2022年4月上旬

4月6日 水曜日 暖かな一日 …

 やっと暖かな朝が来ました。桜の花は昨日のうちに見て回ったから、今日は蕎麦屋のミニ菜園の様子を見に行った。この間、採ったばかりのタラの芽が、また新しく生えてきている。季節の天麩羅の具材にと、摘んでに三日は保存しておくけれど、お客が少ないから使い切れない。そのうちに彼等の勢いに負けて、葉が伸び広がってしまうのが例年のことなのです。コゴミの畑も去年の枯れた葉の間から、新しい芽が吹き出してくる。これもどんどん採らないと … 。

 今朝の食事は昨日買ってきた魚かと思ったら、豚汁と親子丼の具が出たから、やはり蕎麦屋の残り物が優先されるのです。二人だけだと余った食材を消化するのもひと苦労。早く使ってしまった方が好いものから、手を替え品を替え、おかずを作る女将の苦労がよく分かります。それで亭主は何とか蕎麦屋を続けていられるから、本当に有り難いのです。今朝は20年も前のジム・キャリーの「マジェスティック」という映画を観て、蕎麦屋に出掛けたのです。

 明日の支度はそれほど大変ではなく、仕込んで置いた蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めて、大根とイカの煮物と蓮根のキンピラを小鉢に盛り付ける。女将のスポーツクラブの予約を取るには、まだ時間があったから、天麩羅の具材を切り分けて冷蔵庫に保存するのでした。ぬか漬けを朝のうちに漬けておいたから、夕刻に取り出しに来れば明日の支度は完了なのです。今日からコロナ禍でしばらくお休みだった夜の防犯パトロールが始まるので、早めに準備したのです。

 乾いた洗濯物を畳んで、最後に蕎麦豆腐を仕込んだら、午前中の仕込みは終わりなのでした。店の中は暖房を入れなくても18℃はあるから、日中は随分と気温も上がっている様子。吹く風も爽やかで青空も広がっている。早めに家に戻り、蕎麦を茹でる鍋に水を汲んで、レンジに掛けるのです。食堂のテーブルを拭いて、箸を並べて蕎麦猪口や薬味の葱や大根おろしを用意するのも亭主の仕事。やっと稽古場にいた女将が現れて、小鉢の野菜を温め始めます。

 今日は蕎麦を食べるにはちょうど好い暖かさで、冷凍してあった天かすを鉢に盛って用意したら、女将も結構食べてくれた。蕎麦汁に天かすを入れると、コクが出るというのか、味わいがまた一つ違うのです。蕎麦を茹でた鍋から蕎麦湯を汲んで、亭主は余韻を楽しむ。昼は蕎麦一杯ではちょっと物足りないというのが正直なところなのです。夕刻に、ぬか漬けのお新香を取り出しに蕎麦屋に行くまで、何をしようかと考えながら、書斎で横になってしばし微睡む。

 あまり天気が好くて暖かいので、蕎麦屋から持ち帰った剪定用のノコギリを持ち、脚立を出して、花の咲き終わった庭のスモモの木を少し丈を短く切っていく。一本の木の先を切り終えたところで、ちょっと疲れたのでまた今度と家の中に入る。庭の水仙が咲いていた辺りに、もう芍薬の新芽が伸びていました。今朝方女将が「今年はあんなにあった十二単が一つもなくなっている」と言った辺りを見れば、茨城の祖母にもらった釣鐘水仙が花を咲かせていました。

 花の大好きだった祖母は、とうの昔に亡くなったけれど、未だに我が家の庭には花が残っている。何の手入れもしていないけれど、毎年のように、庭の何処かに芽が出て花を咲かせるのです。書斎に戻って今日の写真をパソコンに取り込んでいたら、去年まで蕎麦屋に来てもらっていたスタッフから電話が入って、筍を茹でたから持って行くと言われ、急いで車で蕎麦屋に出掛ける亭主。懐かしい顔を見て、お互いに「ご無沙汰しています。お元気ですか」と挨拶。

