6月26日 日曜日 まさかの2日連続お蕎麦完売 …

久し振りの大賑わいで、蕎麦も蕎麦汁も小鉢もすべてなくなった日の翌日は、朝の4時に蕎麦屋に出掛け、夕べ準備しておいた出汁を取る。一番出汁に返しを加えて蕎麦汁を作り、何度も水を入れ替えて冷やしたら、蕎麦徳利に詰めていく。ここまでで約一時間。浅漬けを漬けるにはちょっと早すぎるから、今日の蕎麦の一回分を打っておこうと5時過ぎに蕎麦打ち室に入る。室温は28℃で湿度は78%だから、加水率はもう41%を切っていた。

それでも室温が高いからか、捏ねて伸すうちに少しずつ柔らかくなってくる。打ち粉を沢山振って、なんとか8人分の蕎麦を仕上げて、後は朝食後にもう一回打てば好い。昨日も後からいらっしたお客に、売り切れだと断った反省から、今日は16食用意しておこうと考えたのです。昨日乾した洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物をまた干しておく。これで6時になったから、朝飯前に2時間も働いたことになる。朝日を浴びた駐車場の紫陽花のブルーが見事。

家に戻っても6時ではまだ女将は寝覚めのヨーガの時間帯。朝食までは時間があるので、エアコンの効いた書斎に入ってひと眠り。7時を過ぎてやっと目覚めて食堂に行けば、今朝のおかずのメインはウインナソーセージとハッシュドポテトにスクランブルエッグ。後から女将に聞いたのだけれど、日曜日は亭主が昼を食べ損ねることが多いので、油の多い食品を用意したのだとか。亭主は亭主でご飯を炊飯器から自分で多めに盛り付け、遅くなる昼食に備える。

満腹になった食後は、また書斎で横になる。20分ほどウトウトしただけで、3時起きだった今朝の疲れを取るのです。洗面と着替えを済ませて、居間で珈琲を飲んで一服。今朝は8時半に家を出ました。もう日は高くなっているから、涼しい家々の影も少しだけ。日影のある道路の端を渡り歩くようにして、やっとみずき通りを越えるのでした。気温はもう28℃もあるはずだけれど、吹く風が涼しく感じるのは、少しずつ最近の暑さに身体が慣れたからだろうか。

朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入る前に、野菜を薄く切って、浅漬けを漬けておく。今日二回目の蕎麦打ちは、早朝の失敗を繰り返さない様に、加水率を40%ちょっとまで減らして蕎麦粉を捏ね始める。そして、蕎麦玉を作って寝かせている間に、葱切りを済ませて、大根をおろしてしまうのです。今日はお客が多いかも知れないからと、大根おろしも沢山作っておきました。ひと休みしている間に女将がやって来て、店の掃除を始めてくれるのです。

二回目の蕎麦打ちも無事に終わり、やはりこの暑さだから一度に二回打つのはきついと感じた。室温はエアコンを入れていても27℃になっている。青空が広がる外はむーっとする暑さで、熱風が吹いていると感じる。27℃の店内がやけに涼しいのです。野菜サラダの具材を刻んで、昨日は一つしか出なかったので、三皿だけ盛り付けておきました。暖簾を出してお客を待てば、やっと昼過ぎに車が駐車場に入って、いきなり四人のお客様なのです。

いきなりヘルシーランチセットが三つも出て、もう一人はせいろ蕎麦の大盛り。ランチセットの蕎麦の一つを温かい汁にしてくれとのご注文だから、汁を温めたりと手間がかかるのです。それからは次々とお客が入って、テーブル席もカウンターも2回転する混みようで、女将とも亭主も必死で仕事をこなす。小鉢も天麩羅の具材も今日は沢山用意しておいて好かった。最後に常連のご家族三人がカウンターに座って、これで今日の蕎麦はすべて売り切れなのです。

