2月26日 日曜日 昨日よりも寒い一日でしたが …
午前5時半。東の森の空が明るんできました。朝飯前のひと仕事で蕎麦屋に着いたら、外の寒さとは裏腹に、店の中は8℃はあったから、昨日よりは寒いけれどエアコンの暖房を入れる。大釜に水を張って火を点けたら、すぐに暖まったので助かった。今朝はお新香を切り分けて小鉢に盛り付け、好評のワカサギの南蛮漬けを仕込む都合で、少し早めに家を出たのです。今週はこの二種類の小鉢で何とか済みそう。今日は冷たい風が吹く朝だったから心配です。
小鉢を作り終えたらもう朝日の昇る時間で、駐車場のモミジの木に早起きの雀が止まっていた。その上の電線にはまた何羽か雀たちが止まって、朝の会話を交わしているらしい。小さな身体なのに寒いからか羽を膨らませて、随分と太って見えるから可笑しいのです。珈琲を入れて一杯飲んだら、ガスレンジの火を消したのを確認して、エアコンだけ点けたままで家に戻る。寝坊したらしい女将がやっと雨戸を開けていた。亭主は居間でゆっくりと朝食を待つ。
昨日の夜から、今朝は蒸し野菜だと言われていたから、時間がかからないので遅くても好かったのでしょう。女将に買って来た甘い苺を亭主の分まで付けてくれるけれど、朝から甘い果物はあまり食べたくないのが亭主の本音。お新香と豚汁があれば十分なのです。昨日残った野菜サラダを豚肉の下に敷いて、蒸した野菜をぽん酢で食べる。野菜サラダを作った責任上、亭主は皿に二回だけ盛って、食べるのでした。これも本当は卵焼きか魚の方が好いのです。
7時半には朝食を食べ終えて、すぐに書斎に入って横になる。食べてすぐだったけれど、とにかく部屋の中が寒いから、布団にくるまっていた方が暖かい。うつらうつらとしながら、それでも30分は眠ったのだろうか。起き上がっても、座り込んでしばらくは動けない。「よいしょっ」とかけ声をかけて立ち上がったら、廊下を通って居間の扉を開け、洗面所に行く。着替えを済ませて、もう一度珈琲を沸かして飲む亭主。家のドリップでいれるとやはり美味しい。
再び蕎麦屋に向かうのでしたが、手袋をしてこなかったのを後悔した。外は冷たい風が吹いて、青空と陽射しがあるのに、首をすくめるほど寒く感じるのです。なかなか春にはならないのだなあと思いながら、蕎麦屋に着いて朝の仕事を終わらせる。蕎麦は昨日までの残った蕎麦と合わせて、日曜日だからと15食も用意したけれど、昨日よりも寒くて風が冷たいのだから、無理かなと思ったけれど、開店前からお客がいらっして、今日は全部売り切れたのです。
昼前にもう10人のお客が入って、息つく暇もないほどの忙しさ。皆さんご家族連れで、天せいろばかりを注文するから、天麩羅の具材を何回も切り分けるのでした。大盛りのご注文も多くて、これも早く蕎麦がなくなった理由の一つ。小学校二年生の小さな女の子も大盛りのとろろ蕎麦を頼むから驚いた。駐車場が満杯になって、一組が出ればまた1台と車が入れ替わる。洗い物をする暇もなく、12時半には皆さんお帰りになったと思ったら、もう1台車が入る。
「蕎麦はあと二つしかないよ」と女将に言って、外に見に行かせたら、お母さんと娘さんのお二人で、ちょうど好かったのです。まだ店の中にお客が沢山いらっしたので、カウンターに座ったお母さんと娘さんは、随分と待たせてしまった。休憩の暇もなく、亭主は天麩羅を揚げては蕎麦を茹で、女将も配膳をしてお茶だ蕎麦湯だと言ったり来たり。こんなに混んだのも珍しいのです。1時過ぎにはお蕎麦売り切れの看板を出し、溜まった洗い物を始めるのでした。
