2022年4月末

4月26日 火曜日 曇り空、躑躅が満開で …

 午前4時には目が覚めて、蕎麦屋に出掛けてひと仕事。最近は朝寝も昼寝も夜の睡眠も、目覚めてから次は何をするのだっけと考えるから、ちょっと怪しい精神状態なのです。そのくせ、夢に見るのは食べることばかりで、昔の職場の近くで何が美味しいからと、時間の都合を付けてかつての同僚と食べに行く有様。夜食を食べなくなって空腹なのだろうか。家に戻って朝食までの時間に、塀際の木槿の剪定を始めた。時期が違うけれど、女将の要望なのでした。

 朝食には蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやとアサリの味噌汁。昨日残った三ツ葉は女将の作ったしみ豆腐とで卵とじ。お腹が一杯になったら、またひと眠り。目が覚めたら洗面と着替えを済ませて、お袋様に電話をする。曇り空だったけれど、農産物直売所までの道には躑躅が満開なのでした。並木の赤い新芽も見事に育って、この時期に散る沢山の常緑樹の枯れ葉は、掃除をするのが大変だろうと思うのでした。時間が早かったからまだ店には野菜があまりない。

 お袋様を送ってマンションまで行けば、躑躅が満開で見事なのです。蕎麦屋で買ってきた野菜を冷蔵庫に収納したら、今日は床屋に行く日なので、急いで隣町まで出掛ける。前に一人お客がいたけれど、「直ぐ終わるから待っていて下さい」と親父様に言われて、話をしながら順番を待つのでした。今日の話題はウクライナ情勢と知床の遊覧船の事故。亭主同様に釣り舟で海に出ていた親父様も、3mの波では釣り船も出ないと言うのでした。

 昼飯の準備をしなければと時間を気にしていた亭主は、床屋が終わったら自宅に電話をして、女将に直ぐ帰るからと言う。今日は、昨日残った蕎麦と揚げて帰った天麩羅で、天せいろの予定なのでした。床屋にいた間に、何時の間にか雨が激しく降りだしていて、曇り空に新緑のハナミズキの通りもまた一興。今週末まで、天気も不安定の予報なのでした。今日は女将のスポーツクラブもお休みだから、大鍋にを沸かして、天麩羅を焼くばかりになっていた。

 昨日揚げて帰った天麩羅は、揚げ方が好かったのか、グリルで焼いたら揚げたてのような美味しさ。銅の天麩羅鍋の威力はこんな所にも現れるのでした。蕎麦湯を飲んで亭主は至極満足したから、お茶も飲まずに書斎に入って横になるのでした。定休日だから気兼ねは要らないと、1時間余り眠って果物を食べて目を覚まし、午後の仕込みに蕎麦屋に出掛けるのです。まずは、朝のうちに昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を沸かして出汁を取らなければ … 。

 その前に、午前中に買い忘れたレタスを何処かで調達しなければいけない。一番近い農産物直売所には、朝は野菜があまり出ていなかったけれど、この時間ならもう持って来ているかも知れないと、新緑の並木道を走って出掛けたのです。果たして、欲しかった野蕗も出ていて、少し古いけれどレタスもあったのでもらって帰る。野蕗のキンピラはなかなか美味しいから、もう一度は作りたかったのです。雨は上がったけれど曇り空で、新緑の並木も映えない。

 蕎麦屋に戻って出汁取りに1時間。やっと手に入れた野蕗を湯がいて皮をむいておこうかと思っていたけれど、夕食の時間が迫っている。明日の仕事が増えるとは思ったが、あまり無理をしてまで仕込みをすることはないと、家に戻って夕食を待つのでした。隠居仕事に無理は禁物というのが、最近の亭主の考え方なのです。それでも通風の足の具合はまだ完治していない。年を取ると治るのも遅いのかも知れない。朝のうちに木槿の剪定を一本だけ済ませて正解。

 夕食は、昨日残ったサラダを添えて鶏の胸肉の炒め物にジャガイモのサラダ。女将が10年ぶりで通風の発作が出た亭主のために、カロリーを減らすために考えてくれた食事療法なのですが、最近はこれで十分お腹が一杯になるから不思議。願わくば、早くプーで泳ぎたいとは思うけれど、まだ靴も履けない状態で夜の防犯パトロールにも参加出来ていない。あまり焦らずに自然の治癒を待つしかないのだと、今夜も焼酎をあおってブログを書いているのです。

