2022年5月上旬

 5月7日 土曜日 少しはお客が戻っているのか …

 今朝も朝飯前のひと仕事で午前5時半に蕎麦屋に出掛けました。暖かい朝でしたが、雲行きは少し怪しい。雨野予報が曇りに変わったけれど、かすかな青空を多う黒い雲は紛れもなく雨雲のようでした。昨日早い時間に浸けたぬか漬けが気になって、漬け込み時間が14時間になるように思ったら、薄塩で浸けたからちょうど好い塩梅なのでした。早速、お新香を小鉢に盛り付けて、もう一品は野蕗のキンピラを五鉢だけ持っておきました。

 木曜金曜とそれなりにお客が入ったので、蕎麦汁も残り少なくなっていたから補充しておきます。週末の土曜日は、昨日一昨日よりはお客が来るだろうから、明日の分の蕎麦汁が足りなくなりそうなので、昆布と干し椎茸を3㍑の鍋に浸して、出汁を取る準備をしておく。6時間は浸けなければいけないから、営業の終わる頃には出汁を取れるという計算です。昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干して、7時前には家に戻るのでした。

 「お早うございます」と、女将が居間の亭主に食堂の扉を開けて挨拶をする。ぷ~んと懐かしい匂いが漂って、今朝も鰺の開きを焼いていると分かる。連休の安売りで、亭主が四枚入りの鰺の開きを500円で買ってきたのがそろそろ賞味期限なのです。冷凍物でも、時間が経てば経つほど乾燥して塩味が強くなってしまうから、早めに食べて仕舞わないといけない。アサリの佃煮と野蕗の葉の佃煮が小皿に盛られて、これだけでもご飯のおかずになる。

 今朝は食後のひと眠りをする暇もなく、髭を剃って洗面、着替えと忙しく準備をして、女将の朝ドラの始まる頃に、亭主は蕎麦屋に向かうのでした。昨日、蕎麦粉と一緒に届くはずだった打ち粉が、箱の中に入っていなかったから、直ぐに電話を掛けたら、今日の午前中にはお届けしますと言うことなのでした。何年も取引をしている農場なのに、珍しいこともあると思っていたら、蕎麦を打ち始めたら丁寧なお詫びの手紙と一緒に届けられたのです。

 昨日の蕎麦は三人分しか残らなかったので、今朝は850g9人分を打って、週末の土曜日に期待をするのです。蕎麦打ちを終えた亭主は、厨房に戻って薬味の葱切りを済ませたら、大根と生姜をおろして、女将が早お昼を食べに家に帰っている間に、苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻むのでした。昨日一昨日の二日間で天麩羅ばかり出たので、天麩羅鍋には新しい油を足して、天つゆを温め、開店の準備が整ったところで、暖簾を出したら店の電話が鳴る。

 女将が電話に出て、6人のお客だと言うので、「今は空いていますけれど」と応えていた。直ぐに行きますと言われたらしく、昼前には皆さんお揃いなのでした。顔を見れば、いつも娘さんと自転車出いらっしゃる常連のお客で、今日はご両親たちとご一緒。テーブル席に三人ずつ座ってもらって、注文はいつも同じ物を頼まれるご主人のお勧めか、ヘルシーランチセットが四つに天せいろと天麩羅蕎麦。二人ずつ天麩羅を揚げて熱いうちにお出しするのでした。

 その後もぽつりぽつりとお一人の客が入って、雨が降ったり止んだりの天気だったのに、昨日よりはお客がいらっしたのです。最後のお客は、女将が駐車場に入った車を見て「○○さんじゃない?」と言った通りに、長女と同じ年頃の女先生なのでした。石垣島で一緒にダイビングをして以来のお付き合いで、近所に住んでいるからよく来てくださる。空も少し晴れ間が出て、帰る頃には雨はすっかり止んでいました。駅からの市バスが蕎麦屋を通る時間です。

 家の前まで歩いて来たら、庭の塀際に芍薬の花がやっと開いて見事なのでした。今朝はまだ半開きの状態だったのに。書斎に入ってパソコンに向かい、今日の売り上げと写真を入力したら、遅い昼飯に女将が焼いてくれた海苔餅を食べる亭主。さすがに今日は腹が減って目が回るほどでした。それでも直ぐには眠れずに、郵便局まで車で行って蕎麦粉の支払いを済ませて来る。買い物に出掛けた女将が、夕食のおかずに亭主の希望した鰹の刺身を買って来たくれた。

