2022年7月上旬

7月7日 木曜日 結局は晴れて好かった七夕の夜 …

 煙るような霧雨の朝でした。4時半には目覚め、例によって居間の椅子に座って珈琲を一杯飲む。朝飯前のひと仕事に出掛けるにはまだちょっとは早すぎるから、テレビのニュース番組を見るのだけれど、ぼうっと聞いているから直ぐに内容を忘れてしまうのです。5時前になったら車を出して蕎麦屋に向かい、昨日の夜から考えていた蕎麦汁の詰替えとお新香と煮物の小鉢を盛り漬けるのでした。開業時に揃えた手作りの徳利もだいぶ古くなったので気になる。

 小鉢も沢山の種類を集めたけれど、今はほとんどが戸棚の中に眠っている。使い勝手の好いものだけが残っているのです。盆の中に蕎麦皿や蕎麦徳利、蕎麦猪口と合わせて、上手く納まる大きさが使い易いのでしょう。今から思えば、あまり値の張る器を揃えてしまうと、欠けた時に補充するのが大変になるのです。蕎麦徳利が一番いい例なのでした。明日の分までも小鉢を盛り付けて、いよいよ一回目の蕎麦打ちにかかる。時刻はまだ6時前なのでした。 

 朝飯前のひと仕事に、今朝は2時間近く費やして、家に戻れば女将の用意してくれた朝食を食べる。7時のニュースを二人で見ながら、亭主は見たら直ぐに忘れるから怖い。今日は七夕、この天気では夜空の星も見えないだろうと、10年以上も前のこと、まだ亭主も現役で勤めていた頃に、小中学校時代の友人と都内でミニクラス会で集まったのを思い出す。年を取ると昔のことは好く覚えているもので、今でもその時の写真を机の脇に張ってあるのです。

 食後のひと眠りを終えて、今朝はゆっくりと家を出た。通りに面した庭の木槿がやけに賑やかに咲いている。南向きだから、ちょうど逆光で写真には上手く写らないけれど、朝の雨は上がって傘を差さなくても好いから助かった。湿気はあるけれど気温が低いので、今日は過ごしやすいかも知れない。その分、お客は少ないだろうなと思いながら、蕎麦屋に着いたら今日二回目の蕎麦を打つ。「自分の食べる分もないのでは元気が出ないでしょう」とは女将の言葉。

 加水率は湿気があるのでぴったり40%。早朝の一回目に続けて、今日は好い蕎麦が打てた気がする。薬味の葱を刻んで、大根と生姜をおろし、野菜サラダの具材を刻んで盛り付ければ、まだ11時前。開店の準備を済ませ、店の掃除や消毒を終わらせて、西側の小径に散っている木槿の花を掃きに出た。この休みに草取りもしたから、少しは綺麗になっているのでした。家の木槿の落花は毎日女将が掃いてくれているから、せめて蕎麦屋だけは亭主がやらなければ。

 昼前は霧雨がしきりに降るので、涼しい北風も吹いて過ごしやすいけれど、これではお客は来ないだろうと思えるのでした。暖簾を出してお客を待つこと1時間。休憩時間だと思えば気が楽だなどと考えていたら、北の空から青空が覗いた。それがどんどんと広がって、午後は陽射しも戻って涼しい陽気。給食を食べられない例の少年がバス通りを歩いて来る。お茶を飲むわけでもないから、カルピスとバームクーヘンを出して、海老の天麩羅とせいろを用意。

 不思議なことに、この少年が来るといつもお客が続くのです。今日は注文が続いたので、彼とゆっくり話も出来なかった。窓際のテーブルのお二人は、中年の男性が長々と話をしている。女将に持たされたスマホでスポーツクラブの予約をする時間も迫っている。今日の分はスポーツクラブの席が取れなかったから、早めに来るからと言っていた女将もまだ来ない。続けてまた男性客がご来店で、やっと女将が現れた。間一髪で無事に席を確保して昼を食べる亭主。

 空腹を我慢していた遅い昼食の後も、女将がいると亭主はとても楽なのです。奥の座敷でぶっかけ蕎麦を食べ終えて、一服する暇がある。今日は蕎麦も随分と残ったけれど、野菜サラダは全部家に持ち帰り、晩のおかずになるのでした。洗い物と片付けを女将と二人で終わらせ、帰る道には青空が広がって気持ちが好かった。亭主は足の指を庇いながらゆっくりと歩くものだから、女将はどんどん先に進んでいく。夜は上弦の月が出て、無事に七夕の晩となった。

