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2022年9月初め

9月1日 木曜日 外は蒸し風呂のような暑さで …

 定休日明けの木曜の朝はどことなく忙しなく、気持ちが落ち着かない。今朝もまだ暗い4時半には起き出して、居間で珈琲を飲みながら、ぼんやりとした頭で、蕎麦屋に行ってからまず何をしたら好いのかを考えようとする亭主。5時のニュースを見終えて、いよいよガレージに向かえば、外は以外と暑いので驚いた。朝焼けの綺麗な空なのです。陽が昇るのは日に日に遅くなっているらしい。店の中に入ってエアコンを入れ、厨房の明かりを点ける。

 定休日のうちに小鉢の食材は仕込んであるのですが、まだ盛り付けていないから忙しない気がするのか。お新香を糠床から取り出して、切り分けたらこれも盛り付けなければいけないので、やることが沢山あるように思えるのか。まずは心配していた小鉢の準備をし終えて約30分が過ぎた。それから、昨日のうちに出来なかったデザートと蕎麦豆腐の仕込みをするのです。どちらも火の前から離れられずに、それぞれ型と豊缶に流し込んでやっとひと安心。

 家に戻ればまだ6時過ぎだったから、朝食の時間までひと眠りする。朝飯前のひと仕事で心配だった準備を終えたこともあり、とにかく横にさえなればよく眠れるのが最近の亭主の傾向。6時間ではやはりちょっと睡眠時間が足りないのかも知れない。女将に起こされて食堂に行けば、ちょうど塩鯖が焼き上がるところでした。大根がなくなったらしく今朝はキャベツと油揚げの味噌汁。とろろ芋もお新香も蕎麦屋の残り物です。さすがに食後のひと眠りはなし。

 晴れていたと思った空は何時の間にか雲が広がって、家を出た頃にはぽつりぽつりと雨まで降りだした。蕎麦を打つ頃になると相当に強い雨になって、今日もあまりお客が見込めないだろうと思う。夕べは午前中から晴れるという予報だったから、今朝は850g9人分を打たなければいけないと思っていたのに、やはり、その日、その時の天気の情報を確実に知っておくことは大切です。43%で蕎麦粉を捏ね始めれば、これがまた柔らかすぎて大変なのでした。

 伸し棒で伸すのにも、ちょっと力を入れすぎると薄く伸びてしまうから、均等な厚味にするために相当な注意を払うのです。打ち粉を振りながら、何とか八つに畳んで包丁切り。切りべら26本で135gだから、上手く打てたと言うべきなのでしょう。人間の体感湿度よりも、蕎麦粉の方が敏感に大気の湿気に反応しているらしい。エアコンの効いている店内は60%以下の湿度なのです。厨房に戻れば電話が鳴って、頼んでおいた電動床磨き機がやっと届くのでした。

 こちらは床磨き専用で、先日届いた電動モップと合わせて使えばなんとか屈まずに床を綺麗に出来そうな気がする。やはり、作る人がいると言うことは、亭主のように使いたい人がいるのでしょう。早速、充電器に充電を開始して、試しの作業は明日の朝か。早朝のひと仕事をこなしたお蔭で、大根と生姜をおろすのも、薬味葱切りも、蕎麦玉を寝かせている間に終えたから、後は野菜サラダの具材を刻むだけ。今日はニンジンのジュリエンヌも細く仕上がった。

 新しい油を天麩羅鍋に注いで、天つゆの鍋を火口においたら、店の掃除とトイレの掃除。ひと息ついたところで玄関に出てみれば、外はまるでサウナ状態なのでした。雨は止んでいたけれども、この蒸し暑さは尋常ではない。玄関脇の馬酔木の枝には来春咲く新芽がびっしりと付いている。家の裏手の無花果ではないけれど、今年の暑さが幸いしているのだろうか。亭主が採った無花果の実を女将がジャムにしたら、とても美味しいと言われたのでした。

 開店すると同時に、家のご近所の奥様が久し振りにお友だちを連れていらっして、ゆっくりと話をされていた。パソコンを抱えて歩いて来たのは、いつもビールと天せいろの常連さん。平日は空いているから、長居をしても一向に気にならない。スポーツクラブが休みの女将がちょうど1時に来てくれて、亭主がやっと昼の賄い蕎麦を食べ始めたら、リピーターの若者が現れる。天麩羅と串焼きを沢山頼まれて、遅い昼食なのでしょう。凄い食欲に夫婦はびっくり。

 ハラミとみつせ鶏の団子を焼いて火加減を見ているところに、女将がスマホを持って来て「予約をお願い」と言うから慌てた。亭主の太い指で急いで画面をタッチするものだから、折角、セットした予約画面が消えてしまう。予約開始30秒で、再び表示した時にはもう残り三席で、辛うじて席を取れたから冷や汗ものなのでした。蕎麦湯まで出し終えて、亭主は奥の座敷でやっと食後のひと休み。2時半前には店を出て家に帰る。東の空は青空が覗いていました。

9月2日 金曜日 終日の雨にも関わらず …

 夕べはもの凄い雨の音で、雷まで鳴ってどうなるのかと思ったけれど、朝になったら雨も小雨になって、亭主は6時前に車で蕎麦屋に出掛けるのでした。今朝の朝飯前のひと仕事は、昨日届いた電動ポリシャーの試運転が主な目的でした。薄めてある台所洗剤を床に撒いて、スイッチを入れればゆっくりとブラシの部分が回転を始めて、思ったよりも床が綺麗になるので安心。これを今まではデッキブラシで磨いていたから、隔世の感があるのです。

 気をよくした亭主は、トイレの出口から玄関の入り口までを一気に洗ってしまう。その後でこれもおニューの電動モップで丁寧に拭き取っていく。今までは作業が面倒でなかなか掃除が出来なかったけれど、これなら頻繁に汚れを落としていけそうです。最後はやはり水モップで洗剤を拭き取り、床が乾いたらワックスを掛ける事を考えなければいけない。浪人時代に予備校代を捻出しようと、ビル掃除をしていたから、手順は好く判っているつもり。

 何か清々しい気持ちで家に戻り、女将の支度してくれた朝食を食べれば、今朝は食後のひと眠りもせずに、髭を剃って、着替えを済ませ、再び蕎麦屋に出掛けていくのでした。電動のポリシャーとモップのお蔭で、蕎麦屋の仕事もまた一つ楽しみが増えたような気がするのでした。小雨の降る中を傘も差さずにみずき通りを渡れば、空はどんよりとした雨雲が広がって、今日もお客が来そうもないと思いながら蕎麦屋に着く。雨の降る中を幟を立てるのでした。

 お客が来そうにないとは言っても、蕎麦だけは明日の土曜日を見据えて、しっかりと打っておかなくてはならない。今朝も750gの蕎麦を、加水を少し減らして捏ね始めたら、やはり相当に湿気があるから、42%ぐらいでちょうど好かった。蕎麦玉を寝かせている間に大根をおろし、本伸しを終えたところで、打ち粉を振りながら生地を八つに畳んでいく。切りべら26本で135gのペースを守りながら、無事に八人分の蕎麦を仕上げ、昨日の残りと合わせて12食を用意。

 これなら、今日残った分は明日に回せるから、明日の朝は蕎麦打ちは一回で済む計算。雨は次第に強くなって、風の吹き付ける北側の窓を換気のために明けておいたのを締める。まあ、お客が来なければ、明日は少しだけ打てば好いなどといろいろ考える。10時前に厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み始めたら、今日はキャベツもニンジンもやけに切り易くて、千切りも細く、ジュリエンヌも綺麗に仕上がるのでした。いつになく随分と早い時間でまだ11時前。 

 雨は降ったり止んだりを繰り返して、時折、強くなって窓を閉める。涼しいからエアコンを切って外の温度と同じ27℃で我慢するのです。暖簾を出してもさすがに今日はお客が来ない。12時半になって腹も空いてきたけれど、大釜の湯も天麩羅の油も使っていないから、自分の食べる分で汚したくはないのです。1時になったら昼飯を食おうと店の中を歩き回ってカウンターの椅子に腰を下ろせば、隣町の常連さんの車が駐車場に入ってくる。

 「こんにちは」「いらっしゃいませ。いつもので好いですか。涼しいからサラダはなしで?」常連さんのスペシャルメニューで天麩羅を揚げようとすれば、例の少年が雨の中を傘も差さずにやって来た。ついでに少年用に海老を揚げて、常連さんの辛味大根をおろしたら、同時に蕎麦を茹でて二人に蕎麦を出す亭主。何度も会っているのに「学校は昼で終わりかい?」と少年に話しかける常連さんだったけれど、亭主が「給食が食べられないんですよ」と応える。

 少年の来る日には決まって他のお客も来るから不思議。雨の中を今日も駐車場は満杯になったのです。「来年は中学で何の部活に入るんだい?」と亭主が水を向ければ嬉しそうに笑って、運動部に入りたいと言う。未来が希望に満ちあふれているのは、若者の方が顕著なのでしょう。新たにいらっしたお客さんに、天せいろやヘルシーランチセットを出して、雨の日なのにまずまずのお客の入り。やっと昼の賄い蕎麦を食べたのは、1時半を過ぎた頃でした。

 今日は後半に混んだから、洗い物が大変でした。女将がいない日は、倍の時間がかかるから、休み休みなので余計に時間がかかる。それでも3時過ぎには家に帰り、女将の剥いてくれた梨を食べる。「昨日の方が甘かったね」と言えば「今日のは水っぽいだけのいつもの豊水ね」と笑って応える。夕食の前にひと眠りして、また蕎麦屋に出掛けてぬか漬けを漬けてくる。明日は晴れると言うけれど、お袋様の米寿のお祝いをするから、午後が忙しくなるのです。

9月3日 土曜日 お袋様の米寿のお祝いで …

 午前5時半。まだ陽は昇っていないのです。もりの上空にかかった雲にこれから昇る朝日が光を投げかけている。眠い目をこすりながら蕎麦屋に着いて、珈琲を沸かして飲みながら、冷蔵庫から糠床を取り出して、キュウリとカブとナスを切り分ける。今日と明日の分と思って、夕べは少し沢山漬けておいたのです。小鉢に盛り付けてまな板を片付けたら、夕べ干し椎茸と昆布を浸けておいた鍋に火を入れて、出汁取りの開始です。ここから約1時間はかかる。

 7時前に家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしてくれていました。朝が早かったせいか亭主はもう眠くて仕方がなかったから、食事を終えたらお茶も飲まずに書斎に入ってひと眠りする。やはり7時間は眠らないと身体が言うことをきかない年齢なのか。プールを長くお休みしているから、最近はかなり体力も落ちているのでしょう。9月は子どもたちのスイミングの終わった時間に、そろそろリハビリを開始しようと思ってはいるのですが … 。

 県の感染者数が減っているのに、市内の感染者数は相変わらずの毎日が続いているのです。いつもの時間に家を出て蕎麦屋に向かえば、今朝は涼しい秋の日を思わせる陽気でしたが、青空は覗いているものの、なかなかすっきりと晴れてくれない。気温が低いとお客が来ないと言うこともあるから、晴れ間が出ないと難しいのです。女将の言うように「涼しいと蕎麦を食べたいとは思わない」というのが一般の人の感じ方なのかも知れない。

 それでも週末だからと、今朝も蕎麦打ち室に入って蕎麦を打つ亭主。涼しいから蕎麦打ち室の窓を開けて、42%で蕎麦粉を捏ね始めるけれども、それでもまだ生地が柔らかい。湿度計は75%を表示していたから、蕎麦粉は正直だと変なところで感心をしてしまう。気温は25℃だから、やはり秋の涼しさなのです。蕎麦を打って身体は少し汗ばんで温かくなって来たけれど、エアコンを入れる程ではない。女将がやって来て、今日はちょうどいい気候だと言う。

 蕎麦の生地が柔らかくても、いつもの切りべらで、いつもの分量を打てるようにはなったけれど、柔らかすぎるとどうしてもエッジの効いた蕎麦には仕上がらない。そのためにはもう少し加水を減らす時期なのかも知れない。今日は開店直後からお客が入って、皆さん男性お一人ずつなのでした。カウンターに座ったご近所のご主人はいつも天せいろで、今日は珍しく話をした。カレーうどんのご主人は、前回に続きハラミとカシラの串焼きにデサートをご注文。

 1時を過ぎたらもうお客の来る気配はなく、亭主はおろし蕎麦をぶっかけで食べておく。夕刻はお袋様の米寿のお祝いで、仕事を終えて弟もやって来るから、その準備もしておかなければならない。女将と二人、早めに家に戻って、ひと眠りした亭主は車で魚屋に寿司を買いに出掛ける。珍しく弟が早めにやって来て、車を家に置きに帰った亭主は、お袋様が来たところで、天麩羅を揚げ始めるのです。串焼きを焼いて小鉢を出したら、皆で揃って乾杯なのでした。

9月4日 日曜日 再び暑さが戻って …

 今朝はちょっと遅く6時に蕎麦屋に出掛け、珈琲を沸かして目を覚ましたら、夕べの洗い物の片付けから始めました。盆や蕎麦皿がないだけでも作業はスムーズ。4人分の天麩羅皿と天つゆの小鉢、串焼きを乗せた皿など、洗いかごに伏せたままだったから、布巾で拭いて戸棚にしまう。寿司を載せた飯台も、昔はよく刺身を盛ってお客に出したものでしたが、久し振りに使ったので懐かしかった。今日の小鉢を盛り付けて、ゴミ袋を外の大きなゴミ箱に移す。

 7時近くに家に戻って朝食を終えたら、亭主は例によってひと眠り。今日は蕎麦を少しだけ打つ予定だったから、ゆっくりと眠れるかと思ったけれど、30分ほど眠って10分ほどウトウトしたら、起き出して洗面所で髭を剃る。着替えを済ませて一服したら、台所で洗い物をする女将に「行って来ま~す」「はい、行ってらっしゃい」ご近所の花壇に今年もランタナが咲いているのに気が付いた。花の時期が長いから彩りが鮮やかになって目を惹いたのか。

 かと思えばノウゼンカズラがまた咲き始めたお宅もある。この花も随分と花の時期が長いのです。夏の長かった今年の陽気が関係しているのか、一度、花が終わったかと思っていたら、また咲き始めているのでした。百日紅のまだ鮮やかに咲くお宅もある。お花の好きなご近所が多いから、季節の変わり目でも目を楽しませてくれるのです。自分の家もそうだけれど、最近は朝顔を育てるお宅が少なくなったような気がするのです。花にもブームがあるのかな。

 日曜日の朝だからみずき通りも車が少ない。ハナミズキがやっと紅葉してきたらしく、秋の訪れを感じさせるのです。それにしても今朝は朝から蒸し暑いと感じる。毎年、こんな風に秋がやって来るのだったかしら。去年の事はもう覚えていないから、確かめる術もないけれど、涼しくなったり暑さが戻ったりしながら、季節はどんどん変わっていくのでしょう。今日は暑くなればきっとお客が沢山いらっしゃるはずだと、気持ちを切り替えて蕎麦屋に向かう。

 昨日の蕎麦が随分と生舟に残っていたので、今朝は500g五人分だけ打ち足しておくことにしました。加水率をぴったり22%にして蕎麦粉を捏ね始めたら、今朝は柔らかすぎずにしっとりとした生地に仕上がる。蕎麦玉を寝かせいてる間に厨房に戻って大根や生姜をおろし、次の作業の準備に余念のない亭主。伸しても畳んでも今朝は好い感じで、包丁打ちの時に包丁の刃にくっつかないのが上手く打てている証拠なのです。果たして、どれだけ出てくれるだろうか。

 野菜サラダを何皿作ろうかと悩んだけれど、女将が「ないんですかと言われるのが嫌なのよねぇ」とまた言うものだから、いつもの休日の通り四皿盛り付けておくのでした。お客の少なかった昨日は一皿出ただけで、残りは夕方から開いたお袋様の米寿のお祝い会で出したのです。野菜が嫌いだと思っていた弟も、歳を取ったせいか綺麗に食べてくれたので助かった。毎日同じ野菜の顔を見ている亭主は、家に持って帰って食べるのはちょっと敬遠したいのです。

 今日は雲は出ていたけれど天気も好く、開店の時間から閉店の時間まで切れ目なくお客が入って、忙しかったのです。野菜サラダの付いたヘルシーランチセットも幾つか出たので嬉しい。ぶっかけ蕎麦、おろし蕎麦、とろろ蕎麦と多少の変化もあって、女将がいるので亭主は調理に専念できるから嬉しいのでした。「蕎麦が美味しいわ」「小鉢が美味しい」「また来ます」などとと言って帰られるお客が有り難いのでした。年配の方と若い方が半々ぐらいでした。

 「馬鹿にしてはいけない日曜日」の言葉通りに、コロナの時期だから以前の半分程度のお客だけれど、お客が10人を超えたのでまずまずの成果。洗い物も営業中は次から次へとお客が入るので、全く手つかずだったのに、何故か早めに終わった。亭主が疲れていなかったのが一番大きな理由かも知れない。2時半にはすべて片付けも終わって、冷蔵庫の中を確認して明日の支度を考える。蕎麦汁と小鉢は明朝補充しなければならないのでした。気持ちの好い午後 … 。

9月5日 月曜日 今日は暖かかったけれどお客が少なくて …

 当てにならないのが最近の天気予報で、晴れると言っても途中で午後からに変わることが多い。今朝も5時半に蕎麦屋に出掛けたのですが、今にも雨が降りそうな空模様。東側のミニ菜園を覗けば、三週間ほど前に草取りをしたばかりなのに、もう茫々に雑草が生えているではありませんか。こうなると人間と自然の闘いのようで、諦めしまうと大変なことになる。雨さえ降らなければ、明日の朝には再び挑戦する覚悟で蕎麦屋に入るのでした。

 まずは洗濯機の中の洗い物を干して、奥の座敷の真ん中に置いておくのです。湿気があると以前も畳に黴が生えたので、部屋の真ん中に置いておくのが正しい干し方のようです。厨房に戻って、昨日の洗い物を片付けて、蕎麦汁を蕎麦徳利に補充しておく。小鉢を盛り付けてみたら、八鉢しか出来なかったので、そんなにお客は来ないだろうとは思いながら、足りなかった場合の事を考えておく。浅漬けを少しだけ作っておくのが一番手っ取り早い。

 家に戻って女将に小鉢の話をすれば、彼女の作ったひじきの煮物を持って行くかと言われたけれど、今朝のおかずで食べたかったから、やはり浅漬けにすることに決めた。蕎麦屋の週の営業が終わる日には、先週仕入れた食材の家の分がなくなってくるから、今朝はベーコンエッグに豚汁。冷蔵庫の中は空っぽだった。野菜サラダは昨日の残り物で、これでやっと食べ終わる。一週間で食材が完全に消化されるのは、考えてみれば健全なのではないかと思う。

 食後はお茶も飲まずに書斎に入ってひと眠りする亭主。だいたい横になったら、蕎麦屋に行ったら次は何をすべきなのかと考える。考えてもしようのないことを反芻するから、何時の間にか夢見心地になるのです。30分ほど微睡んだら一度目が覚めて、それから手足を伸ばして10分ほどウトウトとする。若い頃のようにパッと起きられないのが、歳を取った証拠かな。洗面と着替えを済ませて居間で一服したら、今朝も「行って来ま~す」と家を出る。

 夏休みが終わって幼稚園が始まったから、送ってくる親御さんや園児に会うので、マスクをして歩き出す。蕎麦屋の向かいの畑のひまわりが、初めは陽の出る東を向いていたのに、このところこちらを向いているような気がするから不思議なのです。隣のひまわり畑はもう花が終わりらしく、花の部分が黒い種になっている。蕎麦打ち室の湿度は80%と随分と湿気があるのでした。加水率を42%弱にまで減らしたけれど、捏ね上げた生地はまだ柔らかい。

 包丁打ちをしても、昨日より包丁の刃にくっつく時が多いから、蕎麦粉は正直なのです。それでも切りべら26本で135gをキープして五人分の蕎麦を打ち終えるのでした。昨日の蕎麦と合わせて10食分を用意して、今日のお客に備えるのです。先週は確か月曜日に珍しく8人もお客がいらっして驚いたけれど、そんな嬉しい日はそう長くは続かないと、長い経験で知っている。それでも野菜サラダは平日の三皿を盛り付けておきました。果たして何皿出るのやら。

 天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆの鍋を火口に置いたら、沸いた大釜の湯をポットに入れて、11時10分前。蕎麦打ちが少なかった分だけ時間が早いのです。次亜塩素酸の入った薬剤でトイレや入り口のドアを消毒して、テーブルや椅子はアルコール除菌のスプレーを使って拭いて歩く。夏から秋にかけてはノロウィルスの感染が特に心配だから、お客の手で触る部分はしっかりと拭いておくのです。後はコロナのウィルス除去。ノロはアルコールでは死なないのです。

 開店と同時にノートパソコンを持って歩いて来た常連さんが、カウンターの隅に座ってまた仕事場を開設する。注文は前回と同じくビールとカレー蕎麦。パソコンと出した食事を置くスペースと二人分の席を使うけれど、この時期は空いているから亭主も黙っているのです。料理が出たらビールを飲んで食べるだけだから、待っている時間に仕事をするのだろうか。亭主と会話をするという意識がないのかも知れない。外は青空が広がってやっと秋晴れが復活した。

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2022年8月末

8月27日 土曜日 夏の暑さが戻った日 …

 早くから起きていたのに、ぐずぐずしていたら蕎麦屋に出掛けるのが6時を過ぎてしまった。あまりすることがないと思っていたから、ちょっと気が緩んでいたのか。亭主の寝ぼけた頭のように、今朝の太陽もぼうっと森の向こうから昇って来たのです。昨日の洗い物を片付けて、小鉢を盛り付け、蕎麦汁の補充をしたら、もう7時を過ぎてしまいました。朝の30分は後になって効いてくるのです。急いで家に帰って食卓につく。

 ところが、こういう日は女将もゆっくりで、魚を焼きながらお新香を切り分けていたので、亭主が箸を並べ、小鉢を盛って、自分でご飯をよそうのでした。豚汁が出来上がってやっと「頂きま~す」なのです。今日は朝から何か蒸し暑いような気がして、二人ともエンジンがかかるのが遅かったか。食事を終えたら例によって亭主は書斎に入ってひと眠り。しかも、かなりぐっすりと眠ったのです。営業を始めてまだ三日目だというのに、朝から気怠いから困った。

 天気予報通りに雲が晴れて陽が差してきた。蕎麦屋の前のバス通りは、両側にひまわりの畑が広がって目を楽しませてくれる。夕べは雷の音がもの凄くて、怖いほどだったけれど、朝までには雨は上がっていた。看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろせば、もう蕎麦打ちの準備をする時間。早朝にエアコンを入れておいたから、快適なはずなのに、今朝は湿度がまだ70%となかなか湿った空気がなくならない。外は相当に蒸しているのです。

 そのせいか、43%の加水で捏ね始めた生地は柔らかめで、打ち粉を振っても包丁に絡みつく感じなのでした。なんとか切りべら26本で135gに仕上げ、8束を打ち上げて、昨日の残りの蕎麦と合わせて13食を用意する。隣の西の小径では草を刈る機械の音がするから、厨房の窓から覗けば、亭主と一つ違いだと言う親父様が、汗だくになって小径に伸び広がっていた雑草を刈ってくれていた。蕎麦屋の始まる前に終わらせようと気を遣ってくれたのでしょう。

 刈り終えた頃に店の窓を開けて「暑いのに有り難うございます」と挨拶をする亭主。早お昼を終えて女将が下の階段を昇って来るときには、奥様も出て刈った草を掃き集めていたと言う。やはり有り難うございますと挨拶をしたと言うから、歳を取って今日の暑さの中を動くのは大変だと思ったのでしょう。蕎麦屋はエアコンが効いてきたけれど、厨房はやはり暑いのです。11時前に車が駐車場に入ったから、どうしたのだろうと窓から見れば宇都宮ナンバー。

 遠くからいらっして時間よりも早く着いたのだろうと、大釜のお湯も沸いていたから、店の中に入ってもらったのです。聞けばそれぞれ埼玉と栃木の人で途中で落ち合って、二時間も車を走らせたのだとか。蕎麦屋巡りが好きで、「霊犀亭」を調べたら是非行ってみようとやって来たのだと言う。お二人ともヘルシーランチセットの天せいろをご注文で、野菜サラダと蕎麦豆腐を食べていただいている間に、天麩羅を揚げて蕎麦を茹でる。

 今日は四組8名だけのご来店だったけれど、大盛りが3名もいたり、デザートが出たりで、珍しくハラミとカシラの串焼きも随分と出たのです。週末だからか、皆さんゆっくりとされて、最後のお客が帰ったのは閉店時刻の2時少し前なのでした。前半のお客が昼前のご来店だったので、半分は洗い物が済んでいたから助かった。2時半には女将と二人で蕎麦屋を出る。外は猛烈な蒸し暑さで、夏が戻ったようなのでした。涼しさに慣れてしまったのが辛い。

 昼間、ノンアルコールビールを頼まれて、残りがなくなったと言うので、昼を食べ損ねた亭主は、家に帰るとすぐに隣町のスーパーに買い物に行く。パンでも買って食べようと思っていたのに、他の仕入れに忙しくてまたもや昼の食事を忘れてしまう。涼しい書斎でひと眠りして、夕刻には、再び蕎麦屋に出掛けて、小鉢がなくなったので、お新香を漬け、冬瓜を下茹でしておく。夜は女将の好物の鰹の刺身を買ってきたから、テレビを観ながら二人で食べる。

8月28日 日曜日 激しい朝の雨に …

 5時30分に車で家を出て蕎麦屋に出掛け、夕べ漬けておいた糠漬けを取り出した。味はイメージしたとおりに、ぴったり11時間でちょうど好い漬かり具合なのでした。茄子の色止めも効いている。今日と明日の二日間持ってくれれば好いのです。昨日茹でておいた冬瓜を、オクラと一緒に出汁で煮て、塩と砂糖と生姜と唐辛子で味付けをしたら、少し硬めに水片栗でとろみを付ける。多分、全部は出ないと思うけれど、これも今日と明日の二日だけの小鉢です。

 空いた蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、13人分の蕎麦汁を用意する。これは今日打つ予定の蕎麦と昨日の残った蕎麦を、合わせたよりも数が多い。雨の予報だったから、今日は12食の蕎麦で営業を開始するつもりでした。小止みになった雨の中を、西側の小径に出て、綺麗になった道路脇から、ひまわり畑の写真を撮っておく。家に戻れば、朝食の用意が調って「頂きま~す」食後は例によって書斎に入ってひと眠り。今朝は涼しかったからエアコンは点けなかった。

 これも最近の習慣なのでしょうか、食後の仮眠をぐっすりと1時間近く取るようになってしまった。目覚めたらザアザアと雨の音。外は酷い雨なのでした。午前中一杯この調子だと言うから、亭主は車を出して蕎麦屋まで行く。ガレージまで階段を下りる間も傘を差さないと歩けないほど。これではお客が来るはずもないのです。店に着いても、幟も出さず、チェーンポールも降ろさずに、蕎麦を打ちながら、しばらく様子を見ることにしたのです。

 北風のせいか北側の店の窓には雨が激しく当たって、店の中よりも外の方が涼しいくらい。昨日の暑さはまるで嘘のようなのです。蕎麦打ち室も暗かったから明かりを点けて、今朝は42%台で蕎麦粉を捏ね始めました。湿気があるとどうしても生地が柔らかくなってしまうから、昨日の失敗を繰り返さないように注意したのです。果たして、しっとりと仕上がりは好く、切りべら26本で135gの蕎麦が8束出来上がりました。今日は12食でも多い位なのかも知れない。

 ところが野菜サラダを盛り付け終える頃になると、雨は小降りになって、女将が早お昼から帰るとほとんど止んでいる。幟を出してチェーンポールを降ろせば、もう開店の準備。暖簾を出したら、程なくお客がやって来たのです。外の方が涼しいので、窓を少しずつ開けてエアコンは使わなかったけれど、十分に涼しい秋の風。女性の方は温かいぶっかけ蕎麦を頼まれて、男性はヘルシーランチセットのご注文でした。掻き揚げを揚げて汁を温め、蕎麦を茹でる。

 昼を過ぎれば今度は車二台で5人連れのお客がご来店。女性軍は天せいろが三つとお婆さんが温かい天麩羅蕎麦、そして男性は鴨せいろ大盛りなのでした。天せいろを先にお出しして、温かい天麩羅蕎麦はどうしても後になる。鴨せいろはその後でじっくりと鴨肉を焼いてお出ししたのです。お婆さんの食べた天麩羅蕎麦の汁を、女性たちが回し飲みしていたから、「汁が美味しいですか」と亭主が聞くと、「見られちゃった」と美味しさを隠せない様子。

 さすがに今日の天気では、これだけで十分なお客なのです。雨はその後も降ったり止んだりでしたが、天候には文句を言えない。コロナ以前の週末のお客の数と比べたら、半分ほどなのでしょう。それでも客の入りを見計らって、食材の用意をしているからあまり無駄はないのです。またしても昼を食べ損ねた亭主は、帰りにコンビニまで車を走らせ、サンドイッチと牛乳で空腹を満たす。風は涼しい秋の風。いつまで続くのか、無事に明日を終えたいところ。

8月29日 月曜日 午前中は秋晴れの陽気で …

 肌寒さで目が覚めた朝でした。外の陽気もすっかり秋の気配で、蕎麦屋に出掛ければ、青空に隣のひまわり畑が映えているのです。蕎麦汁の徳利は大盛り用も含めて10本、小鉢の数は8鉢用意して、打つ蕎麦の数は昨日の蕎麦と合わせて9人分と決めていた。天気は好いけれど、最高気温が25℃という予報だったから、お客はそんなには期待できないのです。今月の月曜のお客の数は4人止まりだから、これだけあれば十分に足りるはずなのでした。

 洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物を干したら、車に乗ってコンビニに煙草を買いに出る。空は何処までも青く、風は冷たい秋の風。早朝の中央通りはまだ車の数も少なく、家々が長い影を落としていました。家に戻れば女将が台所で朝食の用意をしてくれていたから、居間で一服したらちょうど食事の時間となるのです。家の中でも半袖ではもう涼しすぎる温度のようで、今朝は20℃ほどしかなかった。タオルケットにくるまって食後のひと眠りです。

 夜もしっかりと7時間は眠っているのに、食後のひと眠りも最近は1時間も眠ってしまう。気候が涼しいからよく眠れるのかな。酒を飲んで寝るから眠りが浅いのだと言われそうで、女将にはあまり言わないようにしている。まあ、身体が要求している睡眠が好きなだけ取れるのは、何と言っても隠居の特権なのかも知れない。しっかり髭を剃って、今朝は珍しく車で蕎麦屋に出勤した。月曜日は持って帰る荷物が多いので、一人だから大変なのです。

 週末ならお客が車を停められなくては困るからと、近い距離だからほとんど車では行かないのに。もしかして、一人で営業の日は一度に、一度に沢山お客が入っても大変だと、無意識のうちに思っているのも知れない。3台停められる駐車場の端を亭主の車が塞いでしまうと、あと2台しか入れないから、一度にお客が来ても知れているのです。そんなことを考えながら、厨房の椅子に座って珈琲を飲む。外は気持ちの好い陽気だから、窓は開けたままです。

 蕎麦打ち室に入って今朝は500g五人分の蕎麦を打ち、予定通り昨日の残りと合わせて九人分の蕎麦を生舟に並べる。野菜サラダはいつも平日の通りに三皿だけ盛り付ける。天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆの鍋を出して火口に据える。テーブルをアルコールで拭いてまわり、大釜の湯も沸いて、お茶の用意も出来たから、暖簾を出せば、珍しくすぐにお客の車が入ってきたのです。ご主人がぶっかけ蕎麦で奥様が天せいろのご注文なのでした。

