3月28日 火曜日 定休日も早くから目が覚めて …

午前5時に目覚めて、居間の部屋で珈琲を飲む亭主。たまの休日には昔何処かの温泉宿で、確か誕生日のプレゼントでいただいた有田焼のカップに珈琲をドリップして楽しむ。テレビも点けずに今朝の朝飯前のひと仕事に何をしようかと考えながら、外が明るくなるのを待っているのです。カウンターに干した昨日の洗い物を片付けて、出汁取りの準備と、洗濯物を畳むことぐらいしか仕事はない。桜の花がまだ散っていないかと気になるのでした。

昨日は女将が桜の花を見て歩いたのだと、夕飯の時間に話していた。近所の花見で十分なくらい、どこも満開だったけれど、青空が見えなかったのが残念なのだとか。桜の木に囲まれた近所の小学校を過ぎたら、お袋様に会って話をしたと言う。この辺りで一番桜が多い場所なのです。亭主も小学校のプールの見える坂道に車を停めて写真を撮る。やはり青空が見えないから桜の花が映えない。遠くの景色は霞んでいた。このまま散ってしまうのだろうか。

女子大の脇まで来たら、まま桜の花が続いている。遠くの景色は木々の新芽が薄い黄緑白に霞んでいた。小学校の正門へと続く中央通りの並木道も、桜が一杯なのでした。昨日女将が辿った道を、今朝は亭主が来るまで走る。天気が悪い朝だったから、通る人の姿もないのです。中央通りをお袋様の住むマンションを過ぎると、左手に調整池が広がる。この池に張り出した桜の木の枝が見事な花を付けていた。日当たりの好い場所だからよく育つのかも知れない。

やっと辺りも明るくなって駅前に続く並木道もすっきりと見通すことが出来る。空が晴れればもう少し綺麗に見えるのにと残念がる亭主。家に戻ればまだ6時半だったから、書斎に入って横になる。30分ほどしたら女将が起こしに来てくれて、朝食を食べるのです。今日の予定は、お袋様と仕入に行く前に、コンビニのATMでお金を下ろして、郵便局で蕎麦粉の代金を支払おうと思ったのだけれど、コンビニは8時半から引き出せるのに郵便局は開いていなかった。

仕方がないから、家に戻って女将に話せば「馬鹿ねェー、郵便局は9時からでしょ」と言われるのでした。お袋様に電話をして今日の仕入れに出掛ければ、農産物直売所では、新鮮なトマトや人参、生椎茸や知り合いの農家で奥さんが持って来たばかりのホウレン草が手に入る。それから隣町のスーパーに出掛けたのですが、俄に雨が強くなって、予報にはなかったのにと、お袋様も洗濯物を干したままだと言う。雨のせいか、スーパーもだいぶ空いていたのです。

蕎麦屋に戻って買って来た品物のチェックをすれば、今日も好い野菜ばかりが手に入ったのでひと安心なのでした。買って来た野菜を冷蔵庫に収納したら、もう時期も終わりの白菜を漬け込む作業に入る。旬の時期には一把200円ほどだった白菜も、四分の一把で140円近いから、かなり値段が上がっているのです。かと言って、キュウリとナスと蕪の糠漬けをするにはまだハウス物だから野菜が高いのです。大根が一本100円だったからなた漬けにすれば好かった。

家に戻って早めの昼飯にキノコ蕎麦を食べて、女将のスポーツクラブの予約まで、亭主は床屋に出掛けてさっぱりと散髪してくる。ひと眠りして4時過ぎに蕎麦屋に出掛けて、出汁を取って来るのでした。雨の上がった夕方からは陽が差して、桜も綺麗に見えるかと思ったけれど、雲が多すぎて写真には撮れない。稽古場で書を書き終えた女将も、この雲じゃ桜を見に行っても仕方がないと言うのです。明日も曇り空だと言うから、晴れた空に咲く桜は見られない。

3月29日 水曜日 朝のうちだけ晴れて …

今朝も5時起き。明るくなるまで珈琲を飲んで静かに今日の予定を復唱する。夕刻には地域の防犯パトロールがあるので、5時半までにはすべての仕事を終えておかなくてはならない。蕎麦豆腐を仕込んで、お新香の付け直しをしたら、小鉢の煮物を作って、天麩羅の具材を用意すれば、今日の仕込みは終わりのはず。5時半になったら蕎麦屋に出掛けて、まずは昨日作った蕎麦汁を徳利に詰め、昆布と唐辛子を入れながら、白菜の漬け物を漬け直すのです。

