2024年8月上旬



8月1日 木曜日 昨日よりは気温は少し低かったけれど…

 5時半過ぎに家を出て蕎麦屋に向かう。昨日までよりは少し気温の低い朝なのでした。5時に出られれば、駐車場の植木の剪定を出来たのですが、身体がどうしても言うことを聞かなかった。厨房に入って、まずは糠床からキュウリとナスとカブの漬け物を取り出して、切り分けたら小鉢に盛り付ける。それから蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つのです。加水率は40%。今日は10分ほどしか蕎麦玉を寝かせなかったから、生地の仕上がり具合がよかったのです。

 夕べ打った蕎麦と合わせて12食半の蕎麦を用意した。家に帰って朝食を食べたら書斎に入って横になるのでした。ところが、20分たっても一向に眠りに入れずに、今朝は6時間ほど眠っただけで着替えて再び蕎麦屋に向かう。昨日も暑さに耐えるだけで何もしなかったから、身体が疲れていないのだろうか。蕎麦屋の前のバス通りに出れば、雲は多いけれど青空が出ているので気持ちが好かった。陽射しは強いのですが、昨日ほどではないのが救いなのです。

 看板と幟を出したらチェーンポールを降ろして、厨房に入ればガスレンジの回りが油で汚れているのが気になるのでした。薬味の葱切りを終えて、大根と生姜をおろしたら、ほうじ茶を入れるのにポットに湯を沸かし、炭酸の粉をレンジ周りに振りかけておきます。ほうじ茶を瀬戸物のグラスに4杯入れて、残ったお湯を炭酸の粉に掛けてしばらく放置しておく。しばらくして雑巾で拭くのですが、油汚れはこの方法が一番手際よく落ちるので助かるのです。

 早め早めに仕事をこなして、野菜サラダの具材を刻んで、皿に盛り付け終えたのが10時45分だった。大釜の湯を4つのポットに詰めて、油を天麩羅鍋に空けて天つゆの鍋を火口に掛けたら、テーブルをアルコール除菌液で拭いて歩く。11時過ぎにはやっと椅子に座ってひと休み。後は女将が来るのを待って、開店の準備をするのでした。最初のお客はサイクリング車に乗った男性で、カウンターに座って天せいろのご注文。生椎茸が小さいので伏見唐辛子を付ける。

 次のお客は中年のご夫婦で、テーブル席に座ってヘルシーランチセット天せいろを二つ頼まれる。野菜サラダも蕎麦豆腐もデザートも出るから嬉しいのです。ゆっくりと召し上がって、いざ帰る時になって、奥様がお腹の辺りを押さえて「苦しくなっちゃったわ。でも美味しかったから全部食べちゃった」と笑っておっしゃるのでした。2時過ぎには女将を先に帰し、亭主は冷蔵庫の中身を確認して後を追うのです。夕刻には業者が来るのでまた蕎麦屋に出掛ける。


8月2日 金曜日 早朝は涼しかったのですが…

 ついこの間まで4時を過ぎたらもう明るくなっていたのに、季節の巡るのは早いもので、日の出と日没の時刻は段々と遅くなって、今朝は4時半に蕎麦屋に出掛けたら、まだ陽が昇っていなかった。明け方の気温は24℃だったから少し涼しいのです。だから、駐車場の植木の剪定をしようと考えたのだけれど、薄暗くては仕事にならないから、厨房に入って塩漬けしてあった大根の水を切り、なた漬けの仕込みをするのでした。大根の約3分の2程を使って漬けた。

 やっと明るくなったので、手袋をして剪定ばさみを持って駐車場に出る。車止めの後ろ50cmほどは、草木が枝を伸ばしてしまうとバックセンサーに反応してしまうから、綺麗に切り落としておく。脇の金木犀の枝も伸びてくると、やはり車を停めるのに支障が出るので切っておく。ビーニール袋が一杯になるまで40分ほどかけて、ひと仕事なのです。犬の散歩の顔見知りの小母さんが、「お早うございます」と声を掛けてくれた。随分と早い時間なのです。

