2023年4月上旬


4月7日 金曜日 曇り空でしたが暖かいので …

 朝の5時半、もう日の出の時間なのです。空は雲に覆われて、僅かに朝日が垣間見える。今日は一人の営業だからと、意気込んで蕎麦屋に出掛けてなくなっていた返しを作る。南蛮屋のモカマタリは店で珈琲を出さなくなって、なかなか買えないのだけれど、挽いてあるモカブレンドでも十分に美味しい。早朝の寛ぎのひとときなのです。筍の煮物を小鉢に7鉢盛り付けて、包丁を使う白菜のお新香の切り分けは、朝食後に来たときに擦ることにしました。

 煙草を買いに1km先のコンビニに出掛けたけれど、空はもくもくと厚い雲に覆われて、いつ雨が降ってもおかしくないような状態なのです。さすがに早朝だからか通る車もなく、人の乗っていないモノレールの車両が脇を走っていくのでした。7時前には家に着いて朝食の支度が済むのを待つ。亭主の好きなナス焼きと、鯖の塩焼きがおかずで、「いただきま~す」と言って食べ始めれば、5分で食べ終えるから、後から席に着く女将には悪いと思っている。

 今日は一人の営業だからと気合いを入れて、食後のひと眠りもせずに玄関を出る。庭の釣鐘水仙もやっと咲き始めて、十二単がそれよりも沢山あちこちで花を付けているのでした。蕎麦屋までの道すがら、八重桜の綺麗なお宅が、これからは綺麗だろうと思うほど蕾がついているのです。菜の花の見えるバス通りに出れば、森の木々は新緑が素敵で、曇った空にも映えて生き生きとした姿が素晴らしいのです。風は暖かい5月の風で、ツバメが飛び交っている。

 朝の仕事を終えたら、すぐに蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ亭主。加水は44%弱で生地を捏ね始めたけれど、なぜだか今朝も少し柔らかいような気がするのでした。季節の変わり目の加水は、本当に難しいのです。打ち粉を振って騙し騙し伸していくけれど、包丁切りとなるとエッジが立つような綺麗な仕上がりにはならないのです。切りむらのある蕎麦で、今日は営業を始めなければならないのが、何としても悔しいのでした。

 厨房に戻って金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで、天麩羅鍋に油を注ぎ、天つゆを温めたら、いつもよりは早い時間に開店の準備が整うのです。暖簾を出して5分程したら、ご夫婦が車でいらっして、「暖かい天麩羅蕎麦と冷たい天せいろを試して見ましょう」とご注文だったから、おそらく初めてのお客なのです。続けて中学校の入学式の帰りらしい3人連れのご家族がいらっして、天せいろ三つのご注文。ここまでは何とか対応できたのですが … 。

 続けてお客が来ると、もう大変になるのが一人での営業の辛さ。幸いにも、次のお客は一人でカウンターに座って、天せいろのご注文なのでした。前のお客の会計を済ませて、天麩羅を揚げて二番目のお客の蕎麦湯を出す。この間にも、テーブルに残った盆や皿を片付けて、次のお客が座れるようにセッティングしておくのです。最後のお客が女性お二人だったから、ゆっくりと食べて下さって、その間に洗い物を済ませるのでした。

 洗い物と片付けを済ませて、3時過ぎに蕎麦屋を出れば、道の途中で女将に出会う。亭主の帰りが遅いから、心配して来てくれたのです。荷物を彼女に預けて、亭主は車でコンビニまで行って、今日までの売り上げ金を預金するのでした。ついでに、遅い昼食を済ませようとサンドイッチと牛乳を買って、駐車場で食べてしまう。昨日のうちにプールに行って好かった。データをパソコンに入れて、ひと眠りしたら、もう夕刻の6時前なのでした。



4月8日 土曜日 新緑の季節になってきました …

 今朝も6時前には蕎麦屋に出掛けて、昨日の洗い物の片付けをしたら、小鉢を盛り付け、空いた蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて帰ったのです。昨日よりは少し肌寒い朝でしたが、陽が差して青空が見えるので、もう初夏の気分なのです。向こうの丘の上の公園の樹木も、すっかり青く若葉に覆われて、柿の木の青い葉も初々しかった。この間から気になっていた八重桜が、今日は随分と花が開いていたので、写真に撮らせてもらいました。