東の空が赤く染まってきたから、玄関を出て森の向こうの空を写真に撮すのですが、雲が広がって日の出は見えない。西の空には青空が覗いているのに、なかなか青空の下で桜の写真は撮れないのです。家に戻って朝食を食べたら、今日は荷物が届くからと早めに蕎麦屋に行くのでしたが、やっと届いたのは11時過ぎなのでした。その前に、やっと青空が広がってきたので、近くまで車で出て桜の写真を撮って回るのです。お袋様のマンションの入り口の桜です。

調整池の桜を裏側から撮って見ようと、朝日の当たる所だけを撮しておく。今朝方、反対側の中央通りから撮った桜なのですが、近くで見るのと遠くから見るのとでは、随分と雰囲気が違うのです。家の女将の話ではないけれど、わざわざ人の多い桜の名所を訪ねなくても、近所の桜を見て回るだけで、花の春は十分に堪能できるのでした。ところどころ花は散り始めてはいるけれど、今週末までは桜は花見の時期なのだろうと思います。

蕎麦屋に戻って予定通りに白菜の付け直しをして、切り干し大根の煮物を作って、午前中の仕込みを終わるのでした。実は、蓮根の皮を剥いて切り分けて茹でた後で、天麩羅の具材を切り分けようとしたら、南瓜を買い忘れたことに気づいて、隣町のスーパーまでまた買いに出掛けたのです。辺りは桜の花がどこも満開。ついでに、家で使う食材もいろいろと買って帰ったから、薄ら寒いので昼は久し振りに五目湯麺にして、女将と二人で食べるのでした。

女将がスポーツクラブに出掛けた午後は、ひと眠りしようかと思ったら、近所に住む以前のスタッフから電話が入って、今朝筍を掘ったから持って行くと言う。仕方がないから蕎麦屋に出向いて、受け取ったのですが、何もお返しするものがないので失礼した。この春に古稀を迎える彼女も元気そうで、そろそろジャガイモを植えるのだと言っていた。買って来た南瓜を切り分けて、天麩羅の具材を切りそろえたら、今日の仕込みは終わりなのです。

3月30日 木曜日 平日なのに暖かいからか …

近所の農家の桜が今年は早く咲いたと女将に言われ、今朝はいつもとは反対側に家の前の通りを歩いて行った。確かに庭先に咲く桜にしては随分と立派なのでした。畑の脇の小径を通ってバス通りに出れば、幼稚園の駐車場の向こうに我が家が見える。ここからがちょっとした桜並木なのです。幼稚園の桜も道祖神社の桜もみんな古い巨木なのです。真っ直ぐ蕎麦屋までは300mほど。丘陵のちょうど一番高い場所を通るこの道は、はるか昔からあったものらしい。

9時前には蕎麦屋に着いて、看板を出して幟を立てたら、チェーンポールを降ろして歩く。暖かな朝だったから、暖房も入れずに蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ。二回打とうかとも思ったけれど、800g9人分を打って済ませたのです。ところがこの蕎麦は12時過ぎにはもうなくなって、結局、「準備中」の看板を出して、二度目を打つことになったから失敗なのでした。今日はお客の入りが早かったのです。12時前にはもうテーブルとカウンターにお客が入る。

最初にいらっした5人ほどのお客に、亭主が一人で応対していたら、一組目の配膳を終えたところで女将が来てくれた。お茶を出したり注文を聞いたりと、一人ではやはり忙しいのです。暖かくなって今日は蕎麦屋も混むだろうと、いつもよりも早く家を出てくれたらしい。鴨南蛮蕎麦とヘルシーランチセットが出て、嬉しい事に野菜サラダもすぐになくなってしまう。キノコつけ蕎麦も出て、キノコ汁が鍋の半分がなくなったのです。

外は陽が差して青空も見えて来た。12時半前に3人のご家族連れが入って、生舟の蕎麦はすっかりなくなったのです。天麩羅を揚げて蕎麦を茹で、蕎麦湯を出し終えたところで、「準備中」の看板を出して亭主は蕎麦打ち室に入る。ちょうどお客が来る前に、蕎麦粉を捏ねて蕎麦玉だけ作っておいたので、後は伸して畳んで包丁切りをするだけなのでした。先ほどのご家族が食べ終わる前に蕎麦を打ち終え、亭主は奥の座敷で一休みする。目まぐるしい忙しさでした。