4月27日 水曜日 朝まで風が強くて …

 昨夜は足の指の具合も良かったからか、珍しく焼酎のボトルを半分近く空け、9時半には床に就いてしまったのです。蕎麦屋には出掛けているとは言え、やはり定休日は、心も身体も安らぐのでしょう。お蔭で今朝は4時半にはもう目が覚めて、ビュービューという風の音を聞くのでした。夕べ寝るときにも風は吹いていたのに、酔っていたからか気にならなかった。5時のニュースを見てから、少し早い時間だったけれど、雨の中を車で蕎麦屋に向かうのでした。

 昨日は午後にもう一度農産物直売所に出掛け、朝は早すぎてまだ入っていなかった野蕗を二束仕入れて来たのです。先週の倍だから今朝のうちにせめて板ずりをして、皮を剥いて短く切りそろえておければと思ったのですが、塩を振ってゴロゴロとまな板の上を転がすまでは好かったのです。沸騰した大きな鍋で2分ほど茹でて、冷水に取ったらさあ皮剥き。これが細い蕗が何本もあるから、なかなかはかどらない。爪で先の方を剥いだら一気に皮を引っ張る。

 半分ほど終わった頃にやっと慣れて来て、次々と皮が剥けるようになったけれど、30分近くかかっただろうか。7時近くになってやっと家に戻るのでした。朝食の支度をしていた女将が、グリルから取り出したのは、昨日亭主が買って帰ったワラサのカマの塩焼き。魚の大きさがまだ鰤ではないのだろうが、脂が乗ってとても美味しかったのです。「随分食べる処があるわね」と女将もお腹が一杯になったらしく、二人とも満足な朝食なのでした。

 朝が早かった割には、食後に横になってもなかなか微睡めない。仕方がないから蕎麦屋に出掛けて、朝の続きを作業を始めるのでした。蓮根の皮を剥いて、切り分けて酢水で茹でたら、小さめの蓮根を切ってキンピラ用に取り分けておく。残りは明日の天麩羅の具材にする。冷凍してある油揚げを短冊に切って、蓮切りにしたニンジンと一緒に、輪切りにした唐辛子を入れたごま油で炒める。最後に野蕗を入れて出汁で煮て、味つけをして汁の少なくなるまで待つ。

 ちょうどその時に玄関が開いて、元のスタッフがまた筍を持って来てくれた。すぐ近くだとは言え、雨の中をわざわざ有り難うございますと、昨日買っておいた苺としらぬいを袋に入れて渡す。今年はこれで最後だと言う。短い期間だけれど旬の物とはそれで好い。コゴミもタラの芽も、今採ってあるものでお終いだから、旬の山菜の天麩羅は今週限りで終わりになります。その後はもう夏野菜になるのだろうか。天麩羅用に筍の先端を切って冷凍しておく。

 残った筍を家に持ち帰れば、「夜は筍ご飯にするわ」と女将が言う。スポーツクラブの予約があるので、早めに昼食の用意を始める亭主。女将は隣で筍の梅和えを作っている。スープはアサリとレタスのコンソメ味で作り、フライパンに油を引いて肉と玉葱、ニンジンを炒めてご飯を入れる。あまりにも亭主の手際が好かったので、11時前には早すぎる昼食を食べるのでした。お好み焼き用の青海苔と紅ショウガもあったから、ちょうど好い塩梅。

 食べたら直ぐに眠気が襲ってきたけれど、「眠いのに悪いけれど(予約開始は)11時半ですからお願いします」と女将に言われ、今日のブログの写真をパソコンに移す。パソコンの前に座っていれば忘れることはない。40分ほどブログの記事を書いて、5分前から壁の時計の秒針を眺めて、ぴったり11時半に予約を完了する。今日はまだ誰も予約を入れていなかったけれど、早い日には1分もしないうちに埋まってしまうのです。晴れてゆっくりと午後の昼寝。

4月28日 金曜日 朝はひんやりでしたが …

 夕べも早く休んだので、今朝はまた朝飯前のひと仕事です。外はひんやりとした空気で、北風が入り込んでいるらしい。向かいの休耕地に生えたポピーのオレンジ色が、曇り空なのにやけに映えるのでした。一日三本のバス停は、駅から団地の中を通って蕎麦屋の前に停まるから、近所の老人たちが買い物や通院に使うことが多い。この他にも、駅から10分ほどで蕎麦屋まで来る市のコミュニティーバスが一時間毎にあり、この区間は手を上げれば止まってくれる。