 電話が鳴るので取れば、宅配会社からまた醤油の瓶が割れたと連絡があったので、先月も割れてキャンセルになったから今月は倍の1ダースも頼んだのに、返しが作れずに困っていると、つい大きな声で怒鳴ってしまった。狭い店だから、お客様にはお詫びをして事情を話したのでした。取りあえず割れなかった分を持って来て欲しいと言ったら、昼過ぎには大きな段ボール箱に横に並べて持って来た。これでは割れるはずだと、取り扱いの杜撰さに驚く亭主。

 昼過ぎには続けざまにお客がいらっして、そんなに車を停められないはずなのにと思ったら、歩いて来たご夫婦もいたのでした。最後の女性お二人がいらっしてカウンターに座ったところで、「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、順番に天麩羅を揚げて蕎麦を茹で、蕎麦湯を作ってお出しする。小鉢もなくなり、天麩羅の具材も切れたので、「最後の方はお待たせしたので、大サービスです」と言って、海老や野菜の天麩羅をぶっかけ蕎麦に載せてお出しした。

 カウンターの女性たちは厨房の亭主に話しかけ易いのか、「私より若いわね」などと会話の糸口を見つけてくる。団地の中に住んでいるのに、田んぼを借りて米を作っているのだと言う。デザートの水羊羹まで頼まれて、ゆっくりと話をしていかれる。閉店の時刻を過ぎて、亭主はやっと昼の賄い蕎麦をぶっかけで食べる。一人で洗い物と片付けをすると、一時間以上かかってしまうのでした。今日は残り物もなかったから、車で来る必要もなかったのでした。

8月30日 火曜日 朝はヒンヤリ、昼はムシムシ …

 定休日だと言うのに、今朝は4時起き。4時半には車で蕎麦屋に出掛けて、昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干したら、返しを作り始めるのでした。涼しいうちにやることは沢山あるから、6時前には家に戻って、女将に頼まれていた裏の無花果の樹の剪定をしたのです。今年は随分と実が付いて熟しているので、食べられそうな実はボールに取っておく。タラの樹も大きくなったから、短く刈り込んでやる。蚊がブンブンと顔や足を刺していくのが分かる。

 それでも30分ほどで退散して、切った枝の始末は後で女将に任せるのです。ボールに一杯の無花果の実は、ジャムにでもしてくれるのか、一粒食べてみたら甘い桃のような味わいなのでした。粒をもう少し大きくするには、摘果して実の数を減らさなければいけないのは分かってるけれど、そこまでは手が回らない。テレビのニュースを見ながら、女将の起き出して来るのを待つ。炊飯器のスイッチが切れたようだから、そろそろ朝ご飯の支度にやって来るはず。

 亭主が店で残った冬瓜のそぼろ煮を小鉢に盛っている間に、女将は豚汁を作り、ベーコンエッグを焼いて、お新香を切り分ける。自分でご飯を盛り付けて、「頂きま~す」と食べ始めるのでした。やはり朝が早かったからか、ひと仕事を終えてもう眠くて仕方がないのです。書斎に入って横になれば、涼しい朝だったから、あっという間に熟睡の境地。最近は1時間近くぐっすりと眠ることが多いのです。目覚めればもう8時半。洗面と着替えを済ませて蕎麦屋へ。

 まだ暗かった早朝に仕込んだ返しを甕に注ぎ、お袋様に電話をして週に一度の仕入れに出掛けるのです。最初に団地の外れの農産物直売所に向かう。ちょうど知り合いの農家の奥さんが野菜を運んで来たところで、「うちのは今日は稲刈りで」と言って新しく取れたばかりの茄子を籠に入れてくれた。「この間もらった南瓜もオクラも美味しかったよ」と言えば、「有り難うございます。今日も持って来ましたよ」と新鮮なものをくれるのでした。

 礼を言って車に乗り込み、隣町のスーパーに向かえば、運好く駐車場は最初に来た人たちが帰った後で、入り口に近い場所に停めることが出来たのです。夕べパソコンのプリンターで印刷した買い物リストに載っている品物は、全部揃えることが出来て大喜び。今日はレンコンがとても好いものが並んでいたので助かる。新レンコンの値段も、だいぶ落ち着いてきたらしい。店に戻ってすべての野菜類を冷蔵庫に収納し終えたら、11時近かったので家に帰って昼食。

 買い物から帰ったばかりの女将に、温かい湯麺と冷やし中華とどちらが好いかと尋ねれば「汗だくなので冷やし中華が好い」と言うので、麺と肉を茹でて昨日残ったサラダを載せてはい出来上がり。珍しく食後のひと眠りはせずに、朝の無花果の樹の剪定で使った脚立や剪定ノコを、もう一度車に積んで蕎麦屋に出掛ける。今度は蕎麦屋の月桂樹の木を剪定です。屋根まで伸びてしまった新しい枝をどんどん切っていたら、雨が降りだしたので厨房に戻る。

 8月の初めに草取りをした南側のミニ菜園は、今年は絹さやの後は何も植えていなかったから、もう草が伸びて大変な有様。暖かかったからか、今年は随分と草の伸びるのが早いような気がする。明日は少しは草取りが出来るだろうか。そんなことを考えながら、朝のうちに準備をしておいた出汁を取る。一番出汁を取って蕎麦汁を仕込んだら、二番出汁は5㍑の鍋に追い鰹で多めに作っておくのでした。涼しくなってくると温かい汁が出るのです。

 3時前に注文してあった床掃除の機械が届いて、早速、梱包を開けて見れば、コードレスの充電式で自走式の優れもの。屈んで雑巾で店の床を拭くのは、この歳になるととても大変なので、どんな成果を上げるのか明日が楽しみです。2万円以上する高価な物だから滅多なことでは期待外れはないと思うのだけれど。このほかに、床を磨く機械も頼んであるから、この秋は店の掃除が楽しみです。明日は何から手を着けようかと考えながら、夕食の食卓に着く。

8月31日 水曜日 雨の音で寝覚めたけれど …

 珍しく夕べは夜更かしをして、0時近くに床に入ったのですが、これも習慣か朝は雨の降る音でいつもの時間に目が覚めて、居間で一服したけれどやはりまだ眠い。再び目が覚めたのは朝食の時間の少し前で、いつもと同じように7時間近くは眠ったことになる。蕎麦屋の剪定した木の枝を袋に詰めようと思っていたけれど、今朝の雨で濡れているからと諦めたのでした。さすがに朝食後のひと眠りはせずに、今朝は蕎麦屋に出掛ける亭主。

 バス通りの向こうにあるひまわり畑は、遅く種を蒔いたから今がちょうど盛りの時期なのに、どうもひまわりの花は陽の昇る東に向かって咲くらしく、バス通りからは花の顔が見えないのです。蕎麦屋の隣のひまわり畑はもう花も終わりらしく、種のこぼれて育ったという秋桜の花も盛りを過ぎていました。アゲハチョウが花に止まって、秋の訪れを感じさせるのですが、どうも今日はまた暑さがぶり返すらしく、あさから蒸しているのです。

 蕎麦屋の厨房に入って、今朝の仕込みは夏野菜の揚げ浸し。隣の火口では冬瓜を下茹でして、鶏胸肉の挽肉とのそぼろ煮を作る準備をするのでした。昨日届いた電動の床掃除機は、充電に3時間もかかるというので、セットしてコンセントに繋いだままにしておく。午後一番で試しに運転してみようと、楽しみにしている亭主なのでした。長い間に汚れた床は、一朝一夕で綺麗になるとは思えないけれど、新しい器材を導入して店を綺麗にする契機となればと思う。

 冬瓜を15分茹でたら透き通って竹串が通るようになったので、笊に上げて水で洗う。ピーラーでレンコンの皮を剥いて、隣の火口で下茹でをしてあったのを、水で洗い天麩羅の具材用にタッパに入れて冷蔵庫で保存しておく。午前中の仕込みはこのくらいにして、11時になったので家に戻って、昼の支度をしなければ鳴りませんでした。味見用に揚げ浸しを小さな容器に入れて、夕べで夜の酒がなくなったから、酒屋によって煙草と焼酎を買って家に帰る。

 昼は先週から残ったキャベツの処理に女将が困っていたので、焼きうどんにして大量のキャベツを消化する。フライパンに蓋をして油で炒めると、キャベツの半分の量がしゅんとなって、野菜が沢山摂れるのです。小鉢には午前中に作った揚げ浸しを添えて、焼きうどんは塩味に醤油を少しだけ垂らし、美味しく頂くのでした。食後のひと眠りも今日はパスをして、女将がスポーツクラブに出掛けたら、再び蕎麦屋に出掛ける亭主なのでした。

 フル充電を終えた床掃除機は、コードレスなので扱いやすく、リモコンのスイッチを入れれば散水する機能も付いていて、一分間に1000回という振動で床を擦るから優れもの。ただ、汚れの酷いところは、さすがにすぐには落ちないから、雑巾でこすって汚れを落とす。以前のように床に屈んで全部の作業をするよりは、確かに楽なのです。こんな機械を制作者が考えた理由は、やはり小さな店舗の掃除に苦労をしている人たちがいるからなのでしょうか。

 一時間ほどでトイレから店の入り口までの狭いスペースを洗ったら、もう午後の仕込みにかかる時間なのでした。午前中に下茹でをした冬瓜を入れる前に、二番出汁と塩と砂糖で出し汁を作って唐辛子と鶏胸の挽肉を入れて煮ておく。そこに輪切りにしたオクラを入れ、冬瓜を入れて最後に少しだけ出汁醤油を垂らす。水溶き片栗粉を加えて少し硬めに仕上げれば完成。今回は粗挽きの鶏胸肉を入れたので、ちょっと違う仕上がりですが味は抜群でした。

 明日の天麩羅の具材を切り分け、お新香を漬けたところで、業者が注文をしておいた食材を届けに来る。9月で会社を辞めるという担当者が、新しい若手を連れて挨拶に来た。来週からはこの地区を回るのが木曜日になるというので、亭主は忘れないようにカレンダーに記しておくのでした。とにかく、夏の暑さの戻った今日は、店の外も蒸し暑く、風も湿った生ぬるい風でした。家に戻ればもう夕食の時間で、味見に持ち帰った冬瓜のそぼろ煮とキュウリの梅和えで、早速、一献。メインのおかずは鶏腿肉のカリカリ焼きでした。

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2022年8月下旬


8月21日 日曜日 気温は低いけれど蒸した一日 …

 未明に激しい雨の音で目が覚めた。5時半過ぎには起き出して、夕べ漬けた糠漬けが気になっていたので、取りあえず蕎麦屋に出掛けようと玄関を出たら、もう止んでいる。蕎麦屋に着いた頃には、ひがしの空の雲の切れ間から、朝日が覗いて上空には青空も見え始めていたのですが、今日は一日中、晴れることはなかった。向かいの畑には朝靄が広がって、涼しいのだけれど何故か蒸し蒸しとした陽気なのでした。蕎麦屋の室内は気温25℃、湿度85%。

 昨日の洗い物を片付ける前に、冷蔵庫からヨッコラショと糠床を取り出して、野菜を切り分けたら小鉢に盛り付けていく。ついでに冬瓜のそぼろ煮と夏野菜の揚げ浸しも、最後の六鉢を作っておくのでした。今日、お客が混めば、何か別の小鉢を作らなければならない。カウンターの洗い物を片付け、すっかり空になっていた蕎麦と作りに予備の蕎麦汁を詰めていく。これも混めば明日の分まではないかも知れない。今日が終わってから考えることにしよう。

 洗濯物を干す暇もなく7時を過ぎたので、家に帰って女将の用意してくれた朝食を食べる。縞ホッケの塩味が薄かったからちょうど好かった。豚汁は店で大根や長葱が残る間は続けてくれるらしいから、貴重なおかずなのです。時間のある時に大根や人参だけ煮て、冷蔵庫に保存しておくのがコツらしい。この夏は大根も値が高くなっているから貴重らしい。油揚げや豚肉も入るから、栄養のバランスも好いし、朝は温かい物を食べるという理にかなっている。

 食後はお茶を入れてもらって、書斎で横になるけれど5分も眠れなかった。今朝は蕎麦を二回打たなければならないからと女将に言えば「前はお店も混んでいたからよく二回打っていたじゃない」と言われた。朝飯前のひと仕事を始める前は、混んだ日は夜に蕎麦屋へ出掛けて仕込みをしていたのです。歳を取ったのか、何時の間にか習慣になったのか、二回打つとなるとちょっと緊張する。玄関を出れば、しばらく花が少なくなったムクゲがまだ咲き続けている。

 そう言えば、以前は1kgずつ打っていたから、多い日はこれを二回打っていたのだ。そして、それが続いたから腕の腱鞘炎になってしまい、それから一度に打つ蕎麦粉の量を750gに変えたのだった。当時は加水量が少ない方が、美味い蕎麦が出来ると勘違いしていたから、尚更、力を込めて打っていたのでしょう。少ない量を打つのは力も少しで済むし、加水率を43%にしてからは、かく汗の量も少なくなったような気がします。ムクゲにあやかって頑張る亭主。

 野菜サラダも今日の天気では四皿も要らないかと思ったけれど、女将が「もうないのと言われる時が嫌なのよね」と言うので、休日の数を守って野菜を刻むのでした。今日は昼前に二組もお客が入って、これは幸先が好いかと思えた。ご主人がカレーうどんのご夫婦もいらっして、しっかりデザートまで頼まれる。酒を飲むわけではないのに、珍しく二組とも串焼きを頼んだから嬉しい亭主。若いカップルは、前にもいらっしてハラミの串焼きを頼んだ方でした。

 とろろ蕎麦にヘルシーランチせいろ蕎麦やおろし蕎麦のご注文だったから、昼前は具材が足りなくなるかと心配した天麩羅が出なかった。お客の来ない間にと亭主の食べる賄い蕎麦も、今日は大根おろしと山葵と葱だけ。揚げた天麩羅を入れるパッドが油で汚れていないので、自分がかき揚げを揚げて汚すのが憚られたのです。その分、後の洗い物が楽になる。などと考えていたら、午後のお客はいきなり天せいろのご注文。人生、思うようには行かないものです。

 1時を過ぎてもお客がなかったから、暇な亭主は取っての長い剪定鋏を持ちだして、切り残した紅葉の枝を払うのでした。隣にあるヤマボウシがちょっと刈り込みが足りないのか、モミジと同じくらいのボリュームになっているのが今後の課題か。最後のお客がお蕎麦が美味しかったと言って帰られたのは、もう閉店時間の間際なのでした。女将のスポーツクラブの予約を無事に済ませて、今日は早めに片付けが終わる。夜は串焼きとしめ鯖、モズクで一献。


8月22日 月曜日 久し振りに蕎麦を打たない月曜日で …

 曇ってはいたけれど、気温が低いからか、爽やかな朝でした。家の中では手に触れる場所がジトーッと汗ばんできたのに、外は風があるから心地よいのです。蕎麦屋に着けば隣地との境に生えていた草が綺麗に抜かれていた。ゴミ出しから帰った隣の奥さんが出勤するところだったから、挨拶をしながら「済みませんね。綺麗にしてもらって」と言えば「ついでだから」と笑顔で応える。まめなご主人が昨日の午後から草取りをしてくれたらしい。

 隣のお花畑を覗いたら、今朝も賑やかにひまわりの花が咲き乱れていました。空が灰色なのが惜しまれる。ついでに西側の小径のムクゲの様子を見ると、家のムクゲと同じで、ここに来てまた元気に花を咲かせているではありませんか。店の中に入り、看板を出して幟を立て、チェーンポールを降ろしたら、早速、箒と塵取りを持って掃除に出る。ついでに道路際の雑草も綺麗に抜いておいた。お隣の若夫婦に触発されたのが好かった朝なのでした。

 道路脇に溜まったほんの少しの土に種が飛んできて、雑草が生える仕組みらしい。風で飛んでくる土を畑に返すわけにも行かず、抜本的な解決には繋がらない。今朝は蕎麦を打たないと決めていたから、朝の時間に余裕があるのでした。昨日洗って火で乾かした大釜に水を張って、ポットを並べてお湯を入れる準備だけしておく。湯を沸かすのはまだ早いから、厨房の椅子に座ってひと休み。店の中を見渡せば、天井の換気扇が埃で丸く汚れているのでした。

 何ヶ月に一度かは取り外して洗っているのですが、このところ暑くてそんな元気がなかった。今朝は涼しいのと時間があったから、脚立を出してカバーを外し、タワシでゴシゴシ埃を落としたら、見違えるように綺麗になった。店の外も中も、埃というのは何時の間にか溜まってしまうらしい。小さな蜘蛛も例外ではなく、蕎麦打ち室の窓や、店のテーブルや椅子の下に何時の間にか糸を針巡らせているから要注意なのです。維持管理とは好く言ったものです。

 いつもの時間になったら、野菜サラダの具材を刻み、平日だから三皿だけ盛り付けておきます。店の外は時折陽が差して、青空も覗く陽気なのですが、天気予報通りに晴れにはならない。大釜の湯が沸いたので、いつもより早めに暖簾を出して、お客を待つけれど、今日は早いお客はないのです。昼を大分過ぎた頃に、車が駐車場に入って、若い男性客がいらっしゃる。天せいろの大盛りを頼まれてお出しすれば、蕎麦湯も綺麗に飲み干している。

 「お蕎麦かお好きなのですね」と亭主がカウンターのこちらから言えば、「東北の宮城の出身なので蕎麦が好きなのです」と言うから、「宮城はどちらのご出身ですか」と尋ねれば白石だ言う。昔、七ヶ宿によく渓流釣りに行ったという話をすれば、話が弾む。子供もまだ小さいと言うから、三十代ぐらいなのだろうか。近くの奥さんの実家に帰ってゆっくりと夏休みらしい。今日のお客はこれでお終い。閉店時刻を前に、亭主はぶっかけで遅い昼を食べるのです。

 残った天麩羅の具材を揚げて、家に持ち帰る準備をしながら、洗い物を片付ける亭主。店置きのパンフレットがなくなったから、デザートの抹茶小豆の写真を撮っておく。サラダも小鉢もすべて残ったから、一度家に車を取りに帰って、お盆に載せたまま運んで帰るのです。ちょうど女将がスポーツクラブから帰る時間だったから、荷物を玄関口に置いて煙草を買いに出る。書斎でハソコンに向かって今日のデータを入力したら、夕食までぐっすり寝込んでしまう。


8月23日 火曜日 朝夕は涼しく、昼は蒸し暑い日でした …


 最近は朝晩が涼しいのでよく眠れる。夜も早くに寝ることが多いから、朝は自然と早い時間に目が覚めて、今朝も定休日だと言うのに6時前には取りあえず蕎麦屋に出掛けました。片付け物もほとんどないから、青空が覗いているようなので、隣のひまわり畑を歩いて写真を撮ることから始めました。いつも蕎麦屋の側から眺めた風景を撮っているから、今日は少し先まで歩いて駅前の高層マンション群が見える辺りでシャッターを切ったのです。 

 それからやっと厨房に戻って、3㍑の鍋に昆布と干し椎茸を入れて水を汲み、午後の出汁取りの準備をしておく。奥の部屋に干してある洗濯物を畳み、今度は洗濯機の中の洗濯物を干していく。一つ一つは時間がかからないけれど、何でも一度にやろうと思うと大変になるから、気が付いたことは済ませておくのが年寄りの知恵か。厨房の椅子に座ってひと休みすれば、嗚呼、まだあれもやっておかなければと気が付くから、休憩も大切なのです。

 7時前に家に帰れば、女将が台所で茄子とピーマンの味噌炒めを作ろうとしていたから、亭主が代わってフライパンで炒めてやる。その間に女将はご飯を盛り付け、味噌汁をよそうのです。休みの日はやはり亭主も何処か余裕がある。昨晩は十分に眠ったはずなのにそれでも食後はひと眠り。満腹になると横になってしまうのがどうも習慣になっているらしい。子供の頃は食べて直ぐに寝ると牛になるなどと言われたものですが、身体にはどちらが好いのか。

 洗面を済ませて和室に着替えに行けば、辺り一面にプルメリアの甘い香りが漂っている。見れば蕾を幾つか残して、恐らく最後の花が開いているではありませんか。7月始めに咲き始めたのだから、2ヶ月近くも咲き続けていることになる。夏場は外に置いていた頃にはあまり気にならなかったけれど、女将が大切に育てているからなのか、随分と花の時期が長く続いている気がしてならない。お袋様に電話をして、今朝の仕入れに出掛ける亭主。

 農産物直売所で野菜をみつくろって買い終えたところで、知り合いの農家の親父様が今朝の野菜を持って来た。「朝採るからどうしてもこの時間になっちゃうんだよ」と値札を貼っていたから、太いキュウリや形の好い冬瓜や南瓜、オクラ、ナスなどをもう一度レジに行ってお金を払うのでした。隣町のスーパーにも出掛けて、足りない野菜や女将に頼まれた家の肉や魚や果物を買って、10時過ぎには蕎麦屋に戻寄って、残った蕎麦をお袋様に持たせて送って行く。

 冬瓜は割高だけれど小さめのものが使いやすい。切らずに置いておけば冬まで持つから冬瓜と言うらしい。切って茹でたら冷凍してもおける。亭では小さめのものを二回に分けてその週の小鉢に煮ている。皮を剥き、小さく切って、塩を入れて15分ほど下茹でをすれば、綺麗な透き通った宝石のような色になるので、これをいろいろな煮物に入れて使う。鶏の胸挽きとオクラ、唐辛子の輪切りと煮て塩と砂糖、生姜で味を付け、隠し味に薄口醤油をたらし、片栗でとろみを付けると、綠の色が涼し気なのです。冷やして食べたい。

 昼は昨日残ったそばを茹でて、天麩羅の具材の残りを揚げて帰ったから、グリルで焼いて天せいろ。3㍑の鍋で蕎麦を茹でるのだけれど、二人分を一度に茹でると、どうしても蕎麦屋で茹でるような艶が出ない。蕎麦屋のお客が「家で茹でるとどうしても美味しく出来ない」と言っていたと女将が言う。やはり茹でるお湯の量に関係があるのか。午後は先週盆休みだった床屋に出掛け、久し振りに親父様と四方山話。夕刻まで蕎麦屋で出汁取りをして今日は終わり。



8月24日 水曜日 涼しくなったのに蒸し暑く感じた一日 …

 夕べは夕食の後に風呂の時間まで、ぐっすりと遅すぎる昼寝をしてしまったから、夜がなかなか寝付けずに、午前2時過ぎにやっと眠りに入るのでした。たまにこういう失敗をするから、今朝は朝食の時間にやっと間に合って目を覚ます。あれもしなければと頭の中にはスケジュールが一杯で、定休日二日目は試練の日なのでした。朝ドラの終わる時間に蕎麦屋に出掛け、昨日の続きで冬瓜のそぼろあんかけを作る準備をするのが最初の仕事です。

 冬瓜を半分だけ切り分けて、皮を剥いたら2cmほどの大きさに切って塩水で茹でる。茹で上がる少し前にオクラを鍋に入れて火を通しておきます。これを冷蔵庫で冷やして、午後の仕込みの準備をしておくのです。ここまで終えたところで、今日は西の町に蕎麦屋の消耗品を仕入れにいかなくてはならなかった。早い時間に済ませておかないと、億劫になるから、思い切って昼前に出掛けて行くのでした。ラップやキッチンペーパー、消毒液などを買い込んで来る。

 帰り道、団地の中央部の農村地区を横切れば、稲穂の広がる水田の向こうに駅前の高層マンション群が見える。子どもたちがまだ小さな頃、螢を見に来たのも確かこの辺りです。今では休耕田もだいぶ多くなったけれど、この土地に住み始めた頃の懐かしい原風景が残っている。以前はこの地区から蕎麦屋に来てくれたお客もいたのです。駅から循環しているモノレールはこの農村地区の外側をぐるりと回るように団地の中を走っているのです。

 昼はまたしても蕎麦。今日は3㍑の鍋で一人分ずつ蕎麦を茹でたら、ツヤのある美味しい蕎麦が出来た。やはりお湯の量に関係があるでした。冷えたとろろ芋をおろして、蕎麦屋で残った蕎麦豆腐をつまみながら、美味しくいただくのです。今日は午後の仕込みが沢山あったので、食後の昼寝もせずに1時過ぎには再び蕎麦屋に出掛ける亭主。業者が荷物を持ってくる夕刻まで頑張れるだろうかと、多少の不安はあったけれど、やるしかないのでした。

 まずは、午前中に下準備を終えた冬瓜とオクラを鶏胸挽と出汁で煮て、砂糖と塩で味つけし、薄口の出汁醤油を垂らす。ここまで書いたところで、唐辛子を入れたのに、生姜を入れるのを忘れていたことに気が付いた。明朝、生姜を擦って加えても遅いだろうか。隣の火口では、カレーの具材を煮込んでいる。南瓜と人参が少し柔らかくなったらルーを入れて、後は余熱で十分。普通なら8人分の分量だけれど、汁が少なく具が多いから5人分に分けて冷凍する。

 2時間ほど頑張ったところで少し疲れてきた。厨房の椅子に座ってひと休みしながら、夏野菜の揚げ浸しに入れる食材を冷蔵庫から出しておきます。先週残ったレンコンは初めて入れるけれど、硬すぎないか心配。一度茹でてはあるけれど、最初に揚げて十分に火を通し、油が少なくなってきたから、火の通りにくい食材から炒めていく。いつもよりは量を少なくしてあるのは、何日も汁に浸けておくと色落ちして鮮やかさが薄れるから。2,3日が限度かな。

 冬瓜のそぼろ煮もそうだけれど、お客が順調に入ってくれると週末にもう一度作れるのです。こればかりはなかなか予測できないから、運を天に任すだけ。後は天麩羅の具材を切り分けて、蓮根の皮を剥いてスライスしたらを茹でる。南瓜を盛り付ける形に切り分けたらレンジでチーンして、かき揚げの玉葱と三つ葉を刻んで容器に入れる。ここまで約30分、残るはお新香を漬けて、蕎麦豆腐とデザートを仕込むのですが、業者が来るので珈琲を沸かして待つ。

 4時過ぎに荷物が届いて、久し振りに顔を見る若者は、9月から担当者が代わりますと言うから、理由を聞けばどうも結婚するらしい。新居からは会社が遠いので、今の会社は退職するのだと言う。新しい仕事も業種は違うけれどやはり営業らしく、若い人の決断に感嘆する亭主なのでした。若いうちに転職するのが今の時代らしいと、自分の人生をふと振り返る。5時過ぎに家に帰れば、女将が珍しくオーブンとグリルを両方使って夕食を用意していました。



8月25日 木曜日 今朝も早くから蕎麦屋に出掛け …

 昨日は夕刻まで頑張って仕込みをしたけれど、やはり全部は終わらなかった。今朝はその遅れを取り戻そうと5時半には家を出て、蕎麦屋に向かう亭主。向かいの森の雲の影から、日の出の遅くなった朝日が光を投げかけていました。定休日明けの平日だから、新型コロナの感染者が増え続けている中で、お客がそれほど来るとは思えなかったけれど、準備だけはしておかなければというのが亭主の考え。車で乗り付けた蕎麦屋のたたずまいは深閑としている。

 涼しい朝だったから、郵便受けから新聞だけ取り出して、エアコンも点けずに厨房に入り、昨日使って洗いかごに干してあるいくつもの鍋を片付ける。最初に取りかかるのは、固まるまでに時間のかかる抹茶小豆の仕込み。上に甘く煮込んだ小豆を載せたいのだけれど、少し沈むくらいの硬さで載せるのがポイントなのです。次ぎに蕎麦豆腐を仕込んで型に流し込み、冷蔵庫から糠床を取り出して、ナスやキュウリ、カブを切り分け、小鉢に盛り付ける。

 昨日仕込んでおいた冬瓜のそぼろ煮と夏野菜の揚げ浸しを、冷蔵庫から鍋のまま出して、小鉢に盛り付けていきます。味付けはもちろんのこと、見た目にも美味しそうだとお客に思われるように、いろいろな工夫をしているつもり。冬瓜の透き通った感触が涼し気なのが亭主のお気に入り。オクラの綠と唐辛子の赤をアクセントにしたのですが、2、3日のうちに出し終えないと色は褪せてくる。そんなことを考えながら準備をするのが楽しいのです。

 洗濯物を干して7時前に家に帰れば、今朝は厚揚げが入った三ツ葉の卵綴じがメインのおかずでした。亭主が持って帰ったお新香の残りと揚げ浸しが、少しは花を添えたかな。豚汁も涼しい朝にはちょうど好いのでした。栄養のバランスが良いのが何よりなのです。7時半から女将の朝ドラが終わる時間まで、亭主は書斎に入ってぐっすりと寝込んでしまう。洗面と着替えを済ませ、洗濯物を干すのに忙しい女将に「行って来ま~す」と声をかけて店に出掛ける。

 空は曇ってきたけれど、涼しくて気持ちの好い朝なのでした。蕎麦屋に入る前に西の小径に散ったムクゲの具合を見て、ついでに隣のひまわり畑に入って写真を撮っておく。いつも元気で賑やかに咲いているこの花に、どれだけ励まされることか。歳を取るに従って自然の草花との会話が出来るようになるものらしい。それだけ孤独と向き合うようになるのかも知れない。今朝も散歩の老人たちが、ひまわり畑で写真を撮っていたのでした。

 店内の気温は25℃、窓を全開にして空気を入れ換えておく。蕎麦打ち室に入っても湿度は40%台だったから、今日は本当に涼しい朝なのでした。昨日のうちに蕎麦粉の発注をしておいたけれど、蕎麦粉の届く土曜日に打つ分まで、蕎麦粉があるのかと心配だった。今朝も750g八人分の蕎麦を打ち、残りを見れば何とか足りそう。気温の低い日が続くと言うから、市内の新型コロナの感染者も増えていることだし、そうそうお客が来るとは思えないのです。

 それでも野菜サラダは平日の決めた三皿を盛り付け、新しい天麩羅油を鍋に注ぎ、開店の準備は着々と進む。暖簾を出して開店前のひとときに、カウンターの椅子に座ってひと休みすれば、眠ってしまうのではないかと思うけれど、さすがに眠ることはないのです。バス通りの向こうを見れば、あちらの畑のひまわりも随分と花を咲かせてきた様子。近くまでは寄れないけれど、お隣のご主人が道楽だからと言って耕した畑の広さには驚くばかり。

 ボサノバの明るい曲を流して待ち続けるけれど、予想通りにお客は来ない。1時前になってやっと常連さんが来てくれたけれども、「今日は涼しいからサラダはいらない」と言われて、辛味大根をおろして、レンコンと南瓜、稚鮎とキスの天麩羅を揚げる。「夏が旬の野菜って何なのですか」と聞かれるから、「うちで出しているのが全部旬の野菜ですよ」と応える亭主。昼飯を終えた女将が手伝いに来てくれて、二人で後片付けをして家に帰るのでした。

8月26日 金曜日 曇り空だけれど蒸して暑い日 …

 昨日はお客が少なかったから、準備するものもないので、今朝は朝飯前のひと仕事はお休みにしようと思っていたのです。ところが習慣とは怖いもので、いつもの時刻に目が覚めてもう一度眠ることも出来ない。仕方がなく、洗濯物でも片付けてこようかと車で蕎麦屋に向かうのでした。まずは西側の小径にムクゲの花が散っていないかを確認して、新聞を取って店の中に入れば、昨日の朝よりは蒸している感じ。市内のコロナの感染者数は相変わらず200名近く。

 距離的には近いすぐ隣の市でも300名を越えているから、高齢者にとっては不要な外出を自粛すべき状態が続いているのです。家に帰って女将とこの話をすれば、「お盆で広がってるし、夏休みが終わらないと、当分収まらないんじゃないの」と言う。「学校が始まったらまた広がるのでは」と心配する亭主。高齢者ばかりの夜の防犯パトロールも、9月一杯は休止にするという連絡があった。これでは今日もお客が見込めないと、食後のひと眠りをするのでした。