1時過ぎには蕎麦がなくなったから、売り切れの看板を出すけれど、まだお客はやって来る。「三人なんですけれど…」「ご免なさい。お蕎麦がなくなってしまって」と平謝りでお断りする。1時間で15人のお客が来たことになるから、これも初めて。目の回るような忙しさだった。洗い物をする暇もなかったので、最後のご家族が帰ってから、女将と二人で黙々と洗い物と片付けをするのでした。帰り道の空は晴れて汗が噴き出る暑さ。

6月27日 月曜日 やはり梅雨は明けていた …
久々の二日続けての満員御礼で、この週末は相当に疲れたのですが、混んだ日の翌日はする事が沢山あるので、今朝も朝飯前のひと仕事に出掛ける亭主。小鉢や蕎麦汁の詰替えをして、日中に自分で飲むお茶を沸かして冷蔵庫に入れておくのです。洗濯物も畳んで、洗濯機の中の洗濯物をまた干しておく。小一時間の仕事を終えて家に戻れば、ちょうど女将が台所で朝食の支度をしているのでした。冷蔵庫の中はほとんど空っぽだったのに、よく揃えてくれた。

再び蕎麦屋に向かう頃には、もう陽もだいぶ高く昇って、じりじりと照りつける太陽は、真夏のそれなのです。各地で雷の注意報も出ているくらいだから、このまま梅雨は明けてしまうのだろうと、内心では思っていたけれど、まだ梅雨明け宣言は出ていないのでした。まだ6月だからと暑さを我慢して、今朝も蕎麦屋への道をゆっくりと歩いて行く亭主。誰にも人に会わないから、もうマスクは外しても好いはずなのに、手に持つのも面倒な程の暑さなのです。

燕の雛が随分と育って、隣近所の巣のある軒下から、次々に飛び出してくる。そろそろ旅立ちの時なのかも知れない。身体も一回り大きくなっているのがよく判る。そんな燕たちの姿に元気を貰いながら、亭主も朝の仕事をこなすのです。早朝にエアコンを点けておいたから、蕎麦屋に入れば湿気もなく涼しいと感じる。朝日の当たる蕎麦打ち室も27℃、湿度も45%まで下がっていました。加水率も昨日よりも少なく、40%ちょっとで水回しを始めるのでした。

さすがに40%だと生地はしっとりと硬く、伸して畳んで包丁を打っても、綺麗な仕上がりになるのでした。昨日と一昨日の混み様を脳裏に浮かべて、一抹の不安を抱えながら、750g八人分の蕎麦を仕上げて厨房に戻るのです。明日からは定休日だから、蕎麦が足りなくなればご免なさいと詫びるしかない。そう自分に言い聞かせながら、次の作業に入るのでした。大根と生姜をおろして、デザートには抹茶味の水羊羹を作っておきます。

野菜サラダも平日の常で三皿だけ盛り付けておきます。外は熱風の吹く暑さで、店の中は冷房を22℃に設定しているけれど、27℃止まり。店の掃除をしてテーブルをアルコール除菌液で拭いた後は、換気のために窓を少しだけ開けておくから、直ぐに30℃近くまで上がってしまうのです。それでも湿度が低くなるので十分に涼しく感じる。開店の準備が整って、店の明かりを点ける。5分前には暖簾を出して、「営業中」の看板を掲げ、お客を待つのでした。

外はあまりに暑すぎて、折角、綺麗に咲いた紫陽花が萎れてしまいそうだったから、如雨露に水を汲んで何回も水を遣る。亭主ひとりだから、駐車場に打ち水をしたくてもホースを伸ばしたり、給水栓を捻ったりと、時間がかかることはなかなか難しい。昼までは、『あまり暑すぎてお客が来ないか』と心配していたけれど、昼になったら二人連れの男性がいらっして、ヘルシーランチセットのご注文なのでした。蕎麦豆腐は一人分しかなかったので値引きする。

