2022年6月初め

6月1日 水曜日 また暑さが戻って …

 夕べも早く床に就いたはずなのに、今朝は7時まで眠っていた。定休日一日目では、まだ前の週の疲れが取れないのだろうか。やっと目覚めて食堂に行けば、女将はもう朝食の支度をしている。魚を焼く匂いが漂って、ジューッと炒め物をする音が聞こえるのです。今朝は干した大きな鰯の焼き物と茄子とピーマンの味噌炒め。それにぬか漬けが付いて、亭主にはちょうど好い量の朝食なのでした。青魚の日には納豆が出ないのが嬉しいのです。

 朝食を終えてもまだ眠気は覚めていないから、居間の電気を暗くして、寛ぐひととき。洗面と着替えを済ませて自分でコーヒーを入れる。女将は稽古場で今朝の新聞を読んでいるらしい。定休日二日目の今日は、午前中にまず出汁を取って蕎麦汁を仕込み、小鉢のひと品目を仕込まなければならない。そして、11時半には女将のスポーツクラブの予約をしなければいけなかったから、蕎麦屋で1時間半の仕事をこなしてちょうど好い時間なのでした。

 蕎麦屋に出掛ければ、駐車場の美央柳(ビオウヤナギ)がやっと咲き出して、今年も初夏の彩りが増えているのでした。ご近所に咲く金糸梅(キンシバイ)の花は、もう少し早くから咲いているけれど、よく似て見分けるのは難しいかも知れない。よく見ると美小柳の方が雄しべが長いのです。ツツジとサツキの時期が違うように、咲く時期の違いで区別した方が好さそうです。亭主にとっては、白居易の長恨歌に載っているので、とても印象深い花なのです。

 厨房に入って、昨日浸けておいた昆布と干し椎茸の鍋を、火にかけて出汁取りの準備をする。先週の疲れはやっと癒えてきたのか。きびきびと動いて次の支度をするのでした。小一時間を掛けて蕎麦汁まで作ったら、水で十分に冷やして蕎麦徳利に詰めていく。二番出汁は2㍑入りのステンレスの容器二つに入れて、次ぎに水で冷やしておくのです。ここでひと休み。タブレットで明日の天気を調べて、メールをチェックしておく。ついでにニュースも読むのです。

 それから包丁を取り出して、ニンジン、油揚げと冷凍してあった干し椎茸を戻したものを切り分け、切り干し大根を水で戻して、フライパンで炒めたら、出汁を入れて煮込み、出汁醤油と砂糖で味付けをする。少し冷めたらタッパに入れて冷蔵庫で保存。まだ時間があるから、洗濯物を畳んで洗濯機の中の洗濯物を干しておきます。ちょうど11時前に仕事は終わって、家に帰れば、女将はパソコンのスイッチを入れてスタンバイ。蕎麦を茹でる湯も沸かしてある。

 亭主は急いで蕎麦を茹で、昼食は5分で終了。それでもゆっくりと蕎麦湯を味わう暇があったのが幸せ。女将の視線を感じながら、書斎に入ってパソコンに向かえば、まだ予約開始の5分前。煙草を一服している間に1分前になって緊張の一瞬です。11時半ぴったりに画面が変わるから、急いでインストラクターの真ん前の一番好い席をとって予約完了。その前の週は、取れなかったから汚名挽回というところです。聞けば、年寄りはなかなか取れないのだとか。

 午後は女将がスポーツクラブに出掛ける間に、ひと眠りした後で整形外科の医者に行き、足の親指の具合を見てもらう。「一ヶ月分の薬を出しますから」と尿酸を減らす薬を処方され、「腫れている軟骨のすり減った部分は、手術をしないと治りません」と言われたので、当分は靴は履けそうにない。痛風の発作は治まっているようなので、取りあえずは好しとすべきなのでしょう。夕食は沢山の野菜とイクラと大根おろし、赤いかの照り焼きで一献なのでした。

6月2日 木曜日 平日なのに満員御礼、お蕎麦売り切れ …

 今朝の朝飯前のひと仕事は、お新香を糠床から出して、小鉢を盛り付けるだけだったから、6時過ぎに家を出る。駐車場の木々も伸び放題で、また少し剪定をしなければならない。自然の勢いは恐ろしいほどなのです。蕎麦屋の周りの雑草も足の指が治ってからと思っていたけれど、医者に治らないと言われたから、少しずつ手を付けて、痛くなったら痛み止めを飲むしかないのかも知れない。それが医者の考え方のようなのです。健康の大切さを痛感する日々。