 今朝は蕎麦打ちがなかったので、6時過ぎには家に帰り、時間があったので、来週の会食に出す予定の小鉢を実際に作ってみる。塩ずりしたオクラを茹でて、ナメコをさっと湯通しして、トマトを切ってぽん酢で和えるだけなのですが、しばらく作っていなかったから、上手く出来るか不安だったのです。それでも朝食までにはまだ時間があるから、エアコンで冷やした書斎に入ってひと眠りする。女将に起こされて朝食を食べて、再び蕎麦屋に出掛けるのでした。

 朝の涼しさに比べると、9時過ぎではもう30℃はあるから、陽射しは強いのです。一昔前なら30℃といえば相当な暑さだったのに、今では朝の気温なのだから温暖化もここまで来ているのかと思う。人間の適応力もたいしたものなのです。自然界の生物はもっと様々な適応力を発揮しているのだろう。エアコンの効いた蕎麦屋に逃げ込んで、幟と看板を出してチェーンポールを下げる亭主。厨房に入って大根をおろし、皮を剥いた蓮根を輪切りにして酢水で茹でる。

 野菜サラダの具材を刻んで盛り付けが終わって、テーブルを拭いて回ったら、いよいよ開店の準備が整う。暖簾を出す前に暑いのに駅前から2kmの距離を自転車で常連さんがやって来た。何も言わずに店の新聞を読み始めたから、亭主も何も言わずにいつもの通り、辛味大根をおろして大盛りのせいろ蕎麦を茹でてお出しするのでした。ところがその途中で、カレーうどんの親父様のご夫婦が、今日は孫を連れてご来店。串焼きも三本ご注文なのでした。

 お客が昼食を食べに来る昼の一時だけ忙しい思いをしたけれど、その後はこの暑さではもうお客は来ない。早々に店じまいをして家に帰って冷えたコーヒーを飲むのです。女将がスポーツクラブから帰って西瓜を切ってくれた。エアコンを効かせてあった書斎でひと眠りしたら、今日こそはプールに出掛けようと、夕飯のおかずに五目あんかけを作って食べる。6時を過ぎてプールに行ってみるとやはり金曜日は空いている。ところがいざ泳いでみれば、左手の手首が痛くて堪らない。泳ぐ動作で手は複雑に動くらしいのです。早めに上がって、地階のスーパーで買い物をして家に戻るのでした。


8月3日 土曜日 やはり暑すぎてなかなかお客が来ない…

 夕べはウトウトしながらパリオリンピックの柔道の試合を最後まで見てしまったので、今朝は5時半起床で蕎麦に出掛ける。蕎麦は一回打つだけで好かったから、家に帰って久し振りに銅の鍋で出汁巻き卵を焼いたのです。これも来週の会食に出す予定の一品で、鰻と一緒に盛り付けようと思うのですが、しばらく使っていない鍋で上手く焼けるのかと心配したのです。もう一度くらいは練習して、お客に出すのに支障のないようにしておかなければいけない。

 食後はコーヒーを入れて飲むのも忘れて、再び蕎麦屋に向かうのでした。土曜日だから向かいのサツマイモ農園では朝市の準備で忙しそう。道のこちらから「暑いから大変ですね」と挨拶をすれば、若い皆さんは元気一杯。亭主も店の野幟を立てて、元気を分けてもらうのです。空は青く雲一つないので、熱い陽射しが朝からジリジリと照りつけてくる。足りなくなった小鉢になた漬けを盛り付け、大根をおろしたら、野菜サラダの具材を刻んで盛り付けるのです。

 朝市は午前中だけだから、お客が帰って片付けを始める頃に、蕎麦屋は暖簾を出すのです。平日は常連さんばかりだったので、今日はどんなお客が来るのかと待つけれど、午前中には誰もお客が来なかった。昼時になってやっとお客が入って、最初に仕事を終えたらしい宅配便のお兄さんが、カウンターのいつもの席に座るのです。続けて小さなお子さんを連れた女性ばかりの三人連れが、テーブルに座って注文をする。昼時がやや混み合うと言う程度なのです。

 年配のご夫婦が天せいろを頼まれたのを最後に、今日のお客は終わりなのでした。昨日よりも少しだけ多い客数でした。1時を過ぎていたので、洗い物を全部終わらせて、1時半には亭主も賄い蕎麦を食べてしまう。2時過ぎには女将を先に帰して、まな板の消毒を終えてエアコンを消したら、亭主も後を追うように帰るのです。家に着くまでにもう汗だくになる暑さ。エアコンの効いた書斎に入ってひと眠りするのでした。女将に起こされて夕飯の支度を始める。