まだ全品出し終えないうちに、カウンターにお一人の男性客が座って、天せいろに稚鮎の天麩羅を付け足してと頼まれる。「前のお客さんにお出ししてから作ります」と言ってお茶を出す。と、もう一台車が駐車場入って、何人いらっしたかと思ったら、ぞろぞろと職人風の若者が五人入って来て、カウンターとテーブルに別れて座るのでした。「お蕎麦が足りなくなるのですけれど」と言えば、カウンターのお二人はカレーうどん、テーブル席は鴨南蛮のご注文。

とにかくお茶を出して注文を取ったら、次の作業に入るのです。やっと天せいろのお客に注文の品を出し、前のお客と合わせて蕎麦湯をお持ちする。カレーうどんと鴨南蛮は数があるから大変。それでもなんとかこなし、12時半過ぎにはすべて出し終える。鴨肉がちょっと焼き過ぎだったけれど、汁は朝に作ったばかり。この五人もすべて野菜サラダが付くのだけれど、お断りして100円引きで小鉢に替えてもらう。「うまかった」と言って帰ったたから好かった。

「この暑いのに皆さん熱い食べ物ですね」と冷たい水を運びながら亭主が言えば、「暑い時には熱いものが好いんだよ」と若者が応える。すぐ近くの現場で働いていると言う。確かに、この近くから食事に行くにはどこも遠い。うどんが出たので、蕎麦が残ったと思ったら、入れ替わりで男性客一人がせいろ蕎麦の大盛り。これで今日の蕎麦は完売なのでした。小鉢がなくなったので、急遽、いんげんを茹でて生姜を添えてお出しする。梅雨明け宣言が出たと言う。
6月28日 火曜日 庭仕事は朝のうちに …

午前6時前の太陽の光は、もうカァーッと熱気を放っている。前の畑で草を燃やす煙が辺りにたなびいて、白い靄のように見えるのです。夏場の農家は朝が早い。定休日の亭主も、蕎麦屋の周囲の雑草が気になって、早くから目覚めて心の準備をしていた。先週は久し振りに50人を越えるお客が来たから、身体は疲れているのです。店を開業した8年前とはやはり何処か違う。意を決して外に出れば、犬を連れて散歩する弟に出会う。白髪の老人になっていた。

蕎麦屋を開業して何年かは、ミニ菜園にもいろいろな野菜を植えて賑やかだった。前に家が建ってからというもの、南側の庭に陽が当たらなくなって、コゴミやタラの木だけを残して、あまり野菜を作る気がなくなったのです。日陽の当たる東側の庭だけが、唯一野菜を植える場所になった。今年は絹さやを植えて収穫するまでにキュウリやナスを植える機会を逃してしまったから、そのままになっている。これも習慣で、やらないでいると雑草だけが伸びる。

今日はゴミ回収の業者が蕎麦屋に来る日だからと、90㍑のビニール袋一杯に、雑草や木槿やタラの木の枝を詰めて庭仕事は終わり。厨房に入って昨日の後片付けを済ませ、洗濯物を畳んで洗濯機の中の洗濯物を干して、朝飯前のひと仕事を終えるのでした。7時前に家に戻れば、朝から暑い暑いと言いながら、女将が台所に立っているから、茄子とピーマンの肉炒めは亭主が替わって作るのでした。居間の大型エアコンが壊れたままなのはここに来て大きい。

食後にエアコンの効いた書斎で横になっていたら、何時の間にか眠ってしまい、珍しく10分ほど遅れて目が覚める。お袋様に直ぐに行くからと電話をして、今朝の仕入れに出掛けるのです。農産物直売所に遅れて着いたら他のお客も何人かいて、ちょうど蕎麦屋の常連さんの農家のご夫婦も野菜を運んで来ていた。カボチャやラディッシュなど新鮮な野菜を買い、隣町のスーパーに向かうのでした。今日は黄色いパプリカとアーリーレッドが手に入らなかった。