 いつもよりは遅く、9時前に家を出て再び蕎麦屋に向かう亭主。昨日の蕎麦が随分と残っているから、今日は500g5人分だけ打とうと決めていたのです。それでも蕎麦打ち一回は一回だから、43%の加水で丁寧に蕎麦粉を捏ねて、丸出し、四つ出しを終えて伸し広げていく。綺麗に八つに畳んで包丁打ちをすれば、今朝は調子が好くて、不思議と切りべら26本で135gに揃うのでした。135gだと端切れがけっこう残るので、86gは大盛り用にと束にしておくのでした。

 昨日の蕎麦と合わせて11人分の蕎麦の束を生舟に並べ、10時前に蕎麦打ちを終える。いつもと同じ時間なのです。大根をおろして、ブロッコリーとアスパラガスを茹で、レタス、キャベツ、赤玉葱と切り分けたら、野菜サラダの皿を用意する。レタスを敷いて刻んだキャベツと赤玉葱を盛り付けたら、パプリカをスライスして、ニンジンのジュリエンヌ。キュウリ、トマト、パイナップルを切り分けて皿に載せたら、最後にブロッコリーとアスパラを添える。

 昨日も全部残って家で女将となんとか朝までかかって消化した。今日も残ったら大変だとは思いながらも、盛り付けてカウンターに並べると、ホッとするのです。お客の少ない蕎麦屋でも、それが調理人の喜びというものか。昼前に男性客がお一人でご来店て、温かいぶっかけ蕎麦をご注文。「少し涼しくなったから温かいのがいいかと思って」とおっしゃるので、「お腹には好いのですよ」と亭主が応える。確かに店内は28℃と以前よりは気温が低い。

 1時前に女性客5人がテーブルを占領して、皆さんバラバラのご注文。お婆様とお母様が前にいらっして、今日は親子孫と三代で来て下さったそうな。二人ずつ蕎麦を茹でてお出しして、天麩羅を揚げて天せいろを二つ出したら、最後に鴨せいろを作る。5人分の調理をしている間に、次のお客が来たらとうしようかと気が気ではなかった。一人で営業する日は、お茶出しも盆や蕎麦皿のセットもすべて自分でやらなければいけけないから、これが大変なのです。

 無事に5人分の蕎麦を出し終え、女性ばかりだからかいろいろと話をする。デザートの抹茶小豆も3人が頼まれて「これは美味しいわ」と褒められた。1時半には皆さんお帰りになったけれど、それから洗い物と片付けに入るのが大変。1時45分のラストオーダーの時間を過ぎたので、看板と暖簾と幟を閉まって、チェーンポールを上げていたら、車が止まってもう終わりかと言う。御免なさいと頭を下げる。遅い昼は家に帰ってから冷やし中華を作って食べる。

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2022年8月中旬

8月13日 土曜日 台風上陸通過の日だったけれど…

 昨日、一昨日と続けて平日の二日にお客が入ったので、お新香も蕎麦汁も底をついたのです。昨日のうちにお新香は糠床に漬けて、出汁を取る準備をしておいたから、今朝は6時前に蕎麦屋に出掛けました。出汁を取りながら、糠床から取り出したお新香を切り分けて、蕎麦汁まで作って約1時間。今日は蕎麦豆腐とデザートを仕込まなければいけなかったけれど、7時を過ぎたので家に帰ることにしました。隣のひまわり畑を眺めれば、可愛い花が沢山でした。

 日中、畑の様子を見て回っていたお隣の息子さんに挨拶をして、立ち話をすれば、去年、種が沢山取れたので、今年は広い範囲に播いたのだとか。「道楽でやっているから」と言うので、「私の蕎麦屋と同じですね」と言えば、予約をしなくても食べに行けるかと聞かれ、いつでもどうぞと応えておいた。家に戻れば、今朝は庭の隅にアオイと並んでモミジアオイが一輪ずつ咲いていた。蒸すけれども涼しい朝なのでした。気温は低いのでしょうか。

 女将の用意してくれた朝食は、いつになくボリュームがあって、全部は食べきれない。二人でホッケを半分ずつ残して、晩のおかずにすることに決める。今日は台風だからあまりお客も期待できないので、食後のひと眠りもゆっくりと、30分ほど熟睡するのでした。それでも、やることは沢山あったから、8時半過ぎには家を出て、エアコンの効いた蕎麦屋に向かう。台風がいつ上陸するのかをよく知らずに、少し北に進路を変えたことだけを覚えていた。 

 とは言っても、台風の進路の南側は雨風が心配されるから、みずき通りを渡りながら、この雲行きはもう台風の影響なのかと考えている亭主。まだ雨こそ降りだしていないけれど、店は開店休業になるかも知れないと、心配をするのでした。蕎麦屋に着いて幟を立てるのだけれど、雨風が強くなれば耐えられないかも知れないと、あらかじめ隣との境に立てた幟を降ろす場所を確認しておく。青空も見えてそれほど激しい天候ではないのが、ちょっと心配ではある。

 看板を出してチェーンポールを降ろしたら、厨房に入って抹茶小豆と蕎麦豆腐の仕込みを済ませる。抹茶が少し固まらないと小豆が沈むから要注意。蕎麦打ちが終わったら、薬味の葱を刻んで、大根をおろせば、後はいつもの野菜サラダの具材を刻む行程。少し仕事の多い分、時間はどんどん過ぎて行くのでした。蕎麦打ち室に入ったのは、女将が来た9時半過ぎなのです。今日は一回だけ打てば好いから、慌てることはないと慎重に蕎麦粉を捏ねていく。

 ちょうど43%の加水率で、今日もしっとりとした生地が仕上がったので、蕎麦玉を作って生地を寝かせる間に、厨房に戻って葱きりと大根おろしを済ませる。時間のない時には、ここで休憩をしてはならないと自分に言いかせるのです。一度椅子に座ってしまうと、立ち上がるまでに時間がかかるのが歳を取った証拠。大釜に火を入れたら、直ぐに蕎麦打ち室に戻って伸しにかかるのです。今朝も綺麗に伸して畳んで、八人分の蕎麦を仕上げ、生舟には12食の蕎麦。

 時折、雨が降る天気だったけれど、12時半を過ぎた頃にやっとお客が来てくれました。続けて1時を過ぎてリピーターのカップル。天せいろの大盛りとヘルシーランチセットを頼まれて、今日は綺麗に出来上がったと思っていた野菜サラダが出たので嬉しい。それでも空が暗くなって雷鳴が鳴り響く有様だったから、今日はこれでお終いだろうと、亭主はかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べるのでした。女将も残った野菜差サラダを包み、片付けに入る。

 家に帰って冷たく冷えた梨を剥いてもらって食べる。女将が美容院に行こうと電話をしたら、台風だからともう店を閉めたと言われたそうな。亭主は書斎に入って、今日の売り上げと写真のデータをパソコンに入力したら、横になってひと眠りする。目が覚めたらもう4時を過ぎていたから、随分と長い時間寝たことになる。夕食には早いから、ブログを書き始めて外が雨なのに気が付いた。明日は台風一過でお盆の墓参りが出来る天気。店は混むのだろうか。

8月14日 日曜日 台風一過、お盆も休まずに営業したら …

 台風が過ぎた翌朝は、からりと晴れ渡るかと思いきや、薄雲がかかった森の向こうから、今朝の太陽が光を放っていました。天気予報では昼過ぎまで曇り。お盆で墓参をするにはちょうど好い陽気だけれど、コロナ前のように墓参帰りのお客が来るということも、最近ではあまりない。以前なら、この時期はいつが休みかと電話が鳴ったもの。斯くして、定休日以外は休まずに営業をしようと女将と話していたから、今朝も6時には蕎麦屋に出掛けて行ったのです。

 陽は差していたけれど、見渡せば空には雲ばかり。隣のひまわり畑の写真を撮りながら、西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集める亭主。今日は日曜日だから、こんな早い時間には通る人もいない。昨日作っておいた蕎麦汁を徳利に詰めて、カウンターに干してあった盆や蕎麦皿を片付け、洗濯物を干してもまだ時間が早かったのです。小鉢は11人分を用意してあるけれど、余裕があった方が好いだろうと、インゲンを茹でて胡麻和えの準備をしておく。

 家に帰れば朝食の支度が調い、今朝は卵焼きと厚揚げ、とろろ芋のおかずで美味しくご飯をいただくのです。ナスの味噌汁も子どもの頃はよく食べたのですが、ナスは栄養がないと思い込んでいる女将の嗜好で、我が家ではあまり出た試しがない。冷蔵庫に残った食材がそろそろ尽きてきたらしく、今朝は珍しくナスの味噌汁。食後は面白そうなテレビの映画も観たかったけれど、書斎に入って横になれば、30分ほど熟睡出来たのです。頭がすっきりした。

 蕎麦屋に出掛ければ今朝はいきなり蕎麦打ち。750gを打って、昨日の残りと合わせて15食の用意をしました。馬鹿に出来ない日曜日だからと、野菜サラダも四皿盛り付けて、女将が早お昼から帰る頃には、もう開店の準備が終わっていたのです。10分前には暖簾を出して、沢山ある蕎麦が少しでも捌ければと思ったのですが、願いが通じたのか昼前に続けてお客がいらっした。天せいろの老夫婦に配膳をしたら、カウンターに座った若い女性はぶっかけ蕎麦。

 それからしばらくお客は来なかったから、亭主は蕎麦を茹でてぶっかけで食べようとした矢先、駐車場に車が入ってきたから、奥の座敷でスルスルッと昼を済ませる。厨房に戻れば「6人なんですって、分かれて座ってくださいと言いましたよ」と女将が言うので、注文の決まるのを待てば、天せいろに鴨せいろ、せいろ蕎麦に天麩羅蕎麦とてんでにバラバラなご注文。天せいろとせいろ蕎麦を先に出して、鴨せいろ二つを出して、最後が天麩羅蕎麦の順に出す。

 話す言葉を聞けばどうも中国の人らしく、天つゆの器に薬味の葱や山葵を入れたりして、女将が対応していた。旅行なのか、何処か観光が出来ないかと捜しているらしかったけれど、この時期はもうラベンダー祭りも終わっている。小一時間ほど涼んでいる間に、常連さんの女将の友人がいらっして「いつものを」とご注文。暑い中を1キロ近くも歩いて来たらしいのです。今日はお客の帰るのが遅かったから、片付けにも時間がかかった。

 帰り道、みずき通りで珍しくアブラゼミを間近で見た。その名の通り油で揚げるようなジリジリという音で鳴いていました。家に帰れば、先に着いた女将がエアコンのスイッチを入れておいてくれたから、ヒンヤリと涼しい。冷たい梨を剥いて、居間で涼む亭主の所に持って来てくれるのは有り難いことです。昨日行けなかった美容院に電話をして、直ぐに出掛けた女将でしたが、5時前には戻らないだろうと、亭主はかしらを焼いて、珍しく日本酒で一献です。

8月15日 月曜日 お盆の中日、終戦記念日 …

 午前5時半、家を出て蕎麦屋に向かう亭主。西側の小径に散ったムクゲの花の様子を見ながら、隣のひまわり畑を眺めれば、いつのまにか沢山の花が開いているではありませんか。毎日、見ているのに、今朝は急に花の数が増えているような気がするのです。蕎麦屋に入ってエアコンのスイッチを入れ、厨房の明かりを点けたら、まずは朝刊を開いて、昨日の市内の感染者数を調べるのです。三桁が続いていたのに16名と激減しているのは、お盆のせいだろうか。

 厨房に入って冷蔵庫にある小鉢のお新香に、インゲンの胡麻和えを作れば全部で七鉢。そんなにお客が来るとも思えないけれど、ギリギリの数ではちょっと心配だったから、残っていたキュウリとナスとカブをスライスして、浅漬けを漬けておきました。急に足りなくなっても、直ぐには小鉢は作れないのです。残ったら残ったで家に持ち帰って食べるだけ。食材は少し多めに種類と数を仕入れてあるから、何をいつどう使うのかが思案の分かれ目なのです。

 カウンターに干してある昨日の洗い物を片付けたら、洗濯室に行って、洗濯機の中に洗ったままの布巾や手拭いを干していきます。昨日は混んだから洗濯物が沢山あったのです。隣の風呂場は綺麗なままで、ほとんど使っていないから勿体ない。よほど暑い日には、仕事が終わったからシャワーを浴びたりもしたけれど、ガス会社の点検の人には、「たまには水を入れて沸かした方が、風呂釜が長持ちしますよ」と言われているけれど、そのままです。

 7時前に家に戻れば、今朝は早くから女将が台所に立って朝食の支度をしてくれていた。とは言っても、空っぽに近い冷蔵庫の中身を知っているから、あまり期待はしていない。それでも、あり合わせの材料で、美味しいおかずを揃えるのは、さすがとしか言いようがない。そう言えば夕べはひじきを煮ていたっけ。早めに朝食を終えて、亭主は書斎に入ってひと眠りするのでした。エアコンで除湿していたから、ぐっすりと30分ほど眠れたのです。

 元気を取り戻して再び蕎麦屋に向かおうと玄関を出れば、相変わらず綺麗な花を咲かせている木槿(むくげ)が、朝日を浴びて亭主を見送ってくれているようなのでした。9時前だというのに、もう家々の影はほとんどなくて、今朝は熱い太陽が照りつけている。エアコンを効かせている蕎麦屋の涼しさを思って、わずか300mの暑さを我慢して歩く。駐車場の入り口でふと足を止める亭主。お隣の軒下の巣から飛び出してくるツバメの集団がまた飛び回っている。

 今朝はいつもと違って低く滑空したり、蕎麦屋の換気口に止まって休んだりと、興味深い動きをしているのでした。しばらくカメラを構えて何度かシャッターを切る。子ツバメが疲れて休んでいるのを、親ツバメが飛び立たせようとしているのだろうか。換気口に止まっているツバメは確かに身体の大きさが小さいのです。ジリジリと照りつける朝日に我慢が出来ずに、亭主は涼しい店の中に入って朝の仕事を開始するのでした。

 早朝に漬けておいた浅漬けを取りだして、鉢に盛り付ければ五鉢分だけ作れた。時計はとうに9時を回っていたから、急いで蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦が4束残っていたから明日から定休日なので、今朝は500g5人分だけ打って9人分の蕎麦を用意しておきました。平日の月曜日だから、これで十分に足りるはず。厨房に戻って大根をおろし、ブロッコリーとアスパラを茹でて、野菜サラダの具材を刻み始める。

 後はいつもの手順で、11時前には大釜の湯も沸いて、店の掃除を終わらせてひと休み。と、開店時刻の20分も前だというのに、駐車場に車が入ってくるではありませんか。早すぎるけれど、湯が沸いていれば断るわけにもいかないので、暖簾を出して中に入ってもらうのでした。年配のご夫婦だったから、時間も気にしていないらしいのです。奥様が「天麩羅が食べたいわ」と天せいろ二つを頼まれて、お二人でゆっくりと蕎麦を召し上がるのでした。

8月16日 火曜日 風の強い定休日 …

 今日は定休日だからと夕べは少し夜更かしをしました。それでも朝はいつもと同じ時刻に目が覚めるから、ちょっと寝不足気味の亭主なのでした。お湯を沸かしてコーヒーを入れたら、目を覚まして蕎麦屋に出掛ける。駐車場の金木犀が伸びすぎて、お客の車を入れるのにもバックセンサーが反応するのではないかと、少しずつ剪定ばさみで刈り取って、ついでに脚立を出して上に伸びた枝を刈り取ったのです。今年は花が咲かないかも知れないと心配する。

 90㍑のゴミ袋が一杯になったところで作業を止めて、エアコンの効いた店内に戻って、カウンターに乾した洗い物を片付け、洗濯機の中の洗濯物を乾すのです。これでちょうど7時前になったから、家に戻ってやっと朝食です。今日の買い出しで亭主が家の食料も仕入れてくるから、空っぽの冷蔵庫を見回して、女将は最後の力を振り絞ったと言う感じ。すべて蕎麦屋で昨日残った食材なのですが、見事にアレンジされていた。今朝も美味しくご飯をいただいた。

 食後はエアコンの効いた書斎に入って横になれば、朝が早かったから30分ほどぐっすりと眠れました。寝不足の上に早朝から身体を動かして、満腹になれば、人間幸せに眠れるものなのです。すっきりした頭で目覚めて、お袋様に電話をして仕入れの迎えに行く。農産物直売所に向かいながら、まだお盆は終わっていないから、今日は休みじゃないかと気が付いた。隣町のスーパーは今朝の新聞に広告が入っていたから大丈夫と、今日は沢山買い物をする。

 お袋様が畑をやっている知り合いから冬瓜をいただいたと言うので、半分分けてもらって蕎麦屋へ戻って早速茹でる亭主。彼女は冬瓜をあまり食べないと言うので、先週作った鶏胸肉挽肉とのあんかけ煮の話をしたら、作って見る気になったらしい。蕎麦屋に帰ってから電話をして、15分ほど下茹でしたら、塩と砂糖と生姜に醤油で味つけをして、挽肉を入れて片栗でとろみを付けるところまで念を押しておく。彼女も調理が好きだから、上手く作るはず。

 茹でた冬瓜を冷蔵庫に入れて、家に帰ればちょうど女将も買い物から帰ったところで、二人とも汗だくだから大笑い。昼は昨日残った野菜サラダを載せて冷やし中華にしようと話していたから、湯を沸かして亭主が麺としゃぶしゃぶ用の肉を茹でる。皿のまま車で持ち帰った野菜サラダを、茹でて冷やした肉とそのまま載せて、附属の酢味のタレをかけるだけだから、とても簡単なのです。亭主は麺の下に氷を敷いて、最後は汁まで綺麗に飲み干すのでした。

 食後は昼寝もせずにパソコンに向かい、食材の購入記録を入力して、忘れないうちにとお袋様の米寿のお祝いを発注しておく。女将は二週間後のスポーツクラブの予約をしてくれと、自分のスマホを持ってくるのです。午後の2時過ぎ暑い最中に蕎麦屋に出掛けて、午前中の仕込みの続きをするのでした。先週のレシピを少し変更して、オクラと京唐辛子を輪切りにしてそれぞれ二本入れて見ましたが、オクラが冷えても色が悪くならなければ好いのですが、

 次ぎに定番となった夏野菜の揚げ浸し。硬い野菜から先に炒めてミョウガとシメジは後から入れて、冷やしておいた出し汁にさっと浸ける。小鉢二品の仕込みは終わったから、明日はデザートと蕎麦豆腐、天麩羅の具材の切りわけ、そして夕刻にぬか漬けを漬ければいい。朝は蕎麦汁を作らなければと、干し椎茸と昆布を3㍑の鍋に浸けておくのでした。家に戻っての夕食は鶏のもも肉のカリカリ焼き。これで昨日残った野菜サラダは食べ終わった。

8月17日 水曜日 定休日二日目は、飽きずに小豆を煮る亭主 …

 午前6時に蕎麦屋に出掛けたら、隣のひまわり畑がまた一段と賑やかに花を咲かせていたので、しばらく眺めていたのでした。左手の蕎麦屋は金木犀の枝を剪定したのは好かったけれど、つい先日枝を払ったばかりと思っていたモミジの枝がまだ残っていた。次は西の小径の側に脚立を立てて上に伸びた枝を払わなければいけない。今朝の朝飯前のひと仕事は、昨日、準備しておいた出汁を取って、蕎麦汁を仕込まなければならなかったのです。

 出汁取りはどんなに急いでも小一時間はかかるから、蕎麦汁まで作って、天つゆを仕込んだら、もう7時近くになっていた。先週の残った一番出汁でも蕎麦汁を作り、二番出汁を取る鍋と、天つゆの鍋と三つの火口を全部使って作業を進めるのでした。洗い物を済ませて、水で冷ました蕎麦汁と天つゆは鍋のまま、二番出汁は容器に入れて冷蔵庫に収納する。作ったばかりの蕎麦汁は、冷ましてストックしてあるものと一緒に蕎麦徳利に詰めて、これも冷蔵庫に。

 家に戻れば、女将は台所に立って朝食の支度をしていました。今朝のおかずは、昨日、亭主が買って帰った鰺の開きと蕎麦屋の残り物の最後の小鉢。長葱の塩焼きも蕎麦屋で残ったものだけれど、よくぞまあ、バランス好く組み合わせてくれたと感謝。食欲旺盛な若い頃なら、旅館や民宿で食べる小さな鰺の開きなどは、どうしてこんなに小さいのだろうと思ったものですが、今では沢山食べられないから、かえって味わいのあるひと品なのです。

 食後は例によって書斎に入ってひと眠り。定休日の二日目は、あまり多くの仕事はなかったから、午前中に床屋に出掛けて髪を刈ってもらおうと考えていたのです。お盆休みがいつからなのかを確認していなかったけれど、40年も通って世間の盆休みの後で休むと知っていたから、出掛けて行ったのです。果たして、今日は盆の明けなのに休みになっていた。仕方がないから、酒屋に寄って焼酎を買って帰ろうと思ったら、こちらも10時開店で閉まっていた。

 仕方がないから蕎麦屋に行って、明日の小鉢を盛り付けておく。夏野菜の揚げ浸しと冬瓜と鶏胸挽のそぼろあんかけ。旬の野菜が食べたいと通われる常連さんがいらっしたら、どちらを出そうかと迷ってしまいそう。ラップで蓋をして冷蔵庫に入れたら、今度は小豆を煮て抹茶小豆の仕込みです。ところが、この小豆を煮るにはやはり1時間はかかるから、洗濯物を畳んだり、朝の洗い物を片付けたりと時間をつぶすのが大変なのでした。

 隣の火口では小鍋に抹茶の粉に寒天とタピオカ粉を混ぜ、水と氷糖蜜を加えて沸騰するまで火を入れる。これが少し固まるまで待たなければならないから、小豆の煮えるまでの時間でちょうど好い。ほどよく固まった頃に、三回に分けて砂糖を入れた小豆の鍋に塩を少々。このタイミングがとても大切で、小豆は沈まずに表面に浮いたままで抹茶が固まってくれる。水羊羹ではないからタピオカ粉を加えて、ぷるんとした食感が欲しいところなのです。

 11時過ぎには家に戻ったら、女将がもう鍋に湯を沸かして、朝から話していた焼きうどんの準備をしてくれていました。亭主は台所に入って、肉と残り物のキャベツとピーマンを柔らかくなるまで炒めたら、茹でたうどんを加えて中華鍋を振る。本当は豆板醤をちょっと加えて作りたいところなのだけれど、辛いのが苦手な女将を気にして塩と胡椒だけで仕上げる。仕上げにほんの少しだけ出汁醤油を垂らして、昼のひと品が完成なのです。

 午後は天麩羅の具材の切り分けと、ぬか漬けの漬け込みだけだったから、スポーツクラブの予約のために、女将の持って来たスマホで無事に予約を済ませたら、また蕎麦屋に出掛けて今日最後の仕込みに取りかかるのです。本当に蕎麦屋が道楽でなければ、休みの日にもここまで頑張れないかな。夕食には女将が久し振りにピカタを作ると言っていたから、亭主は蕎麦屋で用意した小鉢を味見に持って帰るのでした。美味しい食事は人を幸せにするとは名言です。

8月18日 木曜日 午前中は雨の陽気で …

 雨の音で目が覚めた朝。夕べ漬けておいた糠漬けが気になって、6時前には車で家を出て蕎麦屋に向かう亭主。エアコンを入れなくても涼しい朝だったから、お新香を切り分けて小鉢に盛り付け、昨日の洗い物を片付ける。他に仕事はなかったから、西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集めて、小鉢に入りきれなかったお新香の残りを持って家に戻るのです。天気予報を何度も見ているのに、その都度変わるから、目の前の天気で今日の予定を立てるしかない。

 今朝の食事は鰺の開きと豚汁、高野豆腐に亭主が持ち帰ったばかりのお新香。鰺の開きは四枚でひと組だから、二日続くのも仕方がないか。蕎麦屋で残った長葱を焼いて添えるのも女将のひと工夫。豚汁は店で残った大根のあるうちは続きそう。これで十分美味しい食事だから、満足して食後のお茶を飲むのでした。まだ7時半前だから、食後は書斎に入って女将の朝ドラの終わる時間までゆっくりとひと眠り。これがまた至福の時なのです。

 台所で朝の洗い物をしている女将に頼んで、珈琲を入れてもらったら、傘を差すのは嫌だけれど、仕方なく蕎麦屋に出掛ける亭主。今朝はエアコンを入れなくても涼しい朝なのでした。みずき通りを渡って、バス通りを蕎麦屋に向かえば、お盆が明けたせいかいつもより車の通りが激しいような気がする。いつも群れている鳥たちは姿を見せずに、蕎麦屋の隣の畑にひまわりだけが、今朝も変わらずに咲いているのでした。静かな朝なのです。

 昼には雨が止むという予報だったから、チェーンポールも降ろさず幟も立てずに、今朝はまず蕎麦打ち室に入って、定休日明けの蕎麦を打つ亭主。店の中の温度は26℃と低かったけれど、湿度は60%を越えてやはり雨のせいなのです。それでも加水はいつもと同じく43%。捏ねて行けば少し柔らかいかなという感触でしたが、これは伸し方を加減すれば解消できる程度の問題です。蕎麦玉をビニール袋に包んで寝かせている間に、厨房に戻って次の準備をする。

 一週間、毎日、蕎麦屋に通っているから、定休日明けとは言っても、今日が何日目の営業日なのか、つい忘れてしまうことがある。女将には「呆けてんじゃないの?」などと言われることもあるけれど、決してそうではなくて、毎日が同じ繰り返しなだけなのです。だから、「今日は木曜日なので」と仕切り直して、また蕎麦を打つのです。気温の低い雨の日の営業では、お客の数はあまり見込めないから、いつもと同じく750g八人分を打って生舟に束を並べる。

 野菜サラダは平日だからと従前の決まりに従って三皿だけ盛り付ける。ところが今朝は、ブロッコリーを仕入れるのを忘れたことに気が付いて、家に電話をして女将に買い物に行くのかと尋ねれば、「雨だし今日は行かない」との応え。仕方がないから、何か綠の野菜はないかと冷蔵庫の中を捜せば、オクラが予備に買ってあるのに気が付いた。塩で茹でて斜めに切ってブロッコリーの代わりにしたら、食べたお客は「案外あうものですね」と喜んでくれた。 

 雨の日のお客は、あらかじめ来ようと思っていたお客か、通りがかりのお客。今日も開店前に電話が入り「予約できますか」と言うので、予約はやってないけれど、空いているから大丈夫と言えば、暖簾を出して直ぐにいらっしゃる。聞けば、仕事でいらっした義理の息子さんが、白髪の老婦人を連れてきたのだとか。前にもいらっしてお蕎麦が美味しかったから、蕎麦好きの息子さんを連れて来たとおっしゃる。ヘルシーランチセットの天せいろを頼まれた。

 閉店間際になって仕事の途中らしい若い男性がカウンターに座ってせいろ蕎麦のご注文。スポーツクラブが休みの女将が来てくれて亭主は少し気が楽になる。1時半に彼女のヨガ教室の予約があったので、スマホを朝から渡された亭主は気が気ではなかったのです。早めに店の片付けを終えて、亭主がブロッコリーを買いに行くと言えば、午前中が雨で何処にも出掛けなかった女将が、珍しく一緒に行くと言う。お蔭で夜は鯛や鮪の刺身のご馳走を食べられた。

 夕食後に、スマホを持って歩かない女将に、いつも何処のお花が綺麗だったとか話をするので、少しは写真でも撮ってみたらと、食後に亭主が被写体になってカメラの練習。夜は夜でラジオを聞きたいといつも言っていたから、スマホにアプリを入れてやって使い方を教えてやるのです。二人とも時代遅れのアナログ人間なのだけれど、女将は必要がないものには関心を示さないから合理的。彼女が子供や孫たちとテレビ電話で話せる日は来るのでしょうか。

8月19日 金曜日 晴れて爽やかな陽気だったけれど …

 朝が涼しかったからか、今朝は6時過ぎまでぐっすりと眠った。昨日はお客が少なかったから、朝飯前のひと仕事もお休みで、台所に入った女将が、朝食の支度をしてくれるのを、居間の椅子に座ってじっと待つ亭主。床が椅子に変わっただけで、まだ頭が働かない状態なのです。「ご飯が出来ましたよ」と言われて食堂に行けば、今朝のおかずは鯖の塩焼きで、ちょっと食べ応えのありそうな大きさなのでした。最近の魚は骨が取ってあるものが多いので助かる。

 朝食が終わっても今朝はひと眠りをせずに、やはり居間の椅子に座って、テレビも点けずにじっと物思いに耽る亭主。今週はまだ営業を開始して今日が二日目だというのに、随分と日にちが経ったような気がしてならないのでした。お茶を運んでくれた女将に話をすれば、「お客が少ないから、待ってる時間が長いんじゃないの?」と、朝の仕事が忙しいから相手にされない。今年は盆休みも取らなかったから、夏の疲れが出始めているのだろうか。

 洗面と着替えを済ませ、女将の朝ドラの始まる前に、自分で珈琲を入れたら、またしばらく椅子に座って朝ドラの終わるのを待つ。今朝は昨日買ってきたブロッコリーや油や豆乳を、蕎麦屋まで持って行かなければならなかったから、短くなった日影を選んでゆっくりと歩いて行くのでした。朝の空気は涼しかったのですが、陽射しはまだジリジリと暑いのです。夏から秋にかけてはいつもこうだったからしらと、思い出すすべもないのです。

 蕎麦屋に着いたら看板を出し、幟を立てて、チェーンポールを降ろしたところで、ゴミ捨てから帰るお隣の奥さんに出会って挨拶をする。いよいよ盆休み明けの出勤らしく、制服を着て車に乗り込むのでした。若い人は見るからに元気そのもの。老いた自分は傍目にはどんな風に見えるのだろうかと、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打ち始めるのです。「疲れを知らない年代は遠い昔」だけれど、疲れても日々の稼業は休むことは出来ないと空元気を出す。

 いつも決まってこの時間帯に燕たちが飛び回るのです。蕎麦屋の駐車場の上野電線には、五羽の子ツバメが羽を休めていた。中には止まったまま毛繕いをするものもいれば、眠っているかと思えるものまでいる。親鳥は何処にいるのだろうか。そろそろ移動の時期なのだろうけれど、今年は随分と長い間、一箇所に止まっているような気がするのです。43%の加水で今日もしっとりとした生地が仕上がり、750gで八人分の蕎麦を打ち上げて、生舟の中に束を並べる。

 昼前にリピーターの母娘がご来店で、天せいろのご注文。随分とゆっくりと食べて行かれたけれど、その後はしばらくお客がなかったので、1時過ぎに亭主はかき揚げを揚げて、賄い蕎麦をぶっかけで食べておく。月曜日に残った五日目の蕎麦でしたが、これがまた美味しい。お客には出すことはないけれど、よく締まってコシの効いた味わいになるのです。1時半を過ぎてそろそろ片付けを始めようとしていたら、バイクの音がして最後のお客がご来店でした。

  天せいろにキスとメゴチの天麩羅を追加で頼まれ、しっかりと昼の食事を摂られて帰るのでした。片付けは少しだけでしたが、大釜の洗いや天麩羅油の後処理など、することは沢山ある。全部片付けて家に帰ったのは3時過ぎ。暑さもそれほどではなかったから、それほど辛くはなかった。女将もスポーツクラブから戻ったばかりで、二人で桃を剥いて食べる。亭主は書斎に入ってパソコンに向かい、ひと眠りしたら蕎麦屋に出掛けてお新香を漬けてくる。夜は残った野菜サラダに肩ロースの肉を焼いて一献です。