8月4日 日曜日 早朝は23℃の涼しさ、日中は35℃の暑さで…

 夕べはオリンピックのテレビ観戦を早めに切り上げて、11時には床に就いたのです。今朝は5時に目が覚めて、コーヒーをゆっくり飲んで5時半に蕎麦屋に向かう。雲の合間から青空と陽の光が見えるのだけれど、ずっとこのままの方が涼しくていいかも知れない。今日は今シーズン始めての39%の加水で蕎麦粉を捏ねてみました。思ったほどは硬くはならずに、蕎麦玉にしてビニール袋に15分ほど寝かせておいたら、理想的な硬さになって打ちやすかったのです。

 加水率39%という記憶はこの時期のものだったのかも知れない。昨日の蕎麦と合わせて、今日は14食分の蕎麦を用意したのです。昼間暑くなればお客は来ないだろうけれど、日曜日だから馬鹿にしてはいけないと言うのが経験知。厨房に戻って夕べ遅くに来て漬けた糠漬けを取り出して、切り分け、小鉢に盛り付けておきます。このほかになた漬けがあるので、万が一にも10人を越えても足りる計算です。11時間でちょうど好い味になったので覚えておきたい。

 家に戻って朝食を終えたら、書斎に入って横になるけれど、眠ることは出来なかった。髭を剃って着替えを済ませたら、朝のコーヒーの残りを冷やしておいたので、居間で一服しながら再び出掛ける前の一休みです。外は青空が広がって熱い陽射しが照りつける。紅葉葵の最後の花が長く伸びた枝の先端に咲いている。家々の影を辿りながら歩くのだけれど、みずき通りを渡ればもう日影はないのです。蕎麦屋まであと100mというところで、汗がにじみ出てきた。

 9時前に蕎麦屋に着いたけれど、今朝はあまりすることがなかった。冷えたほうじ茶を飲みながら、タブレットで今日の天気と気温とを確認して、昨日のブログを読み返すのです。残り一つになった蕎麦豆腐を最初に仕込んで、大根おろしを作り、ポットに湯を沸かして新しいほうじ茶を入れておきます。店の中は早朝からエアコンを入れておいたから、24℃と快適だったのですが、時間と共に28℃まで上がって、調理を始めたら厨房は30℃を越えた。

 20分も前に駐車場に入って玄関を開ける男性がいたから、「まだ始まりませんけれど、中でおやすみ下さい」と言って座ってもらうのです。女将もやっと現れたのでお茶だけはお出しする。この暑いのに、鴨せいろの大盛りを頼まれたから驚いた。他にお客もいないから、じっくりと鴨を焼いてお出しするのでした。今日は男性の一人客が多く、最後に小さな子供を連れたご家族がいらっしゃる。客の帰ったのが閉店の時間で、洗い物を済ませて3時近くに帰宅するのでした。家に着いたら冷えた部屋で冷たい桃を剥いてもらう。


8月5日 月曜日 気温は下がらないけれどお客は増えて…

 今朝も5時には目を覚ましていたけれど、コーヒーを入れてゆっくりとしていました。6時前に蕎麦屋に出掛けて、蕎麦打ち室に入って蕎麦粉を捏ねる。このところ加水率39%でちょうど好い硬さの生地が出来ているので、今朝も包丁切りは気持ちの好い仕上がり。厨房に戻ってカウンターに干してある盆や蕎麦皿を戸棚に片付けるのでした。今日も空は青く雲一つない晴れの天気。7時前だったから、コンビニまで車を走らせ、煙草を買って家に帰る。

 台所に入って、今朝も今週の会食の日に出す出汁巻き卵を焼く練習をするのでした。隣で見ていた女将が「この間よりも綺麗に出来たわね」と喜んでくれた。この間は、砂糖を入れるのを忘れていたので今日は塩味だけではない。女将が隣の火口でナス焼きをして、お新香と焼き鱠とを合わせて今日の朝食になるのでした。会食の日の料理のことを考えていたら、食後のひと眠りを忘れてしまった。頭が働いていると眠くならないらしいのです。

