10月5日 木曜日 寒い一日、お客も少ない …

蕎麦打ち室の室温は21℃、湿度が70%。8人分750gの蕎麦粉を濾し網で篩に掛ける。この温度と湿度でどれだけの加水をしたら好いのかは、もう分からない状態なのです。室温が低ければ水は多めなのだけれど、湿度が高ければ、それだけ水を減らさなくてはならないからです。最近の加水率は41%だから、取りあえず今朝も同じ加水率で蕎麦粉を捏ね始めたのです。それが功を奏して、少し硬めで力が入ったけれど、上手い具合に仕上がったから好かった。

菊練りにして蕎麦玉を寝かせている間に、厨房に戻って薬味の葱を刻み、大根と生姜をおろして、YouTubeで中島みゆきの曲を聴きながら一服する。「風の中の昴、砂の中の銀河…」と一見意味不明な歌詞が続いているのだけれど…。時計を見ながら蕎麦打ち室に入り、蕎麦玉を伸して畳んで包丁打ち。生地が硬いから綺麗に均等な幅で蕎麦が仕上がるのでした。この涼しさではお客もあまり期待できないから、今日は8食の蕎麦を用意しての営業です。

お彼岸を過ぎて、このところ涼しい日が続いているから、先週も20人ほどしかお客は来なかった。例年の事ですが、涼しい気温に慣れてこないと、どうしても蕎麦を食べようという気にはならないらしいのです。今日も暖簾を出してもすぐにはお客は来ないのです。亭主は野菜サラダを盛り付けて、新しい天麩羅油を鍋に入れたり、天つゆを温めたりして準備だけはするのでしたが、昼を過ぎるまではお客が来なかったのです。手伝いに来た女将も手持ちぶさた。

やっといらっした熟年のご夫婦が、鴨せいろとヘルシーランチセットのご注文で、サラダとデザートの水羊羹が出たのが好かった。しかし、それっきりお客は来なかったので、1時半を過ぎたら亭主は賄い蕎麦を茹でて食べる。今日の蕎麦は硬くてとても美味しかったのです。2時前に女将は家に帰り、亭主も後の確認を済ませて彼女の後を追う。今日は皮膚科の医者に言って薬をもらわなければならなかった。暑かったから汗をかくので頭に湿疹が出来るのです。

10月6日 金曜日 晴れ間が出たと思ったら、お蕎麦売り切れ …

午前6時の日の出。駐車場の剪定を少しだけしたのですが、ビニール袋八分目でもう疲れてしまった。紫陽花の花を切り、ヤマボウシの出っ張った枝を落として、ヒイラギナンテンの伸びた部分を切り取った。金木犀に辿り着くのは次の定休日だろうか。厨房に入って小鉢を盛り付け、洗濯物を干したら今朝はもうすることはなかったのです。家に戻って書斎に入って、またひと眠りすれば、女将が「ご飯が出来ましたよ」と起こしに来てくれた。

とても寒い朝だったけれど、空は青く雲一つないのです。日中も気温が上がらずに北風か吹くと言うから、今日のお客は多いのか少ないのか、日曜日に打つ蕎麦粉がもうなくなりそうだったので、蕎麦粉の注文をして、明日届くようにお願いしたのです。スポーツの日があるので三連休だけれど、後半は雨が降りそうで、なかなか難しい。取りあえず今日は5人分を打って昨日の残りと合わせて10人分の蕎麦を用意したのです。それが見事になくなったから不思議。

平日にそんなにお客が来るとは思えなかったけれど、加水率41%で少し硬めの生地を仕上げる。室温はなんと21℃と今までになく寒いのです。お蔭で蕎麦は綺麗に仕上がって、包丁切りの際にもトントントンと、とても心地よい音が響く。切りべら26本で140gの蕎麦をキッチンペーパーに包んで生舟に並べる。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、大根をおろして、天麩羅の具材を調理台に並べたら、時間が早かったので豚のハラミの串刺しを始めるのでした。

大釜のお湯も沸いてポットに湯を入れ、暖簾を出そうと思って、玄関を開ければ電気の検査を再来週にしたいのですがと、若い青年がチラシを配っていた。ついでに蕎麦を食べたいのですけれどと、今度はお客になって本日の一番乗りなのでした。それからが今日の大変なところ。僅か一時間の間に9人のお客がいらっして、昼前にスタッフがやって来て助けられる。12時半に最後のご夫婦が入って蕎麦売り切れなのでした。しかもご主人はせいろ蕎麦を二つ。