 平日の三日でも務めがあった頃は、やはり生活に張りがあったと言う彼女。元気にはしているけれど、自分が呆けてしまうのではないかと心配していた。なかなかお客の戻らない店の現在を話して、亭主は申し訳なく思うのでした。糠床から野菜を取り出して、小鉢に盛り付けたら、家に帰って早めの夕食を済ます亭主。薄暗くなってからの夜の防犯パトロールには、三ヶ月ぶりで老人達が集う。久し振りの 5kmの夜行で足が痛くなったのでした。

4月7日 木曜日 今日も暖かな一日で …

 長い時間床の中にいたからか、今朝もストーブを点けるほど寒くはなかった。昨日の夜間パトロールで久し振りに随分と歩いたものだから、夕べは10時半には床に入ったのに、朝は7時まで目が覚めなかったのです。珍しく女将に起こされる。やはり、適度な運動が身体には好いのでしょう。薄塩のほっけとお新香の朝飯も美味しく食べられた。いつもの時間に家を出れば、幼稚園の裏口の階段を保母さんらしき女性が掃いていた。無数の桜の花びらが散っていた。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、まずは蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。室温が16℃もあったから、暖房も入れずに蕎麦粉を捏ね始める。加水率は43%だったけれど、暖かくなったからと冷たい水で水回しをしたら、今日はなかなか水気が出て来なくて生地が硬いのです。冬の間、手が冷たすぎるからとお湯を使っていたから、加水率が低くても上手くいったのかも知れない。いつもより長い時間捏ねて、やっと蕎麦玉が出来上がるのでした。

 蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って葱切り、大根・生姜のおろしを済ませ、再び蕎麦打ち室に帰って蕎麦玉を伸す作業。八つに畳んで包丁切りを始めれば、生地が少し硬かった分、綺麗なエッジのついた蕎麦が仕上がるのでした。この方が蕎麦のコシがあるように思えるのです。最近は慣れてきて少し柔らかい方が打ちやすいと思っていたけれど、初心は忘れてはならないのでしょう。今日は一人分135g で切りべら26本、800g 9人分の蕎麦を用意しました。

 厨房に戻って苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んでいると大釜のお湯が沸く。ポット四つにお湯を注いで、蕎麦茶も入れておきます。黄色と赤のパプリカを、キャベツとレッドアーリの上に並べて写真を撮ったら、ニンジンのジュリエンヌを刻む。キュウリのスライス、トマト、パイナップルを切って、最後にブロッコリーとアスパラを添える。天麩羅の具材や天ぷら粉を冷蔵庫から取り出し、新しい油を天麩羅鍋に注ぎ、天つゆの鍋を火にかけて11時過ぎ。

 店の掃除も直ぐ終わるから、昨日近くに住む前のスタッフに貰った筍を切って、冷凍保存するのでした。暖かくなったせいか、平日の割にはお客が来た木曜日。三人連れのお客に、別々のメニューを頼まれるとさすがに時間がかかる。お茶を出しながら「順番にお造りしますから、お待ち下さいね」と言って、亭主は黙々と調理に取りかかるのです。洗い物を済ませて暖簾をしまったら、自分の昼飯に蕎麦を茹でて食べておく。女将が手伝いにやって来てくれた。

4月8日 金曜日 初夏を思わせる暖かさ …

 先日来、右足の親指が痛いから、また爪が丸まってきたのかと思っていたのです。水曜日の晩に、痛いのを我慢して夜のパトロールに出掛けたものだから、悪化したのだろうぐらいに考えていた。ところが、本人は、昔のことなどとっくに忘れていたから怖いもの。東北の大震災の折に、職場で夜まで対応をして膝が痛くて歩けなくなったことがある。夜間外来に車椅子に乗って診療を受けたところ、痛風の発作だということで、しばらく医者に通ったのでした。
 尿酸値が高いのは血筋ですよと若い医者が言ったのを思い出す。体重を減らすことと、脱水症状にならないように水分を補給することが大切と、自分でも心がけて、その後、発作は起きなかったのです。「酒を飲んだ後は水を飲め」とは、昔からよく言われることだけれど、アルコールを分解するのに水分を要するから、水に溶けて体外に出るはずの尿酸が関節に結晶化してしまうらしいのです。