 気になっていたのが、昨日の夕刻に漬けた糠漬けなのです。塩を薄めにして漬け込んで、糠床を冷蔵庫に入れて14時間。これ以上長く漬けると塩辛くなってしまうから難しい。ラディッシュのあるうちは、赤い色がアクセントになってなかなか好い。ナスの色止めもしっかりと効いているのです。ラップを掛けて冷蔵庫に入れたら、次は昨日作った野蕗のキンピラを小鉢に盛り付ける。蕗を倍増したから香りが好い。亭主はかなり気に入っているのです。

 盛り切れなかったお新香は、小さなタッパに入れて家に持ち帰ったけれど、まだ前のお新香が残っていたらしい。食堂に入ればぷーんと懐かしい香りがしたのは、女将が鰺の開きを焼いていたから。便利な時代だから冷凍してある筍ご飯も、レンジでチーンすれば美味しく食べられる。食後のお茶をもらったら、例によって亭主は書斎でひと眠り。20分ほど微睡んで、髭を剃ったら着替えをする。女将の朝ドラが終わる時間に「行ってきま~す」と玄関を出る。 

 庭の芍薬の赤い蕾が大きくなっている。季節はいよいよ初夏なのです。蕎麦屋までの道程も、足の指をかばいながらも、だいぶ歩くのが楽になっている。それでもまだ親指の腫れは引かないから、今回はかなり重傷なのだろうか。靴が履けないのでは夜のパトロールにも参加出来ない。それが気がかりでならないけれど、女将は冷たく「痛いのを無理をして、酷くなっても知らないわよ」と言うのでした。年を取ってやはり回復が遅くなっているのだろうか。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。加水率42%でちょうど好い柔らかさ。室温は19℃だから、暖房を入れる程でもないのです。蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱を刻み、大根、生姜をおろしておきます。9時を過ぎた頃に、蕎麦打ち室に戻って、生地を伸して畳んで包丁切り。最近は、定休日明けには750gで八人分と決めている。コロナ禍になって平日に8人を越えるお客は滅多にないのです。

 再び厨房に戻って苺大福を包み、ブロッコリーとアスパラを茹でて、野菜サラダの具材を刻む。11時前には大釜の湯も沸いてポットに入れて、天麩羅鍋に新しい油を注いで、天つゆの鍋も火にかけておく。店の掃除は簡単に、箒で床を掃いたらアルコールでテーブルを拭く。亭主一人で始まる定休日明けの営業は、何となく心細い。もう8年になるというのに、最初のお客が来て身体が動き出すまでは、どこか気持ちが落ち着かないのです。

 今日は家の近所に住む同年代の女性が、久し振りに蕎麦を食べにいらっした。カウンターの隅に座って、文庫本を読みながら、天せいろが出来上がるのを待つ。「筍とコゴミの天麩羅をお付けしました」と言って盆を運べば、「コゴミが食べられるなんて」と懐かしんでいらっした。次のお客はご夫婦で、テーブル席に座ってやはり天せいろのご注文。食欲のなかった娘さんが、蕎麦を食べに来て美味しかったと、今度は親御さんが食べにいらっしたのでした。

 最後のお客はご夫婦で鴨南蛮蕎麦のご注文。野菜サラダを運んで行けば「わぁ、綺麗ね」と奥様が喜んでくれました。鴨肉を焼いて温かい汁でお出しすれば、玄関が開いて先ほどのお客が戻っていらっした。「お釣りを沢山くれすぎたわよ」と、千円札とレシートをを出して、亭主のレジの打ち間違いを教えてくれたのです。なんとも親切なお客様だと、残っていた苺大福を包んで持って帰ってもらったのです。「早く一人に慣れてよ」と言われてしまった。

 お客が帰って洗い物を片付けていたら、スポーツクラブから帰った女将が最後の手伝いに来てくれる。一緒に蕎麦屋を出るけれど、足の具合を気にする亭主はかなり後から家に着く。彼女のスポーツクラブの予約をするパソコンは、もうスイッチが入っている。一時間遅れで画面を開いて、残り一つの席をゲット。夜はあまり食べるものがないので、亭主がコンビに唐揚げを買いに出掛けた。ついでに週末は寒くなるらしいので灯油を買ってくる。1㍑140円 … 。