亭主が一休みしている間に、女将がゴミを捨てて洗い物を仕分けしておいてくれたから、厨房に入って一気に洗い物を片付ける。2時過ぎには後片づけを終えて家に帰るのでした。これが一人だと、恐らく4時まではかかるのです。遅い昼飯に餅を焼いてもらい、今日の写真と売り上げをパソコンに入力したら、そのまま書斎で横になってひと眠りなのです。電話のベルで目が覚めれば、今日は珍しく配達業者の青年が早く来ると言うから、蕎麦屋に出掛ける。

3月31日 金曜日 今月も今日が最後で …

暖かな朝でした。夕べは寝る前に酒を飲まなかったせいか、随分とよく眠れたような気がする。いつも女将には「眠りが浅くなる」と言われているのですが、これも習慣なのか飲んで酩酊気味で床に入るのが癖になっているのです。ところが、飲まずによく眠れるのであれば酒量も減って健康には好いこと間違いなし。果たしていつまで続けられるか。今朝は6時前に家を出て、夜明け前の不思議な雲が輝くのを見て、朝飯前のひと仕事を始めるのでした。

少し涼しいのでエアコンの暖房を入れたら、厨房に入って、まずは白餡に氷糖蜜を加え、解凍しながら鍋で煮詰めていく。その間にお新香を取り出して小鉢に盛り付けておきます。白菜が小さいからか、二回使っただけなのに、もう漬け物器をさらに小さな物に替えなくてはいけない。一日に6鉢ぐらいずつ盛り付けるから、全部で20鉢ぐらいしか取れないのです。旨味成分を引き出す昆布も何枚も使うから、安いと思っていたけれど以外と経費がかかるのです。

白餡の鍋はまだ餡が硬くならないので、昨日、ミニ菜園で採れたタラの芽を塩でさっと茹でて色を出す。季節の物だから、天麩羅に一本ずつ付けても好いかと思っているのです。今日もタラの芽が採れたのでと付けて出したら、お客様が喜んでくださった。それでなくても量の多い天麩羅が増えるから、ちょっと考えなくてはならない。ナスを止めてタラの芽にしても好い。レンコンの輪切りが大きすぎるのも考えものなのです。残される方もいて少し反省する。

朝食を終えて再び蕎麦に出掛ければ、外は晴れているのか陽が差しているのですが、薄く雲がかかって暖かな陽気なのでした。きっと女将は午前中に、近所の桜を訪ねて花見を楽しむのだろうと思うのです。看板と幟を出してチェーンポールを降ろしたら、蕎麦打ち室に入って、今朝の蕎麦を打つ。昨日の午後に打った蕎麦が残っているから、今日は750g8人分と100gほどを打って、合わせて13人分の蕎麦を用意するのでした。暖かいからきっとお客は来る。

果たして、昼前からお客はいらっして、天せいろや鴨せいろ、キノコつけ蕎麦など次々と注文をされるから、亭主一人の営業だから本当に大変なのでした。「今お茶をお持ちしますから」「前のお客様をお出ししてからになります」と、いちいち断って回るのです。リピーターのお客も多く、今日は亭主が一人なのを察してか、笑顔で待って下さった。1時前にご夫婦でいらっしたお客は鴨せいろを二つのご注文。待っていただく間に野菜サラダをサービスでお出しした。

お蕎麦売り切れの看板を出したのに、玄関を入って来たのは隣町の常連さんで、蕎麦は残っていたけれど「今日はサラダは終わりました」と断って、前のお客の鴨を焼き始めるのでした。平日でも10人を越えるお客は先週の金曜日と同じなのでした。でも、先週は女将が来てくれたから助かったのに、今日は亭主一人で疲れ果てる。一人だと二人の時の倍の労力を使うのです。やはり急に暖かくなったから、蕎麦を食べようという人が増えているらしい。

最後の常連さんが帰ったのが2時前で、亭主は昼も食べずに洗い物も何も済ませていない。窮余の策で、米寿を過ぎたお袋様に、電話をして洗い物をしに来てくれるように頼むのでした。月金ならば空いているから手伝いに来るよと言われていたのです。お蔭で3時前には洗い物が終わり、3時を過ぎに女将も心配して来てくれた。今日は疲れてプールには行けないかと思っていたら、30分眠ったら回復して、早い夕食後に空いているプールでひと泳ぎしたのです。