2022年5月下旬

5月20日 金曜日 午後から晴れて蒸し暑く …

 今朝も5時半にはもう目が覚めていたけれど、あまり仕事がなかったから、朝飯前のひと仕事には出掛けずに、家でゆっくりとしていたのです。薄曇りだったが、陽が出て風もなく、なんだか朝から蒸し暑い陽気なのでした。家の中の方がかえって涼しいくらいで、朝食を済ませたら汗をかいてしまった。半袖で出掛けても好いくらいだったけれど、薄手のポロシャツを腕まくりして、おまけにベストまで着て家を出る亭主。まったく暑いのか涼しいのか判らない。

 蕎麦屋の中は室温22℃とやはり暑かった。蕎麦打ち室は狭い部屋を閉め切っていたから、23℃と蒸している。湿度は53%だったけれど、今朝は41%の加水で水回しを始めました。先日は22%で少し柔らかかったので、この時期はもう41%と決めていたのです。するとどうでしょう、しっとりと水を含んだ蕎麦粉が綺麗に纏まってくれる。少し硬くなるかと思ったらとんでもないのです。この理由を説明するのは難しい。やはり、部屋の温度や湿度だけではなさそう。

 菊練りにして蕎麦玉を作ったら、少し寝かせて、その間に大釜に水を張り、カウンターに干してある昨日の洗い物を片付け、今日の分のほうじ茶を沸かして入れる。両の掌で生地を回しながら地伸しを始めれば、これが柔らかすぎずに実に滑らかに円形に広がってくれる。伸し棒で丸出しを始めれば、綺麗に正円になるのでした。こういう時は、厚味にもムラが出来ていないのです。厚味にムラがあるとどうしてもいびつな形になって、修正するのに手間がかかる。

 四つ出しも順調で、本伸しでぴったり80cmの幅で奥行き90cmの生地が出来上がるのでした。打ち粉を振りながら、これを八つに畳んで、包丁を打てば、切りべら26本で135gの蕎麦の束が仕上がる。これを八回繰り返し、昨日の蕎麦の残りと合わせて10人分の蕎麦が用意できた。今日の蕎麦打ちは、最初の加水の段階で成功したのが最後まで上手くいった理由と言えるのです。ゆめゆめ忘れてはいけない加水率の妙なのでした。「よしっ」と打ち台の掃除にかかる。

 厨房に戻って大根と生姜をおろしたら、昨日作った大福があるので、今日はサラダの具材を刻むだけ。今週のブロッコリーとアスパラは、昨日2分ちょっとで茹でたら、残ったサラダを家に持ち帰って食べたところ、少し硬かったので、今朝は3分を越えて茹でてみた。茹ですぎるとブロッコリーが崩れてきてしまうから要注意なのです。研ごう研ごうと思っていた包丁がそのままだったから、ニンジンのジュリエンヌはちょっと雑に仕上がってしまう。

 昨日は天せいろばかりが出たから、卸したおろしたばかりなのにもう油が減っていたので、新しい油を注ぎ足しておく。天つゆも温めて準備が整ったところで暖簾を出して、今日も営業開始です。11時半になったところで、滑るように白い車が駐車場に入ってくる。隣町の常連さんなのでした。カウンター席に座るなり、上に並んでいる野菜サラダをご自分で取って「ドレッシングください」とおっしゃるけれど、まだお茶も箸も出していないのです。

 歩いていらっしたらしい年配のご夫婦が、直後にテーブル席に座って、天せいろのご注文。カウンター席に先に蕎麦を出して、お茶と箸とおしぼりをお持ちする。今日も出だしは快調だけれど、昨日の様に同じ時間帯に混まないかと、一抹の不安が頭をよぎるのでした。今日は女将はスポーツクラブだから、SOSも出しようがないのです。幸いに今日は皆さんお帰りになって、亭主が洗い物を片付けてから、次のお客がいらっしたのです。例の少年がカウンター席に座る。今日は生活の様子など、少しは話をしてくれたかな。

5月21日 土曜日 曇天模様の一日でしたが …

 今朝の朝飯前のひと仕事は、空になった蕎麦徳利に新しい蕎麦汁を補充すること。そして、小鉢の浅漬けを作ってくることでした。小鉢は他に二種類つくってあるのだけれど、天せいろが出るとどうしてもさっぱりとしたお新香を付けるから、お新香が先になくなっていくのです。晴れた日ならばとっくに太陽が昇っている時間なのに、空は曇って暗い朝でした。それでも暖かいから、寒い朝なら花を閉じている隣のお花畑のポピーも、花を開いていたのです。