5月8日 日曜日 お蕎麦が完売、少しずつお客が戻っている …

 昨日もかなりお客が入ったから、小鉢がなくなっていたので、今朝は5時半に蕎麦屋に出掛け、まずは浅漬けを漬けておくのです。そして、昨日使った蕎麦汁の空になった徳利をカウンターに干してあるので、これに新しい蕎麦汁を補充しておきます。時間のある早朝には、昨日残った蕎麦の数や冷蔵庫の中を見回して、何か足りない物はないかとチェックをしておくのです。更に今朝は、昨日の洗濯物を畳んで、洗濯機の中に洗ったままの布巾や手拭いを干した。

 いつもは女将がやってくれるのですが、先週も彼女は週に四日も働いてくれたので、せめてもの亭主の心遣い。7時前に家に戻ればちょうど女将が作った豚汁を温めていたところで、亭主は食卓についてご飯の運ばれるのを待つのでした。今朝は三ツ葉の卵とじと昆布と大豆の煮物、家で漬けた糠漬けがおかずでした。この歳になると、もうこれで十分な量なのです。そして、クエン酸が足の指に溜まった尿酸によかろうと、梅干しを食べるようにしている。

 早めに食事を終えたから、今日は少しゆっくり眠れるかと思ったのですが、蕎麦屋で珈琲を飲んできたせいか、書斎で横になっても微睡むどころか目が冴えてしまい、20分ほどで諦めて洗面にいく。だから8時過ぎにはもう家を出て蕎麦屋に向かうのでした。庭の芍薬がいよいよ花を開いて見事なのです。昔、母の日に女将に買ってきた株が増えて、今は隣家との境にも花を咲かせる。毎年、母の日のこの時期に咲くから、女将に「有り難う」と言われるのです。

 蕎麦屋に着いたら玄関脇に看板を出して、幟を立て、チェーンポールを降ろすのが最初の仕事。厨房に入って、早朝に漬けておいた浅漬けと、野蕗のキンピラを盛り付け、昨日の残りの小鉢と合わせて、今日用意する予定の蕎麦の数だけは確保するのでした。お酒が出た場合は突き出しとしても利用するので、少し多めに作って、盛りきらないものは、タッパに入れておくのです。小鉢はラップで包んで冷蔵庫に入れ、いよいよ今朝の蕎麦打ちなのですが…。

 早朝は少し青空も見えていたのに、天気予報が時間毎に変わり、次に晴れる時間は段々と遅く午後になっているではありませんか。気温もあまり上がらないと言うから、どれだけ蕎麦を打てば好いのか思案の時なのです。昨日も10人には届かなかったから、お客が来てもせいぜい10人止まりだろうと、結局、いつものように750g八人分を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせれば十分だろうと考えるのでした。足りなくなれば、売りきれ御免で勘弁していただく。

 加水率は42%、ちょうど好い硬さの生地で、畳んで包丁切りまで順調に進むのでした。少し伸した生地の奥行き足りなかったから、切りべら28本にして、一人前135gほどで仕上げる。「よしっ!」と今朝も声を上げて蕎麦打ち室を出た亭主は、厨房に戻って大根をおろし、昨日「五つしかないの?」と言われた苺大福を、今日は六つ作ってカウンターに並べる。残れば明日が最後の営業日だから、少しは楽が出来るかと思っていたのです。

 野菜サラダの具材を刻んで、まだ盛り付けに入らないうちに、もう駐車場に車が入って「11時開店と間違えました」とお客が言うので、中に入って待ってもらうように女将に言えば、もうひと家族と待ち合わせをしているからと言う。その間にサラダを盛り付け、天麩羅油と天つゆを温め、開店の準備を済ませるのでした。子供連れの二家族がテーブル席に座って、ヘルシーランチセットが三つに、せいろ蕎麦にせいろ蕎麦の大盛り、冷たいうどん等々…。

 女将はサラダと蕎麦豆腐を出して、亭主は蕎麦を食べたことのないと言う子供にうどんを先に茹で、盆と蕎麦皿を用意してまずは天麩羅を揚げてしまう。順々に調理していくその途中で、玄関が開いて見知った顔のお客が「四人なんだけど」とおっしゃるから、「カウンターになりますけれど」と断って座っていただく。1グループ四人だから問題はないはず。それでも満席だから、直ぐに看板を出したのです。次にいらっしたお客は、店内の様子を見て帰られた。

 生舟の中の蕎麦はどんどん残り少なくなって、家族連れは直ぐに帰るはずもないし、カウンターの四人組は早く料理を出さないと、大きな声で話をするから大変。珍しく賑わった店内は、どこかコロナ禍前の雰囲気なのでした。12時半になる頃には、皆さん引き上げてくれたから、やっと洗い物が出来ると思ったけれど、またしても駐車場に車が入ってきたのです。素早く女将がテーブル席の一つを片付けて注文を取り、亭主は次のお客の料理を作るのでした。