 痛い足を引きずって歩いて蕎麦屋まで歩くのも嫌なので、今朝は車で出掛けて朝飯前のひと仕事。念のためにと机の引き出しにあったロキソニンを飲んだから、少し痛みはやわらいでいるのです。そう言えば、以前は処方箋をもらわないと手に入らなかったのに、この薬があるということは、最近も発作が起きていたのか。とにかく、昨日今日の二日間は亭主一人の営業だから、接客の際に辛いのも困るのです。小鉢を盛り付け、天麩羅の具材を切って家に戻る。

 足の親指のことを気にしながら、居間の椅子に座ってお茶を一杯飲んでいるうちに、朝食の支度が出来て「ご飯ができました」と女将が声を掛ける。今朝のメインは蕎麦屋で残った三ツ葉の卵とじ。ちくわが入っているのがひと工夫。多すぎる小鉢を食べ終える前に茶碗の飯はなくなっているのでした。「寝るのだったらシーツや枕カバーは後で洗うわ」と女将に言われ、朝が早かったからそのまま床に横になって30分ほど眠るのでした。今日は洗濯日和なのか。

 晴れ渡った空を見上げながら蕎麦屋に出掛ける亭主。朝の仕事を終えたら、今日も早速、蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つ。小麦粉の袋を空にしたら、ちょうど180g あったので、今朝は 900g の蕎麦を打つことにした。二八だから、小麦粉と蕎麦粉と2:8の割合は変わらないのです。久し振りに多めの粉を捏ねて、室温も18℃はあるから身体がぽかぽかしてくる。加水は43%だったけれど、今朝はお湯を使ったから硬さはちょうど好い具合なのでした。

 八つに畳んで、切りべら26本で一人前135g で包丁を打てば、10人分の蕎麦が取れた。暖かくなってお客も増えるから、平日はこのくらいの分量でちょうど好いのかも知れない。昨日の蕎麦が三人分残っていたから、合わせて13人分の蕎麦が用意できたのです。蕎麦の数に余裕がないと、どうしても神経を使うから、多少は残ってもいい。残りすぎるのも困るのでそこが難しいところなのです。今週はまた値の張る蕎麦粉を発注しなければいけない。

 厨房に戻って苺大福を包み、野菜サラダの具材を刻んでも、まだ11時前だったから、朝のひと仕事が効いている。テーブルを拭いて店の掃除をし終えた頃には、店内は20℃近くあったから、エアコンも入れずに換気のために窓を開けていた。今日は昨日にも増して蕎麦日和に違いない。コロナ前なら10人を越える客が来たものです。小学校の入学式らしく、若い夫婦と着飾ったこどもが蕎麦屋の前を何組も通って帰るのでした。桜は終わったけれど天気は好い。

 陽射しはまるで初夏のようで、太陽の光は熱いくらい。暖簾を出してしばらくすると、駐車場には次々と車が入ってくるのでした。テーブル席とカウンターとそれでも二回転はしないから、そこがコロナ前と違うところ。上手い具合に前のお客の調理が終わってから次のお客がいらっしゃるから、「今、お茶をお持ちしますのでお待ち下さい」と声を掛けて、前のお客に注文の品を運ぶ亭主。これが一度にご来店だったらどうしようといつも心配するのです。