 家に戻れば女将が台所で食事の準備をしている。昨日、向かいの畑の親父様から水菜をどっさりと頂いたので、早速、昆布とニンジンを入れて浅漬けにしたらしい。シャキシャキとした歯ごたえで、なかなか美味しいのです。ちょっと亭主にはおかずが多すぎるのでしたが、せっかく用意してくれた女将に申し訳ないから、納豆はご飯を食べ終えて最後に喉に流し込む。女将も同じだけの量をたべられるのは、ゆっくりと食べる習慣があるからなのでしょう。

 朝食を終えて今朝はコーヒーを入れてもらって一服したら、書斎に入って10分ほど横になる。ちょっとは眠ったのか、去年まで飼っていたpekoの夢を見ながら、寒い晩はよく一緒に眠ったものだと、懐かしく思い出しているうちに目が覚めて、何処までが夢だったのかと不思議に思うのでした。最近はパッと起き上がらずに、目を開いて手指を動かしてからゆっくりと起き出すのです。歳を取ると、段々と自分の身体の扱い方も変わってくるようなのです。

 髭を剃って洗面と着替えを済ませ、「行って来ま~す」と玄関を出たら、外は雨が降っていた。早朝は暗い空だったけれど、まだ降り出していなかった。今日は一日曇りの予報だったのに。仕方がないから傘を差して、足の指をかばいながら、普段なら歩いて3分で着く蕎麦屋まで、10分近く掛けて行くのでした。幟が濡れるから朝の仕事は後回しにして、厨房に入ってまずは浅漬けを小鉢に盛り付ける。それから蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つのでした。

 室温は24℃もあるから、寒いわけではない。湿度は70%と高いから、今朝も41%弱と昨日よりも少しの加水で、蕎麦を捏ね始めたのだけれど、それでもまだ生地は柔らかめなのでした。こうなると、もう後は自分の蕎麦打ちの腕を信じるほかはない。均等な厚味で伸し広げるのにも慎重に、打ち粉を振りながら、綺麗に八つに畳んで包丁切りまでこぎ着ける。包丁を下ろすのにも集中して、勢いよく一気にトントンと切っていく。切りべら26本で135gの仕上がり。

 厨房に戻って、大根と生姜をおろしたら、薬味の葱を刻んで、苺大福の求肥を作るのに、白玉粉を氷糖蜜と水で溶かしている間に、苺を白餡で包んでひと休み。その間に遅れてやって来る女将は、店の掃除を終えて、洗濯物を畳んでくれる。彼女が早お昼を食べに家に戻る間に、亭主は大福を包んで、野菜サラダの具材まで刻んでおく。この天気ではお客も少なかろうと、今日はサラダは三皿だけ盛り付けておいた。雨は小降りになっているからもう止みそう。

 「最近は、土曜日はお客が少ないのよ」と、毎日来客数を記録している女将が言う。暖簾を出して1時間経ってもお客はなくて、1時を過ぎたからと、亭主もかき揚げを揚げてぶっかけで蕎麦を食べておこうと、一口食べたところで、車が一台駐車場に入ってくるのでした。若い人ではなさそうだったから、奥の部屋に入って亭主は蕎麦を食べ終えるのでした。女将がお茶を出して、亭主が厨房に戻ったところで、やっと注文が入る。見れば常連のご夫婦でした。

 年配のご夫婦で、運転するご主人はいつも辛味大根のおろし蕎麦を頼まれる。この時期は辛味大根はないので、普通のおろし蕎麦にしてもらう。奥様がいつも純米吟醸の生酒を頼まれて、天麩羅蕎麦をご注文。その飲みっぷりがいいから、どんな方なのかといつも気になっている。お客の来ない日には、こうした常連さんが本当に有り難い存在なのです。閉店時刻に合わせるようにして、お二人が帰って洗い物と片付けに入る。雨はすっかり止んでいたのです。

5月22日 日曜日 午後からからりと晴れて夏の陽射し …

 今朝も5時起床。5時半には蕎麦に向かい、まずはコーヒーを一杯入れて飲む。タブレットで昨日書いたブログを読み返しながら、朝飯前のひと仕事をどう始めるかを考えるのです。最近は床に就くとストンと眠りに入ってしまうので、明日は何をどうしようかとシュミレーションすることがあまりない。だから、昨日の記憶を辿って、天麩羅の具材が足りなくなりそうだと気が付いいたので、カボチャやレンコンの下茹でから始めるのでした。