5月9日 月曜日 日中の気温は急降下で …

 昨日に比べたら寒い朝でした。部屋の中は15℃ほどなのに、最近の暖かさに慣れてしまった身体には、とても寒く感じるのです。それでも昨夜は10時に床に就いたから、5時前に起き出して、お茶を入れて目を覚ます。足の指の具合を気にしながら、一ヶ月ぶりに運動靴を履いて蕎麦屋に出掛ければ、やはり親指が腫れたままだから痛いのです。蕎麦屋の西側の小径に出てみれば、クローバーが花盛り。雨で畑の土が流れ出るのを防ぐために植えてくれたものです。

 沢山の昨日の洗い物を片付け終えて、蕎麦徳利に蕎麦汁を補充したら、ニンジンと油揚げ、出汁を取った残りの干し椎茸を刻んで、お湯で戻した切り干し大根を胡麻油で炒め、出汁で煮込んで出汁醤油と砂糖で味付けをする。浅漬けが三鉢以外には、小鉢が一つもなかったので、今日の分の小鉢の準備なのです。しかし、この寒さではお客が来るのかと心配する亭主。それでも、仕込みはいつもと同じにしておかなければいけないのが商売というものか。

 前の畑の休耕地には野生のポピーがずっと向こうまで咲き始めている。空はどんよりと垂れ込める雲行きで、今にも雨が降ってきそうな天気なのでした。7時前に家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしてくれていた。今朝は親子丼の具に卵を落として、ひじきの煮物が添えられていた。味付けは抜群、というのも蕎麦屋でご飯物を出さなくなったので、冷凍してあった親子丼の具材を持ち帰ったのです。一般のお客向けには少し砂糖が多いほうが好まれる。

 今朝も食後に書斎で横になったけれど、昨日と同じくただ休むだけで微睡みもしない。洗面と髭剃りを終えて、また珈琲を入れて飲む亭主。靴を履いたせいで足が痛くなったから、小雨も降っているからお客も少ないだろうと、今度は雪駄を履いて、車で蕎麦屋に出掛けるのでした。かなり治っては来ているのに、歳のせいかなかなか腫れが引かないのです。気温が低いせいか、ポピーの群生も花が眠たそうに閉じたままでした。幟を立てて看板を出す。

 朝の仕事が終わったら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日は全部売り切れたから蕎麦が残らなかったけれど、月曜日が最後の営業だから、750g八人分を打ってお終いにしようと考えていたのです。この天気では、そんなに出るはずもない。蕎麦が残れば、お袋様のところに持って行って、あとは家で食べれば好い。それでも残れば木曜日の賄い蕎麦にする。42%の加水率で水回しを始めれば、ちょうど好い具合の硬さの生地が仕上がる。

 蕎麦玉にして寝かせておく間に、厨房に戻って早朝に作った小鉢を盛り付けておきます。外は冷たい小雨が降り始めているから、今日はあまりお客が望めない。混んだ日曜日の後はいつもそんなものなのです。再び蕎麦打ち室に入って、伸して畳んで包丁切りを済ませる。今朝も綺麗な仕上がりだから、こんな日にお客に食べて欲しいもの。まだ10時前だったから、今日はかなり時間に余裕があるのでした。あとは葱切り、大根おろし。そして大福を包む。

 お客が来ないとは思っていても、大福と野菜サラダはいつもと同じ数を作っておくのが決まり。雨の日でもかなりお客の入ることもあるから、いろいろな過去の経験で、数は変えないことにしているのです。残れば家で消化できる数なのがポイント。暖簾を出して、待つこと1時間。雨が北側の窓に当たるから、換気のために開けていた窓を閉める。とうとう1時になって、これは今日は駄目だと、今朝打った蕎麦を茹でてぶっかけにして食べておくのでした。

 綺麗に打てた日の蕎麦が美味しいこと。天麩羅を揚げないで天かすを載せるのは、バットなどの洗い物を増やしたくないから。1時半になって雨も上がっている様子なので、お袋様に電話をして、蕎麦や天麩羅、大福などを取りに来ないかと言ってやる。この天気では家に閉じこもっているに違いないのです。天麩羅の具材を揚げ終えた頃に、バス通りを歩いて来るお袋様の姿が見える。「昨日はカサブランカを有り難うね」と言って、洗い物を手伝ってくれた。