 みずき通りのハナミズキの並木にも白い花が咲き始めて、今朝の青空に映えるのでした。目立つ花ではないけれど、しっかりと季節を感じさせてくれる。また一年が過ぎたのです。コロナ禍の時期と違って、マスクを外している人にも随分と出会うから、人々の日常が戻りつつあるのかも知れない。坂を上って左に折れれば、蕎麦屋の前のバス通り。店の向かいのひまわり畑がすぐに見えてくる。黄色い花が何とも明るい気分にさせてくれるのでした。

 蕎麦屋の駐車場の隣には、菜の花畑の間にいろいろな花が咲き始めて、目を楽しませてくれる。飛べない雀も何処かに行っているらしく、その代わりにツバメのつがいが飛び交っているのです。巣作りを始める時期なのでしょう。看板を出し、幟を立ててチェーンポールを降ろしたら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。このところの失敗を鑑みて、加水率は44%弱で生地を捏ね始めたのです。湿度は50%なのに、それでもまだ柔らかいから頭を抱える。

 昨日残った蕎麦が4束あったから、今日は850g9人分の蕎麦を打つことにしたのです。800gでも800g×1.44=1152gだから、打ち粉の重さも加えれば、なんとか9人分は取れるけれど、あまりギリギリで打つのもどうかと思って、余裕を持って今朝の蕎麦切りに望むのでした。思ったほどは蕎麦がくっつかなくて、135gの束を9つと残り50gほどの端切れをだして打ち終える。厨房に戻って金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻んで、開店の準備を整えるのです。

 暖簾を出せばすぐに一人のお客がカウンターの端に座って、せいろの大盛りをご注文。蕎麦湯まで綺麗に飲み干してお帰りになる。駐車場に車が入って「赤ちゃんがいるのですが、大丈夫ですか?」とご主人が聞きに来る。「赤ちゃん用の椅子はないけど好いですよ」と応えれば、頑丈そうなバギーに乗せて奥様とご来店。四人用のテーブルの椅子を一つ外し、バギーが入るようにしてやる。「やっと蕎麦が食べられる」とせいろ蕎麦の大盛りと天せいろのご注文。

 最初のお客が帰った後は、しばらくお客がなかった。店の中は、窓を少し開けていても22℃はあるのですが、外は風が出て、北風なものだから昨日よりは気温が低いのでした。ひと休みしていたら、また駐車場に車が入ってくる。せいろ蕎麦の大盛りと天せいろのご注文で、持ち帰りに筍と山菜の天麩羅を二人前頼まれる。ビールのあてのつもりでほんの少しなのに、持ち帰ると言われて容器を用意するのでした。ゆっくりとなさって1時過ぎには誰もいなくなる。


4月9日 日曜日 雲一つない青空だったけれど …

 午前6時前の向かいの森から朝日が昇ってくる。今日は雲一つない青空が広がって、気持ちの好い朝なのでした。ひんやりと空気は冷たいけれど、陽射しがあるだけで気分が晴れるから、朝飯前のひと仕事も一気にはかどるのです。ポットでお湯を沸かしながら珈琲を入れる準備をしている間に、カウンターの上に干してあった蕎麦皿や盆を片付ける。お椀や丼は後ろの戸棚に入れ、敷いてあったタオルをしまう。珈琲と一緒にほうじ茶を三杯分入れておきます。

 昨日、前のスタッフが持って来てくれた採り立ての筍を切って、二番出汁で煮込む。沸騰したら出汁醤油で味つけしたらお終い。ちょうど朝日が窓から差し込んで、明るすぎる朝の景色が広がるのでした。7時前には家に戻って、女将の用意してくれた朝飯を食べてから、亭主は書斎に入ってひと眠りするのです。30分ほど眠ったら頭もすっきりして、髭を剃って着替えを済ませ、再び蕎麦屋に出掛けていく。風は冷たいけれど、今日は暖かくなるのだろうか。