 6時過ぎには仕込みが終わったので、煙草を買いにコンビニまで車を走らせる。今日は晴れるという予報だったけれど、そらはどんよりと曇ったままなのでした。車の通行量がやけに少ないと思ったら、今日は日曜日なのです。蕎麦屋にとってはかき入れ時の週末なのですが、昨日もほとんどお客がなかったので、あまり気にせずに毎日の繰り返しに黙々と耐えているといった感じ。好い時もあれば悪い時もあると、長年の習性で動じなくなっているのかも。

 家に戻ってもまだ朝食までは30分以上も間があるから、亭主は書斎に入ってひと眠りする。このところ、このパターンの朝が多いのです。早すぎる目覚めの朝を過ごす方法は、蕎麦屋でひと仕事をしたら、家に戻ってひと眠り。そうすれば、女将もゆっくりと朝食の支度が出来るというもの。「ご飯が出来ましたよ」と呼ぶ懐かしい女将の声に惹かれて、早朝から空腹だった自分を思い出すのです。食堂に入れば、今朝はちょうど好い分量のおかずで至極満足。

 食後にお茶を入れてもらって飲むのも、新茶の香りが香ばしくて心が和むのです。洗面と着替えを済ませて、今朝も早めに家を出るのでした。寒いかと思って長袖の下着を着たのは好いけれど、湿度が高いのか、早朝よりは気温が上がっているのか、ちょっと失敗したかも知れない。蕎麦屋の隣のお花畑を見たら、いつもは花を閉じているポピーが、朝から花を開いていたから、植物の方が年老いた亭主よりも敏感に陽気に反応していると驚かされるのでした。

 朝の仕事をし終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。室温は24℃もあって、湿度は60%。今朝も加水率を41%弱にして、生地を捏ね始めたらちょうど好い硬さなのでした。生地が滑らかになったところで菊練りをして、ヘソ出しをしたら円錐形を潰して蕎麦玉にする。誰に教わったわけでもないから、案外、いい加減な蕎麦打ちの行程なのかも知れない。ビニール袋に入れて寝かせている間に、厨房に戻って次の作業の準備にかかる。

 天気が悪くても、馬鹿にしてはいけない日曜日だからと、野菜サラダは四皿盛り付けておきます。大根もおろしたし、お茶のポットにもお湯を入れて準備が整う。今朝はあまり仕事がないと、勝手知ったる女将は、10分ほど遅れて早お昼から帰るのでした。少し早めに暖簾を出してお客を待てば、車が一台駐車場に入って、玄関前の看板を見てなかなか入らない。亭主が出てみれば「営業中」の看板が「準備中」になっていたから、お詫びをして中に入って頂く。

 年配のご夫婦で、沢山は食べられないと思ったのか、冷たいぶっかけ蕎麦をご注文。追加でデザートの苺大福を頼まれる。店内に流れるBGMだけが聞こえて、話もせずに食事をなさるお二人。初めてのお客さんなのでした。次ぎにいらっしたご夫婦もご新規さんで、とろろ蕎麦と天せいろのご注文をされる直後に、常連さんがカウンターに座っていつものせいろ蕎麦の大盛り。やはり、日曜日はお客の出足が遅いのです。洗い物を片付けた頃に、またご新規さん。

 外は青空ものぞいて随分と暖かくなった。用意したデザートはすべて売り切れて、野菜サラダだけが三皿残ったのです。亭主もぶっかけで賄い蕎麦を食べて、女将のスポーツクラブの予約の時間を待っていた。今週は、いつもの週末よりもお客は少なかったけれど、こんな週もあると残り物を家に持ち帰る。帰り道、陽射しが強くなっていたので驚く女将と亭主。気候の変化に直ぐについていけなくなったのかと、年齢を感じる二人なのでした。

5月23日 月曜日 午後からは晴れて爽やかな陽気 …

 夕べは何故か9時半には我慢が出来ない程に眠くなって、床に倒れ込むようにして寝入ってしまったのです。後で考えたら、昨日は大相撲の千秋楽だった。早くからテレビで観戦していたので、ゆっくり昼寝をする暇がなかったのでした。今朝は未明に雨の音で目が覚めて、居間の部屋で煙草を吸ったら、もう起床モード。ほうじ茶を入れて飲みながら、有名な画家の半生を描いた映画をしばらく観ていた。5時半になって外が明るくなる頃に、また布団に入る。