 紫色の木槿の花が今朝は顔を揃えて亭主を見送ってくれた。のんびり歩いて行ったから、蕎麦屋に着いた時には、もう宅配便の不在通知がポストに入れられていた。今日は蕎麦粉が届く日だったのです。すぐに電話をしたけれど繋がらず、向こうから電話がかかって来たので助かった。今年は生育の遅かった春蕎麦の粉がやっと到着したのでした。今週末からは店で出せそうです。看板と幟を出し、チェーンポールを降ろして、厨房に入るのでした。

 朝は24℃だった厨房の温度計も、時間が経つにつれてどんどん上がって昼の時点で31℃にまでなったから、外は相当の暑さなのでした。野菜サラダの具材を刻んでいつもの通り3皿盛り付けておく。昼前に常連さんが「暑い暑い」と言いながら歩いていらっして、ビールとカレー蕎麦の大盛りを頼まれる。ちょうど出来上がった頃に今度はご夫婦が車でご来店で、天せいろとおろし蕎麦。作業着姿の3人連れの男性達には、少し待ってもらってお茶だけお出しする。

 そして、何時の間にか玄関からもう一人現れて「忙しそうだったから声を掛けませんでした」と男性が、カウンターに座って鴨せいろをご注文なのでした。厨房はもう忙しくて大変です。亭主一人だから、調理をしながらお茶を出すタイミングが難しい。お客は注文さえし終われば安心して待ってくれる。盆と蕎麦皿に薬味とお新香と蕎麦汁を並べたら、天麩羅を揚げては蕎麦を茹でる事の野繰り返し。タイマーが壊れているので今日は目で見て蕎麦を上げる。

 二度目に蕎麦が浮いてきたら大体40秒なのです。水で洗って氷水で締める。最後のお客だけ残して、他の皆さんはお帰りになる。と「せいろ蕎麦を追加して下さい」と鴨せいろを食べていたお客が言うものだから、「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、蕎麦を用意する。7人で8食分の蕎麦が出た計算になる。大盛りも出ているから今日用意した蕎麦は後一食分だけになったのです。ちょうど天麩羅の具材も切れて、区切りが好かったから閉店にした。今日は今週一番の混みようなのでした。洗い物を片付けるのが大変で、賄い蕎麦を食べてひと休みしたら、4時近くまで頑張ってやっと帰宅する。


8月6日 火曜日 昨日の疲れが残っていたのか今朝は朝寝坊…

 女将に起こされて目覚めた朝。夕べは男子のバレーボールを観てしまったので、寝るのが遅くなったのです。今日は普段の仕入れ以外に、明日の会食の仕入れもしなければいけない。お袋様に電話をして迎えに行くと、「暑いねえ」というのが最近の挨拶代わりなのです。農産物直売所に行けば、帰りがけに顔見知りの農家が紫蘇の葉を持って来たからもらって、隣町のスーパーに向かうのでした。いつも朝から混んでいる駐車場は、出る車があったので助かった。

 店に帰って冷蔵庫に食材を収納したら、明日使う食器を確認しておく。そして、大根を一本切り分けて、なた漬けにするのに塩をまぶして漬け物器に漬けておくのです。向かいのサツマイモ農園ではいつものメンバーが集まって、新しく建てたテントの中で話をしているらしかった。電気を引くためか工事の車両が蕎麦屋の駐車場の向かいに止まっていたので、片側通行でなかなか出られなかった。桃や梨や西瓜を持って家に帰れば女将が出迎えてくれるのです。

 昼飯は昨日残った野菜サラダを食べるために、海鮮ミックスやキクラゲを買って来て、亭主が台所に立って五目あんかけ焼きそばを作る。堅焼き蕎麦の好きな女将のために、強火で蓋をして焦げるまで麺を焼くのが我が家の流儀。腹が一杯になったらすぐに眠くなるから、亭主はエアコンを入れた書斎に入ってゆっくりと昼寝をするのです。スポーツクラブの予約の時間になると、仕事部屋で書を書いていた女将が心配で起こしに来るのです。

