルーに染まってきた。今日いらっした女性たちのお客も、しみじみと眺めて「変わった品種で綺麗ですね」と言っていた。「家の紫陽花は短く切ったら今年は葉花が咲かないのよ」とおっしゃるので、「花芽の上から切らないとその年は咲かないのですよ」と亭主が知った風な事を言う。

 朝の仕事を終えたら、直ぐに蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。室温は25℃、湿度は78%だったけれど、最近、成功している41%強の加水で蕎麦粉を捏ね始める。しっとりとした生地に仕上がって、心持ち柔らかい気もしたけれど誤差範囲。捏ねている最中に蕎麦粉が届いたから、カウンターの上に置いてもらうのでした。今は受け取りの印鑑が要らないから楽なのです。菊練りを終えて蕎麦玉を作ったら、ビニール袋で包んで寝かせておくのです。

 厨房に戻って、ひと休みしたいところだけれど、最近はこの間に大根と生姜をおろして、薬味の葱を刻んでおく。休憩をすると仕事の流れが一旦止まってしまうので、再び始めるまでに10分はかかってしまうのです。そして、蕎麦打ち室に戻って蕎麦玉を伸して畳んで包丁打ち。思ったよりも柔らかい生地だったから、打ち粉を振って無事に包丁打ちを終える。切りべら26本で135g強。生舟に八人分の蕎麦の束を並べて蕎麦打ちを終える。8人来ることはまずない。

 大釜の湯も早めに火を点けておいた。野菜サラダを刻んで盛り付けたらまだ11時前だったので、休憩をせずに店の掃除を始めて、テーブルをアルコールで拭いていく。窓は少しだけ開けてエアコンを入れて湿気を取るのでした。ちょうど11時10分になる頃に、駐車場に車が入って、女性二人のお客様。「やっているのですか?」と言われて「どうそ、すぐお湯も沸きますから座ってお待ち下さい。今お茶を入れますね」と、前回の失敗は繰り返さない亭主。

 今日は最初のお客が早かったから、間が空いてちょうど好かったのです。小母さんたちが多かったこともあって、ランチセットも直ぐになくなった。話が長くても、次のお客が来るまでに時間があったから、洗い物も終えることが出来たのです。最後のお客は三人連れの女性陣。ランチセットを頼もうとしたけれど「ご免なさい、今日はもう売りきれで」と言えば天せいろに変更。「あら、またお客よ」と言うから、窓の外を見れば歩いて男性客がやって来た。

 若いカップルが大盛りを頼まれたので、蕎麦はなくなって売り切れの看板を出しておいたのです。申し訳ないから「ご免なさい。蕎麦がなくなったのですよ」と玄関に出て言えば、「そうですか。それは大したものだ」と言って帰られた。1時半には女将のスポーツクラブの予約をしなければならないし、蕎麦湯を出し終えてちょうど2分前。一番好い席が取れてホッとする亭主。じきに女将がやって来て、片付け物を手伝ってくれるのでした。

6月24日 金曜日 南風の強いとても暑い日でした …

 今までになく暑い朝でした。朝食を終えて今朝は珈琲を女将が入れてくれたので、一服して蕎麦屋に出掛けようと玄関を出る。暖かい朝だからか、団扇サボテンも満開で目の覚めるような輝きです。母の日のカーネーションも、見違えるほどに花を開いているのでした。「いつもの年より元気が好いのよ」とウッドデッキに洗濯物を干しに出た女将が嬉しそうに言う。「行って来ま~す」「はい、行ってらっしゃい」梅雨の中休みなのか、暑さはもう真夏のようだ。

 右足を庇(かば)うようにゆっくりと歩いて、みずき通りを渡れば、久し振りに広がる青空が心地よいのです。暑さに慣れていないだけで、夏本番はまだまだこれからと、坂道を登ってバス通りに出る。わずか 300m の距離を何分かかって歩いているのだろうか。8時半だというのに、強い陽射しがまともに当たるものだから、途中で立ち止まって向かいの畑を眺める。角を曲がって8軒目がもう蕎麦屋なのに、やけに遠く感じるのです。