4月29日 金曜日 雨雨雨の金曜日でしたが …

 6時前から目覚めて居間で一休みしていたら、女将が台所に入る前に「また雉が鳴いているのよ」と知らせに来たのです。最近、家の裏の空き地に雉が来ると言うので、裏窓から様子を窺えば、確かに色の綺麗な雉の雄が、畑の草を啄んでいるではありませんか。鳴き声がキキーッと独特だから、女将も気になるらしいのです。蕎麦屋の前の畑にはいつも雉がいるのですが、何百メートルも離れた家の裏にいるのは同じ雉か、雌を呼んでいるのかも知れない。

 朝ご飯は骨取りの鯖が今朝のメインのおかずで、筍のお吸い物と筍のご飯が季節を感じさせるのでした。箸置きは陶芸家の古い友達の焼いてくれたもので、蕎麦屋の大福を載せる皿と同じ文様で、八角形の箸も彼女が何かの折に手渡してくれたものなのです。女将の作る食事と旧友の贈りものとが、亭主の心豊かな毎食毎の彩り。朝飯前のひと仕事に出掛けなかった分、今朝は少し早めに家を出て、ご近所の卯木の花を眺めながら蕎麦屋に向かうのです。

 今朝はまだ時間が早かったから、蕎麦打ちの前に大釜の湯を沸かす側のレンジ周りの掃除をしておく。家庭用のレンジをダブルキッチンにしてもらったのは好いけれど、大釜を二つ並べて湯を沸かす側は小さな火口が使えない。茹でる蕎麦粉がこぼれるのか、何日かすると白く湯垢がレンジの表面に固まっているのです。大釜に水を入れながら、洗剤で洗って雑巾で汚れを取って、今日も綺麗にして使うのでした。9時前になったので蕎麦打ち室に入る。

 昨日の蕎麦が三つだけ残っていたから、今日は天気も悪いし、雨が降り続くというので、750g を打って11人分の蕎麦を用意する予定でした。加水率は42%で、今朝は気温も低かったからか、ちょうど好い硬さの生地に仕上がりました。生地の仕上がりは、その後の伸しや畳みにも大きな影響を与えるので、今朝はとてもいい状況。こんな天気ではお客が少ないだろうと言う気持ちも、蕎麦打ちが上手く出来たという喜びでかき消えていくのです。

 すぐそこの見えない未来と向き合う気持ちは、不安でよりどころのないものだけれど、蕎麦打ちの技術の向上を目指す亭主の気持ちは、常に前向きなのが自分でも不思議なくらいなのです。これはほとんど隠居仕事の蕎麦屋の心境。予報よりも早くから雨の降りだした天気は、回復する兆しがないから、女将と二人で雨の降る外の景色を眺めながら、お客は歩いては来ないし、蕎麦屋に食べに行こうなどという気にもならないだろうと、話をするのでした。

 それでも、苺大福を包んで野菜サラダの具材を刻み、三皿だけ盛り付けておいたら、昼過ぎに雨の中を次々とお客がいらっしたから不思議なのです。 やはり休日だからなのでしょうか。天せいろにヘルシーランチセット、とろろ蕎麦に暖かい天麩羅蕎麦と、皆さんリピーターの方なのでした。デザートに用意した苺大福を、お持ち帰りで幾つも持って帰られるお客もいたのです。その後のお客には、「苺大福は売り切れてしまって」と女将が応える。

 結局、降りしきる冷たい雨の中を10人を超えたお客が入って、連休の始まりなのだという認識を新たにしたのです。最後にいらっしたお子様二人を連れたご夫婦も、閉店間際にいろいろと注文なさって、亭主は調理と片付けをしながら、女将が対応をする。このゴールデンウィークからは、ご飯物のメニューをなくすことにしたので、炊飯器もご飯や味噌汁の器も片付けたのです。寂しくもあるけれど、コロナ禍を乗り切るための工夫の一つです。

 終わってみれば、それほど忙しかったという気もしないから、少しは混んだ状態に慣れてきたのかも知れない。ご飯物のメニューを削った新しいメニューを、昨日の夜に完成したのに印刷をしようと思ったら、プリンターのインクがなくなっていたので、今日は駅前の量販店に行って買い求めて来た。休日だから、今日はニュースもなくてスポーツ番組ばかり。水泳の大会もやっていたけれど、プールを休んでいる亭主は、今ひとつ興味がそそられないのでした。