 今年米寿を迎えるというのに、昔取った杵柄で、その素早さと言ったら実に見事。お蔭で亭主一人で片付ける時間の半分で終わり、車で家まで送っていったのでした。いつもなら、休み休み片付けをしているから、女将が心配して蕎麦屋に来てくれるのに、今日は女将がスポーツクラブから帰る前には家に着き、ゆっくりと出来たのです。明日は仕入れと、市の食品衛生連合会の会費納入と検便申し込み。隣町のホームセンターに行って備品も仕入れなくては … 。

5月10日 火曜日 一転、終日晴れた一日で …

 何故か久し振りの休日のような気がして、今朝はゆっくりと7時まで眠っていました。居間に入ればやっと女将が起き出して来て、今朝は亭主が早朝に玄関の鍵をガチャガチャ言わせて開ける音がしなかったので、ぐっすりと眠れたのだそうな。早朝に朝飯前のひと仕事に出掛けなかったから、二人とも遅くまで眠れたことになる。食事の支度が出来るまで、亭主は玄関から脚立を運んで前の通りに立てて、いつも下からしか撮せない芍薬の姿を、今朝は正面からしっかりと写真に収めるのでした。日当たりが良い場所だから満開。

 朝食は昨日店で残った野菜サラダに、鶏の胸肉の塩麹漬けを焼いたもの。ひじきとお新香が付いてかなり健康的な食事なのでした。食後に珈琲を一杯飲んで、洗面と着替えを済ませたら、少し早めに蕎麦屋に出掛ける。お袋様を迎えに行くにはまだ早かったので、様々なお花が咲き乱れる隣の畑の様子を見に出たのです。矢車草やポピーはお馴染みだけれど、ベニバナツメクサ(ストロベリーキャンドル) は図鑑で調べて初めて知った。見事なお花畑状態です。

 道路沿いのクローバーと芝を植えた部分を、芝刈り機を入れて道を作ってくれたので、200mほどの歩道のないバス通りが歩きやすくなった。90歳を過ぎたお爺さんが始めたひまわり畑が、亭主と同年代の息子さんご夫婦が引き継いで、道行く人たちの目を楽しませてくれている。有り難いことなのです。お袋様に電話をして、今朝の仕入れに向かうのでした。昨夜までの天気予報が変わって、一転、晴れた暖かい陽射しの朝となったから嬉しい。

 今日は農産物直売所に旬の野菜が随分と沢山出ていた。顔見知りの農家の奥さんから、朝取りだという春キャベツをもらい、茄子やピーマンやアスパラガスや生椎茸も、良いものが出ていたのでもらっていく。少し太い蕗が葉を付けたまま置いてあるから、これは好いと買い物袋二つに一杯仕入れて来た。隣町のスーパーで残りの野菜類を仕入れて、ついでに女将に頼まれた魚や果物に焼売の材料を買って帰る。蕎麦屋に戻ってダッシュで野菜を収納する。

 生ものを家に置きに帰ったら、女将は買い物に出掛けているので冷蔵庫の中にすべて収納して、その足で市の食品衛生連合会の会費納入と検便の申し込みに、隣町の保健福祉センターに向かうのでした。久し振りに団地の駅の南側に行くのです。新しい衛生管理ノートを買って、センターを後にすれば、まだ昼間では1時間あったから、西の町のホームセンターに向かって、ひと月振りで店の備品類を購入する。隣のスーパーで足りない家の買い物も済ませる。

 昼になる頃だったから、途中で女将に電話してもう直ぐ帰ると伝えておく。彼女のスポーツクラブの予約は、2時過ぎだから余裕なのです。ちょうど昼には家に戻って、女将が湯を沸かしておいてくれた鍋で蕎麦を湯でて、やっと昼食なのです。今日は忙しい半日なのでした。昨日打った蕎麦と蕎麦湯がとても美味しかったのは贅沢な話。天麩羅もとろろも切り干し大根の小鉢も、すべて蕎麦屋の残り物です。霊犀亭に食品ロスがないのは不幸中の幸いか。

 食後は書斎に入ってパソコンに向かい、今日の仕入れの結果を入力しておきます。それから例によってひと眠り。2時前に女将がやって来て「そろそろ予約をお願いします」と言うので寝覚め、無事に席を取ることが出来ました。珈琲を一杯入れてもらって、女将が稽古場で条幅を書いている間に、また蕎麦屋に出掛ける亭主。天気が好いからやることは沢山あるのだけれど、まずは車の中に入れたままの備品類を片付け、洗濯物を畳み、洗い物を干すのです。