 やっと愛しの蕎麦屋に着いてみれば、駐車場の木々が亭主を迎えてくれる。小さかった紫陽花も、今年は剪定が上手くいったのか、随分と背丈が伸びて、美央柳が咲いているうちに満開になってきている。ヤマボウシやモミジの新芽も美しいのです。幟を出してチェーンポールを降ろし、看板を出して準備中の案内を掲げておく。店の中を少しでも涼しくしておこうと、窓は閉めたままエアコンを入れて、蕎麦打ち室の扉を開けておく。

 朝の冷気がまだ残っているのか、厨房は25℃とまだ耐えられる暑さ。昨日はお新香が全部出たから、夕べのうちに漬けに来た糠床を取り出して、お新香を切り分けて小鉢に盛り付ける。塩も付けずに付けたのに塩味が強いのは、糠床がかなり塩辛くなっている証拠。野菜の水が出てかなり柔らかくなっていたので、煎り糠を足して塩味を薄め、味噌の硬さにまで戻しておくのです。毎日塩を付けて野菜を漬けたら、塩味が濃くなるのが道理。気をつけなければ。

 次ぎに水羊羹を仕込んでおかないと、開店までに冷やして固められない。寒天を水と氷糖蜜で溶き、黒餡を入れて火にかけたら、荒熱を取ってから豊缶に流し込むのですが、これが少し固まらないと冷蔵庫まで運べないのです。その間に蕎麦打ちを済ませてしまおうと、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。昨日は蕎麦が売りきれになって、最後にいらっした男性を帰してしまった反省から、今日は 850g 9人分を打つことに決めていました。

 昨日は少し柔らかめだったので、今日は41%の加水で挑むのでした。水が少ないのと蕎麦粉の量が多いのとで、かなり力の要る作業になりました。やっと捏ね上げて菊練りまでこぎ着け、蕎麦玉を作ったら、寝かせている間に厨房に戻って葱切りと大根おろしを済ませてしまう。四つ出しもいつもより大きくなるから、なかなか伸すのも大変。1kgなら巻き棒に巻いて伸すのだけれど、850g なら伸し棒一本で何とか伸せる。八つに畳んで9人分の蕎麦が取れた。

 厨房に戻って野菜サラダの具材を刻むのですが、大釜は早めに火を点けておく。お客が開店時刻よりも早くいらっしても、対応できるようにと、これも先日の反省を踏まえたもの。5分前には暖簾を出したけれど、今日は1時間経ってもお客は来なかった。暑すぎる日もお客が来ないと、女将が以前に言っていたのを思い出す。12時半を過ぎた頃に、若い三人連れがいらっして、ヘルシーランチセットととろろ蕎麦の大盛り二つとハラミの串焼きのご注文でした。

 天麩羅を揚げないので世話はないのでしたが、蕎麦は四束は一辺に茹でられないので、ランチセットのサラダと蕎麦豆腐を出して、とろろを擦って先にとろろ蕎麦の大盛り二つを出す。会計をした男性が、近くなのでまた来ますと言って帰られた。三人だと、盆や蕎麦皿、蕎麦猪口、薬味皿、小鉢など洗い物が多いので洗い物と片付けに時間がかかるのです。やっと洗い物が終わった頃に、駐車場に車が入って、また三人連れの今度は年配のお客がいらっしゃった。

6月25日 土曜日 暑すぎる一日、お蕎麦は完売で…

 昨日は昼の暑さに参ったのか、夜も9時半にはもう眠くて堪らなかった。何か食べてから寝たかったけれど、眠気の方が勝って横になったら直ぐに眠りに就いたのです。夜中に一度目が覚めたけれどやはり眠いから、時計を見ただけでまた寝るのでした。朝はトンカツを食べる夢を見て6時半に目が覚める。女将が朝食のおかずを作る間に、自分で炊飯器からご飯を多めに盛って、食べ始めるのでした。食堂と居間の窓を明け放ち、吹き抜ける風は心地よい。