店に戻って野菜を冷蔵庫に収納したら、昼前に急いで床屋に出掛ける。ところが、この暑さだというのに店は混んでいて、奥さんも息子さんの店から応援に来ていた。マスターのOKサインが見えたので、冷房の入った店内に入ってしばらく待っていたのです。12時半に床屋を出て、家に居る女将に直ぐ帰ると電話をする亭主。昼はカレーの予定だったから、午前中に買って帰ったとんカツを切って、蕎麦屋の残り物のルーを温めれば出来上がりなのです。

どうして忙しなかったかというと、午後からは年に一度の食品衛生協会の講習会があったのです。検便の提出と書類をもらって会場に入れば、駐車場が一杯だっただけに大勢の参加者が来ていた。約一時間の講習を聞いて、蕎麦屋の衛生管理にもほころびが出ているのに気が付いた。コロナ対策ばかりに気を遣って、最近はO157対策の次亜塩素酸消毒をしなくなったと気が付いたのです。トイレや玄関のドアの取っ手も以前はすべて綺麗に消毒していた。

日影に停めておいた車の車外温度は40℃を越えていた。一旦、家に戻ってひと休みしたら、4時前には蕎麦屋に戻って今日の出汁を取る。やることは一杯あったけれど、厨房は33℃もあるからエアコンを入れても間に合わない。日首に巻くアイスノンを着けて、なんとか暑さを凌ぐのです。夜が暑くて眠れないというお袋様が、これを欲しがっていたから、総合薬局に行って買って届けてやる。そしてやっと家に戻れば、もう6時近かったのです。
夜は何年か振りでざるラーメン餃子を食べる。市販のつけ麺では味が濃厚すぎて、ごまだれに酢が入るのが気に入らないから、昔、職場の近くで食べたざるラーメンの味を思い出した。毎日のように通って、店主から「店にある材料しか使っていない」というヒントをもらい、とうとう自分で作れるようになったのです。ラーメンのタレにすりごまと味噌を入れ、水で溶いて一度煮立てる。これを冷やして四川風辣油を垂らして食べるのです。餃子も手作り。
6月29日 水曜日 居間のエアコンが復活 …

夕べは10時には床に就き、今朝も4時前には目が覚めて、今日は何をしようかと考えたのです。あまり早すぎると、お隣に面した東側のミニ菜園の草取りは迷惑だろう。先週までになくなったカレーを作り、昨日作って鍋に入れたままの蕎麦汁を、冷蔵庫から取り出して、蕎麦徳利に詰めればだいたい二時間近くかかるだろう。と、そこまで考えたら、カレーに入れる鶏肉を買っていないのに気が付いた。仕方がないから団地の中の24時間営業の店に出掛ける。

朝が早すぎるから、車はほとんど通っていない中央通り。時折、散歩の老人が歩いているだけ。信号で右に折れてみずき通りへ進めば、そのまま道なりに左カーブ。坂を上って突き当たりが蕎麦屋の前のバス通りです。カレーの仕込みはもう頭に入っているから、具材を切り分けて、大蒜と生姜のみじん切りを油で炒めたら、具材を入れて煮ていくだけ。途中でミニ菜園にベイリーフを採りに出て、ルーを入れて煮込んでいくのでした。

カレーが煮詰まるまでに、蕎麦汁の詰替を終えて、時間があるから、すっかりなくなった返しの仕込みをしておこうと、材料を用意する。足らなかった味醂は家から持って来て間に合わせるのです。すべて終わって7時前。「ただいま」と家に戻れば、30℃の暑さの中、台所で女将が朝食の支度をしている。「エアコンを買い換えたら」と言われて、もう一度、掃除をしてから電源を入れてみたのです。すると、何が好かったのか、冷房が動き出したから驚きです。

居間と食堂と台所の広さをカバーするために、当時は最新の一番大きなエアコンを入れたのが平成22年だから、まだ壊れるはずはないのです。掃除や取り付け不具合のエラー表示もしっかり出ていたので、いつかやり直してみようと思っていたら、果たして28℃の設定で、居間も食堂も涼しいことと言ったら別世界のようなのです。28℃は女将と亭主には耐えられる暑さなのですが、これが昼になると32℃まで上がるから、二人ともそれぞれの部屋に避難していた。