 お新香は7鉢、切り干し大根の煮物が4鉢。10鉢もあれば、十分に足りるはずなのでした。予備のお新香や煮物は冷蔵庫にタッパで用意してあるから、万が一、足りないと言うことがあれば、盛り付ければいいのです。蕎麦はそんなに数を打たない予定でしたが、酒を飲む人が来店したりすると、お通しで小鉢を出す事もある。家に戻れば、7時前だというのに、女将がもう台所に立って食事の用意をしてくれていた。今朝は鰺の開きと煮物とシンプルで好い。

 食後は30分ほど横になって休むのですが、少しは眠ったのか眠らなかったのか、女将が朝ドラを見る時間には起き出して、洗面と着替えを済ませる。コーヒーを入れて一服したら、ちょうど朝ドラの終わる時間だから、「行って来ま~す」と玄関を出る亭主。庭のサツキが随分と咲いてきたのです。ご近所の紫陽花も早いところはもう花が咲いて色づいている。今朝も朝から陽の光が随分と暑いのです。蕎麦屋に着いたら朝の仕事を終えて、蕎麦打ち室に入る。

 今朝は少し多めに850gの蕎麦を打ち、以前のようにひと束130gになるように包丁を打っていく。これでちょうど10食の束が出来上がり、暖かくなると言うから、お客が沢山来ても安心というもの。蕎麦打ち室の温度は25℃、湿度が60%だったけれど、41%の加水では少し生地が硬かったので、水を足して柔らかめに仕上げるのです。朝から店の前を通る人はいつになく多いのでした。車を停めて看板を見に来た女性には、店置きのパンフレットを渡す。

 葱切りと大根、生姜を早めにおろして、デザートを何にしようかと悩んでいた。今週はさすがにもう苺は出ていなかったのです。抹茶小豆にしようと思っていたが、昨日のうちに小豆は茹でていなかった。漉し餡はあったから、寒天の粉を入れて、水羊羹でも今日の暑さなら大丈夫だろうと、10時を過ぎた時間に豊缶を取り出して、水羊羹の準備を始めたのです。水と氷糖蜜で漉し餡を溶かして、粉寒天を入れて火にかける。開店時間までに固まるかが心配でした。

 野菜サラダの具材を刻み、三皿に盛り付けたら、もう11時になっていました。天麩羅鍋に新しい油を入れ、天つゆの鍋を温めたら、急いで店の掃除を始めます。開店時刻の10分前には暖簾を出すけれど、どうせ直ぐにはお客は来ない。前の通りには結構人通りがあって、何人か目のお二人が蕎麦屋にいらっしゃる。二人揃ってとろろ蕎麦のご注文だったから、直ぐにお出し出来た。ところがそれからが、続々とお客が入ったのです。あっという間に満席状態。

 久し振りに近くの会社の社長さんまでいらっして、「いつものお願い」と言うものだから、お茶を出すのも間に合わない。天せいろばかりを続けて幾つも頼まれるけれど、一度に揚げられるのは二人分まで。注文伝票を書くのも忘れて、蕎麦湯を出したり、亭主一人で大忙しなのでした。ただ今満席の看板を出して、待っているお客に「少々お待ち下さい。」と声を掛けながら、お茶を運んで注文を聞く。天麩羅と蕎麦が出来る時間には火の側を離れられない。

 会計を済ませて帰るお客もいるけれど、盆や皿はそのままで片付ける暇がない。天麩羅の具材も切れてきたので、「お蕎麦は売り切れました」の看板を出して、最後のお客に天せいろを運ぶ。と、車が駐車場に入ってきたから、「蕎麦は打たなければないので、30分待てますか」と言えば、待つとおっしゃるので慌ててテーブル席を片付ける。ちょうど10人を越えた来客なのです。スポーツクラブから帰ったばかりの女将に電話をして来てもらうのでした。

6月3日 金曜日 蒸し暑い日中と夕刻は急激な雨 …

 昨日は久し振りに混んだ平日だったから、疲れたのか夜も9時過ぎには床に就いたのです。早く眠れば早く目覚めるのが当たり前で今朝は4時前には起き出す亭主なのでした。夕べわざわざ蕎麦屋に出掛けて漬けてきたお新香が気になったので、5時前には家を出て車で蕎麦屋に着けば、駐車場の美央柳が一面に咲き出していいるのでした。形のしっかりした金糸梅の花よりは、か弱く見えるところがまた素晴らしい。蕾が一杯あるからまだまだ楽しめそう。