7月8日 金曜日 今朝も涼しかったけれど …

 今朝も5時前から目覚めてはいたけれど、あまり早くから蕎麦屋に出掛けてもすることがない。珈琲を飲みながらテレビのニュースを見て、6時近くになったから煙草を買いにコンビニに出掛ける。玄関を出たところで、この間、短く剪定をしたばかりの金柑の木に白い花が咲いているのを見つけました。あんなに短く枝を切り詰めたのに、元気に咲いているから、冬の収穫が楽しみです。空は暗く雲に覆われて、晴れると言う夕べの予報は朝から外れている。

 早い朝なのにコンビニはお客の車が並んでいる。作業着姿の若者たちが次々と、昼の弁当を買っているのでした。ハーフパンツにTシャツ姿で毎日のように煙草を買いに来る自分は、店員の目にはいったいどのように写っているのだろうか。蕎麦屋に寄って、昨日の洗い物を片付け、洗濯物を干して家に戻る。高原のような涼しさの朝だから、エアコンも入れずに帰って来た。家の台所では、ちょうど女将が出汁巻き卵を焼くところなのでした。

 朝食を食べ終えて、書斎に入って横になれば、15分ほどうつらうつらした時に「お父さん、BSのチャンネルを替えたいのだけれど」と朝ドラの前に女将が起こしに来る。夕べ亭主が夜食のざるラーメン餃子を食べながら、食堂のテレビを観たままなのでした。何度教えても女将は覚えないから、リモコン受信部の壊れたテレビは早晩買い換えた方が好いのかも知れない。でも、リモコンを使わなくても十分に見られるから、二人とも勿体ないと思っているのです。

 雨は降っていないのが幸い、蕎麦屋まで歩いて出掛けたけれど、誰にも人には会わなかった。マスクはしてなくても大丈夫でした。涼しいから朝の仕事もすんなりと、蕎麦は500gだけ打てば足りそうだったから、時間が余るだろうと、まずは駐車場の紫陽花の剪定をするのでした。花芽を残して短く切り詰めたら、90㍑のビニール袋一杯になるほどでした。草木ははあちこちで伸び盛りの時期、花の枯れた紫陽花が、いつまでもひと目について可哀想だったのです。

 涼しいから店の窓を開け放って、蕎麦打ち室に入れば室温は25℃で湿度は65%。40%弱の加水で蕎麦粉を捏ねれば、ちょうど好い硬さになる。蕎麦玉を寝かせている間に、大根をおろし、大釜に水を張って、再び蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。生地が硬めだから、奥行き一杯までは伸し広げられずに、今朝は切りべら28本にして140g の蕎麦の束を五つだけ取った。切り幅も揃って、ちょうど好い仕上がりなのでした。厨房に戻って野菜サラダの具材を刻む。

 打つ蕎麦の数が少ないと、それだけ時間が余るから、今日は11時前にもう開店の準備が整うのでした。外は晴れ間も見えて来たけれど、風が強いのが玉に瑕。西側の小径の様子を見に行けば、風で散った木槿の花が散らばっている。塵取りと箒を持って掃除をしていたら、ゴミ捨てから帰って来た近所の奥さんが「綺麗なお花だけれど、毎日お掃除が大変ね」と声を掛けてくれました。見ていてくれる人がいるのだから、早く南側の庭も草刈りを済ませなければ … 。

 早めに暖簾を出したけれど、天気が好くなったのにお客はなかなか来ないのでした。去年の記録を見ても、この週の週末はお客が少ないのです。今年は第7波が始まったとかで、感染者の数も急に増えてきているから、そんなことも関係しているのだろうか。昼過ぎにやっとお客がいらっして、天せいろのご注文でした。初めてのお客らしく、蕎麦粉から溶いた蕎麦湯を丁寧に飲んで行かれた。それでも、今日はそれきりお客がないのでした。分からないものです。

 亭主自身の昼の蕎麦を茹でて、ぶっかけで食べる暇も十分にあった。片付けを終えて家に戻れば、女将はまだ帰っていない。テレビを点ければ、元総理が銃撃されたという速報が入っていた。夕飯の時間までずっとそんなニュースが続いて、総理を辞めると警護が手薄になるのかしらと女将と話す。早い夕飯は二日続けて出なかった野菜サラダを使って、例により亭主がお好み焼きを作るのでした。平和すぎる日本にも広く危機管理の徹底を望みたいもの …。