 7時に目覚めて食堂に行けば、「昨日はよく眠れたわ」と女将が朝食の支度をしていた。鰺の開きは女将と半分ずつ食べてちょうど好い分量。亭主が納豆を嫌いではないと判って、発酵食品は身体に好いからと、最近はよく出る。水菜の漬け物がシャキシャキとして美味しかった。どうしても、最後に梅干しが欲しくなるのは気候のせいなのか。髭を剃って顔を洗い、着替えをしたらコーヒーを入れて一服。今朝も「行ってきま~す」と蕎麦屋に向かうのです。

 朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。雲の多い朝なのでしたが、昼からは晴れると言う。室温は22℃と昨日よりは低く、湿度も57%でわりと乾いた空気なのでした。加水率は40%強と、昨日の朝よりも水を減らしてみた。すると、これがまたぴったりの塩梅で、捏ねても好し、伸しても好し。四つ出しの形が整うのは、生地が均等に伸されている証拠なのです。八つに畳んで今朝は切りべら27本で135g。500gだとどうしても生地が薄くなる。

 厨房に戻って大根をおろし、薬味の葱を刻んで、苺大福を作る準備をする。まだ10時前だったから、慌てることもないのだけれど、今日は女将がいないから、早めに仕事を終えなければいけない。仕込みが終えてから、店の掃除をする時間が必要なのです。苺が五つ残っていたから、今日は大福も五つ包んでおく。野菜サラダは平日だから、三皿の用意と決めている。これがすべて売り切れるとは、予想していなかった。平日に今日は珍しくお客が入ったのです。

 昼になるにつれて、天気予報通りに青空が広がり、隣のお花畑も綺麗に見える。昼前に、四人連れの会社の同僚らしい一行が、奥のテーブル席に座るのでした。ヘルシーランチセットを四つというご注文でしたが、「平日はサラダが三つしかないんですよ」と言えば唯一の男性が鴨せいろに替えてくれる。野菜サラダをお出しすれば女性たちは「わぁー綺麗!」と大騒ぎ。蕎麦豆腐をお出しすれば、「美味しそう!」とまた声を上げて楽しそうなのです。

 昨日解凍した鴨肉があったから、女性たちが野菜サラダを食べている間に、鴨せいろを先にお造りする。天麩羅を揚げて、蕎麦を茹でている間に、駐車場に車が入って年配のご夫婦がいらっしゃる。取りあえず、お茶をお出しするけれど、6人の調理が重なると亭主も大変。「注文をお願いします」と言われたけれど、「ちょっと待って下さい。今、蕎麦を洗っているので、直ぐに伺います」と言って先のお客に配膳をするのです。これが一人だと辛いところ。

 後からいらっしたお客も、ヘルシーランチセットをご希望だったけれど「ご免なさい。全部売り切れてしまたんですよ」と、天せいろに変更して頂く。注文の品をすべて出し終えたのは、12時半近くなのでした。賑やかな女性たちに、デザートの苺大福をお出しすれば「自家製なのですか?美味しい!」声を揃えて言うものだから、後のご夫婦も、会計の際に持って帰られた。次のお客が来るかも知れないからと、急いでテーブル席の後片付けに入るのです。

 流しに運んでは洗い、洗ってはまた盆を下げて、すべて洗い終わったら、もう1時を過ぎていました。やはり、一人で一度に6人は辛いのです。洗って拭けばしまえる食器は、少しずつ片付くのだけれど、デザートの厚い皿や蕎麦皿と盆はカウンターに干しておく。全部片付け終わらないうちに、駐車場にはまた車が入ってくるのでした。カウンターに座るお客の顔を見て、隣の町の常連さんだと気が付く亭主。「お久しぶりです」とお茶を出して注文を取る。

 最後のお客が帰ったのが、もう、ラストオーダーの時間だったから、暖簾と看板をしまって幟を降ろし、チェーンポールを上げて、やっとひと休みする亭主。天麩羅の具材の残りを揚げて、残った蕎麦と端切れを茹で、大盛りでぶっかけ蕎麦を食べるのでした。ゆっくり食休みをしてから、また洗い物。大釜を洗ったり、天麩羅のトレイを洗ったり、油を固めたり、ゴミ箱のゴミを表に出したり、まな板を消毒したり、洗濯をしたりとかなり疲れるのです。点検を済ませてやっと店を出たのが3時過ぎ。途中で、迎えに来てくれた女将に会って、ほっとするのでした。