 そして、今日の仕込みにかかるのでしたが、最初に白餡を溶かして火にかけたら、蕗を湯がいて皮を剥き、キンピラの材料を刻んで唐辛子と胡麻油で炒めたら、出汁を入れて味付けをする。味が染みるまで煮立てている間に、日曜日に取った出汁に返しを加え、木曜日からの天つゆを作っておきます。と、女将からの電話で、今朝亭主が買って帰った鰯が少し古くて刺身には出来ないと言う。今日は焼いて食べて、後は煮付けることにするのでした。

 鰯が6匹で180円の安売りのスーパーは、賞味期限内でもこれだから大変。鱗が付いていても、捌いて内臓が崩れているからと直ぐに電話をくれたのは、さすがは女将なのでした。一緒に買ったお袋様にも女将が電話をしたら、やはり判ったらしく、直ぐに煮付けてしまったと言うから好かった。白餡作りは時間がかかるので、鍋のままに入れて続きは明日。5時前に家に着いて大相撲を見ながら、今日も一献なのでした。夜は焼売を仕込むのが亭主の仕事らしい。

5月11日 水曜日 今日も日中は晴れて暑くなった …

 今朝は5時半に家を出て蕎麦屋に向かう亭主。昨日のうちに鍋に浸しておいた昆布と干し椎茸で出汁を取り、蕎麦汁を作っておくためでした。隣の火口には、昨日作りかけの白餡の鍋を、弱火でかけておくのです。冷凍の漉し餡を使っているのに、硬くなるまでには2時間はかかる。大手亡豆を一晩水に浸して、茹でて皮を剥き、柔らかく煮込んで、濾し網で漉すことを思えば、時間は短縮されているのです。朝飯前のひと仕事を終えたらもう陽が昇っていました。

 煙草を買いに大通りまで出れば、新緑の並木が鬱蒼と茂っているのでした。常緑樹は新しい葉が出る時に沢山の落ち葉が出るから、掃除をするのが大変。昨日も道路を片側通行にして、あちこちで業者が落ち葉をかき集めていた。歩道に溜まった落ち葉は前の家の人が掃いているところもあるらしい。団地の景観を保つにも、いろいろな人の努力があっての賜物なのでしょう。家に戻って女将の用意してくれる朝食には、昨日の鰯の煮物が出た。骨まで食べられる。

 食後はゆっくりと書斎で横になって30分ほど眠ったのだろうか、洗面と着替えを済ませて、珈琲を一杯入れて飲んだら、剪定の道具を車に積み込んで蕎麦屋に出掛ける。定休日二日目は、朝飯前のひと仕事もしたし、あとは天麩羅の具材を仕込んでぬか漬けを漬けるだけだったから、気になっていた駐車場に伸びた金木犀を、刈り込もうと思っていたのです。お客の車も停めにくいので、取りあえず周りの枝を払ったけれど、切った枝を袋詰めするのが大変でした。

 30分切っては30分休んで、30分袋に詰めたら、90㍑のビニール袋が満杯になった。屈んで枝を拾う作業で、足の親指に力が入ったのか、ちょっと赤く腫れてきた。今日は医者に行く日だというのに、拙いことになったと思いながら、11時前には家に戻るのでした。女将が蕎麦を茹でる湯を沸かしておいてくれたから、すぐに蕎麦を茹でて昼食の支度が始まる。とろろとモズクが付いて、昼も健康的な食事なのでした。またしても食後のひと眠りを決め込む亭主。

 朝のうちだけ晴れという予報がずれたのか、昼を過ぎてもまだ晴れて暑いくらいだったから、半袖に着替えて一時間以上も眠ってしまうのでした。目を覚ませばもう1時を過ぎていたのです。女将はスポーツクラブに出掛けたかと思ったら、今日はお休みだそうで、食堂で一生懸命何やらやっている様子。見れば取っておいたと言うカッシアの種を、サヤから取り出しているのでした。暇だから播いてみようと思ったらしい。玄関の靴箱を掃除して、何年も前の朝顔の種を見つけ、これも播いたらしい。芽が出れば好いけれど。

 亭主は午後の仕込みに出掛け、そのまま整形外科の医者に行くからと言い残して家を出る。3時から始まる医院は、たしか15分前が受け付け開始だから、早く仕込みが終わっても余裕があるのです。最初に蕎麦豆腐を仕込んで、蓮根の皮を剥いて茹でたら、カボチャを切ってレンジに掛ける。他の野菜をカットして、20分ほどですべて終了。ぬか漬けにはまだ早すぎるから、ゴミ箱のゴミを大きな袋に詰めて外に捨てたり、まな板を消毒したりと時間をつぶす。