 厨房に入ってお新香と切り干し大根を小鉢に盛り付けたら、空になった蕎麦徳利に蕎麦汁を詰めて、冷蔵庫に入れておきます。天麩羅の具材もすっかりなくなっていたので、新しく切り分けて容器に詰めておくのでした。昨日のペースで天麩羅が出れば、今週仕入れた分だけでは到底足りそうにない。昨日の今日だから、それほどお客が続くとは思えないけれど、準備だけはしておかなくてはならないのです。6時半になったので、そろそろ帰る支度をする。

 家に戻れば、ちょうど女将が雨戸を開けているところで「お早うございます」と縁側から声が聞こえた。やっと目覚めのヨーガを終えて、いよいよ朝食の支度に台所に入るのでしょう。ひと仕事を終えて帰った亭主は、「よっこらしょ」と居間の椅子に座ればもう眠たくなってくる。女将が食卓に運ぶ味噌汁の湯気が見えたら、亭主も重い腰を上げて、食堂に向かうのです。今朝はミツバの卵とじと夕べ聞いていたから、あっさりと亭主の好みの朝食なのでした。

 眠たい時は食後のお茶をパスして、速攻で書斎に入る。横になって目を閉じれば今日は直ぐに眠りに落ちたようだ。30分でもすーっと眠ると頭が軽くなる。それでも起き上がるまでに10分はかかるのです。これが若いときとは違う。それでも自身の老いは素直に受け入れて、急に立ち上がってよろけるようなことがあってはいけないのです。洗面と着替えを済ませ、自分でお茶を入れて飲む。女将は朝ドラを見終えて「裏の草取りをしているからね」と玄関を出る。

 女将に続いて玄関を出た亭主はしっかりとマスクをして、伸びた南天の木を見上げるのでした。最近は家の草取りは全部女将の仕事になった。亭主は蕎麦屋の草取りも出来ない状態だけれど、足の親指の痛み止めももらったし、そろそろ活動を開始しても好いのかも知れない。梅雨と夏の暑さが来る前に、少しずつやらなければいけないと、女将にも言われているのです。蕎麦屋に着いて、今朝も蕎麦打ちは850g。少し硬かったから9.5人分しか取れなかった。

 蕎麦打ちを終えたら、大根をおろして、デザートは昨日作った水羊羹が四皿分あるから、野菜サラダの具材を刻み始めるのです。ものにもよるのだろうけれど、今の時期のキャベツは刻むのにひと苦労。太い葉脈の周囲が硬すぎて、切り落としてもまだ硬いから、上手く丸めて刻めないのです。ニンジンは薄くスライスできるので、細く仕上がる。パイナップルも甘くて美味しいので嬉しい。キュウリは新鮮だし、トマトもブロッコリーもアスパラも好い具合。

 開店準備が整って、暖簾を出すけれど、思った通り混んだ翌日は要注意で、1時間待ってもお客は来ない。昨日と違って前の通りを歩いている人もいないから不思議です。やっといらっしたお客が例の少年で、缶コーラを持って飲みながら、カウンターの席に着く。お婆ちゃんが退院したとぼそりと話す。いつもと同じくエビ天を揚げ、蕎麦を茹でて、カルピスとお菓子のバームクーヘンも一緒に出してやった。彼が今日唯一のお客なのでした。

 1時をとうに過ぎたから、亭主も天麩羅を揚げて昼の賄い蕎麦を食べる。アスパラとブロッコリーを揚げたけれど、これは美味しくない。アスパラは茹でない方が好いのかも知れない。外は27℃の暑さで夏の雲。早々に家に帰って、冷たい飲み物が欲しかったので焼酎のオンザロック。書斎に入って横になったら1時間以上ぐっすりと眠った。「早く帰ったみたいだったからお客がなかったのね」と夕食の時に女将が言う。鶏の胸肉の塩麹焼きでご飯を食べた。

