2023年10月末


10月28日 土曜日 久々の週末気分で蕎麦が出る…

 6時過ぎに蕎麦屋に出掛けて、夕べ漬けておいたお新香を糠床から取り出すのでした。お新香を切り分けて小鉢に盛り付けていたらトントンと窓を叩く音がする。見れば犬の散歩で蕎麦屋の前を通った弟が笑っていた。玄関に出て、「昨日も通ったときに厨房から手を振ったけれど、気が付かなかったね」と言えば、「太陽の反射で中が見えなかった。お袋様の家に行ったんだよ」と応える。近くに住んでいれば何かと行き来があって、年寄りも喜ぶだろうと思う。

 蕎麦打ち室に入って今日の一回目の蕎麦を打っておきます。昨日の蕎麦もほとんど残っていなかったので、週末の今日はいつもの倍近く数を打たないといけない。一度に二回打つのは疲れるし、蕎麦の仕上がりにも影響するから、二度に分けて打てば、質の高い蕎麦が出来ると考えたのです。残れば明日の日曜日にも使えるし、何処かで二回打たないと週末は足らない。7時を少し過ぎてしまったけれど、家に戻って女将の作った朝食を食べる。

 割ってしまったと言う小さな茶碗がなくなったので、家にあるお茶漬け用の茶碗を使っているから、どうしてもご飯の量が多くなるような気がする。豚汁と茄子とピーマンの味噌炒めがおかずだったけれど、女将は炒め物に水溶き片栗粉を使わないから、どうしても仕上がりの見栄えが悪い。亭主なら砂糖を少々入れて水溶き片栗粉で仕上げるから、見た目も味も好くなるのです。長年の主婦の経験が、10年ほどの経験の調理師の言葉を聞き入れないのです。

 朝食を終えたら洗面と髭剃り、着替えを済ませて今朝も早めに家を出る。二回目の蕎麦打ちが気になっていたのです。早朝と同じ加水率だったけれど、少し硬めに仕上がったので何度も捏ねてやっとちょうど好い硬さになるのでした。朝と昨日の残りの蕎麦と合わせて、15食半の蕎麦を用意して今日が始まる。野菜サラダの具材を刻んでいつも通り三皿盛り付けて、時間があったので解凍してあった豚のハラミを切り分けて、串に刺しておくのでした。

 今日の一番乗りは中学生になった例の少年でした。相変わらず無口で、こちらが話ても言葉少なげに応えるだけ。それでも随分と身体が大きくなって、出した料理はすべて綺麗に食べて帰った。彼が来た日はお客が続くというのが亭の伝説で、今日もその後、続々とお客が来たのです。キノコつけ蕎麦が三つに鴨せいろの大盛りが二つ、温かい汁の注文が多いのは、やはり季節なのでしょう。2時半には家に帰り、夜は防犯パトロールに出掛けて4km歩く。




10月29日 日曜日 小雨がぱらつき涼しすぎる日だったのに …

 夜の防犯パトロールで疲れたのか、帰って来て飲んだ酒が効いたのか、夕べは10時にはもう眠くなって床に就いた。それが好かったのか今朝は4時にはもう目が覚めて、まだ暗いうちに蕎麦屋に出掛けるのでした。寒くなって暖かい汁ばかり出るから、二番出汁がなくなったのです。今日も昨日よりも寒いというから、1時間かけて一番出汁から蕎麦汁を作り、二番出汁から天つゆを作りました。少なくなった小鉢には大根のなた漬けを盛り付けておく。

 作業が終わって家に帰る頃に、やっと東の空が白んで来ました。6時前にもう一度床に入って熟睡していたら、7時過ぎに女将が起こしに来てくれた。朝食には亭主の好物の銀ダラの煮付けに、暖かい豚汁が付いた。食べ終えてまた眠くなったけれど、今度は我慢して洗面と着替えを済ませる。表の通りを掃きに出た女将が、「雨が降っているわ」と言って玄関に入ってきた。傘を差して蕎麦屋に行くのは嫌だと思っていたら、亭主の出掛ける時には雨は止んでいた。

 看板と幟を出してチェーンポールを下げたら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。この寒さではお客が期待できそうにもないので、昨日、残った蕎麦に5食だけ打ち足して、今日は11食半の蕎麦を用意したのです。打つ数が少ないと集中力が途切れないので、加水率はいつもと同じだったけれど、いつもよりしっかりとした蕎麦が仕上がったような気がする。蕎麦を打ち終えた頃に女将が傘を差してやって来て、「今日は寒いからお客は来ない」と言う。

 雨はシトシトと降り続いているのです。電話が鳴って「予約できますか」と言うから、「小さな店なので予約はやっていません」と応える。「11時半から営業をしていますので、宜しければどうぞ」と言うのが精一杯の応対なのです。昼前に老夫婦がお客が見えたから、「お電話をくださった方ですか」と尋ねたけれど違うお客なのでした。せいろ蕎麦の大盛りとヘルシーランチセットの天せいろをご注文。そうしている間に電話の主がご夫婦でいらっしゃる。

 もう一つのテーブルに座って、ぶっかけ蕎麦と鴨せいろを頼まれる。今日は蕎麦屋本来の姿なのか、年配のお客ばかりなのでした。この寒い雨の中を蕎麦屋に来て昼を食べるというのは、やはり蕎麦が好きでないとなかなか出来ないこと。美味しかったと言って帰られるのを、亭主と女将も「有り難うございました」と嬉しく思うのです。蕎麦湯が綺麗に飲み干されているのが何よりの証拠です。駐車場の車がなくなったからと、先週もいらっした老夫婦がご来店。

