2月13日 月曜日 終日の雨で …
今朝もいつものように5時には目が覚める。それが毎日の生活の習慣なのだろうか。昨日は、年に一度の味噌造りで店を臨時休業にしただけに、今日は晴れて暖かくなって欲しかったけれど、現実はそれほど甘くはないのでした。暗いうちからもう雨が降って、車で蕎麦屋に出掛けていくけれど、朝のうちにしておくことは暖房を入れる以外に何もなかったのです。白菜のお新香も小鉢がまだあるから、漬けもの器ごと家に持ち帰るのでした。
家に戻れば、残り物がこんなにあるのかと思うほど、食卓にいろいろ鉢が並んで、温かい豚汁まで付いて、栄養満点なのです。食事を終えて例によって書斎でひと眠りする亭主。この雨では今日もお客が見込めないから、今週は惨憺たるもの。おまけに臨時休業までしたものだから、来週の仕込みの代金も今週の売り上げから出ない有様なのでした。滅多にないことだけれど、悔しいけれどこんな週もあるのだと、ごく冷静に受け止めている。
お蔭で、蕎麦は随分と残っているから、今朝は蕎麦打ちを断念。蕎麦粉の残りが少しだったので注文しておいたら、亭主が蕎麦屋に着く10分ほど前に配達に来たらしく、不在連絡票がぽいとに入っていた。まだすぐ近くにいるだろうと、運転手さんの携帯に電話をすれば、笑って「今行きます」と言ってくれたので有り難かった。降りしきる雨の中を5分もしないうちに届けてくれたのです。蕎麦粉と打ち粉と辛味大根とが届いて、取りあえずほっとした。
金柑大福は二皿残っていたけれど、冷蔵庫で二日おいたら少し硬くなっていたから、今朝は三皿だけ新しく包んでおく。蕎麦も三日目の蕎麦になるけれど、こちらは乾燥しないようにペーパーで包んで、さらに布を被せてあるから十分にお客に出せる状態です。野菜サラダも三皿盛り付けて、こればかりはその日限りだからどうしようもないので、残ればすべて家で食べるしかない。それでも昼過ぎにご近所のご主人が傘を差していらっしたから有り難い。
寒いからと天麩羅蕎麦のご注文で、天麩羅を別皿に分けてお出ししたら「これはなかなか好いね」と褒められた。ひと手間掛けても美味しく召し上がってもらおうと、常々考えてはいたのです。珍しく少し話をして帰られた。一人帰ると今度は車でいらっした女性がヘルシーランチセットのご注文。雨の日なのに、続けてお客が見えるのも珍しい。初めての方なのか、こちらはテーブル席に座って、黙々と食べてお帰りになる。サラダと大福が出たので嬉しかった。
月曜日はお客が少なくても亭主一人だから、後片づけが大変なのです。家に持ち帰るものも準備しなければならず、天麩羅の具材を入れる容器もみんな洗って拭かなければならない。大釜を洗って、片付けを終えたら、もう3時近くになってしまう。家に戻ればまだ女将は帰っていなかった。残った金柑大福を食べて、書斎に入ってまたひと眠り。薄暗くなる夕刻に目が覚めて、揚げて帰った天麩羅を焼いてもらって、責任上、残った蕎麦を茹でて食べるのでした。
2月14日 火曜日 天気予報は当てにならない …
今日は晴れるという予報だったけれど、雲が多く陽の差す時間は僅かなのでした。夕べは夜のプールで泳いだからか、身体は軽くなったのに、早くに眠くなって床に入ったら、夜中の2時過ぎに目が覚めてしまった。横になってもなかなか眠れないので、早すぎる朝飯にまた残っている蕎麦を茹でて食べる。年に一度ぐらいはこんなこともあったと、思い出しながら腹が膨れたらまた眠くなった。次に目覚めたのは8時過ぎで、もう仕入れに出掛ける時間でした。
先週はお客も少なかったけれど、作った小鉢のお新香や筑前煮が随分と残ってしまったので、今日は少しだけ仕入れようと考えて、いつもよりずっと少ない食材を買って帰った。足りなくなればまた買えばいいのだから、一度に仕入れるとどうしても無駄が多くなるのです。お客が沢山ある季節には、何度も買い物に出掛けるのも大変だから、どうしてもその習慣が付いてしまうのでしょう。今週は蕎麦を初めとして、食べきれないほどの食材が残ったのです。