7月9日 土曜日 普段通りに暮らすしかない …

 最近は夜明けと共に目覚めるのが習慣になってきたから、好いのか悪いのか一日が長く感じるのです。今朝も4時半にはもう目が覚めて、居間の部屋で珈琲を飲みながらぼうっと椅子に座っている。もう一度眠れば寝れないことはないけれど、せっかく起きたのだからと、今日の仕事の段取りをつらつらと思うのでした。テレビのニュースやデータ放送で天気予報を見て、6時前には車で家を出る。門の上にある木槿の花が今日も元気に見送ってくれる。

 蕎麦屋に着いたらまずは蕎麦汁を補充して、週末に予想されるお客の数だけは用意しておく。昨日一昨日でなくなってきた小鉢も、追加で盛り付けて、洗濯物を干そうと思ったら、昨日の帰りに洗ったはずの洗濯機の中で濡れたままになっている。洗剤を入れて蓋を閉めただけで、スイッチを入れるのを忘れてしまったらしい。店を出る時に、忘れものはないかといつも確認するのだけれど、何かしら忘れているから怖いのです。苦笑いをしながら家に戻る亭主。

 いつもなら、女将が台所に立っている時間なのに、今朝は亭主が帰るのが早かったのか、まだ彼女の姿はなかった。今朝は何を食べるのかと夕べのうちに聞いていなかったから、慌てることはないと居間の椅子に座って一服している。それでも、いつもの時間に食卓に料理が並び、いつもの時間には食べ終わる。今朝はホッケの塩焼きととろろ芋がおかずだった。とても美味しく頂いて、お茶をもらったら、書斎に入ってひと眠りするのでした。 

 今日は朝から陽が差していたから、蕎麦屋に着いたら久し振りに打ち水がわりに、ホースで駐車場に水を撒く。西側の小径のムクゲの落花も箒で掃いて綺麗にしておくのでした。今朝も蕎麦打ちは、500g五人分と決めていたから、時間が余るのが目に見えていたのです。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って加水率40%弱で、今朝の蕎麦を捏ね始める。エアコンも入れていないのに、室温は26℃湿度は63%なのでした。陽射しのないところではまだ涼しい。

 蕎麦玉を寝かせている間に大根を擦り、大釜に水を張って、早朝に洗い直した洗濯物まで干しておく。再び蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦をのして包丁打ち。加水がちょうど好いと、蕎麦も本当に好く仕上がるのです。いつもより30分も早めに野菜サラダの具材を刻み、10時半過ぎにはもう用意が出来ていましたが、大釜に火を入れるのを忘れていた。若い女性がやって来て玄関の看板を見ていたけれど、「まだお湯が沸いていないので」とパンフレットを渡す。

 11時15分前なのでした。営業を始めるにはちょっと早すぎる時間なのです。そのうち女将も家から戻って、昨日のコロナの感染者数が78人にもなったという話になる。一昨日の数の倍になったから、こんな田舎の街でクラスターもないというのに、どこでそんなに感染するのだろうと思えてならない。彼女に言わせると、都会に出掛けているから、感染して帰って来るのではないかと言うのです。開店時刻を過ぎたら、直ぐにお客が続けて入った。常連さんばかり。

 カレーうどんの親父様は、今日はカレー蕎麦にしてみると言うので、孫の世話を今日は母親に任せて、久し振りにいらっした奥様が笑うのです。母娘らしい常連さんも、お母様がヘルシーランチセットを頼まれて、珍しく生ビールのご注文なのでした。それから1時間というもの、お客の来る気配はなかったから、亭主は蕎麦を茹でて、ぶっかけで昼を済ませてしまう。やっと次のお客たちが来たのは、1時半近くなのでした。同時に6人も入って大忙しでした。

 近所の友人に勧められていらっしたと言うご夫婦と、ラベンダー祭りに来たというご家族と、それぞれ蕎麦が美味しいとゆっくりしていかれた。閉店時間もとっくに過ぎて、女将と二人で洗い物をするひととき。薄雲は出ているけれど、陽射しの強い暑い午後なのでした。家に戻って亭主はいつものように、書斎に入ってパソコンに向かって、ひと仕事を終えたら午後の昼寝。その間に女将は買い物に出て、目覚めた亭主は蕎麦屋に行ってお新香を漬けてくる。

