2024年11月中旬



11月11日 月曜日 今日は朝から暖かくなって…

 二度目の月曜日定休は、早く起きなくて好いので、7時過ぎに女将が起こしに来るまで眠っていました。なんと8時間の睡眠です。明け方に夢を見たのだけれど、歳を取ると見た夢も忘れてしまう。以前のように、自分の知っている場所や知っている人は現れずに、どこか見たこともない街で、何をしていたのだか、それが思い出せないのです。朝の食事は夕べのおでんの残りを暖めただけ。これがまた美味しいのでした。最後は汁をご飯に掛けて食べる始末。

 食後はいつものように書斎に入るけれど、眠くないので机回りを片付け始める。いらない郵便物はゴミ袋に入れて、調理師学校時代のノートや教科書を紐で縛って玄関に出しておくのです。漢和辞典と英語とフランス語の辞書だけは捨てられなかった。滅多に引くことはないのですが、いざ調べたいと思ってもネットではなかなか難しいこともあるのです。高橋名人の蕎麦打ち入門のCDと、本棚のイタリア料理の用語辞典も一冊だけ取っておきました。

 昼前に蕎麦屋に出掛けて、昨日の洗い物の片付けをしたら、鍋に出汁と砂糖と出汁醤油を入れて油揚げを煮る。寒くなるから、天麩羅ではくどいというお客のために、きつね蕎麦を出したらどうかと考えたのです。おろし蕎麦と同じく770円で提供すれば、案外と出るのかも知れないと思った。昼飯は家に持ち帰って女将と試食をするのでした。「手軽で好いかも知れないわね」と言われて、気分を好くする亭主。煮込んだ揚げはホウレン草と葱でも添えれば好い。 

 昼食を食べ終えて休んでいたら、女将は随分と早くスポーツクラブに出掛けて行く。亭主も2時になったら蕎麦屋に出掛けて、今日は厨房の床磨きをするのでした。高価な床磨きクリーナーは、電動ポリッシャーで磨けば、油汚れも綺麗に落ちるけれど、こびり付いた汚れは一度では落ちない。完璧は目指さずに、一通り磨いてあとはモップで拭き取るのです。小一時間で少し汗ばんだ頃に終わり、後は洗濯機の中の洗濯物を干して終わりにするのでした。

 家に帰ればもう大相撲の始まる時間でした。若手に押されて下位に落ちた名を知る力士が頑張っていた。30歳台ではもう身体が動かなくなるのだろうか。消耗の激しいスポーツなのだろうと思いながら、居間の部屋でコンビニで買って帰った肴をつまみながら、焼酎を飲み始めたら、女将が帰ってきてしばらく一緒にテレビを観た。夜は昨日一皿も出なかった野菜サラダを消化するために、得意のあんかけ焼きそばを亭主が作る。栄養は満点なのです。


11月12日 火曜日 今日も朝から随分と暖かい日でした…

 お袋様と農産物直売所に出かけて、その通り道の銀杏並木が黄色くなりきらないのに、今年の秋の異常さを感じるのでした。「寒いんだか暖かいんだか判らないのよね」とお袋様は言う。隣町のスーパーに行けば、今日は老人男性のお客が多かった。メモを持ちながら商品の陳列棚を行き来する姿を見て、どんな生活をしている人なのかと思ってしまう。蕎麦屋を廃業した後の自分の姿を見るようでちょっと人ごととは思えないのです。後、何年後なのか。

 蕎麦屋に戻って野菜類を冷蔵庫に収納したら、お茶を飲みながら向かいのサツマイモ農園を眺める。今日は、この間、若旦那から聞いていたトラックのコンテナ部分の搬入が行われていたのです。寒い冬に向けて、サツマイモの貯蔵庫として使うのだそうな。40代の若い社長が次々と新しいことをして好く姿を見て、頼もしく思う。亭主は買って来た大根の皮を剥いて切り分け、なた漬けの準備に余念がない。キノコ汁を作り、切り干し大根の煮物を仕込んでおく。

 いつもの時間よりも少し遅れて家に帰れば、「仕込みが終わらないのだろうと思っていたわ」と女将が言う。今日は彼女のスポーツクラブが休みだから、亭主の帰るのを待っていてくれたのです。魚や肉類の他に柿と蜜柑など、家の分の買い物を二袋も持って帰ったから、亭主の手首の腱鞘炎を心配して、ガレージまで重い荷物を取りに来てくれました。とろろ芋を擦って蕎麦を茹でるのは亭主の仕事。三日目の蕎麦もコシがあってなかなか美味しかった。