白菜も今日は半分だけ仕入れて漬け込んだ。キノコ汁の仕込みを済ませたら、家に帰って昼の用意をする。またしても亭主は蕎麦を食べなければならないけれど、これが蕎麦屋の亭主の宿命と、昨日揚げて帰った天麩羅をグリルで焼いてもらって、美味しくいただくのでした。肉も魚も冷蔵庫の中を確認して買って来たのに、ついでに果物を沢山買ってきたら、「林檎もパイナップルもあるのに食べきれない」と女将に叱られた。忘れてはいけないと思ったのです。
朝がゆっくりと目覚めたから、さすがに食後にひと眠りは出来なかった。女将のスポーツクラブの予約がある2時過ぎまでは家を出られないので、パソコンに写真を取り込んで、午前中のブログの記事を書いておくことにしました。書斎の窓辺からは、相変わらず雲の多い空から、時々、暖かな陽射しが差し込むのです。これを晴れと言うならば、天気予報もまんざらではないのか。西の空には少しずつ青空が広がってきたから、晴れる時間が遅くなったのです。
目的のスポーツクラブの場所取り予約も今日は大変でした。数秒の間に席が埋まって、既に採られていると赤いマークが出るので、いつもの一番前の席は取れずに二列目になる。無事に予約が済んだら、稽古場にいる女将に声を掛けて、亭主は蕎麦屋に出掛ける。まずは出汁取りから始めて、蕎麦汁と天つゆを仕込みます。小一時間はかかるから、クラプトンのBGMを聞きながら、時折、晴れ間の出る窓の外の景色を眺めている。のどかな午後のひとときです。
4時を回って、もうひと仕事と、切り干し大根の煮物を仕込む。明日は午後から一月振りで整形外科に行って尿酸値の検査。夜は防犯パトロールだから結構忙しいのです。金柑大福に使う白餡も煮ておかなくてはならないし、買って冷蔵庫に入れたままの金柑も甘露煮にしておかなければ。蕎麦豆腐を仕込んで、天麩羅の具材を切り分ければもう仕込みは終わりのはず。レンコンは皮を剥いて酢水で茹でて、南瓜は切り分けてレンジに掛ければ好し … 。
2月15日 冷蔵庫の中のような寒い一日 …
午前5時半。東の空が明るくなるのが早くなった。朝飯前のひと仕事に蕎麦屋へ出掛ける亭主でしたが、今朝は何故か寒いのです。店に着いたら早々にエアコンのスイッチを入れて、大釜に水を張って火を点けるのでした。隠居の身だけれど、今日は夜まで忙しくスケジュールが詰まっているので、朝のうちに出来ることはしておかなければと気合いが入る。まずは昨日塩漬けしておいた白菜の漬け物を昆布を間に挟みながら小さな漬け物器に移すのです。
そして、空になった昨日までに作っておいた蕎麦汁を蕎麦徳利に移し、銀紙で蓋をして冷蔵庫に収納する。一つ4000円も出して陶芸作家に焼いてもらった蕎麦徳利も、開店当時のお金のあった時代の産物で、幾つか壊してしまったけれど、今ではもう手に入れることも出来ない。幸いにもコロナ禍でお客の数が減って、一日で全部出ることはなくなったから、なんとかやっていけるのです。10年も持てば好い方なのかと、最近では淡い感傷癖もなくなってきた。
7時前に仕事を終えて玄関を出れば、東の空から陽が昇ってきたから写真に撮っておきました。だいぶ日の出の時間が早くなったようなのです。家に戻ると、蕎麦屋が定休日だと言うのに、女将が台所と食堂を行き来して、忙しそうに働いているものだから、亭主も手伝ってナスを焼くのでした。今週は昔ながらの小さな小田原鰺の干物を買ってきたから、ナス焼きとお新香と豚汁が付いて、ちょうど好い分量のおかずで朝食を取るのでした。