 漬け物も終えて蕎麦屋を出たのは2時半過ぎでした。駐車場に車を入れて医者に着いたのが45分。もう沢山の客が待っていたのだけれど、整形外科はリハビリの人が多いから、処方箋をもらうだけの人も含めて、直ぐに名前を呼ばれたのでした。右足の親指を見て、「全然好くなっていないなぁ」と言う医者の言葉に驚く亭主。痛みはだいぶ軽減しているのに、やはり、金木犀の選定作業で、親指で踏ん張ったのがいけないらしかった。また特効薬を出してもらって家に戻るのでした。気長に付き合うしかないと諦める。

5月12日 木曜日 蒸し暑い一日 …

 5時半に蕎麦屋に出掛けて、心配していた糠漬けを取り出せば、薄塩で漬けたからちょうど好い味でひと安心。太陽は出ていたけれど、南の空は怪しい雲行きで、晴れ間は続かないと思えたのです。お新香を切り分けて小鉢に盛り付けたら、蕗と蓮根ののキンピラと切り干し大根も盛り付けて、ラップを掛けて冷蔵庫に入れておくのでした。あまりすることがなかったので、6時過ぎには朝飯前のひと仕事を終えて家に帰るのです。

 塀際の芍薬の花が昨日にも増して、全開で見事だったから、またしても亭主は、写真に撮っておくのでした。芍薬の茎は花の大きな割にはあまりにも細いので、朝露や雨で直ぐに垂れ下がってしまうのです。「立てば芍薬 … 」とは、その華奢で美しい姿を形容したのかも知れない。現代の強い女性のイメージとは、ちょっと合わない気がする、と思うのは亭主ばかりだろうか。「花の命は短くて … 」という言葉も、女性の長寿の時代には、時代遅れなのでしょうね。

 女将の用意してくれた朝食は、炊き込みご飯と鰺の開きがメインなのでしょうが、モズクに納豆、ナメコ汁にキンピラと、身体に好いものばかりが大集合。たまにはステーキでも食べたい、などと言ったら大変なことになること請け合い。お蔭で最近は体重が徐々に減り続けているから嬉しいのです。女将に言わせると、亭主が蕎麦屋で立って仕事をし続けているのも、身体には好いらしいのです。プールへ通わなくても痩せるのなら、これに越したことはない。

 今朝もひと眠りはせずに、今度は蕎麦屋まで出掛け、朝の仕事を始めるのでした。昨日剪定をした金木犀は、ちょうど駐車場の車止めが見えるように枝が払われている。気温は随分高いのだけれど、空はもう曇り空で、今にも雨が降り出しそう。蕎麦屋の店内は21℃もあるのでした。店の窓をすべて開け放ち、今朝の蕎麦を打ちに蕎麦打ち室に入って、750gの蕎麦を捏ね始める。湿度が高かったから加水率は42%弱にしたら、ちょうど好い柔らかさなのでした。

 切りべら26本で135gの束を八つ仕上げて生舟に並べる。暖かくても、この天候ではあまりお客は望めないから、これだけで十分なのです。コロナ禍以前なら、平日でも10人分以下の用意などで営業を始めるなどとは考えられなかった。しかし、3年もお客が減った状態で、いつのまにかそれが普通になったから怖いのです。夜の営業も休んでいるけれど、いつになったら始めるのか、自分でも分からない。それだけの体力がなくなってきたような気もするのです。

 そんなことを考えながらも、今日も苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで皿に盛り付ける。小雨が降り出して、夕刻から雨という天気予報とは少しずれている。開店時刻の5分前には暖簾を出して、お客を待つけれども、昼を過ぎなければ来ないだろう、と思って昼を待てば、まだまだお客は来そうにない。店の中で身体をストレッチしたり、僅か数メートルの距離を行きつ戻りつ運動のつもりで、時間の経つのをもどかしく思う亭主なのでした。

 1時になったので、蕎麦を茹でておろしと山葵でぶっかけで食べる。コシがあって、蕎麦汁も味わい深く、何と美味しい蕎麦だろうか。自分は蕎麦が好きだからそう感じるのだろうかと、いつも思うのです。そんな一人芝居をしているうちに、駐車場に車が入って、女性二人のお客がいらっした。年配の母親と娘らしいお二人が頼まれたのは、ヘルシーランチセットのせいろ蕎麦。隣町からいらっしたそうで、ゆっくりと遅い昼を召し上がった行かれたのです。