 食後は珍しくひと眠りせずに、女将のスポーツクラブの予約の時間まで頑張って起きていた。テレビの洋画が終わったところで、蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みにかかる。午前中に作ったキノコ汁を小さな鍋とタッパに入れ、切り干し大根もタッパに詰めておく。洗濯物を畳んだり、洗濯機の中の洗濯物を干して、減塩醤油と再仕込み醤油を調理台に置いたところで、氷砂糖と味醂がないのに気が付いた。隣町のスーパーまで本日二回目の買い物に出掛ける。

 夕方の道は少し混んでいたけれど、スーパーの駐車場はそれほど混んではいなかった。目的の氷砂糖と味醂を買ったら、ついでに明日の昼にはパスタを食べようと、1.7mmのパスタと、一番値段の高い青の洞窟のボロネーゼを買って帰る。もう4時過ぎだったから、そのまま家に戻って今日の仕事は終わりにしたのです。女将が台所に立って夕飯の仕事をしながら、食堂のテレビで大相撲の放送を聞いていた。取り組みが始まると画面を見に来るから凄い。

 今日の夕食は純和風のおかずで、少し大きくなったサンマを3尾で240円で手に入れたから、ついでにシジミを買って帰ったので美味しく頂いたのです。日本酒を蕎麦屋から持って帰るはずだったのに忘れて、いつもの焼酎で我慢する。テレビの大相撲は、贔屓の力士たちはみんな勝って、二人とも満足して食事を終えたのでした。明日は定休日の最後の日で、夕方にお新香を漬けに蕎麦屋に行くまでに、返しを作って、天麩羅の具材を用意すれば好いのかな。


11月13日 水曜日 朝から快晴で暖かな一日でした…

 今朝は日の出と共に蕎麦屋に出掛けて、朝飯前のひと仕事で返しを仕込むのでした。空は雲一つない快晴で、秋と言うよりもう冬の始まりのようなのです。朝食を終えたら少し長めの食休みで、10時になったらまた蕎麦屋に出掛けて、朝作った返しを甕に入れる。先週の予備の一番出汁で蕎麦汁を作って、残った時間で天麩羅の具材を準備するのでした。レンコンを輪切りにして酢水で湯がき、生椎茸とピーマン・ナスを切り、玉葱を刻んでかき揚げの材料にする。

 昼はスパゲッティーを茹でて、昨日買ってきたボロネーゼのソースを温めて食べる。いつもはトンカツを載せているので、今日は少し物足りない。朝のうちに随分とゆっくりしたので、午後は昼寝をせずに早めにまた蕎麦屋に出掛けて、出汁を取るのでした。なた漬けと切り干し大根の煮物があるので、今日はお新香は漬けなかったのです。夕食は鍋にして、日本酒を飲んだら、食後のひと眠りが長すぎて、風呂を沸かすことが出来なかった。女将がやってくれた。



11月14日 木曜日 昼までは晴れて暖かかったけれど…

 夕べの夕食後に少し眠ってしまったので、夜は眠れないかと思ったら、いつもの時刻には眠くなって、ブログも途中のまま床に就いてしまいました。今朝は5時にはアラームが鳴って目が覚める。コーヒーを沸かして飲んだら蕎麦屋に出掛けるのです。まだ暗いから随分と早い時刻のように思えた。エアコンの暖房を入れ、先に蕎麦打ち室に入って蕎麦粉を900g計量する。二回打つほどではないだろうと、捏ね始めて蕎麦玉を作ったら厨房に戻る。

 蕎麦玉を寝かせている間に小鉢を盛り付け、ほうじ茶を沸かしておきました。蕎麦打ち室に戻って900gの生地を伸したら、包丁切りをするのですが、10人分取れるように今日は130gを守ったのです。ところが、どうしてもぴったりにはならずに、最後の一束は120g。途中で135gとか134gになるから、つじつまは合わないわけです。1kgを打つ時は11人前取れるのに、不思議なのです。一束130gに拘るからこういうことになるのかも知れない。もっと柔軟になりたい。

 厨房に戻って大根をおろし、生姜をおろして薬味の葱を刻めば、陽が差していたのに雲が随分と出て来た。野菜サラダの具材を刻んで、外に出てみると随分と暖かいのです。陽射しのない室内の方がかえって涼しく感じる。テーブルを拭き終わって女将が来たら、暖簾を出すのでした。曇り空になったから気温も上がらないけれど、女性のお客が二人いらっして、天せいろと鴨せいろのご注文なのです。向かいのサツマイモ農園の駐車場に車を入れたから注意する。