8月20日 土曜日 久々の満員御礼、お蕎麦売り切れ …

 午前5時半、蕎麦屋に出掛ければ、森の向こうから雲間に朝日が昇ってきました。隣の畑のひまわりたちも朝の太陽を待つかのように、みんな東を向いている。朝はまだ少しの間、青空が見えたのです。夕べ漬けておいたお新香が心配で、厨房に入って冷蔵庫から糠床を取り出せば、ナスはちょっと硬めだけれど、皮を剥いたカブはちょうど好い味で、キュウリもすっきりと甘い香りがする。空の蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、今日一日の分を用意するのでした。

 カウンターに干してある盆や蕎麦皿を戸棚にしまい、洗濯物を畳んで、大釜に水を張ったところで、今朝の仕事はもう終わり。お客が少ない分、片付け物も少しだから楽なのです。朝早くから姿を見せるのは鳩の群れ。次ぎに鴉が現れて、燕の親子は9時過ぎになってやっと活発に飛び回る。このところ赤とんぼが畑の上を随分と飛んでいるのが見えるから、やはり季節は移り変わっているのです。名残惜しそうに蕎麦屋のたたずまいを眺めながら家に戻る亭主。

 夏の初めに蕎麦屋の向かいの親父さんが持って来てくれた南瓜の一つは、蕎麦屋で天麩羅にして使ったけれど、もう一つは女将が家に持ち帰って涼しい玄関に転がしてあった。昨日、これを煮て食べようと、鰺出刃で切ったけれどやはり切れないと言うから、亭主が蕎麦屋に持っていって牛刀で四つに切り分けてきた。家にも出刃があった筈なのに、古くなって使わない物は捨てるのが女将の習慣らしい。これが今朝はやっと食卓に上り、柔らかいので驚いた。

 朝ドラの終わる時間まで書斎で横になってひと眠り。雲が出て陽が翳った頃に家を出て蕎麦屋に向かえば、今朝は随分と蒸し暑いのに今ごろになって気が付いた。早く店についても、今朝はもうあまり仕事がない。昨日の蕎麦がそのまま生舟に残っているから、今日は500g5人分だけ打ち足して、13食の蕎麦を用意する。天気も悪くなると言うので、今日はこれだけあれば十分と考えたのです。蕎麦豆腐を仕込んで、野菜サラダは週末だからと四皿盛り付けておく。

 その写真を撮ってやろうとカウンターの向こうからカメラを構えていたら、大釜の湯が沸いて白い湯気が立ち上っていた。お茶のポットと温め用のポットに四本湯を入れて、天麩羅油を鍋に入れ、天つゆの鍋を冷蔵庫から出したら、もう開店の準備は出来上がり。早お昼を食べに帰った女将も、あまり仕事がないのを知ってか、11時を10分過ぎてやっとやって来る。早いお客が店の前で車を停めたけれど、暖簾の出ていないのを見て帰ってしまう。

 昼はしばらく見なかった椋鳥が戻って来たらしく、畑や電線に群れていた。昼前に3人のお客がいらっして、今日はこれで終わりかなと思っていたら、1時前から一挙に10人のお客が続けてご来店。厨房は嬉し楽しの大忙しで、女将もお茶出し、配膳、会計と休む暇がないのでした。新しいお客とリピーターの方と常連さんと、それぞれがゆっくりと食事をなさって帰って行く。最後のお二人がいらっして、「お蕎麦売れ切れました」の看板を出すのでした。

 二人で洗い物をして片付けても今日は後半が混んだから、珍しく3時過ぎになって家に帰る。いつも運動が足りないと買い物に出る女将も、雨が降ってきたこともあるけれど、今日は疲れて出掛けなかった。カレー蕎麦のお客に野菜サラダを出しただけだったから、サラダは三皿分持ち帰っている。万札を出したお客が多く、釣り銭もなかったから、亭主が車を出して夕食の総菜を買いながら両替をしてくる。かくして久々に出来合いのおかずでサラダを食べた。

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2022年8月上旬

8月6日 土曜日 蝉の声が聞こえる …

 今朝はアオイの花だけが一輪咲いていました。カッシアの影に隠れているからか、背丈も小さくひっそりと咲いていると言った感じです。考えたらムクゲもアオイ科の花だから、作りが似ていると言えば似ているかな。今朝は蕎麦打ちも一回で済みそうだったから、朝食も少し遅い時間で、珍しいホッケの味醂干しを買ってあったので、焼いてもらっておかずにする。女将が作った揚げ浸しともずくも添えられて、美味しくいただくのでした。

 蕎麦屋までの道程も涼しい朝だったから楽なのでした。お隣のひまわり畑も、日に日に花の咲いている数が増えて、満開の日が楽しみなのです。看板と幟を出して、チェーンポールを降ろせば、今日はもう週末だから早いもの。昨日一昨日の二日間が、あまりにもお客が少なかったので不安だったけれど、女将の三年日記によれば、去年の夏も緊急事態宣言が出ていて、平日はとてもお客が少なかったのだとか。店の窓を全開にして涼しい朝の空気を入れる。

 店内の気温は25℃と昨日よりも涼しい。ただ、湿気に弱い亭主には、ちょっと動くと汗が出るのが辛いところ。蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打てば、もう汗が噴き出してくる。加水率43%で捏ねた生地はちょうど好く仕上がって、伸して畳んで包丁を打てば、切りべら26本で140g前後の束が8つ取れた。昨日の残りの蕎麦と合わせて、今日は15食の蕎麦を用意しました。どれだけお客が来るのか分からないけれど、蕎麦の数を越えることはないと思うのです。

 野菜サラダもこのところ涼しいからかあまり出ないので、週末だけれど今日は三皿だけ盛り付けておくことにしました。暑いから、作って直ぐに冷蔵庫に入れてしまうと、カウンターに並べてお客が見て頼むということがないから、ちょっと残念ではあるのですが。天麩羅油を鍋に注ぎ、天つゆの鍋を隣の火口にかけて、天麩羅の具材や天ぷら粉を調理台に並べたら、開店の準備は完了です。一度来て店の掃除を済ませた女将が、11時過ぎに早お昼から戻って来た。

 時間に余裕のある亭主は、真空フリーザーで半解凍した豚ハラミを串に刺して、誰か頼まないかなと皮算用をする。週末に出なければ、家に持ち帰って亭主の酒の肴にするから、それはそれで嬉しいのだけれど、コロナの影響で夜の営業を休んでいるから、あまり期待は出来ないのです。昼前からぽつりぽつりとお客が入って、何時の間にか駐車場は満杯。歩いて来るお客もいるから店の中も、満席になるのでした。厨房は俄に忙しくなるから楽しい。

 今日は新しいお客がほとんどで、女将も顔を見たことがないお客ばかりだったと言う。鴨せいろが二つも出て、天せいろに天麩羅蕎麦、ぶっかけ蕎麦など、種類も幅があるのでした。1時過ぎには、皆さんお帰りになるから、混むのは申し合わせたように昼の一時間ばかり。洗い物をする暇もなかったから、女将と二人でせっせと洗っては片付ける作業を繰り返す。外が涼しいからか、厨房も27℃を越えなかったのが幸いでした。とても動きやすいのです。

 残った幾つかの蕎麦を賄いで食べて仕舞うと、明日の分が少なくなるから亭主は家に帰るまで空腹を我慢する。みずき通りに折れる所の森の木々から、蝉の声がやけに賑やかに聞こえてくる。女将は蕎麦屋に居ても森の木々から蝉の声が聞こえるというけれど、亭主には耳鳴りばかりが煩くて、それと気が付かないのです。でも外に出て実際にミンミン、ジージーと鳴く声を聞くと、夏の風物詩。角のお宅では、これもアオイ科の芙蓉の花が咲いていました。

 餅を焼いてもらって30分ほどひと眠りしたら、女将が買い物から帰って来た。亭主はまた蕎麦屋に出掛けて、明日のお新香を漬けて洗い物を片付けてくる。5時を回っても夫婦の見たいテレビ番組はなく、週末の夕食時は本当にテレビを消したママなのです。野球や競馬やゴルフなどスポーツの好きな人は、テレビを観る楽しみも多いのかも知れない。夕食には沢山残った野菜サラダを使って、定番になったお好み焼きを作る。亭主は串焼きがあるから半分だけ。

8月7日 日曜日 今日は不安定な空模様で …

 午前5時半、家を出て車で蕎麦屋に向かえば、重苦しい雲が一面に空を覆っていました。夕べ漬けたお新香を取り出さなければと、早い時間に出掛けたのですが、11時間のつけ込みで、味は上々なのでした。キュウリは太い物の方が、甘く漬け上がる気がしてならない。農家で取れたばかり野菜は美味しく漬かるのです。カウンターの上に干した昨日の洗い物を片付け、洗濯物を畳んだら、洗濯機の中に洗ったままになっていた昨日の分を干して、家に戻ります。

 それでもまだ6時半過ぎだったから、女将はまだ寝覚めのヨーガの時間で、台所には現れない。亭主は仕方がないから、エアコンの効いた書斎に入って横になれば、湿気がないのでぐっすりと寝込んでしまう。7時過ぎに女将に起こされて朝食の席に着く。週末になると定休日の買い出しまでに、冷蔵庫の中の食材がが片付いてくるので、予想通り、ハムエッグと煮物のおかずで美味しく朝食を食べるのです。洗面と着替えを済ませて、いつもの時間に蕎麦屋へ。

 何時の間にか青空が広がって、早朝の天気が嘘のようなのです。蕎麦屋の駐車場には、お隣の軒下からツバメの軍勢が次々と飛び立って、蕎麦屋の周りを高く低く飛び回っているではありませんか。蕎麦屋を背景にしてカメラを構えて待つけれど、スピードが速すぎてシャッターを押す頃には、もう屋根の上に飛び去っていく。連写の機能が付いている一眼レフでないと、なかなか難しいようです。ジリジリと陽射しが首を焼くから、直ぐに店の中に入る。

 今朝も43%の加水率で蕎麦を捏ね始める。最近はこの加水にもすっかり慣れて、生地が少し柔らかければ打ち粉を多めにして伸していく。今日も8人分の蕎麦を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分を用意する。この週末もあまりお客は多くないから、十分に足りるはず。女将から聞いたのだけれど、昼前になると市役所からの放送で、毎日コロナの感染拡大を注意する放送が流れているのだとか。お客が減ったのは天候のせいばかりでもないのかも。

 それでも今日は10時半から駐車場に車を止めて、開店を待っているらしいお客がいたのです。陽が差して暑くなってきたから「まだ準備が終わっていないけれど、中でお待ちになったら」と言えば、「助かります」と店の中に入る。大釜のお湯も沸いていないので、亭主の飲む冷えたほうじ茶を出して、野菜サラダの具材を刻み、お湯が沸いたところでお茶を入れて注文を聞く。近くの介護施設の夜勤明けで遠くまで帰る途中なのだとか。リピーターの方でした。

 11時前に配膳したのは開業以来初めてでした。女将が来る頃にはヘルシーランチセットをもう食べ終えて、礼を言って帰られた。混んだのは昼過ぎの一時だけで、今日も日曜日なのに10人はお客が入らない。「以前のように補償もないのにねぇ」と、珍しく女将が行政の批判をするから驚いた。途中で大粒の雨がザーッと降ってきたと思ったら、直ぐに止んで陽が差してくる。東の空には黒い雨雲、西の空には青空が覗く、そんな天気の一日なのでした。

8月8日 月曜日 立秋が過ぎて再び暑さが戻った …

 いつものように22時に就寝、5時起床。最近はこの習慣が続いています。台所に行ってお湯を沸かし、コーヒーを入れて、明かりもテレビも点けずに窓の外を見ている亭主。食堂の窓に朝日が当たってとても眩しいから、今日はきっと暑くなると思えたのです。5時半を過ぎたらガレージのシャッターを開け、車に乗って蕎麦屋まで出掛ける。あまりすることはないけれど、昨日の盆や蕎麦皿を片付け、洗濯物を畳んで、西側の小径のムクゲを掃き集める。

 隣のお花畑は、また少しひまわりの花が咲いて、日に日に彩りが加わってくるのでした。ひまわりには青い空がよく似合う。来月、米寿を迎えるお袋様の住む低層マンションも、朝日を浴びてこんな早い時間からさぞ眩しかろう。一緒に仕入れに出掛ける明日には、お盆の墓参りの打合せをしなければ。お墓の草取りは近くに住む弟がもう済ませてくれたらしい。西側の小径に散ったムクゲを掃きに出れば、伸びていた葛の蔦をお隣で刈り取ってくれたのでした。

 家に帰れば女将が朝食の支度を済ませて、味噌汁とご飯を運んでいる。その湯気が朝日に当たってちょうど見えるから、亭主は居間の椅子から立ち上がり食卓に着くのです。いよいよ我が家の冷蔵庫には食材がなくなってきたらしく、蕎麦屋の残り物にウィンナや卵をあしらって、美味しそうに見せるのは女将の神業か。豚汁も肉がなくなったから、タンパク質は油揚げだけで、大根と人参に刻み葱を入れて、結構、美味しく出来上がっているのです。

 食事が終わったら、洗面と着替えを済ませて、エアコンの効いた書斎で10分間だけ微睡む亭主。今朝は新聞がないから休憩が出来ないと、お茶を入れている女将に所望して、美味しいお茶で目を覚ますのです。ご近所の百日紅の花が綠の木々を背景にして、鮮やかだったから、ウッドデッキから写真を撮らせてもらった。今日も暑そうな空なのです。蕎麦屋に出掛ける途中、ご近所のご主人に後ろから「昨日までは涼しかったのだけれどねぇ」と挨拶される。

 早朝にエアコンを入れておいた蕎麦屋に着いて、朝の仕事を終える亭主。今朝は500gだけの蕎麦打ちだったから、慌てることはないのです。昨日の残りの蕎麦と合わせて11食分を用意して、厨房に戻る。まだ10時前なのでした。二つの大釜に火を入れたら、まずは野菜サラダのアスパラとブロッコリーを茹でておく。10時になると、例によって市の放送が始まるから嫌になる。感染拡大を注意する、この放送のお蔭で、確かに随分とお客は減っているのです。

 野菜サラダの具材を刻み、天麩羅の具材を調理台に並べ、天麩羅油を鍋に注いで、天つゆの鍋を隣の火口に乗せたら、もう大釜の湯が沸いているのです。11時には準備か終わるから、それからテーブルをアルコール除菌液で拭いていく。今日は11時20分には暖簾を出した。エアコンを入れても、換気のために窓を少し開けているから店内は27℃どまり。それでも、湿気が取れるからか、蒸し風呂のような外に比べたらかなり涼しいのです。

 12時を過ぎてやっと車が駐車場に入ってくる。一台入ると続けてまた入るから不思議なもので、天せいろやヘルシーランチセットを続けて出すのでした。でも、今日はそれでお終い。1時を過ぎたところでかき揚げを揚げて、自分の食べる賄い蕎麦を茹でるのです。お客が少なくても、月曜日は後片付けが大変で、洗い物と片付けの他に、ゴミ袋を外の混み箱に移したり、洗濯物を洗ったり、持ち帰る食材を袋に詰めたりと、汗だくで1時間近くかかるのでした。

8月9日 火曜日 暑さはますます酷くなって …

 どうも定休日というのは、ゆっくり寝ていられない性分らしい。あれをしようこれもしておこうと、考えて寝付くからか、午前4時には目が覚めて、珈琲を飲みながら明るくなるのを待つのでした。それでも実際には時間と体力とが足りなくて、全部は終われない。今朝も5時には家を出て、森の影から朝日が昇るのを眺めながら、返しを仕込んで出汁取りの準備。昨日の後片付けや洗濯物を畳んだり干したり。南側のミニ菜園の草刈りまでは手が回らなかった。

 家に戻れば朝食の時間で、亭主の希望で今朝は茄子焼きと銀ダラの塩焼き。学生時代にナス焼きだけで夕食を食べていた記憶が、未だに懐かしく、自分の原点のように思えてならないからです。我が家の冷蔵庫もほとんど空になって、茄子やキャベツなどの野菜だけが残っていたのです。週に一度の仕入れの日にも、亭主が家の分の肉や魚や果物を買ってくることが多くなった。暑いから2キロの道程を歩いて買い物に行く女将だけでは、到底持って帰られない。

 お袋様と二人で買い出しに出掛け、盆の墓参りの打合せをする。暑くて眠れない夜は、氷枕にタオルを何重にも巻いて寝ているというから、いろいろ工夫をするものだと感心する。新レンコンがやっと少し安くなったから、天麩羅の具材に使おうと買って帰る。いつもより少ない量なのに、値段が高いのはこの暑さで野菜の値が上がっているかららしい。ひとパック100円だった茗荷も一挙に300円だから驚いた。大根も小振りなのに一本200円を超えていた。

 早朝に準備をしておいたから、出汁を取って蕎麦汁を仕込んでおく。一番出汁二番出汁と取って冷やさなければならないので、どうしても小一時間はかかるのです。昼の時間を気にしながら、何とか11時過ぎには仕込みを終えて、家に戻って昼食の準備にかかる。買い物から帰った女将も慣れたもので、蕎麦を茹でる鍋に水を汲んで火にかけ、昨日、亭主が揚げて帰った天麩羅をグリルに入れて、蕎麦が茹で上がる頃に焼き上がるように段取りをつけるのです。

 昨日の蕎麦が随分と残ったから、お袋様にも持って帰ってもらったのですが、亭主は念願の大盛りにして腹一杯食べられた。それでも、家で一番大きな3㍑ほどの鍋で二人分茹で、小さな笊とボールで蕎麦を洗うから、どうしても上手く仕上がらないのです。一人分ずつ茹でれば好いのに、つい面倒で二人分を一緒に茹でてしまう。女将は美味しそうに食べてくれるけれど、蕎麦屋の主は納得がいかない。茹でた蕎麦に艶が出ないのが見てくれも好くないのです。

 居間の椅子に座って女将の運んでくれるお茶を飲んだら、テーブルの隅に彼女の携帯が置いてあるのに気が付いた亭主。スポーツクラブの予約が2時過ぎにあったのでした。ひと眠りする時間はあるから、エアコンの効いた書斎に入って横になる。朝が4時起きだとどうしても昼寝が必要なのか。それでも20分ほど微睡んだだけで、午後の仕込みのことを思うと気が気ではないのです。無事に女将が希望する席を取って、亭主は蕎麦屋に出掛けていくのです。

 蕎麦屋に着いたらまずは、今朝やり損ねた南側のミニ菜園の様子を見に行った。予想通り、もう荒れ放題で、やはり耕して野菜を作っていないと、自然に帰ってしまうのだと痛感するのでした。明日こそは、長袖長ズボンに手袋をはめて、この雑草を刈り取ってやろうと思うのです。午後の仕込みは小鉢の準備なのですが、先週買った冬瓜を、何とか使おうとあちこちのレシピを覗いて考えたのですが、結局は揚げ浸しのようにして作ったまでは好かったのですが。

 冬瓜を茹でるのを忘れたから、なかなか火が入らない。一年振りだからやはり失敗なのでした。どうやって修正しようか、こんなこともあろうかと、今日は半分だけ使って量を減らしておいて好かった。家に帰って女将に話をすれば、「しばらくやっていないと、忘れてしまうことが多いのよ」と言われる。夜は今日買って帰った小振りの鰯を焼いて食べる。他はすべて先週の蕎麦屋の残り物。さあ明日は早く起きたら涼しいうちに、草刈りに精を出そうか。

8月10日 水曜日 今日は墓参の日 …

 今朝も早くから起きてはいたのですが、どうもなかなか疲れが抜けなくて、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛けて草刈りが出来なかったのです。朝食を終えたら洗面と着替えを済ませて、9時前にお袋様を迎えに行って、近くの霊園に盆の墓参りに出掛ける夫婦。霊園の入り口には青空に映える百日紅が見事で、まだ誰も来ていなかったから、三人で手分けをして花を供えて線香を上げる準備をするのでした。盆の入りは週末にかかるので、混むといけないと配慮。

 亭主が桶に水を汲みに行っている間に、女将とお袋様が花を切りそろえて、線香に火を点けたら、それぞれが隣り合った三箇所の墓に参る。この霊園の出来たばかりの頃に、一番早くに墓を買ったので、正面の手前、真ん中の場所を手に入れることが出来たのです。それから何十年、今では墓地の規模も何倍にも広がって、随分と立派な霊園になった。家からは歩いても来られる距離だから、昔はお袋様も散歩がてらに好く来ていたと言う。

 お袋様と女将とを家まで送ったら、亭主はその足で蕎麦屋に出掛け、午前中の仕込みを済ませる。昨日作って冷やしておいた蕎麦汁を徳利に詰めて、揚げ浸しの野菜の中から冬瓜だけを取り出して、もう一度火を通して柔らかくする。イメージ通りに仕上がらなかったのが悔しくて、二回目は冬瓜をあらかじめ茹でて柔らかくしておく。トマトも湯引きして皮を剥いておくのでした。蕎麦羊羹と蕎麦豆腐を仕込んだところで、午前中の仕込みを終わりにしました。

 家に帰ってそろそろ昼の支度をしなければと思っていたら、珍しく時間に買い物から女将が帰っていない。仕方がないから、とろろ芋をおろして、天麩羅の残りを焼き、蕎麦を茹でるばかりに準備を調えておいたら、やっと女将が帰ってきた。薬局の小母さんと長話をしていたのだとか。今日は蕎麦を一人分ずつ茹でて、氷で締める笊とボールも用意したから、少しは味が良くなっただろうか。冷たいとろろがヒンヤリと美味しいのでした。 

 食後はひと眠りをせずに、1時過ぎには蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをする亭主。ナスとミョウガとシシトウを油で炒め、薄口の出汁醤油に砂糖を入れて作った汁に、茹でた冬瓜とトマトと一緒に漬け込む。二回目のチャレンジは、冬瓜とトマトを茹でたのと、色を薄く仕上げたのが違う。透き通った冬瓜の涼しさが出ないのがやはり失敗。残った冬瓜を今度は出し汁と塩と砂糖で煮込んだら、鶏胸肉の挽肉を入れ、出汁醤油を垂らし、片栗粉でとろみを付けた。

 今度はイメージ通りに上手く出来たのです。透き通った冬瓜の涼しげな色が夏場の涼と、やっと一年前を思い出した亭主。天麩羅の具材を切り分け、糠床にお新香を漬けたところで、時計は既に4時を回っていた。エアコンを入れていても30℃を越える厨房で、今日は随分と頑張って仕込みをしたものです。気になっていた包丁を研いで、ついでに砥石が真ん中だけへこんできたので、砥石削りで少し平らにしておく。なかなかここまでやる暇がなかった。

 新しく別の業者から仕入れた豚ハラミを真空のフリーザーで解凍しておいたら、二日目なのにもうドリップが出ている。家で味見をしておこうとラップにくるんで、先ほど仕込んだ鶏胸挽きと冬瓜の煮込みと共に家に持って帰る。帰り道、いつもの酒屋まで遠回りをして焼酎と炭酸を買い、ついでにガソリンを入れて帰宅する。午後の陽射しはますます強く、車外温度は40℃を越えているのでした。みずき通りに折れる中央通りの風景もいかにも夏の午後らしい。

 台所で夕食の支度をしていた女将の用意してくれたのは、亭主の好きなジャガイモのバター焼き。モズクの酢の物とインゲンの胡麻和えと酒の肴には持って来いでした。それに亭主の持ち帰った豚ハラミの串挿しとシシトウを焼いて、冬瓜と鶏挽肉のあんかけ煮を加えれば、立派な酒飲みの夕食となるのでした。珍しくテレビも野球をやっていないから、女将と二人で静かに今日一日を振り返る。明日は祝日だから、蕎麦は少し多く打った方が好いと女将が言う。

8月11日 木曜日 朝夕が少し涼しくなったのか …

 午前6時の隣のお花畑。ひまわりの花が随分と沢山咲いてきた。花が小さいから、遠目にスマホのカメラで撮ると黄色い点に見えるけれど、人間の目で見ると確かに一つ一つの花がよく見える。西側の小径に散ったムクゲの花殻を掃き集めて、早速、厨房に入って夕べ漬けたお新香を取り出す。ついでに昨日作って鍋のまま冷やしておいた冬瓜とナスとミョウガとトマトの煮浸しを盛り付けておく。二回目の方が汁を薄くしたけれど、冬瓜はやはり染まってしまう。

 家に戻れば女将が台所で朝食の支度をしてくれていた。今朝は先日までの朝からの暑さが感じられない。湿気はあるからエアコンを使っているけれど、窓を開ければ涼しい風が入って来るのでした。店から持って帰った先週の三ツ葉がまだ残っていたのか、卵とじにして食卓に並ぶ。朝は暖かい食べ物が有り難いと思う年頃だから、豚汁がおかず代わりになって、とても美味しく感じられるのです。女将の漬けるお新香は、亭主は醤油をかけないと食べられない。

 食後は例によって短い時間だけれどひと眠り。今朝は珈琲も飲んでいなかったのを思い出す。20分ほど微睡んで頭がすっきりとしたところで、蕎麦屋に出掛けていく亭主。みずき通りを渡る頃には、随分と雲が出ていたけれど、時折、太陽を隠すので、陽射しが熱くないからちょうど好い。蕎麦屋の四軒隣の奥様が、花壇に植えたお花に水遣りをしていたので挨拶をする。古くから住んでいる人たちは、皆、亭主たちよりは年上の方なのです。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。女将の記録によると、去年は非常事態宣言が出ていたのに、山の日は10人を越えるお客があったらしい。それは大変だと今朝になってから慌てて、二回蕎麦を打つことにしたのです。750gと500gとに分けて、43%の加水でしっかりと蕎麦粉を捏ね、丁寧に伸して畳んで包丁切り。時間はかかるけれど、これだけあれば安心だと、生舟に蕎麦を並べて厨房に戻るのでした。

 やはり、いつもの時間に蕎麦屋に来て、蕎麦を二回打つというのは、その分だけ時間がかかる。特に定休日明けはやることが多いから、大根と生姜をおろして薬味の葱を刻んだところで、いつもだったら野菜サラダの具材を盛り付けている時刻。今日は祝日だから女将が手伝いに来てくれるのが、唯一の救いなのでした。胡麻油も新しい一斗缶を開けなければならず、重たい一斗缶を持ち上げて天麩羅鍋に油を注ぐ。大釜の湯が沸いたのでポットに詰める。

 これでもう開店5分前だったから、女将が「暖簾を出すわよ」と珍しく亭主をせっつくのでした。それだけ急いで準備を間に合わせたけれど、昼を過ぎてもお客は来なかった。今日もぴったり10時には市の放送が入って感染拡大が続いていると大音量でアナウンス。去年もこの放送でぴたっと客足が落ちたのだとか。幸いにも、1時近くになってお客が入り始めたから好かったのです。ご家族連れは墓参の帰りらしかった。続けて沢山の調理をするから忙しい。

 やっと亭主が遅い昼を食べたのは1時半過ぎでした。新しい油で揚げた天麩羅はやはり美味しい。今日のお客もそう感じてくれただろうか。月曜日に打った蕎麦を、今日の昼用にひと束残しておいたのだけれど、これも締まってなかなかいけるのです。最後のお客が帰ったのが遅かったから、全部の片付けを終えて2時半を過ぎた。女将はとっとこ先に帰って、ゆっくりと歩く亭主は家々の日影を通って家まで辿り着く。冷たい梨を女将が剥いてくれたのが嬉しい。

8月12日 金曜日 世間はお盆休みなのか …

 駅前の高層マンションが輝いて見える朝は、朝日が昇って強烈な陽射しを放っている証拠。今日こそは、蕎麦屋の南側の草刈りをしようと決めていたから、5時に起き出して珈琲を入れてひと休み。30分ほど居間の椅子に座って目を覚ましたら、意を決して玄関を出る。庭を見ればモミジアオイがぽつんと咲いていたので、写真に撮っておく。女将が愛でるだけあって、その姿が凛々しくも見える。ガレージのシャッターを開けて車に乗り込む。

 蕎麦屋に着いたら、他の事はさておき、軍手と鎌を手にしてミニ菜園に向かうのでした。月桂樹の枝を払いながら、西側の小径の手前まで一挙に草を抜いて行く。蔦が絡みついて大変だったけれど、定期的に草刈りをしているから、見てくれほど草の数は多くなかった。店の中に戻って90㍑のゴミ袋を持って帰り、刈った草を詰めて行くのですが、これがあっという間に一杯になってしまう。30分ほど奮闘して、ゴミ袋一つで今朝はお終いです。

 厨房に戻って昨日の洗い物を片付け、洗濯機の中の洗濯物を干したら、もう6時半を過ぎているのでした。朝の空気はヒンヤリとしていたけれど、やはり動いたから汗が滴り落ちて、家に帰る頃には暑い暑いと言ってクーラーの風で涼む亭主。それでも朝食は温かい方が好い年頃。豚汁はたっぷり肉が入っているから、唯一のタンパク源。自分で作った冬瓜と鶏胸挽きのそぼろ煮は、生姜の隠し味が利いていて、なかなか美味しい。来週はこれを店で出してみよう。

 朝から身体を動かしたからか、食後はすんなりとひと眠りには入れた。洗面と着替えを先に済ませ、エアコンの効いた書斎で30分ほど熟睡して、お茶を一杯飲んだら再び蕎麦屋に向かうのです。蕎麦屋の並びのご近所の奥さんたちが、玄関脇のお花に水遣りをしていたから、挨拶を交わしてちょっと立ち話。蕎麦屋の隣のひまわり畑も、今朝の強い風で揺れていました。空の色が真夏の空よりも青いような気がするのは、風が秋を感じさせる風だからだろうか。

 早朝にエアコンを入れておいたので、蕎麦屋の中は快適です。蕎麦打ち室も26℃で湿度は35%。それが、亭主が蕎麦を打ち終える頃には28℃、45%になっている。汗だくになった亭主の熱気が、狭い部屋を暖めているのかも知れない。今朝は750g八人分を打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて13人分を用意する。平日だけれど、世間はお盆のお休みだからと、少し余裕を持って打っておいたのです。それが今日はぴったり当たって、昨日よりも多いお客がご来店。

 昼近くになって、三人連れのお客がいらっして、「美味い蕎麦を食べに来ましたよ」と年配の男性が大きな声で言う。初めての方なのにと思ったら、連れの女性の一人がリピーターで、「美味しい蕎麦を食べさせる店だから」と、友だちを連れて西の町から来てくれたのでした。蕎麦好きの方たちらしく、全員がせいろ蕎麦で男性だけは大盛りのご注文。年配の方達だから亭主も気が楽で、いろいろな質問に答えながら蕎談義に付き合う付き合うのでした。

 次のお客がいらっして、お茶をお出ししたところで、前のお客はお会計。ヘルシーランチセットとせいろ蕎麦のご注文だったから、野菜サラダと蕎麦豆腐をお出ししてその間に盆に蕎麦皿や蕎麦汁、薬味、小鉢をセットして、蕎麦を茹でる。天麩羅を揚げないと随分と楽なのです。時計は1時を回っていたから、今日はこれで終わりかなと、平日のつもりでいたのが迂闊なのでした。やっと洗い物を済ませた頃に、車が続けて駐車場に入ってくる。

 後半は皆さん天せいろや単品の天麩羅のご注文で、最後のお客は隣町の常連さんなのでした。とりあえずお茶をお出ししたら、前のお客の配膳をしてから、「いつもので好いですか」と確認をして、カウンターに野菜サラダを持って行く。盆と蕎麦皿、天麩羅皿と天つゆの器を用意して、インゲンと稚鮎とキスを揚げ、辛味大根をおろして、蕎麦を茹でる。前のお客がお会計を済ませて帰った後は、常連さんのいつもの四方山話に付き合う。有り難いことなのです。