取扱説明書を読み直してみたら、今まで掃除をしたことのない第二のフィルターがあったのです。これを掃除機で綺麗にしたから上手くいったのかも知れない。値段の高い高級なエアコンなので、パネルに表示されるメツセージの点灯の意味を、もっとしっかり見直しておけば好かった。問題解決のすっきりした気分で蕎麦屋に出掛け、午前中の仕込みに精を出す亭主。急な梅雨明けで、暑すぎて蕎麦屋の紫陽花ももう枯れてきているのでした。

早朝から店のエアコンを入れたままだったから、快適な室温で厨房に入って仕込みを始める亭主。まずは切り干し大根の煮物を作ろうと、具材を切り分けて準備をするのでした。女将のスポーツクラブの予約を取らなければならないので、使える時間は限られているのです。もう一つの小鉢には、夏野菜の揚げ浸しを作る予定だったから、具材を切り分ける前に揚げた具材を浸す汁を作って、これを冷蔵庫で冷やしておく。午前中の仕込みはこれでお終い。

昼は一年ぶりに冷やし中華にしようと女将と話していたから、女将が具材を用意しておいてくれたので、亭主は麺を茹でて皿に盛り付けるだけで済んだ。頑張ってスポーツクラブの予約に臨めば、なんと今回も一番で取ったはずなのに、満席となって取れなかった。パソコンよりもスマホの方がカーソルを移動させるのに時間がかからないから、5Gのスマホに負けたと言う感じ。次からは、女将のスマホで予約をしてみようと言って謝るのでした。

午後は携帯電話会社とカード会社に連絡をして、身に覚えのない請求の解明にひと苦労。結局は、カード会社の方で取引を停めてくれて、新しいカードとパスワードで再開出来そうなのでひと安心。嫌な世の中になったものだと、便利さに溺れていてはいけないと肝に銘じるのでした。午後の仕込みは午前中の続きで、揚げ浸しを作って、天麩羅の具材を切り分け、蕎麦豆腐とデザートの水羊羹を仕込んで、食材を頼んだ業者が来るのを待つのでした。

6月30日 木曜日 梅雨はとっくに終わって月末 …
午前5時半、向かいの森陰から太陽が顔を出す。向かいの畑の親父様もこんなに早くから仕事をしている。平日でも混んだ先日の反省から、やはり暑くなったこの時期は、お蕎麦8食だけの準備ではお客様に申し訳ないので、二回蕎麦を打つことにしたのです。亭主一人の営業だから、どこまで対応できるかが心配だったけれど、蕎麦が直ぐになくなるかも知れないという不安を抱いて営業するよりは、精神的にも安定して店を開けられるというもの。

27℃の厨房に入って、まずは珈琲を一杯飲んで今朝の段取りを考える。夕べ漬けた糠漬けを取り出さなくてはならないし、昨日作った切り干し大根の煮物と夏野菜の揚げ浸しも、小鉢に盛り付けなくてはいけない。ちょうど店の窓から朝日が差し込んで、あまりにも眩しいのでブラインドを下ろしてエアコンを入れる。後は、蕎麦の一回目を打てば朝飯前のひと仕事は終わるのです。洗い場の水道で顔を洗って眠気を覚まし、6時前には蕎麦打ち室に入るのです。

畑に出ていた向かいの親父様が、何やら手に抱えて蕎麦屋の方に歩いてくるから、玄関を出て挨拶をすれば、「もうキュウリも終わりだから」と採り立てのキュウリとズッキーニを持って来てくれました。「朝早くから大変ですね」と言えば「昼は暑すぎて仕事にならないからね」と笑って言うのでした。何もお返しするものがなくって恐縮したけれど、ご厚意は有り難く頂戴しておく。ついこの間も堀ったばかりのジャガイモを頂いたばかりなのです。