 コロナ前とは違うけれど、昨日今日と平日の割にはお客が入ったので、更に暖かくなるという週末が楽しみです。洗い物を片付け、昼の賄い蕎麦を食べ、大釜の洗いを残して亭主は一休み。今日は女将の帰りが少し遅いから、助けには来てくれないと分かっている。ミニ茶園の春菊を袋に一杯採って、菜の花と新緑の森を眺めながら誰もいない家に戻れば、家の中も随分と暖かいのでした。今日は夕飯を食べ終えたらお新香を漬けに、また蕎麦屋に出掛けなければ。

4月9日 土曜日 外の方が暖かい一日 …

 午前5時半に目が覚めて、今朝は出汁取りとお新香を糠床から取り出しに、蕎麦屋へ行かなければと眠い目をこする亭主。通風の足の指が痛いので、歩いて行くのは億劫だったから、ガレージを開けて車で蕎麦屋まで行く。6時の東の空には、もう陽が昇っていました。季節はどんどん移り変わっていくらしい。老いた人間の方が、付いて行くのが難しいと感じる程です。夕べ野菜を漬けた糠床は、調理台に出したままにして置いたから、ちょうど好い漬かり具合。

 隣のレンジでは昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を沸かしあったから、直ぐに出汁取りの作業にかかるのでした。店の中は18℃とかなり暖かいのです。それでもやはり出汁取りはたっぷり小一時間はかかるかので、朝食の時間に間に合うかが心配です。今日の分の蕎麦汁はあるのだけれど、明日の分には到底足りないので、今朝のうちに出汁は取っておかないと間に合わない。後から忙しい思いをするのは嫌だから、今朝は頑張って朝飯前のひと仕事を終える。

 何とか朝食に間に合って家に戻れば、今朝は鯖の塩焼きがメインのおかずで、久し振りに脂の乗った鯖を美味しく食べたのです。最近の鯖は、塩気も少なくて、あらかじめ骨を取ってあるらしく、年寄りにはとても食べやすい。食事の後はまたひと眠りする亭主。女将が洗濯物を干したり、台所の洗い物を終えて朝ドラを見る間に、書斎に入って横になるのです。30分ほど微睡んだら、頭はすっきりとして、9時前に今度は歩いて蕎麦屋に出掛ける。 

 「庭の隅のチューリップが増えてているのよ」と女将が言うものだから、かつての花壇を見てみると、確かに去年は一組しかなかったのが、二組に増えていた。二つが離れているから球根で芽が出る以外に、花が咲くのだから恐らく種でも育つのではないかというのが亭主の考え。あまり手入れをしない庭の水仙などが、何年も経って違う場所に花を咲かせるのも、皆、同じような仕組みなのではないかと思っている。「植えていないのに不思議ね」と女将は言う。

 暖かい風に吹かれながら蕎麦屋に着いたら、朝の仕事を終えて、週末だからご飯物を出すので、米を研いで炊飯器にかける。最近はご飯物がほとんど出ないから、女将ともそろそろご飯物は止めようかと話しているのです。安く美味しいご飯物を出す店は、近隣でも沢山あるし、コロナ禍でお客の数の減る中で、蕎麦以外の食事を求めて来店するお客は少なくなっているのでしょう。美味い蕎麦を食べていただくの一点に絞るべきなのかというのが亭主の考え。

 今朝は750g 八人分の蕎麦を打ち、昨日の蕎麦と合わせて12人分を用意しました。天気も好く暖かくなったとは言っても、週末でも10人を越えるお客が来る日はなかなかないのが実情です。それでも今日は、駐車場が満杯になって、座席も二回転目に入ったところで営業時間が終わりになる。皆さんリピーターの方たちなのでした。元来、蕎麦が好きというお客が、昼に蕎麦を食べに来ることがほとんどなのだと、この時期より鮮明に思い知らされるのでした。