 エアコンの暖房を入れてやっと16℃だから、いつもの朝よりは寒いのです。朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つ。加水率は43%にして、力を入れて捏ね始めれば、久し振りにいい感触の生地が仕上がる。実は夕べ一年前のブログを検証してみたら、やはり43%の加水で打っていた。今年は気温が高かったからか、つい季節の推移を見逃してしまったらしい。昨日の残った蕎麦と合わせて14食の蕎麦を用意しておく。

 女将がやって来て「小鉢が足りないのじゃない?」と言うから、今朝煮たばかりの筍を盛り付け、白菜のお新香も最後の一株を取り出して、小鉢に盛り付けておきました。木の芽を入れて煮込んだ柔らかい筍の上に、出汁取りの時に使う削り節を載せただけのものだけれど、煮た出汁が利いているので美味しい。汁まで飲むお客もいるくらいなのです。白菜のお新香は最後の頃になって、昆布の旨味が全体に広がってやっと美味しくなったという感じです。

 野菜サラダの具材を刻みながら、大根をおろしたり、天麩羅の具材を切り分けたりと、今朝も案外擦ることは沢山あるのでした。開店の時刻の10分前には支度が整って、暖簾を出すのです。5分ほどすると、女性の親子らしいお二人が見えて、何を頼もうかとメニュー表と睨めっこをしている間に、別のお客がいらっしてすぐに注文を決めたから、先にオーダーをなさったお客から、作り始めるのです。風は冷たくてもさすがに日曜日なのでした。

 最近、好くいらっしゃる薪屋のご夫婦が今日もヘルシーランチセットをご注文でした。明るい社交的な奥様に「先日は薪ストーブを使っている」と言うお客がいらっして、パンフレットをお持ちになったと言えば、今日は車の荷台に積んだ太い木を、これから薪にするのだと説明してくれた。駐車場もテーブル席も二回転で、思った以上にお客がいらっしたのには驚いた。やはり、気温が低いからと言って、日曜日を馬鹿にしてはいけないのです。

 最後のお客は、お父さんが三歳の女の子を連れていらっして、天せいろとせいろのうどんを頼まれた。チューリップ祭りに出掛けてきたそうな。褒めることもせずに食べさせようとするから、フォークを出したけれど、女の子はなかなか食が進まない。サービスで出したバウンドケーキは食べて、カルピスも飲んだらしい。閉店の時間はとうに過ぎていたけれど、暖簾をしまって洗い物をしながら、様子を見守る亭主と女将。3時前には家に戻るのでした。


4月10日 月曜日 昨日よりも暖かな一日だったから …


 朝飯前のひと仕事から帰って朝食を食べたら、モーガン・フリードマンとダイアン・キートンの『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』という映画をテレビで観て、ほのぼのとした気持ちで蕎麦屋に出掛けたのです。歳を取った名優が演ずる人生素晴らしかった。道々八重桜が綺麗に咲いていたので写真に撮らせてもらう。青空が背景でとても綺麗なのでした。みずき通りのハナミズキも随分と花が開いて、春と初夏とが一緒に来たような感じなのでした。

 蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。加水率は43%だったけれど、生地は上手く出来上がったのに、伸し方が悪かったのか、包丁の打ち方が拙かったのか、切りむらがあって満足のいく結果ではなかった。包丁をしばらく研いでいないから、切れ味が悪いのだろうか。9年経ってもまだいつも同じように蕎麦が打てない自分がもどかしくてならない。毎年、季節の変わり目にこういうことが起きるのです。

 今日は一人の営業だから、時間が押していたので、金柑大福を作るのを止めて、昨日、お客さんからいただいたわらび餅をデザートに出すことにした。自家製でないデザートは初めてか。一口食べてみたけれど、きな粉の甘さが亭主にはちょっとたまらないのです。野菜サラダの具材を刻み、天麩羅の具材を切り分けて、開店の準備をするのでした。暖房を入れなくても外は暖かで、窓を開けていても22℃はあるから、今日もお客が来ると思うのでした。

 果たして、暖簾を出せば、すぐに散歩の途中なのか歩いていらっしたご夫婦がご来店。天せいろを二つ頼まれて、お茶を出した亭主はすぐに盆と皿をセットして天麩羅を揚げるのです。その間にも、お一人でいらっした男性がカウンターに座って天せいろの大盛りを頼まれる。「前のお客にお出ししてからになります」と言ってお茶を出し、ここまでは順調にこなすのだけれど、この後のお客が続くと調理をしながらの対応となるので、忙しなくなるのです。