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2022年8月初め

8月1日 月曜日 朝の8時から30℃を越える暑さで …

 今朝も4時半から朝飯前のひと仕事に蕎麦屋へ出掛けたけれど、カメラを持って行くのを忘れて、向かいの森の空が真っ赤に染まった美しい朝焼けも、写真に撮れませんでした。カウンターの上の洗い物を片付けて、新しい天つゆを作り、浅漬けを漬け込んだら、洗濯機の中の洗濯物を干して、最後に西の小道の槿の花びらを掃き集めるのでした。家に戻ってもまだ6時半だったから、エアコンを効かせた書斎で20分ほどひと眠りする亭主。

 7時を過ぎたので食堂に行って朝食を食べる。痩せたサンマの開きが焼かれていました。ジャガイモを茹でてバターを塗って食べればご飯が進むのです。朝ドラの終わらないうちに宅急便の配達が来て、受け取りに出た女将が「今朝は外も相当に暑いわよ」と言っていました。今日から8月だと、元気に蕎麦屋に出掛ける亭主でしたが、陽射しの強いのには閉口するのでした。早朝の雲はどこかに消えて、みずき通りも真夏の暑さ。明日は定休日と頑張って歩く。

 今朝も燕の親子がお隣の軒下から、蕎麦屋をめぐって元気に飛び交っていました。よく見ると中に小さな燕が何羽かいるようで、時折、電線に止まって休んでいる様子。やはり、今年は二回産卵したようで、親鳥以外にも身体の大きな燕がいるのは、先に生まれて育った兄弟らしいのです。何とか、カメラの画角の中に収めようと、少し粘ってはみるけれど、スピードが速すぎて、そのうち朝日がジリジリと肌に照りつけるから、エアコンの効いた店内に逃げ込む。

 店内は27℃までしか下がっていないのですが、湿度も下がっているから蕎麦打ちには快適な環境。早速、蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦はほとんど売り切れたから、今朝は750g八人分を打つと決めていました。7月の月曜日は、毎週6~8名のお客の数だったから、それ以上の場合は御免なさいと、売切れにしようと考えていました。しかし、混んだ週末の翌日は判らないのです。暑さやコロナの感染者数の増加もあって、読めないのが本音。

 43%の加水率で蕎麦粉を捏ねれば、今朝は幾分生地が柔らかい。少し包丁の刃に蕎麦が絡みつく場面もあったけれど、なんとか凌いで、切りべら26本で135gの蕎麦を八束仕上げるのでした。蕎麦粉の袋にはあと一日分の蕎麦を打つだけしか残りがないから、この定休日には次の蕎麦粉を注文しなければならない。天婦羅の具材の海老も今週は頼まなければならないし、天婦羅油も来週にはなくなる。明日の仕入れもあるから、今日の売り上げ如何で持ち出しになる。

 そんなことを考えながら、蕎麦を打ち終えて厨房に戻り、早朝に漬けておいた浅漬けを取り出して小鉢に盛り付ける。揚げび浸しもあるから、蕎麦の数だけ小鉢が出来れば好いという計算。定休日前は、出来るだけ食材を残したくないと言うのが正直なところなのです。野菜サラダも今週は毎日のように随分と残ったけれど、メニューに出しているからには、ある程度用意しておかなければならないのです。昨日も夜になってから、辛味大根を捜しに出かけた。

 月曜日には常連さんが来て辛味大根を頼まれることが多いので、駅前のショッピングモールに出掛けたけれど、そこにはなくて、隣の小さな八百屋に辛味大根のコーナーがあったので助かった。一昨日も西の街のスーパーでたまに出ていることがあるからと、他の買い物がてら出かけてみたけれど置いていなかった。ネットや蕎麦粉の農場で頼めばすぐに手に入るのだけれど、送料が入ると倍の値段になる。ミニ菜園が機能していればこんな苦労はないのですが。

 開店の準備が整って、10分前だったけれど車が駐車場に入って来たので、待っていましたとばかりに、暖簾を出して「営業中」の看板を掲げたのです。母と娘らしい女性二人お客が店に入られて、しばらくメニューを眺めてから、せいろ蕎麦と天せいろのご注文。盆と蕎麦皿に蕎麦猪口、薬味の皿と蕎麦汁、小鉢を用意してから、天婦羅を揚げる。蕎麦を二人分茹でたら盛り付けて配膳。次のお客が来ても慌てないように、しっかりと練習のつもりでお出しする。

 ところが今日は珍しく後が続かないのです。ゆっくりと食べて帰られたお客がいなくなって、後片付けと洗い物を済ませたら、ぽつねんと椅子に座って次のお客を待ち続ける亭主。そういえば辛味大根の常連さんは金曜日に来たばかり。1時を過ぎたのでかき揚げを揚げて賄い蕎麦をぶっかけで食べておく。それでもお客は来ないから、残った天婦羅の具材をすべて揚げて、家に持ち帰る準備を始める亭主。夜は残った食材を消化しながら一献なのです。

8月2日 火曜日 佐倉も午後は38℃になるとの予報 で…

 定休日の今朝は朝飯前のひと仕事には出掛けずに、冷蔵庫の中が空になったから、残り物で質素に朝食を済ませるのでした。食後のひと眠りもせずに、女将の朝ドラの時間に亭主は前の通りに脚立を持ち出して、お隣の家との境に伸びた紫陽花の剪定に取りかかる。雪柳や連翹の伸びた枝に蔦がからまって、鬱蒼とした状態なのでした。お隣の奥様も出て来て「助かるわぁ」と水撒きを始める。朝日陽の差す前でないと、暑くて仕事が出来ないのです。

 蕎麦屋に寄ってエアコンのスイッチを入れて、お袋様を迎えに行けば、「今日は朝から暑いねぇ」と言って車に乗り込むのです。農産物直売所に着けば、ナスやキュウリなどの夏野菜が沢山並んでいる。「天麩羅にするならこの大きさが好いよ」と農家の親父様が、まだ値札を貼っていないナスの袋を持って来てくれた。知り合いの農家の親父様に「冬瓜とナスをもらったよ」と挨拶をすれば、オクラの袋を抱えてお袋様に渡していた。有り難いことなのです。

 隣町のスーパーに足を伸ばせば、朝から凄い暑さのせいか、今朝はお客が少ないのでした。小葱以外は新鮮な野菜がすべて揃って、店に帰って買って来た野菜を冷蔵庫にしまうのにひと苦労。昨日の洗い物もまだ片付けていないのです。20℃の設定で冷房を入れていているのに、店の中の温度は29℃。外は相当に暑くなっているらしい。野菜籠に入りきれない野菜は、上の冷蔵室に並べて、すぐに使うものは取り出しやすいように見える場所に入れておく。

 カウンターに干した盆や皿を片付け、洗濯物を干し終えたら、もう11時近くになっていたから、家に戻って昼食の支度を始めるのでした。亭主は鍋にお湯を沸かして昨日残った蕎麦を茹で、女将は亭主が昨日揚げて帰った天麩羅をグリルで焼くのです。家で茹でる蕎麦は、どうしても鍋の大きさが蕎麦屋とは違うので、水で洗うにしても狭い場所でボールと笊に入れるから、仕上がりが違ってくる。氷で締めないから綠色だけれど、食感はやはり今ひとつなのです。

 それでも天麩羅もカリッとして立派な天せいろだから、贅沢な昼食なのです。最後に蕎麦を茹でた鍋から蕎麦湯を蕎麦猪口に取って啜るのがまた格別。女将には一人前130gの蕎麦ではちょっと多いので、いつも100gほどにして盛り付けてやる。その分、亭主が余計に食べられるから嬉しいのだけれど、食べ終えてみるとやはりまだ物足りない。スルスルスルッと食べるのが早いから「満腹中枢がまだ働かないのよ」と女将に言われる。

 居間で食休みをすれば、女将がお茶を入れて持って来てくれる。ついでに二週間後のスポーツクラブの予約をして欲しいと、彼女のスマホと記録するノートを置いていくのです。2時5分が予約開始の時刻だから、今日はまだ何も仕込みをしていなかったので、彼女のスマホをポケットに入れて、まずは酒屋に出掛けて焼酎と炭酸を買って蕎麦屋に行く。時間通りにスマホを操作して予約を済ませたら、朝のうちに準備しておいた出汁を取って蕎麦汁を作るのです。

 3時過ぎには仕込みは終わったけれど、エアコンを効かせた蕎麦屋は34℃より室温が下がらないので、首にアイスノンを巻きながらも、次の仕込みに入る元気がなかった。午前中に手に入らなかった小葱を買いに、橋を渡って団地の中のスーパーに行こうと、車に乗り込めば、駐車場の日影に停めておいた車の車外温度計は、なんと45℃を表示しているではありませんか。外は確かに体温よりも暑いのです。アイスノンを首に巻いたまま、マスクも忘れて店内へ。

 明日が定休日のスーパーには、野菜も残り少なくなっていたけれど、無事に小葱を手に入れたついでに、上手そうな冷凍銀ダラを買って、だいぶ陽の傾いた中央通りを家路につくのでした。女将は稽古場でまだ頑張っている。亭主は昨日残ったハラミの串刺しと茹でたジャガイモをグリルで焼いて、一足先に晩酌を始める。やっと女将が台所に現れたところで、野菜サラダとかき揚げの具材の残りでカレー炒めを作る。二人が同じ事を考えていたから不思議です。

8月3日 水曜日 暑い暑いとばかりは言っていられずに …

 夕べは暑くて何度も汗をかいて目が覚めたけれど、エアコンのタイマーを30分にセットしてまた眠る亭主。夜中27℃より下がらなかったらしいから、熱帯夜もいいところなのです。5時半にはすっかり目覚めて、コーヒーを入れて一服したら、蕎麦屋に出掛けて朝飯前のひと仕事。昨日は家の庭木の剪定をしたから、今朝は蕎麦屋の駐車場のヤマボウシとモミジの剪定をしようと、車に脚立を積み込んで出掛けて行ったのです。6時前だというのに陽射しが強い。

 突き出た枝を手の届くところは剪定ばさみで切り、脚立を使ってもう少し上まで切っていく。落ちたら危ないからと、次は高枝鋏を伸ばして上に飛び出た枝を切り落とす。朝の散歩の奥様が挨拶をして通りすぎる。90㍑のビニール袋に切った枝を詰めていくと、ちょうど満杯になる分量で、亭主も少し疲れてきた。袋を運ぼうとチェーンポールのチェーンをまたいだつもりが、足が引っかかって歩道に転んでしまった。通りがかりの車が止まって「大丈夫ですか」

 朝食の時に女将にこの話をすれば「ぼうっとしてると危ない年齢なのよ」とたしなめられた。身体の感覚が鈍くなってくるのです。車を運転していても、時々、注意が散漫なことがある。気をつけないと高齢者の事故になりかねないから、いつも通り慣れた道で蕎麦屋に向かうのです。午前中に切り干し大根の煮物と揚げ浸しと、小鉢二種類を仕上げて、冷蔵庫で冷やしておいた蕎麦汁を徳利に詰める。洗い物を終わらせればもう11時なのでした。

 店のエアコンを最強にして運転しても、厨房の温度は29℃までしか下がらない。外はうだるような暑さなのでした。車のエアコンを入れて家まで帰れば、玄関まで歩くのも暑いのです。「昼は何を食べようか」と女将に聞けば、まだキャベツが二玉も残っていると言うから、亭主が台所に立って回鍋肉を作り、女将がレタスと若布のスープを作ってくれた。甜麺醤を入れて本格的に味つけをしたのは好かったけれど、香りが強すぎて好きではないと女将が言う。

 世界に誇る中華料理も、子どもの頃から食べつけない女将には縁遠い料理らしいのです。そう言えば、昔、隣町にあった中華料理屋で食べた回鍋肉は、もっと甘くて優しい味だったかも知れない。日本人向けに工夫をして出していたのでしょうか。我が家でも豆板醤も辛いからとあまり好かれないから、砂糖を入れて甘めに仕上げる必要があるのです。午後は整形外科にひと月振りに出掛け、血液検査をして尿酸値を計ってもらう。少しは薬の効果があるのかな。

 そのまま蕎麦屋に行って、午後の仕込みをする亭主。蕎麦豆腐と明日のデザートを作ったら、天麩羅の具材を切り分けて、お新香を漬け込む。その間に、業者が天麩羅油と海老と稚鮎を持って来るのでした。油も海老も値上がりしたばかりだから、明日は蕎麦粉が届くけれど、果たして支払いが間に合うかどうか。家に戻れば、女将がコロナの感染者数がまた増えていると大騒ぎ。世の中の人は自分たちとはかなり違う感覚らしいと二人でニュースを見るのでした。

8月4日 木曜日 未明から激しい雨と雷の音で …

 朝まだ暗い時分でした。ドドーンという雷鳴と共にザーッと激しい雨の音で目が覚めたのです。夕べ蕎麦屋で漬けたお新香を取り出さなくてはならないし、小鉢も盛り付けなければと、コーヒーを一杯飲んでから5時半過ぎに、雨の降る中を車に乗り込む亭主。これでは今日は開店休業だろうなぁと、昨日作った揚げ浸しも少なめに盛り付けて、6時過ぎにはもう家に戻るのでした。することもないから、また床の中に横になって夢の続きを見るのでした。

 珍しく女将が「ご飯ですよ」と起こしに来てくれた。いつになく涼しい朝だったから、ぐっすりと寝込んでしまったらしいのです。食堂に行けば定番の和食のメニュー。まずは豚汁で身体を温める。蕎麦屋で大根が残ると家に持ち帰って来るのだけれど、夏場の豚汁も馬鹿に出来ないのです。若い頃は暑い夏にはなんでも冷たい物を欲しがったものですが、最近は女将の出す暖かな料理が嬉しい。鰺の干物も小さなもので十分なのです。

 今日は車で出掛けようかなと言っていたのに、雨が上がったらしく、涼しい朝の風の中を、蕎麦屋までゆっくりと歩いて行くのでした。隣のお花畑もやっと小さなひまわりが咲き出して、これからが見物だろうと楽しみになる。耕すのも種を蒔くのも大変だろうに、よく続けてくれるのです。蕎麦屋に来るお客様が「素敵ですね」と言う姿が今から目に浮かぶようです。雨の上がっているうちに、西の小径に散ったムクゲの花を掃き集めておく。

 幟を立てて看板を出し、チェーンポールを降ろしたら、手指をよく洗って今日の蕎麦打ちに入るのです。いつも定休日明けの木曜日は、沢山お客が来たらどうしようかと多少の躊躇いがあるけれど、今日はこの天気ではあまり期待できないと、750g八人分をしっかりと打つのです。加水率はいつもと同じ43%でしたが、湿度が高い分だけちょっと柔らかめ。心が落ち着いているからか、今朝は打ち下ろす包丁の運びも軽く、140g前後の蕎麦の束を生舟に並べました。

 雨は降ったり止んだりで、空は暗いままでした。小鳥たちの姿も見えずに、亭主は一人厨房に帰るのです。蕎麦玉を寝かせている間に、薬味の葱も刻んだし、大根も生姜もすり下ろしておいたから、まずはブロッコリーとアスパラを茹でて、レタスの葉をちぎり、キャベツを三皿分だけ刻んでしまいます。お客が来なければ野菜サラダも出るはずもないのですが、アーリーレッドとパプリカをスライスして、ニンジンのジュリエンヌ。今日は綺麗に切れました。

 キュウリとトマトとパイナップルを載せて、最後にブロッコリーとアスパラを添えて今朝の仕込みは完了です。時計はまだ11時前。新しい天麩羅油を鍋に注いで、作っておいた天つゆをレンジに乗せたら、ちょうど大釜の湯が沸いて、蕎麦湯の器を温めるポットと、蕎麦茶用の四つのポットに入れて行く。後は店の掃除をするだけ。開店までに早朝を含めて4時間の準備をして、2時間半の営業は、考えたら割に合うものではないかも知れない。

 それでも毎日飽きずに続けられるのは、やはり好きだからなのでしょうか。お客に趣味の蕎麦屋だと言われても、最近では笑って済ませることが出来るようになったのです。店内は換気のために窓を開けていても、今日は27℃より上がらない。外はだいぶ涼しいのです。1時前になってもお客の姿がなかったので、下ろしたての天麩羅油でかき揚げを揚げて、月曜日に打った蕎麦を茹でて賄い蕎麦を食べておく。木曜日のヨーガのなくなった女将が来てくれた。 

 何かすることはないかと言うけれど、お客が来ていないから昨日の洗濯物を畳むことぐらいしか仕事はないのです。亭主は奥の座敷に入って一服させてもらう。やっと陽が差してきたらしく、障子に映る蔦の影が素敵でした。ラストオーダーの時間の1時45分になったところで、暖簾と幟と看板をしまい、チェーンポールを上げて、大釜の掃除に取りかかるのです。女将は天麩羅のパッドを洗い、亭主の昼飯の後片付けをしてくれる。2時前には店を出るのでした。

 家に戻れば、雨の降っていた朝には撮れなかったアオイの写真をじっくりと撮っておく。ピンクのアオイも何時の間にか交配したのか、花の芯の方がモミジアオイの真紅になっているから不思議なのです。まだ蕾もあるから、当分は楽しめそうで嬉しい。珍しくエアコンを入れない居間で、女将の切ってくれた桃を食べる亭主。書斎に入って今日の写真のデータをパソコンに取り込んだら、ひと眠りするのでした。お客が来なくても7時間の労働は疲れるのです。

8月5日 金曜日 今日も涼しい一日で …

 女将の稽古場に置いてあるプルメリアの花がまだ咲いている。7月の初めからだから、ひと月近くも次々と咲き続けているのです。部屋に立ちこめる香りが好いと、炎天下の外には出さずにおいたのが好かったのでしょうか。常夏の島では大きな木になるのに、植木鉢に植えられて本来の姿ではないのが、ちょっと可哀想な気もするけれど、30cmほどのただの棒切れがここまで育ったことを考えると、生命力の素晴らしさを感じないではいられないのです。

 朝食を終えて朝ドラが終わる時間に家を出て、みずき通りを渡れば、陽が出ていないからか風は涼しいのでした。先日、農家のお兄さんが、草刈りをして耕したばかりの向かいの畑には、もう青々とした雑草が伸び広がっている。やはり、作物を植えていないと、手入れが行き届かないのでしょう。蕎麦屋のすぐ前の親父様の畑は、しょっちゅうトラクターを走らせているから、黒い土が綺麗に見えているのでした。蕎麦屋のミニ菜園もまったく同じことが言える。

 今日は昨日の蕎麦が生舟に一杯残っていたので、蕎麦の様子を確認して今朝は蕎麦を打たないと決める。昨日と同じように暑くならないという予報だったし、コロナの感染者数もあまり減っていないから、今日もお客は期待できないと思ったのです。それでも野菜サラダはいつもの平日のように三皿盛り付けて、準備は万端で開店の時刻を待つ亭主。そろそろ暖簾を出そうかと思っていたところに、ガス屋さんが来て一酸化炭素の検知器の交換だと言う。

 ブザーが鳴ったら直ぐに電話をするという仕組みで、随分と親切なことだと感心する。亭のガスレンジは年老いた時のことを考え、一般の家庭用のレンジを向かい合わせて二つ入れているから、空だきや鍋の温度が高くなり過ぎても自動で火が止まる仕組み。厨房の天井にはガス漏れの検知器も設置してあるし、このコロナの時期には常時窓を開けているから、まずは心配がないでしょう。二重三重に安全を確保して、蕎麦屋の営業をしているから安心です。

 隣のお花畑のひまわりも、昨日よりは咲いている花の数が少し増えたのです。道路を挟んで向かいの畑も同じ農家の畑で、やはりひまわりの種を蒔いたらしく、全部が咲いたら圧巻だろうと今から楽しみにしているのです。昼を過ぎてもお客はなくて、賄いの蕎麦を茹でてさあ食べようかと思ったところに、駐車場に車が入ってきたから、汁は入れずにラップをかけて冷蔵庫にしまった。きっと食べる頃にはコンビニのざる蕎麦状態になっている。

 奥のテーブルに座ったご夫婦のこ注文はヘルシーランチセット。サラダは作って直ぐに冷蔵庫に入れてあるから、「まずはサラダを召し上がっていてください」と、ドレッシングと共にお出しする。蕎麦豆腐をお出しして、天麩羅を揚げないから出すのに時間はかからない。「今日は奥様はいないのですか」と聞かれて、彼女の来てくれるのは週末だけだと応える亭主。以前にもいらっしたお客なのだろうかと思いながらも、蕎麦湯とデザートまでお出しする。

 家に帰って女将がスポーツクラブから戻る前に、蕎麦粉の支払いに郵便局まで車で出掛ける亭主。銀行でお金を下ろしたついでに、いつもの酒屋まで車を走らせる。女将の帰ったところで、このお客の話をすれば、いつも休みの日に来てくれていた方ではないかと、好く覚えているから凄い。雪の降った日にもいらっしたのだとか。厨房で調理をする亭主は、元来、話をしてもあまりお客の顔を見ていないのかも知れない。物忘れが激しいのでなければ好いけれど。

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2022年7月末

7月26日 火曜日 朝から雨の降る定休日 …

 確か月の初めに咲き出したプルメリアが、まだ花を咲かせ続けているのでした。女将の稽古場はよほど居心地が好いらしく、花びらが散っていると思えば、くるくるっと巻いた蕾が開いて、また新しい花が咲くのです。今朝は雨の音で目が覚めるほどだったけれど、たまには適度なお湿りが欲しいと思っていた。蕎麦屋の草取りも月桂樹やモミジの剪定も気にはなっていたが、今日は朝飯前のひと仕事もお休みにして、ジュディーガーランドの伝記映画を観ていた。

 亭主が出掛けないのを知ってか、女将も朝食をゆっくりと支度として、小鰺の開きを焼いて豚汁を作ってくれた。肉や野菜が摂れるからと、蕎麦屋で大根の残った時には、最近、よく豚汁が出るのです。暇を見つけて大根やニンジンを煮て、冷蔵庫にストックしておけば、朝の忙しい時間に、油揚げと肉とを入れてすぐに出来るらしいから、女将も考えたもの。食後にまた映画の続きを見て、女将に話をすれば、ライザミネリの母親だとさすがによく知っている。

 朝ドラの終わる時間に、雨の中を車で蕎麦屋に出掛ければ、今朝も昼顔が咲き始めていた。昼まで花が萎まないところが朝顔とは違うのです。店の中に入って、今朝の新聞を見れば、昨日の市内のコロナ感染者数は200人を越えていました。足の指の故障で夜のパトロールにはしばらく参加出来ずにいたのですが、7月もコロナ感染者が増えたので中止になるという連絡が来た。参加者が老人達ばかりだから、かなり慎重に様子を見ているらしいのです。

 昨日の洗い物を片付け、洗濯物を畳み終えたところで、お袋様に電話をして、雨の中を今日の仕入れに出掛けるのでした。ナスやキュウリやピーマンなど夏の野菜が沢山並べられて、インゲンの細いのが出ていたから一緒にもらって帰る。隣町のスーパーに足を伸ばせば、雨が降っているからか、いつもより駐車場は空いていて、お目当ての野菜類はすべて手に入ったのです。出汁を取る昆布と干し椎茸を買ったからか、今日は少し予算をオーバーしてしまった。

 店に戻って沢山の野菜類を冷蔵庫に収納したら、少し早かったけれど家に帰って昼の準備をする亭主。先週はぶっかけ蕎麦があまり出なかったので、掻き揚げ用に刻んだ玉葱や人参が余ったので、昼は炒飯と餃子にしようと女将と話をしていたから、肉を加えてカレー炒飯を作るのは亭主の役目。隣の火口で餃子を焼いて、皿に盛るのは女将の仕事。お好み焼きに使う生姜と青海苔は、炒飯にも使えると喜ぶ亭主。滅多に飲まないコーンスープも今日は買って来た。

 満腹になったところで、朝寝をしなかった分、エアコンの効いた書斎で1時間ほど昼寝が出来た。2時過ぎには女将のスポーツクラブの予約をしてくれと言われていたので、起き出して居間の部屋に行けば、しっかりとスマホと予約を記す手帳が置かれていた。冷蔵庫に昨日買って帰った西瓜があったから、目覚ましにひと切れ。子供の頃に買ってもらった図鑑に、西瓜は野菜の仲間に入っていたから、それ以来、野菜かと思っていたのも不思議な経験です。

 夕刻を前に蕎麦屋に出掛けて、朝に昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋で出汁を取る。最近はだいぶ手慣れてきたので、一時間はかからない。黄金色の澄んだ一番出汁を取って、返しを加えて3㍑近い蕎麦汁を作る。残った一番出汁は瓶に入れて予備にする。二番出汁は容器に入れて約4㍑。どちらも水で冷やしてそのまま冷蔵庫に入れてしまうのです。蕎麦汁も十分に冷えたところで冷蔵庫に鍋のまま入れて、明日、蕎麦徳利に詰めていきます。

 今日は朝から雨が降ったせいか、それほど気温は上がらなかったけれど、その分湿度が高く、蒸しているという感じがしてならなかった。亭主は初めから、夜は冷やし中華を食べたいと思っていたのですが、女将の好みもあるからと、午後に聞いてみたら「今日は蒸し暑いからいいわ」とOKが出る。昨日のうちに買っておいた食材を使って、夜も亭主が麺を茹でる。麺が好きなことは勿論ですが、スープのお酢の味がさっぱりとして、美味しく感じられるのです。

7月27日 水曜日 本格的な夏になったかと感じた一日 …

 いつもの年ならやっと梅雨の明ける時期だけれど、今年は梅雨明けがやけに早かったから、なんともすっきりしない季節の変わり目なのです。それでも今朝は青空が広がり、夏らしい陽気で、煙草を買いに出た亭主は、そのまま蕎麦屋まで車を走らせるのでした。みずき通りを坂の上まで登れば、蕎麦屋の前のバス通り。西の小径の木槿の花を掃き集めたら、今朝の仕込みは昨日作った蕎麦汁を徳利に詰めて、蕎麦豆腐と水羊羹を作ることから始まるのです。

 常連さんの増えたせいか、最近は蕎麦豆腐の売れ行きが悪いのです。蕎麦屋で「蕎麦豆腐」と聞けば、珍しいから一度は食べてみようかという気になるけれど、決して美味しいものではないので、繰り返し頼むお客は少ない。自家製味噌ダレの甘さと柔らかな食感が好きだというお客もいるけれど、単品だと量が多いので敬遠するらしいのです。ヘルシーランチセットは半分の量にして出しているけれど、これが出ない日には蕎麦豆腐が残るのでどう改善するか。

 そんな課題を抱えながら、今日は型パッドに流し込む蕎麦豆腐の量を少し減らしてみたのです。蕎麦粉とタピオカ粉の量を四分の三にして、豆乳はそのまま、加える水を三分の二にして、少し小さめに作ってはみたけれど、果たして、どんな結果になるか。足りなくなる分には、また作れば好いけれど、週の営業が終わって残るのは耐えられないのです。蕎麦豆腐と水羊羹を流し込んだ豊缶を冷蔵庫に入れたら、早速、午前中のメインの揚げ浸しに取りかかる。

 出し汁を作って冷やしたら、夏の野菜を切り分け、ボールに入れて中華鍋に油を注いで揚げていくだけだったのですが、膝下の戸棚を見れば、油が足りないのでした。切った具材をボールに入れたまま冷蔵庫に入れて、少し早いけれど家に戻る亭主。昼は何にしようかと女将に言えば、「キャベツが随分と余っているのよ」と言うから、ホイゴウロウにしようとキャベツひとつ分を炒めて、亭主の得意の中華鍋を振る。今日は豆板醤を入れて辛めに仕上げました。

 食後は亭主はひと眠り、女将はスポーツクラブに出掛けていくのでした。午前中の仕込みが途中だったので、あまり家でゆっくりもしていられない。でも、糠味噌に野菜を漬けるのは、4時過ぎでなければ漬ける時間が長くなり過ぎるからと、午後の一番暑い時間帯に蕎麦屋に出掛けていくのでした。厨房の温度は33℃を越えて、エアコンを入れても31℃までしか下がらないので、首にアイスノンを巻いて、中華鍋に火を入れるのです。

 お客にもらった茗荷やシシトウ、農産物直売所で買ったオクラやパプリカが沢山あったので、今日は夏野菜が豊富。家から持って来た油を中華鍋に注いで、実の硬い物から順番に揚げていくのです。洗い物が少なくなるようにと、揚げては中華スプーンで鍋に冷やした出し汁に入れて行きます。全部の野菜を揚げ終わるまでに、随分沢山の油を使った。用意したタッパが二つでは足らないので、もう一つ用意して汁まで入れたら、冷蔵庫に入れて冷やすのでした。

 調理台が片付いたところで、冷蔵庫から糠床を取りだして、少し柔らかくなりすぎたから煎り糠を足して、キュウリとカブとナスを漬けておく。明日の朝まで16時間ほど、美味しく漬かると好いのですが。最後に、明日の天麩羅の具材を切り分けて、容器に入れてラップをかける。やはり、生椎茸はパックから取り出してビニール袋に入れた方が、ストレスを取り除くから、長持ちをするらしいのが判った。洗い物を済ませて、5時過ぎには家に帰るのです。

 定休日二日目の今日は、朝のうちに何ヶ月振りかでグリストラップの掃除をしたのが大きな進歩でした。ビニール袋二つ分の油の塊を取り出し、心もすっきりしたのです。午後の陽射しは一層強く、隣のお花畑の小さなひまわりも、ぐんぐん育っている様子。家に戻って夕食は何にするのと女将に尋ねれば、残った食材を片付けてと言うので、韮とモヤシの野菜炒めに、鶏肉の塩胡椒焼きと味見に持ち帰った揚げ浸しで、質素であっさりした食事となりました。

7月28日 木曜日 朝からとても暑い一日で …

 朝飯前のひと仕事で蕎麦屋に出掛けようと玄関を出れば、庭の隅に何やら真っ赤な花が咲いているのに気が付いた。近くに寄って見れば、なんとここ何年も咲かなかった真紅のモミジアオイなのでした。ピンクの方は普通のアオイだと、これではっきりと判ったのです。モミジアオイの葉は普通のアオイの葉よりも、細くモミジの形にをしている。女将に知らせると「肥料をやったのが好かったのかしら」と嬉しそうなのでした。目の覚めるような真紅が美しい。 

 蕎麦屋の駐車場に車を入れれば、今朝はやたらと沢山のツバメたちが飛び交っていました。めったにカメラには写らないのですが、近くを飛んでくるから思わずシャッターを切る。高い空まで飛んで行くものもあれば、畑のあちらこちらを低空で飛び回るものもあって、いよいよ巣立ちなのでしょうか。身体がひと回りもふた回りも大きくなっているのです。厨房に入って温度計を見れば、今日は朝から28℃もあるから、いつもより暑い朝なのでした。

 冷蔵庫から糠床を取り出して、夕べ漬けておいたお新香を取り出し、切り分けて小鉢に盛り付ける。漬けてから11時間ほどでしょうか、味は薄くもなく塩辛くもなくちょうど好い塩梅なのです。このところお客に好評の夏野菜の揚げ浸しも四皿だけ盛り付けておきました。洗濯物を畳んでから、7時過ぎに家に戻る。玄関を入れば、昨日一昨日と少し朝食の支度が遅かったから、少し心配でしたが、案の定、女将はそれに慣れてしまったらしいのです。

 それでも食後にエアコンの効いた書斎で10分ほど眠って、定休日明けの営業に出掛けるのでした。看板と幟を出してチェーンポールを降ろし、店のエアコンを入れたままにしておいたから、蕎麦打ち室まで涼しくなっていた。あまり気張らず、平日の来客数のデータに従って、750g 八人分の蕎麦を打つ。万が一、足らなくなれば、売りきれにして、ご免なさいで済ませるしかないのです。いろいろ考えると却っ気が疲れるから、最近は割り切るようにしている。