 娘さんらしき女性とともにいらっしたお婆さんが、「ここはご夫婦が穏やかで好いお店だよ」と、教えてあげたお友だちも食べに来たのだとおっしゃる。これからチューリップ祭りに出掛けるのだとお友だちと一緒にいらっした女性は、家の直ぐ近所の常連さん。暖かい日は天麩羅がよく出るから、今日も具材を切り足すのでした。筍やタラの芽、コゴミなど旬の山野菜の天麩羅ををサービスでお付けした。暖房も入れずに窓は開けたまま、本当に暖かい一日。

 ラストオーダーの時間までお客を待って、片付け物や大釜の洗いに入る。明日もどれだけお客が来るかは分からないけれど、今日打った蕎麦を亭主が食べてしまうと一人分減るので、家に帰って女将に餅を焼いてもらって遅いお昼にしました。パソコンに向かって、今日の売り上げと写真を入力したら、亭主はごろりと横になってひと眠り。女将は買い物に出掛けて、夕食のおかずを仕入れてくる。久し振りに新鮮な鰺があったと、晩はこりこりした鰺の刺身 … 。

4月10日 日曜日 初夏を越える暑さで蕎麦日和 …

 暖かい朝でした。室内は20℃近くあるのに、ちょっと薄ら寒いのは、最近の暖かさに慣れてしまったからなのだろうか。今日は半袖かしらと思ったけれど、薄手の長袖に替えて蕎麦屋に出掛けていく亭主なのです。空は何処までも青く、蕎麦屋の向かいの畑の菜の花が、後ろの森の木々の新緑と相俟って、まだ春のような、そしてもう初夏のような風景を見せている。耕作をしていない畑に植えてあった小松菜が広がって、この菜の花になっているらしかった。

 今朝は蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、直ぐに厨房で小鉢に盛る野菜を仕込むのでした。お客が多くなったので、用意した小鉢の具材が足りなくなっているのです。今朝は今週はまだ作っていない切り干し大根を煮て、今日の分がなくなったら盛り足そうと思います。女将が家で春菊を湯がいて、すり胡麻と一緒に持って来てくれた。胡麻和えにしろと言うことなのですが、これは食べる直前に作らないと水が出てしまう。使うのは明日になるか。

 今朝も昼の暖かさを見込んで、蕎麦は余裕を見て850g 9人分を打って、加水率43%で仕上げました。800g だと少し足りない時があるので、しっかりと数を揃えたい場合には多めに打つのです。切りべら26本で135gの蕎麦を生舟に9束並べて、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分の用意をしました。コロナ禍以前はいつも15人分は用意していたけれど、お客が減ってあまり蕎麦粉を無駄にしないようにと考えているのです。それでも今日はすべて売り切れた。

 苺大福と野菜サラダとを作り終えた頃には、あまり暑いので亭主は長袖のシャツを脱いで、タンクトップの下着の上に店の上着を着て前掛けをする。開店までにはまだ間があったから、草刈りもしていないミニ菜園に出て、タラの芽とコゴミを摘んでくる。天麩羅がよく出る陽気だから、筍と合わせてタラの芽とコゴミをサービースで付けているのですが、毎年のこととながら、そろそろ彼らの成長の早さに、店で出す数が追いつかなくなっている。

 開店して間もなく、若いカップルがご来店で、この暑いのに、いきなり熱々の鴨南蛮蕎麦を頼まれたから驚いた。早い時間だったから、野菜サラダを食べていただく間に、余裕を持って鴨と葱を焼苦ことが出来る。料理を出し終えた頃に次のお客がいらっしゃるというタイミングの好さ。ほとんどが天せいろのご注文で、たまにせいろ蕎麦や大盛りが出る。今日は駐車場も入れ替わり立ち替わりで、満席の看板を出しながら、二回転10人以上のお客が入ったのです。