6月4日 土曜日 今日も満員御礼、お蕎麦売り切れでした …

 昨日は蕎麦屋が暇だったのに、早く眠っても、今朝はなかなか起きられなかった。朝飯前のひと仕事がなかったから、気も緩んでいたのかも知れない。マイペースの女将は、今日が今週最後の洗濯日和と、朝からシーツを洗ったり忙しそう。朝食は卵焼きと納豆にひじきと切り干し大根の煮物。亭主にとってはお腹に優しい食事なのでした。朝の珈琲を一杯飲んで、居間の椅子に座って朝ドラが終わるのを待つ。湿度が低いのか、ヒンヤリとした陽気なのでした。

 風は涼しく爽やかで、みずき通りを渡るのにも軽やかな足取り。足の親指の痛みも忘れそうなのです。もう通風の発作の痛みではなくて、すり減った軟骨の痛みだけだからあまり気にしないようにしている。それでもまだ、靴を履いて歩くことは躊躇(ためら)われるので、相変わらず雪駄を履いて歩いている。蕎麦屋の駐車場の美央柳が満開状態で、華やかな様子が気持ちを和ませるのでした。幟を立てて、チェーンポールを降ろす。

 平屋作りの蕎麦屋は昨日の温もりがまだ残っているから、窓を開けて涼しい朝の空気を入れてやる。今日は湿度も50%以下だったから、奥の座敷も廊下や洗面所の窓も開け放って湿気を取る。洗濯物を畳んで、洗濯機の中の洗濯物を干しておきます。蕎麦は昨日一つ出ただけなので、生舟には8束の蕎麦が残っていたけれど、爽やかに晴れた今日はきっとお客が入るだろうと、750g八人分を打つことに決める。去年も梅雨時前の週末はかなり混んでいるのです。

 残れば明日の日曜日もお客が入るだろうから、二回蕎麦を打つ手間を省けるというもの。室温は24℃、湿度は45%と、かなり低いので、今朝は42%の加水率で蕎麦粉を捏ね始めた。少し硬いかと思ったが、捏ねているうちに水が馴染んでちょうど好い柔らかさになるのでした。切りべら26本で130gをきちっと守って、八人分の蕎麦を取れば、まだ少し残るので、端切れにはせずに最後まで綺麗に切って、大盛り用の70gほどを取っておく。

 16人分の蕎麦を用意して厨房に戻れば、「今朝は爽やかで気持ちが好いわ」と言いながら、女将がやって来て店の掃除を始めてくれるのでした。亭主は厨房に戻って大根をおろし、野菜サラダの具材を刻み始める。女将はテーブルの醤油の入れ物を集めて、新しい醤油に取り替えるために容器を洗う。前に入っていた醤油は乾燥して濃くなっているから、家に持ち帰って使うのです。ドレッシングのガラス容器も、ゴムの口を洗って中身を補充していた。

 彼女は10時になったら一旦家に戻って早お昼にする。そして11時にまたやって来て、開店の準備にかかるのです。その間に、亭主は野菜サラダを盛り付けて、お茶のポットにお湯を入れる。天麩羅鍋に油を入れ、天つゆの鍋を冷蔵庫から取り出して、天麩羅の具材と天ぷら粉の容器を並べるのです。外は雲もが多かったけれど青空が広がって、風が涼しく過ごしやすい一日になりそうなのでした。開店時刻の5分前に暖簾を出せば、もう最初のお客がご来店です。

 常連のご家族で、ご主人と息子さんはいつも大盛りの天せいろ。座る席も奥のテーブル席と決まっている。続けてもう一つのテーブル席に若いご夫婦が座って、やはり天せいろのご注文でした。カウンターにもご夫婦で座って、奥様がぶっかけ蕎麦でご主人が天せいろを頼まれる。ここまではまだ亭主も女将も余裕があったけれど、12時過ぎだというのに、生舟の蕎麦はもう半分になっている。満席の看板を出して、次々に天麩羅を揚げて、蕎麦を茹でるのでした。

 駐車場は車三台で満杯なのです。最初のご家族が会計を済ませると、女将が急いでテーブル席の盆や皿を片付けて、玄関口の満席の看板を外すのです。洗い物をする間もなく、次のお客がいらっしゃる。「お婆さん、お元気で好かったわ」と女将が挨拶をしているから、見れば常連の農家のご家族なのでした。いつもビールを頼まれるご主人は、今日は午後から仕事があるからと、三人でぶっかけ蕎麦のご注文。この辺りから、調理が間に合わなくなる。