エアコンが効いてきたのか、蕎麦打ち室は27℃、湿度45%。加水率は41%弱。それでも捏ねていくうちに、初めの硬さはなくなってしっとりとしてくる。今日は 600g 6人分を二回打とうと決めていたのです。135gでひと束を取っていくと、端切れが60gほど残るので、これを二回打てば120gの端切れが出来る計算。これは自分の昼の賄い蕎麦にする予定。蕎麦玉を寝かせている間に、今朝は洗濯物を畳み、昨日洗った少しばかりの洗濯物を干しておくのです。

四つ出しを終えた蕎麦を伸していけば、やはり少し柔らかくなっている。幅60cm、奥行き90cmちょっとに伸びて閉まったが、八つに畳んでちょうど包丁の長さ以内に治まったから好かった。今朝は切りべらを25本にして、一人分135gの長めの蕎麦が仕上がる。厨房に戻って冷蔵庫の製氷室の氷をビニール袋に詰めて、茹でた蕎麦を冷やす氷を冷凍室にストックしておく。何か忘れたものはないかと確認して、エアコンは点けたままで玄関を出るのです。

玄関前の紫陽花も日中の強い陽射しで、そろそろ花も枯れてきたのです。毎日、水を遣れば少しは長持ちするのだけれど、地植えの植物にあまり手を掛けるのもどうかと、このところそのままにしてある。日影の花房がブルーで美しい。今年もこれが見納めか。天麩羅に使っている紫陽花の絵の入った天紙も、そろそろ次の季節の朝顔の絵のものに替えなければいけない。最近は、この季節の天紙に気づくお客が、あまりいないのが少し寂しくもあるのです。

7時前に家に戻れば、女将がもう台所に立って、朝食の用意をしてくれていた。先週、店で残った三ツ葉に、天麩羅の具材で残った生椎茸をスライスして卵綴じ。海苔と納豆が出て、シンプルな朝食でしたが、最近、亭主はこれで十分と感じているのです。食後は、エアコンの入った居間の椅子に座ってひと休み。今朝も食後のひと眠りをしなかった。これも習慣なのか。朝ドラの時間になったら、亭主は洗面と着替えを済ませて出掛ける準備をするのです。

玄関前の紫陽花は、早い夏の訪れに、最後の輝きを放っていた。朝の仕事を終えたら、すぐに蕎麦打ち室に入り、今日二度目の蕎麦を打つ。蕎麦玉を寝かせている間に、薬味の葱を切り、大根と生姜をおろして、再び蕎麦打ち室へ。無事に600g 六人分を打ち終えて、今日は12食の蕎麦を用意できました。野菜サラダを三皿作り、暖簾を出してお客を待てば、昼前に二組ほどお客が入る。一人は若者、もう一組は常連のご夫婦で、今日の暑さを恨めしがっていました。

昼からは、例の少年がやって来て、その後はリピーターのご夫婦がご来店。前に来たときの話を覚えていて、「この暑いのに蕎麦を打つのは大変でしょ」と言いながら、近隣には蕎麦を打ち過ぎて、ご主人が腱鞘炎になって閉店した店もあると言う。年を取ってから店を始めたから、頑張り過ぎるといけないと思ってますと応える亭主。今日はデザートの水羊羹が随分と出た。朝持たされた女将のスマホで、無事にスポーツクラブの予約も取れた。

2時前に女将もやって来て、片付けを手伝ってくれたのでした。家に帰ってひと眠りしたら、週末の煙草を買いに出て、やっと先週の売り上げの残りを銀行に入れる。去年、一昨年よりも6月の売り上げは伸びて、コロナ禍前の状態に少しずつ近づいているのです。市の感染者が昨日は一挙に増えて、心配の種は尽きないのです。夕食に亭主はまたもやざるラーメン餃子。女将は定休日に店で仕込んだカレーの残りを温めてカレーライスを食べるのでした。