 昼食は食べる暇がなかったから、家に帰って女将に餅を焼いてもらって食べても、何処に入ったのか分からない。心待ちにしていた夕食は、ホウレン草と豚肉のロースの薄切りで常夜鍋。用意が出来るまで、亭主は筍の若竹煮と烏賊の辛子明太子で一献なのです。もう直ぐ大相撲も始まると言うから、また楽しみが増える。沈没した遊覧船が発見されたのも好いニュースだった。風呂上がりに体重を量ったら、昨日よりも1㎏も減っていたから嬉しかったのです。

4月30日 土曜日 早いもので今日で4月も終わり …

 夕べも10時前には床に就いたので、今朝も5時前には目が覚めてしまう。目覚めの珈琲も飲まずに、車で蕎麦屋まで出掛ける亭主。昨日は蕎麦が全部売り切れてしまったから、今日はどうしても二回蕎麦を打たなければならなかったのです。いつもの時間では、開店時刻に間に合わないから、朝飯前のひと仕事で、まずは一回目の蕎麦打ちを終えてしまおうと考えたのです。小鉢もほとんどなくなっていたから、浅漬けを漬けておけば好いと思った。

 蕎麦屋の厨房に入って、カウンターに干した昨日の洗い物を片付けながら、お湯を沸かして珈琲を入れたら、まずはしっかりと目を覚ますのです。5時過ぎにはもう朝日が昇ってくる。森のだいぶ北寄りに太陽が出てくるのは、季節が夏に向かっている証拠。店内の気温は14℃といつもより寒いくらいなので、エアコンを入れて暖めておく。次に蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打ち始める。加水率はぴったり42%と、絶妙な硬さで8人分の蕎麦を仕上げました。

 再び厨房に戻り、キュウリ、ナス、カブ、ラディッシュを少し薄めにスライスして、ビニールの袋に入れたら浅漬けの素に漬けておく。最後に野蕗のキンピラを全部小鉢に盛り付け、時計を見ればもう直ぐ7時になるところでした。急いで家に帰れば、女将が台所で朝食の用意をしてくれていた。今日のおかずは鯖の塩焼き半分と、蕎麦屋のミニ菜園で採れた絹さやの卵とじ。筍ご飯も今日が最後らしい。昨日持ち帰ったお新香のラディッシュが紅一点。

 女将の朝ドラが終わる頃に家を出て、蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終え、浅漬けが漬けすぎにならないうちに、取り出して小鉢に盛り付ける。ぬか漬けにした方が、ラディッシュの赤い色が綺麗に出るのが分かった。最近は、子どもの頃からぬか漬けを食べてこなかったような人も多いから、お客に出すのには簡単な浅漬けの方が無難なのですが、亭主はどうも添加物の匂いが気に入らない。これも時代なのでしょうか。年配の女性などはぬか漬けを褒めてくれる。

 そして、いよいよ本日二回目の蕎麦打ちにかかるのです。天気が好ければお客が入るかも知れないと、もう一度、八人分を打とうかとも考えたけれど、連休だから天気が好ければ何処かに出掛ける人も多いかと、悩んでしまう。明日は下り坂の天候と言うから、残ってしまうとまた困るという悪循環に陥るのです。結局、間を取って600g 六人分を打ち、早朝の分と分けて二箱の生舟に入れるのでした。加水が好かったから、今日は綺麗に蕎麦が仕上がった。

 天気が好いのに、昼まではお客がないので、やはり皆さんお出かけなのかと、女将と二人で暇をもてあます。昼過ぎから、やっとお客が入り始めて、満席の看板を出して対応する。この間、女性三人でいらっしたと言うお客は、今日はご主人らしき男性と二人でいらっしゃる。歩いていらっしてカウンターに座った年輩のご夫婦は、結婚50周年だと言うので、ご主人が日本酒を頼まれて、ゆっくりと話をして行かれた。野蕗のキンピラが好評なのでした。 

 昨日よりはお客の数は少なかったけれど、カウンターを夾んでゆっくりとお客と話が出来るのもまた一興。隠居仕事の蕎麦屋ならではの楽しみなのです。「今日で四月も終わりですね」と亭主が言えば、「早いわよねぇ」とお客が応える。晴れた天気は夕刻まで続いて、気温が少し下がってきたけれど、家に戻って亭主はこの間始めた木槿の剪定を終わらせる。この夏は花が少ないかも知れない。賄い蕎麦をぶっかけで食べたから、今日はゆっくりと午後の昼寝。