2月27日 月曜日 暖かくなったら急にお客が増えて …
午前6時過ぎに蕎麦屋に出掛けたら、東の森の木々の間から朝日が昇ってきた。あまり風もなく、今日は晴天で好い一日になりそうなのです。それでも蕎麦屋の中は7℃とまだ寒いから、エアコンの暖房を入れて、二つの大釜に水を張り、ガスレンジに火を点ける。カウンターの上に干した沢山の洗い物を片付けて、昨日なくなった天つゆと蕎麦汁を仕込み、蕎麦汁は冷やしてから徳利に詰めておきます。珈琲を入れてひと休みしたら、やっと家に戻るのです。
夕べ女将と話しておいた通りに、ナス焼きと塩鯖の焼き物で朝食を食べる。今朝は昨日の蕎麦が売り切れているので、気になって食後のひと眠りも出来なかった。混んだ日の翌日は何かと足りない物が出てくるのです。定休日前の月曜日だから、そんなにお客も来ないだろうとは思うけれど、蕎麦屋まで歩く道々、薬味の葱がなかったかとか、デザートの金柑大福は今日も出せるかとか、いろいろと心配をしながら歩く。バス通りに出たら冷たい風が吹いていた。
蕎麦は全くなかったので、750g8人分を打って、今朝は綺麗に伸すことが出来たから嬉しかった。加水率は47%、少し柔らかめだったけれど、その方が伸す時にしっかり角が取れて好かったのです。亭主の賄い蕎麦で残した昨日の蕎麦が一束あるから、全部で9人分の蕎麦を用意したことになるのでしたが、これが全部売り切れるほどのお客が来るとは夢にも思っていなかったのです。昼を過ぎたら珍しく早い時間に、隣町の常連さんがいらっしたから驚いた。
次に女将の知り合いらしい奥様がご主人といらっして、今日はこれで終わりかと思っていたら、1時前から続々とお客が入って、亭主一人なものだから、いち時にお茶を出したり、注文を取ったりともう大わらわなのでした。待たせながらも、なんとか最後のお客まで注文の蕎麦をお出ししたけれど、駐車場はずっと満車で、次々と帰っていくお客がいるから申し訳ないのでした。暖かくなると急にお客が増えるものなのかと、びっくりしたのです。
1時過ぎにはもう蕎麦が売り切れたから、お蕎麦売り切れの看板を出して、後は残ったお客の応対をするだけ。後半はご新規のお客が多かったから、何かサービスをしてあげたくても、食材は全て売り切れて何も出すものがなかったのです。「デザートのお土産はないの?」と言われても「ご免なさい」といか言えなかった。一人の営業というのは、対応できる最大数がある程度決まってくるから、用意する蕎麦の数を決めて売りきれにするしかないのです。
生舟の隅に残った端切れの蕎麦を茹でて、残った天麩羅の具材を揚げて、小さなお椀で腹の足しになればと、少しだけ蕎麦を食べておく。洗い物は何も出来なかったから、2時過ぎから片付けを始めたら、終わるのは4時過ぎになると気が遠くなる。と、玄関が開いて、お袋様が家に届いた書類を持って現れた。何のことはない、電話の回線が変わる案内で、洗い物を手伝うと言う手伝ってもらったら、早いこと早いこと3時前にはもう終わってしまうのでした。
90歳近い母親に洗い物をさせるのも気が引けたけれど、昔取った杵柄とやらで、亭主が洗うよりも早くさっさと、片付けていくから凄いのでした。脇で亭主が洗ったものを吹いて片付けるから、亭主と女将の組み合わせよりも段違いでスピードが上がる。家に戻って「今日は混んだ」と女将に話せば「それにしては帰りが早いわね」と言われて、お袋様が来てくれた事を話す。餅を焼いてもらってひと眠りしたら、夜のプールに出掛けていく亭主なのでした。
2月28日 火曜日 定休日でも朝早くから …