 すぐに亭の駐車場に移動してくれたから好かった。怒って帰られるお客も少なくないのです。昨日、若旦那と話をした時にこのことを伝えたら、Pの看板の所に「かち農園」と書きましょうかと言ってくれたけれど、使っていないときには入り口を封鎖しないと、間違いに気が付かないのではないかと心配する亭主なのでした。閉店間際にも向かいの駐車場に高級外車を停めて、蕎麦屋に来る女性がいたけれど、「あそこに停めて大丈夫?」と聞かれたのでNO!

 今日は珍しく女性のお客ばかりなのでした。向かいの他所の空き地に車を停めないでと言えば、素直に亭の駐車場に移動してくれたから助かったのです。天せいろを頼まれた最後のお客もウンウンと頷きながら蕎麦を食べていらっしたので、満足そうなのでした。こんなお客がリピーターになってくれればと思わずにはいられない。2時過ぎには女将と家に戻って、亭主は書斎に入って昨日のプログの続きを書く。夕食を食べながら二人で大相撲を観るのでした。


11月15日 金曜日 一日中降ったり止んだりの空模様…

 夕べは9時半に床に就いたのに、今朝は7時まで眠っていたのです。最近にしては珍しく、朝飯前に蕎麦も打っていなかったので、8時半には蕎麦屋に出掛けるのでした。みずき通りのハナミズキはほとんど葉が散って、駅前の高層マンションが曇って見える。昨日の蕎麦が残っていたから、500gだけ打てば好かったので助かった。43%ちょうどの加水で生地はしっとりと仕上がって、包丁切りも順調に進み、12食の蕎麦を用意できました。

 蕎麦打ちが終わったら、厨房に入って大根をおろし、この時点でいつもの時刻にペースが戻った。野菜サラダの具材を刻み、三皿分盛り付けたら、お茶のポットに湯を入れたり、天麩羅鍋に油を注いだりと、開店までの準備に余念がない。テーブルを拭いて回って、11時にはもう開店の準備が整うのでした。外は冷たい雨が降っていたので、この寒さではお客は来ないだろうと思えたのです。昼前になって少し雨が収まったら、常連さんが歩いていらっしゃった。

 カウンターの隅のいつもの席に座り、暖かいぶっかけ蕎麦の大盛りとビールを頼まれて、いつものように文庫本を読んでいる。ビールと付け出しを運んで、先日、カレー蕎麦を頼まれた時にいろいろ話をしていて、野菜サラダを出すのを忘れていたのでお持ちした。本人はもう忘れていたらしいけれど、これでこちらの気がかりが溶けたのです。その後はもうお客は来なかった。ゼロでなかっただけ有り難いと思って常連さんに感謝するのでした。



11月16日 土曜日 16食の蕎麦がみるみる売り切れて…

 今朝は6時過ぎに蕎麦屋に出掛ければ、ちょうど日の出の時刻なのでした。曇りという天気予報でしたが、午前中は晴れて青空も覗いていたのです。この天気を見て、蕎麦打ち室に入って今日も500gだけ打ち足しておこうと考えた。合わせて16食になるけれど、足らないよりは好いだろうと思ったのです。今日もぴったり43%の加水でちょうど好い具合の硬さの生地が仕上がりました。切りべら20本で135gの蕎麦を生舟に並べて、家に戻るのでした。

 朝食は女将が最近よく作る、キノコご飯に鶏肉のカリカリ焼きがご馳走なのでした。鶏肉に振りかけた黒胡椒が効いて、とても美味しかったので、珍しく亭主はお替わりをしたのです。筑前煮とサツマイモの切り昆布との煮物も出し焼き卵と合わせて、美味しいのでした。食後のひと眠りはぐっすりと1時間も眠ってしまいました。洗面と着替えを済ませたら、蕎麦屋に出掛けるのですが、外は青空で11月の半ばだというのに、陽射しが暖かかったのです。

 向かいの丘の上の銀杏の木が、上の方だけ黄色く色づいているのも、今年ならではの景色なのでした。手入れの行き届いたお宅の蜜柑は、朝日を浴びて黄色く育っていました。例年よりも少し玉が大きいような気がするのです。自宅の庭の金柑も早いものはもう黄色く色づいているのですが、やはり南側の日当たりの好いところのほうが大きな粒が育っている。今日は少し足の具合がよくなくって、どうしても右足を引きずるようにして歩いてしまうのです。