 梅雨だというのに、二日間、青空が続くのも珍しい。8時前に家を出れば、まだ家々の影が長くて、日陰を通ってみずき通りまでは歩いて行けた。風もあるからまだそれほど暑くはないのです。ところが、みずき通りを右に折れてバス通りに出ると、東側は森と畑だけなので、朝日を遮るものがない。ジリジリと照りつける陽射しが真夏のそれのようで、暑すぎるのか、いつもは畑に群れている鳥たちも、もうとっくに木陰に避難しているのでした。

 朝の仕事を終えたら、昨日の洗い物を片付けて、窓を閉めたままで店のエアコンを入れておく。ちらっと新聞で県内のコロナ感染者の数をみれば、佐倉市はまた増えている。こんな田舎のどこで感染するのだろうかと、いつも思うのです。亭主は朝ドラの時間帯に蕎麦屋に歩いて来たからか、誰にも会わずにマスクもせずに済んだ。考えたら今日は休日だから、車の通りも少ないのです。蕎麦打ち室に入れば、室温30℃と昨夜の温もりが籠もったまま。

 今朝はかなり暑くなるからと、600g 6人分の蕎麦を二回打って、昨日の残りと合わせて14食を用意しようと決めていました。800g と500g でも好いのだけれど、同じ分量を二回打った方が打ち易いのです。女将は、給料日の後だから混むかも知れないと言っていたけれど、暑すぎて来ないと言うのも女将の言葉だから、今日はどちらに転ぶのか。14人はコロナ禍以後は滅多にないから、小鉢も蕎麦汁も15人分だけしか用意していないのでした。

 加水率は41%強、一回目はそれでも捏ね上げた蕎麦粉は、伸していくうちに柔らかくなって、畳んで包丁打ちの時に切りづらかったのです。二回目は多めに打ち粉を振って、何とか6人分の蕎麦を仕上げる。二回の端切れを合わせて120g。亭主の昼飯の賄い蕎麦は確保できたのです。端切れの蕎麦は、多少太くなるけれど、太いとは言っても打ち立ての蕎麦だから、コシがあってなかなかの味わい。いつ食べられるか分からないが、それを楽しみにして厨房に戻る。

 まずは大根をおろして、薬味の葱を刻みます。デザートは昨日作った水羊羹があるから大丈夫。そして、小鍋に湯を沸かして塩を入れ、ブロッコリとアスパラを茹でる。大きさや太さによって違いはあるけれど、大体、3分間が目安。その間にレタスを切って水で洗うのです。週末は四皿と決めているから、野菜を刻んで四皿分のサラダを盛り付けた頃に、女将が早いお昼を済ませて帰って来る。いよいよ開店の準備に入るのです。

 厨房は珍しく早い時間から30℃を越えていたので、女将に言われて亭主は首にアイスノンのネックレスを巻いている。家から蕎麦屋に来るまで、女将は頭まで汗をかいてしまったというのです。昼前に二組のお客が入って、好い出だしだと思っていたら、今日はテーブル席は三回転。駐車場も次々と車が入れ替わる。4人連れのご家族が二組もいらっして、女将もかなり消耗したらしく、時折、亭主が檄を飛ばすのでした。蕎麦が残り二つになったところで看板。

 1時半を過ぎてもお客は止まらないから、お一人のお客だけを二組入れて、後のお客は売れきれなのですとお断りしました。2時過ぎにやっと最後のお客が帰られて、空腹の亭主はぶっかけで賄い蕎麦を食べる。その間に女将が盆や皿をとりまとめて、洗いやすいように並べてくれた。二人で洗い物をして片付けても、今日は3時過ぎまでかかったのです。コロナ禍以前に戻ったような一日でした。まだ土曜日だから、晴れると言う明日が怖い。

 カレーうどんのお客がいたので、今日は15人のご来店でした。漬け物のきゅうりや蕪が足りなくなるので、亭主は家に帰って直ぐに買いに出る。ひと眠りした後で、夕食を食べてまた、蕎麦屋に出掛けて乾してあった盆や蕎麦皿を片付け、全部なくなった蕎麦汁を詰め替えて、明日の分の小鉢を盛り付けておく。お新香を漬けておこうと思ったら、買ってきた野菜を家の冷蔵庫に忘れて来たのです。買い物に出た女将が帰って、他の店もお客が一杯だったと言う。