クーラーを入れずに涼しい店内だったのに、外は晴れて気持ちの好い天候なのでした。前半はそれなりに注文を受けてすぐに出せたけれど、後半は天せいろが続いてすぐには調理が終わらない。カウンターに座った最後のご夫婦に配膳できたのが1時前なのでした。せいろ蕎麦二つは多いのではと思ったけれど、蕎麦が好きらしく、小鉢も美味しかったと綺麗に食べて帰られた。会計をした奥様も、真顔で美味しいお蕎麦でしたとおっしゃってくれて嬉しかった。

こんなに早く売りきれになるとは思ってもいなくて、亭主の食べる賄い蕎麦も残っていない。二組ほど後からいらっしたお客には、申し訳なかったけれど売りきれですとお断りしたのです。早めに後片づけを済ませて家に帰る。まずはひと眠りしてそれから遅い昼食を食べる。そして、夕刻に蕎麦汁の補充とお新香を漬けるために、また蕎麦屋に行くのです。6時半になったところで、今週三日目のプールに出掛けてひと泳ぎです。金曜日は空いているのです。
10月7日 土曜日 朝は13℃まで気温が下がって …

晴れる土曜日とあって、蕎麦も小鉢も残っていなかったから、6時前に蕎麦屋に出掛けたのです。夕べ漬けたお新香を取り出して、小鉢に盛り付けたら、室温19℃の蕎麦打ち室に入って、一回目の蕎麦を打つ。キュウリもナスも大きくなったものだったから、小鉢は14鉢も取れて、明日までは大丈夫そうな数なのでした。湿度が35%だったから、大丈夫かとは思ったけれどいつもと同じ41%の加水で蕎麦粉を捏ね始めるのでした。やはり硬いけれど頑張って捏ねる。

最近は蕎麦が硬くて美味しいと言うお客が多いので、亭主も調子に乗って硬い蕎麦を打っているのだけれど、到底1kgの分量では捏ね上げるのに時間がかかる。両掌に納まる750gでちょうど好いのです。それでも少し時間がかかって、煙草を買いにコンビニに寄って家に戻ったのは7時半近かった。待ちかねていた女将がすぐに味噌汁とご飯を運んでくれて、無事に朝食を終えるのでした。食後は書斎に入ってひと眠り。今日は8時半まで眠ってしまった。

9時に蕎麦屋に着いて、看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろす。すぐに蕎麦打ち室に入って二回目の蕎麦を打つ。蕎麦粉は600gだけ打つ分しか残っていなかった。蕎麦を打ち終わったところで、宅配便が蕎麦粉を届けてくれた。タイミングは好かったけれど、14食分打ったから、もうこれで好いだろうと厨房に入る。それにしても店内は21℃とこれまでにない涼しさで、外はもっと気温が低いのだろうと思われる。陽射しはあるけれどお客は来るのか。

女将の三年日記によれば、去年も急に涼しくなった時期には、極端にお客が減ったのだと言う。これにしては平日の昨日は何だったのだろうか。果たして、1時近くまでお客は来なかったけれど、隣町の常連さんがご来店。久し振りに来たというご夫婦は、ヘルシーランチセットのご注文で、野菜サラダと蕎麦豆腐と水羊羹が捌けたので好かった。すぐに、駅前のマンションに住む常連さんがいらっして、ビールとハラミの串焼きに赤烏賊の天麩羅を頼まれる。

焼酎ライムの炭酸割りも頼まれて、最後にせいろ蕎麦を食べて帰られた。家まで歩いて2km近くあるから「お気を付けて」と声を掛ける亭主と女将。昼になっても蕎麦屋の中は24℃までしか室温が上がらなかった。外は北風で22℃までしか上がらない。晴れていてもこの寒さがやはりお客の足を遠ざけているのだろうか。家に戻って林檎を剥いてもらって、亭主は書斎に入ってひと眠りする。明日の朝は、家のスモモの上に伸びた枝を落とす予定です。

10月8日 日曜日 今朝もかなり寒かったけれど、満員御礼 …

夕べは9時半に床に就いたのに、夜中に目を覚ましたから、朝は眠かった。朝食を終えて早めに蕎麦屋に出掛け、幟を出したら蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。昨日の蕎麦がだいぶ残っていたから、今朝は500gだけ打って13食分の用意でした。昨日お客が少なかったので、更に気温の低い今日はどうかと思ったけれど、さすがは日曜日とあって、10人を越えるお客が入ったのです。朝の店内は18℃とこれまでにない寒さだった。外は12℃まで下がったとか。