 早朝の仕込みから考えたら、何時間も待ってのお客だから、とても有り難いことなのだけれど、一番嬉しかったのは、今日作ったデザートの苺大福と野菜サラダが出たことなのです。売り上げの多少はもう頭にないのが、やはり趣味でやっている蕎麦屋。閉店間際までお客がいたから、女将が来てくれてほっとする亭主。洗い物も少なかったから、2時過ぎには二人で家に戻るのでした。珍しく昼寝もせずに相撲を見る亭主に、早い夕食にはまたご馳走です。 

5月13日 金曜日 終日の雨 …

 夕べからの雨がまだ降り止まず、今日は一日中雨という予報でした。玄関を出れば庭の木々が生い茂り、先日剪定したばかりの木槿の木にもびっしりと若葉が伸びているのでした。女将の稽古場の脇の団扇サボテンも、この間、花芽を残して剪定したと思ったら、もう青々と葉を付けているから、自然の勢いは凄まじい。朝食の前にコンビニまで煙草を買いに出掛けて、ついでに蕎麦屋まで行って、チェーンポールを降ろしてくる。今日は車で出勤の予定なのです。

 駅前からの大通りは木々の緑が鮮やかだけれど、雨のお蔭で空はどんよりと曇っているのでした。家に戻れば、女将が台所で朝食の用意をしてくれている。「今朝のおかずは何ですか?」と聞けば、「鰺の開きと納豆で … 」という答えが返ってきた。海苔とひじきの煮物と蕪のお新香が付いて、味噌汁には蕪の葉と油揚げ。先週の蕎麦屋の二番出汁を持って帰っていたから、味は抜群なのですが…。子どもの頃、郷里の特産だった納豆は、毎日のように食べていた。

 同じく地域の特産だった干し芋や蒸かした薩摩芋もおやつ代わりによく食べた。その反動なのか、大人になったらほとんど食べなくなったのです。別に嫌いなわけではないのですが、どうしても敬遠しがちな食品なのでした。発酵食品だから身体に好いと、女将はご飯と納豆を海苔でくるんで食べている。最近はそれを亭主にも勧めるのです。寿司屋の〆の感じか。昔なら納豆だけで最初のご飯一膳を食べたけれど、今ではお替わりもしないし、おかずが多すぎる。

 今朝は食後にひと眠りをせずに、髭剃り洗面を済ませて、早めに蕎麦屋へ行く亭主。終日の雨だと言うので、お客も来ないだろうと傘を差して雪駄で歩くのを嫌がって車で出掛けたのです。天麩羅の季節の絵柄を描いた天紙が午前中に届く予定だったのです。雨が弱まるまで幟を立てるのを止めて、まずは蕎麦を打っておく。昨日の残りが大分あるから、500g五人分だけ打ち足して、直ぐに厨房に戻るのです。苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで盛り付ける。

 雨が小降りなって来たので、幟を立てて暖簾を出したけれも、昼過ぎになってもお客は来ない。待っているだけでは気が滅入るばかりと、ちょうど腹も空いてきたので、洗い物が増えるのを覚悟で、冷めた油を温め、かき揚げを揚げて蕎麦を茹でる。久しぶりの天婦羅付きのぶっかけ蕎麦です。新玉ねぎが甘くて美味しかった。やはり、食べるものはきちんと食べないと落ち着かないのです。こんな時にお客が来るのを恐れながら、最後の汁まで飲んで満足。

 珍しく、近くのマンションに住む例の子供が一人でやって来た。しばらく見ないうちに随分と大きくなっていたから驚いたのです。「いつものでいいのかい?」とせいろ蕎麦を茹でて、嫌いな薬味も小鉢も付けずに海老の天麩羅を揚げてやる。そして、カルピスとバームクーヘンのお菓子のサービス。無口な子だからあまりしゃべらない。「お婆ちゃんが入院した」とぼそりと話をするので、いろいろ尋ねるけれど、何を言っているのか亭主にはよく聞き取れない。

 男の子が玄関を出るのと、次のお客が入って来るのがほぼ同時なのでした。あの子が来るとお客が続くと、以前のスタッフがよく言っていたのを思い出す。まずはビールのご注文で、天せいろにカレー蕎麦を頼まれる。グラスは一つだけ出して、「どちらが運転ですか?」と尋ねれば、娘らしい若い女性の方が「私です」と応える。突き出しには蕗と蓮根のキンピラをお出しして、蕎麦を出し終えて二本目のビールにはお新香をサービスした。

 話をしながらゆっくりと食べて行かれたので、ラストオーダーの時間を過ぎたら、亭主は片付け物と洗い物を始める。お二人が帰った2時前には、鍋の火を落として大鍋の洗いと天麩羅鍋の油を漉し器に通す。帰り道、コンビニに寄っていつもの焼酎と揚げ物を買って帰宅する。若い店員が「今日は煙草は好いのですか?」「朝のうちに買いに来たから」と応える亭主の顔を覚えているらしい。今日残ったサラダとパリチキンとハッシュドポテトでまた焼酎を飲む。