 小さな車が入って二人かと思ったら、三人の来客で前のお客の盆や皿をカウンターに載せて、慌ててテーブルを拭くのでした。リピーターの方なのか、三人三様で天せいろととろろ蕎麦とぶっかけ蕎麦のご注文で、杖をついたお婆さんに最初に出せるように、とろろを擦ってから天麩羅を揚げる。そんな忙しい時間に電話が鳴るから出れば、昨日、携帯電話を忘れたのですけれどとおっしゃる。取ってありますからと応えれば、忙しい時間に持ち主は現れた。

 駐車場の真ん中に車を停めて取りに来たものだから、後のお客が入れないで待っていた。家に帰ってから女将に話したら、 ぶっかけ蕎麦をうどんにして欲しいと言ったお客だからと、よく覚えているのでした。最後のお客は隣町の常連さんで、携帯を取りに来たお客が駐車場を出るまで、通りでしばらく待っていたのです。1時半近かったので、亭主はここが潮時とお蕎麦売り切れの看板を出して、最後の蕎麦を茹でる。ゆっくりと賄い蕎麦を食べる時間が取れた。


4月11日 火曜日 陽射しは暖かいけれど風が強くて …


 夕べは夕食を食べてひと休みしたら、夜のプーへ出掛けました。月曜日に泳げると一週間のリズムが上手く作れるのです。月・水・金と泳ぐのが理想なのですが、疲れてしまうとなかなか続かない。家に戻ればもう風呂の時間だから、風呂へ入って夜の酒を飲み、ニュースを見終えたら書斎に入って、このブログを書くのです。夜に運動をするといつもよりもぐっすりと眠れるような気がする。朝はいつもの時間に目覚め、蕎麦屋に出掛けてひと仕事なのです。

 厨房に干したままの盆や蕎麦皿を片付けたら、今朝は西側の小径の草取りをしました。昨日はお隣の畑でご主人が芝刈り機で綺麗に草を刈ったから、蕎麦屋側のアスファルトと敷石の間に生えた雑草が目立つのです。釜と袋と箒とちりとりを持って、悪戦苦闘すること40分。屈んで草を取るだけなのですがこれが辛い姿勢なのです。わずか20m足らずの距離を綺麗にしただけでもう腰が痛い。でも、お蔭で小径もすっきりとして気分が好いのでした。

 隣のお花畑のポピーが綺麗に咲き始めたので、近づいて写真に撮らせてもらった。菜の花が終わりになると、この花が咲くようにちゃんと時期を見据えて種を蒔いているのでしょう。お袋様に電話をしてそろそろ仕入れに出掛けようかと伝える。農産物直売所は9時から営業だから、少し前に彼女を迎えに行くのです。中学校を過ぎた辺りから、久留米躑躅が花を咲かせていました。他のツツジよりも少し時期が早いので、桜の終わった後、一足先に観られる花。

 隣町のスーパーにも出掛けて、残りの食材をすべて仕入れたつもりでいたのに、野菜類を冷蔵庫に収納したら、出汁取りを始めようと思ったら、削り節を買うのを忘れている。定休日なのに朝から草取りなどをしたものだから、今日は少し疲れたのかも知れない。家に戻って今日は女将の用意してくれた肉とチーズを入れた蒸し野菜で昼食を終え、書斎に入ってひと眠りする亭主なのでした。女将のスポーツクラブの予約を済ませたら、早速、買い物に出掛ける。

 半日遅れで出汁を取り、蕎麦汁を作って、筍とタラの芽、コゴミの天麩羅を揚げて、夕飯のおかずを作って帰るのでした。どこで仕入れて来たのか、女将がコゴミとタラの芽の天麩羅が身体に好いと言うので、今まであまり乗り気ではなかったのに、天麩羅にして食べようと言うことになったのです。蕎麦屋のミニ菜園には、コゴミとタラの木を植えているので、毎年、この時期には天麩羅にしてお客に出している。筍を入れて200円で出しているけれど人気です。