 ついでに昼の洗い物を片付けて、蕎麦汁を補充し、小鉢を盛り付け、洗濯物を干しておく。結果的に、いつもの土曜日の来客だったかほっとする亭主。春蕎麦の新蕎麦も発注したし、来週は鴨肉や海老を頼まなくてはならないし、売り上げが伸びないと支払いに困ることになる。平日にお客が少ないと、やはり目に見えて火の車なのです。明日はどうなるこことか。夜の食事は昨日のサラダの残りを炒め物にして、チーズ揚げと枝豆、トマトで一献なのでした。

7月10日 日曜日 朝から蒸した一日で …

 午前5時前に今朝は珍しく寝汗を掻いて目覚めた。気温も多少高いのかも知れないけれど、じめじめと湿気のある感じなのでした。亭主は、元来、この湿気には弱いのです。居間の部屋のエアコンをおそらくは外気温よりも高めの27℃に設定して入れただけで、爽やかな高原の朝になるから不思議なのです。例によって、6時まで椅子に座ってぼんやりと過ごし、珈琲を飲み終えたら車を出して、煙草を買いに出る。その帰りに蕎麦屋に寄って、夕べ漬けたお新香を取り出して切り分け、小鉢に盛り付けるのです。

 家に戻れば、女将が台所で朝食の支度をしている。昨日蕎麦屋で残った二人分の野菜サラダは、夜のうちに亭主が製作責任上、冷やし中華に載せて半分食べたから、今朝は残り一人分を二人で分け、スクランブルエッグを添えておかずに出る。卵と納豆がタンパク質摂取の食材らしい。野菜の揚げ浸しやお新香も含めて、我が家ではかなり多くの野菜を摂っているのです。昼は食べられればどうせ蕎麦なのだから、ちょっとタンパク質の方が少ない計算です。

 朝が少し遅かったせいか、今朝は食後のひと眠りもせずに、丁寧に髭を剃って着替えを済ませたら、早めに家を出るのでした。玄関前のムクゲが、「おはよう!」と言って亭主を送り出す。白い花びらの中央に紅色の模様が滲んでいるのが素敵なのです。紫色の花びらにも同じ模様が入ったのもあるけれど、白地に紅が素朴で美しいと感じる。最近は足の指の具合も好くなって、ゆっくりだけれど雪駄の足に力を入れて歩くことが出来るようになった。

 蕎麦屋に着いたらまだ時間があったので、まずは西側の小径に散ったムクゲの花を箒で掃き集める。まだ枝に付いている花の終わった花殻も取っておくのです。「一日花だから」とよく女将が言っている。朝の仕事を終わらせて、さあて今朝は何から始めようかと、厨房の椅子に座ってタブレットで天気予報を見るのでした。あまり当てにはならないけれど、午前中は小雨のマークが続いて、昼からは曇りという予報。蕎麦は最低限打てば好いけれど、今日は日曜日。

 昨日打った蕎麦が5束残っていたから、今朝は750gで8束打って合わせて13食分を用意すれば好いだろうと考える。この「好いだろう」は、足りるという意味ではない。天気が悪くても、日曜日だからお客が蕎麦の数よりも多く来ることも考えられるけれど、「ご免なさい。お蕎麦が売り切れました」と言って断るには、ちょうど好いだろうという意味なのです。あまり無理をして沢山お客を入れても、女将と二人では手一杯になるはずです。

 商売人としては失格なのかも知れないけれど、自分の腕を過信しないと言うことも大切だと思うのです。銅の天麩羅鍋に替えて、天麩羅も上手く揚がるようにはなったけれど、続けて沢山揚げたのでは上手くいかない。2時間半という昼の時間で、調理をこなせる数は自ずと限られてくるのです。お客様がゆっくりと寛げるかどうかが一番の問題です。今日は11時過ぎには最初のお客が来たので、お湯も沸いていたから店の中に入って頂いた。

 そう言う日には後が続くもので、昼前に三組のお客が入って遅れてきた女将もびっくり。ご近所のご主人が一人でいらっして、いつもと同じく天せいろのご注文。「全部美味しかった」と今日も褒めて頂いて気をよくする女将と亭主。昼を過ぎて、四人連れのお客が続き、一組はお婆さんを連れた女性陣、もう一組は小さなお子様を連れたご夫婦で、これで今日の蕎麦は売り切れなのでした。その後も何台か車が入ったけれど、女将が出てお詫びをするのでした。