 午後も遅くなった頃に、蕎麦屋に仕込みに出掛けて、最後にぬか漬けを漬けて家に帰って来る。2時間ほどの間に、午前中に塩漬けにしておいた大根を、柚子や甘酒の素を入れて漬け直し、明後日の天麩羅の具材を切り分けて、冷蔵庫に入れてくるのです。明日は、前菜の三種盛りから始まって、酢の物、刺身、焼き物、揚げ物、蕎麦、デザートなど8種類の料理を作る予定。出汁を取って蕎麦汁を作り、蕎麦を打たなくてはならないので、朝は早くから出掛ける。


8月7日 水曜日 休日なのに久し振りに宴会が入って…

 朝の5時前から起き出して、蕎麦屋に出掛ける定休日。近所の親父様に頼まれて暑気払いの宴会を引き受けたのでした。定番の料理ばかりを作る日常とは違うのが魅力だったのです。午後の4時からだったから、昨日のうちに今週分の仕入れと合わせて、食材を揃えておくのでした。8種類のメニューを一つずつ人数分だけ用意しておかなくてはならないから、朝一番に昨日漬け込んだなた漬けを器に盛る。出汁を取って蕎麦汁を作るのは、昨日のうちにも出来た。

 そして、肝心の蕎麦を打っておかなくてはならない。39%の加水率で13人分の蕎麦を打ち、生舟に入れて冷蔵庫に保存しておくのでした。ここまででもう朝食の時間になったので家に戻るのでした。食後も今朝は30分も休まないうちにまた蕎麦屋に出掛けていく。やることが沢山あって、どうしても午前中には、事前に出来ることをし終えたいと思うのです。10人分の皿をそれぞれの料理に合わせて用意したり、飲み物のグラスも洗ってカウンターに並べておく。

 デザートの水羊羹を仕込んだら、付け出しに作る枝豆を茹でて皮をむく。これが結構大変で、根気の要る仕事なのでした。小鉢と三種盛りの付け出しが出来たら盆に載せて冷蔵庫に入れ、大根のツマを作って鯛と鮪の刺身を、大皿二つに切って盛り付ける。ここまで終えたところで家に戻ってひと休みするのでした。昼の食事を作る暇が惜しいので、今日はコンビニでパンと牛乳を買って蕎麦屋で食べる。刻々と時間が迫ってくるから、事前の段取りを考える。

 女将がスポーツクラブに出掛ける前に、テーブル席を合わせて10人分の席を作って、箸とおしぼりやグラスを置いてくれた。後は付け出しの三種盛りや刺身の取り皿などを並べて、帰って来た女将が来てくれたところで刺身の大皿を二つ出す。4時前にお客がやって来た、定刻通りに暑気払いの会は賑やかに始まったのです。思ったよりもビールや日本酒・焼酎が出て、80歳前後の老人の集まりとは思えないほどの元気の好さなのでした。
 亭主は出汁巻き卵や鰻を焼いて器に盛り付けたり、天麩羅を揚げたりと忙しい。女将はビールを運んだり、空いた皿を片付けたりと休む暇もなかったのです。最後に蕎麦を茹でて蕎麦湯を作り、デザートの水羊羹を出してちょうど予定の二時間が終わったのでした。後の片付けをしていて驚いたことに、何も残っていなかった。元気な老人達にこちらも元気を貰い、後片づけをし終えて家に戻ったのが8時前なのでした。女将は一足先に家に戻って疲れた様子。


8月8日 木曜日 昨日の疲れか、今朝は辛かった…。

 夕べは早くから床に就いたので、夜明け前に目が覚めてまだ薄暗い時間に蕎麦屋に出掛けた。洗ってカウンターに干した沢山のグラス類を戸棚に片付けて、今朝の蕎麦を打つのが一番の仕事。やっと明るくなった頃にグラス類の片付けが終わり、6時過ぎには蕎麦も打ち上がって家に戻るのでしたが、まだ朝飯の時間に早いのです。エアコンの効いた書斎に入り、横になってひと眠り1時間。女将が起こしに来て朝食を食べたら、また書斎でひと眠りするのです。