 野菜サラダも三皿だけ盛り付けました。出ない日には全部残ってしまうけれど、これも決めたとおりに用意するしかない。厨房の温度はエアコンを入れているにもかかわらず、昼になるに従ってぐんぐん上がってくる。外が相当に暑くなっているのでしょう。30℃を越えたところで、亭主はアイスノンを首に巻くのでした。昼を過ぎてもお客は来なかったけれど、今日は1時前から続けてお客が入ったのでした。せいろ蕎麦が多く出て、最後のお客だけが天せいろ。

女将のスポーツクラブの予約を取れと、彼女のスマホを持たされたけれど、前のお客の会計を済ませ、次ぎのお客にお茶を出したところで、隠れてスマホの操作をする亭主。家のご近所の奥様だったけれど、天麩羅が美味しいと言ってくださった。そこに遅れて女将が現れる。来週からは木曜日のレッスンがなくなるので、もっと早く来れると言うことだった。1時半の予約はまだ営業中だから、お客が続くと辛いのです。夜は残った野菜サラダで冷やし中華を作る。

7月29日 金曜日 暑すぎてかお客の来ない日 …

 今朝も早くから陽射しが強く、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛けてみれば、店の中は朝から32℃になっていました。蕎麦打ち室を覗いて見れば、なんと34℃もあるから驚きです。朝日が外壁に当たった熱が、建物の中まで伝わってくるらしいのです。朝日があまりにも眩しいので、東側の窓のブラインドを下ろしてエアコンの効きをよくする。カウンターに干した昨日の洗い物を片付けて、小鉢と蕎麦汁の数を確認したら、洗濯物を畳んでおきます。

 昨夜のうちに印刷した今年の暑中見舞いの第一陣を、出そうと思ったけれど、切手の値段が気になっていたので調べて見れば、今年は63円になっているのだとか。何枚も買い置きをしても、値段が上がるから結局は二度手間になる。コンビニで一円切手を買って貼り付けたけれど、折角、印刷して仕上げたのに、体裁が美しくなくなったから興ざめです。親しい友人宛の葉書だったから、勘弁してもらおう。家に戻って朝食を食べ、今朝は書斎で30分眠った。

 9時前に日影を辿って蕎麦屋まで出掛ければ、日影のないバス通りでは、百日紅の花を眺めながら、あと50mの辛抱だとゆっくりと歩く亭主。やっと蕎麦屋に着いて、エアコンで冷えた店内に逃げ込むようにして入れば、生き返るのでした。やはりブラインドを下ろしておいて正解です。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。室温は27℃で、湿度は35%と低めだったから、思い切って43%弱の加水で粉を捏ね始めました。

 やはりエアコンで空気が乾燥していたのか、43%近い加水でも、生地はそれほど柔らかくはないのでした。伸して畳んで包丁打ちをして、無事に八人分の蕎麦を仕上げる。昨日の蕎麦と合わせて10人分の蕎麦を生舟に用意できたのです。厨房に戻り、解凍しておいた豚ハラミを4本だけ串に刺して、大根をおろし、野菜サラダの具材を刻んで三皿盛り付ける。ハラミは真空フリーザーを氷温にして、ドリップが出ないように設定。サラダも直ぐに冷蔵庫に入れる。

 外は青空が広がって相当な暑さで、昼前にもう厨房は30℃になっていました。アイスノンを首に巻きながら、開店の準備を終わらせて、暖簾を出すけれど、この暑さでお客が来るのか心配なのです。今朝の新聞では、昨日の市内のコロナ感染者数は初めて300人を越えていたから、暑さにしてもコロナにしても、お客の来ない条件は出そろっている。ゆっくり身体を休めていようと思うのだけれど、どうも休憩モードにはなれないのです。

 それでも1時過ぎに隣町の常連さんがいらっしたから、亭主は黙っていつもの特別メニューをセットする。野菜サラダを出したら、辛味大根をおろして、インゲンとキスと稚鮎の天麩羅を揚げるのでした。月曜日に4回目のワクチンを接種した帰りに寄ったら、店が混んでいては入れなかったと言う。確かあの日は平日なのに、1時を過ぎてから混んだのでした。と、まだ営業中でお客もいるのに、県の調査だと言って若い視察員が前触れもなく現れる。

 今日の営業は常連さんお一人で終了。それでも有り難い事です。早めに片付けて、家に戻ってエアコンを効かせた書斎で、落胆のふて寝をする亭主。4時過ぎに目を覚まして、もう一度蕎麦屋に出掛け、明日の小鉢や蕎麦汁の補充をして、新しくお新香を漬けておくのでした。夜は店で残った野菜サラダで今日も冷やし中華かと思ったけれど、女将がチーズ揚げを作ってくれていたので、亭主が作って冷凍してある餃子を焼いてもらって一献なのです。

7月30日 土曜日 朝から眩しい太陽が …

 午前5時半、居間の部屋に入れば、食堂の窓に朝日が当たってとても眩しいのでした。毎日のように同じ時間に朝日が当たるのを見るけれど、こんなに眩しく感じたことはないのです。昨夜、冷蔵庫で冷やしておいたほうじ茶を一杯飲んで、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛けるのです。夕べ漬けた糠漬けを取り出すのが目的でしたが、それだけでは勿体ないからと、玄関から入った所の床掃除もしておく。石けん水で床を磨き、雑巾で拭き取っていくだけです。

 だいぶ前に塗った床のワックスが剥がれているから、土足で歩くところがもう汚れ放題なのです。毎朝、涼しいうちに少しずつやれば、少しは綺麗に見えるだろうと、昔のように一気に片付ける元気のなくなった亭主は、持久戦で臨む決意なのです。電動のポリシャーを購入したらどうかと、いろいろ調べてはいるけれど、狭いみせの中の一部分だから、手で拭いた方が確実で安上がりのようなのです。向かいの森から昇る太陽の光も、今朝は随分と眩しい。

 糠床からキュウリとナスとカブを取りだして切り分けたら、小鉢に盛り付けて今日のお客に備える。ところが、あまりもの暑さのせいか、天麩羅がほとんど出なくて、せいろ蕎麦などには夏野菜の揚げ浸しを付けるので、前のお新香は家に持ち帰って食べる始末。今朝も女将の作ってくれた卵焼き以外は、全部、蕎麦屋で残った食材ばかりなのでした。それでも美味しく食べられるから幸せというもの。キュウリの梅漬けがさっぱりとして食が進む。

 早く終わった朝食の後は、エアコンの効いた書斎でゆっくりと朝寝。夜が暑くて目が覚めるので、寝ても寝てもまだ眠い。やっと起き出して再び蕎麦屋に行く頃には、陽もだいぶ高く昇っているのでした。蕎麦屋に着けば玄関前に西瓜と長ナスが置いてあるではありませんか。向かいの畑の親父様が持って来てくれたらしい。トラクターで畑を耕している彼方に向かって「有り難うございます」と大声で叫べば、運転席から手を振って分かったという合図。

 早朝からエアコンを入れているから、蕎麦打ち室も27℃まで下がって、加水率43%で今朝の蕎麦を打つ。ちなみに湿度は45%なのでした。夏場は水が少なくて好いと思っていたのは、間違いだったのか、エアコンで除湿もされるから、自然の中の蕎麦粉の状態とは少し違うのかも知れない。そうなると、年間を通して43%というのが一つの目安になるのでしょう。今朝も切りべら26本で135gの蕎麦を八人分打って、今日も15食の蕎麦を用意したのです。

 あとから来てくれた女将が、店の掃除を終わらせて、サラダのドレッシングの入れ物の掃除や、蕎麦豆腐のタレの用意など、こまごまとした準備を整えてくれる。野菜サラダは週末だからと四皿盛り付けたけれど、最近は野菜サラダがなかなか出ない。女性のお客が来ないと、ヘルシーランチセットも出ないから、デザートと一緒に残ってしまうことが多いのです。今日も最初にいらっしたカレーうどんの常連さんが、野菜サラダを食べてくれただけでした。

 後はせいろ蕎麦の大盛りばかりが随分と出て、蕎麦好きの男性客はあまり他の物には目もくれないのです。真昼の外はうだるような暑さで、こんな暑い中を蕎麦を食べに来てくれるのは、やはり常連さんたちなのでした。市内のコロナ感染者数もこのところ相当に増えているから、皆さん外食をするのを控えているのかも知れない。先週も週末よりは平日の方がお客が多いのでした。明日の日曜日もお客が少なければ、コロナ野感染拡大の影響だと言えるかも。

 早めに店の片付けを終えて、家に帰ってから女将と二人で西の町のスーパーに出かけることにしました。亭主はホームセンターで割り箸やらペーパータオルなどを買い込み、女将は今日の夕食のおかずを見て歩いた。魚屋の寿司も気にはなったけれど、野菜サラダの残りが沢山あるというので、肉だけ買って夕食はまたしてもお好み焼き。一人分でサラダ二皿分の野菜を食べられるから、確かに効率的だけれど、酒の肴としては今ひとつなのでした。

7月31日 日曜日 今までにない暑さの日 …

 雨戸を開けた女将が「今朝もモミジアオイが咲いているわ」と言うので、庭に出て写真を撮った。朝から暑いのに品好く綺麗に咲いているから、見ているこちらもしっかりしなくてはと思うのです。昨日はお客が少なかったから、今朝は朝飯前のひと仕事はなしにして、女将もゆっくりと朝食の支度をしていた。ハッシュドポテトに目玉焼きのおかずだったけれど、子供の小さな時分によく食べたからか、歳を取っても美味しく食べられるのです。

 朝食を終えて蕎麦屋に出掛ける前に、暑中見舞いの第二陣を出しに1km先のコンビニまで車を走らせる亭主。車でなければ、葉書も出しに行けないほど不便な場所に住んでいるんだなぁと、改めて思うのでした。それでも何不自由なく暮らしているのは、歳を取って行動範囲が狭くなったからか。その倍ほどの距離を、女将は毎日歩いて出掛けるから偉いものです。今朝は朝の8時からもう外は30℃を越えているから、相当に暑くなると思えるのでした。

 家から300mの距離を蕎麦屋までゆっくり歩いて、時々、家々の日影で立ち止まる亭主。今朝も青空が広がって、陽射しはジリジリと肌を焼くようなのです。店の前に来たところで、お隣の軒下から飛び出してくる燕の群れに遭遇する。6、7羽の大きなツバメが何度も滑空して、蕎麦屋の駐車場の周りを飛び回るから圧巻でした。スピードが速いので、とてもカメラでは追えないから、一方向だけを狙って、視界に入ったところでシャッターを切った。

 ちょうど巣のある軒下に近づくときには、翼を広げて減速するので画角の端にその姿が写っていたのです。朝の陽射しは強いし、長い時間は付き合えないから、幟を出してチェーンポールをおろせばまだ飛び回っている。この暑いのによく疲れないものだと、感心しながらもう一枚蕎麦屋をバックにシャッターを切れば、群れの中の一羽が屋根の上に写っていました。みんな以前よりも相当に身体が大きくなっているから驚いたのです。

 活発な燕たちに元気をもらって、今日も蕎麦を打つ亭主。昨日の蕎麦が生舟に半分以上残っているから、今朝は500gだけ打ち足して合わせて15食を用意した。加水率は迷わずに43%。家の仕事を終えた女将がやって来て「外はお風呂の中みたいに暑いわよ」と言う。エアコンを効かせた厨房も、今朝は早い時間から30℃を越えているのでした。首に凍らせたアイスノンを巻いて、薬味の細葱を刻み、大根をおろしたら、あまり出ない野菜サラダを三皿にして用意。

 先週の日曜日は、コロナの急拡大もあってかお客がほとんど来なかったから、今日はどうだろうと思っていたら、開店から続けてお客が入って、五人家族がいらっしたところで満席の看板を出す。カウンターにも中年のリピーターご夫婦が座って、ヘルシーランチセットのご注文でした。12時半前にもう10人は越えたのでしょうか、厨房は32℃の暑さになって、一区切りして亭主は、エアコンを効かせてある奥の座敷に涼みに入るのでした。

 「奥さんも暑いでしょう」とカウンターのご主人が言えば、「火のそばが特に暑いのよ」と涼しい顔の女将。背の高い亭主は、尚更、暑い。蕎麦は乾燥に弱いから、狭い蕎麦打ち室にも厨房にもエアコンは入れていないのです。何度も電話をかけてきたご近所の奥さんが、娘と孫を連れていらっしたのは1時前でした。一度来たけれど満車で入れなかったと言う。この暑いのに鴨せいろの大盛りを頼まれた娘さん。今は大阪で暮らしているのだそうな。

 お蕎麦売り切れの看板を出したのは1時頃。幸いその後はお客が来なかった。女将と二人で洗い物と片付け物をこなしながら、お盆の休みはいつにしようかと話をする。今日で7月も終わりだから、そろそろ案内を出しておいた方が好いのです。家に戻れば、居間の部屋はなんと35℃になっていた。二人で冷えた西瓜を食べたら、亭主は売り上げと写真のデータをパソコンに入力してひと眠り。女将は夕刻から買い物に出掛けたらしい。夜はまた冷やし中華を作る。

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2022年7月下旬

7月20日 水曜日 あまりにも熱い日 …

 朝から青空の覗いたのが嬉しくて、6時過ぎには家を出て蕎麦屋に出掛けたのですが、朝の陽射しがもう熱いのです。まずは西の小径に散った木槿の花を掃き集めて、厨房に戻って出汁を取る準備をするのです。昨日の洗い物を片付けたら、昨日作って冷蔵庫で冷やした揚げ浸しをタッパに詰めて、家にも味見のために少し持ち帰ります。7時を過ぎて家に戻れば、女将も定休日だからと少しゆっくりで、亭主は家の前の通りに散ったムクゲの花も掃き集める。

 食後にお茶を入れてもらって、ひと眠りをせずに朝ドラの終わる時間に、床屋に行こうと車を走らせるのでした。開店時刻に着けるかと思ったら、一足違いで車で送られてきた老人に先を越された。「午後からまた来ましょうか」と言えば、長男がまだ出掛けていなかったからと、髭だけ剃ってくれるのでした。久し振りに会ったお兄さんも随分と歳を取っていた。近くに自分の理髪店を開業してもう30年になるのだとか。亭主は40年も親父様の店に通っている。

 大リーグのオールスター戦を店のテレビで見ながら、前のお客が終わった親父様に頭を刈ってもらって、再び蕎麦屋に出掛けるのです。朝飯前に仕込んでおいた抹茶小豆が固まっていたから、小豆を載せて完成。後は、朝のうちに準備をしておいた出汁を取って、蕎麦汁を仕込むだけ。これが午前中の亭主の忙しい日程なのでした。外はギラギラと暑い太陽が照りつけて、車の車外温度は37℃にもなっていた。蕎麦屋の中はエアコンを効かせても28℃が精一杯。

 亭主は首に凍ったアイスノンを巻き付けて、全身に流れる血を冷やしている。今日は35℃まで気温が上がるというから、まったく異常な暑さなのです。出汁を取って蕎麦汁を仕込むまでに、小一時間はかかるから、のんびりとラテン音楽を聞きながらリラックスする亭主。する事があって幸いなのか、道楽の蕎麦屋といえども、週に七日を楽しませてくれる。久し振りの青い空は、熱すぎてちょっと馴染めない。沖縄の青い海が懐かしく思い出されるのです。

 家に戻れば、女将が昼食の支度をしてくれて、後は亭主が新蕎麦を茹でるだけ。二日続けて新蕎麦を食べるのも贅沢だけれど、三連休の最後の日にお客があまり来なかったから、随分と蕎麦が余ったのです。タンパク質が足りないからと、女将が高野豆腐を煮て小鉢を一品増やしてくれた。亭主は薄緑色の蕎麦湯を飲んで腹の足しにしたけれど、それでも物足りないから、二人で食後に冷えた西瓜を食べる。食後は書斎に入って横になったら直ぐ眠りに落ちた。

 1時間ほど眠ったら、女将はもうスポーツクラブに出掛けていました。冷蔵庫で冷えたプラムを囓って目を覚ます亭主。居間の室温は31℃、慌ててエアコンを入れて風で涼むのでした。3時前には家を出て、蕎麦屋で午後の仕込みを開始するのです。昨日、草刈りを終えた東側のミニ菜園は、それなりに綺麗になっていた。後は屋根より高くなった月桂樹を剪定して、南側のミニ菜園の草刈りをしなければならない。一気には行かないところが歯痒いところ。

 午前中の洗い物を片付けて、蕎麦豆腐を仕込み、天麩羅の具材を切り分け、4時を過ぎたら、冷蔵庫から糠床を取りだして、胡瓜と茄子と蕪を漬けておきます。今日使った道具を洗って、まな板を消毒したら、布巾類を洗濯して、午後の仕込みは終了なのです。明日はどれだけ蕎麦を打てば好いのか、この時点で考えている亭主。木曜日のお客の数は、今月は7人止まりだから、750g八人分を打てば足りるだろうかと、記憶にとどめておくのです。

 家に戻れば、女将が相撲中継を観ながら「またコロナの感染で部屋ごと休場なのですって」と最新のニュースを伝えてくれる。晩のおかずには、亭主が韮とモヤシと肉の炒め物を亭主が作り、女将は鴨肉の残りと葱を焼いておかずにする。夜は風呂から上がって、焼売を作る仕事が残っていた。玉葱を刻んで片栗粉をまぶし、生姜を刻んで、挽肉を入れて卵と酒と胡麻油、醤油、塩、オイスターソースを加えて、少し小振りの焼売を20個ほど包んで冷凍する。

7月21日 木曜日 晴れたのに蒸し暑い一日で …

 6時前に蕎麦屋に出掛けようと玄関を出たら、庭のモミジアオイが咲き出していたので、写真に撮っておいた。昔、職場の用務員さんから種を頂いて庭に植えたら、以前は随分と沢山咲いていたのですが、10年以上も経って手入れもしないから、今はこの花だけになってしまいました。眠そうに花びらを広げている姿が、なんとも美しいのです。雲は出ているけれど陽は差して、朝からむっとする暑さなのが堪らない。亭主は本当に湿気に弱いのです。

 蕎麦屋に着いたら、まずは糠床を冷蔵庫から取り出して、夕べ漬けた夏の野菜類を切り分ける。知り合いの農家で作っている中長ナスは、結構大きいので食べ出がある。今回はキュウリの大きい物がなかったから、ナスが目立ってしまうのでした。小鉢に盛り付け、冷蔵庫に収納したら、今度は昨日作った蕎麦汁を空の蕎麦徳利に詰めていきます。あまり早くに徳利に詰めると、徳利を洗うときに蕎麦汁の色が底に付いてなかなか取れないのです。

 まだ7時前だったから、西の小径に散ったムクゲの花びらを掃き集めて、家に戻っても、また、通りに落ちたムクゲを掃く亭主。女将は早くから台所に入っている様子なのでした。今朝のおかずは蕎麦屋で残った三ツ葉に厚揚げを入れて卵とじ。すりおろした山芋とお新香。いつものことながら、食べ終えるとどっと汗が噴き出してくるのです。朝から食堂も28℃を越えているから、今日も相当に暑くなるに違いない。八人分だけで蕎麦が足りるだろうか。

 そんなことを考えながら、少し早めに蕎麦屋に出掛ければ、玄関脇のツツジの枝に絡まった昼顔が、花を咲かせていました。放っておくとあちらこちらに伸びてしまう雑草だけれど、花の咲く間はそっとしておいてあげよう。看板を出してチェーンポールを降ろしたら、幟を立てる。春の新蕎麦の幟もあるから、当分は二本立ててひと目を惹くのも好いかも知れない。店の中は早朝からエアコンを入れておいたから、爽やかな高原の涼しさなのでした。

 蕎麦打ち室の温度は25℃、湿度は45%と活動しやすい環境なのですが、亭主が入って蕎麦粉を捏ね始めると室温は27℃まで上がる。やっと適切な加水率を掴んだので、最近は、41%の加水で、蕎麦粉を捏ねている。硬過ぎず、柔らか過ぎずにしっとりとした生地に仕上がるのです。蕎麦玉にして寝かせている間に厨房に戻り、大根や生姜をおろして、葱切りを済ませたらひと休み。一旦、椅子に座ってしまうと、なかなか立ち上がるのが億劫になるのです。

 何時の間にか、厨房の温度計も27℃になっているから、外気温度が上がってきたらしい。平屋の建物だから、外の温度が直ぐに建物の中に影響するのです。換気のために窓を少し開けると、いくら冷やしても28℃よりは下がらない。蕎麦打ち室に戻って蕎麦玉を伸していけば、ちょうどいい柔らかさなのだけれど、伸し棒にはかなり力を入れるのです。これでまた汗が噴き出る。無事に八人分の蕎麦を取り、生舟に入れて冷蔵庫に収納しておく。

 厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、平日だから今日は三皿だけ盛り付けておきます。大釜に火を入れて、天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆの鍋を冷蔵庫から出してコンロにかける。店の掃除を終えたら、開店の準備は終了。最初のお客が来るまでは、緊張した面持ちで待つ亭主。昼過ぎに、以前いらっした三人連れのお客がやって来て「先日はどうも有り難うございました」と、畑で採れたらしいトウモロコシや野菜を持って来てくれました。

 書を書く親父様で、女将が使わなくなった二八の大きな紙を、家まで取りに行って沢山もらってくれたと聞いている。展覧会にでも出品しない限り、使わない大きさなのです。注文の蕎麦を出し終える頃に、ご近所らしい老人がいらっして、先日食べた海老とインゲンの天麩羅が美味しかったから、またお願いしますと言ってせいろ蕎麦を頼まれる。帰りがけに、ここの蕎麦は開業当初に比べたら、格段に美味しくなっていると褒めてくれたのでした。

7月22日 金曜日 今日は朝から気温が高くて …

 夕べは10時に床に就いたのに、夜中に汗をかいて目が覚めてしまう。エアコンのタイマーを30分にセットして、再び心地よく朝まで眠ったのは好かったけれど、寝る前に見ていたテレビ映画が影響したのか、自分が結婚する頃の、実に不思議な夢を見て目が覚めた。居間の部屋に行けば朝から28℃もあるから、今日は外気が暑いのだろうとエアコンを入れて涼むのでした。今朝もコーヒーを一杯飲んで、蕎麦屋に出掛ける亭主。外はむっとする暑さなのでした。

 今朝は大した仕事もないだろうと、西側の小径に散ったムクゲの花を掃き集めていたら、早朝の散歩に出掛ける母と娘らしき二人が「木槿の花が素敵ですね」と挨拶をする。今日の分のほうじ茶を沸かして、小鉢を盛り付けたら、残ったお新香を持って家に戻るのでした。7時前だから、まだ女将は朝食の支度をしていた。亭主はもう一度玄関を出て、通りに落ちたムクゲの花を掃き集めるのです。昨日の蕎麦が二束だけ残っていたので、今朝も八人分を打つ予定。

 朝食を食べ終えて書斎で少し横になるけれど、夕べは十分に眠ったから眠ることは出来なかったのです。それにつけても朝から暑い日なのでした。薄陽が差してはいるけれど、雲は多く、蕎麦屋に着いても暑さがあまりにも酷いので、幟を出してチェーンポールを降ろしたら、駐車場に水を撒いて植え込みの木々にも久し振りの水遣りです。きっと、湿度もかなり高いのでしょう。からりと晴れない今年の夏は、もどり梅雨を引きずりながら続くのでした。

 隣の家の軒下から、大きな親燕が飛び出したかと思ったら、小さな子燕が四羽続けて空に舞い上がる。まだ体力がないのかそのうち三羽はすぐに電線に止まって休んでいるらしい。とっくに子ども達は飛び立ったかと思っていたら、最近は、まだ巣の中に親燕が戻っていくから、二回目の産卵だったのかも知れない。蕎麦打ち室に入って亭主は今朝の蕎麦を打つ。暑いからお客が来るかも知れないけれど、この天気では果たしてどうなのだろうと気になるのです。

 今日も加水率は41%強で打ったのだけれど、四つ出しを終えて四隅の角が上手く出ないのが気にかかる。もう少し水を増やして生地を柔らかめにして、しっかりと四隅を整えた方が、畳んで包丁打ちをするのには都合が好いのです。加水率43%というのが、蕎麦打ちの定番なのですが、季節によってこれでは柔らかすぎることもあるから、苦労をするのです。明日は42%台で打ってみようかと考えながら、750g 八人分の蕎麦の束を作って生舟に入れる。

 野菜サラダの具材を刻み、三皿分を盛り付け、天麩羅鍋に油を注ぎ、新しい天つゆを作って開店の準備をする。暖簾は出したけれど昼になってもお客は来ない。12時半近くにやっとお客が入ったかと思えば、それからが今日は大変でした。1時間近くの間に8人のお客が入れ替わりいらっしたから、さすがの亭主も『次のお客が来たらどうしよう』と内心不安なのでした。幸いにも、おろし蕎麦やぶっかけ蕎麦、とろろ蕎麦という注文が多く、手早く出せたのです。

 自転車でいらっした最後のカップルだけがリピーターで天せいろのご注文。今日はご新規のお客がほとんどだったのです。厨房はすでに30℃を越えて亭主は汗だく。1時半に最後のお客が帰って、やっと賄い蕎麦を茹でるのでした。半分だけ洗い物を済ませたところで、昼飯を食べてしばしの休憩です。西の小径の窓の下には生まれて間もない雀の子ども達が集まって、何やら話をしているらしい。今日は女将は手伝いに来ないから、3時半になってやっと帰宅。

 平日に思わぬ数のお客が来たので、蕎麦汁を入れた徳利もほとんど空になり、小鉢も出尽くしたのです。家に戻ってひと眠りしたところで、大相撲を見るのも諦めて、夕刻にまた蕎麦屋に出掛け、明日の準備をするのでした。厨房は32℃もあったから、首にアイスノンを巻きながら、蕎麦汁を補充して小鉢を盛り付ける。明日は今日よりも晴れて暑くなると言うから、蕎麦は二回を打たなければならないでしょう。今日は汗をかいたから、体重が随分と減っていた。

7月23日 土曜日 朝から陽射しがジリジリと … 

 朝飯前のひと仕事を終えて蕎麦屋から戻れば、まだ朝食の支度が出来ていないので、前の通りに落ちたムクゲの花を掃き集めに出る亭主。今朝は綺麗な青空が広がっていましたが、陽射しは強く、道路の家の影になる部分を伝わって、蕎麦屋まで行くしかない。朝食を食べ終えて、朝ドラの始まる前に出掛ければ、まだ日影の部分も長くて幾分かは涼しいのです。蕎麦は、昨日ほとんど売り切れたので、今日は二回蕎麦を打たなければならなかった。

 みずき通りまで出ると、この先は、東側の森の手前に畑が広がっているから、もう陽射しを遮るものがないのです。早朝にエアコンを入れてきたから、涼しくなっているはずの蕎麦屋に急ぐだけ。百日紅の花が歩道に突き出すように咲いていたから、写真を撮らせてもらったら、その家の小母さんが「朝から暑いわねぇ」と、玄関脇から挨拶をするものだから、ちょっと立ち話。朝からこんなに暑いとは、昼の暑さが思いやられるのです。

 やっと蕎麦屋に着いて玄関を開ければ、爽やかな高原の朝が広がって、生き返るようなのでした。蕎麦打ち室の扉を閉めたままだったから、「しまった!」と開けて見れば、なんと33℃もあるではありませんか。狭い蕎麦打ち室には、蕎麦粉や天ぷら粉などと酒類を冷やす冷蔵庫が二台も入れてあるので、朝日の当たるのと相俟って相当に暑くなるのです。厨房に置いた温度計は25℃まで下がっているのでした。幟と看板を出してチェーンポールを降ろしに出る。

 ひと休みしてしまう前にと、まだ暑い蕎麦打ち室に入り、二回分の蕎麦粉を計量して、蕎麦玉まで作っておく。一旦休んでしまうとなかなか動き出せないのが、最近の亭主の傾向なのを、自分でもよく判っているのです。やっと店の冷気が入り込んで、30℃まで下がった蕎麦打ち室で、蕎麦粉を捏ねればもう汗が噴き出してくる。慌ててレックレスのアイスノンを、冷凍室から取りだして首に巻くのでした。今朝は42%の加水で捏ねたら、ちょうど好い柔らかさ。

 丸出し、四つ出しを終えれば、昨日よりも四隅の角がしっかりと出ていました。生地が硬すぎると、これがなかなか難しいのです。八つに畳んで包丁切りをしても、蕎麦が包丁の刃にくっつくほどではなかったのが好かった。これを二回繰り返し、今日は昨日の残った蕎麦と合わせて、15食の蕎麦を用意しました。これだけあれば、大盛りが出ても、何とか間に合うだろうと思えるのでした。暑すぎる日にはお客が少ないと女将が言うから、半信半疑で厨房に戻る。

 野菜サラダの具材を刻んで、週末だからと今日は四皿盛り付けておく。開店の準備が終わって、大釜の湯も沸いていたから、10分前に暖簾を出せば、直ぐに年配のご夫婦が車でいらっして「まだ早いけれど、大丈夫?」とテーブル席に着くのでした。天せいろとヘルシーランチセットのご注文でしたが、天麩羅の付くBセットはちょっと多いかも知れませんよと亭主が言って、せいろ蕎麦のAせットを頼まれる。全部出し終える前に、次のお客がいらっしゃる。

 歩いていらっしたのは、最近、よく見えるお客さんで、今日はお友だちと待ち合わせていたらしかった。ビールと天麩羅の盛り合わせ二皿を頼まれて、女将が酒を運んでいる間に、亭主は天麩羅を仕上げるのでした。酒が進むにつれてハラミの串焼き4本を追加でご注文です。昨日、仕込んだばかりの串焼きが出てホットする亭主。男性二人の割には、随分と話が弾んで、最後にせいろ蕎麦を頼まれて終わりかと思えば、まだ話が終わらない。女将が片付けに入る。

 1時を過ぎていたから、これで今日は終わりなのかと思ったら、ご家族連れが車でいらっして、遅いお昼を頼まれた。子ども達はせいろ蕎麦、ご夫婦は天せいろで、先にせいろを出して、後から天麩羅を揚げてお出しするのでした。蕎麦を食べ終えたお子様達にはカルピスとバームクーヘンのサービスです。洗い物は半分終えていたから、今日は早めに片付けが終わる。亭主が揚げ玉を載せてぶっかけで賄い蕎麦を食べて、その間に女将が洗い物を片付けてくれる。

 暑い最中を家に戻れば、居間の部屋は33℃もあった。さすがに熱くて堪らないから、ひと休みする前に女将の剥いてくれた桃を食べたら、店と家のティッシュやアルコール消毒液を買いに出る。お客が出すのが万札ばかりで、釣り銭がなくなったから、ついでに両替をしてくるのでした。エアコンの効いた書斎でひと眠りしたら、蕎麦屋に出掛けて、明日の仕込みです。女将も買い物に出て、釣り銭を作ってきてくれた。夜はまた残ったサラダでお好み焼きでした。

7月24日 日曜日 こんな田舎でも第七派の影響が出てきたか …

 午前6時前、蕎麦屋の向かいの畑では、もう親父様が仕事を始めている。太陽は森の上に昇っているのだけれど、雲に覆われて薄陽が差すだけなのです。西の小径に散ったムクゲの花を掃き集めて、店のゴミ箱に捨てに行く亭主。エアコンのスイッチを入れて、カウンターに乾した昨日の洗い物を片付ける。珍しく売れた豚のハラミを串に刺して補充したら、小鉢も切り干し大根の煮物を足して、今日のお客に備えるのでした。日曜日だからどれだけお客が来るか。