 車がなくなるまで近くで待っていらっしたとか。先週と同じく天せいろとカレーうどんを注文なさる。奥様は「ここのカレーうどんが美味しいのよ」と最後にデザートの水羊羹まで頼まれる。ご主人は天麩羅を食べたらもうおなかが一杯になったとみえて、お蕎麦を半分残された。外は20℃にならないこの寒さの中を、よくぞ来て下さったと、女将と二人で「有り難うございました」と見送るのでした。2時半には家に戻って女将が剥いてくれた柿を食べる。


10月30日 月曜日 朝から晴れて心地よい秋の日和でした …

 みずき通りを登り切ったところにあるハナミズキの木が、青空に映えて見事に紅葉していました。この先のバス通りを右に折れたらもう蕎麦屋はすぐそこ。今朝は蕎麦粉が届くので早めに出掛けてきたのです。蕎麦屋は団地の外れだから、早いときは一番で届けてくれる。幟と看板を出してチェーンポールを降ろし、昨日の洗い物を片付けたら、9時少し前に宅配便のトラックが止まったのです。新蕎麦は少し遅れていると言うから、まだ去年の秋の蕎麦です。 

 蕎麦打ち室の冷蔵庫にいれるついでに、天ぷら粉も箱から袋を取り出して隣の冷蔵庫に入れておく。今朝も加水率41%でしっとりとした生地を仕上げ、月曜日だからと9束の蕎麦を用意しました。10時前には蕎麦を打ち終わって、厨房で大根をおろしたら、野菜サラダの具材を刻みます。蓮根が足りなくなるといけないと思って、野菜籠に残っていたものを皮を剥いて酢水で茹でておく。残れば木曜日にも使えるので、無駄にはならないのです。

 開店の準備は11時前に終わり、最後にアルコール除菌液でテーブルを拭いてまわる。外は晴れて青空が広がり、気温は低いけれど好い天気なのでした。暖簾を出したら10分ほどで、4人のお客が入ってまだスタッフも来ていないので、亭主がお茶を出して注文を聞いて回る。天せいろとヘルシーランチセットの天せいろと、晴れた日の常で天せいろが売れるのです。二人分ずつ盆と皿を並べて天麩羅を揚げているうちに、スタッフが来てくれたので助かった。

 習志野からいらっした常連さん母娘は、お孫さんの幼稚園が終わるまでに帰らないとと早めに帰られた。テーブル席に一人で座った女性客、一人ずつカウンターに座られたお客の一人は自転車で来た女性で、「本格的な蕎麦屋に来られて嬉しい」と山葵や天麩羅まで褒めて帰られる。今日は最初の常連さん以外は、皆さんお一人でのご来店なのでした。1時半には最後のお客も帰って、洗い物はまとめて亭主が洗い始める。天せいろばかりなので楽なのでした。



10月31日 火曜日 今日も秋晴れ、日中は暖かく …

 夕べは何故か9時過ぎにはもう眠くなって、床に入ったのは好いけれど、1時半頃に目が覚めて居間でテレビを観る。最後の一本の煙草を吸って、また眠るのでしたが目覚めれば6時前。最初に煙草を買いにコンビニに出掛けて、蕎麦屋に着いて駐車場の剪定に取りかかるのでした。細い枝の密集するアベリアホープレイズは、簡単に剪定が出来ると思っていたら、隣のヒイラギナンテンに比べて、枝の細い分、大変なのでした。30分ほど格闘してやっと半分。

 家に戻って朝食を食べたら、今朝は書斎でひと眠りする。お袋様との仕入れの時間には間に合って、農産物直売所へ出掛ければ、最近は開店時間が過ぎた頃から、随分とお客が多くてレジに並んだ。野菜類がスーパーでも値上がりしている影響なのだろうか。亭主も生椎茸や大根などの他に、ナスやピーマン、キャベツにレタスなど普段は買わない野菜まで買って、何と4000円。隣町のスーパーでも1万円を超える仕入れだったから、大変なのでした。

 大根のなた漬けの準備だけして、11時過ぎに家に戻ったけれど、女将はまだ買い物から帰っていなかった。書斎のパソコンに向かって今日の仕入れの入力をすれば、今月は食材の仕入れに10万を越える金額を使っていると判る。いつもと同じ感覚で買っていては、赤字になるのが当然という金額なのです。昼はカレー炒飯にして、三ツ葉や掻き揚げに使う玉葱や人参のスライス、天麩羅用のピーマンなど、スープを含めて蕎麦屋で残った野菜類を消化するのでした。

 女将のスポーツクラブの予約開始の時間まで、彼女が稽古場で書を描いている間に、書斎に入ってまたひと眠りする亭主。これが定休日の特権なのですが、今日はなかなか起きられずに、10分前に女将が起こしに来てくれたのです。3時前には蕎麦屋に出掛け、なた漬けを漬け直して、切り干し大根の煮物を作り、先週は随分と出たカレーライスの具材を刻んで煮込んでいきます。4時半近くにすべて終わって家に戻れば、女将が台所でもう夕食の支度をしていた。

 先週は蕎麦屋でナスが沢山余ったので、ナス焼きばかりではとチーズを載せてひと工夫。昨日、農産物直売所で買って帰った里芋を茹でて衣かつぎ。雨唐辛子と豚のハラミを焼いて酒の肴ばかりが並ぶから、亭主は焼酎を用意して嬉しく飲み始めるのでした。明日も穏やかな天気が続くと言うから、朝飯前のひと仕事に今日の続きで駐車場の剪定をしようか。風呂に入りながらそんなことを考えて、昨日、床に入った時間になる。横になれば直ぐに眠れるけれど…。