朝食の美味しさに満足した亭主は、書斎に入ってひと眠りして、朝ドラの終わった時間に目が覚める。定休日だと言う安心感があるのか、目が覚めてもなかなか起き上がれないから不思議なのです。髭を剃って着替えを済ませ、やっと9時半に家を出て蕎麦屋に出掛けるのでした。青空が広がって天気予報も徐々に当たり始めているのです。ただ、北風が冷たいから、車から降りるだけでも手がかじかんでしまうほど。陽射しはあっても外は冷蔵庫の中の寒さです。
午前中の仕込みは、金柑大福を作るための準備で、白餡作りと金柑の甘露煮の仕込み。冷凍物の白餡を氷糖蜜と水で溶かして煮詰めている間に、金柑の種を取って酢水で煮立てたら、やはり氷糖蜜で煮詰める。金柑の種を取るのに時間がかかるから、白餡が煮詰まるまで退屈はしないのです。BGMに小野リサのボサノバを流して、気分はやはり定休日。先週は客が少なくて売り上げもなかったのに、隠居仕事とははやはり気楽なものなのです。
洗濯機の中に入れたままの洗濯物を干して、11時過ぎには家に戻るのでした。昼食には最後の蕎麦を茹でて、キノコ汁を温めてキノコつけ蕎麦を食べる。小鉢の筑前煮も含めてすべて先週の蕎麦屋の残り物なのでしたが、これがとても美味しいから、女将も許してくれるのだと思いたいところ。午後は女将がスポーツクラブに出掛けた後で、亭主は蕎麦屋に行って午後の仕込みにかかるのです。蓮根の皮を剥いて輪切りにしたら酢水で茹でて、南瓜を切り分ける。
南瓜をレンジでチーンしたら、天麩羅の具材を切り分けて容器に詰めるのでした。整形外科の診療開始の時間に間に合うように店を出て、今日は血液採取の検査の日。4時前には家に戻って早めの夕食を食べるのでした。ひと眠りする暇もなく、5時半過ぎには制服を着て家を出て、夜の防犯パトロールの集合場所に向かうのです。外気温度は3℃。冷蔵庫の中よりも寒い夕刻なのです。80歳を越えたメンバーの後を付いて団地の中を歩くこと40分。疲れた宵です。
2月16日 木曜日 昨日よりも更に寒い朝 …
今朝も5時起き、お茶を一杯飲んでテレビのニュースと天気予報を見る。東の空がほんのりと明るくなる5時半には、車で家を出て蕎麦屋に向かうのです。風はないけれど首と手が寒くて堪らない。300mしか走らないから、車外温度は 0℃のまま。蕎麦屋に着いて厨房の温度計を見れば、4℃を表示しているから、外は相当に寒いのです。動いていないと寒くなるからと、蕎麦打ち室の冷蔵庫に入れてある漬け物器を運んで、まずは白菜のお新香を盛り付ける。
続いて厨房の冷蔵庫から切り干し大根の煮物を取り出して、これも小鉢に盛り付ける。ラップをして冷蔵庫に収納したら、しばし休憩ですが、室温はまだ7℃でなかなか上がらないのです。向かいの畑は真っ白に霜が降りて、確かに昨日の朝よりは相当に寒い。6時半を過ぎたので、家に戻る前にコンビニに煙草を買いに行く。走る車の外気温度計は一気に-3℃まで下がったから驚いた。みずき通りを家に戻れば、東の空に太陽が昇り始めるのでした。
朝食を食べてひと眠りしたら、今朝はレッグウォーマーを履いて手袋をして蕎麦屋に出掛ける。駐車場の上の電線にはスズメたちが朝の会話をしている。向かいの畑も真っ白な霜で覆われていたのです。雲一つない青空だったけれど、この寒さが来客にどう関係してくるのか、昼も6℃までしか気温が上がらないと言うから、陽射しがあるからと言ってあまり期待できないのです。店の中に入れば、早朝から暖房を点けたままなのに、あまり室温が上がっていない。
それでも蕎麦は打たなければいけないから、やっと12℃になった蕎麦打ち室に入って、いつもの加水率で蕎麦粉を捏ねれば、やはり少し硬かったのです。なんとか伸し広げて八つに畳んだら包丁切りなのですが、綺麗な四角形にはならなかったので、切りべらは23本で、140gの蕎麦が8束取れました。少し太めの蕎麦に仕上がった。コロナ禍以後は、平日は750gしか打たないのだけれど、8束の蕎麦が全部なくなるというのは滅多にない。寒さも影響しているのか。