 昼になるにつれ、曇りどころか陽も差して、厨房は30℃を越える暑さ。1時過ぎには「お蕎麦売り切れ」の看板を出したけれど、洗い物をする時間がないほど忙しかった。今日は選挙の日だからと、家に帰って着替えもせずに、そのまま投票所に出掛ける夫婦。さすがの女将も今日は買い物に出なかったのです。空になった冷蔵庫の中にはあまり食べるものもなく、今日残った野菜サラダを使って、夜は亭主が作った餃子を添えて、冷やし中華にすることに …。

7月11日 月曜日 朝は涼しく昼は暑く …

 昨日の朝よりは少し涼しいと感じたけれど、午前6時の太陽の光は、もうかなり強かった。家でもうひと眠り出来ない理由は、昨日の片付けが沢山あったから。最近は暑くなるとお客が増えるという繰り返しで、週末のお蕎麦売り切れは嬉しい悲鳴なのです。月曜日の今日は昨日にも増して暑くなると言うから、まずは片付けから始めないといけない。そして、残っている蕎麦汁を補充した分だけ、今朝は蕎麦を打とうと考えていたのです。

 蕎麦徳利はすべて空だったから、作り置きしてあった蕎麦汁をお玉で一本ずつ入れていく。ちょうど8本目で蕎麦汁が尽きて、大盛り用の蕎麦徳利が、冷蔵庫に少し残っていたから、今朝は9人分の蕎麦を打てば好いと考える。小鉢もお新香以外はすべてなくなっていたので、作り置きの分を盛り付けたら、ちょうど9人分なのでした。平日だから、暑くなったと言っても、そんなに沢山のお客が来るとは思えない。洗濯物を畳んで乾したら、家に戻るのでした。

 家の冷蔵庫もすっかり空になっていたから、今朝は何にするのだろうと居間の部屋で待っていたら、シャキシャキとジャガイモをスライサーでする音が聞こえてきた。ハッシュドポテトに卵焼きなのでした。それにお新香とピーマンのじゃこ煮がついて、亭主の朝食にはちょうど好い分量。すぐに食べ終えて書斎に入って横になる。わずか20分ほどなのですが、朝早く起きた分だけ身体を回復させるのです。洗面と着替えを済ませていつもの時間に家を出る。

 雲は多かったけれど今朝は晴れて、ジリジリと暑さが身体に入ってくる。蕎麦屋までは人に会わないから、マスクもしないでゆっくりと歩く亭主。朝の涼しさは何処へやら、今日は32℃まで気温が上がると言うから堪らない。朝のうちに店のエアコンを入れておいたから、蕎麦屋の中は高原の涼しさ。朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入れば、朝日が当たるからか28℃もあった。湿度は55%だから、それでも外に比べれば涼しい。蕎麦粉を計量して850gを捏ねる。

 いつもより100gしか多くないのに、加水を39%にしているから、捏ねるのに力が要るのです。菊練りに入れば、捏ね鉢の中で両の腕を絞るように力を入れるので、尚更、大変だと感じる。やはり、少し歳を取ったのかな。それでも寝かせた生地は綺麗に仕上がっていた。本伸しも無事に済んで、切りべら26本で130gの包丁打ち。予定通りに9人分の蕎麦が取れました。頼んでおいた春蕎麦の新蕎麦が届く。5kgを二袋で打ち粉を入れて2万円近いからやはり高い。

 平日だからと野菜サラダを三皿だけ盛り付けて、開店を待つひとときが、一番緊張するのです。最初のお客が来てしまえば、後は流れに任せるだけなのですが、どれだけ来るのかが分からないのが不安なのです。果たして、昼前に若いカップルが見えて、天せいろととろろ蕎麦のご注文。続けてリピーターのカップルがテーブル席に座って、ビールと天せいろにとろろ蕎麦。同じ作業を繰り返せば好かったから助かる。前の二人が帰ったところで駐車場に車が入る。

 あれよあれよと蕎麦がなくなっていくから、やはり暑くなるとお客は増えるのかも。天せいろを頼もうとするお婆さんには「天麩羅の量が多いから、ぶっかけ蕎麦に海老を追加した方が安いですよ」と言ってやる。1時10分過ぎには「お蕎麦売り切れ」の看板を出して、最後のお客のテーブルにお茶のポットを置いてくる。洗い物をする暇がなかったので、お客が帰った後で賄い蕎麦をぶっかけで食べ、ゆっくりと一人で洗い物をする。月曜日は後片付けが大変。