いつもの習慣で、定休日だというのに今朝は5時には目が覚めたから、居間の部屋に行って椅子に座って、ぼうっとすること30分。お茶を沸かして飲みたいけれど、煙草をくわえて吸いたいけれど、ただぼうっとしているだけなのです。頭の半分はまだ眠っているのか、5時半になったから「よいしょっ」と立ち上がり台所でお湯を沸かす。茶碗に沸いたお湯を入れて、湯冷ましに移して、それから急須に入れて待つこと1分、小さな湯飲みでいただくのです。
動き出してしまえば後は身体が自然と起き出して、6時前には煙草を買いにコンビニまで車を走らせる。みずき通りの坂を昇って、そのまま蕎麦屋に向かい、やっと明るくなった東の空を眺めれば、日の出までにはまだ時間がありそうだったから、厨房に入って出汁取りの支度をしておく。干し椎茸や昆布は4時間は浸しておかなくてはならないから、真っ先に準備する。5㍑の大きな鍋を出して醤油や味醂などを用意したら、まずは返しを作っておくのです。
朝飯前のひと仕事が一段落した6時半になって、玄関のガラスが眩しく光っていたから、外に出て日の出を眺める。向かいの畑には一面の真っ白な霜が降りて、暖かくなると言うのにやはり寒い朝なのだと、寒暖差の大きさに驚くのでした。家に戻って朝食を食べたら、書斎に入ってひと眠り。30分ほど眠ったら「よいしょっ」と起き出して洗面と着替えを済ませる。昨日世話になったお袋様に電話をして、毎週恒例の仕入れに出掛けるのです。
農産物直売所ではもう白菜は終わりと見えて、農家の持って来たものはなかった。トマトを選ぶのに、裏のヘタを調べていたら、持って来た親父様が「枝が枯れたトマトだから訳ありで安いのだけれど、この方が甘いよ」と言ってくれた。新鮮な生椎茸が出ていたのでそれももらって帰る。隣町のスーパーに行って残りの食材を仕入れる。今日はアスパラが随分と安かった。それでも10000円近くを払ったから、やはりいろいろと値上がりしているようなのでした。
家の買い物は昨日のプールの帰りに買って帰ったから、今日は買い物の袋の数も少なく、10時過ぎにはもう蕎麦屋に戻っていた。まずは野菜を冷蔵庫に収納して、白菜を樽に塩漬けにしたら、大根を切ってなた漬けの準備。そして、朝のうちに昆布と干し椎茸を浸けておいた鍋を火にかけて、出汁取りをするのです。一番出汁を取ったら蕎麦汁を仕込み、二番出汁は容器に入れて水で冷やしたら冷蔵庫へ。時間に余裕があったからひと仕事余分にすることが出来た。
今日は昨日の蕎麦の残りがないので、お昼はワカサギの南蛮漬けに、亭主が茄子とピーマンの味噌炒めを作り、女将がホウレン草を茹でてお浸しにする。久し振りに素朴にご飯を食べられたから、とても満足なのです。お茶を入れてもらったら、亭主は陽の当たる書斎に入ってひと眠りなのでした。なんと、二時間近くも眠ってしまい、女将がスポーツクラブの予約の時間だと起こしに来てくれた。無事に予約が済んで、亭主は蕎麦屋に行く前に庭の金柑を採る。
青空が広がっているのだけれど、今日は南風が強い。蕎麦屋に着いたら、洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗い物を干しておく。厨房に戻って午後の仕事は、キノコ汁と切り干し大根の煮物の仕込み。今週は白菜の漬け物となた漬けと切り干し大根と、営業の始まる前からもう小鉢が三種類。暖かくなってお客も少し増えているから、ちょうど好いのかも知れない。4時過ぎには仕事を終えて家に戻るのでした。冷えてきた夜はキノコ鍋にうどんを入れて温まる。