厨房に戻って大根と生姜をおろし、薬味の葱を刻んだら、金柑大福を包んで野菜サラダの具材を刻む。天麩羅の具材の容器を調理台に並べて、新しい胡麻油を天麩羅鍋に入れ、天つゆを温めたらもう開店の準備です。時間は押していたけれど、何とか間に合って暖簾を出す。昼前にいらっしたお客は、寒い中を皆さん徒歩でやって来たのでした。せいろ蕎麦の大盛りと辛味大根とビールと言う常連さんも、すっかり亭主一人の店に慣れてくださったらしい。
12時半を過ぎた頃に、女将が来てくれて、玄関の扉をを開けながら「いらっしゃいませ」とお客に挨拶をする。ちょうど良いタイミングなのでした。一人の営業で緊張していた亭主は、やっと奥の座敷に入って一服するのです。木曜日は定休日明けで開店の準備をするのに時間がかかるから、途中からでも女将が来てくれるのは本当に有り難い。それでも午後は外気温6℃という寒さのせいか、お客は来なかったのです。亭主は1時前に賄い蕎麦を食べておく。
最近は「熟成蕎麦」と言って、打って三日目以上の蕎麦を出す店があると新聞に出ていたと、先日いらっしたお客が話していた。亭主が食べる蕎麦は、だいたい三日目以上の残った蕎麦だけれど、茹でて色が茶色くはなるけれど、これが随分と美味しいと感じていたのです。挽きたて、打ちたて、茹でたて、という美味しい蕎麦は、冷蔵技術の発達していなかった昔のことだと言う。夜はまたプールに出掛けてひと泳ぎ。身体が軽くなったところでお終いです。
2月17日 金曜日 昼は少し暖かくなった …
プールで泳いだ晩は、お酒も進むけれど、よく眠れるのです。11時には眠くなって、朝の7時前に目覚める。これは健康的と言えるのか。朝食を食べて蕎麦屋に出掛けたのは9時前でした。昨日の蕎麦が半分は残っていたから、今朝は500g五人分だけ蕎麦を打てば好いと決めていたのです。雲はあったけれど青空が覗いて、風もなく少し暖かな朝なのでした。蕎麦屋に着いて朝の仕事を終えたら、厨房に入ってお新香を切り分け、小鉢に盛り付けておきます。
厨房の温度は6℃とかなり寒いのですが、エアコンの暖房を入れて、大釜に水を張って火を点ける。蕎麦打ち室は5℃と、まだちょっと蕎麦を打てる温度ではありませんでした。洗濯物を畳んだりして時間を潰すけれど、とても10℃になるまでは待てない。加水率を48%にして何とか蕎麦粉を捏ね始めたのです。それでも少し硬めの生地に仕上がったから、やはり室温は蕎麦の硬さにかなり関わりがありそうです。切りべら25本で一束140gの蕎麦を5束打つ。
前掛けに付いた蕎麦粉を払いに玄関を出れば、空の雲が晴れて好い陽気になっているではありませんか。陽射しの当たる場所では、かなり温かく感じるのです。これならば今日はお客も来るだろうと少し安堵する亭主。ちらほらと散歩をする人の姿も見えるのです。今週は少しお客が入らないと、ジリ貧の状態で春を迎えることになりそうだから、天気次第の神頼み。好い時もあれば悪い時もあるけれど、悪い時がそんなに続くはずもないと思いたいのです。
野菜サラダの具材を刻んで、昨日の金柑大福を冷蔵庫から出してカウンターに並べる。まだ柔らかいから作りたてと変わらない。だいたい二日でもうお客に出すのを止めるのは、三日目は作り具合によってはかなり硬くなるから。味は変わらないのだけれど、食感が悪くなるのです。市販の大福などは、いろいろな添加物が入って長持ちするように出来ているらしい。天麩羅の具材を調理台に並べ、天麩羅油を鍋に移して、天つゆを温めたら、いよいよ開店の時間。