途中、陽が差したから少しは気温も上がったのでしょうが、日中も22℃を越えることはなかったのです。家の近所のご夫婦が、買い物に出掛ける途中で通りかかり「何時までやつているのですか」と聞いて言ったので「2時までですよ」と応えれば、昼前にお二人揃っていらっした。最初のお客はヘルシーランチセットのせいろと天せいろで、出だしから今日は快調でした。カレーうどんの小父さんが今日も一人でやって来て、豚のハラミの串焼きとデザート。

今日はサラダもデザートも売り切れたので嬉しかった。1時前に一旦、客足が止まって今日はこれでお終いかと思ったら、電話が入ってこれから4人で行きたいのですがと言う。蕎麦はまだ残っていたから受けて、到着までに天麩羅の食材などを用意しておいた。ところが前にも来たことがあるご家族らしく、せいろ蕎麦の大盛りと普通盛りと白エビのかき揚げを二人前に、かけ蕎麦とお婆さんがキノコ蕎麦をご注文。蕎麦を茹でるのに、亭主は気合いを入れる。

剪定した玄関脇の紫陽花とヒイラギナンテンが短くなったので、真ん中にある馬酔木が陽を浴びる。春に咲く花なのに、もう花芽が房になって垂れ下がっているではありませんか。3時までかかって女将と洗い物や片付けをして、家に帰れば亭主は書斎に入ってひと眠りです。5時過ぎまでぐっすりと眠って、夕食の食卓につく。夜のアルゼンチン戦のために酒は飲まずに、ご飯をもらうのでした。明日は朝から雨で寒い一日になりそうなので、休日でも心配です。

10月9日 月曜日 終日の冷たい雨で …

今日は朝も猛烈に寒かったので、暖房を入れて居間の部屋を暖める。外は11℃ほどだけれど、夏の暖かさになれた身体には耐えられないのです。コーヒーを入れて飲み終えたら、今朝はくるまを出して蕎麦屋に出掛けるのでした。どうせお客は来ないだろうけれど、開店の準備をしなくてはならないのです。店の中は18℃と今までになく寒いので、こちらも暖房を入れて温める。蕎麦打ち室も19℃だったけれど、昨日の蕎麦が残っていないので新しく蕎麦を打つ。

750gの蕎麦粉を41%の加水で捏ねて、しばらく寝かせた後で地伸しを始めるのです。しっかり捏ねて蕎麦玉にした蕎麦を打つには、この地伸しの段階からもう真剣勝負。両掌で均等の厚味になるように、そして正円になるように押し込んで、伸し棒で丸出しに入るのです。上手く伸せないと綺麗な四つ出しも出来ない。伸し棒を転がすにも。両手の圧力が上手く伝わるように調節しながら転がすのです。今朝は一連の作業が上手く終わって綺麗に畳むことが出来た。

八束の蕎麦を生舟に並べて、降りしきる雨を眺めれば、上手く仕上げた満足感と共に、お客が来ないだろうにという空しさがこみ上げてくるのです。野菜サラダもいつもと同じく3皿盛り付けて、これもそのまま家に持ち帰ることになるのかと思うと、ちょっと寂しいのです。女将が来て暖簾を出してもお客は来るはずもない。雨が強く降りだして、床の汚れ落としを終えた女将は、店の新聞を読み出す始末。亭主は溜まった段ボールの箱を潰して紐で縛っておく。

1時を過ぎても雨は強くなるばかりで、到底、お客は来そうにないのでした。最低限の洗い物を覚悟しして、賄い蕎麦を茹でて食べる。好く噛まないと食べられないほど、コシのある美味しい蕎麦なのでした。いつもと同じ加水率で、いつもと同じ40秒の茹で時間なのに、何故か最近は硬い蕎麦に仕上がるのです。これも経験がなせる一つの進化なのか。洗い物もないから、後片付けも楽ちんでしたが、月曜日は家に持ち帰る物が多いから、車で来て好かった。