5月24日 火曜日 8時過ぎから陽が出て青空が …

 夕べも煙草を一服してからと思ったけれど、急に眠気に襲われて10時半には床に就く亭主。だから今朝も5時にはもう目が覚めて、定休日だというのにコーヒーを飲んで蕎麦屋に出掛けるのでした。朝があまり早いとご近所に迷惑がかかるだろうと、今朝は家から鎌を持参して、道路に生えた雑草を刈り取る作業を始める。周囲の畑の土が飛んで道路脇に溜まると、植物の種がそこで発芽して草が生えるらしい。足の親指を庇いながら、西側の小径まで草取り。

 厨房に入って、昨日の洗い物を片付けたら、出汁取りの準備をして、昨日干した洗濯物を畳むのです。何のことはない、定休日の今日も朝からひたすら昨日の続き。それが良いのか悪いのか、歳を取ったら案外と楽な生活なのです。他に特別したいこともないから、このコロナ禍でも苦もなく持続できる。ワクワクとする気持ちは、燕や雀のような小さな生き物の行動を、毎日、見続けることで満たされているし、花や木々の季節の変化に驚くのも新しい発見。

 7時には家に戻って朝食の食卓につく。蕎麦屋で使い残した旬の絹さやが卵とじで出たのは嬉しかった。鰺の干物は昨日の続き。ご飯物を出さなくなった蕎麦屋から持ち帰った最新式の炊飯器で炊いたご飯も、なかなか美味しいのでした。7時半から9時近くまで書斎で横になってぐっすりと眠る亭主。お袋様に少し遅れると電話をして、出掛けた農産物直売所には、ちょうど顔馴染みの農家のご夫婦が野菜を運んで来ていたから、いろいろと仕入れられました。

 隣町のスーパーに行っても、開店時刻に入ったお客が買い物を終えた直後と見えて、駐車場も店の入り口の近くが開いていた。お袋様と話して、これからは10分遅く仕入れに出掛けることにしたのです。朝方曇っていた空も、青空が広がって陽射しは段々と強くなってくる。午前中に床屋に行くことは諦めて、先週のカレーを家に持ち帰り、昼は久し振りにカレーライスにしたのです。幾つになっても子どもの頃から食べ付けたカレーは、やはり美味しく感じる。

 食後のひと眠りをしたら、午後一番で床屋に出掛ける。ちょうど前のお客が入っていて、マスターは直ぐに近くの息子さんの理髪店に電話をして、奥様が空いていないかと聞いてくれる。しばらくして奥様がいらっして、見知った顔だから「○○さん、はいどうぞ」と髭を剃ってくれた。「お店ははどうですか?」と聞かれて、ありのままに話をするけど、彼女は話し出すと止まらないから困った。午後の仕込みを考えながら、早々に床屋を出る亭主なのでした。

 朝に出汁取りの準備をしておいたから、まずは出汁を取り、その間に大釜に火を入れて、野蕗のキンピラを作るために、茹でる準備をしておくのでした。カレーの具材を煮込んでとは思っていたけれど、出汁取りに時間がかかるので、やはり野蕗を茹でて終わりなのです。明日に仕事を残しても、あまり時間はかからないという判断なのです。スーパーで家のために仕入れた魚や果物を持って家に戻れば、女将はまだ買い物から戻っていない。

 4時半を過ぎていたから、コンビニで買った肴で焼酎を飲み始める亭主。女将は汗だくになって歩いて帰っきた。車の車外温度計は30℃を差していたのです。夕食の準備が始まり、今日は亭主の買ってきた鰯の梅煮がメインのおかず。ルクルーゼで煮込んで骨まで食べられる柔らかさ。野蕗のキンピラも切り干し大根も蕎麦豆腐も、すべて昨日蕎麦屋から持ち帰った食材なのでした。それなのに、今日は体重が減っていない。昼に食べたカレーライスが原因なのか。