 蕎麦屋の前のバス通りに出れば、土曜日だから向かいのサツマイモ農園で朝市を開いていた。置いたばかりのトラックのコンテナにサツマイモのケースを積んで、早速、保管場所として使い始めたようです。サツマイモは寒さに弱いと言うから、冷たい風に当たらないようにしているのだとか。蕎麦屋に着いたら看板と幟を出して、チェーンポールを降ろして歩く。気持ちの好い朝なのです。すぐに女将もやって来て、野菜やサツマイモを朝市で買っていました。

 天気が好いからか、朝市は随分と賑わっていました。焼き芋を買って帰る人が多いのには驚いたのです。女将も友だちの家が焼き芋屋だったとかで、子どもの頃はよく買って食べたのだと言う。亭主は子どもの頃にサツマイモの産地で育ったものだから、お袋様がよく蒸かしてくれたので、それこそ食べ飽きている。近くに住む祖母が乾燥芋の工場に努めていたので、干し芋も嫌になるほど食べたのです。おやつなどない時代だったから、子供の栄養にはなった。

 暖簾を出せば、昼前から続々とお客がやって来た。四人連れの会社員らしき男性達が、皆さん大盛りのぶっかけ蕎麦を頼まれて、あっという間に生舟の中の蕎麦も少なくなっていく。休む間もなくお客が来るから、洗い物をする暇もないほどなのでした。1時半近くに女性一人のお客がいらっして、天せいろを頼んだところで「お蕎麦売り切れ」の看板を出す。綺麗だった油も随分と汚れてきた。二人で洗い蓑を済ませて、家に帰ったのは3時近かった。



11月17日 日曜日 こんな天気の好くて暖かい日なのに…

 今朝は午前の4時起床。居間の部屋でコーヒーを一杯飲んで、5時過ぎには蕎麦屋に出掛けたのです。昨日、あんなに沢山あった蕎麦が売り切れたから、今日はどうしても蕎麦を二回打たなければならないのでした。夕べはなかなか寝付けなかったので、目が覚めるまでにかなり時間がかかってしまったのです。まだ真っ暗な時間に蕎麦屋に着いて、まずは蕎麦粉を二回分計量して、蕎麦玉を二つ作る。室温が19℃、湿度70%だったので、加水率は43%弱。

 蕎麦玉を寝かせている間に厨房に戻って、昨日、空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を補充します。ついでにほうじ茶をグラス四杯分と少し沸かしておきました。6時を過ぎてやっと少しずつ辺りが明るくなり、蕎麦打ち室の電気だけで蕎麦が打てるようになった。蕎麦の生地はちょうど好い具合で、こんなに部屋が暖かいのも珍しい。切りべら20本で135gと均等な幅で切り進んでいけば、500gの生地はちょうど5.5人分の蕎麦が取れるから、二つでぴったり11人分の蕎麦。

 昨日の蕎麦が二束だけ残っていたので、13人分の蕎麦を用意して今日は営業を始めるのでした。空は青く雲一つない。天気予報は午前中から曇り空だったけれど、分からないものです。店の中は日中は24℃まで上がった。風もないのに、どういうわけかお客様が来ない。やはり、昨日混んだからその反動で今日は…。二日続けてお客がだくさん来るほど、地の利もないし、蕎麦の人気もないのです。若いカップルがいらっして、キノコつけ蕎麦と天せいろのご注文。

 新しい閉店時刻の11時45分になったら、女将が暖簾を避けて、幟をしまうのでした。亭主はチェーンポールを上げて、重い看板をしまう。客は少なくても洗い物は盆や皿が少ないだけで、大鍋を洗ったり、天麩羅鍋の油を漉し器に流したり、持って帰るもの冷蔵庫から取り出して、まな板を消毒したりと、他の仕事は同じなのです。2時半には二人で蕎麦屋を出て家に帰るのでした。夜は暖かいので鮪のたたきを手巻きにして食べる。今日は牡蛎フライが付いた。



11月18日 月曜日 昼まではいつもと違った仕事を…

 今朝は朝一番で書斎の本箱の本を捨てる準備をしました。紐で縛って玄関まで運んで行けば、全部で5つの本の束になった。明日の朝、子ども会の廃品回収に出すのです。机の脇の本箱に残ったのはP.P.M.やクラプトン、クラッシックのギターの楽譜やポップスやジャズの名曲集で、まだ捨てる気にはならない。居間のソファーにギターを2本置いたままで、もう半年以上触っていないけれど、これは楽譜と一緒に取っておきたいのです。