10月10日 火曜日 何年かぶりで夫婦で買い物に街へ …
今日は天気も回復したので、朝はいつもと同じようにお袋様と仕入に出かけ、蕎麦屋に戻って野菜類を冷蔵庫に収納したら、急いで家に帰るのでした。午前中に女将を連れて船橋まで車で出掛け、すり切れてきたウォーキングシューズを新調した。古くからのデパートの良い点は、売り場が変わらない場所にあり、以前と同じ対応をしてくれるところ。履いていった古い靴と同じ物をと頼んだら、さすがにそれはなく、新しい形でちょうど好いものを選んでくれた。

このご時世だから、靴の値段も5割近く上がったらしく、仕入れを終えてから来た亭主の財布は空になった。レストラン街で昼飯を食べようと、和食の店を尋ねたらもう長蛇の列で、うなぎ屋で和定食を注文するのでした。自分の蕎麦屋に比べたら、とても可愛い大きさの天麩羅と小さな刺身と小鉢と茶碗蒸しに、味噌汁の付いた定食が二人で5000円以上。それでも満席なのだから、中高年の集う街中の店は懐にゆとりのある人ばかりなのでしょう。

車で20㎞ほどしかないのに、片道1時間以上かかったから、女将のスポーツクラブの予約の時間に間に合わないと、途中で市民会館の駐車場に寄って、無事に予約を済ませるのでした。久々の遠出に疲れて、家に帰ったら書斎に入りひと眠りする亭主。夕刻に蕎麦屋に出掛けて明日の出汁取りの準備をする。夜は昨日残った蕎麦とキノコ汁で、キノコ付け蕎麦を食べる。これに小鉢を付けて900円で出しているのだから、いかに田舎でも良心的な値段だと思った。

10月11日 水曜日 身体の疲れはすっかり癒えたけれど …

夕べは10時半まで頑張って起きていて眠ったら、今朝の5時まで目覚めることなく眠れたので好かった。寝起きのコーヒーは蕎麦屋で飲もうと玄関を出れば、目の前にオリオンがくっきりと見えて、星の綺麗な夜なのでした。車でまだくらい中を出掛ければ、東の空がうっすらと明るくなってきていました。スマホのカメラでは丸い点にしか映らないけれど、細く尖った月と明るい金星が並んで、向かいの森の上には不思議な形の雲が幾筋か見えている。

厨房に入ってコーヒーを飲みながら出汁を取る。一番出汁で蕎麦汁を作って、二番出汁は5㍑の鍋に追い鰹で少し余分に取っておくのでした。涼しくなって暖かい汁の蕎麦が結構出るから、先週も二番出汁が足りなくなったのです。6時過ぎに片付けを終えて、高枝切りばさみを持って家に戻り、隣の家との境にあるスモモの木を切るのでした。夏に一度は剪定してあるけれど、伸びる枝というのはあるものなのです。完璧は目指さずに好い加減で家の中に入る。

朝食を終えて書斎でひと眠りをしようと思ったけれど、なかなか眠れずに着替えを済ませたら再び蕎麦屋に出掛ける亭主。隣のお花畑に、コスモスの花が今ごろになってやっと咲き乱れている。今年は熱い夏だったせいか花の咲くのが遅いのです。蕎麦屋の金木犀も今ごろになって黄色い花のつぼみが付いて、これから香しい季節になりそうです。洗濯機の中に入れたままだった洗濯物を干し終えたら、厨房に入ってデザートの水羊羹を作り、蕎麦豆腐を仕込む。

区切りの好いところで使った鍋を洗って、家に帰れば11時前。大鍋に湯を沸かして蕎麦を茹でるのは亭主の仕事で、女将が切り干し大根の煮物と蕎麦豆腐の残りを小鉢に盛って出してくれる。すべて先週の蕎麦屋の残りものだけれど、これがまた美味しいのです。家の大鍋は蕎麦屋に比べたらとても小さいから、どうしても蕎麦が上手く茹でられない。それでもなんとかコシのある蕎麦を食べられたから、好しとしなければいけない。小鉢は客も褒める絶品です。

食後にまた書斎に入ってひと眠りしようとしたけれど、どうも今日は眠れない。定休日の二日目は身体の調子も回復して、疲れていないから眠くならないのです。女将がスポーツクラブから帰るのを待って、また蕎麦屋に出掛けていく。朝のうちに作った蕎麦汁を蕎麦徳利に詰めて、塩で押し漬けにしてあった大根の水を絞って、甘酒の素と砂糖で漬け直す。刻み柚子と京唐辛子とを加えて明日の小鉢の一品目を用意する。糠床にお新香を漬けたら、天麩羅の具材を切り分けて今日の仕込みを終えるのでした。