5月25日 水曜日 朝から暑い陽射し一一日 …

 今朝はゆっくり目覚めて休日の気分。一度5時には目が覚めたけれど、たまにはもうひと眠りしようと蕎麦屋へは出掛けなかったのです。朝食を済ませて、女将の朝ドラが終わったところで「行って来ま~す」と玄関を出るのでした。青空に白い雲が浮かび、先月、剪定をした木槿はもう沢山葉を付けている。朝から暑い陽射しが容赦なく照りつけるものだから、半袖のTシャツ一枚で十分でした。今日は昨日にも増して暑くなると言うから大変です。

 蕎麦屋の店内は朝から25℃もある。それでも湿度が低いから、厨房の窓を開けるだけで、エアコンを入れる程でもないのです。コーヒーは目覚めたときに飲んだから、ほうじ茶を入れて陶器のグラスに三杯分。二つはラップをして冷蔵庫に入れておく。椅子に座ってお茶を飲みながら、まずは何から始めようかと考える。蕎麦豆腐の仕込み、返しの仕込み、レンコンと野蕗のキンピラ、カレーの仕込み、天麩羅の具材の仕込み、ぬか漬けの準備 … 。

沢山ありそうだけれど時間はかからない。まずはまな板を出したところで、大鍋に湯を沸かして、鴨南蛮や鴨せいろに添える小松菜を茹でておく。そして、午前中にキンピラとカレーを仕込んでおこうと、野菜を刻んでいく。フライパンに胡麻油を引いてから、ニンジンとレンコンを炒め、最後に昨日皮を剥いて刻んでおいた野蕗を入れる。出汁で煮込んで味つけをしたら、しばらく汁を飛ばす。その間にカレーの具材を刻んで、鶏肉に片栗をまぶして炒めていく。

 十分に火が通ったら新聞紙に開けて、今度は野菜を炒める。隣の火口で出汁を温めて具材を煮込んでいく。灰汁を取りながら、火が通ったところでカレーのルーを入れ、弱火でルーが溶けるまで待つのです。今日は茄子や南瓜や玉葱、人参の具が多いから、もう余計な物は入れない。火を止めて冷めるまで待つ間に洗い物。まだ熱いのだけれど、ジブロックにお玉でカレーを詰めて、ラップでくるんでステンレスの容器に並べていく。ちょうど六食分の分量だった。

 ここまで終えて時計を見れば、まだ10時半前なのでした。女将のスポーツクラブの予約は11時半だから、もう少し時間がある。汚れた布巾類は洗濯機に入れ、乾いた布巾や手ぬぐいをカウンターで畳む。2時間が集中の限界。後の作業は午後に回して、早めに家に戻るのでした。月曜日に持ち帰った先週作ったカレーが、まだ残っていたので、女将と今日の昼もカレーライスと決めていた。昼の支度はほとんどしなくて済むので今日は楽ちんなのでした。 

 ところが昼食を食べ終えて、女将のスポーツクラブの予約を取ろうとしたら、一番最初に画面を開いたのに、アプリの不具合で予約が出来ない状態。長い間、ログインしたままだったのがいけなかったのか、一旦、ログアウトして再びログインしたときには、もうすべて予約が埋まっていたのでした。その間、わずか5秒なのです。「えーっ」と女将は叫ぶけれどもう遅い。最近は会員数が増えているのだそうな。午前中の仕込みを早く切り上げた甲斐がなかった。

 夕刻に業者が食材を届けに来るので、あまり早く蕎麦屋に行っても時間の無駄。昼寝をしようと思ってもなかなか眠れないのです。仕方がないので、テレビで映画を観るけれど、以前に観て面白くなかったものばかり。ブログの写真を取り込んで、途中まで記事を書くけれど、パソコンの画面を見ているとやはり疲れる。書斎の電気の紐が切れたから、修復しようとしたけれど、20年も使っている蛍光灯の代物だから、買い換えた方が早いと家電量販店に行く。 

 蕎麦屋に出掛け、残りの仕込みを終えて、業者の持ってきた食材を受け取ったら、夕食前に書斎の電気を付け替える。最新のLEDだから、スイッチはリモコンで明るさや色調も調整できる。時代遅れの生活をしていた亭主も、やっと便利に暮らせるのでした。夕食は蕎麦屋で残ったみつせ鶏の団子の串焼き。茹でた新じゃがと葱の焼き浸しにキムチが、酒の肴にはちょうど好かった。明日も暑いと言うけれど、今日は半袖半ズボンがちょうど好いのでした。