テーブルやカウンターをアルコール除菌液で拭いて、時計を見ながら暖簾を出す亭主。週末でもなければ、開店の時刻にお客が来ることは滅多にない。今日も昼までは誰も来なかったのです。暖かい日にはいらっしゃる隣町の常連さんが来る時間までに、昼飯を食べておこうと、取っておいた熟成の蕎麦を茹でて山葵と蕎麦汁を入れたところで、大きな鉄材を積んだトラックが駐車場に入ってくる。女将がいれば奥の座敷で食べてくるのですが、そうもいかない。
若い職人風の男性が二人テーブル席に座って、ヘルシーランチセットとぶっかけ蕎麦のご注文。調理をしている最中に、久し振りに例の少年がやって来たのです。天麩羅を揚げて三人分の蕎麦を同時に茹でている間に、今度は隣町の常連さんがやって来た。野菜サラダは自分で取って食べるから、取りあえずドレッシングとお茶と箸だけお出しするのでした。「急がなくて好いよ」と彼が新聞を読んでいる間に、前の三人の蕎麦を出して、辛味大根をすりおろす。
混むのは一時で、平日だからその後はお客がいないのです。常連さんの話に付き合って、やっと帰った1時半近くに、茹でてラップを掛けて冷蔵庫に入れておいた蕎麦を食べる亭主。腹も減っていたからか、コンビニの蕎麦よりはずっと美味しかった。洗い物と片付けとを終わらせて家に戻れば、時間が早かったので女将はまだスポーツクラブから帰っていない。早めに夕食を作ってもらい、夜のプールに出掛けるのです。今日も軽くひと泳ぎで、身体が温まる。
2月18日 土曜日 霜の朝と昼は春の陽射し …
10時45分就寝。6時起床。やはり夜に泳いだ日はぐっすりと眠れるから素晴らしい。昼は暖かくなると言うけれど、朝の蕎麦屋はとても寒い。日の出前の前の畑は白い霜で覆われていました。蕎麦屋も冷蔵庫の中のようで、エアコンを点けて大釜に水を張って火を点ける。それでも準備はしておかなくてはならないから、冷蔵庫から白菜のお新香と切り干し大根の煮物を取り出して、小鉢に盛り付けておくのです。10人以上は見込めなかろうと、11鉢だけ用意する。
暖かくなるという日は、きっとお客も増えるだろうと、なぜか希望に満ちあふれているのです。早朝の仕込みを終えて車に乗ろうとすれば、朝日が東の森の上に昇っているから嬉しい。日の出の時刻はだいぶ早くなったような気がする。家に戻れば女将が朝食の用意をしてくれているのでした。今朝のおかずは鯖の塩焼きと蕎麦屋で作った味見用の切り干し大根。小さな茶碗に少しのご飯には、ちょうど好い。食後のひと眠りはせずに、再び蕎麦屋に出掛ける。
みずき通りに面したお宅の白梅が咲いて、今朝の青空に映えていました。風もなく陽射しも暖かいから、今日はこれまでにない陽気になりそう。早朝に暖房を入れておいた蕎麦屋は、10℃を越えて暖かくなっているのでした。朝の仕事を終えたら、早速、蕎麦打ち室に入って今朝の蕎麦を打つ亭主。加水率は47%強。しっとりと柔らかい生地に仕上がるのです。いつもより早い時間だったので、これを伸して畳んでじっくりと包丁切りをするのでした。
切りべら25本で140gと、少し太めだけれど綺麗な蕎麦を生舟に並べて、昨日の残りと合わせて15食の蕎麦を用意する。これだけあれば、大盛りが出ても足りなくはならないと、安心して厨房に戻るのです。金柑大福を包み、野菜サラダの具材を刻みながら、今日のお客の入りを楽しみにするのでした。蕎麦屋の前の通りを散歩する人の数が、寒い日よりも多いのが心強かった。開店の準備が整って、暖簾を出せば、早速、近所の常連さんがいらっしゃる。
続けて車でいらっした若いご夫婦が、せいろの大盛りとヘルシーランチセットをご注文なのです。亭主も忙しなく蕎麦を茹で、俄に女将も忙しくなるのでした。そこに駅前から歩いていらっしゃる常連さんがカウンターに座り、まずはビールと辛味大根、キスや稚鮎や海老の天麩羅を単品でご注文。いろいろな話をされて、亭主が奥の座敷に入れば、女将が「お酒のご注文です」というので、厨房に戻ればライムサワーのご注文なのでした。暖かい日だからか。