 家に戻って台所に立った女将の支度の具合を見計らって、亭主は家の前の通りに散ったムクゲの花を掃き集める。今まではこれも女将に任せっきりだったのに、蕎麦屋でムクゲを掃くようになって、あまり苦ではなくなったから不思議。これも生活習慣というものかしら。お互いに歳を取っていろいろと手が回らなくなるから、出来る範囲で助け合うのがいいのかも知れない。食堂に入って小鉢を盛り付けたり、出来上がったおかずを食卓に並べるのも同じです。

 今朝は食後にお茶を一杯もらったら、書斎で横になって10分ほど眠ったのだろうか。洗面と着替えを済ませて、9時少し前に家を出るのでした。陽は差しているのだけれど、雲は多く、晴れるのだか曇るのだか判らない空模様。日中は33℃まで気温が上がると言うから、昨日ほどではなくてもかなり暑い陽気のようです。蕎麦屋の厨房はエアコンを入れておいたから、25℃と爽やかな涼しさ。蕎麦打ち室も今日は扉を開けてあったから、26℃まで下がっていた。

 昨日の蕎麦が生舟に半分ほど残っていたから、今朝は750g八人分を打って15人分の蕎麦を用意する予定。加水率を42%で蕎麦粉を捏ね始めれば、絶妙な湿り気で生地は思うように伸していける。丸出しも綺麗な正円に仕上がり、四つ出しも角がしっかりと取れるのでした。これを伸し広げて、八つに畳んだら、切りべら26本で135gの蕎麦の束を八つ取って蕎麦打ちは終了。仕上がりが綺麗だと、打った後の気持ちもさっぱりと、次の仕事に取りかかれるのです。

 野菜サラダも四皿盛り付けたけれど、店の中も28℃になってきたから、早めに冷蔵庫に入れるのでした。厨房は30℃までは直ぐに上がってしまう。亭主は首にアイスノンを巻いて、全身を流れる血を冷やしている。暖簾を出して間もなく、女将の友人がやって来て、天麩羅と蕎麦を持ち帰りたいと珍しく急ぐ様子。時間を置くと蕎麦は伸びてしまうと念を押して、容器に入れて蕎麦徳利や薬味まで持たせるのでした。何でも娘さんが来て昼に食べさせるのだとか。

 ところが今日は、それきりお客は来ずに、女将と二人で暇をもてあますのでした。連日、コロナの感染者数が過去最高を記録して、市内でも連日100人を超える感染者数なので、そろそろ気をつけなければと皆が思うようになったのかも知れない。日曜日にお客が来ないと言うのは、今までないことなのでした。二人の関心事は夕刻からの大相撲の千秋楽で、新聞をよく読んでいる女将は、最近の相撲事情にやたらと詳しい。コロナで休場の力士も多いのだとか。

 片付ける物もあまりなく、早めに家に帰って亭主はエアコンを入れた書斎でひと眠り。夕刻になって女将は買い物に出掛け、起き出した亭主は、相撲を見ながら酒のつまみを作って早くから一献。野菜サラダが四皿分も残ったから、亭主は夕飯に冷やし中華を作って食べる。女将が帰って一緒に相撲を見ながら、お互いの贔屓の力士を応援するのでした。本来はスポーツの嫌いな女将だったのに、最近では亭主よりも詳しいから、話を聞いていて楽しいのです。

7月25日 月曜日 昨日とはうって変わって満員御礼 …

 夜中に何度も暑くて目を覚ましたけれど、エアコンの30分でオフのタイマーを入れてまた眠りに就いた亭主。5時前に居間に行けば思ったよりも涼しい。窓を開け放って風を入れれば、エアコンなど必要のないくらいなのでした。昨日はお客がなかったので、今朝は片付けるものもないけれど、あまり時間が早いので、コーヒーを一杯飲んだら蕎麦屋に出掛ける。やることは何もないから、ムクゲの散った花を掃いていたら、ゴミを出しに西の小径の階段を下りる近所の奥様に「いつも早いですね」と挨拶をされるのでした。

 それでも天麩羅のパッドにキッチンペーパーを敷いたり、大釜の水を張ったり、洗濯物を畳んだり干したりと、細々とした仕事をこなして家に戻って、通りに散った木槿の花を掃いておくのです。まだ7時前だから、女将は起き出したばかりで、亭主の帰った音を聞きつけて台所に入るけれど、急がしてはいけないと箸を並べたり、小鉢を盛り付けたりしながら、味噌汁とご飯の焚けるのを待つのです。彼女は彼女で亭主が眠たいのだろうと急ぐから有り難い。

 今日は蕎麦打ちがない分、ゆっくりで好いのにとは思うけれど、食後のひと眠りで1時間ほど休めたので、気持ちの好い朝なのでした。玄関を出れば朝日を浴びたムクゲの花が、今朝の青空に映えている。明日が定休日だと言う安堵感も手伝ってか、平日の月曜日だからあまりお客も来ないだろうと、すっかり気が緩んでいる亭主。蕎麦屋に着いても、蕎麦打ちのない分、時間をもてあますばかりなのです。忙しいのに慣れているから、ゆっくりした時間が怖い。

 野菜サラダの具材を刻んでも、まだちょっと早すぎる。その分、丁寧にキャベツやニンジンを刻んで、今日は三皿だけ盛り付けておきました。天麩羅鍋の油や天つゆを所定の位置に置き、大釜の湯が沸いたらポットに入れて準備は万端。店の掃除を簡単に済ませ、早めに暖簾を出してお客を待つのです。昼過ぎに近所の仲好し三人組が、自転車を停めてご来店。月に一度ぐらいのペースで彼女たちは来てくれるので有り難いのです。ヘルシーランチセットのご注文。

 サラダと蕎麦豆腐、天せいろにデザートは、お年寄りには多いように思えるけれど、いつも同じご注文で、ゆっくりと間食されるから元気なのです。その間に他のお客も入って、店は俄に忙しくなるから大変。テーブル席に三人ずつと、カウンターに二人入ったところで、表の看板を準備中に換える。亭主一人だから、とても対応できないのです。おまけにビールや酒の肴を頼まれて、嬉しいけれど後のお客に少しずつ、待ってもらうしかないのです。

 全部の注文を出し終えた頃には、もう天麩羅の具材も切れて、小鉢もなくなってきたから、売りきれの看板を出してひと息つくのでした。まだ1時過ぎなのに、亭主の感覚では8人が限度。それでもお客が来れば、大釜の湯は沸いているから、新しく天麩羅の具材を切り分けて、蕎麦のあるだけ対応するつもりなのですが、幸いにも今日はこれで終わりでした。間が空いていればどうと言うことはないのですが、1時間で8人はちょっと辛いのです。

 お客が皆帰った後で、暖簾と幟をしまったら、亭主はかき揚げを揚げてぶっかけで蕎麦を食べる。厨房の気温計は31℃を差しているのです。十分に食休みをとったら、もう動きたくないから、後片付けがしんどいのでした。それでも、首にアイスノンを巻いて、冷蔵庫に入れる物は先に片付け、大釜を洗い、少しずつ盆や皿を運んでは洗い、拭いては片付け、その繰り返しを延々と続けるのです。今日は深川青磁の天麩羅皿や魯山釜の蕎麦猪口がすべて出尽くした。

 二時間近く経っても片付けは終わらないから、洗い籠の中身はそのままにして、家に帰ることにする。あまり亭主の帰りが遅いからと、心配になった女将が蕎麦屋に向かうのに途中で出会う。午後の暑さで、もう何もする気力がなかったけれど、家に食べるものもなかったので、女将と二人で隣町のスーパーに出かける。魚や肉と果物を買い求め、夕食には土用の鰻を買って、二日遅れで食べるのでした。鮪の好きな女将は一人鰻重を作って食べていた。

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2022年7月中旬

7月12日 火曜日 今日も蒸し暑い一日です …

 夕べは食事の前から頭がクラクラして、軽い熱中症になったようなのです。一人で営業の平日に珍しく混んだから、ネックレスのアイスノンもするのを忘れて、30℃を越える厨房で休む間もなく動いていた。チーズ揚げを食べながらいつもの焼酎を飲むけれど、まだ酔っていないのにふらつくから、エアコンの効いた居間の部屋でしばらく休んでいました。ブログも短めに終わらせ、10時には床に就いたのです。明け方に何度か目が覚めてやっと5時半に起き出す。

 いつもの習慣で蕎麦屋に出掛けて、今朝は最初にムクゲの落花を掃除する。近所の若いご主人がランニングに出ると見えて「お早うございます」と声を掛けてくる。「お早うございます」と挨拶を返せば、彼はもうバス通りに出ていた。厨房に入って昨日の洗い物を片付ける。洗いかごの中にも残った食器を伏せたままだったから、布巾で拭いて戸棚に収納する。洗濯物を畳んで片付けたところで、洗濯機の中の洗濯物を今度は乾していく。いつもの朝と一緒。

 家に戻れば、女将が台所に入る時間で、亭主は箸を用意したり、小鉢を並べたり、味噌汁をよそったりと、女将の作る韮の卵とじが出来上がるの待つのでした。ご飯も自分で盛り付けて、「いただきま~す」と先に食べ始める。随分と眠ったはずなのに、朝食を終えるとまた書斎に入って横になる。今朝は朝ドラが終わってもまだ目が覚めないのです。お袋様に少し遅くなると電話をしたら、珈琲を入れてもらってやっと目を覚ます。10分遅れで仕入れに出掛ける。

 空はどんよりと曇って、陽の差さない分だけ気温は低いようなのですが、やはり蒸し暑い。農産物直売所に出掛ければ、近所の農家のご夫婦が野菜を運び終えたところで、お袋様が挨拶をしていた。「この間のピーマン立派だったね」と言えば、今日はインゲンがないのだと言う。「胡瓜も茄子も今朝取ったものだよ」とご主人に言われて、幾つももらって帰る。隣町のスーパーは広告が出ていたせいか、朝から随分と込んでいました。蕪はもう終わりのようだ。

 蕎麦屋に戻って仕入れた沢山の野菜を冷蔵庫に詰め込んでいく。女将に頼まれた魚は買ったのに、肉を買ってくるのを忘れたので、今度は団地の中のスーパーに出掛けて買い足してくる。最近はタンパク質が不足気味だったから、やっと食べられるとひと安心。昼はお好み焼きにして、昨日残った野菜サラダを食べてしまおうかと話していたけれど、家に帰ったら買い物に出た女将も汗びしょで、急遽、冷やし中華に変更。野菜サラダはそのまま載せて肉を添えた。

 今日は間違わずにシマダヤの本生冷やし中華を買ったので、汁まで綺麗に飲んで満足な亭主。女将に言わせるとマルチャンの冷やし中華の方が汁の味が濃いのだそうで、その分だけお酢もきついから亭主が嫌がるのではないかとか。今朝は随分とゆっくり眠ったから食後のひと眠りはしなくて済んだ。しかし、居間で寛いでいたら、女将が2時過ぎのヨーガ教室の予約をお願いしますと、ノートを持ってくるものだから、午後の仕込みに出掛けられない亭主。

 定休日だからゆっくりとしろと言うことなのかと、テレビ映画を観ながら居間で寛いでいたのです。無事に一番好い席を取れたと報告すれば、今度は娘の所に書く手紙の写真をお願いしますと言うものだから、最近の我が家のお花の写真をポストカードに印刷して女将に渡す。やっと4時前に蕎麦屋に出掛けて、出汁を取るだけで精一杯。ゴミの回収に業者が来る今日は、ミニ菜園の草取りも出来なかったのです。海老と鴨肉の発注をかけて今日の仕事はお終い。

 夕食には豚汁とズッキーニとジャガイモのグラタンに、アスパラとウインナソーセージの焼き物が出た。スポーツクラブがお休みの女将は、頑張って準備をしてくれたらしい。大相撲を二人で見ながら、新聞を読んで知識の豊富な女将の解説を聞く亭主。冷房を入れなくても涼しくなる夕刻だから、横になれば直ぐにでも眠ってしまいそうなのでした。夜が眠れなくなるからと、ぐっと我慢をして、このブログを書き上げるのです。

7月13日 水曜日 朝から雨模様で …

 朝から雨の音で目が覚める。そう言えば夕べの天気予報では今朝は雨だと言っていたっけなと、ぼうっとした頭で記憶を辿るのでした。少し涼しいので熱いコーヒーでも飲もうと湯を沸かして、居間の椅子に座れば、時計はまだ5時前なのでした。マグカップを片手に持ったまま、テレビのニュースを見ているうちに、意識が途切れて「あちっ」と、ハーフパンツから出た地肌に、コーヒーをこぼして目を覚ます。これは悔しいけれどコーヒーより効果があった。

 雨の振る中を草刈りも出来ないし、厨房で二つあるレンジ周りの掃除をし始める亭主。辺りを見回せば、店の換気扇も随分と長い間掃除していないから、すっかり埃が溜まっている。厨房の床もなかなか掃除が出来ないでいる。窓の外を見れば、折角、グリストラップの蓋の周りの草取りを終えたのに、なかなか手つかずでまた草が生えてきている。やることが多すぎて、とても一度には片付かないので、今朝は奥の座敷に積んであった段ボールを潰して片付ける。

 家に戻れば朝食の用意が出来て、少し涼しいから豚汁が美味しいのでした。銀だらの塩焼きも随分と久し振りで、実に美味しい。今朝はゆっくりと眠ったので、早くから起き出したのに、食後のひと眠りもなし。いつもの時間に蕎麦屋に出掛けて、ほんの一時、雨の止んでいるうちにと、西側の小径のムクゲの落花を掃除しました。厨房に戻って蕎麦豆腐を仕込んだり、明日のデザートの水羊羹を仕込んだり、やることは幾らでもあるのです。

 切り干し大根の煮物の準備をして、隣の火口で一緒に小豆を煮ておこうと思ったら、砂糖が足りないのに気が付いた。昨日、買ってくるのを忘れたのです。仕方がないから、切り干し大根を煮込んだところで仕込みは終わりにして、砂糖と粉寒天を買いに、団地の中のショッピングモールに出掛ける。余裕があれば他の買い物もするのだけれど、今日は業者の持ってくる海老や鴨肉の支払いがあるので、大事を取ってすぐに家に帰るのでした。

 昼は女将と朝話していた通りに、久し振りにカレー炒飯を亭主が作る。あっさりとしてとても美味しかった。11時半には女将のスポーツクラブの予約があったから、今日は女将のスマホを借りて、小さな画面で席取りに集中する。パソコンの大画面よりもカーソルの移動距離が少ないので、時間がかからない分、5Gではなくても直ぐに一番好い席を取れるのでした。満腹なのと席が取れた安堵感で、書斎に入って横になったらすぐに寝入ってしまう。

 寝起きに冷えたプラムを食べて、午後の仕込みに蕎麦屋に向かうのです。まずは午前中に終えるはずだった揚げ浸しの仕込みに取りかかる。黄色のカボチャと赤のパプリカは、全体の彩りを鮮やかにするので、最初に火が通るまで揚げる。次ぎに茄子やオクラや茗荷にシメジと一度に中華鍋に入れて火を通す。隣の火口では時間のかかる小豆を煮ている。揚げ浸しの汁は最初に作って水でボールごと冷やしてあるから、揚げた野菜を次々にボールに入れて冷蔵庫へ。

 天麩羅の具材を切り分けて容器に入れたら、小豆を小分けして冷凍室で保存する。揚げ浸しは二つの大きなタッパに入れて、一つは家に持ち帰るのでした。女将が何の宣伝で見たのか、揚げ浸しの汁で素麺を食べると言う話をしていたから、いつもより味見の量を増やしたのです。糠味床を冷蔵庫から取り出して、お新香を漬ける。ミョウバンを買うのを忘れたので、野菜の新鮮さを信じて茄子を漬ける。煙草を買いにコンビニまで車を走らせ、そのまま家に戻る。

 5時過ぎには大相撲の中継を観ながら、夕食の食卓に着く。タンパク質がないからと、女将が鶏肉と長葱をグリルで焼いて、作ったばかりのポテトサラダを添えてくれた。さて、揚げ浸しの素麺は、以外と美味しいものなのでした。汁は京風の出汁醤油を薄めたものにして、同じく出汁醤油で甘く味つけした揚げ浸しを入れて、素麺を食べるのです。二人ともかなり美味しいと満足な夕餉。今日はあまり動かないのに、三食しっかりと食べて体重が増えていた。

7月14日 木曜日 時折、陽が差しても、降り続いた雨 …

 雨のそぼ降る朝でした。梅雨明けが早かった分、梅雨の戻りとでも言うのか、最近は雨の日が多いのです。6時前には車で家を出て蕎麦屋に向かう。目覚めのコーヒーも、蕎麦屋の厨房で飲んだのです。夕べ漬けておいた糠漬けを冷蔵庫から取り出して、胡瓜と茄子と蕪を切り分ける。色止めのミョウバンは使わなかったけれど、やはり新鮮な茄子は色が落ちていないから嬉しい。作った農家の親父様に感謝なのです。揚げ浸しも綺麗に仕上がりました。

 家に戻れば女将が朝食の支度で手一杯のようだったから、亭主は味噌汁をよそって、納豆にオクラを入れて盛り付ける。涼しい朝なのでした。昔懐かしい作り置きのポテトサラダは、ハムエッグにはよく合うのです。食べる時間はわずか5分間だから、亭主は居間の椅子に座ってもう眠くなる。少し我慢をしていると、女将がお茶を入れてくれるから、これでゆっくりと食後のひと眠りが出来るかと思ったら、書斎で横になっても今朝は眠れなかった。

 洗面と着替えを済ませて、朝ドラの時間に家を出れば、陽が差しているのだけれど、雨が降っているのです。仕方がないから傘を差して、蕎麦屋までとぼとぼと歩いて出掛ける。いつもより時間が早かったので、幟を立ててチェーンポールを降ろしたら、西側の小径に行って、ムクゲの落花を掃き集める。ゴミ出しから帰るご近所の奥様に出会って「まったく変な天気ですね」「ほんとほんと … 」と挨拶を交わすのでした。

 8時半には蕎麦打ち室に入って、今日の蕎麦を打つ。春の新蕎麦は昨日届いたけれど、今日は秋の蕎麦粉の最後の残りを使って、8人分750gの蕎麦を打つのでした。天候も優れないから、お客も期待できないし、これで十分に足りるはず。店のエアコンは入れていなかったけれど、室温は25℃、湿度は65%だったから、加水率を40%弱にして、蕎麦粉を捏ね始めればやはり硬い。繰り返し捏ねてやっと菊練りを終えれば、滑らかな生地に仕上がるのでした。

 加水が少なくて滑らかに仕上がれば、伸しで畳んで包丁で打っても、蕎麦は綺麗に仕上がるのです。包丁の音もトントントンと乾いた感じで、切った蕎麦がくっつかないから綺麗に仕上がる。包丁打ちした8束のうち、6束が135gぴったりの重量だったから、今日は珍しく大正解。やはり、柔らかすぎる生地は要注意なのです。力は要ってもこのペースで頑張らなくてはいけない。明日からの新蕎麦ではねまた少し新しい加水率になるのかと、ワクワクするのです。

 薬味の葱切りを済ませ、大根と生姜をおろしたら、野菜サラダの具材を刻んで、新しい油を天麩羅鍋に入れる。大釜のお湯が沸いたから、お茶と温め用のポット四つにお湯を入れ、天麩羅の具材を冷蔵庫から取り出して、天つゆと油を温めたら、店のテーブルをアルコールで拭いて回る。玄関の取っ手やトイレの取っ手を塩素の入った消毒液で拭いて、開店時刻の15分前。暖簾と営業中の看板を出して、いよいよ開店なのです。雨の中を今日は早くからお客が来た。

 三人連れのご家族がいらっして、天せいろ三つのご注文だったから、盆と蕎麦皿などを揃えてから、天麩羅を揚げて蕎麦を茹でる。出し終えたところで、雨の中を歩いていらっした男性客が、テーブル席に座りビールと天せいろを頼まれる。最初のお客は若い男性がよく話すので、なんと皆さん1時間近くも座ったままで、カウンターのお客はビールを飲みながらパソコンを出して作業を始める。空いている平日だからと、亭主は何も言わずに見守るのでした。

 そのうちに隣町の常連さんがやって来て、家の近所でもコロナの感染が広がってると言う。「明日から春の新蕎麦になります」と言えば、「明日も来ますから」とおっしゃる。また駐車場に車が入って、男性客が今日最後の蕎麦を大盛りで頼まれる。スポーツクラブが休みの女将が早めに来てくれたので助かった。亭主にスマホを渡して次の予約を取ってくれと言う。雨の降る日だというのに、平日にしてはよくお客が入ったのでした。夜は大相撲を見ながら一献。

7月15日 金曜日 戻り梅雨、結局、夜まで雨 … 。

 最近は、夜10時前に床に就いて、朝の5時前に起きるという生活が続いている。これだと不思議なことに、朝食後のひと眠りも、仕事が終わってからの午後の昼寝もしないでいられるから好い。むやみに眠らないから、一日が随分と長く感じられるのです。いつまで続くかは保証の限りではないけれど、今朝も6時前に蕎麦屋に出掛けて、朝飯前のひと仕事です。夕べから降り続いていた雨も、霧雨になって空はどんよりと曇り空なのでした。

 カウンターに乾してあった昨日の盆や蕎麦皿を片付け、天麩羅の具材を切り分けて補充したら、洗濯物を干したり畳んだりと結構やることはあるのでした。7時過ぎにやっと家に戻って、女将の用意してくれた朝食を食べる。今朝は鰯の蒲焼きと豚汁にとろろ芋をおろしたのが付いた。揚げ浸しは先日亭主が仕込んで、味見にと持ち帰ったもの。少し涼しい朝だったから、豚汁がとても美味しく感じられた。野菜類とタンパク質が摂れるので優れた一品なのです。

 今朝も食後のひと眠りをせずに、洗面と着替えを済ませたら朝ドラの最中に「行って来ま~す」と家を出るのです。雨が降っていたから傘を差して歩いて出掛ける。蕎麦屋に着く頃には雨も小降りになってきたので、まずは西側の小径に散ったムクゲの花を掃きに出る。家の近所のご主人が朝の散歩で通りかかったから挨拶をする。今日はいよいよ新蕎麦を打つのだと、気持ちも新たに蕎麦打ち室に入れば、室温は26℃、湿度は75%なのでした。思案する亭主。

 結局、加水率を39%まで落として蕎麦粉を捏ね始めたのですが、これがやはり少し硬くて、水が馴染むまでじっくりと捏ねていく。新蕎麦は少し水分が多いような気がしていたけれど、考えたら蕎麦粉を作る農場では水分が何%といつも決まって蕎麦を挽くから、大きく変わるはずもないのです。お蔭で、捏ねてひと汗、伸してひと汗、涼しい朝なのに汗だくになって、それでも綺麗な仕上がりで、新蕎麦を打つ朝にふさわしい出来栄えなのでした。

 春の新蕎麦独特の薄緑色の蕎麦がとても美しいと感じられるのです。大釜で茹でるときは綠色が最も濃くなるから、お客様にも見せて上げたいくらい。水で洗って氷で締めるといくらか色が落ちてしまうので、お客様には熱い蕎麦湯をポットに入れて、綠色の蕎麦湯を見て頂くことにしている。野菜サラダの具材を刻み、三皿盛り付けて開店の準備。外は雨がかなり強く降っている。折角の新蕎麦披露の日だというのに、宣伝もしていないから今日はどうだろう。

 1時間待ってもお客は来ない。この天気では仕方がないと思っていたら、店の前で速度を落とした車が、一度通り過ぎたのにまた戻って来たらしい。年配の女性が「いつも気になっていたのよね」と天せいろのご注文なのでした。「今日からちょうど春蕎麦の新蕎麦なのですよ」と言って天麩羅を揚げていたら、昨日、新蕎麦を食べに今日も来るからと言って帰られた常連さんが、珍しく遅い時間に現れる。「今、お茶を差し上げますから、ちょっとお待ち下さい」

 前のお客の注文の品を出し終えて、「昨日と同じものを」とおっしゃる常連さんの調理をやっと始める。まずは盆と蕎麦皿を用意して、天麩羅の皿と天つゆの器、蕎麦汁に小鉢、薬味の葱と山葵を盆に載せたら、キスと稚鮎を揚げ始めるのです。そして、辛味大根を摺りおろし、蕎麦を茹でてはい出来上がり。「今日も怪しい電話がかかって来ましたよ」と昨日話題になった詐欺やなりすましの話を亭主がすれば、「ホントに今は多いよね」とおっしゃる。

 Amazonからの偽のメールは、送付されるメールの履歴を調べれば嘘だと判ると、いろいろ調べた亭主が応える。大手の電力会社を語って個人情報を得ようと電話をかけてくる輩には、「郵送で送ってください」と言うことにしている。閉店時間も迫って、今日は昨日にもましてお客が少なかった。女将も午後からがスポーツクラブなので、手伝いには来てくれないから、亭主一人でのんびりと片付けをするのでした。3時前には家に帰ったら女将も帰っていた。
 「夜は何にしようか?」と女将が言うので、珍しく二人で隣町のスーパーに出掛ける。亭主もちょうど店で茄子を漬ける色止めのミョウバン切れていたのでした。この雨で女将が買い物に出掛けない時は、家の冷蔵庫が直ぐに空になるのです。毎週、亭主が店の食材を仕入れに行くスーパーは、かなり値段が安いらしく、女将は胡瓜やジャガイモなどを買い込んで、魚のコーナーも覗いていた。結局夕食には、新鮮な刺身を買って帰って、珍しく日本酒を飲む亭主。

7月16日 土曜日 終日の小雨で蒸し暑く …

 降っていないかと外に出れば、霧のような細かな雨。今日は一日中この雨が降ったり止んだりで、とても蒸し暑いのでした。蕎麦屋のエアコンを22℃に設定して運転しても、厨房の温度計は27℃で、26℃台だったのは朝のうちだけでした。今朝も6時になったら家を出て蕎麦屋に出掛け、昨日の片付けやら、小鉢の補充やら、浅漬けの漬け込みやらで、何かと仕事はあるのです。洗濯物の始末までは手が回らなかった。7時を少し過ぎた頃にやっと家に戻る。

 食堂に入れば、女将がもう朝食の支度を終えて、ホッケの塩焼きをグリルから出して、味噌汁とご飯をよそってくれました。ご飯を食べると何故か急にからだが熱くなるから不思議で、女将に言わせるとそれが朝食の効能らしい。それでなくてもジメジメと湿った部屋の空気が気持ち悪いのに、亭主は我慢できずに書斎に入り、エアコンを効かせて横になる。乾いた涼しさの中で、今朝は以前のようにひと眠り。それも小一時間ぐっすりと眠ったのです。

 家を出たのは9時を過ぎていたけれど、雨が降ると言うから傘を持っていった方が好いと女将が言う。ちょうど霧雨が途切れている間に蕎麦屋に着いて、まずは西側の小径に散ったムクゲの花を、箒を持って掃き集める。幟を出したところで、もう少し雨に変わっているから、今日の天気も梅雨時のしとしとふる雨のようなのです。今朝は春蕎麦の新蕎麦を少しは宣伝しようと、蕎麦の農場から送ってもらった「常陸春蕎麦」の幟も立てて、駐車場の入り口に飾る。

 店はエアコンを入れているけれど、蕎麦打ち室は室温26℃、湿度は75%で、外の方が気温は低いはずなのに、後で予報の画面を見たら、湿度は終日90%を越えているから驚いた。蒸し暑いはずです。三日目になる新蕎麦の蕎麦打ちも、今朝は加水率を40%に戻して、捏ね始めたのですが、やはり硬い。自分の力がなくなったのかと、亭主は少し怯むけれど、これが打てなくては蕎麦屋も店じまいだろうと、汗を拭きながらしっとりとした生地に仕上げるのです。

 蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻り、大根と生姜をおろして、次の作業の準備をしておきます。再び蕎麦打ち室に入って、蕎麦玉を地伸しする作業に入るのですが、生地が硬いのでこれがまた大変です。また汗を拭きながら丸出し、四つ出しを終えるのでした。明日は思い切って41%まで加水を戻してみようか。蕎麦粉の変わる時というのは、いつも適正な加水率を捜すのに時間がかかるのです。それでも無事に蕎麦を打ち終えて、今日は14食の用意をしました。

 野菜サラダの具材を刻んで、週末だから四皿に盛り付け、暖簾を出せば程なく最初のお客さんがいらっしゃる。いつも天せいろに出汁巻き卵と、鴨葱塩焼きを頼まれる方だったけれど、「コロナになってメニューを減らしたので、卵料理は止めたのです」と言えば、「天麩羅の海老を追加して、辛味大根をお願いします」その後も、雨にもかかわらず次々とお客が入って、せいろ蕎麦とおろし蕎麦を頼まれたご夫婦は、「とても美味しかった」と言って帰られる。

 今日は最初のお客が入ったときに、亭主がふと目眩を感じて、気温が低いのに熱中症なのかと、女将に言われて直ぐに首にネックレスのアイスノンを巻く。厨房の温度計は27℃だったけれど、湿度が70%を越えていたから、単に温度だけではないのかと怖くなった。車が入れ替わり駐車場が満車になる頃に、例のカレーうどんのご主人が一人でカウンターに座り、他のお客様の注文の品を出終えた後で、うどんを茹でてゆっくりとカレーの汁を仕上げるのでした。

 天候の割にはお客が入ったので、家に戻ってひと休みしたら、また蕎麦屋に出掛けて出汁を取り、蕎麦汁を仕込んでおくのでした。小鉢も盛り付けて、明日の分のお新香を糠床に漬けるのです。5時半近くに家に帰れば、大相撲も残り何番かで、昼食の早かった女将は先に夕食を済ませていました。亭主は今日残った野菜サラダを載せ、自分で冷やし中華を作って食べる。明日は晴れると言うから、今日以上にお客が入る可能性がある。蕎麦をどれだけ打とうか。

7月17日 日曜日 空模様に翻弄された一日 …

 朝飯前のひと仕事を終え、朝食後に亭主が家を出るときには、空には青空が広がって、木槿の花が映えていたのです。車で蕎麦屋に出掛けた6時過ぎには、まだ霧雨が降っていたというのに。夕べ漬けたお新香を切り分けて小鉢に盛り付けたら、蕎麦汁を蕎麦徳利に補充して、少なくなった天麩羅の具材を切り分けるのでした。最近は天せいろが随分と出るから、週末は日に二回は具材を補充しなければならない。天麩羅油も新しいものを注ぎ足して使っている。

 7時前に家に戻れば、家の前の通りに庭の木槿の花が散っているので、女将のひと手間を省いてやろうと亭主が掃き集めておく。実際、朝は彼女にとってとても忙しいのです。洗濯をしてその間に台所の洗い物をするから、洗濯物を干して蕎麦屋の手伝いに来るまでに休む暇はないから、亭主も何か少しは手伝おうと心がけているのです。特に夏場は、蕎麦屋もかなり熱くなるから、女将も熱中症になって熱を出したこともある。お互いそれ相応に歳だから心配。

 蕎麦屋に着いたら、昨日から出している春蕎麦の幟を今朝も一番で立てておく。チェーンポールを降ろしたら、箒とちりとりを持って西側の小径に行って、ムクゲの花が散ったのを掃き集めておく。この時は雨も止んで、青空も少し覗いていたのですが、長くは続かないのです。もくもくと群雲が現れて、雨が降り出すのは時間の問題。大気が不安定と言うのはこのことなのか。今朝も気温は低いけれど、店の中の湿度は70%を超えていました。

 蕎麦打ち室に入れば、もう天気のことなどどうでもよくて、新蕎麦の加水率を今朝は41%にして、蕎麦粉を捏ね始めるのでした。これが見事に的中したから、今朝はしっとりと仕上がった蕎麦玉を二つ作って、厨房に戻る亭主。8時前には家を出たので、時間は十分にある。日中の水分補給のために、お湯を沸かしてほうじ茶を何杯分も作っておく。蕎麦を打つと身体が熱くなるからと、熱中症予防に、ネックレスのアイスノンを首に巻いてまた蕎麦打ち室に戻る。

