2023年4月末



4月28日 金曜日 晴れてこんなに暖かい日なのに …


 今朝も暖かな陽射しで、ゆっくりと眠って9時前に蕎麦屋に出掛けました。昨日の蕎麦が随分と残っていたから、今日は500g5人分だけ打ち足しておけば好かったのです。木曜日が暇だと、沢山用意した食材がそのまま次の日に使えるので、朝の仕事は楽なのです。厨房に入って大釜に火を入れたら、お茶のポットと蕎麦湯の入れ物を温めるポットを用意しておきます。蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打てば、加水率32.6%でちょうど好い生地が仕上がる。

 切りべら27本で135gの蕎麦を5束打つのは30分もあれば十分。残った生地を最後まで切って、昨日の端切れと合わせて今日の賄い蕎麦の準備をしておきます。あんなに晴れた昨日はお客が少なかったから、今日も天気が好くても、もしかするとお客が少ないかも知れない。大型連休前のお客の動向は予想がしづらいのです。それでも蕎麦は用意しておかなくてはならないから、平日の今日は13食の蕎麦を用意して、お客の来るを待つのでした。

 外は晴れて燕たちが飛び交い、生まれたばかりの小さな子供達が電線に止まって羽を繕っている。同じく生まれたばかりの子雀たちも、モミジの木の間で賑やかに鳴いているのです。ツバメは特急の名前にもなったくらいだから、飛ぶ速さが違うのです。亭主の動体視力では、とてもカメラでは追えない。リピーターらしい女性二人が昼前にいらっして天せいろ二つをご注文。その間に男性客がカウンターの隅に座り、せいろ蕎麦の大盛りと野菜サラダを頼まれる。

 どちらも歩いていらっしたお客で、亭主は慌てる様子もなく、一つ一つ調理をこなして配膳するのです。女性は話が長いから、後からいらっした男性が先に会計を済ませて帰られる。蕎麦ものびてしまうだろうし、天麩羅も冷めてしまうに違いないけれど、楽しそうに会話は続くのでした。他にお客もいないから、亭主はカウンターの盆や皿を片付けて洗っておくのです。やっと会計にはいるかと思ったら、まだ話したりない様子で二人は帰って行かれた。

 1時を過ぎたから、亭主は天麩羅を揚げて、端切れの蕎麦を集めて賄い蕎麦を食べておく。洗い物を済ませてもまだ2時前で、店の片付けを終えたら、亭主も珍しく早く家に戻るのです。パソコンのスイッチを入れて、居間の部屋でひと休み。テレビでスーパーマンの映画をやっていたから、最後まで観ているうちに女将が帰ってくる。書斎でひと眠りしたら早い夕飯を食べて、蕎麦屋に明日のお新香を漬けに行く。そのままプールへ出掛けてひと泳ぎなのです。



4月29日 土曜日 連休の始まりは暖かな一日で …

 最近は明るくなるのが早くなった。だから、いつもと同じ時間に床に就いているのに、つい目を覚ましてしまうのです。今朝も4時過ぎにはもう起き出して、台所に行って水を飲む。5時にはもう蕎麦屋に出掛け、夕べ漬けておいたお新香を糠床から取り出して切り分ける。ついでに切り干し大根の煮物もいくつか盛り付けておく。5時前にはもう陽が昇るらしく、森の木の間から太陽が昇っているからびっくりなのです。季節の推移を忘れていたような気がする。

 家に戻ってもまだ6時を過ぎたばかりなので、もう一度床に入ってひと眠りなのです。朝食の支度が出来る7時過ぎに女将が起こしに来てくれた。朝食を食べ終えたら、洗面と髭剃り、着替えを済ませてひと休み。暖かい朝だったから、上着も着ないで蕎麦屋に出掛けたのです。みずき通りを渡る頃には、空には薄雲が出ていたけれど、まだ青空の方が多かった。みずきの木も青葉が綺麗で、5月の綠が何故か懐かしいのでした。

 蕎麦屋に着いて朝の支度を済ませたら、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。加水率42%あまりだったけれど、暖かいからか少し柔らかめの生地の仕上がりなのでした。最初のひと打ちはぐにゃっと幅広に切れてしまったので、注意して切り幅を揃えていきます。切りべら27本で140g前後の蕎麦を8束取ったら、端切れは昨日のものと合わせて賄い蕎麦用に取っておく。今日は昨日の残りの蕎麦と合わせて15食も用意したのですが、果たしてお客が来るのか。