5月14日 土曜日 未明から土砂降りの雨で …

 未明から土砂降りの雨で、雨の音で目が覚める有様。5時過ぎから起き出して、珈琲を入れて飲む亭主は、朝飯前のひと仕事も考えてしまうのでした。ガレージの車に乗り込む前にずぶ濡れになってしまうし、蕎麦屋のチェーポールを降ろすにもこの雨では大変なのです。テレビを点ければちょうど「YESTERDAY」という映画をやっていたから、以前ちょっと見て好かったので、初めからしっかりと観る。ビートルズが存在しない世界に目覚めた男の物語でした。

 流れる音楽がすべてビートルズのヒットメドーで、世界の誰もビートルズの音楽を知らないから、彼がギターを片手に歌って大反響を得るのでした。翻訳の歌詞もテロップで流れるから、こんな意味だったのかと、改めて聞き馴染んだ曲の素晴らしさを知るのです。今朝は朝食を終えてひと眠りもせずに、小降りになったからと傘を差して蕎麦屋に向かう。雨のみずき通りもまたおつなもので、歩道に植えられた姫車輪梅の花が満開になっているのに感動した。

 蕎麦屋に着いたら、まずは浅漬けを漬けて、空になった蕎麦徳利に新しい蕎麦汁を詰める。幟や看板を出すのはもう少し小降りになってからにしようと考える。店の室温は22℃と高く。今朝はとても暖かい朝なのでした。木曜も金曜もあまりお客がなかったので、生舟の蕎麦は随分と残っていたけれど、午後から天気が回復するという予報だったから、思い切って前向きに600gだけ蕎麦を打つことにした。今朝観たハッピーエンドの映画の影響だろうか。

 600gは六人分の蕎麦が取れる量で、八つに畳むと幅30cmになるのです。これを均等な幅で包丁で打っていくから、六回の試し打ちということになる。意識を集中して包丁を振り降ろし、切りべら26本で135gの蕎麦を六束作れば好いのですけれど、緊張する時間でもあり、これが楽しいひとときでもあるのです。これはやはり趣味の蕎麦屋なのかと、自分でもつい笑ってしまう。採算が度外視なのはちょっと悲しいけれど、なかなか止められないのです。

 今日は600g 6人分を打って、13人分の蕎麦を用意したけれど、気温も高く、昼から雨も上がると言うから、一縷の希望を持つのでした。切りべら26本で135gの束を生舟に並べて、「よ~し」のかけ声と共に、蕎麦打ち台の片付けに入るのです。週末だから手伝いに来てくれた女将も、雨が弱くなって好かったと言って、店の掃除を始める。亭主は看板と幟を出して厨房に戻るのです。今日も同じく、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻むのでした。

 苺大福は昨日作ったものですが、二日目までは十分に柔らかい。野菜サラダはこの雨だからと、三皿だけ盛り付けておきました。暖簾を出して1時間はお客もなく、亭主はかき揚げを揚げてぶっかけで賄い蕎麦を食べておく。「休んできて好いわよ」と女将に言われて、奥の部屋で一服。その間に、汚れた床を濡れ雑巾で拭いてくれて、随分綺麗になったから感謝なのでした。1時前になって、駐車場に車が入って、今日初めてのお客がご来店。

 とろろ蕎麦とヘルシーランチセットのご注文で、女将が野菜サラダを出している間に、亭主はとろろ芋をすり下ろして天麩羅を揚げ始める。若い奥さんと中学生らしい息子が、静かに語らう昼のひととき。外は雨も上がって、道路も乾き始めていました。もう一組ぐらいは来ても好さそうなのに、朝からの天候を考えると難しい。連休で出掛けた人々は今週は外食もしないというのが、店の暇な時間の女将の分析なのでした。こんな週末の日もあるのです。

 ラストオーダーの時間になったら、暖簾と看板をしまい、幟を降ろしてチェーンポールを締まったら、今日の片付けに入る。二人でやるから早いるで助かるのです。火の元の確認をして、忘れ物はないかと亭主が後から店を出るのですが、やはり朝差していった傘を忘れてしまう。家に戻れば、今日残った大福とお茶が出て、寛ぎのひととき。夕食には残ったサラダと漬け物と、冷しゃぶと新じゃがが出て、夫婦で大相撲を観ながらあれこれと語らうのでした。