濃いめに作ったライムサワーをお替わりして、最後にせいろ蕎麦を頼まれた。亭主よりも年上なのにかなりの健啖家にみえる。まだ働いていると言うから、通勤や仕事で身体を使っていらっしゃるのが健康の秘訣なのだろうと感じた。今日は思ったほどはお客が来なかったけれど、野菜サラダもデザートの金柑大福も出て、まずまずの成果なのでした。店の片付けを終えて、女将と二人で家に帰れば、女将は美容院の予約の電話をするのに忙しい。
2月19日 日曜日 暖かいけれど終日曇りで風が強かった …
暖かい朝だったけれど、空は暗くどんよりとした雲に覆われていました。6時過ぎに蕎麦屋に出掛けて朝飯前のひと仕事です。カウンターに干してあった昨日の洗い物を片付けて、空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を補充しておく。それからまな板を出して、漬け物器に残っていた白菜のお新香を全部切り分けて、小鉢に盛り付けるのです。7時過ぎに家に戻れば、朝食のおかずはベーコンエッグにキンピラとシラスおろし。我が家に魚がなくなった合図なのです。
食後のひと眠りをせずに、髭を剃って着替えを済ませる。朝も蕎麦屋で飲んだのに、珈琲を一杯入れて蕎麦屋に出掛けるのでした。陽が差す気配はまったくない。暖かな南風が強く、雲はどんどん北に流れていくばかり。風の強い日には歩いて来るお客はまずいないから、車で来るにしても、まず家を出るかと考えてしまうのです。朝の仕事を終えて厨房に入れば、室温は16℃ともうかなり暖まっている。蕎麦打ち室も14℃はあるのでした。
昨日の蕎麦が随分と残っていたので、今朝は500g五人分だけ打ち足して、13食の用意なのでした。大盛りや家族連れのお客が来れば直ぐになくなってしまうけれど、これ以上はリスクを冒せないのが辛いところ。48%の加水率で打ち上げた蕎麦は、多少柔らかめだったけれど、打ち粉を振って綺麗に包丁切りを済ませるのでした。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻み、今日も三皿盛り付ける。金柑大福は昨日の三皿が残っていたので、そのまま使えるのでした。
暖簾を出しても昼過ぎまではお客が来ないので、やはり駄目かと諦めていたのです。外は暖かな風が南から吹いているのだけれど、空は今にも雨が降りそうな陽気なのでした。12時半近くにリピーターの若い男女がいらっして、せいろ蕎麦の大盛りとヘルシーランチセットのご注文。蕎麦が美味しいと女性の方がおっしゃって、帰られたから女将と二人で喜んだのです。これで今日は終わりかも知れないと、亭主はかき揚げを揚げて賄い蕎麦を食べておく。
ところが1時半近くに駐車場に車が2台入って「5人でいいですか?」とお客がいらっしゃる。天せいろ三つととろろ蕎麦のご注文で、亭主は急いで天麩羅を揚げ始めるのでした。その間に、女将の友人が久し振りに見えて、カウンターに座っていつものご注文。閉店間際になって忙しくなるということもあるのです。天せいろをお出しすれば「胡麻油の香りがするわ」と若いお母さんが言うから、「うちは胡麻油を使っているんですよ」と亭主が応える。
「美味しかったわ」と娘らしい女性が言って帰られたのは、もう2時近くなのでした。初めてのお客らしく「お休みはいつなのですか」と聞いた、まだ若いお爺さんらしい男性に、女将が店置きのパンフレットを渡していた。それからが洗い物を片付けるのにひと踏ん張りなのです。窓を開け放っても寒くない陽気なのでした。火の消し忘れはないか、明日の小鉢や蕎麦汁はどれだけあるかを確認して、亭主は女将の少し後から家路に就くのです。