 コロナ禍で少なかったお客も、久々の10人越えで、女将も亭主も休む間がなかったから、忙しくても嬉しかったのです。お客も皆さん菜の花畑や森の新緑を眺めながら、暖かく晴れた今日の青空を楽しんでいる様子なので好かった。洗い物と片付けを終えたら、家に戻ってパソコンに向かう亭主。ひと眠りして夕食の支度に台所に入れば、今日もまた野菜サラダの刻んだ野菜をお好み焼きにして消化する。夕食後はまた蕎麦屋に出掛け、お新香を漬けて片付けです。

4月11日 月曜日 燕が飛び交う季節 …

 5時前に目が覚めたけれど外が薄明るかったので、蕎麦屋で掛けて朝飯前のひと仕事。定休日前なのに、夕べ糠味噌に野菜を漬け込んだのが気になっていたのです。小鉢が足りなかったから、残った野菜で少しだけお新香を作っておこうと思った。ついでに二つの大鍋に湯を張りながら、カウンターに積まれた沢山の盆や蕎麦皿を片付けておく。店の中は朝から20℃と昨日の暖かさが残っているのでした。明るくなって、犬の散歩に通る顔見知りの農家の親父様と、お互いに手を振りながら挨拶を交わす。

 家に戻れば女将もいつもより早く台所に立って、早めに朝食の支度をしてくれていた。筍の若竹煮とぬか漬けの小鉢に今、朝のメインは蕎麦屋から持ち帰った親子丼の具材を煮込んだもの。コロナ禍での対策として、平日はご飯を出さなくなったから、昨日出た親子丼の具材が半分残ってしまったのです。もう直ぐご飯物そのものを止めることにしているので、こうした無駄はなくなるけれどちょっと寂しい気もするのでした。臨機応変に考えなければ。

 朝が早かったので朝食を終えたら小一時間ほど眠る亭主。家の中は20℃もあるというのに、なぜか薄ら寒い気がするのでした。季節が移り変わって、このところ段々暖かくなっているから、それに慣れてくると、不思議なことに、もうこの間とは身体の反応が違っている。早朝に店でいろいろ準備を終えてきたから、今朝は9時過ぎに家を出て、ゆっくりと出勤です。家々の間を燕がやたらと飛び交っているから、今年もそんな時期になったのかと驚くのでした。

 燕は去年作った巣の近くで待ち合わせをするのだとか。大きな身体の方が雄なのだそうな。毎年燕が巣を作る蕎麦屋の隣のお宅にも燕がやって来ていた。電線に止まるつがいの燕を見れば、確かに片方が小さくて、もう一方が大きな燕だったのです。朝の仕事を終えて、20℃もある蕎麦打ち室に入り、今日の蕎麦を打つ亭主。加水率は43%といつもと同じなのに、暖かいせいか少し柔らかい生地になる。直ぐに伸し広げられるから、今朝はちょっと細めの仕上がり。

 開店前に電話が鳴って、「今日は営業していますか?」と品の好さそうな女性の声。早めに暖簾を出しておいたら、15分ほど後にご夫婦でいらっして、天せいろとヘルシーランチセットにビールをご注文なのでした。歩いて来たからご近所かと思ったら、以前まで団地に住んで家はまだあるのだそうで、今は東京に住んでいるのだとか。昔を懐かしむように畑や森を眺めて、ゆっくりと話をしていかれたのです。空いている平日の店だから亭主も心が和むのでした。

 時計が1時を回って、お客が来ないものだから、今日の蕎麦は残るだろうとぶっかけで賄い蕎麦を食べてしまう亭主。ちょうど食べ終えた頃になって、バイクに乗った若い男性がご来店。天麩羅蕎麦の大盛りに、キスやメゴチの天麩羅を追加で頼まれたから、大きな椀に蕎麦を茹で、筍やコゴミ、タラの芽を加えて沢山の天麩羅を載せてお出ししたのです。用意した天麩羅の具材が残ったから、全部揚げて家に持ち帰り、夜は女将と天麩羅でご飯を食べたのでした。