 野菜サラダと苺大福を作ってカウンターに並べたら、まだ11時過ぎだというのに、もう駐車場に車が入ってきている。まだ、お湯も沸いていないので、しばらくはそのまま放っておくしかないのでした。女将が帰ってきたので、開店時刻の15分前だったけれど、暖簾を出して中に入ってもらう。その間にも電話が入って「今日はやっているのか」「予約は出来ないのか」と忙しい時間帯に、自分勝手な事を言って亭主を困らせる。連休中も定休日以外は営業するのです。

 今日は比較的若いお客が多かったからか、天麩羅が全く出なかった。取り替えたばかりの天麩羅油も、一度も使わずに終わったのです。洗い物と片付けを終えて、亭主と女将は早めに家に帰るのでした。「森の綠が綺麗だね」と亭主が言えば「今日はみどりの日よ」と女将が応える。夜の防犯パトロールの時間まで、亭主はひと眠りして、女将は夕飯の買い物に出掛けたらしい。80歳になるという老人の後をついて、4㎞ちょっとの距離を歩いて汗だくになった。



4月30日 日曜日 朝から風も強く雨の降る天気で …

 雨と風とで荒れた天気だったけれど、朝飯前のひと仕事に蕎麦屋に出掛けました。ヤマボウシやモミジの新芽が伸びた先に、電線に雀が一羽。厨房に入って今日の食材を確認するのです。この天気では、お客もあまり見込めないでしょうが、用意だけはしておかなくては。蕎麦打ち室に入って冷蔵庫の生舟の中を見れば、今日は蕎麦を打たなくても十分に足りそうなのでした。帰り道に夕べの夜のパトロールで通った道を車で走り、ツツジの壁をもう一度見ておく。

 今年はツツジがどこも満開だと老人たちが言っていた。家に戻れば、いつもより早い時間なのに、もう女将は台所に立って朝食の支度をしてくれていた。亭主はナス焼きを大蒜醤油につけてご飯に載せれば十分なのに、鰺を焼いたり小鉢をいくつも用意したりとご馳走なのでした。満腹になって、いつもなら書斎で横になるけれど、今朝は眠気がやってこない。蕎麦屋で飲んだ朝のコーヒーが効いてきたのかも知れない。外は風が強くて傘が差せるのだろうか。

 9時近くにやっと家を出て、蕎麦屋まで歩くうちに、おちょこにならないように何度傘をつぼめたか分からない。これでは到底お客も来ないだろうと思いながらも、蕎麦屋に着いて朝の仕事をするのでした。蕎麦を打たないから、時間には余裕があった。奥の座敷に入って、潰しておいた段ボールを紐で縛っておきます。苺大福を包もうと思ったら、6日目の苺はもう傷んでいたので、こんな時の爲に残しておいた金柑の甘露煮を出して、今日は金柑大福にする。

 野菜サラダの具材を刻むのも、いつもより30分は早かった。女将も「こんな天気の日もあるのよ」と、諦めムードなのでした。それでも、雨の降る昼前にご夫婦らしい男女がいらっして、とろろ蕎麦と天麩羅蕎麦とを頼まれる。雨宿りを兼ねてか、ゆっくりとしていかれたけれど、昼を過ぎても次のお客は来なかったのです。1時になるから、亭主はかき揚げとレンコンの端切れを天麩羅にして、賄い蕎麦を食べておく。雨脚は弱まって時折薄陽が差すこともあった。

 1時半を過ぎたから少しずつ片付けを始めたら、「まだ大丈夫ですか」とご夫婦がご来店。天麩羅の具材や天ぷら粉も片付けてしまったけれど、せいろ蕎麦の大盛りとキノコつけ蕎麦のご注文で、助かったのです。もう最後のお客だろうと、残った野菜サラダをサービスでお出しして、ラストオーダーの時間も過ぎたから、大釜の火を落として片付けを始めたのです。すると、若い男性が「二人なのですけれど」とやって来たから「いらっしゃいませ」と迎える。

 誰かと思えば、いつもせいろ蕎麦の大盛りと辛味大根を頼む常連さんの親子で、すぐに火を点けて大盛りのせいろ蕎麦を二つ茹でるのでした。外は風も収まって雨もほとんど降っていない。最後まで頑張って好かった。女将と二人で家に戻れば、庭先の芍薬が花を咲かせていた。堅いつぼみだけれど、開く時は一挙に咲くから好い。亭主は書斎に入って今日のデータをパソコンに入力。今月の売り上げは去年、一昨年よりは好かったのでひと安心なのでした。コロナ禍前に比べるとまだまだですが、地道にやっていくしかない。