5月26日 木曜日 晴れのち曇りの天気でも暑い一日 …

 午前5時。蕎麦屋の向かいの森から陽が昇ってくる。昨日のうちにやり残した返しの仕込みが気になって、今朝は早くから蕎麦屋に来ていました。調味料をすべて鍋に入れたら、沸騰させないように注意をしながら、定休日のうちに作っておいた蕎麦汁を、徳利に詰めていく。アルミホイルで蓋をして、冷蔵庫に入れたら、今度は糠床を冷蔵庫から出して、お新香を取り出すのです。漬けてから14時間ほどだから、味はちょうど好い塩梅でした。

 包丁を出してこれを切り分け、小鉢に盛り付けておく。茄子だけがまるまる一つ分残ったので、ラップに包んで家に持ち帰る。温かいご飯のおかずにはとても美味しいのです。ついでに、定休日に作った野蕗と蓮根のキンピラも小鉢に盛り付けて、ラップをかけて冷蔵庫に保存する。今週は取りあえず二種類の小鉢だけ。切り干し大根も用意してはあるのですが、週末に作った方が作りたてを出せると考えたのです。二回目のお新香を漬けるのも週末になる。

 ここまで終えたところで、鍋の返しが冷めてきたので、大甕に移して膝下の戸棚にしまう。時計は6時半をとうに回っていました。家に戻って朝食の支度を待つ亭主。早く家を出た日には、女将もそれを察知してか、早く食事の用意をしてくれるのです。「もう眠くなっちゃうわね」と、まるで幼い子供に言うように、急いでくれるから有り難い。4時起きだとさすがに、ひと仕事を終えて眠くなるのです。朝は青空が広がって好い天気になるかと思ったのです。

 今朝はちょうど1時間近くぐっすりと眠ったから、布団の中に未練はなかった。髭を剃って洗面を済ませ、今日はもう半袖でないとと、箪笥の中から昔DUNK島で買った襟付きのポロシャツを探し出して、蕎麦屋に出掛けるのでした。もう、15年以上も着ているけれど、しっかりとした生地で着心地も好い。晴れた朝の陽射しはジリジリと真夏の暑さで、蕎麦屋に着けば、蕎麦打ち室はもう24度なのでした。半袖のシャツも脱いでエプロンをつけるのです。

 湿度は51%だったから、ぴったり41%の加水で、蕎麦粉を捏ね始めたはずなのに、どうも少し柔らかい。蕎麦玉にして寝かせている間に、大根と生姜をおろして、さあ薬味の葱切りと思ったら、小葱を買うのを忘れていたのに気が付きました。仕方がないから、鴨せいろ用に買った長葱を刻んで薬味にするのです。今週は細めの長葱で好かった。再び蕎麦打ち室に入って、蕎麦の生地を伸せば、どうしても厚さが薄くなる。今日は切りべら28本で細い仕上がり。

 次は厨房に戻って苺大福を包むのですが、白玉粉が氷糖蜜と水に溶けるまでがやっとひと休みの時間なのです。店の中の温度は25℃になっていたから、エアコンを入れて換気のために窓を少し開けておく。気温が上がると、熱々の求肥で白餡にくるんだ苺を包むのにもひと苦労。熱くて手を真っ赤にして包み終えれば、次はアスパラとブロッコリーを茹でて、野菜サラダの具材を刻むのでした。早朝の時間がある時に包丁を研いだから、今日の野菜は細く切れた。

 朝の5時から今日の準備をしたのに、暖簾を出してもなかなかお客は来なかった。雲が出て来たけれど気温は相当に高いはず。県内の新型コロナの感染者は減っているのに、今日の市内の感染者数は昨日の倍になったから、そんな影響もあるのか知らん。1時前に例の少年が元気に歩いてやって来る。いつもの通り、お茶は飲まないからカルピスと菓子を出し、せいろ蕎麦を茹でて海老の天麩羅を揚げてやる。すると、不思議なことにお客が続けて来るのでした。

 蕎麦屋の入り口の壁には、お客の描いてくれた仙台四郎の色紙が掛けてあるけれど、彼はまさに客を呼ぶ少年なのです。女将のスポーツクラブの予約は1時半だからと、出掛けにスマホとスケジュール表を渡された。1時20分に最後のお客が帰られて、亭主は準備万端にして一番好い席を取るのでした。2時前に女将も店にやって来て、後片付けを手伝ってくれる。夜は残ったサラダを土台にして、肩ロースの塩ガーリック焼き。明日は雨だと言うから心配です。