 結局、テーブルとカウンターが二回転して、天麩羅の具材もなくなったから、お蕎麦売り切れの看板を出した。すると、また一台車が入って、蕎麦は残り二つだからと女将に言って案内してもらう。まだ1時前なのでした。待っていただいたお客には「お待たせしました」と少しずつサービスをして、何とか凌いだのです。それにしても、小鉢も蕎麦汁もほとんどなくなって、亭主は夕食後にまた蕎麦屋に行って、出汁を取って蕎麦汁を作る。小鉢は明日の朝 …。

 

6月5日 日曜日 珍しく二日続けてお蕎麦完売 …

 昨晩やり残した仕込みをするために、今朝は3時前から起き出して辺りが明るくなるのを待った。お新香も漬けてあったから早い時間に取り出せる。お湯を沸かしてコーヒーを入れ、時間が許せば蕎麦も一回目を打っても好いなどと考えながら、窓の外を眺めるのでした。この時間ではまだガレージを開ける音が近所迷惑だからと、歩いて家を出たのが4時前で、みずき通りもまだ眠っているのでした。蕎麦屋に着いてもまだ森の辺りは薄暗くて陽は昇らない。

 厨房の明かりを点けて、まずはほうじ茶を沸かして、綠色の陶器のグラスに三杯分と湯飲みに一杯作っておく。湯飲みのお茶は自分が今飲む分で、後は昼の水分補給用に冷蔵庫に入れておくのです。まな板を出して、ニンジンと油揚げ、もどした干し椎茸を刻み、切り干し大根をお湯で戻してそれぞれ胡麻油で炒める。二番出汁でしばらく煮込んだら、出汁醤油と砂糖で味付けをして、火を止めて冷ましておくのです。その間に糠床を出してお新香を切り分ける。

 昨日の洗い物の片付けもあったから、ここまででもう一時間が過ぎる。あまりにも朝が早かったので、ちょっと蕎麦打ちまでは出来そうにない。2日連続で混むことはまずないだろうから、次ぎに来たときに、850g10人分を打てば十分なのではないかと考える。椅子に座れば、なぜか瞼(まぶた)が重くなってくるような気がするのでした。また歩いて家まで帰れるだろうか、以前は、蕎麦屋でも枕を出して昼寝をしたことがあったっけなぁ。

 「ただいま」と玄関を入って居間に入れば、女将が台所で朝食の支度をしている。昨日亭主が「卵焼きが美味しかったから、一番出汁を少し入れて見てはどうだい」と一番出汁を持って帰ったから、女将は少しだけ出汁を入れてみたと言う。立派な出汁巻き卵になっているから感心。食べたことがある人なら、普通の卵焼きとは全く違うのを知っているでしょう。ご飯のおかずにも酒のつまみにも、店で高い値段を出して頼むだけのことはあるのです。

 ご飯を食べ終えて、女将に言われて亭主は、尿酸を作りにくくすると言う薬を飲むのです。足の親指は相変わらず変形した軟骨のおかげで、赤く腫れて強く踏ん張ると痛みもあるけれど、痛み止めは飲まずに慣れなければと思う。蕎麦屋から5時半に家に帰って7時まで眠ったから、食後のひと眠りはなし。朝ドラが終わったら家を出ようと思っていたら、日曜日の朝は朝ドラもないらしい。蕎麦屋へ行く道すがら、紫陽花の色づくお宅が印象的でした。

 駐車場のヤマボウシが今年も元気に花を咲かせていました。白く四枚のガクの部分が開いて、花はその中の小さな塊。去年、隣のモミジと共にばっさりと枝を梳いて、どうなるかと心配だったのですが、無事に今年も育っている。朝の仕事を終えたら、蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。850gは量が多いから捏ねるのも大変なので、加水率は42%にして少し柔らかめにして仕上げようと思った。すべて130gなら、10束取れるのだけれど、今朝も9.5人分でした。

 厨房に戻って大根をおろしていたら、前の広い畑の親父様が、大きな籠に一杯野菜を運んで来たから、玄関に出て挨拶をする。食べきれないから近所に配ってるんだよと言って、玉葱やジャガイモやズッキーニに大根などを沢山置いて行ったのです。有り難いことだと女将が来たので家に持って帰ってもらう。畑から採ったばかりのジャガイモや玉葱は少し干した方が長持ちするらしい。野菜サラダの具材を刻み、油や天つゆを用意して開店の準備が整う。