10時前になったら蕎麦屋に出掛けて、南側の庭の木を切り始める。春に蕎麦屋でタラの芽を採って出していたので、放っておいたらどんどん増えて大きくなってしまったのです。葉が生い茂って手に負えなかったのですが、この時期になって葉がみんな落ちたから、ノコギリで短く切っていく。来週から業者が来て外壁の塗装のために足場を組むから、少しは綺麗にしておかなくてはと思ったのです。11時過ぎまで頑張って、家に戻るのでした。

 昼食は昨日残った蕎麦を茹でてとろろ蕎麦。亭主は大盛りにして何とか残りの蕎麦を減らそうとするけれど、明日の分の蕎麦も残っているので、寒くなるという明日はきつね蕎麦にでもして食べようか。腹が一杯になった午後は書斎に入ってひと眠り。女将はその間にスポーツクラブに出掛けていく。3時過ぎに目覚めて蕎麦屋に行って出汁取りを始める。曇っていた空も青空が出て夕焼けが綺麗なのでした。出汁を取ると1時間はかかるので辛抱なのです。


11月19日 火曜日 いきなり寒い朝だったが陽射しは暑く…

 今朝はとても寒い朝なのでした。厚手のタイツをはいて長袖の下着を着て、朝の仕入れに出掛けたのです。女将には灯油を買って来て欲しいと言われていた。お袋様を迎えに行けば、いつもと代わらずに元気だったからまずはひと安心。毎週、体操の会に参加して、家でも運動をしていると言うから偉いのです。あまり動かないのもいけないと、マンションの周囲を散歩していると言うから感心するのでした。亭主は必要がなければあまり動かないから心配。

 隣町のスーパーでレジでカートで運んだ籠を二つ並べて、一つ目の籠だけで9000円を越えたからびっくりした。今までにないことなのでした。商品の値段がみんな値上がりしているから、同じように買っていても支払う値段は多くなるのです。お袋様も今日は大根やキャベツなど重たいものを買ったので、亭主が荷物を持って階段を昇つてやる。店に戻って野菜類を冷蔵庫に収納したら、買ったばかりの大根を一本切り分けて、なた漬けの仕込みをするのでした。

 家に帰れば女将が昼の準備をしてくれていて、あとは亭主が蕎麦を茹でるばかりなのでした。昨日と同じくとろろ蕎麦で、揚げの煮物とホウレン草と切り干し大根の煮物は、蕎麦屋で残った食材なのです。蕎麦屋を閉店したら、食材の残りはなくなるから、我が家の食費はもっとかかるに違いない。女将は「頑張って蕎麦屋を続けて」と言うけれど、「蕎麦屋を止めなければ蕎麦屋には引っ越さない」と言う彼女の言葉には矛盾があるから困ったものです。

 昼食を終えてひと眠りしたら、蕎麦屋に出掛けて午後の仕込みをするのです。午前中に浸けておいた大根の水が上がっていたので、甘酒の素と砂糖を加えて、唐辛子や柚木切りを入れたらまた冷蔵庫に入れておくのでした。キノコ汁も毎週少しずつ出る季節になったから、仕込んでおくのでした。コーヒーを沸かしながら、午後のゆっくりとした時間を過ごすのも気持ちの好いものです。明日は天麩羅の具材を切り分けて、お新香を漬ければお終いです。

 月曜日を定休日にしたお蔭で、ゆったりと過ごせるようになったから、肉体的にも楽になったのですが、店の売り上げはどうだろうかと少し心配になる。仕入れの量も減るはずなのに、食材の値段が上がっているからこれもまた心配なのです。今週はまた蕎麦粉を注文しなければならないから、支払いは出来るのかと心配。次の週の仕入れを済ませて、酒とつまみの肴と煙草を買って前の週の売り上げがなくなればトントンなのですが、蕎麦粉はまた余分の出費…。

 夕暮れ時の陽射しが長い影を作って、大相撲の取り組みが気になる時間帯に家に戻るのでした。今日は大きなサンマを買って帰ったので、女将は添える野菜を作っていた。亭主の買って帰った灯油を入れて、食堂のストーブが点いていた。一年ぶりに茶碗蒸しを蒸かしていたので、楽しみな夕食なのでした。大相撲の取り組みをテレビで観ながら、二人でゆっくりと夕食を食べる。明日も寒くなると言うから、今晩も油断せずに厚着をして眠ろうと思います。