 室温はまだ27℃なのですが、湿度があるから要注意。エアコンを効かせてはいるけれど、狭い蕎麦打ち室では亭主が蕎麦を打つだけで、もう温度が上がってくるから不思議。500gを二回打って、昨日の残りの蕎麦と合わせて15食を用意しました。お客が10人を越えても、15人は越えないのが、コロナ禍の後に客が戻った最近の週末なのです。1.5人分の大盛りの注文がどれだけ入るかで残る蕎麦が違ってくる。今日の天気の状態で、果たしてどれだけのお客が来るか。

 いつもより30分は早くから準備を始めたので、蕎麦を二回打ってもまだ時間が余った。熱い厨房では、根を詰めずに休み休み仕事をして、熱中症の予防には十分に気をつけているのです。野菜サラダの具材を刻み、休日だからと四皿盛り付けておきます。すべての準備を終えてもまだ11時。平日だと、これから店の掃除を始めるのですが、女将がいる週末はもうそれも終わっている。10分前に暖簾を出して、女将と二人でお客の来るのを待つのでした。

 日曜日なのに珍しく、早くからお客がいらっして、初めてらしいご夫婦が天せいろのご注文。蕎麦を出し終える頃に駐車場にもう一台車が入って、ご家族連れの5人がご来店。「テーブルは4人しか座れないので、お一人はカウンターにどうぞ」と亭主が案内する。一度には調理が出来ないので、お子様のせいろ蕎麦から出して、お婆様の天麩羅うどん、ご夫婦の天せいろと手際よく注文の品を出すのでした。前のお客が「お蕎麦が美味しかった」と帰られる。 

 その後はもう入れ替わり立ち替わりお客が入って、1時半になる前にお蕎麦売り切れの看板を出すのでした。その後にいらっした車のお客は、看板を見て帰られた。新蕎麦が美味しかったと言ってくれたのは3組ほどで、蕎麦湯まで綺麗に飲んで帰られたのです。蕎麦好きの女将の友人も歩いていらっして、途中で凄い雨に降られて日傘を雨傘に転用して来たのだとか。3時前には洗い物を終えて家路に就いた女将と亭主。雨はすっかり上がっていたのです。

7月18日 月曜日 晴れ間も見えたが蒸し暑い一日 …

 亭主の10時就寝5時起床の生活はまだ続いている。今朝も6時前には車で家を出て蕎麦屋に着いたら、まずは西側の小径のムクゲの落花を見に行ったのです。今朝はあまり多くないし、雨も降りそうにはないので、後で掃けば好いだろうと思っていたら、隣の畑のクローバーが綺麗に刈られているのに気が付いた。お隣の親父様が昨日の午後から仕事をしたらしい。機械で刈るとはいえ、畑は広いから大変な労力なのです。夏の花の準備も整えて偉いものです。

 亭主も頑張って厨房に入り、昨日からになった蕎麦徳利に蕎麦汁を補充する。すっかりなくなった小鉢も新しく盛り付けたけれど、作ってあった切り干し大根も尽きたので、次はカボチャの従姉妹煮を作ろうと、小さな雪平鍋に出しを入れて、冷凍してある南瓜の端切れを煮始める。出汁醤油に砂糖を足して、コトコトと煮ていく。茹でた小豆も昨日のうちに解凍してある。その間に今日のほうじ茶を沸かして、南瓜が柔らかくなるのを待つのでした。

 家に帰ればいつものように、女将が台所で朝食の支度をしているのです。シャカシャカとスライサーでジャガイモを削る音が聞こえたから、邪魔をしないようにと亭主は通りに落ちたムクゲの掃除をして戻る。ハムエッグとハッシュドポテトは、何十年ぶりかで復活した我が家の人気メニューの一つなのです。今日も食後のひと眠りをせずに、亭主は女将の朝ドラの時間が終わったら「行って来ま~す」と蕎麦屋に出掛ける。みずき通りも厚い雲に覆われていた。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、箒と塵取りを持って西の小径に出る。ムクゲの花を掃き集めて玄関に戻れば、向かいの畑から南瓜を抱えて親父様がやって来たのです。「今、採ったばかりだから」と亭主に渡すから、冷蔵庫に取っておいたお茶の袋を「いつももらってばかりで申し訳ないから」と持って帰ってもらう。今朝は珍しく畑の作物について立ち話をするのでした。亭主は下着一枚になってエプロンをしたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。

 今日も二回の蕎麦打ちで、昨日打った蕎麦がほとんど残っていなかったから、今日は750gと500gの蕎麦玉を作る。41%の加水で水回しを始めたら、新蕎麦の淡い緑の色が好く出ていたので、写真に撮っておいたのです。適正な加水率が掴めたら後はこちらのもので、伸して畳んで綺麗に包丁切りを済ませ、15食の蕎麦を用意する。三連休の営業はいつもの週末と違って、毎日が混むとは限らないから難しいけれど、混んだ場合も対応できるように15食なのです。

 10時過ぎからお客は来たけれど、店置きのパンフレットを渡して「11時半からなのですよ」とお断りする。しかも二組もいらっしたと女将に言えば、「便利な生活に慣れているから、いつでもやっていると思うのよ」と案外冷たい。それだけ初めてのお客が増えていると言うことかも知れない。今日も10分前には野暖簾を出して、少しでも早くいらっしゃるお客に応えようと思ったけれど、最初のお客が来たのは11時半過ぎなのでした。

 12時半を過ぎたらしばらくお客が途切れたので、亭主はかき揚げを揚げてぶっかけで賄い蕎麦を食べておく。後半は1時過ぎからお客が入って、最後に今週二日もいらっした常連さんが、また新蕎麦を食べに来てくれて四方山話。全英ゴルフが始まったという話題とコロナの感染の話が主でした。今日は初めてのお客が多く、常連さんは二人だけでした。早めに洗い物を片付けて、女将と家に帰り、夕方からの四回目のワクチン接種に備えるのでした。

 ショッピングモールの接種会場に着けば、待っている人たちがやけに年配の人たちばかりだと思ったら、自分たちもその年配の部類なのだと気が付いて思わず笑ってしまった。家に戻れば大相撲はもう最後の頃なのでした。今日残った野菜サラダを使って、亭主が冷やし中華を作って夕食にする。野菜サラダの一皿分を食べられるからと、女将も嫌がらずに食べてくれた。三日間も亭主の道楽の蕎麦屋に付き合ってくれた女将には感謝してもしきれないのです。

7月19日 火曜日 梅雨の再来は …

 雨こそ降らなかったけれど、朝からどんよりとした曇り空。夕べは少し床に就くのが遅かったのです。それでもいつもと同じ時間には目が覚めて、朝のコーヒーを飲んだら、6時前には車で蕎麦屋に出掛けるのでした。厨房で昨日の片付けを始める前に、軍手をして箒と塵取りを持って西の小径に出るのです。アスファルトの間から生える雑草を引きむしりながら、散ったムクゲの花びらを掃き集める。毎朝の習慣になって、最近は苦ではなくなったから不思議。

 7時前には家に戻って、今度は、前の通りに散ったムクゲの花びらを掃き集める。これも毎朝の習慣になって、ちっとも苦ではないのが素晴らしい。朝食には、焼いた鯖と銀だらを女将と半分ずつ食べて、蕎麦屋の残り物のお新香や小鉢を平らげる。天麩羅の具材で残った南瓜も、焼いたり味噌汁に入れたりで大活躍。それにしても亭主の道楽で続ける蕎麦屋の食材の廃棄率はいつもゼロだから、女将の協力には本当に感謝しているのです。

 朝飯を食べ終えたら30分だけ横になって、寝足りなかった分を回復する。お袋様に電話をして迎えに行き、農産物直売所に出掛ければ、今朝はまだ新しい野菜があまり入っていなかった。知り合いの農家の出している茄子やパプリカを買い込んで、隣町のスーパーに出掛ける。女将に頼まれた果物や魚や肉の他に、トイレットペーパーまで買わなければならなかったので、カートに乗せる品物はもう手一杯。いつもお袋様に手伝ってもらって袋に詰めるのです。

 帰り道、蕎麦屋に寄って、昨日、売れ残った新蕎麦をお袋様にも持って帰ってもらう。仕入れた野菜類を冷蔵庫に収納して、いつもなら家に戻るのだけれど、今日は返しがすっかりなくなっていたから、こちらも仕込まなくてはならなかったのです。ワインビネガーと味醂を煮立たせて、減塩醤油と再仕込み醤油を鍋に注ぎ、最後に氷糖蜜と塩を加える。沸騰をさせてはいけないから、表面が白くなるのを見計らって火を止めるのです。これで二週間分の返し。

 最後に、先日、向かいの畑の親父様から頂いた南瓜を骨切り包丁で切って、中身を確認するのでした。黄色く柔らかいのが、畑で採ったばかりの新鮮さを物語っていた。これなら少し小振りだけれど天麩羅の具材に十分使えるのです。レンジの消火をしっかりと確認して家に戻れば、女将が昼の支度を始めてくれていた。亭主は煮立った鍋で蕎麦を茹でて水で洗うだけ。トマトやお新香、山芋もすべて蕎麦屋の残り物だけれど、とても美味しく頂いたのです。

 2時過ぎから女将のスポーツクラブの予約があるからと、昼食後の昼寝もせずに待っている亭主。時間になってスマホを片手に待機していたけれど、いざ予約の時間と画面を操作すれば、「チケットをご購入ください」と表示が出て、どんどん席が埋まっていくではありませんか。既に二週間分の予約をしているから、それ以上の予約はさらに有料となるのです。稽古場で仕事をしていた女将に伝えて、亭主は午後の仕込みに出掛けるのでした。

 今日は空模様の割には雨が降っていなかったので、蕎麦屋に着いたら軍手と鎌を手にして、直ぐに東側のミニ菜園に向かう亭主。南側の菜園まで、残る2m ほどの間の雑草を刈り取って、ビニール袋に詰めていく。以前なら一日で終わった作業を、二週間かかった。やはり歳か? 後は、屋根より高く伸びた月桂樹の枝を剪定して、南側の菜園の草取りを終えれば目標達成。最初に草取りをした所には、もう新しい草が生えているから、気の長い話なのです。

 厨房に戻って手洗いを済ませ、いよいよ午後の仕込み。夏野菜の揚げ浸しを作って、出し汁に浸ける。4時前に蕎麦屋を出て家に戻れば、夕飯にはまだ早いから、テレビの大相撲中継を観ながら、先週残ったキャベツを刻んで餃子を包む亭主。包み終わる頃に女将が現れて、今日仕入れたトウモロコシを茹でてくれた。インゲンを捜して団地の中のスーパーに行けば、何十個も小さなジャガイモが入った袋が100円で売っていたので、これを買って帰ったから、夜はジャガバター。それに餃子を焼いて二人とももう満腹なのでした。

 

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2022年7月上旬

7月7日 木曜日 結局は晴れて好かった七夕の夜 …

 煙るような霧雨の朝でした。4時半には目覚め、例によって居間の椅子に座って珈琲を一杯飲む。朝飯前のひと仕事に出掛けるにはまだちょっとは早すぎるから、テレビのニュース番組を見るのだけれど、ぼうっと聞いているから直ぐに内容を忘れてしまうのです。5時前になったら車を出して蕎麦屋に向かい、昨日の夜から考えていた蕎麦汁の詰替えとお新香と煮物の小鉢を盛り漬けるのでした。開業時に揃えた手作りの徳利もだいぶ古くなったので気になる。

 小鉢も沢山の種類を集めたけれど、今はほとんどが戸棚の中に眠っている。使い勝手の好いものだけが残っているのです。盆の中に蕎麦皿や蕎麦徳利、蕎麦猪口と合わせて、上手く納まる大きさが使い易いのでしょう。今から思えば、あまり値の張る器を揃えてしまうと、欠けた時に補充するのが大変になるのです。蕎麦徳利が一番いい例なのでした。明日の分までも小鉢を盛り付けて、いよいよ一回目の蕎麦打ちにかかる。時刻はまだ6時前なのでした。 

 朝飯前のひと仕事に、今朝は2時間近く費やして、家に戻れば女将の用意してくれた朝食を食べる。7時のニュースを二人で見ながら、亭主は見たら直ぐに忘れるから怖い。今日は七夕、この天気では夜空の星も見えないだろうと、10年以上も前のこと、まだ亭主も現役で勤めていた頃に、小中学校時代の友人と都内でミニクラス会で集まったのを思い出す。年を取ると昔のことは好く覚えているもので、今でもその時の写真を机の脇に張ってあるのです。

 食後のひと眠りを終えて、今朝はゆっくりと家を出た。通りに面した庭の木槿がやけに賑やかに咲いている。南向きだから、ちょうど逆光で写真には上手く写らないけれど、朝の雨は上がって傘を差さなくても好いから助かった。湿気はあるけれど気温が低いので、今日は過ごしやすいかも知れない。その分、お客は少ないだろうなと思いながら、蕎麦屋に着いたら今日二回目の蕎麦を打つ。「自分の食べる分もないのでは元気が出ないでしょう」とは女将の言葉。

 加水率は湿気があるのでぴったり40%。早朝の一回目に続けて、今日は好い蕎麦が打てた気がする。薬味の葱を刻んで、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻んで盛り付ければ、まだ11時前。開店の準備を済ませ、店の掃除や消毒を終わらせて、西側の小径に散っている木槿の花を掃きに出た。この休みに草取りもしたから、少しは綺麗になっているのでした。家の木槿の落花は毎日女将が掃いてくれているから、せめて蕎麦屋だけは亭主がやらなければ。

 昼前は霧雨がしきりに降るので、涼しい北風も吹いて過ごしやすいけれど、これではお客は来ないだろうと思えるのでした。暖簾を出してお客を待つこと1時間。休憩時間だと思えば気が楽だなどと考えていたら、北の空から青空が覗いた。それがどんどんと広がって、午後は陽射しも戻って涼しい陽気。給食を食べられない例の少年がバス通りを歩いて来る。お茶を飲むわけでもないから、カルピスとバームクーヘンを出して、海老の天麩羅とせいろを用意。

 不思議なことに、この少年が来るといつもお客が続くのです。今日は注文が続いたので、彼とゆっくり話も出来なかった。窓際のテーブルのお二人は、中年の男性が長々と話をしている。女将に持たされたスマホでスポーツクラブの予約をする時間も迫っている。今日の分はスポーツクラブの席が取れなかったから、早めに来るからと言っていた女将もまだ来ない。続けてまた男性客がご来店で、やっと女将が現れた。間一髪で無事に席を確保して昼を食べる亭主。

 空腹を我慢していた遅い昼食の後も、女将がいると亭主はとても楽なのです。奥の座敷でぶっかけ蕎麦を食べ終えて、一服する暇がある。今日は蕎麦も随分と残ったけれど、野菜サラダは全部家に持ち帰り、晩のおかずになるのでした。洗い物と片付けを女将と二人で終わらせ、帰る道には青空が広がって気持ちが好かった。亭主は足の指を庇いながらゆっくりと歩くものだから、女将はどんどん先に進んでいく。夜は上弦の月が出て、無事に七夕の晩となった。

7月8日 金曜日 今朝も涼しかったけれど …

 今朝も5時前から目覚めてはいたけれど、あまり早くから蕎麦屋に出掛けてもすることがない。珈琲を飲みながらテレビのニュースを見て、6時近くになったから煙草を買いにコンビニに出掛ける。玄関を出たところで、この間、短く剪定をしたばかりの金柑の木に白い花が咲いているのを見つけました。あんなに短く枝を切り詰めたのに、元気に咲いているから、冬の収穫が楽しみです。空は暗く雲に覆われて、晴れると言う夕べの予報は朝から外れている。

 早い朝なのにコンビニはお客の車が並んでいる。作業着姿の若者たちが次々と、昼の弁当を買っているのでした。ハーフパンツにTシャツ姿で毎日のように煙草を買いに来る自分は、店員の目にはいったいどのように写っているのだろうか。蕎麦屋に寄って、昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干して家に戻る。高原のような涼しさの朝だから、エアコンも入れずに帰って来た。家の台所では、ちょうど女将が出汁巻き卵を焼くところなのでした。

 朝食を食べ終えて、書斎に入って横になれば、15分ほどうつらうつらした時に「お父さん、BSのチャンネルを替えたいのだけれど」と朝ドラの前に女将が起こしに来る。夕べ亭主が夜食のざるラーメン餃子を食べながら、食堂のテレビを観たままなのでした。何度教えても女将は覚えないから、リモコン受信部の壊れたテレビは早晩買い換えた方が好いのかも知れない。でも、リモコンを使わなくても十分に見られるから、二人とも勿体ないと思っているのです。

 雨は降っていないのが幸い、蕎麦屋まで歩いて出掛けたけれど、誰にも人には会わなかった。マスクはしてなくても大丈夫でした。涼しいから朝の仕事もすんなりと、蕎麦は500gだけ打てば足りそうだったから、時間が余るだろうと、まずは駐車場の紫陽花の剪定をするのでした。花芽を残して短く切り詰めたら、90㍑のビニール袋一杯になるほどでした。草木ははあちこちで伸び盛りの時期、花の枯れた紫陽花が、いつまでもひと目について可哀想だったのです。

 涼しいから店の窓を開け放って、蕎麦打ち室に入れば室温は25℃で湿度は65%。40%弱の加水で蕎麦粉を捏ねれば、ちょうど好い硬さになる。蕎麦玉を寝かせている間に、大根をおろし、大釜に水を張って、再び蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。生地が硬めだから、奥行き一杯までは伸し広げられずに、今朝は切りべら28本にして140g の蕎麦の束を五つだけ取った。切り幅も揃って、ちょうど好い仕上がりなのでした。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻む。

 打つ蕎麦の数が少ないと、それだけ時間が余るから、今日は11時前にもう開店の準備が整うのでした。外は晴れ間も見えて来たけれど、風が強いのが玉に瑕。西側の小径の様子を見に行けば、風で散った木槿の花が散らばっている。塵取りと箒を持って掃除をしていたら、ゴミ捨てから帰って来た近所の奥さんが「綺麗なお花だけれど、毎日お掃除が大変ね」と声を掛けてくれました。見ていてくれる人がいるのだから、早く南側の庭も草刈りを済ませなければ … 。

 早めに暖簾を出したけれど、天気が好くなったのにお客はなかなか来ないのでした。去年の記録を見ても、この週の週末はお客が少ないのです。今年は第7波が始まったとかで、感染者の数も急に増えてきているから、そんなことも関係しているのだろうか。昼過ぎにやっとお客がいらっして、天せいろのご注文でした。初めてのお客らしく、蕎麦粉から溶いた蕎麦湯を丁寧に飲んで行かれた。それでも、今日はそれきりお客がないのでした。分からないものです。

 亭主自身の昼の蕎麦を茹でて、ぶっかけで食べる暇も十分にあった。片付けを終えて家に戻れば、女将はまだ帰っていない。テレビを点ければ、元総理が銃撃されたという速報が入っていた。夕飯の時間までずっとそんなニュースが続いて、総理を辞めると警護が手薄になるのかしらと女将と話す。早い夕飯は二日続けて出なかった野菜サラダを使って、例により亭主がお好み焼きを作るのでした。平和すぎる日本にも広く危機管理の徹底を望みたいもの …。

7月9日 土曜日 普段通りに暮らすしかない …

 最近は夜明けと共に目覚めるのが習慣になってきたから、好いのか悪いのか一日が長く感じるのです。今朝も4時半にはもう目が覚めて、居間の部屋で珈琲を飲みながらぼうっと椅子に座っている。もう一度眠れば寝れないことはないけれど、せっかく起きたのだからと、今日の仕事の段取りをつらつらと思うのでした。テレビのニュースやデータ放送で天気予報を見て、6時前には車で家を出る。門の上にある木槿の花が今日も元気に見送ってくれる。

 蕎麦屋に着いたらまずは蕎麦汁を補充して、週末に予想されるお客の数だけは用意しておく。昨日一昨日でなくなってきた小鉢も、追加で盛り付けて、洗濯物を干そうと思ったら、昨日の帰りに洗ったはずの洗濯機の中で濡れたままになっている。洗剤を入れて蓋を閉めただけで、スイッチを入れるのを忘れてしまったらしい。店を出る時に、忘れものはないかといつも確認するのだけれど、何かしら忘れているから怖いのです。苦笑いをしながら家に戻る亭主。

 いつもなら、女将が台所に立っている時間なのに、今朝は亭主が帰るのが早かったのか、まだ彼女の姿はなかった。今朝は何を食べるのかと夕べのうちに聞いていなかったから、慌てることはないと居間の椅子に座って一服している。それでも、いつもの時間に食卓に料理が並び、いつもの時間には食べ終わる。今朝はホッケの塩焼きととろろ芋がおかずだった。とても美味しく頂いて、お茶をもらったら、書斎に入ってひと眠りするのでした。 

 今日は朝から陽が差していたから、蕎麦屋に着いたら久し振りに打ち水がわりに、ホースで駐車場に水を撒く。西側の小径のムクゲの落花も箒で掃いて綺麗にしておくのでした。今朝も蕎麦打ちは、500g五人分と決めていたから、時間が余るのが目に見えていたのです。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って加水率40%弱で、今朝の蕎麦を捏ね始める。エアコンも入れていないのに、室温は26℃湿度は63%なのでした。陽射しのないところではまだ涼しい。

 蕎麦玉を寝かせている間に大根を擦り、大釜に水を張って、早朝に洗い直した洗濯物まで干しておく。再び蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦をのして包丁打ち。加水がちょうど好いと、蕎麦も本当に好く仕上がるのです。いつもより30分も早めに野菜サラダの具材を刻み、10時半過ぎにはもう用意が出来ていましたが、大釜に火を入れるのを忘れていた。若い女性がやって来て玄関の看板を見ていたけれど、「まだお湯が沸いていないので」とパンフレットを渡す。

 11時15分前なのでした。営業を始めるにはちょっと早すぎる時間なのです。そのうち女将も家から戻って、昨日のコロナの感染者数が78人にもなったという話になる。一昨日の数の倍になったから、こんな田舎の街でクラスターもないというのに、どこでそんなに感染するのだろうと思えてならない。彼女に言わせると、都会に出掛けているから、感染して帰って来るのではないかと言うのです。開店時刻を過ぎたら、直ぐにお客が続けて入った。常連さんばかり。

 カレーうどんの親父様は、今日はカレー蕎麦にしてみると言うので、孫の世話を今日は母親に任せて、久し振りにいらっした奥様が笑うのです。母娘らしい常連さんも、お母様がヘルシーランチセットを頼まれて、珍しく生ビールのご注文なのでした。それから1時間というもの、お客の来る気配はなかったから、亭主は蕎麦を茹でて、ぶっかけで昼を済ませてしまう。やっと次のお客たちが来たのは、1時半近くなのでした。同時に6人も入って大忙しでした。

 近所の友人に勧められていらっしたと言うご夫婦と、ラベンダー祭りに来たというご家族と、それぞれ蕎麦が美味しいとゆっくりしていかれた。閉店時間もとっくに過ぎて、女将と二人で洗い物をするひととき。薄雲は出ているけれど、陽射しの強い暑い午後なのでした。家に戻って亭主はいつものように、書斎に入ってパソコンに向かって、ひと仕事を終えたら午後の昼寝。その間に女将は買い物に出て、目覚めた亭主は蕎麦屋に行ってお新香を漬けてくる。

 ついでに昼の洗い物を片付けて、蕎麦汁を補充し、小鉢を盛り付け、洗濯物を干しておく。結果的に、いつもの土曜日の来客だったかほっとする亭主。春蕎麦の新蕎麦も発注したし、来週は鴨肉や海老を頼まなくてはならないし、売り上げが伸びないと支払いに困ることになる。平日にお客が少ないと、やはり目に見えて火の車なのです。明日はどうなるこことか。夜の食事は昨日のサラダの残りを炒め物にして、チーズ揚げと枝豆、トマトで一献なのでした。

7月10日 日曜日 朝から蒸した一日で …

 午前5時前に今朝は珍しく寝汗を掻いて目覚めた。気温も多少高いのかも知れないけれど、じめじめと湿気のある感じなのでした。亭主は、元来、この湿気には弱いのです。居間の部屋のエアコンをおそらくは外気温よりも高めの27℃に設定して入れただけで、爽やかな高原の朝になるから不思議なのです。例によって、6時まで椅子に座ってぼんやりと過ごし、珈琲を飲み終えたら車を出して、煙草を買いに出る。その帰りに蕎麦屋に寄って、夕べ漬けたお新香を取り出して切り分け、小鉢に盛り付けるのです。

 家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしている。昨日蕎麦屋で残った二人分の野菜サラダは、夜のうちに亭主が製作責任上、冷やし中華に載せて半分食べたから、今朝は残り一人分を二人で分け、スクランブルエッグを添えておかずに出る。卵と納豆がタンパク質摂取の食材らしい。野菜の揚げ浸しやお新香も含めて、我が家ではかなり多くの野菜を摂っているのです。昼は食べられればどうせ蕎麦なのだから、ちょっとタンパク質の方が少ない計算です。

 朝が少し遅かったせいか、今朝は食後のひと眠りもせずに、丁寧に髭を剃って着替えを済ませたら、早めに家を出るのでした。玄関前のムクゲが、「おはよう!」と言って亭主を送り出す。白い花びらの中央に紅色の模様が滲んでいるのが素敵なのです。紫色の花びらにも同じ模様が入ったのもあるけれど、白地に紅が素朴で美しいと感じる。最近は足の指の具合も好くなって、ゆっくりだけれど雪駄の足に力を入れて歩くことが出来るようになった。

 蕎麦屋に着いたらまだ時間があったので、まずは西側の小径に散ったムクゲの花を箒で掃き集める。まだ枝に付いている花の終わった花殻も取っておくのです。「一日花だから」とよく女将が言っている。朝の仕事を終わらせて、さあて今朝は何から始めようかと、厨房の椅子に座ってタブレットで天気予報を見るのでした。あまり当てにはならないけれど、午前中は小雨のマークが続いて、昼からは曇りという予報。蕎麦は最低限打てば好いけれど、今日は日曜日。

 昨日打った蕎麦が5束残っていたから、今朝は750gで8束打って合わせて13食分を用意すれば好いだろうと考える。この「好いだろう」は、足りるという意味ではない。天気が悪くても、日曜日だからお客が蕎麦の数よりも多く来ることも考えられるけれど、「ご免なさい。お蕎麦が売り切れました」と言って断るには、ちょうど好いだろうという意味なのです。あまり無理をして沢山お客を入れても、女将と二人では手一杯になるはずです。

 商売人としては失格なのかも知れないけれど、自分の腕を過信しないと言うことも大切だと思うのです。銅の天麩羅鍋に替えて、天麩羅も上手く揚がるようにはなったけれど、続けて沢山揚げたのでは上手くいかない。2時間半という昼の時間で、調理をこなせる数は自ずと限られてくるのです。お客様がゆっくりと寛げるかどうかが一番の問題です。今日は11時過ぎには最初のお客が来たので、お湯も沸いていたから店の中に入って頂いた。

 そう言う日には後が続くもので、昼前に三組のお客が入って遅れてきた女将もびっくり。ご近所のご主人が一人でいらっして、いつもと同じく天せいろのご注文。「全部美味しかった」と今日も褒めて頂いて気をよくする女将と亭主。昼を過ぎて、四人連れのお客が続き、一組はお婆さんを連れた女性陣、もう一組は小さなお子様を連れたご夫婦で、これで今日の蕎麦は売り切れなのでした。その後も何台か車が入ったけれど、女将が出てお詫びをするのでした。

 昼になるにつれ、曇りどころか陽も差して、厨房は30℃を越える暑さ。1時過ぎには「お蕎麦売り切れ」の看板を出したけれど、洗い物をする時間がないほど忙しかった。今日は選挙の日だからと、家に帰って着替えもせずに、そのまま投票所に出掛ける夫婦。さすがの女将も今日は買い物に出なかったのです。空になった冷蔵庫の中にはあまり食べるものもなく、今日残った野菜サラダを使って、夜は亭主が作った餃子を添えて、冷やし中華にすることに …。

7月11日 月曜日 朝は涼しく昼は暑く …

 昨日の朝よりは少し涼しいと感じたけれど、午前6時の太陽の光は、もうかなり強かった。家でもうひと眠り出来ない理由は、昨日の片付けが沢山あったから。最近は暑くなるとお客が増えるという繰り返しで、週末のお蕎麦売り切れは嬉しい悲鳴なのです。月曜日の今日は昨日にも増して暑くなると言うから、まずは片付けから始めないといけない。そして、残っている蕎麦汁を補充した分だけ、今朝は蕎麦を打とうと考えていたのです。

 蕎麦徳利はすべて空だったから、作り置きしてあった蕎麦汁をお玉で一本ずつ入れていく。ちょうど8本目で蕎麦汁が尽きて、大盛り用の蕎麦徳利が、冷蔵庫に少し残っていたから、今朝は9人分の蕎麦を打てば好いと考える。小鉢もお新香以外はすべてなくなっていたので、作り置きの分を盛り付けたら、ちょうど9人分なのでした。平日だから、暑くなったと言っても、そんなに沢山のお客が来るとは思えない。洗濯物を畳んで乾したら、家に戻るのでした。

 家の冷蔵庫もすっかり空になっていたから、今朝は何にするのだろうと居間の部屋で待っていたら、シャキシャキとジャガイモをスライサーでする音が聞こえてきた。ハッシュドポテトに卵焼きなのでした。それにお新香とピーマンのじゃこ煮がついて、亭主の朝食にはちょうど好い分量。すぐに食べ終えて書斎に入って横になる。わずか20分ほどなのですが、朝早く起きた分だけ身体を回復させるのです。洗面と着替えを済ませていつもの時間に家を出る。

 雲は多かったけれど今朝は晴れて、ジリジリと暑さが身体に入ってくる。蕎麦屋までは人に会わないから、マスクもしないでゆっくりと歩く亭主。朝の涼しさは何処へやら、今日は32℃まで気温が上がると言うから堪らない。朝のうちに店のエアコンを入れておいたから、蕎麦屋の中は高原の涼しさ。朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入れば、朝日が当たるからか28℃もあった。湿度は55%だから、それでも外に比べれば涼しい。蕎麦粉を計量して850gを捏ねる。

 いつもより100gしか多くないのに、加水を39%にしているから、捏ねるのに力が要るのです。菊練りに入れば、捏ね鉢の中で両の腕を絞るように力を入れるので、尚更、大変だと感じる。やはり、少し歳を取ったのかな。それでも寝かせた生地は綺麗に仕上がっていた。本伸しも無事に済んで、切りべら26本で130gの包丁打ち。予定通りに9人分の蕎麦が取れました。頼んでおいた春蕎麦の新蕎麦が届く。5kgを二袋で打ち粉を入れて2万円近いからやはり高い。

 平日だからと野菜サラダを三皿だけ盛り付けて、開店を待つひとときが、一番緊張するのです。最初のお客が来てしまえば、後は流れに任せるだけなのですが、どれだけ来るのかが分からないのが不安なのです。果たして、昼前に若いカップルが見えて、天せいろととろろ蕎麦のご注文。続けてリピーターのカップルがテーブル席に座って、ビールと天せいろにとろろ蕎麦。同じ作業を繰り返せば好かったから助かる。前の二人が帰ったところで駐車場に車が入る。

 あれよあれよと蕎麦がなくなっていくから、やはり暑くなるとお客は増えるのかも。天せいろを頼もうとするお婆さんには「天麩羅の量が多いから、ぶっかけ蕎麦に海老を追加した方が安いですよ」と言ってやる。1時10分過ぎには「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、最後のお客のテーブルにお茶のポットを置いてくる。洗い物をする暇がなかったので、お客が帰った後で賄い蕎麦をぶっかけで食べ、ゆっくりと一人で洗い物をする。月曜日は後片付けが大変。