 今朝はいつもよりだいぶ遅く9時半過ぎに家を出て、幟と看板を出してチェーンポールを降ろすのでした。隣のひまわり畑にやっと花が咲いてきたのでいかにも夏らしい。でも、もう暦の上では立秋なのです。家を出るときに珍しくシオカラトンボが庭に来ていた。力尽きた蝉の死骸も道路で見かけた。子どもの頃の季節感は、細かな所で今では随分と変わったように思える。今日は気温はいつもよりも低く、30℃ちよっとだが湿度か高いのか随分と蒸し暑い。

 昼を過ぎてやっとお客がやって来て、鴨せいろと天せいろのご注文なのでした。母と息子らしく話をしながら、ゆっくりと食べて帰られた。昨日の疲れを残したまま、女将と二人で早めに暖簾を下ろして家に帰るのでした。昼に降った雨がまだ家の木槿の花に雫を残していた。書斎に入って横になったら、業者の来るのも忘れて夕刻までぐっすりと寝込んでしまう。来週が盆休みで注文が多かったらしく、6時過ぎに食材を持って店に来たのでした。



8月9日 金曜日 湿度がもの凄くてとても暑く感じた日…

 朝の5時前に蕎麦屋に出掛け、隣のひまわり畑を眺める。昔、お爺さんが植えていた大輪のひまわりではなく、花の大きさが小さいので、地面に立っていてはなかなか全体を見渡せない。花の種類が違うのだろうか。厨房に入って、まずは冷蔵庫から糠床を取り出して、切り分けて小鉢に盛り付ける。6時を過ぎてやっと蕎麦打ち室に入り、今朝の蕎麦を打つのでした。加水率は39%だから、今日も少し硬い生地の仕上がり。伸し広げるのに時間がかかった。

 その日その日によって随分と感触が違うから、生地を真四角に仕上げるのがなかなか難しいのです。今日はちょっと硬すぎて、真ん中の部分が最後に飛び出してしまった。それでも硬い生地だから、八つに畳んで包丁切りの時には上手い具合に包丁が進むのです。蕎麦打ちを終えたらもう7時を過ぎていたから、今日は随分とゆっくりと仕事をしたのです。家に帰って女将の用意した朝食を食べて、エアコンの効いた書斎でひと眠りするのでした。

 9時になる前に家を出てみずき通りを渡れば、陽射しは相変わらず強いけれど、吹く風が幾分涼しく感じられる。これが秋の気配なのだろうかと思いながら、蕎麦屋に着いて幟と看板を出す。エアコンの効いた店の中は24℃で、生き返るような涼しさなのです。予報では今日は午後で33℃止まりだから、気温はこのところの猛暑に比べれば少し低い。ただ店の中の湿度計は60%を表示していたから、湿度のあるせいで暑く感じられるのだろうと思う。

 いつものように大根をおろして、ブロッコリーとアスパラガスを茹で、野菜サラダの具材を刻み始めれば、今日は少し時間が早いのか、10時半になる頃には野菜サラダが出来上がってしまった。空いた時間で、解凍してあった豚のハラミを切って串に刺しておく。大釜の湯をポットに入れ、油を天麩羅鍋に入れて、天つゆの鍋を隣の火口に掛け、テーブルを拭いて回ったら、開店の準備は整う。厨房のカウンターに置いてある温度計では徐々に室温が上がっている。

 隣のひまわり畑を窓から眺めれば、少し高い位置だから花が咲いているのが見える。これが一面に咲き広がるのはいつのことか、残暑見舞いの写真に撮ろうと考えているのです。暖簾を出せば、大きなランドクルーザーが入り口付近に縦に止めてしまったから、他の車が入れないからと場所を変えてもらう。天せいろのご注文の男性は、テーブルに座って本を読んでいた。小さな車で若い女性がやって来て、カウンターに座ってやはり天せいろをご注文なのでした。

 12時半を過ぎた頃に、ご夫婦でいらっした年配のお客がテーブルに座って、天せいろの大盛りとぶっかけ蕎麦を頼まれる。食べ終わる頃になって、最近の暑さは昔と違うと言う話になって、しばらく会話をするのでした。昨日よりは多い人数だけれど、亭主一人の営業ではこのペースが忙しさがなくてちょうど好い。洗い物を終えて家に帰って車で蕎麦粉の代金を振り込みに行く。帰って来たら、女将もちょうどスポーツクラブから戻っていたのです。