 昨日の今日だから、お客は少ないだろうと思っていたら、昼前から次々とお客がいらっして嬉しい悲鳴。ラベンダー祭りにやって来たと言う人も何人かいた。子供連れのご家族5人が来店して、うどんを二つ頼まれたから、1時には蕎麦が売りきれるはずだったけれど、蕎麦が少し残ったのでした。閉店間際に常連の女将の友だちがいらっして、亭主の食べる分を残して蕎麦はすべて売り切れた。今週は10人を越えた日が3日もあるから、コロナ前に戻ったかな。

6月6日 月曜日 とうとう梅雨入りか …

 今朝の天気予報では一日中雨。気温も随分と下がるらしいから、蕎麦屋のお客も少ないだろうと、ゆっくりと目覚めて朝食の食卓に着く。居間の部屋も19℃しかなかったから、食事の時間までストーブを点けていたのです。温かい味噌汁が嬉しかった。女将の焼く出汁巻き卵は今日も進化して、今朝は一番出汁を卵一個分大さじ二杯を入れてみたのだとか。砂糖と塩で味付けもしたらしく、なかなか美味しいのです。テフロンの卵焼き鍋はなかなか優れている。

 昨日の沢山の洗い物の片付けや、小鉢の盛り付けなど、蕎麦打ち前にお客が来なくても、やっておかなければならない仕事があったので、今朝は8時前に家を出て、蕎麦屋に出掛けるのでした。終日の雨だと言うので、足の親指を庇って車で行く亭主。これだと帰りに店で残った食材も持って帰れるのです。漬け物と切り干し大根の煮物を6鉢だけ盛り付けて、万が一、足らなくなれば盛り足せばいいだろうと考えたのでした。そんなにお客は来ないと思うのです。

 雨が激しく降っているから、幟も出さずにチェーンポールも降ろさず、まずは蕎麦打ち室に入って今日の蕎麦を打つ。750g八人分を打てば足りるだろうと、長年の経験で冷たい雨の降る日には、お客が来ても数人だろうと思ったのです。蕎麦打ち室の湿度は75%もあったけれど、室温が21℃と昨日よりもかなり低かったから、今朝は加水率を42%強にして蕎麦粉を捏ね始めたのです。思った通りそれでも少し生地は硬く、時間をかけて馴染ませていくのでした。

 切りべら26本で130~135gを目安にして、ちょうど8束を取ったところで、まだ少し取れそうだったので、65gだけ綺麗に切って終わりにする。750gからは130gにしても9束は取れないのです。だから800gで打つという事を考えた。そして今では850gでなんとか10束取れないかと四苦八苦しているところ。蕎麦粉の量が増えれば、加える水の量と使う打ち粉の量も増えるから、ひと束130g以下であれば、なんとか10食は取れる筈なのですが、そこが難しいのです。

 蕎麦打ちを終えて厨房に戻り、大根をおろして二つの大釜に火を入れる。店内は昨日の温もりが残っているのか22℃だったけれど、外はもっと気温が低いのでした。湿度が高いから何となく蒸すという感じなのです。雨は休みなく降っている。湯野菜サラダの具材を刻み、客は来ないと確信していても、平日は三皿と決めているのです。それでも、昼前にいつも自転車でいらっしゃる常連さんが、今日は車でご来店なのでした。いつもと同じ席に座って天せいろ。

 降り続く外を眺めながら「これは梅雨に入ったんじゃないてすかねぇ」と亭主が言えば、「農家が働く易いように、上手く降ってくれれば好いけれどね」とおっしゃるのでした。昨日、向かいの畑の親父様から頂いたズッキーニを、今日は天麩羅にして開店前に試食済みだったから、サービスでお付けしたら「ズッキーニの天麩羅って美味しいね」とおっしゃる。味は淡泊なのだけれど、油とは相性のいい野菜らしいのです。和風で出すのには工夫が要りそう。

 結局、今日もまたお一人だけのお客なのでした。五日間のうち、お客が10人を越えた日が三日で、一人のお客の日が二日とは、あまりにも差があるのです。市内の感染者数は減っているとは言え、今日も二桁の発表だったから、まだまだコロナ禍から抜け出したとは言い切れないのでしょう。これから梅雨の間中、打つ蕎麦の数を決めるのは難しい。夕食にズッキーニを切り分けて肉と玉葱と炒めてみたけれど、味が淡泊なので塩コショウでは物足りなかった。